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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22F
管理番号 1291399
審判番号 不服2012-24309  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-07 
確定日 2014-09-11 
事件の表示 特願2012- 48426「微小球状金属粒子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月19日出願公開、特開2012-136781〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成13年4月17日に出願した特願2001-118342号の一部を平成24年3月5日に新たな特許出願としたものであって、同年5月17日付けの拒絶理由が通知され、同年7月10日付けの手続補正によりその願書に添付した特許請求の範囲を補正したが、同年9月18日付けで拒絶査定されたものである。
そして本件審判は、この査定を不服として、同年12月7日付けの手続補正により特許請求の範囲を補正するとともに請求されたものである。

2.本願発明の認定

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、審判請求時の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「粒状化室と、炉と、ノズルと、回転ディスクと、ガス供給管とを含み、溶融金属から金属/合金粒子を製造する粒状化装置であって、
前記炉は、金属を溶融するものであり、
前記ノズルは、一端が前記炉に接続され他端が前記粒状化室内に導かれており、
前記回転ディスクは、モータによって高速回転し、前記ノズルの前記他端の直下の前記粒状化室内に設けられており、
前記ガス供給管は、酸素含有雰囲気ガスが供給され、前記酸素含有雰囲気ガスを前記粒状化室内に放出する、
粒状化装置。」

3.原査定の理由

原審拒絶査定の理由の一つは、
特開平7-179912号公報(以下、「引用例1」という。)
特開平10-85583号公報(以下、「引用例2」という。)
を引用し、
「本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。

4.引用例の記載

引用例1

摘示1-1(2欄3?8行)
【発明の構成】この発明は冷媒ガスを充たしたチャンバー内において遠心アトマイザーにより金属の溶融物を撒布して金属粒子を生産する方法において、前記した冷媒ガスは窒素と、冷媒ガスの全容の約3?500ppmの酸素との組成物からなる球状金属粒子の生産方法である。

摘示1-2(4欄20?28行)
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例において使用した装置の要部を縦断した骨格図である。
【符号の説明】
Cはチャンバー、Pはるつぼ、Aは遠心アトマイザー、Dは回転ディスク、Mはモーター、Sはセンサー、Kは自動制御装置、V1,V2は電磁バルブ、B1は窒素ガスボンベ、B2は酸素ガス又は圧縮空気ボンベ、F1,F2は流量計、Rは受器である。

摘示1-3(図1)


引用例2

摘示2-1
【0005】本発明はペイント用顔料や射出成形に適する金属微粉体および無機物または有機物微粉体の製造に関して在来技術の問題点を解決し、本発明が意図する粒度の微粒子を作製する方法とそのための装置を提供する。ここで、本発明が言う微粉化は使用目的に適した粒度への微粉体化を意味し、しがって或る種の無機物、有機物に対しては造粒となり、溶融金属等に対しては微粉砕になる。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によればその目的は下記のようにして達成される。すなわち、
・・・(中略)・・・
【0010】(4)そのための装置として、目的とする粉体物質の融体もしくはスラリ-を貯留する容器と、この容器に取り付けられノズルと、このノズルから吐出する該融体もしくはスラリ-の吐出流をその中心部で受けるように配置された回転デスクと、この回転デスクを取り巻くように配置されたガス噴射用の環状ノズルとからなる微粉体の製造装置を使用すること。

摘示2-2(図2)


5.引用発明の認定

引用例1には、窒素と酸素の組成物からなる冷媒ガスを満たしたチャンバー内において遠心アトマイザーにより球状金属粒子の生産をすること(摘示1-1)が記載され、その実施例において、チャンバ-内に開口部を有し金属を溶融させるるつぼと、該開口部の直下で対向する回転ディスクとモータからなる遠心アトマイザーと、窒素ガスボンベ及び酸素ガスボンベとチャンバーを接続する2つのガス供給ラインを備えた装置(摘示1-2,1-3)が記載されている。
すなわち、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「チャンバーと、るつぼと、開口部と、回転ディスクと、ガス供給ラインを備えた、球状金属粒子を生産する装置であって、
前記るつぼが、金属を溶融し、
前記開口部は、るつぼに備えられてチャンバー内に開口し、
前記回転ディスクは、モータにより回転するとともに、チャンバー内で前記開口部の直下で対向し、
前記ガス供給ラインは、窒素ガスと、酸素ガスがそれぞれ別に供給され、各ガスを前記チャンバーに放出して、チャンバー内に窒素と酸素の組成物からなる冷媒ガスを満たす装置。」

6.発明の対比

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「チャンバー」「るつぼ」「開口部」「ガス供給ライン」「窒素と酸素との組成物からなる冷媒ガス」「球状金属粒子を生産する装置」が、それぞれ本願発明の「粒状化室」「炉」「ノズル」「ガス供給管」「酸素含有雰囲気ガス」「溶融金属から金属/合金粒子を製造する粒状化装置」に相当するから、
本願発明のうち、
「粒状化室と、炉と、ノズルと、回転ディスクと、ガス供給管とを含み、溶融金属から金属/合金粒子を製造する粒状化装置であって、
前記炉は、金属を溶融するものであり、
前記ノズルは、一端が前記炉に接続され他端が前記粒状化室内に導かれており、
前記回転ディスクは、モータによって高速回転し、前記ノズルの前記他端の直下の前記粒状化室内に設けられている粒状化装置。」
の点は、引用発明との差異にならず、両者は、次の点で相違する。

相違点:本願発明のガス供給管は、酸素含有雰囲気ガスが供給され、前記酸素含有雰囲気ガスを前記粒状化室内に放出するのに対し、引用発明のガス供給ラインは、窒素ガスと、酸素ガスがそれぞれ別に供給され、各ガスを前記チャンバーに放出して、チャンバー内に窒素と酸素の組成物からなる冷媒ガスを満たす点。

7.相違点の判断

上記相違点について検討するに、引用発明の「回転ディスク」に相当する「回転デスク」を用いた金属微粒子の製造装置について、引用例2には、意図する粒度の粒子を製造するために、該回転デスクを取り巻くガス噴射用の環状ノズルを設けること(摘示2-1,2-2)が記載されている。
してみると、引用発明においても、意図する粒度の粒子を生産するため、回転ディスクを取り巻くガス噴射用の環状ノズルを設けることは、引用例2の上記記載に基づき、当業者が容易になし得たことであり、その際、該環状ノズルへのガス供給ラインには、窒素と酸素の組成物である冷媒ガスに相当する酸素含有雰囲気ガスが供給されること、すなわち、上記相違点が解消されることは、当業者にとって自明なことである。

8.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、原査定の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-21 
結審通知日 2013-08-28 
審決日 2013-09-10 
出願番号 特願2012-48426(P2012-48426)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B22F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米田 健志  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 大橋 賢一
小柳 健悟
発明の名称 微小球状金属粒子の製造方法  
代理人 阿部 美次郎  

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