• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21S
管理番号 1291466
審判番号 不服2013-5355  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-22 
確定日 2014-09-04 
事件の表示 特願2008-553247号「光源モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月16日国際公開、WO2007/092124、平成21年 7月16日国内公表、特表2009-526350〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願の手続の経緯は次のとおり。
平成19年1月12日 国際特許出願
(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成18年(2006年)2月6日 米国)
平成22年 1月 8日 補正書
平成24年 2月 2日 拒絶理由
平成24年 6月20日 意見書
平成24年11月29日 拒絶査定
平成25年 3月22日 審判請求
平成25年 6月11日 拒絶理由
平成25年 9月17日 意見書、補正書
平成25年10月11日 拒絶理由
平成25年12月26日 意見書、補正書

第2 本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は平成25年12月26日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
車両用の光源モジュールであって、
a)高輝度放電光源と、
b)前記光源から放射された光の方向を変えて集束させる反射器を少なくとも含む光学要素と、
c)所定の波長および大きさを持つ電圧と電流とを前記光源に供給する電子要素とを含み、
d)前記光源は、少なくとも部分的に同型の光源の標準規格パラメータと異なる光学パラメータと、前記標準規格パラメータに適合する電気パラメータとを持ち、
e)前記光源の輝度分布は標準規格から外れており、
f)前記光源の前記光学パラメータに合わせて、少なくとも反射器を含む前記光学要素の幾何形状を調整することで、前記光源モジュールが、前記標準規格に適合する照明ビームを提供するように構成される、光源モジュール。」

2.引用刊行物の記載事項
(刊行物1)
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001?101909号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「照明装置」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
ア 「【解決手段】 リフレクタ1と、灯体2と、放電灯3と、イグナイタ4と、インバータからなる点灯回路5と、ソケット6からなり、イグナイタ4と点灯回路5の少なくとも一つがソケット6内にあり、放電灯3がソケット6に固定され、ソケット6がリフレクタ1に固定され、放電灯3がリフレクタ1内に収納されている。」(【要約】の欄)
イ 「本発明は照明装置、特に、車載用前照灯用照明装置に関するものである。」(段落【0001】)

以上の記載事項及び図面の記載からみて、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
(引用発明)
「車載用前照灯用照明装置に関するものであって、リフレクタ1と、灯体2と、放電灯3と、イグナイタ4と、インバータからなる点灯回路5と、ソケット6からなり、イグナイタ4と点灯回路5の少なくとも一つがソケット6内にある照明装置」

(刊行物2)
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-16811号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「車両用ヘッドランプ及びリアコンビネーションランプ並びにその設計方法」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
ウ 「【解決手段】本発明によるヘッドランプ(走行ビーム、変換ビーム、霧灯、方向指示灯など)、及びリアコンビネーションランプ(停止灯、後尾灯、後進灯、方向指示灯など)に内蔵される反射鏡の反射面を、自動設計プログラムによる反復作業を通し段差、折れ又は分割面のない、単一曲面に設計することにより、最少のサイズで最適の配光性能が図られる。また、レンズとしてはオプティックの排除されたクリアレンズ(Clear Lens)を採用する。従って、従来レンズや反射鏡のオプティックによって行われてきた光の集中及び拡散機能が、反射鏡の自由曲面のみで具現可能になり、その結果、ヘッドランプ及びリアコンビネーションランプの配光規格を満たしながら配光性能及びデザイン性を大幅改善することができる。」(【要約】)
エ 「【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題点の解決のために案出されたものであって、本発明の目的は、車両のヘッドランプ及びリアコンビネーションランプの前面に設けられるレンズとして拡散オプティック(Spread Optic)やプリズムカット(Prism Cut)を排除したクリアレンズを採用し、またその反射鏡としてはヘッドランプ及びリアコンビネーションランプの自動設計プログラムの反復ルーチンを通し、段差や分割面のない幾何学的な単一の曲面処理を施した無段差反射鏡を採用することにより、反射鏡のみでもって願望の配光規格を十分に満足させながらその配光性能及びデザイン性を大幅向上させた車両用ヘッドランプ及びリアコンビネーションランプの設計方法を提供することにある。」(段落【0010】)
オ 「【0015】本発明では、車両用ヘッドランプ及びリアコンビネーションランプの自動設計プログラムに従い、目的の配光値、光源、初期反射面を入力して光源の位置を指定し、このような条件の下で、車両のヘッドランプ及びリアコンビネーションランプの自動設計プログラムの反復作業を通し、光源から約25m離れた地点において目的配光に到達するまでに反射面の複数の制御点を移動させながら、最適の反射面が得られるように設計する。(段落【0015】)
カ 「【0016】また、上記光源の設定、及びその位置の指定に引き続き、目的配光を数値で入力した後は配光の変化方向を設定して反射鏡を変化させる。こうすると、ヘッドランプ及びリアコンビネーションランプの自動設計プログラムにより反射鏡の変化程度と、変化した反射鏡による現在配光が自動計算されながらシミュレーションが反復される。この時、変化した配光をチェックしながらそのバラツキを補正する一連の過程を反復し、最適の反射面を求めてヘッドランプ及びリアコンビネーションランプが設計される。」(段落【0016】)
キ 「【0017】尚、本発明では望みの目的配光、光源及び初期反射面を設定した後、反射面からの光が目的配光に収束されるまで反射鏡の反射面形状を少しずつ変化させて、段差、折れ又は分割面無しにスムーズに連結することが、本発明の技術的な核心と言えよう。また、数回にわたって上記の作業を繰り返すと、図1に示すように、段差、折れ又は分割面のない望みの配光分布を有する無段差の反射鏡曲面が得られる。」(段落【0017】) ク 「【0039】また、既存の放物面反射鏡の場合より反射面を小型化することができ、デザインに自由度が与えられ美観が向上するだけでなく、反射面が一つの自由曲面で形成され外部の遮蔽装置無しにEuropean Passing Beam Pattern及びUSA Lower Beam Patternを提供し得るため、配光効率は高くなる。また、ランプの前面にはクリアレンズが配置されるため、空気力学的な構造にも適するとの効果が期待される。」(段落【0039】)

4.対比・判断
(1)本願発明について
本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「車載用前照灯用照明装置」は本願発明の「車両用の光源モジュール」に相当する。以下同様に、「放電灯」は「高輝度放電光源」に、「リフレクタ」は、その機能からみて「光源から放射された光の方向を変えて集束させる反射器」に、「イグナイタ」及び「点灯回路」はその機能からみて「所定の波長および大きさを持つ電圧と電流とを前記光源に供給する電子要素」に、「照明装置」は「光源モジュール」にそれぞれ相当する。引用発明は「リフレクタ」を備えていることから、「光学要素」を備えているといえる。
したがって、本願発明と引用発明は下記の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「車両用の光源モジュールであって、
a)高輝度放電光源と、
b)前記光源から放射された光の方向を変えて集束させる反射器を少なくとも含む光学要素と、
c)所定の波長および大きさを持つ電圧と電流とを前記光源に供給する電子要素とを含む、
光源モジュール。」
(相違点)
本願発明では、「光源は、少なくとも部分的に同型の光源の標準規格パラメータと異なる光学パラメータと、前記標準規格パラメータに適合する電気パラメータとを持ち、前記光源の輝度分布は標準規格から外れており、
前記光源の前記光学パラメータに合わせて、少なくとも反射器を含む前記光学要素の幾何形状を調整することで、前記光源モジュールが、前記標準規格に適合する照明ビームを提供するように構成され」ているのに対し、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

以下、上記相違点について検討する。
(相違点について)
標準規格がない場合には、複数の部品で構成されたものを組み立てる場合に、各構成部品間の接続方法、各構成部品性能等を組み合わせの数だけ設計する必要があるところ、この設計の負荷、煩雑さ等を排除するために構成部品ごとに標準規格を満たしていれば、製造者が異なっていても組み合わせて設計通りの性能が発揮できることを目指して標準規格の考え方が各技術分野で広く採用されているところである。このような状況において、一般に標準規格に適合する部品と適合しない部品とが存在しているところ、当業者であればいずれかを選択することになり、あえて規格に適合しない、規格から外れたものを選ぶことに困難性があるとはいえない。
そして、照明装置を設計する際について検討する。光源が、光源の標準規格パラメータと同じ光学パラメータのものを採用するか、少なくとも部分的に同型の光源の標準規格パラメータと異なる光学パラメータのものを採用するかは、一体として組み付けられた光源モジュールが満たすべき性能、条件、組み立てる際の個々の部品間の相互関係、価格などを総合的に評価し、いずれが利得があるかを勘案し、当業者が適宜選択するものであり、標準規格パラメータに適合する部品を選択せずに、あえて標準規格パラメータと異なる「少なくとも部分的に同型の光源の標準規格パラメータと異なる光学パラメータ」のものを選択することに格別の困難性があるとは認められず、当業者の通常の創作力の発揮の範囲内のことである。また、光源の輝度分布が標準規格から外れている光源か、外れていない光源かのいずれを選択するかにいついても同様である。
次に、「少なくとも部分的に同型の光源の標準規格パラメータと異なる光学パラメータ」の光源を選んだ場合に、優先日前、照明装置設計において「光学要素の幾何形状を調整すること」が当業者にとって容易に想到しえたか否かについて検討する。
本願発明の「光学パラメータに合わせて、少なくとも反射器を含む前記光学要素の幾何形状を調整すること」に関連する本願明細書の段落【0022】には、「標準規格と適合する照明ビームを提供するため、光学要素が前記光源の光学パラメータに合わせて調整される。この調整は、多くの異なる方式、たとえば、反射器の幾何形状を変更したり、開口およびバッフルを利用したりすることによって実現できる。」と記載され、また、同じく関連する本願明細書の段落【0026】には、「光学要素を少なくとも一部が標準規格外である光源に合わせて調整するため、光源と反射器ユニットとは、標準規格出力の照明ビームパターンを提供するように、所定の方法で相対的に位置合わせされ、その位置で恒久的に固定される。このステップは、光学的配列とも呼ばれる。反射器ユニットに対する光源の所定の位置は、たとえば、反射器ユニットに対する光源の位置を変化させながら、出力された光線を計測することによって決定できる。ただし、この決定ステップは、反射器と光源のタイプごとに一度ずつ実行しなければならない。」(【0026】)と記載されている。これらの記載から本願発明は、光源が標準規格と異なる場合には、光源ごとに反射面を調整することを意味しているものである。
ところが、本願の優先日前に頒布された刊行物2には、摘記事項ウ?クの記載、特に「目的の配光値、光源、初期反射面を入力して光源の位置を指定し、このような条件の下で、車両のヘッドランプ及びリアコンビネーションランプの自動設計プログラムの反復作業を通し、光源から約25m離れた地点において目的配光に到達するまでに反射面の複数の制御点を移動させながら、最適の反射面が得られるように設計する。」(摘記事項オ)、「また、上記光源の設定、及びその位置の指定に引き続き、目的配光を数値で入力した後は配光の変化方向を設定して反射鏡を変化させる。こうすると、ヘッドランプ及びリアコンビネーションランプの自動設計プログラムにより反射鏡の変化程度と、変化した反射鏡による現在配光が自動計算されながらシミュレーションが反復される。この時、変化した配光をチェックしながらそのバラツキを補正する一連の過程を反復し、最適の反射面を求めてヘッドランプ及びリアコンビネーションランプが設計される。」(摘記事項カ)と記載されており、これらを含む摘記事項ウ?クの記載に基づくと「光源の設定」、「光源の位置」に応じて、目的配光である照明ビームパターンの規格に適合するまで反射鏡曲面を繰り返しシミュレーションして反射面を設計することが示されており、光源として「少なくとも部分的に同型の光源の標準規格パラメータと異なる光学パラメータと、前記標準規格パラメータに適合する電気パラメータとを持」つ光源を採用した場合であっても、車両用の照明器具の性能が規格を満足するように設計する必要があることは周知の技術常識であることから、前記光源の光学パラメータに応じて、反射面の幾何形状を調整することで照明ビームパターンが標準規格に適合するようにすることは、当業者が容易に想到することである。また、「光源の輝度分布は標準規格から外れて」いる光源を採用した場合であっても、同様に車両用の照明器具の性能が規格を満足するように設計する必要があることは周知の技術常識であることから、前記光源の輝度分布に応じて、反射面の幾何形状を調整することで照明ビームパターンが標準規格に適合するようにすることは、当業者が容易に想到することである。
さらに、本願発明の奏する効果を検討しても、引用発明及び刊行物2に記載された事項から、当業者が予測しうる範囲内のものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、請求項2,3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-02 
結審通知日 2014-04-08 
審決日 2014-04-21 
出願番号 特願2008-553247(P2008-553247)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塚本 英隆  
特許庁審判長 大熊 雄治
特許庁審判官 平田 信勝
小関 峰夫
発明の名称 光源モジュール  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ