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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G |
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管理番号 | 1291474 |
審判番号 | 不服2013-9227 |
総通号数 | 178 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-05-20 |
確定日 | 2014-09-04 |
事件の表示 | 特願2005-343375「携帯電子機器及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月14日出願公開、特開2007-148064〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,平成17年11月29日の出願であって,平成23年10月14日付け拒絶理由通知に対して同年12月19日付けで意見書が提出されるとともに特許請求の範囲及び明細書について補正がなされ(以下,「補正1」という。),平成24年5月14日付け最後の拒絶理由通知に対して同年7月20日付けで意見書が提出されるとともに特許請求の範囲及び明細書について補正がなされ,平成25年2月13日付け(送達日:2月19日)で平成24年7月20日付け手続補正書でした特許請求の範囲及び明細書について補正が却下されるとともに平成24年5月14日付け拒絶理由通知に記載された理由によって拒絶査定がなされ,これに対して平成25年5月20日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに特許請求の範囲及び明細書について補正がなされた(以下,「本件補正」という。)ものである。 その後,当審より,平成26年1月29日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ,これに対して,同年4月7日付けで回答書の提出があった。 2.補正却下の決定 [結論] 本件補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正により,請求項1は次のように補正された。 (補正前) 「複数の自発光素子から構成される画素を多数配列してなる表示部と, 該表示部に表示させる表示画像における全てまたは一部の領域の全ての前記画素に対する輝度を演算し,当該演算した輝度に基づいて,所定の表示の領域を除く,前記全てまたは一部の領域の前記画素の輝度を制御する制御部と, を有することを特徴とする携帯電子機器。」 (補正後) 「複数の自発光素子から構成される画素を多数配列してなる表示部と, 該表示部に表示させる表示画像における全てまたは一部の領域の全ての前記画素に対する輝度に基づいて,前記全てまたは一部の領域のうち,携帯電子機器の状態を示すマークを除いて,前記画素の輝度を制御する制御部と, を有することを特徴とする携帯電子機器。」 上記補正のうち,「輝度を演算し,当該演算した輝度に基づいて」を「輝度に基づいて」とする補正は,拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項(平成24年5月14日付け最後の拒絶理由通知の理由2)に対するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また,「所定の表示の領域を除く,前記全てまたは一部の領域の前記画素の輝度」を「前記全てまたは一部の領域のうち,携帯電子機器の状態を示すマークを除いて,前記画素の輝度」とする補正は,画素の輝度を制御する領域から除く領域を,「所定の表示の領域」から「携帯電子機器の状態を示すマーク」と具体的に限定するものであって,同法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下に検討する。 (2)引用例記載の事項・引用発明 A.引用例1 原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に国内又は外国において頒布された刊行物である特開2002-116732号公報(発明の名称:自発光パネル駆動方法及び装置,出願人:パイオニア株式会社,公開日:平成14年4月19日,以下「引用例1」という。)には,次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。 (a)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【技術分野】本発明は,有機ELパネル等の自発光パネルの駆動方法及び装置に関する。 【0002】 【従来技術】有機ELパネルやプラズマディスプレイパネルなどの自発光パネルは,液晶パネルとは異なり,画素を構成する発光素子が自ら発光するのであり,各発光素子の寿命及び消費電力は,延べ発光時間と発光輝度との積に依存している。従って,自発光パネル駆動装置が,各発光素子の延べ発光時間の短縮や発光輝度の低減をすることが出来れば,自発光パネルの寿命を延ばすことが可能であるのみならず消費電力の低減にも資する。 【0003】そこで,従来から,自発光パネルの長寿命化及び低消費電力化のために種々の工夫がなされて来ているが,一層の工夫が望まれる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】よって,本発明は,自発光パネルの寿命を延ばしかつ省電力化も可能にした自発光パネルの駆動方法及び装置を提供することである。」(段落【0001】-【0004】) (b)「【0007】 【発明の実施の形態】図1は,本発明によるパネル駆動装置を含む送受信装置を示している。この受信装置は,例えば,携帯電話端末等の受信端末に含まれ,アンテナ1を介して送受信部2が通信信号を送受信する。 ・・・(中略)・・・ 【0009】画像表示制御回路7は,データ処理回路3からの動作コマンドに応答して,画像データを同期信号と共に受信して,フラットパネル9を含む画像表示部8を制御して,画像表示動作を司る。フラットパネル9は,例えば,有機EL層等の発光層とこれを挟んで互いに交差するデータ電極群及び走査電極群とを含んでおり,更に,これらの電極群の間に,順次,電圧を印加して電極群の交点における発光層を画素として発光せしめるべく,走査ドライバ10及びデータドライバ11が設けられている。走査ドライバ10は,画像表示制御回路7から供給される走査トリガパルスに同期して走査電極群の各電極に順次走査パルスを印加して走査ドライバとして作用する。なお,かかる有機ELを用いたパネルの例が特開平2000-259125号に開示されている。」(段落【0007】-【0009】) (c)「【0014】駆動データ生成回路24は,同期信号抽出回路21からの同期信号と種別信号抽出回路からの種別信号とに応じて,フレームメモリ23から供給されるフレームデータから駆動データを生成して,これをデータドライバ11に供給する。駆動データ生成回路24は,図3のサブルーチンに示す如く動作する。すなわち,まず,供給される画像フレームデータを一旦取り込む(ステップS1)。次に,当該取り込んだ画像フレームデータの輝度を低減する輝度低減データ処理を行なう(ステップS2)。こうして,輝度低減処理を施された画像フレームデータに基づいて上記した駆動データを生成するのである(ステップS3)。ところで,ステップS2における輝度低減処理は,例えば,取り込んだ画像フレームデータの画素単位の輝度Beが所定の輝度低減率Rだけ低減するようにデータ処理を施すことによってなされ得る。この場合の輝度低減率は,輝度Beの大きさに拘わらずフレーム単位で一律に例えば40%とすることも出来るが,図4に示した如く,輝度Beの大きさに応じた値にフレーム単位で定めることも出来る。図4の例においては,輝度Beが黒レベル0であるときは,低減率Rはゼロであり,輝度Beが低輝度範囲においては,輝度Beの増加につれて緩やかに高くなり,輝度Beが当該低輝度範囲の外にある場合には,輝度Beの増大にほぼ比例して高くなるようにしても良い。また,輝度低減率Rをフレーム単位の平均輝度Bavに応じて,輝度Be全体に亘ってシフトさせても良い。この平均輝度Bavは,(nフレーム中の画素毎の輝度Beの合算)/(nフレームの画素数N)によって得られる。ここで,nは自然数である。 【0015】また,上記した輝度低減データ処理は,全てのフレームについて実行する必要はなく,1フレームおきや数フレームおきに実行することも出来る。要するに,本願発明においては,取り込んだ画素フレームデータを,少なくとも1つのフレーム単位にかつ画像の輪郭を損なわない様に,輝度を低減するデータ処理を施すのである。こうして得られた画素フレームデータに基づいて自発光パネルを駆動するのである。 【0016】図5は,別の駆動データ生成ルーチンを示している。このルーチンにおいては,まず,画像フレームデータを取り込んだ後に,フレーム単位の平均輝度Bavを算出する(ステップS4)。ついで,平均輝度Bavが所定レベルよりも高いか否かを判別する(ステップS5)。もし,平均輝度Bavが所定レベルより高いことを判別した場合,図3における輝度低減データ処理と同様な輝度低減データ処理を実行する(ステップS2)。そして,輝度低減後の画像フレームデータに基づいて駆動データを生成する(ステップS3)。もし,ステップS5において,平均輝度Bavが所定レベル以下であることを判別した場合,取込画像フレームデータに輝度低減処理を施すこと無くこれに基づいて駆動データを生成する(ステップS6)。」(段落【0014】-【0016】) 上記記載(b)の段落【0009】及び【図1】より, ア 「複数の有機EL発光層から構成される画素を多数配列してなる画像表示部8」との技術事項が読み取れる。 上記記載(c)及び【図5】より, イ 「画像表示部8に表示させる画像フレームにおける全ての前記画素に対する輝度に基づいて,前記画像フレームの前記画素の輝度を低減する処理を実行する駆動データ生成回路24」との技術事項が読み取れる。 上記記載(b)の段落【0007】より,上記「画像表示部8」や「駆動データ生成回路24」は「携帯電話端末」に含まれるものである。 以上の技術事項ア,イ及びこの分野における技術常識を総合勘案すると,引用例1には次の発明が記載されているものと認める。 「複数の有機EL発光層から構成される画素を多数配列してなる画像表示部8と, 該画像表示部8に表示させる画像フレームにおける全ての前記画素に対する輝度に基づいて,前記画像フレームの前記画素の輝度を低減する処理を実行する駆動データ生成回路24と, を有する携帯電話端末。」(以下,「引用発明1」という。) B.引用例2 同じく原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に国内又は外国において頒布された刊行物である特開2004-264442号公報(発明の名称:映像表示装置,出願人:キヤノン株式会社,公開日:平成16年9月24日,以下「引用例2」という。)には,次の事項(a)が図面とともに記載されている。 (a)「【0035】 以下,本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。 【0036】 (第1の実施形態) 図1に本発明の第1の実施形態に係る映像表示装置に適用される映像信号処理装置100の主要部の構成を示す。図1は,図14に対応するブロックのみ抜粋して示している。 【0037】 (映像信号処理装置の主要構成) 映像信号処理装置100は,図1に示すように,A/Dコンバータ1,乗算器2,変換テーブル3,フレーム特徴値検出部4,ゲイン計算部5および係数設定部6を備える。 【0038】 A/Dコンバータ1は,入力された映像信号s1をデジタル映像信号s2に変換する。ここでは映像信号s1は,RGBなど,適用するディスプレイ装置の原色に対応した信号とする。映像信号s1が輝度・色差信号の場合には,不図示の色マトリクス回路を用いて,原色信号に変換する。調整回路としての乗算器2は,A/Dコンバータ1が出力するデジタル映像信号s2に,後述する係数設定部6から設定される係数s7を乗算する。非線形変換回路としての変換テーブル3は,ROM,RAMなどのメモリで構成され,乗算器2が出力する信号s3を入力としてメモリのアドレスに対応させ,変換結果を各アドレスに対応するデータとして格納しておくことにより,表示信号s4を出力する。変換テーブル3の変換特性としては,図13と同様のものを用いる。表示輝度特徴値検出回路としてのフレーム特徴値検出部4は,表示信号s4を入力してフレーム毎の平均値を検出し,表示輝度特徴値としての平均輝度信号s5を出力する。輝度抑制値出力回路としてのゲイン計算部5は,平均輝度信号s5を入力して,あらかじめ定められている輝度基準値と比較することにより,平均輝度が輝度基準値を上回っている場合には輝度を抑制するようなゲイン(輝度抑制値)s6を計算して出力する。調整値出力回路としての係数設定部6は,ゲインs6を入力して変換テーブル3の変換特性の逆変換を施し,乗算器2に設定する係数(調整値)s7を出力する。 【0039】 A/Dコンバータ1,乗算器2,変換テーブル3,フレーム特徴値検出部4,ゲイン計算部5および係数設定部6は,各々不図示のタイミング制御部が入力映像信号s1の同期信号をもとに発生する各種タイミング信号に基づいて動作する。 【0040】 (映像信号処理方法) 以下に,係数設定部6における係数算出の方法を含む映像信号処理装置100における映像信号処理方法について説明する。 【0041】 フレーム特徴値検出部4で検出した現フレームの平均輝度をB(t),あらかじめ定められた輝度基準値をB0としたとき,ゲイン計算部5では,式1を用いてゲインG(t)を求める。 【0042】 【数1】 G(t)=MIN(G(t-1)×B_(0)/B(t),1) (式1) ここで,G(t-1)は,前回出力したゲインであり,MIN(a,b)はaとbの小さい方の値を返す関数である。 【0043】 係数設定部6では,ゲインG(t)に変換テーブル3の変換特性の逆変換を施す。本実施の形態では,変換テーブル3の変換特性は,図13に示したように,入力のγ乗で表される。ここでγは1より大きい数値であり,特に1.8から3.0程度が望ましい。一般的には2.2などの値が用いられる。逆変換は,入力のγ乗根で表されるので,係数設定部6が乗算器2に設定する係数s7をK(t)とすると,K(t)は,式2で表される。 【0044】 【数2】 K(t)=^(γ)√G(t) (式2) このK(t)を,乗算器2でデジタル映像信号s2に乗算することにより,ディスプレイ装置に表示される表示信号s4の平均輝度は,輝度基準値以下に抑制される。 【0045】 上述の説明では,フレーム特徴値検出部4はフレーム毎の表示信号の平均値を検出するとしたが,表示信号の総和,所定値を超える表示信号の数,色別の平均値または総和,各色表示信号の輝度成分の総和または平均値などを検出してゲイン計算部5に出力してもよい。また,フレーム特徴値検出部4は,1画面を複数の領域に分け,領域別に平均値または総和を検出する,中心部のみの平均値または総和を検出する,などの構成をとってもよい。 【0046】 以上説明したように,本実施形態によれば,実際の表示信号からフレーム特徴値を得るので,正確な輝度評価値を得ることができるとともに,速やかに収束させることができるので,逐次平均輝度が変化する動画像においても良好なABL制御が可能となる。 【0047】 (映像表示装置の全体構成) 図2に,本発明の実施形態に係る映像表示装置全体の構成を示す。同図において,一点鎖線で囲まれた部分が図1で説明した映像信号処理装置100であって,図1では省略した構成も図示している。図1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。 【0048】 映像信号処理装置100は,図1に示した構成に加えて,輪郭強調回路7,色マトリクス変換回路8,加算器9,文字情報合成回路10を備える。 【0049】 輪郭強調回路7は,入力した映像信号のエッジを強調する処理を行う。色マトリクス変換回路8は,入力映像信号が輝度・色差信号の場合には,RGB信号に変換する。ただし,入力映像信号がRGB信号の場合には色マトリクス回路8は上記変換処理を行わない。加算器9は,システム制御部21が設定するオフセット値を各信号に加算する。加算器9による処理は,主にブライトネス調整などに用いられる。文字情報合成回路10は,一般にOSD(On Screen Display)と呼ばれ,システム制御部21の設定に応じて,文字情報やアイコンなどを映像信号に重畳する。文字情報合成回路10は,ABL制御や画質調整によって合成する文字やアイコンの輝度が変わると視覚的に違和感があるので,乗算器2および加算器8の影響を受けないよう,これらの後段に配置する。近年,文字情報合成回路9で合成する情報が大面積に及ぶようになっており,表示信号全体に 占める割合が大きくなっているため,フレーム特徴値検出部4は,文字情報合成回路10よりも後段に配置する。 【0050】 映像表示装置は,映像信号処理装置100に加えて,表示パネル11,PWMパルス制御部12,Vf制御部13,列配線スイッチ部14,行選択制御部15,行配線スイッチ部16,高圧発生部17,ユーザインターフェース回路20,システム制御部21およびタイミング制御部22を備える。」(段落【0035】-【0050】) 上記記載(a)及び【図2】,並びにこの分野における技術常識を考慮すると,引用例2には次の発明が記載されているものと認める。 「表示パネルに表示させるフレームの全ての画素に対する輝度に基づいて,前記フレームのうち,OSDにより重畳される文字情報やアイコンを除いて,前記画素の輝度を低減する処理を実行する映像表示装置。」(以下,「引用発明2」という。) (3)対比 本願補正発明と引用発明1とを,主たる構成要件毎に順次対比する。 ア 引用発明1の「複数の有機EL発光層から構成される画素」,「画像表示部8」は,それぞれ本願補正発明の「複数の自発光素子から構成される画素」,「表示部」に相当する。 イ 引用発明1の「画像フレーム」は,表示画像における全ての領域であることは明らかであるから,本願補正発明の「表示画像における全てまたは一部の領域」に含まれる。 ウ 引用発明1の「画素の輝度を低減する処理」が輝度の制御であることは明らかであるから,引用発明1の「画素の輝度を低減する処理を実行する」ことは,後述する相違点を除いて,本願補正発明の「画素の輝度を制御する」ことに相当し,また,引用発明1の「駆動データ生成回路」は本願補正発明の「制御部」に相当する。 エ 引用発明1の「電話端末」が「電子機器」であることは明らかであるから,引用発明1の「携帯電話端末」は本願補正発明の「携帯電子機器」に相当する。 してみると,両者の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 (一致点) 「複数の自発光素子から構成される画素を多数配列してなる表示部と, 該表示部に表示させる表示画像における全てまたは一部の領域の全ての前記画素に対する輝度に基づいて,前記全てまたは一部の領域の前記画素の輝度を制御する制御部と, を有することを特徴とする携帯電子機器。」 (相違点) 本願補正発明では「携帯電子機器の状態を示すマークを除いて」画素の輝度を制御するのに対し,引用発明1ではそのような制御を行っていない点。 (4)判断 上記相違点につき検討する。 まず,引用発明1のような携帯電話端末において,現在の電池残量やアンテナ受信感度等の状態を「携帯電子機器の状態を示すマーク」として表示部にアイコン表示することは常套手段である。 そして,引用発明2を再掲すると,引用例2には,「表示パネルに表示させるフレームの全ての画素に対する輝度に基づいて,前記フレームのうち,OSDにより重畳される文字情報やアイコンを除いて,前記画素の輝度を低減する処理を実行する映像表示装置。」が記載されており,引用発明1と引用発明2は,いずれも表示画面の全画素の輝度に基づいて輝度調整を行う装置であって同じ技術分野に属する発明であるから,引用発明1に上記常套手段である「携帯電子機器の状態を示すマーク」のアイコン表示を行わせる際に引用発明2を適用し,アイコン表示される「携帯電子機器の状態を示すマーク」を除いて画素の輝度を制御する構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。 そして,本願補正発明の作用効果も,引用発明1及び引用発明2から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。 (5)まとめ 以上のとおり,本願補正発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし2に係る発明は,補正1によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,その請求項1に係る発明は次のとおりである。 「複数の自発光素子から構成される画素を多数配列してなる表示部と, 該表示部に表示させる表示画像における全てまたは一部の領域の全ての前記画素に対する輝度を演算し,当該演算した輝度に基づいて,所定の表示の領域を除く,前記全てまたは一部の領域の前記画素の輝度を制御する制御部と, を有することを特徴とする携帯電子機器。」(以下,「本願発明」という。) (2)原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,概略,特許請求の範囲に記載の各発明は,いずれも,本願の出願前に国内又は外国において頒布された引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項により特許を受けることができない,というものである。 (3)引用例記載の事項・引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例記載の事項及び引用発明は,前記「2.(2)引用例記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。 (4)対比・判断 本願発明は,前記「2.(1)補正の内容」で検討したとおり,本願補正発明の「輝度に基づいて」を「輝度を演算し,当該演算した輝度に基づいて」とするとともに,「所定の表示の領域」を「携帯電子機器の状態を示すマーク」と具体的に限定する構成を省いたものである。 ここで,引用例1には「図5は,別の駆動データ生成ルーチンを示している。このルーチンにおいては,まず,画像フレームデータを取り込んだ後に,フレーム単位の平均輝度Bavを算出する(ステップS4)。」(段落【0016】)と記載されているから,引用発明1は本願発明と同様に「輝度を演算し,当該演算した輝度に基づいて」画素の輝度を制御するものであり,上記「輝度に基づいて」を「輝度を演算し,当該演算した輝度に基づいて」とする点は本願発明と引用発明1との間の相違点ということはできない。 そうすると,本願発明の「所定の表示の領域」を「携帯電子機器の状態を示すマーク」と具体的に限定する本願補正発明が前記「2.(3)対比」,「2.(4)判断」で説示したとおり引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-07-03 |
結審通知日 | 2014-07-08 |
審決日 | 2014-07-22 |
出願番号 | 特願2005-343375(P2005-343375) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐野 潤一 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
樋口 信宏 新川 圭二 |
発明の名称 | 携帯電子機器及びその制御方法 |
代理人 | 志賀 正武 |