ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q |
---|---|
管理番号 | 1291476 |
審判番号 | 不服2013-12155 |
総通号数 | 178 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-06-26 |
確定日 | 2014-09-04 |
事件の表示 | 特願2008-536161「再帰的教育:客観的データまたは主観的データにリンクした教材の自動配信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月 3日国際公開、WO2007/049163、平成21年 3月26日国内公表、特表2009-512929〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2006年10月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年10月24日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成23年9月13日付けの拒絶理由通知に対して平成24年3月19日付けで手続補正がなされ,平成24年7月6日付けの拒絶理由通知に対して平成25年1月10日付けで手続補正がなされたが,同年2月19日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成25年6月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,さらに平成25年8月20日付けの審尋に対して同年11月27日付けで回答書が提出されたものである。 第2 平成25年6月26日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年6月26日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(下線は,補正の個所を示すものとして審判請求人が付したものである。) 「 【請求項1】 健康管理システムであって: 健康管理目標の達成に関する教育コンテンツセッションと; 前記コンテンツセッションを提示するように構成されたユーザインターフェイスと; 関心アイテムを含む少なくとも1つの入力を提供する,ユーザからの少なくとも1つのフィードバックパスであって,前記少なくとも1つのフィードバックパスは,バイオメトリック装置を含み,前記少なくとも1つの入力は,トリガーイベントを含む前記バイオメトリック装置が取得したバイオメトリックデータを含むフィードバックパスと; 少なくとも前記関心アイテムとコンテンツフロールールとに基づき前記コンテンツセッションを自動的に選択し,前記ユーザインターフェイスを介して前記ユーザのために,前記選択されたコンテンツセッションのプレゼンテーションを開始するように構成されたコンテンツフローエンジンと; 取得したバイオメトリックデータ中に特定されたトリガーイベントに応答して,前記ユーザ及び第三者の少なくとも一方に送信される再帰的調査を生成する調査サーバとを有するシステム。 【請求項2】 前記トリガーイベントは: バイタルサイン測定値が所定しきい値を越えていること; バイタルサイン測定値が所定基準を満たすこと;及び バイタルサイン測定値がそのバイタルサインの前の測定値に基づく動的しきい値を越えていることのうちの1つである,請求項1に記載の健康管理システム。 【請求項3】 前記調査は,調査,クイズ,テスト,または前記ユーザインターフェイスが提示した少なくとも1つの質問を含む質問表を含み,前記少なくとも1つの入力はユーザインターフェイスを介するユーザ応答を含む,請求項1に記載の健康管理システム。 【請求項4】 前記トリガーイベントは: バイタルサイン測定値が所定しきい値を越えていること; 前記調査への回答が所定基準を満たすこと; バイタルサイン測定値が所定基準を満たすこと;及び バイタルサイン測定値がそのバイタルサインの前の測定値に基づく動的しきい値を越えていることのうちの1つである,請求項1に記載の健康管理システム。 【請求項5】 前記コンテンツセッションと少なくとも1つの患者プロファイルを格納する教育サーバをさらに含み,前記コンテンツフローエンジンは前記患者プロファイルに基づき前記コンテンツセッションを選択する,請求項1に記載の健康管理システム。 【請求項6】 少なくとも前記教育サーバと前記ユーザインターフェイスと前記コンテンツフローエンジンとを化体するコンピュータをさらに含み,前記少なくとも1つの患者プロファイルはちょうど一つの患者プロファイルを有する,請求項5に記載の健康管理システム。 【請求項7】 前記少なくとも1つの患者プロファイルは複数の患者プロファイルを含み,前記教育サーバは相異なる複数の患者と関連するユーザインターフェイスと通信し,各患者のプロファイルは対応する患者プロファイルにより示される,請求項5に記載の健康管理システム。 【請求項8】 前記コンテンツフロールールは,前記少なくとも1つの入力の選択された値またはその範囲に応じてコンテンツセッションを要求するルールを含む,請求項1に記載の健康管理システム。 【請求項9】 前記ユーザインターフェイスは,前記コンテンツセッションを表示するテレビジョンセットを含み,前記少なくとも1つのフィードバックパスはテレビジョンリモートコントロールを含む,請求項1に記載の健康管理システム。 【請求項10】 健康管理システムであって: 複数の患者と通信する教育サーバであって,少なくとも: 健康管理目標の達成に関する複数のコンテンツセッションと, それぞれ患者に対応する複数の患者プロファイルとを有し, 前記患者からの少なくとも1つのフィードバック入力とコンテンツフロールールとに基づき,各患者へのコンテンツセッションのプレゼンテーションを制御するように構成されたコンテンツフローエンジンをさらに含む教育サーバと, 複数のバイオメトリック装置であって,前記患者からの前記少なくとも1つのフィードバック入力は,前記患者をモニターする前記複数のバイオメトリックモニターの少なくとも1つにより供給される,複数のバイオメトリック装置と, 取得したバイオメトリックデータ中に特定されたトリガーイベントに応答して,前記ユーザ及び第三者の少なくとも一方に送信される再帰的調査を生成する調査サーバと を有する健康管理システム。 【請求項11】 さらに,前記バイオメトリック装置の少なくとも1つとマニュアルの患者入力からトリガーイベントをモニターする測定サーバを含み,前記測定サーバは前記コンテンツフローエンジンに前記モニターされたトリガーイベントと前記対応する患者の患者プロファイルとに応じて前記コンテンツセッションを選択させる,請求項10に記載の健康管理システム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 健康管理システムであって: 健康管理目標の達成に関する教育コンテンツセッションと; 前記コンテンツセッションを提示するように構成されたユーザインターフェイスと; 関心アイテムを含む少なくとも1つの入力を提供する,ユーザからの少なくとも1つのフィードバックパスと; 少なくとも前記関心アイテムとコンテンツフロールールとに基づき前記コンテンツセッションを自動的に選択し,前記ユーザインターフェイスを介して前記ユーザのために,前記選択されたコンテンツセッションのプレゼンテーションを開始するように構成されたコンテンツフローエンジンと; 取得したバイオメトリックデータ中に特定されたトリガーイベントに応答して,前記ユーザ及び第三者の少なくとも一方に送信される再帰的調査を生成する調査サーバとを を有するシステム。 【請求項2】 前記少なくとも1つのフィードバックパスは,バイオメトリック装置を含み,前記少なくとも1つの入力は,前記トリガーイベントを含む前記バイオメトリック装置が取得したバイオメトリックデータを含む,請求項1に記載の健康管理システム。 【請求項3】 前記トリガーイベントは: バイタルサイン測定値が所定しきい値を越えていること; バイタルサイン測定値が所定基準を満たすこと;及び バイタルサイン測定値がそのバイタルサインの前の測定値に基づく動的しきい値を越えていることのうちの1つである,請求項2に記載の健康管理システム。 【請求項4】 前記調査は,調査,クイズ,テスト,または前記ユーザインターフェイスが提示した少なくとも1つの質問を含む質問表を含み,前記少なくとも1つの入力はユーザインターフェイスを介するユーザ応答を含む,請求項1に記載の健康管理システム。 【請求項5】 前記トリガーイベントは: バイタルサイン測定値が所定しきい値を越えていること; 前記調査への回答が所定基準を満たすこと; バイタルサイン測定値が所定基準を満たすこと;及び バイタルサイン測定値がそのバイタルサインの前の測定値に基づく動的しきい値を越えていることのうちの1つである,請求項1に記載の健康管理システム。 【請求項6】 前記コンテンツセッションと少なくとも1つの患者プロファイルを格納する教育サーバをさらに含み,前記コンテンツフローエンジンは前記患者プロファイルに基づき前記コンテンツセッションを選択する,請求項1に記載の健康管理システム。 【請求項7】 少なくとも前記教育サーバと前記ユーザインターフェイスと前記コンテンツフローエンジンとを化体するコンピュータをさらに含み,前記少なくとも1つの患者プロファイルはちょうど一つの患者プロファイルを有する,請求項6に記載の健康管理システム。 【請求項8】 前記少なくとも1つの患者プロファイルは複数の患者プロファイルを含み,前記教育サーバは相異なる複数の患者と関連するユーザインターフェイスと通信し,各患者のプロファイルは対応する患者プロファイルにより示される,請求項6に記載の健康管理システム。 【請求項9】 前記コンテンツフロールールは,前記少なくとも1つの入力の選択された値またはその範囲に応じてコンテンツセッションを要求するルールを含む,請求項1に記載の健康管理システム。 【請求項10】 前記ユーザインターフェイスは,前記コンテンツセッションを表示するテレビジョンセットを含み,前記少なくとも1つのフィードバックパスはテレビジョンリモートコントロールを含む,請求項1に記載の健康管理システム。 【請求項11】 健康管理システムであって: 複数の患者と通信する教育サーバであって,少なくとも: 健康管理目標の達成に関する複数のコンテンツセッションと, それぞれ患者に対応する複数の患者プロファイルとを有し, 前記患者からの少なくとも1つのフィードバック入力とコンテンツフロールールとに基づき,各患者へのコンテンツセッションのプレゼンテーションを制御するように構成されたコンテンツフローエンジンをさらに含む教育サーバと, 取得したバイオメトリックデータ中に特定されたトリガーイベントに応答して,前記ユーザ及び第三者の少なくとも一方に送信される再帰的調査を生成する調査サーバと を有する健康管理システム。 【請求項12】 さらに,複数のバイオメトリック装置を含み,前記患者からの前記少なくとも1つのフィードバック入力は,前記患者をモニターする前記複数のバイオメトリックモニターの少なくとも1つにより供給される,請求項11に記載の健康管理システム。 【請求項13】 さらに,前記バイオメトリック装置の少なくとも1つとマニュアルの患者入力からトリガーイベントをモニターする測定サーバを含み,前記測定サーバは前記コンテンツフローエンジンに前記モニターされたトリガーイベントと前記対応する患者の患者プロファイルとに応じて前記コンテンツセッションを選択させる,請求項12に記載の健康管理システム。」 (3)補正の目的について 本件補正は,補正前の請求項1の「ユーザからの少なくとも1つのフィードバックパス」を「ユーザからの少なくとも1つのフィードバックパスであって,前記少なくとも1つのフィードバックパスは,バイオメトリック装置を含み,前記少なくとも1つの入力は,トリガーイベントを含む前記バイオメトリック装置が取得したバイオメトリックデータを含むフィードバックパス」と限定的に減縮して補正後の請求項1とするものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し,補正前の請求項1の「調査サーバとをを有する」を「調査サーバとを有する」と誤記を訂正するものであるから,改正前特許法第17条の2第4項第3号に規定される「誤記の訂正」を目的とするものに該当し,補正前の請求項2を削除して,補正前の請求項3?10を補正後の請求項2?9とするものであるから,改正前特許法第17条の2第4項第1号に規定される「請求項の削除」を目的とするものに該当し,補正前の請求項11を削除して,補正前の請求項12?13を補正後の請求項10?11とするものであるから,改正前特許法第17条の2第4項第1号に規定される「請求項の削除」を目的とするものに該当する。 2.補正の適否について そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記「第2[理由]1.(1)」の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (2)引用例 ア 引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-011329号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。以下同様である。) (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は,健康管理を支援する健康管理支援装置,健康管理支援システム,健康管理支援方法および健康管理支援プログラムに関する。」 (イ)「【0067】 図1は本発明の一実施の形態に係る健康管理支援システムの概要を示す模式図である。 【0068】 本実施の形態に係る健康管理支援システムにおいて,ユーザに対して定期的に問診が実行される。ユーザは,その問診に対して自身の現状を回答する。ここで,問診は,生活習慣(食事,運動,服薬,飲酒,喫煙,休養等)に関する質問項目,身体状態(体調,自覚症状等)に関する質問項目,メンタル状態(精神状態)(気分,ストレス,やる気等)に関する質問項目等を含む。 【0069】 問診は,主としてユーザ端末からの音声出力または質問表の提示により行われ,回答はユーザ端末への音声入力または質問表への入力により行われる。入力された音声は音声認識によりデータに変換される。 【0070】 また,ユーザは,定期的に自身のバイタルデータおよび個人情報(ユーザ基本データおよびユーザ特性データ)を入力する。ここで,バイタルデータとは,血圧,血糖値,体重,ウエスト値,コレステロール値等の客観的に測定可能な生理量に関するデータ(生理量データ)である。バイタルデータは,測定機器から自動的にユーザ端末に入力され,またはユーザのキー操作または音声によりユーザ端末に入力される。例えば,ユーザが体重計に乗ると,体重計の計測データがユーザ端末に無線通信により自動的に送信される。個人情報とは,性別,年齢,身長,生年月日,病歴,家族歴,服用状況等の自身に固有な情報である。」 (ウ)「【0078】 図2は本発明の一実施の形態に係る健康管理システムの構成を示すブロック図である。 【0079】 図2の健康管理システムは,サーバ1およびユーザ端末2を含む。サーバ1は例えばサービスセンターに設置される。ユーザ端末2は例えばパーソナルコンピュータからなり,ユーザの家庭内に設置される。 【0080】 サーバ1は,演算部11,内部記憶装置12および通信インタフェース13を含む。演算部11は,CPU(中央演算処理装置),半導体メモリ等からなる。内部記憶装置12は,例えばハードディスク装置等からなる。演算部11および内部記憶装置12は,通信インタフェース13を介してネットワーク3に接続されている。ネットワーク3は,インターネット,公衆回線網等からなる。 【0081】 ユーザ端末2は,演算部21,内部記憶装置22および通信インタフェース23を含む。また,ユーザ端末2は,表示部24,データ入力部25,データ変換部26,音声入力部27,音声認識部28,音声解析部29,音声合成部30,音声出力部31,GUI(グラフィカルユーザインタフェース)41,マイク42およびスピーカ43を含む。 【0082】 演算部21は,CPU,半導体メモリ等からなる。内部記憶装置22は,例えば,ハードディスク装置等からなる。演算部21および内部記憶装置22は通信インタフェース23を介してネットワーク3に接続されている。 【0083】 (途中省略) 【0087】 GUI41は,目標値,進捗状況等の表示を行うためおよびバイタルデータの入力を行うために用いられる。マイク42は,問診回答,バイタルデータの入力等のために用いられる。スピーカ43は,アドバイス,問診,リラクゼーションプログラムの音声出力のために用いられる。」 (エ)「【0099】 次に,演算部11は,ユーザ端末2を通してユーザにバイタルデータ(病院検査データ)の入力を指示する(ステップS12)。ここで,バイタルデータとは,体重,血圧,血糖値,BMI(体重(kg)/身長(m)2 ),歩数等の身体に関する測定値をいう。図14はバイタルデータの一例を示す図である。ユーザは,ユーザ端末2によりバイタルデータを入力する。入力されたバイタルデータは,サーバ1に送信される。」 (オ)「【0106】 図6はサーバ1の演算部11による基本処理を示すフローチャートである。 【0107】 まず,サーバ1の演算部11は,ユーザ端末2を通してユーザに個人データベース122に記録されたユーザ作業推奨内容を提示する(ステップS21)。 【0108】 次に,サーバ1の演算部11は,問診の実行(ステップS22),バイタルデータの取得(ステップS23)および音声解析(ステップS24)をユーザ端末2に指令する。問診の実行の際には,演算部11は,個人データベース122に記録された行動目標に基づいて生活習慣問診,メンタル問診および身体問診の質問項目から該当する質問項目を選択し,選択した質問項目をユーザ端末2に表示または音声出力する。また,バイタルデータの入力の際には,演算部11は,個人データベース122に記録された行動目標に基づいて該当する入力データ項目を選択し,選択した入力データ項目をユーザ端末2に表示または音声出力する。 【0109】 問診の実行および音声解析の詳細については後述する。バイタルデータの取得では,ユーザ端末2の演算部21が,GUI41,表示部24およびデータ入力部25を用いてユーザによるバイタルデータの入力を支援する。演算部21は,問診回答,バイタルデータおよび音声解析結果を内部記憶装置22に記憶するとともにサーバ1に送信する。サーバ1の演算部11は,ユーザ端末2から受信した問診回答,バイタルデータおよび音声解析結果をそれぞれ問診履歴,バイタル履歴および音声解析履歴として履歴データベース121に記録する。なお,問診の実行,バイタルデータの取得および音声解析の順序は限定されない。 【0110】 演算部11は,個人データベース122の内容および履歴データベース121に記録された問診回答,バイタルデータおよび音声解析結果に基づいてユーザの状態判定を行う(ステップS25)。ここで,ユーザの状態とは,体調,感情,モチベーション等を含む。ユーザの状態判定の詳細については後述する。 【0111】 次に,演算部11は,ユーザの状態判定の結果に基づいてユーザ端末2を通してユーザにアドバイスを提示する(ステップS26)。アドバイスの提示の詳細については後述する。」 (カ)「【0127】 図9はサーバ1の演算部11によるユーザの状態判定処理を示すフローチャートである。 【0128】 まず,サーバ1の演算部11は,個人データベース122を参照する(ステップS61)。この場合,演算部11は,個人データベース122に記録された個人プロフィール一覧および動作目標を参照する。 【0129】 次に,演算部11は,個人データベース122に記録された個人プロフィール一覧および動作目標に基づいて判定しきい値を決定する(ステップS62)。ここで,判定しきい値とは,各バイタルデータの値(バイタル値)が正常であるか否かを判定する際の基準となる値である。判定しきい値は,例えば,血圧の上限,体重の上限,血糖値の上限,歩数の下限等である。この判定しきい値は,ユーザごとに異なる。例えば,太った人の体重の判定しきい値は,最初は高く設定し,徐々に低くする。 【0130】 次に,演算部11は,入力されたバイタルデータから要注意バイタルデータを抽出する(ステップS63)。ここで,要注意バイタルデータとは,上限を示す判定しきい値よりも高いバイタルデータまたは下限を示す判定しきい値よりも低いバイタルデータである。 【0131】 次に,演算部11は,問診回答から要注意問診回答を抽出する(ステップS64)。ここで,要注意問診回答とは,生活習慣問診の回答,メンタル問診の回答および身体問診の回答のうち健康上否定的な回答である。例えば,「お腹いっぱい食べてしまうことがありますか。」という質問項目に対して「よくある」という回答は,要注意問診回答となる。 【0132】 さらに,演算部11は,要注意バイタルデータおよび要注意問診回答に基づいてリスク一覧を作成する(ステップS65)。ここで,リスク一覧は,要注意バイタルデータおよび測定日時ならびに要注意問診回答およびその問診日時を含む。図20はリスク一覧の一例を示す図である。リスク一覧は,個人データベース122に記録される。 【0133】 図10はサーバ1の演算部11によるアドバイス提示処理を示すフローチャートである。 【0134】 まず,サーバ1の演算部11は,個人データベース122に記録されたリスク一覧を参照する(ステップS71)。 【0135】 次に,演算部11は,リスク一覧に基づいてアドバイスデータベース125に記録されたアドバイス項目から該当するアドバイス項目を選択する(ステップS72)。 【0136】 この場合,アドバイスデータベース125には,バイタルデータおよびメンタル状態に基づくアドバイステーブルTB1,バイタルデータおよび生活習慣に基づくアドバイステーブルTB2およびバイタルデータおよび身体状態に基づくアドバイステーブルTB3が格納されている。演算部11は,リスク一覧に基づいてアドバイステーブルTB1,TB2,TB3からアドバイス項目を選択する。図21はアドバイステーブルTB1の一例を示す図,図22はアドバイステーブルTB2の一例を示す図,図23はアドバイステーブルTB3の一例を示す図である。 【0137】 そして,演算部11は,選択したアドバイス項目をユーザ端末2に表示する(ステップS73)。図24はアドバイスの一例を示す図である。」 上記摘記事項(ア)?(カ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例1には,次のとおりの発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ユーザの健康管理を支援する健康管理支援システムであって, 健康管理システムは,サービスセンターに設置されるサーバ1と,当該サーバ1とネットワーク3を介して接続され,ユーザの家庭内に設置されるユーザ端末2とを含み, ユーザ端末2は,目標値,進捗状況等の表示を行うためおよびバイタルデータの入力を行うために用いられるGUI41と,アドバイスや問診等の音声出力のために用いられるスピーカ43とを含んでおり, サーバ1の演算部11は, 個人データベース122に記録された行動目標に基づいて生活習慣問診,メンタル問診および身体問診の質問項目から該当する質問項目を選択して,選択した質問項目をユーザ端末2に表示または音声出力して問診を実行するとともに,個人データベース122に記録された行動目標に基づいて該当する入力データ項目を選択して,選択した入力データ項目をユーザ端末2に表示または音声出力してバイタルデータの取得を行い, ここで,問診は,食事,運動,服薬,飲酒,喫煙,休養など生活習慣に関する質問項目,気分,ストレス,やる気などメンタル状態に関する質問項目,および体調,自覚症状など身体状態に関する質問項目を含み,問診は,主としてユーザ端末からの音声出力または質問表の提示により行われ,回答はユーザ端末への音声入力または質問表への入力により行われるものであり, また,バイタルデータとは,血圧,血糖値,身長,体重,ウエスト値,コレステロール値等の客観的に測定可能な生理量に関するデータであり,バイタルデータは,測定機器から自動的にユーザ端末に入力されるものであり, 問診回答およびバイタルデータがユーザ端末2からサーバ1に送信されると, サーバ1の演算部11は, ユーザ端末2から受信した問診回答およびバイタルデータをそれぞれ問診履歴およびバイタル履歴として履歴データベース121に記録し, 個人データベース122に記録された個人プロフィール一覧および動作目標に基づいて,各バイタルデータの値が正常であるか否かを判定する際の基準となる判定しきい値,例えば,血圧の上限,体重の上限,血糖値の上限,歩数の下限等を決定し, 入力されたバイタルデータから,上限を示す判定しきい値よりも高いバイタルデータまたは下限を示す判定しきい値よりも低いバイタルデータを要注意バイタルデータとして抽出し, 問診回答から,生活習慣問診の回答,メンタル問診の回答および身体問診の回答のうち健康上否定的な回答である要注意問診回答を抽出し, 要注意バイタルデータおよび要注意問診回答に基づいて,要注意バイタルデータおよび測定日時ならびに要注意問診回答およびその問診日時を含むリスク一覧を作成し, リスク一覧に基づいて,アドバイスデータベース125格納されている,バイタルデータおよびメンタル状態に基づくアドバイステーブル(TB1),バイタルデータおよび生活習慣に基づくアドバイステーブル(TB2),およびバイタルデータおよび身体状態に基づくアドバイステーブル(TB3)からアドバイス項目を選択し, 選択したアドバイス項目をユーザ端末2に表示する, システム。」 イ 引用例2 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-30335号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。 (ア)「【0006】そこで,本発明の目的は,食事の栄養指導を行うことができる健康相談支援システム,健康相談システム,方法およびプログラムを提供することにある。」 (イ)「【0022】図1は本発明の健康相談支援システムを含む全体のシステム(健康相談システム)の構成を示す。図1において,10は,健康相談支援システムであり,サーバ11および共有データベース(本発明の記憶手段共有DBと略記する)12を有する。サーバ11は,後述のクライアントと通信を行うほか,健康相談に係わる支援処理を実行する。共有DB12は,後述のクライアントに対して提供するデータや,サーバ11が実行する支援処理で使用するデータを記憶している。サーバ11および共有DB12については後で詳細に説明する。 【0023】20,30,40はクライアントであり,汎用のパーソナルコンピュータなど通信機能を有する情報処理機器を使用することができる。クライアント20は健康相談者(患者と称することがある)が使用する。健康相談者は,食事の電子画像(イメージを)をデジタルカメラなどにより取得して,クライアント20を介して健康支援システム10の共有DB12に登録する。 【0024】クライアント30は栄養士(ネット栄養士と呼ぶことがある)が使用する。 (途中省略) 【0025】クライアント40は医療スタッフが使用するクライアントである。(以下省略)」 (ウ)「【0030】バイタルデータDB102は,健康相談者から送られたバイタルデータ,すなわち,健康相談者の健康に関連する個人的測定データ,たとえば,身長,体重,血圧,血糖値等のデータを健康相談者ごとに保存する。バイタルデータには健康相談者の氏名,送付日などが付加情報として付加される。」 (エ)「【0082】(C)マルチメディアコンテンツの配信による栄養指導 上述実施例では健康相談者(ユーザ)が送付した食事画像を用いた栄養指導方法を述べたが,ここでは共有DBに蓄積されている教育用のマルチメディアコンテンツ,例えばビデオコンテンツ,メッセージテキスト,サウンドコンテンツなどを用いた栄養指導の方法について述べる。 【0083】本実施形態の例を図13を用いて説明する。栄養アドバイザ(医療スタッフ)は自己のクライアント上で健康相談者の食事画像,バイタルデータ,栄養分析データを表示し,その時点において健康相談者(ユーザ)の栄養指導に適したビデオコンテンツ,コメントコンテンツ,サウンドコンテンツを共有DBから読み出し自己のクライアントに表示させて選択する。これらのコンテンツは共有DBから読み出すだけではなく栄養アドバイザ(医療スタッフ)が自己のクライアント上で作成したものを新たに共有DBに登録してもよい。このようにして選択したコンテンツをマルチメディア合成プログラムに入力し,例えばSMILE形式で記述されるマルチメディアコンテンツを作成し共有DBに格納する。 【0084】健康相談者(ユーザ)は登録されたマルチビデオコンテンツをクライアントで読み出して,再生用プログラムにより図13の左側に示すようにクライアントからビデオコンテンツ,メッセージテキスト,サウンドコンテンツを再生出力させることができる。なお,メッセージ付き食事電子画像やメッセージが付加されていない共有DB上の食事電子画像は,上述したように医療スタッフ,健康相談者,ネット栄養士がクライアントから読み出す形態を説明したが,健康相談支援システムから関係者のクライアントに配信してもよい。」 上記摘記事項(ア)?(エ)によれば,引用例2には,「健康相談システムにおいて,医療スタッフが,健康相談者の食事画像,健康相談者の身長,体重,血圧,血糖値等のバイタルデータ,栄養分析データを参照して健康相談者の栄養指導に適したビデオコンテンツ,コメントコンテンツ,サウンドコンテンツを選択し,選択したコンテンツから教育用のマルチメディアコンテンツを作成して健康相談者に再生出力させる,栄養指導の方法。」との事項(以下,「引用例2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 ウ 引用例3 原査定の拒絶の理由に引用文献5として引用された特開2003-290176号公報(以下,「引用例3」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 生体情報を検出し,信号として出力する検出回路と, 前記検出回路からの出力信号を記憶すると共に少なくともひとつの質問とこの質問に対する回答を記憶する記憶手段と, 前記質問を表示する表示部と, 表示された質問に対し回答を入力する入力手段と, 適時前記質問を前記表示部に表示させるとともに,前記入力手段により入力された回答を時系列的に前記記憶装置に記憶させる制御回路,を有することを特徴とする携帯型生体情報収集装置。」 (イ)「【請求項6】 前記検出回路は生体の体動を検出する加速度センサであることを特徴とする請求項1記載の携帯型生体情報収集装置。」 (ウ)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は,装着者の日常生活における生体情報を連続的および時系列的に収集する携帯型生体情報収集装置に関する。」 (エ)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】従来の生体情報モニタリング装置によれば,体動や活動量の変化または心拍,体温と言った人の生体情報を1日や週の単位で客観的に計測することができる。しかしながら,なぜ活動的だったのか,と言った原因に関わるような主観的な情報やその時の気分はどうであったのかと言った精神情報を得ることはできないと言う課題を有している。このような主観的な情報や精神情報(以下まとめて精神情報とする)を得るには,医師による診断時の問診または調査票によるのが一般的である。診断時の問診や調査票によれば,患者の精神状態を聞き出すことは可能であるが,過去に遡って事細かに知ることは大変難しく,得られた生体情報の変動にそれぞれ対応した精神情報の変動を得ることはできない。また,常に問診票を持ち歩き,定期的に記入するようにすれば時系列的な精神情報を得ることもできるが,このようなやり方は大変煩わしく,日常生活の中では問診票を忘れたりするようなことが往々にして生じる。また,従来のように生体情報と精神情報を別々に得たのでは,生体情報に変化が生じたタイミングですかさず問診を行うことができないため,重要な情報を取りこぼす恐れがあった。本発明の目的は,健康管理や診断,治療の手助けとなるべく,日常生活における生体情報を連続的に計測すると共に,適時問診により必要な精神情報を効率よく収集する,人体に装着可能な携帯型生体情報収集装置を提供することに有る。」 (オ)「【0008】 (途中省略) 具体的な設定データとしては,生体情報の検出周期Tsや検出感度,問診周期Tmと,生体情報に変化が生じた時に問診を開始するための閾値Cと平均化係数Nの設定と,問診をスキップするための閾値Sの設定を行う。 (以下省略)」 (カ)「【0015】 (途中省略) 閾値Cは前記の周期Tmとは別に設定されるもので,この値を設定しておくと,生体情報に閾値C以上の変化が生じた時に問診を開始することができる。 (途中省略) 【0016】 (途中省略) 処理807において,XとYの差の絶対値が閾値Cより大かどうかの判定を行う。閾値Cより大きい場合は,処理808にて問診を実施する。 (以下省略)」 上記摘記事項(ア)?(カ)によれば,引用例3には,「装着者の体動を生体情報として連続的および時系列的に収集し,生体情報に予め設定した閾値以上の変化が生じた時に原因を探るべく問診を実施する。」との事項(以下,「引用例3記載事項」という。)が記載されていると認められる。 (3)対比 本件補正発明と引用例1発明とを対比する。 ア 引用例1発明の「健康管理支援システム」は,ユーザの健康管理のためのシステムであるから,本件補正発明の「健康管理システム」に相当する。 イ 引用例1発明の「GUI41」は,ユーザに対して目標値,進捗状況等の情報の表示を行う「ユーザインターフェイス」であり,また,「スピーカ43」は,ユーザに対してアドバイスや問診等の情報の音声出力のために用いられる「ユーザインターフェイス」である。 ここで,引用例1発明の「目標値,進捗状況等の情報」や「アドバイスや問診等の情報」と本件補正発明の「教育コンテンツセッション」とは共に「健康管理のための情報」である点で共通しており,また,引用例1発明の「情報の表示」や「情報の音声出力」が本件補正発明の「提示」に相当する。 してみれば,引用例1発明の「健康管理支援システム」と本件補正発明の「健康管理システム」とは,後記する点で相違するものの,「健康管理のための情報を提示するように構成されたユーザインターフェイス」を「有する」点で共通している。 ウ 引用例1発明の「バイタルデータ」は,血圧,血糖値,身長,体重,ウエスト値,コレステロール値等の客観的に測定可能な生理量に関するデータであって,「測定機器」から自動的にユーザ端末に入力されるものであり,一方,本件補正発明の「バイオメトリックデータ」は,「バイオメトリック装置」が測定するデータであり,本願明細書の【0019】段落の記載によれば,「バイオメトリック装置」には,体重計,血圧計,心電計,脳電計,オキシメータ,脳波測定装置,呼吸モニター,体温計等が含まれるものであるから,「バイオメトリック装置」が測定する「バイオメトリックデータ」には,体重,血圧等が含まれている。そうすると,引用例1発明の血圧,血糖値,体重等の「バイタルデータ」が本件補正発明の「バイオメトリックデータ」に相当し,また,引用例1発明の血圧,血糖値,体重等を測定する「測定機器」が本件補正発明の「バイオメトリック装置」に相当する。 引用例1発明では,問診回答がユーザ端末に入力されてサーバ1に送信されるとともに,バイタルデータが測定機器から自動的にユーザ端末に入力されてサーバ1に送信されるものであるところ,引用例1発明の「問診回答とバイタルデータがユーザ端末に入力されてサーバ1に送信される」際の「情報の経路」が,本件補正発明の「少なくとも1つの入力を提供する,ユーザからの少なくとも1つのフィードバックパス」に相当する。 そして,引用例1発明の前記「情報の経路」には,バイタルデータの送信元として「測定機器」が「含」まれているから,「少なくとも1つのフィードバックパスは,バイオメトリック装置を含」むものである。 また,引用例1発明では,「測定機器で測定されたバイタルデータ(バイオメトリック装置が取得したバイオメトリックデータ)」が「情報の経路」を介して送信されているから,「情報の経路」が提供する,「少なくとも1つの入力」は,「バイオメトリック装置が取得したバイオメトリックデータを含む」ものである。 してみれば,引用例1発明の「健康管理支援システム」と本件補正発明の「健康管理システム」とは,後記する点で相違するものの,「少なくとも1つの入力を提供する,ユーザからの少なくとも1つのフィードバックパスであって,前記少なくとも1つのフィードバックパスは,バイオメトリック装置を含み,前記少なくとも1つの入力は,前記バイオメトリック装置が取得したバイオメトリックデータを含むフィードバックパス」を「有する」点で共通している。 エ 引用例1発明において,サーバ1の演算部11は,「入力されたバイタルデータから,上限を示す判定しきい値よりも高いバイタルデータまたは下限を示す判定しきい値よりも低いバイタルデータを要注意バイタルデータとして抽出し」,「問診回答から,・・・健康上否定的な回答である要注意問診回答を抽出し」,「要注意バイタルデータおよび要注意問診回答に基づいて,・・・リスク一覧を作成し」,「リスク一覧に基づいて,・・・アドバイス項目を選択し」,「選択したアドバイス項目をユーザ端末2に表示」している。 ここで,引用例1発明の「入力されたバイタルデータから,上限を示す判定しきい値よりも高いバイタルデータ(要注意バイタルデータ)または下限を示す判定しきい値よりも低いバイタルデータ(要注意バイタルデータ)があると判定されること」,すなわち,「要注意バイタルデータの発生」が,本件補正発明の「トリガーイベント」に相当し,引用例1発明では,要注意バイタルデータを「用いて」アドバイス項目を選択しているから,トリガーイベントに「応答して」,アドバイス項目を生成しているということができる。 引用例1発明において,アドバイス項目は,「ユーザ端末2に表示」されているから,「ユーザに送信される」ものであることは明らかであり,引用例1発明の「アドバイス項目」と本件補正発明の「ユーザに送信される再帰的調査」とは,「ユーザに送信される送信情報」である点で共通している。そして,引用例1発明のサーバ1は,アドバイス項目を「生成」しているから,引用例1発明の「アドバイス項目を生成するサーバ1」と本件補正発明の「ユーザに送信される再帰的調査を生成する調査サーバ」とは,「ユーザに送信される送信情報を生成するサーバ」である点で共通している。 してみれば,引用例1発明の「健康管理支援システム」と本件補正発明の「健康管理システム」とは,後記する点で相違するものの,「トリガーイベントに応答して,ユーザに送信される送信情報を生成するサーバ」を「有する」点で共通している。 そうすると,本件補正発明と引用例1発明とは, 「健康管理システムであって: 健康管理のための情報を提示するように構成されたユーザインターフェイスと; 少なくとも1つの入力を提供する,ユーザからの少なくとも1つのフィードバックパスであって,前記少なくとも1つのフィードバックパスは,バイオメトリック装置を含み,前記少なくとも1つの入力は,前記バイオメトリック装置が取得したバイオメトリックデータを含むフィードバックパスと; トリガーイベントに応答して,前記ユーザに送信される送信情報を生成するサーバと を有するシステム。」 の点で一致し,次の点で相違する。 [相違点1] 本件補正発明のシステムは,「健康管理目標の達成に関する教育コンテンツセッション」を有し,ユーザインターフェイスが,「前記コンテンツセッション」を提示するように構成されているのに対して,引用例1発明は,そのようになっていない点。 [相違点2] 本件補正発明では,フィードバックパスが,「関心アイテムを含む入力を提供するフィードバックパス」であり,システムが,「少なくとも前記関心アイテムとコンテンツフロールールとに基づきコンテンツセッションを自動的に選択し,ユーザインターフェイスを介してユーザのために,前記選択されたコンテンツセッションのプレゼンテーションを開始するように構成されたコンテンツフローエンジン」を有するのに対して,引用例1発明は,そのようになっていない点。 [相違点3] 本件補正発明では,入力が含むバイオメトリックデータが,「トリガーイベントを含むバイオメトリックデータ」であり,トリガーイベントが,「取得したバイオメトリックデータ中に特定されたトリガーイベント」であるのに対して,引用例1発明は,そのようになっていない点。 [相違点4] 本件補正発明では,「ユーザに送信される送信情報」が「再帰的調査」であり,また,送信情報を生成する「サーバ」が「調査サーバ」であるのに対して,引用例1発明では,「ユーザに送信される送信情報」が「アドバイス項目」であり,そのため,送信情報を生成する「サーバ」が「調査サーバ」ではない点。 (4)当審の判断 上記各相違点について検討する。 [相違点1]について 引用例2には,「健康相談システムにおいて,医療スタッフが,健康相談者の食事画像,健康相談者の身長,体重,血圧,血糖値等のバイタルデータ,栄養分析データを参照して健康相談者の栄養指導に適したビデオコンテンツ,コメントコンテンツ,サウンドコンテンツを選択し,選択したコンテンツから教育用のマルチメディアコンテンツを作成して健康相談者に再生出力させる,栄養指導の方法。」(引用例2記載事項)が記載されている。 引用例2の健康相談システムは,健康相談者の健康管理のために用いられるシステムであって,引用例1発明の健康管理支援システムとはユーザの健康管理のために用いられるシステムである点で共通していることから,引用例1発明の健康管理支援システムにおいて引用例2の栄養指導を行うように構成すること,すなわち,引用例1発明のシステムが,ユーザの栄養指導に適したビデオコンテンツ,コメントコンテンツ等の「健康管理目標の達成に関する教育コンテンツセッション」を有するようにし,ユーザ端末2のユーザインターフェイスが「前記コンテンツセッション」を再生出力する(提示する)ように構成することは当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点2]について 本願明細書には,「関心アイテム」について,「関心アイテムはアプリケーションや患者により変わるが,その関心アイテムは,異常または医学的に重要なデータ,患者の診察情報,患者の精神的または肉体的状態を含む,関心があるとみなされた患者の側面をカバーする。」(【0028】段落)と記載されており,「関心アイテム」は,患者に関する「医学的に重要なデータ」を含むものである。 ここで,引用例2記載事項によれば,引用例2では,医療スタッフが,健康相談者の栄養指導に適したコンテンツを選択するに際して,健康相談者の食事画像,健康相談者の身長,体重,血圧,血糖値等のバイタルデータ,栄養分析データを参照していることから,栄養指導に適したコンテンツの選択を行う上で,「健康相談者の身長,体重,血圧,血糖値等のバイタルデータ」は,「医学的に重要なデータ」であるといえる。 してみれば,引用例2記載事項における「健康相談者の身長,体重,血圧,血糖値等のバイタルデータ」は,「医学的に重要なデータ」である点で本件補正発明の「関心アイテム」に相当する。 また,「ルールベースに基づいてコンテンツセッションを自動的に選択すること」は,周知技術である。 例えば特開平9-62651号公報には, 「【0023】教授戦略機能部26は,教材要素格納部22の学習シナリオと,学習者理解状況格納部24の学習者理解状況と,例えば,ルールベースにより構成された教授戦略とに基づいて,適切な教材要素を選択し,クライアント装置4に提示する。教授戦略機能部26が利用する教授戦略の一例を以下に示す。 【0024】〔教授戦略ルールA〕もし (学習目標xが不合格) ならば (学習目標xに対応する教材を提示する) 教授戦略機能部26は,学習シナリオに現れる学習目標の中で若い番号から順に上記教授戦略ルールAを適用する。例えば,図4に示した学習シナリオと理解状況に対し,ルールAを当てはめると,以下の条件:もし (学習目標γが不合格) ならば (学習目標γに対応する教材を提示する) が適用できるので,学習目標γに対応する教材がクライアント装置4に提示される。」 と記載され, また,特開2002-297797号公報には, 「【0035】このように,複数の情報から推奨情報を抽出する方法は多数開発されており,以下に例を挙げて説明する。代表的なものとして,ルールベース技術又は協調フィルタリング技術が採用されている。ルールベース技術とは,種々の知識をルールとして予め定義しておき,アクセスしてきたエンドユーザに適したコンテンツをこのルールに基づいて導出することにより各エンドユーザによって異なるコンテンツを提供する技術である。」 と記載されている。 そして,上記「[相違点1]について」で判断したとおり,引用例1発明において引用例2の栄養指導を行うようにすることは容易に想到し得るものであり,引用例1発明において引用例2の栄養指導を行う際に,ユーザ端末2からサーバ1へ送信される,血圧,血糖値,身長,体重などのユーザのバイタルデータをユーザの栄養指導に適したコンテンツを選択するための「関心アイテム」として用い,更にその際,上記周知技術を採用して,引用例1発明のシステムが,「少なくとも関心アイテムとルールベース(コンテンツフロールール)とに基づきコンテンツセッションを自動的に選択」するように構成することには何ら困難性がなく,また,「ユーザインターフェイスを介してユーザのために,前記選択されたコンテンツセッションのプレゼンテーションを開始する」ように構成することにも何ら困難性がない。 さらに,「コンテンツセッションを自動的に選択する処理」や,「コンテンツセッションのプレゼンテーションを開始する処理」を,「実行エンジン(コンテンツフローエンジン)」で実行させることは,当業者が適宜なし得る設計的事項である。 また,「血圧,血糖値,身長,体重などのユーザのバイタルデータ」を「関心アイテム」として利用すれば,結果として,フィードバックパスが,「関心アイテムを含む入力を提供するフィードバックパス」となることは明らかである。 してみれば,引用例1発明において,フィードバックパスを「関心アイテムを含む入力を提供するフィードバックパス」とし,システムが,「少なくとも前記関心アイテムとコンテンツフロールールとに基づきコンテンツセッションを自動的に選択し,ユーザインターフェイスを介してユーザのために,前記選択されたコンテンツセッションのプレゼンテーションを開始するように構成されたコンテンツフローエンジン」を有するように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点3]について 引用例1の【0213】段落には,次のとおり記載されている。 「健康管理支援プログラムの一部または全てをユーザ端末2にインストールすることによりユーザ端末2がサーバ1の機能の一部または全てを備えてもよい。」 この記載からみて,引用例1発明において,サーバ1の機能である,「バイタルデータとしきい値とを比較して要注意バイタルデータを抽出する処理」をユーザ端末2の側で行うように構成することは当業者が適宜なし得る設計的事項である。 そして,「要注意バイタルデータ」は,「トリガーイベント」が発生したことを示す情報であるから,ユーザ端末2の側で抽出した要注意バイタルデータを,通常のバイタルデータに含ませてサーバに送信するように構成することにより,バイオメトリックデータを,「トリガーイベントを含むバイオメトリックデータ」とし,トリガーイベントを,「取得したバイオメトリックデータ中に特定されたトリガーイベント」とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点4]について 「人の生体情報をモニタリングしているときに,モニタリングしている生体情報に予め設定した閾値以上の変化が生じると,問診を行う。」ことは周知技術である。 例えば,引用例3には, 「装着者の体動を生体情報として連続的および時系列的に収集し,生体情報に予め設定した閾値以上の変化が生じた時に原因を探るべく問診を実施する。」との事項(引用例3記載事項) が記載されている。 してみれば,引用例1発明において,ユーザ端末2からサーバ1に送信されるバイタルデータが所定のしきい値を超え,要注意バイタルデータが抽出された場合に,これに対応したアドバイス項目をユーザに送信することに代えて,あるいは加えて,原因を探るべく問診(つまり,再帰的調査)をユーザに送信するように構成し,サーバを「調査サーバ」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本件補正発明の作用効果も,引用例1発明,引用例1?3記載事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 よって,本件補正発明は,引用例1発明,引用例1?3記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成25年6月26日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成25年1月10日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下,「本願発明」という。) 「 【請求項1】 健康管理システムであって: 健康管理目標の達成に関する教育コンテンツセッションと; 前記コンテンツセッションを提示するように構成されたユーザインターフェイスと; 関心アイテムを含む少なくとも1つの入力を提供する,ユーザからの少なくとも1つのフィードバックパスと; 少なくとも前記関心アイテムとコンテンツフロールールとに基づき前記コンテンツセッションを自動的に選択し,前記ユーザインターフェイスを介して前記ユーザのために,前記選択されたコンテンツセッションのプレゼンテーションを開始するように構成されたコンテンツフローエンジンと; 取得したバイオメトリックデータ中に特定されたトリガーイベントに応答して,前記ユーザ及び第三者の少なくとも一方に送信される再帰的調査を生成する調査サーバとを を有するシステム。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1?3には,上記「第2[理由]2.(2)」に記載したとおりの事項が記載されている。 3.対比・判断 本願発明は,上記「第2[理由]」で検討した本件補正発明の「フィードバックパス」について,「前記少なくとも1つのフィードバックパスは,バイオメトリック装置を含み,前記少なくとも1つの入力は,トリガーイベントを含む前記バイオメトリック装置が取得したバイオメトリックデータを含む」との限定を省いたものである。 そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が前記「第2[理由]2.(4)」に記載したとおり,引用例1発明,引用例1?3記載事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1発明,引用例1?3記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,引用例1?3記載事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-03-31 |
結審通知日 | 2014-04-08 |
審決日 | 2014-04-22 |
出願番号 | 特願2008-536161(P2008-536161) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 齋藤 正貴、岡北 有平 |
特許庁審判長 |
手島 聖治 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 清田 健一 |
発明の名称 | 再帰的教育:客観的データまたは主観的データにリンクした教材の自動配信方法 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |