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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C03C
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する C03C
管理番号 1291820
審判番号 訂正2014-390093  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2014-07-04 
確定日 2014-09-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5237534号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5237534号に係る明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判請求に係る特許第5237534号(以下、「本件特許」という。)は、平成18年7月10日の出願であって、平成25年4月5日付けで特許権の設定登録がなされ、その後、平成26年7月4日付けで本件訂正審判の請求がなされ、同年7月24日付けで手続補正指令書が通知され、同年8月5日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 請求の要旨
1.請求の趣旨
本件訂正審判請求の趣旨は、特許第5237534号の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める、との審決を求めるものである。

2.訂正事項
本件訂正審判請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)は、次のとおりである。

(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「Y_(2)O_(3) 0?15.0%」を、「Y_(2)O_(3) 0?6.0%未満」に訂正する。

(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「ZrO_(2) 0?10.0%」を、「ZrO_(2) 0?6.0%未満」に訂正する。

(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5の「ZrO_(2) 0?7.0%未満」を、「ZrO_(2) 0?6.0%未満」に訂正する。

(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6の「質量%比SiO_(2)/B_(2)O_(3)が、1.0以下であり」を削除する。

(5)訂正事項5
本件訂正前の明細書【0028】の「なお、No.1、2及び8は、本発明の参考例である」を、「なお、No.1、2、7及び8は、本発明の参考例である」に訂正する。

第3 当審の判断
1.本件訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

(1)訂正事項1について
本件訂正前の明細書【0019】に「Y_(2)O_(3)成分は、屈折率及び分散を調整する効果を有する任意成分であるが、大量に含有させると失透性が悪化するばかりでなく、希少鉱物資源であるため、大量に含有させると製造コストが高くなってしまう。その上限値は、好ましくは15.0質量%、より好ましくは6.0質量%未満、最も好ましくは1.0質量%である。」と記載されていることから、「Y_(2)O_(3)」の上限を「15.0%」から「6.0%未満」に変更する訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、「特許明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。そして訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第5項及び6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
本件訂正前の明細書【0019】に「ZrO_(2)成分は、屈折率(nd)を高め、耐失透性を向上させる効果を有する任意成分であるが、この成分は、難熔融成分であるため、過剰に含有させると、ガラス製造時に高温での熔解を余儀なくされ、エネルギー損失が問題となる。一方、所定量含有させることにより失透を抑制する効果が得られる場合もある。したがって、好ましくは10.0質量%、より好ましくは7.0質量%未満、最も好ましくは6.0質量%未満を上限とする。」と記載されていることから、「ZrO_(2)」の上限を「10.0%」から「6.0%未満」とすることは、特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。そして訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第5項及び6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3について
上記「(2)訂正事項2について」に記したのと同じ理由により、「ZrO_(2)」の上限を「7.0%未満」から「6.0%未満」とすることは、特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。そして訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第5項及び6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4について
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6には、本件発明のガラスの成分について「酸化物基準の質量%表記で、SiO_(2) 3.0?10.0%、B_(2)O_(3) 33.0?41.0%未満」(以下、「特定事項A」という。)と記載されているから、「質量%比SiO_(2)/B_(2)O_(3)」を計算すると、同比の最大値は10.0/33.0=0.0303となる。
他方で、上記請求項6には、「質量%比SiO_(2)/B_(2)O_(3)が、1.0以下」(以下、「特定事項B」という。)とすることも記載されている。
すると、特定事項Aから導かれる上記比の最大値と、特定事項Bから導かれる上記比の最大値とが整合しないから、本件訂正前の請求項6の記載は明りょうでない。
また、上記請求項6において、特定事項Aの条件が満たされれば特定事項Bの条件は必ず成立するから、特定事項Bは意味の無い条件といえる。
すなわち、特定事項Bを削除する訂正事項4は、明りょうでない請求項6の記載を明りょうにするものといえる。
よって、訂正事項4は、特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。そして訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第5項及び6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5について
本件訂正前の明細書【0028】には「なお、No.1、2及び8は、本発明の参考例である」と記載され、「No.7」は「実施例」とされていたところ、訂正事項5は、訂正明細書【0028】において「なお、No.1、2、7及び8は、本発明の参考例である」に訂正し、「No.7」を「参考例」に変更しようとするものなので、上記訂正事項1?4により「No.7」のガラスが「参考例」となるかをみてみる。
本件訂正前の明細書の【表2】(【0032】)の「No.7」の例えば「ZrO_(2)」の値は「6質量%」であるところ、訂正後の請求項1ないし9においてガラスの「ZrO_(2)」の値の上限は「6.0%未満」と特定しているから、この点で「No.7」のガラスは本発明の実施例とはいえなくなり、参考例とすべきものである。
そうすると、「本発明の参考例」として「No.7」のガラスを付加することは、「No.7」のガラスが「参考例」であることを明らかにするとともに特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものといえる。
よって、訂正事項5は、特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。そして訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第5項及び6項の規定に適合するものである。

2.独立特許要件
上記のとおり、訂正事項1?3に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであるので、訂正後の特許請求の範囲の請求項1、5に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件訂正発明1」、「本件訂正発明5」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。

(1)訂正後の請求項に係る発明
本件訂正発明1、5は、審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、5にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)独立特許要件について
訂正事項1?3は、上記のとおり、特許請求の範囲の請求項1、5の減縮を目的とするものであって、本件訂正発明1、5は、特許された本件訂正前の請求項1、5に係る発明よりも減縮されたものである。
したがって、本件訂正発明1、5は、特許された本件訂正前の請求項1、5に係る発明と同じく特許されるべきものであり、また、再度検討しても、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

(3)結言
よって、訂正事項1?3に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1、3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ガラス
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率(nd)が1.63?1.80、かつ、アッベ数(νd)が45?60である複屈折が生じにくいガラス、及び、このガラスを利用して得られるレンズ、プリズムなどの光学素子に関し、特に、高強度の光に曝される環境下で使用され、高精度な結像特性が要求されるカメラやプロジェクタに代表される光学機器の投影レンズやプリズムに好適なガラス素材とそれらから作製される光学素子及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学機器のデジタル化や高精細化が進み、デジタルカメラやビデオカメラなど撮影機器とともに、プロジェクタやプロジェクションテレビなどの画像再生(投影)機器に使用される光学素子に高い性能が求められている。その性能とは、屈折率やアッベ数や着色度といった以前からガラス素材に要求される特性のみならず、実使用環境における特性変動が少ないことやガラス製造や光学素子の加工時において、環境負荷が小さいことが含まれつつある。
【0003】
実使用環境において結像特性が変化することは、レンズやプリズムなどの光学素子は、光学機器において治具などで固定されており、使用環境の温度変化(筺体内部の温度変化、高温下で使用されるなど)によって、光学素子の熱膨張が生じ、固定治具との膨張係数が異なるために、光学素子に応力が生じ、その結果、光学素子に複屈折が生じて結像特性が変化してしまうものと推測される。
【0004】
特に、高強度の光に曝される環境で用いられる場合は、使用環境の温度変化以外に、光吸収による光学素子自身の発熱を生じるため、熱応力による複屈折がさらに増加する恐れが高まる。
【0005】
上記の通り、一定温度のもと(主として室温程度)で取得された屈折率やアッベ数などの光学恒数で設計した結像特性が、実使用環境において実現されない場合、光学設計時に使用環境を想定し、複雑な特性変動を予測して設計しなければならないという、不利益が生じる。
【0006】
プロジェクタ搭載プリズム用光学ガラスやプロジェクタ搭載レンズ用光学ガラスとして、特許文献1及び2に開示されているが、記載されている実施例の屈折率(nd)は1.52未満と低く、特にレンズとして用いる場合は、レンズ素材での光の屈折力が十分得られないため、レンズの肉厚を厚くしなければならず、装置全体が大きく重くなってしまう。
【0007】
プリズムを作製する場合、ガラス単体で用いられることは少なく、各種の光学薄膜が施されるが、特に偏光分離膜を有するプリズムなどには、ガラスの屈折率(nd)は1.60より大きいものが適するなど、光学薄膜設計の面からも重要なパラメータとなる。
【0008】
屈折率(nd)が1.63?1.80、かつ、アッベ数(νd)が45?60であるガラスは、光学薄膜の設計自由度、及び、光学系全体の設計自由度を高めるために有用な領域であるため、古くから多くのガラス素材が市販されてきたが、実使用環境における結像特性の変動について考慮されておらず、市場要求を十分満たしているとは言えない。
【0009】
光学ガラス製造や光学素子の加工時において、鉛(Pb)化合物や砒素(As)化合物やなどの環境負荷が高い成分を含むと、大気や水質への汚染物質の拡散防止に特別な措置が必要となるなどの不利益が生じる。また、タンタル(Ta)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)イッテルビウム(Yb)などの希少な鉱物資源を大量に使用することは、生産コストが高くなるだけでなく、資源回収のためのコストや労力が必要となってしまう。
【0010】
環境負荷が高い成分をガラス組成に含まない屈折率(nd)が1.63?1.80、かつ、アッベ数(νd)が45?60である様々なガラス組成物が特許文献3?6に開示されているが、実使用環境における結像特性の変動についての考慮は、成されていない。
【0011】
【特許文献1】特開2003-292339号公報
【特許文献2】特開2005-37651号公報
【特許文献3】特開2006-96610号公報
【特許文献4】特開2003-238198号公報
【特許文献5】特開2004-161506号公報
【特許文献6】特開平08-259257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような事情のもとで、高強度の光に曝される環境下で使用しても結像特性影響を受けにくい、屈折率(nd)が1.63?1.80、かつ、アッベ数(νd)が45?60である複屈折が生じにくいガラスを環境負荷が高い成分及び希少な鉱物資源を大量に用いることなく提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記目標を達成するために鋭意試験研究を重ねた結果、SiO_(2)、B_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)を必須成分として含有させ、かつ構成成分の比率を調整することにより、-30?+70℃の平均線膨張係数をα、波長546.1nmにおける光弾性定数をβ、420nmにおける内部透過率(10mm厚)をτであらわした時、計算式α×β×(1-τ)の値が2.0×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下を実現するガラスを、環境負荷が高い成分及び希少鉱物資源を大量に使用することなく作製し、前記目的を達成し得ることを見出し、本発明をなすに至った。その構成を以下に示す。
【0014】
(構成1)
酸化物基準で、SiO_(2)を1.0?30.0質量%含有し、B_(2)O_(3)を3.0?45.0質量%含有し、La_(2)O_(3)を1.0?60.0質量%含有し、BaOを0?60.0質量%含有し、かつ、BaOとLa_(2)O_(3)の合計が30.0?65.0質量%のガラスであって、-30?+70℃の平均線膨張係数をα、波長546.1nmにおける光弾性定数をβ、420nmにおける内部透過率(10mm厚)をτであらわした時、計算式α×β×(1-τ)の値が2.0×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下であることを特徴とするガラス。
(構成2)
屈折率(nd)が1.63?1.80、アッベ数(νd)が45?60の範囲の光学恒数を有することを特徴とする構成1に記載のガラス。
(構成3)
構成1又は2に記載のガラスであって、酸化物基準の質量%表示で、
Li_(2)O 0?5.0%、及び/又は
Na_(2)O 0?5.0%、及び/又は
K_(2)O 0?5.0%、及び/又は
Cs_(2)O 0?5.0%、及び/又は
MgO 0?5.0%、及び/又は
CaO 0?15.0%、及び/又は
SrO 0?15.0%、及び/又は
ZnO 0?10.0%、及び/又は
Al_(2)O_(3) 0?10.0%、及び/又は
Y_(2)O_(3) 0?15.0%、及び/又は
Gd_(2)O_(3) 0?25.0%、及び/又は
Lu_(2)O_(3) 0?5.0%、及び/又は
Yb_(2)O_(3) 0.0?5.0%、及び/又は
Sb_(2)O_(3) 0?2.0%、及び/又は
TiO_(2) 0?3.0%、及び/又は
ZrO_(2) 0?10.0%、及び/又は
SnO_(2) 0?3.0%、及び/又は
TeO_(2) 0?3.0%、及び/又は
P_(2)O_(5) 0?5.0%、及び/又は
Ta_(2)O_(5) 0?5.0%、及び/又は
Nb_(2)O_(5) 0?5.0%、及び/又は
WO_(3) 0.0?5.0%、及び/又は
を含み、かつ上記酸化物の質量に対する実際に含有されるF原子の質量を質量百分率で現したFの合計量が、0?3.0%であることを特徴とするガラス。
(構成4)
構成1?3のいずれか一項に記載のガラスであって、酸化物基準の質量%表示で、
TiO_(2) 0.0?1.0%未満、及び/又は
SnO_(2) 0.0?1.0%未満、及び/又は
Nb_(2)O_(5) 0.0?1.0%未満、及び/又は
Yb_(2)O_(3) 0.0?1.0%未満、及び/又は
Bi_(2)O_(3) 0.0?1.0%未満を含有し、
PbOなどの鉛化合物及びAs_(2)O_(3)などの砒素化合物を実質的に含有しないことを特徴とするガラス。
(構成5)
構成1?4のいずれか一項に記載のガラスであって、質量%比(BaO+La_(2)O_(3))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))が、0.80以上2.0未満であり、質量%の乗算(Gd_(2)O_(3)×Y_(2)O_(3)×ZrO_(2))が0であり、-30?+70℃の平均線膨張係数をα、波長546.1nmにおける光弾性定数をβ、420nmにおける内部透過率(10mm厚)をτであらわした時、計算式α×β×(1-τ)の値が1.5×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下であることを特徴とするガラス。
(構成6)
構成1?5のいずれか一項に記載のガラスであって、酸化物基準の質量%表記で
SiO_(2) 3.0?27.0%未満
B_(2)O_(3) 5.0?42.0%未満
La_(2)O_(3) 1.0?42.0%未満
BaO 0?55.0%、及び/又は
Al_(2)O_(3) 0?1.0%未満、及び/又は
ZnO 0?6.0%未満、及び/又は
Y_(2)O_(3) 0?6.0%未満、及び/又は
ZrO_(2) 0?7.0%未満、及び/又は
Gd_(2)O_(3) 0?16.0%未満、及び/又は
Li_(2)O 0?2.0%、及び/又は
Na_(2)O 0?3.0%、及び/又は
K_(2)O 0?3.0%、及び/又は
Cs_(2)O 0?3.0%、及び/又は
MgO 0?2.0%、及び/又は
CaO 0?13.0%、及び/又は
SrO 0?13.0%、及び/又は
Sb_(2)O_(3) 0?1.0%、及び/又は
但し、アルカリ金属酸化物の合計量(ΣR_(2)O)が、0?3.0%
の各成分を含有し、SiO_(2)を19.0%以上含有する場合、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、ZnOから選ばれる成分の一種類以上を0.1%?3.0%未満含有することを特徴とするガラス。
(構成7)
酸化物基準の質量%表記で、
SiO_(2) 3.0?10.0%
B_(2)O_(3) 33.0?41.0%未満
La_(2)O_(3) 35.0?42.0%未満
BaO 0.5?10.0%、
CaO 2.0?12.0%
ZnO 1.0?6.0%未満
ZrO_(2) 1.0?6.0%未満
Al_(2)O_(3) 0?1.0%未満、及び/又は
Li_(2)O 0?0.5%未満、及び/又は
Na_(2)O 0?2.0%、及び/又は
K_(2)O 0?2.0%、及び/又は
SrO 0?10.0%、及び/又は
TiO_(2) 0?1.0%未満、及び/又は
Yb_(2)O_(3) 0.0?5.0%未満、及び/又は
Gd_(2)O_(3) 0?5.0%未満、及び/又は
Y_(2)O_(3) 0?1.0%未満、及び/又は
Sb_(2)O_(3) 0?1.0%
但し、アルカリ金属酸化物の合計量(ΣR_(2)O)が、0?2.0%
但し、BaOとLa_(2)O_(3)の合計が35.0?50.0%
の各成分を含有し、PbOなどの鉛化合物及びAs_(2)O_(3)などの砒素化合物及び弗素(F)イオンを含有せず、質量%比(BaO+La_(2)O_(3))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))が、0.90以上2.0未満であり、質量%の乗算(Gd_(2)O_(3)×Y_(2)O_(3)×ZrO_(2))が0であり、質量%比SiO_(2)/B_(2)O_(3)が、1.0以下であり、-30?+70℃の平均線膨張係数をα、波長546.1nmにおける光弾性定数をβ、420nmにおける内部透過率(10mm厚)をτであらわした時、計算式α×β×(1-τ)の値が1.3×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下であることを特徴とする、屈折率(nd)1.68?1.72、アッベ数(νd)51?58であるガラス。
(構成8)
構成1?7のガラスを母材とするレンズ・プリズム等の光学素子。
(構成9)
構成1?8のガラスをリヒートプレス加工して作成するレンズ・プリズム等の光学素子。
(構成10)
構成1?9のガラスで作成した光学素子および光学基板材料を使用するカメラ・プロジェクタなどの光学機器。
【発明の効果】
【0015】
前記各構成を採用することにより、高強度の光に曝される環境下で使用しても結像特性影響を受けにくい、所定の光学恒数を有し、複屈折が生じにくいガラスを環境負荷が高い成分及び希少な鉱物資源を大量に用いることなく提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の複屈折が生じにくいガラスについて説明する。
前記構成1の光学ガラスは、-30?+70℃の平均線膨張係数をα、波長546.1nmにおける光弾性定数をβ、420nmにおける内部透過率(10mm厚)をτであらわした時、計算式α×β×(1-τ)の値が2.0×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下であることを特徴とし、このα×β×(1-τ)という指標は、高強度の光に曝される使用環境下における結像特性の変化量を示す。より具体的に説明すると、平均熱膨張係数αが大きいほど、使用環境の温度変化に対して光学素子の膨張率(体積変化)が大きいことを意味するため、治具などで固定されている光学素子には、大きな熱応力が発生することを意味する。また、光弾性定数βが大きいほど、生じた熱応力によって生じる複屈折が大きいことを意味する。また、(1-τ)が大きいほど、高強度の光に曝された場合に、光吸収が大きく、吸収された光エネルギーの一部は熱に変換されるので、ガラス自体が発熱し、冶具で固定されている光学素子に大きな熱応力を生じさせる。すなわち、α×β×(1-τ)がより小さいほど、高強度の光に曝される使用環境において、結像特性の変化が少ないことを示唆し、レンズ、プリズム等の光学用途としては、当該計算値が2.0×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下であることが好ましく、1.5×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下であることがより好ましく、1.3×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下であることがより好ましい。
【0017】
ガラスの計算式α×β×(1-τ)の値が2.0×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下を実現するために、構成1では、酸化物基準で、SiO_(2)を1.0?30.0質量%含有し、B_(2)O_(3)を3.0?45.0質量%含有し、La_(2)O_(3)を1.0?60.0質量%含有し、BaOを0?60.0質量%含有し、かつ、BaOとLa_(2)O_(3)の合計が30.0?65.0質量%であることを特徴とする。
個々の成分について説明すると、SiO_(2)成分は安定なガラス形成を促し、光学ガラスとして好ましくない失透(結晶物の発生)や脈理(ガラス内部の不均一性)を抑制する効果があるが、過剰に含有させると屈折率(nd)が小さくなり、光弾性定数βが著しく増大し、所望の特性を得にくくなるため、その上限は、30.0質量%未満であり、より好ましくは27.0質量%未満、最も好ましくは10.0質量%以下の量で含有し、好ましくは1.0質量%、より好ましくは2.0質量%、最も好ましくは3.0質量%を下限とする。SiO_(2)成分は、任意の原料形態で含有させることができるが、酸化物(SiO_(2))、K_(2)SiF_(6)、Na_(2)SiF_(6)、の形態で導入することが好ましい。
B_(2)O_(3)成分は、SiO_(2)成分と同様に安定なガラス形成を促し、小さな平均線熱膨張係数を実現するために、不可欠な成分である。しかしその量が少なすぎると安定なガラスが得にくくなり、その量が多すぎると屈折率(nd)が小さくなり、光弾性定数βが著しく増大し、所望の特性を得にくくなる。好ましくは45.0質量%、より好ましくは42.0質量%未満、最も好ましくは41.0質量%未満を上限とし、好ましくは3.0質量%、より好ましくは5.0質量%、最も好ましくは33.0質量%を下限とする。B_(2)O_(3)成分は、H_(3)BO_(3)、Na_(2)B_(4)O_(7)、Na_(2)B_(4)O_(7)・10H_(2)O、BPO_(4)などの原料形態で含有させることができるが、H_(3)BO_(3)の形態で導入することが好ましい。
La_(2)O_(3)成分は、光弾性定数βを小さくする効果が高いガラス修飾成分で有り、屈折率を高め、適切なアッベ数を実現する効果(特にガラスに低分散特性を与える効果)を持ち合わせ、かつ、高い内部透過率を実現するために、不可欠な成分である。所望の計算式の値を実現するためには、少なくとも、1.0質量%を含有することが必要であり、一方、その量が多すぎると、相対的に、SiO_(2)やB_(2)O_(3)の含有量が少なくなり、ガラスが不安定化し失透などが生じやすくなる。好ましくは、60.0質量%、より好ましくは、50.0質量%、最も好ましくは、42.0質量%未満を上限とし、好ましくは、1.0質量%、より好ましくは、3.0質量%、最も好ましくは、35.0質量%を下限とする。La_(2)O_(3)成分は任意の原料形態で含有させることができるが、好ましくは、酸化物(La_(2)O_(3))、硝酸塩及び硝酸塩水和物(La(NO_(3))_(3)・XH_(2)O(Xは任意の整数))の形態で導入することが好ましい。
BaO成分は、La_(2)O_(3)成分と同様の効果が得られるため、0.0?60.0質量%の範囲で任意に、或いは、La_(2)O_(3)成分と置換して含有させることが可能であるが、その量が多すぎると、ガラスの化学的耐久性が著しく悪化しやすくなるため、好ましくない。好ましくは、60.0質量%、より好ましくは、55.0質量%、最も好ましくは、10.0質量%未満を上限とし、最も好ましくは、0.5%を下限とする。BaO成分は、様々な形態で導入させることができるが、炭酸塩(BaCO_(3))及び/又は硝酸塩(Ba(NO_(3))_(2))の形態で導入することが好ましい。
ここで、BaOとLa_(2)O_(3)の合計(BaO+La_(2)O_(3))量は、所望の屈折率、アッベ数、光弾性定数、内部透過率を実現するために、好ましくは65.0質量%、より好ましくは、60.0質量%、最も好ましくは、50.0質量%を上限とし、好ましくは、30.0質量%、より好ましくは、33.0質量%、最も好ましくは、35.0質量%を下限とする。
【0018】
前記構成2のガラスは、屈折率(nd)が1.63?1.80、アッベ数(νd)が45?60の範囲の光学恒数を有することを特徴としており、様々な光学素子及び光学設計に有用である。
【0019】
前記構成3のガラスにおいて、記載の範囲の成分を含有させることにより、構成1及び2に記載の特性を安定に実現できる。個々の成分の限定理由について、説明する。
アルカリ金属酸化物成分(Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、Cs_(2)O)は、ガラスの熔融性を向上させる効果が得られるため、任意に含有させることが可能であるが、大量に含有させると、平均熱膨張係数αが増大したり、屈折率が低くなり、ガラスが不安定化して失透発生などの好ましくない現象が生じやすくなるため、それぞれ、質量%表示で0.0?5.0%の範囲とすることが好ましい。より好ましい上限値は、Li_(2)O成分は、2.0質量%、Na_(2)O、K_(2)O、Cs_(2)O成分は3.0質量%である。平均熱膨張係数αを増大させる効果とガラスを不安定化させる効果は、イオン半径が小さいほど大きいため、最も好ましい上限は、Li_(2)O成分は、0.5質量%未満、Na_(2)O成分は、2.0質量%以下、K_(2)O成分は、2.0質量%である。Cs_(2)O成分は、高価であるため、一切含有しないことが最も好ましい。アルカリ金属酸化物成分は、炭酸塩(Li_(2)CO_(3)、Na_(2)CO_(3)、K_(2)CO_(3)、Cs_(2)CO_(3))、硝酸塩(LiNO_(3)、NaNO_(3)、KNO_(3)、CsNO_(3))、弗化物(LiF、NaF、KF、KHF_(2))、複合塩(Na_(2)SiF_(6)、K_(2)SiF_(6))など、様々な形態で導入させることが可能であるが、炭酸塩及び/又は硝酸塩で導入することが好ましい。
BaOを除くアルカリ土類金属酸化物成分(MgO、CaO、SrO)は、ガラスの屈折率と光弾性定数を調整する効果が得られるため、任意に含有させることが可能であるが、大量に含有させると、所望の光学恒数(特に屈折率)を実現できにくくなり、特にMgO成分は光弾性定数を著しく大きくさせやすいため、0.0?5.0質量%、CaO及びSrO成分は、それぞれ0.0?15.0質量%の範囲とすることが好ましい。より好ましい上限値は、MgO成分は2.0質量%、CaO及びSrO成分はそれぞれ13.0質量%である。最も好ましい上限値は、MgO成分は一切含有せず、CaO成分は、12.0質量%以下、SrO成分は、10.0質量%以下である。なお、CaO成分は、低分散特性を実現しつつ、ガラス比重を小さくできるため、最も好ましくは、2.0質量%以上を含有する。これらのアルカリ土類金属酸化物成分は、炭酸塩(MgCO_(3)、CaCO_(3)、)、硝酸塩(Sr(NO_(3))_(2))、弗化物(MgF_(2)、CaF_(2)、SrF_(2))などの様々な形態で導入させることができるが、炭酸塩及び/又は硝酸塩及び/又は弗化物の形態で導入することが好ましい。
ZnO成分は、ガラスの熔融性を向上させる一方で、平均熱膨張係数αを小さくする効果が得られるため、0?10.0質量%の範囲で任意に含有させることが可能であるが、過剰に含有させると、可視領域の短波長側の透過率を悪化させ、光弾性定数βを著しく増大させる性質を持っているため、所望の特性を実現しにくくなる。より好ましくは7.0質量%、最も好ましくは、6.0質量%未満を上限とする。ガラスの熔融性を向上させる効果を十分得るためには、1.0質量%以上含有させることが、最も好ましい。ZnO成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(ZnO)及び/又は弗化物(ZnF_(2))の形態で導入することが好ましい。
Al_(2)O_(3)成分は、光学ガラス及び光学素子の化学的耐久性を向上させ、熔融ガラスの耐失透性を向上させる効果が得られるため任意に含有させることが可能であるが、過剰に含有させると、屈折率が著しく低下し、光弾性定数が大きくなってしまう。したがって、好ましくは10.0質量%、より好ましくは2.0質量%、最も好ましくは1.0質量%未満を上限とする。Al_(2)O_(3)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(Al_(2)O_(3))、水酸化物(Al(OH)_(3))、弗化物(AlF_(3))の形態で導入することが好ましい。
Y_(2)O_(3)成分は、屈折率及び分散を調整する効果を有する任意成分であるが、大量に含有させると失透性が悪化するばかりでなく、希少鉱物資源であるため、大量に含有させると製造コストが高くなってしまう。その上限値は、好ましくは15.0質量%、より好ましくは6.0質量%未満、最も好ましくは1.0質量%である。Y_(2)O_(3)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(Y_(2)O_(3))或いは弗化物(YF_(3))の形態で導入することが好ましい。
Gd_(2)O_(3)成分は、Y_(2)O_(3)成分と同様に、屈折率を高め分散を小さくする効果が得られ、光弾性定数を小さく維持する効果が得られる任意成分である。しかし、過剰に含有させると失透が発生しやすくなるばかりでなく、希少鉱物資源であるため、大量に含有させると製造コストが高くなってしまう。したがって、その上限値は、好ましくは25.0質量%、より好ましくは16.0質量%未満、最も好ましくは5.0質量%未満である。ガラスの様々な特性を考慮するに当たり、Y_(2)O_(3)成分とZrO_(2)成分を含有させる場合には、Gd_(2)O_(3)成分は、一切含有しないことが好ましい。Gd_(2)O_(3)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(Gd_(2)O_(3))或いは弗化物(GdF_(3))の形態で導入することが好ましい。
Lu_(2)O_(3)成分は、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)成分と同様に、高屈折率と低分散を実現する効果が得られるため、0?5.0質量%の範囲で任意に含有させることが可能であるが、希少鉱物資源であるため、過剰に含有させるのは好ましくない。より好ましい上限値は、3.0質量%、最も好ましくは、一切含有しない。Lu_(2)O_(3)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(Lu_(2)O_(3))で導入することが好ましい。
Yb_(2)O_(3)成分は、屈折率調整のため0.0?5.0質量%の範囲で任意に添加することが可能であるが、光弾性定数βを増大させる性質があるため、その上限は、5.0質量%である。しかし、この成分も希少鉱物資源であるため大量に含有させると製造コストが高くなるため、より好ましい上限値は、1.0質量%未満であり、最も好ましくは、一切含有しないことである。Yb_(2)O_(3)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(Yb_(2)O_(3))の形態で導入することが好ましい。
Sb_(2)O_(3)成分は、ガラスの脱泡材としての効果が得られるため、0?2.0質量%の範囲で任意に含有させることが可能であるが、上限を超えて含有させると、特に可視領域短波長の内部透過率が著しく悪化し、所望の特性(計算式=2.0以下)を実現しにくくなるばかりでなく、ガラス熔融時に過度の発泡が生じたり、熔解設備(特にPtなどの貴金属)と合金化する恐れがあるため、上限を超えて含有させてはならない。好ましい上限は1.0質量%である。Sb_(2)O_(3)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(Sb_(2)O_(3)、Sb_(2)O_(5))或いはNa_(2)H_(2)Sb_(2)O_(7)・5H_(2)Oの形態で導入することが好ましい。
TiO_(2)成分は、化学的耐久性を向上させ、ソラリゼーションを抑制し、屈折率及びアッベ数の調整のために任意に含有させることが可能であるが、過剰に含有させるとガラスの着色が顕著になり、特に可視短波長(500nm以下)の内部透過率が悪化する傾向にある。したがって、好ましい上限値は3.0質量%であり、より好ましい上限値は2.0質量%、最も好ましい上限値は1.0質量%未満である。TiO_(2)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(TiO_(2))の形態で導入することが好ましい。
ZrO_(2)成分は、屈折率(nd)を高め、耐失透性を向上させる効果を有する任意成分であるが、この成分は、難熔融成分であるため、過剰に含有させると、ガラス製造時に高温での熔解を余儀なくされ、エネルギー損失が問題となる。一方、所定量含有させることにより失透を抑制する効果が得られる場合もある。したがって、好ましくは10.0質量%、より好ましくは7.0質量%未満、最も好ましくは6.0質量%未満を上限とする。なお、ZrO_(2)成分を添加しなくても、ガラスに失透が発生しない場合は、含有しなくとも差し支えないが、特に、La_(2)O_(3)成分を大量に含有させる場合は、1.0質量%を下限とすることが好ましい。ZrO_(2)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(ZrO_(2))及び弗化物(ZrF_(4))の形態で導入することが好ましい。
SnO_(2)成分は、熔融ガラスの酸化抑制や清澄効果、光照射に対する透過率悪化を防ぐ効果が得られるため任意に含有させることが可能であるが、過剰に含有させると、熔融ガラスの還元によるガラスの着色の恐れや、熔解設備(特にPtなどの貴金属)と合金化する恐れがある。好ましくは3.0質量%を上限とし、より好ましくは1.0質量%、最も好ましくは、一切含有させないことである。SnO_(2)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(SnO、SnO_(2))、弗化物(SnF_(2)、SnF_(4))の形態で導入することが好ましい。
TeO_(2)成分は、ガラス熔融時の清澄作用を促進する効果が得られるため、0?3.0質量%の範囲で任意に含有させることが可能であるが、過剰に含有させると、ガラスへの着色が顕著になり、内部透過率が悪化しやすくなる。より好ましい上限値は、1.5質量%、最も好ましくは、一切含有しない。TeO_(2)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(TeO_(2))で導入することが好ましい。
P_(2)O_(5)成分は、ガラスの熔融性を向上させる効果が得られるため任意に含有させることが可能であるが、過剰に含有させるとガラスの耐失透性が著しく悪化しやすくなり、失透の無い光学ガラスを得にくくなるため、好ましくない。したがって好ましくは5.0質量%を上限とし、より好ましくは1.0質量%、最も好ましくは、一切含有しない。P_(2)O_(5)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、Al(PO_(3))_(3)、Ca(PO_(3))_(2)、Ba(PO_(3))_(2)、BPO_(4)、H_(3)PO_(4)の形態で導入することが好ましい。
Ta_(2)O_(5)成分は、屈折率を高め、ガラスを安定化させる効果が得られるため、5.0質量%の範囲で任意に含有させることが可能である。しかし、Ta_(2)O_(5)成分は、希少鉱物資源であり原料価格が高く、難熔融成分であり、ガラス製造時に高温熔解を余儀なくされるため、生産コストが増大するばかりでなく、光弾性定数βを著しく増大させる特性を持つため、その含有量の上限は、5.0質量%が好ましい。より好ましい上限値は、3.0質量%、最も好ましくは、一切含有しないことである。Ta_(2)O_(5)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(Ta_(2)O_(5))の形態で導入することが好ましい。
Nb_(2)O_(5)及びWO_(3)成分は、屈折率を高め分散を大きくする効果があり、化学的耐久性を向上させる効果が得られるため、0?5.0質量%の範囲で任意に含有させることが可能である。しかし、Nb_(2)O_(5)成分及びWO_(3)成分は特に可視短波長(500nm以下)の内部透過率が悪化する傾向があり、光弾性定数βを著しく増大させる特性を持つため、その含有量の上限は、5.0質量%が好ましい。より好ましい上限値は、1.0質量%、最も好ましくは、一切含有しないことである。Nb_(2)O_(5)及びWO_(3)成分は、任意の原料形態で導入させることができるが、酸化物(Nb_(2)O_(5)、WO_(3)成分)の形態で導入することが好ましい。
F成分は、アッベ数を大きくする効果や光弾性定数βを小さくする効果、可視領域短波長の内部透過率の改善効果が得られるため、0?3.0質量%の範囲で任意に含有させることが可能であるが、上限を超えて含有させると、屈折率が低くなり平均線熱膨張係数αが増大する恐れがあるばかりでなく、脈理などの素地不良が生じやすくなる。より好ましい上限値は、1.0質量%、最も好ましくは、一切含有させないことである。F成分は、上述した各種酸化物の導入において、原料形態を弗化物にて導入した際に、ガラス中に導入される。
なお、本明細書において使用される各成分の含有量の表記は、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物などが、熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、組成物全体に対する各成分の当該生成酸化物の質量%を表すものであり、フッ化物の場合は生成酸化物の質量に対する実際に含有されるF原子の質量を質量百分率で現したものである。
【0020】
Tiを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、AgおよびMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独または複合して少量含有した場合でも着色してしまい、可視域の特定の波長に吸収を生じさせるため、可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。さらに、Pb、Th、Cd、Tl、As、Os、Be、Seの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされるため、環境上の影響を重視する場合には実質的に含まないことが好ましい。
【0021】
前記構成4のガラスにおいて、TiO_(2)、SnO_(2)、Nb_(2)O_(5)、Bi_(2)O_(3)の各成分は、ガラスの着色や可視領域短波長の内部透過率悪化の懸念から、それぞれ0.0?1.0質量%未満の範囲とすることが好ましい。Yb_(2)O_(3)成分は、希少鉱物資源の大量消費を避ける観点から、0.0?1.0質量%未満の範囲とする。
PbOなどの鉛化合物及びAs_(2)O_(3)などの砒素化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しない。なお、本明細書中において「実質的に含有しない」とは、例えば不純物等で混入されるなど不可避な混入を除き、含有しないことを意味する。
【0022】
前記構成5の光学ガラスにおいては、より高精度かつ高精細な用途の光学素子に利用するために、ガラスの計算式α×β×(1-τ)の値は1.5×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下であることが好ましい。
上記計算式の数値を実現するためには、質量%比(BaO+La_(2)O_(3))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))が0.80以上2.0未満であり、かつ質量%の乗算(Gd_(2)O_(3)×Y_(2)O_(3)×ZrO_(2))が0であることが望ましい。ここで、分子(BaO+La_(2)O_(3))は、ガラス構成成分の中でも、光弾性定数を小さくし、かつ、可視領域の短波長内部透過率を高くできる成分の合計である。一方の分母(SiO_(2)+B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))は、ガラス構成成分の中で、安定なガラス形成を促し、平均熱膨張係数を小さくする効果がある成分であるが光弾性定数を著しく大きくする成分の合計である。従って、この質量%比が大きすぎると、ガラスが不安定になり、失透などの不具合や化学的耐久性の悪化という、好ましくない現象が生じ、一方、この質量%比が小さすぎると、光弾性定数が著しく増大し、所望の計算式の値を実現しにくくなる。すなわち、これらの比率を一定範囲内に調整することで、所望の計算式の値を持つガラスが安定に得られるのである。より好ましい範囲は、0.85?1.80、最も好ましくは、0.90?1.50である。
また、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、ZrO_(2)の3成分を共存させること(すなわち、質量%の乗算(Gd_(2)O_(3)×Y_(2)O_(3)×ZrO_(2))が0でないこと)は、好ましくない。これは、安価にガラスを製造するに当り、希少鉱物資源であるGd_(2)O_(3)とY_(2)O_(3)を含有し、かつ、難熔融成分であるZrO_(2)をも含有することは、原料価格の上昇と消費エネルギー増大が重なることを意味し、製造コストの上昇につながるためである。
【0023】
構成6は、構成1?5で述べた複屈折が生じにくいガラスを作製するのに適する、具体的な構成成分の割合を示したものである。個々の成分の効果については、前述のとおりである。
ここで、SiO_(2)成分を19.0質量%以上含有する場合は、Li_(2)O及びNa_(2)O及びK_(2)O及びZnOから選ばれる成分の一種類以上を0.1?3.0質量%の範囲で含有させることが好ましい。その理由は、前述したとおり、SiO_(2)成分を多く含有させると、熔融性が悪化してしまうため、原料の熔融を促進するLi_(2)O及びNa_(2)O及びK_(2)O及びZnOから選ばれる一種類以上を含有させることで、熔解温度を低くできるからである。
なお、アルカリ金属酸化物の合計量(ΣR_(2)O)は、0.0?3.0%とすることが好ましい。この合計量が3.0質量%を超えると、特に、化学的耐久性の悪化を招くばかりでなく、平均熱膨張係数の増大によって、計算式=1.5×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下を実現しにくくなるため、好ましくない。
【0024】
構成7は、前述の構成1?6で説明した複屈折が生じにくいガラスの中でも、-30?+70℃の平均線膨張係数をα、波長546.1nmにおける光弾性定数をβ、420nmにおける内部透過率(10mm厚)をτであらわした時、計算式α×β×(1-τ)の値が1.3×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下であることを特徴とする、屈折率(nd)1.68?1.72、アッベ数(νd)51?58であるガラスを、安価かつ安定に作製するための最も適した構成である。
より高精度の光学素子や光学設計に用いるためには、計算式α×β×(1-τ)の値がより小さい方が好ましいが、屈折率やアッベ数も光学素子及び光学系の特性を決定付ける大事な要素である。例えば、同一のレンズ形状(曲率や肉厚)であれば、屈折率が高いほど焦点距離は短くできるため、装置全体のコンパクト化には、高屈折率のガラスが有用であるため、計算式の値と光学恒数(屈折率やアッベ数)のバランスの取れたガラスは有用性が高い。
上記特性を実現するために適したガラス構成成分の効果は前述のとおりである。
ガラスの耐失透性を維持しつつLa_(2)O_(3)を大量に含有させるために、SiO_(2)成分は、3.0?10.0質量%の範囲で含有させることが好ましく、B_(2)O_(3)成分は、33.0?41.0質量%未満の範囲とすることが好ましい。
ここで、質量%比SiO_(2)/B_(2)O_(3)を1.0以下とすることにより、ガラスが著しく不安定になることなく、大量のLa_(2)O_(3)を大量に含有させることが可能となりつつ、ガラス熔融時に熔け残り(主として、SiO_(2)を含む難熔融性の結晶)の発生を抑制し、良好な生産性を維持することが可能となる。
構成7のガラスにおいて、所望の計算式の値を実現するために、La_(2)O_(3)成分は重要な成分であり(光弾性定数βを小さくする効果が高いガラス修飾成分で有り、屈折率を高め、適切なアッベ数を実現する効果を持ち合わせ、かつ、高い内部透過率を実現できる)、35.0?42.0質量%未満の範囲で含有させることが好ましい。35.0質量%を下回ると、所望の計算式の値を実現できず、42.0質量%を超えると、ガラスの耐失透性が悪化する。
BaO成分はLa_(2)O_(3)成分と同様に、所望の計算式の値を実現するために、0.5?10.0質量%の範囲で含有させることが好ましい。BaOの含有量を10.0%以下にすることで特に化学的耐久性が良好となり、0.5%以上とすることにより、計算式「α×β×(1-τ)」において、所望の値を実現しやすくなる。
ここで、BaOとLa_(2)O_(3)の合計量は、35.0?50.0質量%であることが、特に好ましい。35.0質量%以上とすることで、特に小さな光弾性定数と適切な屈折率と高い内部透過率を実現しやすくなり、一方、50.0質量%以下とすることで、特にガラスの耐失透性が向上しやすくなり、生産性の向上を期待できる。
CaO成分は、ガラスの化学的耐久性を向上させ、屈折率及びアッベ数の調整に有効であり、2.0?12.0質量%の範囲で含有させることにより、十分な化学的耐久性を実現することができる。
ZnO成分は、ガラスの熔融性の向上及び、適切な平均熱膨張係数を実現するために有効であるが、1.0質量%以上とすることによりガラスの熔融性が悪くならず、高温熔解する必要がなくなり、可視領域短波長の内部透過率の悪化の心配がなくなる。一方、6.0質量%以下の量で含有させると、光弾性定数を小さく保ち、所望の計算式の値を実現しやすくなる。
ZrO_(2)成分は、耐失透性と化学的耐久性の向上を目的として、1.0?6.0質量%未満の範囲で添加できるが、特にこの範囲内にすることにより、耐失透性及び化学的耐久性の向上効果が期待でき、ガラス製造時により低温で溶解できるようになり、エネルギー消費を低減できる。
Al_(2)O_(3)成分は、ガラスの化学的耐久性を向上させる効果がある。特に1.0質量%未満を上限として添加することで、屈折率が下がりすぎることを防止し、所望の屈折率を実現しやすくなる。
Li_(2)O成分は、ガラスの熔融性を向上させる効果が得られるため、任意に含有させることが可能であるが、平均熱膨張係数の増大、及び、屈折率低下を防止する目的から、0.0?0.5質量%未満の範囲で含有させることが特に好ましい。
Na_(2)O成分もガラスの熔融性向上効果が得られ、Li_(2)O成分よりは、平均熱膨張係数の増大を招かないため、0.0?2.0質量%の範囲で含有させることが特に好ましい。
K_(2)O成分もガラスの熔融性向上効果が得られ、Li_(2)O及びNa_(2)O成分よりも屈折率を低下させないため、0.0?2.0質量%の範囲で含有させることが特に好ましい。
ここで、アルカリ金属酸化物の合計量(ΣR_(2)O)は、0.0?2.0質量%とすることが特に好ましい。ガラスの熔融性向上効果を得るには、2.0質量%以下で十分であり、それ以上の添加は、化学的耐久性の悪化や平均熱膨張係数の増大を招くことがある。
SrO成分は、光弾性定数を小さく維持しつつ、屈折率やアッベ数を調整するため、0.0?10.0質量%の範囲で含有させることが特に好ましい。
TiO_(2)成分は、高い内部透過率を実現するために、その範囲は、0.0?1.0質量%未満の範囲とすることが好ましい。
Yb_(2)O_(3)及びGd_(2)O_(3)成分は、屈折率の調整のために、それぞれ0.0?5.0質量%未満の範囲で含有させることが特に好ましいが、希少鉱物資源であるため、5.0質量%以上を含有させることは好ましくない。最も安価に所望の特性を持つガラスを実現するためには、一切含有しないことである。
Y_(2)O_(3)成分は、屈折率の調整を目的として、0.0?1.0質量%未満の範囲で含有させることが特に好ましいが、希少鉱物資源であるため、最も安価に所望の特性を持つガラスを実現するためには、一切含有しないことである。
Sb_(2)O_(3)成分は、ガラスの脱泡材としての効果が得るため、0.0?1.0質量%の範囲とすることが好ましい。上限を超えて添加すると、可視領域短波長の内部透過率が悪化し、所望の特性を実現しにくくなるため、好ましくない。
また、弗素(Fイオン)は、前述の不利益があるため、一切含有しないことが好ましい。
酸化物基準での質量%比(BaO+La_(2)O_(3))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))が、0.90以上2.0未満、及び、質量%の乗算(Gd_(2)O_(3)×Y_(2)O_(3)×ZrO_(2))が0であることの制限理由は、前述のとおりである。
【0025】
構成8?10に記載のように、前記構成1?7に記載の光学ガラスは、レンズ・プリズムなどの光学素子を作製するための母材として有用であり、その光学素子をカメラやプロジェクタに利用することにより、高精細で高精度な結像及び投影特性を実現できる。
【0026】
本発明のガラスを母材としてレンズやプリズムを作製する手法の代表例として、構成9に、リヒートプレス加工を挙げたが、この製法に限定されることは無く、たとえば、モールドプレス加工などの技術を用いて、光学素子を作製することが可能である。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
【0028】
表1?表4に、高強度の光に曝される環境下で使用しても結像特性影響を受けにくい、屈折率(nd)が1.63?1.80、かつ、アッベ数(νd)が45?60である複屈折が生じにくいガラスを得るための好適な実施例(No.1?20)のガラス組成、-30?+70℃の平均線熱膨張係数α、波長546.1nmにおける光弾性定数β、420nmにおける内部透過率(10mm厚)τ、計算式α×β×(1-τ)、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、各種の成分含有率の比及び含有率和を示す。
なお、No.1、2、7及び8は、本発明の参考例である。
【0029】
また、表5に公知の光学ガラスの比較例(No.A及びB)のガラス組成及び各種物性値を示す。ここで、比較例Aは、特開2006-96610号公報の実施例2であり、実施例Bは、特開平08-259257の実施例1である。なお、表中の屈折率(nd)、アッベ数(νd)はそれぞれの公報記載値である。
【0030】
得られた光学ガラスについて、-30?+70℃の平均線熱膨張係数(α)、波長546.1nmにおける光弾性定数(β)、420nmにおける内部透過率(10mm厚)(τ)、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、を以下のようにして測定した。
(1)-30?+70℃の平均線熱膨張係数(α)
日本光学硝子工業会規格JOGIS08-2003(光学ガラスの熱膨張の測定方法)に記載された方法に準じ、測定した。ここで、評価温度範囲は-30?+70℃とし、試験片として長さ50mm、直径4mmの試料を使用した。
(2)波長546.1nmにおける光弾性定数(β)
光弾性定数(β)は、試料形状を対面研磨した直径25mm、厚さ8mmの円板状とし、所定方向に圧縮荷重を加え、ガラスの中心に生じる光路差を測定し、δ=β×d×Fの関係式により求めた。546.1nm測定光源は超高圧水銀灯を使用した。上記の式では、光路差をδ(nm)、ガラスの厚さをd(cm)、応力をF(Pa)として表記している。
(3)420nmにおける内部透過率(10mm厚)(τ)
日本光学硝子工業会規格JOGIS17-^(1982)(光学ガラスの内部透過率の測定方法)に記載された方法に準じ、測定した。
(4)屈折率(nd)及びアッベ数(νd)
徐冷降温速度を-25℃/時にして得られた光学ガラスについて測定した。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0035】
【表5】

【0036】
表1?4に記載の本発明の実施例のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物などの通常の光学ガラス原料を用いて、所定の割合で秤量・混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1100?1350℃の温度範囲で3?4時間熔融し、攪拌均質化した後、適当な温度に下げてから、金型などに鋳込み、徐冷することにより得られた。
【0037】
表1?4に示したとおり、本発明の好ましい実施例ではいずれも所望の光学恒数、計算式α×β×(1-τ)を実現できることが分かった。一方、表5に示した比較例では、比較例Aは、ZnOを多く含有していること及び質量%比(BaO+La_(2)O_(3))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))が0.80未満であるため、光弾性定数βが大きくなってしまい、計算式の値が2.0×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]を超えてしまう。また、比較例Bは、ZnOの含有量は少ないが、La_(2)O_(3)の含有量が少なく、質量%比(BaO+La_(2)O_(3))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))が0.80未満であるため、光弾性定数βが大きくなってしまい、計算式の値が2.0×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]を超えてしまう。いずれの比較例においても、質量%の乗算(Gd_(2)O_(3)×Y_(2)O_(3)×ZrO_(2))が0でないため、安価に製造できるガラスとは言えない。
【0038】
また、表1?4に記載した実施例のガラスを、冷間加工或いはリヒートプレス加工したところ、失透などの問題は生じず、安定に様々なレンズやプリズム形状に加工できた。また、ガラスの軟化温度が比較的低い実施例のガラスについて、精密モールドプレス成型加工を実施したところ、良好なレンズを取得することが可能であった。
【0039】
上述のように作製したレンズやプリズムをカメラやプロジェクタに搭載させ、結像特性を確認したところ、室温で取得した光学恒数を利用した光学設計で期待される結像特性が、高強度の光に曝される環境下、及び、高温(50?70℃程度)動作時でも再現できることを確認した。
【0040】
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、高強度の光に曝される環境下で使用しても結像特性影響を受けにくい、屈折率(nd)が1.63?1.80、かつ、アッベ数(νd)が45?60である複屈折が生じにくいガラスを提供でき、この光学ガラスを使用して、高精度なカメラなどの撮像機器及びプロジェクタなどの画像投影(再生)機器のレンズやプリズムを安定に作成できる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準の質量%表示で、SiO_(2)を1.0?30.0%含有し、B_(2)O_(3)を3.0?45.0%含有し、La_(2)O_(3)を1.0?42.0%未満含有し、BaOを0.5?40.84%含有し、ZnOを0?10.0%含有し、Li_(2)Oを0?0.5%未満含有し、Gd_(2)O_(3)を0?5.0%未満含有し、Al_(2)O_(3)を0?1.0%未満含有し、
Na_(2)O 0?3.0%、
K_(2)O 0?3.0%、
Cs_(2)O 0?3.0%、
MgO 0?5.0%、
CaO 0?15.0%、
SrO 0?15.0%、
Y_(2)O_(3) 0?6.0%未満、
Lu_(2)O_(3) 0?5.0%、
Yb_(2)O_(3) 0?5.0%、
Sb_(2)O_(3) 0?2.0%、
TiO_(2) 0?3.0%、
ZrO_(2) 0?6.0%未満、
SnO_(2) 0?3.0%、
TeO_(2) 0?3.0%、
P_(2)O_(5) 0?5.0%、
Ta_(2)O_(5) 0?5.0%、
Nb_(2)O_(5) 0?5.0%、
WO_(3) 0?5.0%、を含み、
アルカリ金属酸化物の合計量(ΣR_(2)O)が、0?3.0%、
BaOとLa_(2)O_(3)の合計が30.0?60.0%のガラスであって、
かつ上記酸化物の質量に対する実際に含有されるF原子の質量を質量百分率で現したFの合計量が、0?3.0%であり、-30?+70℃の平均線膨張係数をα、波長546.1nmにおける光弾性定数をβ、420nmにおける内部透過率(10mm厚)をτであらわした時、計算式α×β×(1-τ)の値が2.0×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下であることを特徴とするガラス。
【請求項2】
屈折率(nd)が1.63?1.80、アッベ数(νd)が45?60の範囲の光学恒数を有することを特徴とする請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
請求項1?2のいずれか一項に記載のガラスであって、酸化物基準の質量%表示で、
TiO_(2) 0?1.0%未満、
SnO_(2) 0?1.0%未満、
Nb_(2)O_(5) 0?1.0%未満、
Yb_(2)O_(3) 0?1.0%未満、
Bi_(2)O_(3) 0?1.0%未満を含有し、
鉛化合物及び砒素化合物及びフッ素化合物を実質的に含有しないことを特徴とするガラス。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載のガラスであって、質量%比(BaO+La_(2)O_(3))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))が、0.80以上2.0未満であり、質量%の乗算(Gd_(2)O_(3)×Y_(2)O_(3)×ZrO_(2))が0であり、-30?+70℃の平均線膨張係数をα、波長546.1nmにおける光弾性定数をβ、420nmにおける内部透過率(10mm厚)をτであらわした時、計算式α×β×(1-τ)の値が1.5×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm^(-1)×Pa^(-1)]以下であることを特徴とするガラス。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載のガラスであって、酸化物基準の質量%表記で
SiO_(2) 3.0?27.0%未満、
B_(2)O_(3) 5.0?42.0%未満、
La_(2)O_(3) 1.0?42.0%未満、
Al_(2)O_(3) 0?1.0%未満、
ZnO 0?6.0%未満、
Y_(2)O_(3) 0?6.0%未満、
ZrO_(2) 0?6.0%未満、
Na_(2)O 0?3.0%、
K_(2)O 0?3.0%、
Cs_(2)O 0?3.0%、
MgO 0?2.0%、
CaO 0?13.0%、
SrO 0?13.0%、
Sb_(2)O_(3) 0?1.0%、
の各成分を含有し、SiO_(2)を19.0%以上含有する場合、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、ZnOから選ばれる成分の一種類以上を0.1%?3.0%未満含有することを特徴とするガラス。
【請求項6】
酸化物基準の質量%表記で、
SiO_(2) 3.0?10.0%、
B_(2)O_(3) 33.0?41.0%未満、
La_(2)O_(3) 35.0?42.0%未満、
BaO 0.5?10.0%、
CaO 2.0?12.0%、
ZnO 1.0?6.0%未満、
ZrO_(2) 1.0?6.0%未満、
Al_(2)O_(3) 0?1.0%未満、
Li_(2)O 0?0.5%未満、
Na_(2)O 0?2.0%、
K_(2)O 0?2.0%、
SrO 0?10.0%、
TiO_(2) 0?1.0%未満、
Yb_(2)O_(3) 0?1.0%未満、
Y_(2)O_(3) 0?1.0%未満、
Sb_(2)O_(3) 0?1.0%、
但し、アルカリ金属酸化物の合計量(ΣR_(2)O)が、0?2.0%
但し、BaOとLa_(2)O_(3)の合計が35.0?50.0%
の各成分を含有し、鉛化合物及び砒素化合物及び弗素(F)イオンを含有せず、質量%比(BaO+La_(2)O_(3))/(SiO_(2)+B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))が、0.90以上2.0未満であり、質量%の乗算(Gd_(2)O_(3)×Y_(2)O_(3)×ZrO_(2))が0であり、-30?+70℃の平均線膨張係数をα、波長546.1nmにおける光弾性定数をβ、420nmにおける内部透過率(10mm厚)をτであらわした時、計算式α×β×(1-τ)の値が1.3×10^(-12)[K^(-1)×nm×cm-1×Pa^(-1)]以下であることを特徴とする、屈折率(nd)1.68?1.72、アッベ数(νd)51?58であるガラス。
【請求項7】
請求項1?6いずれか一項記載のガラスを母材とする光学素子。
【請求項8】
請求項1?6いずれか一項記載のガラスをリヒートプレス加工して作成する光学素子。
【請求項9】
請求項1?6いずれか一項記載のガラスで作成した光学素子および光学基板材料を使用する光学機器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2014-08-27 
出願番号 特願2006-189778(P2006-189778)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (C03C)
P 1 41・ 851- Y (C03C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田澤 俊樹  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 真々田 忠博
中澤 登
登録日 2013-04-05 
登録番号 特許第5237534号(P5237534)
発明の名称 ガラス  
代理人 林 一好  
復代理人 北島 志保  
復代理人 北島 志保  
代理人 新山 雄一  
代理人 正林 真之  
復代理人 高橋 雄一郎  
代理人 正林 真之  
代理人 新山 雄一  
代理人 林 一好  
復代理人 高橋 雄一郎  

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