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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1291939 |
審判番号 | 不服2013-18652 |
総通号数 | 179 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-09-27 |
確定日 | 2014-09-11 |
事件の表示 | 特願2008-307810「配線基板及び電子部品装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月17日出願公開、特開2010-135418〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年12月2日の出願であって、平成25年7月17日付けで拒絶査定(発送日:同年7月23日)がされ、これに対し、同年9月27日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。 第2 平成25年9月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年9月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本願補正発明 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成25年1月25日付け手続補正書)の 「【請求項1】 配線層が絶縁層を挟んで複数積層された配線形成領域と、前記配線形成領域の周囲に配置され、前記配線層と同じ層に補強パターンが形成された外周領域とを有する配線基板において、 各前記層において前記外周領域に対する前記補強パターンの面積率と前記配線形成領域に対する前記配線層の面積率とはほぼ同じであり、前記各層の前記補強パターンの形状を相違させて、前記配線基板を平面透視したときに前記外周領域に前記補強パターンが隙間なく存在するように配置されたことを特徴とする配線基板。」を、 「【請求項1】 配線層が絶縁層を挟んで少なくとも3層積層された配線形成領域と、前記配線形成領域の周囲に配置され、前記配線層と同じ層に補強パターンが形成された外周領域とを有する配線基板であって、 各前記層において前記外周領域に対する前記補強パターンの面積率と前記配線形成領域に対する前記配線層の面積率とはほぼ同じであり、前記各層の前記補強パターンの形状を相違させて、前記配線基板を平面透視したときに前記外周領域に前記補強パターンが隙間なく存在するように配置されたことを特徴とする配線基板。」と補正することを含むものである(下線は、請求人が補正箇所を示すために付したものである。)。 本件補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「配線基板」について、「配線層が絶縁層を挟んで複数積層された」を、「配線層が絶縁層を挟んで少なくとも3層積層された」と限定するものである。また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するものではない。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて以下に検討する。 2 刊行物 (1)刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開平8-51258号公報(以下「刊行物1」という。)には、「プリント配線基板のダミーパターン」に関して、図面と共に、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、・・・捨て板部分に形成されるダミーパターンの形状等に関するものであって、反りやねじれが発生し易く、また基板としての剛性が十分でない多層フレキシブルプリント配線基板に好適に利用される。 【0002】 【従来の技術】・・・プリント配線基板の実装工程における反り、ねじれ等の発生が、歩留りに大きな影響を与える不具合として指摘されている。 【0003】そのため、このような不具合を解消すべく、従来より図5に示すように、配線パターンが形成された回路本体部分51と、捨て板部分52とで構成されるプリント配線基板53の捨て板部分52の片面全体に、銅箔パターンを形成(いわゆる、ベタパターン状に形成)することにより、剛性を保持したプリント配線基板53が提供されている。 【0004】(略) 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図5に示した従来のプリント配線基板53では、捨て板部分52の片面全体に銅箔パターンが形成されていることから、基板自体が温度や湿度の変化によって伸縮しようとしても、銅箔パターンによって伸縮が妨げられ、結果としてプリント配線基板53が反ったり、ねじれたりするといった不具合が発生する。」 イ 「【0021】図1及び図2は、本発明に係わるプリント配線基板の構造の一例を示し、図1は外観図、図2は捨て板部分の部分拡大図であって、請求項1及び2に対応している。 【0022】すなわち、本実施例のプリント配線基板1は、配線パターンが形成された回路本体部分2と、捨て板部分3とで構成されている。そして、捨て板部分3には、図2に示すように、六角形パターンをハニカム状に配列した銅箔のダミーパターン31・・・が一定間隔の隙間32を存して形成されている。 【0023】そして、この捨て板部分3におけるダミーパターン31・・・の存在する面積と存在しない面積(隙間32全体の面積)との比を、回路本体部分2における配線パターン(図示省略)の存在する面積と存在しない面積との比にほぼ等しく(同一も含む)なるように形成している。つまり、回路本体部分2と捨て板部分3との残銅率をほぼ等しくしている。 【0024】このように、回路本体部分2と捨て板部分3との残銅率をほぼ等しくすることにより、温度、湿度の変化によるプリント配線基板1の伸縮の挙動が、回路本体部分2及び捨て板部分3でほぼ同一となるため、プリント配線基板1の反り、ねじれが大幅に軽減されるものである。 【0025】(略) 【0026】このように、ダミーパターン31を六角形としてハニカム形状に配列し、銅箔のない隙間32部分が直線的に連続しない構造とすることにより、プリント配線基板1の折り曲げ方向の力に対して一定の剛性を保つことができる。 【0027】また、ダミーパターン31を六角形とした場合には、隣接するダミーパターン31,31間の隙間32を一定間隔に保って高密度に配列することができるため、プリント配線基板1の剛性を一定レベルに保持することができる。・・・」 ウ 「【0028】図3は、本発明に係わるプリント配線基板の捨て板部分の他の構造を示した部分拡大図であって、請求項3に対応している。 【0029】すなわち、本実施例のプリント配線基板は、図示は省略しているが、製品部分である配線パターンが2層以上に積層されて形成された回路本体部分と、製品外である捨て板部分とで構成されている。つまり、配線パターンが2層以上である点、及び捨て板部分に形成されるダミーパターン(後述する)もこれに対応した2層以上である点を除いて、図1のものと外観構成は同様である。 【0030】つまり、捨て板部分には、図3に示すように、回路本体部分に積層された配線パターン(図示省略)に対応して、2層以上に積層されたダミーパターン34a,34b・・・が形成されている。ただし、図面には2層に積層したダミーパターン34a,34b・・・が示されており、実線で示した六角形のパターンが例えば上層のダミーパターン34a・・・、破線で示した六角形のパターンが例えば下層のダミーパターン34b・・・をそれぞれ示している。 【0031】そして、この捨て板部分における各層のダミーパターン34a,34b・・・の存在する面積と存在しない面積との比を、回路本体部分における対応する各層の配線パターンの存在する面積と存在しない面積との比にほぼ等しく(同一も含む)なるように形成している。つまり、回路本体部分と捨て板部分との残銅率を各層ごとにほぼ等しく(従って、全体としてもほぼ等しく)している。 【0032】このように、回路本体部分と捨て板部分との残銅率をほぼ等しくすることにより、温度、湿度の変化によるプリント配線基板の伸縮の挙動が、回路本体部分及び捨て板部分でほぼ同一となるため、プリント配線基板の反り、ねじれが大幅に軽減されるものである。 【0033】また、各層のダミーパターン34a,34b・・・は、六角形のパターンをハニカム状に配列した構成となっており、かつ隣接する層同士のダミーパターン34a,34b・・・は、本実施例ではハーフピッチずつ縦及び横方向にずらせて配置されている。つまり、各層のダミーパターン34a,34b・・・が完全に一致して重ならないようにピッチをずらせているので、ダミーパターン34a,34b・・・の存在しないスペース部分(隙間35a,35b・・・)が、隣接する層間で同一の場所に存在しないことになる。そのため、例えばプリント配線基板の残銅率が低下しても、剛性の低下を最小限に抑えることができるものである。」 エ 図5は、プリント配線基板の外観図であり、同図に関する上記「ア」の段落【0003】の「図5に示すように、配線パターンが形成された回路本体部分51と、捨て板部分52とで構成されるプリント配線基板53の捨て板部分52の片面全体に、銅箔パターンを形成(いわゆる、ベタパターン状に形成)する」との記載からみて、配線パターンと銅箔パターンとはプリント配線基板53の同じ面に形成されているから、配線パターンと銅箔パターンとはプリント配線基板53の同じ層に形成されているといえる。 そして、図1及び図2のプリント配線基板1は、図5のプリント配線基板53を前提としたものであり、また、図3の多層プリント配線基板は、図1及び図2のプリント配線基板1を2層以上としたものであるから、図3の多層プリント配線基板においても、回路本体部分の配線パターンと捨て板部分のダミーパターン34a,34bとは同じ層に形成されているといえる。 オ 上記「イ」の段落【0026】及び図2からみて、図3の「ダミーパターン34a,34b」は多層プリント配線基板を補強するためのパターンであるといえる。 カ 図3には、上記「ウ」の段落【0030】の「実線で示した六角形のパターンが例えば上層のダミーパターン34a・・・、破線で示した六角形のパターンが例えば下層のダミーパターン34b・・・をそれぞれ示している。」との記載及び段落【0033】の「各層のダミーパターン34a,34b・・・が完全に一致して重ならないようにピッチをずらせているので、ダミーパターン34a,34b・・・の存在しないスペース部分(隙間35a,35b・・・)が、隣接する層間で同一の場所に存在しないことになる。」との記載をあわせみると、六角形のダミーパターン34a,34bがピッチをずらせて上下(紙面の表裏方向)に重なっており、上層のダミーパターン34a間の隙間35aの多くの部分は、下層のダミーパターン34bと重なる一方、隣接する3つの六角形のダミーパターン34aの中心についてみれば、隙間35aの一部が重ならない部分が存在することが示されている。 この図示事項からみて、捨て板部分において、ダミーパターン34a,34bは、平面透視したときに、ほぼ隙間35a,35bなく存在するように配置されるといえる。 これらの記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「配線パターンが2層積層された回路本体部分と、前記回路本体部分の周囲に配置され、前記配線パターンと同じ層にダミーパターン34a,34bが形成された捨て板部分とを有する多層プリント配線基板であって、 各前記層において前記捨て板部分における前記ダミーパターン34a,34bの存在する面積と存在しない面積との比と前記回路本体部分における前記配線パターンの存在する面積と存在しない面積との比とはほぼ等しく、前記各層の前記ダミーパターン34a,34bの形状を六角形として、前記多層プリント配線基板を平面透視したときに前記捨て板部分に前記ダミーパターン34a,34bがほぼ隙間35a,35bなく存在するように配置された多層プリント配線基板。」 (2)刊行物2 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開平11-177191号公報(以下「刊行物2」という。)には、「プリント配線板および多層プリント配線板」に関して、図面と共に、次の事項が記載されている。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は・・・、特に配線パターンが形成された製品部分である本体部分と製品以外の部分である捨て板部分とを有するプリント配線板および多層プリント配線板に関するものである。」 イ 「【0029】・・・図7において、部品実装時の搬送方向に平行な辺の捨て板部分13bにおいて、第1層のダミーパターン28は、円形のダミーパターンが、一定の間隔で配列されて形成されている。そして、第2層のダミーパターン29は、円形のダミーパターンが、図7の上下左右方向に位置をピッチの半分ずらせて一定の間隔で配列されている。 【0030】このように構成された多層プリント配線板においては、隣接するダミーパターン28間に形成された隙間(分割部分)は、基板に垂直な方向で重なることがないので、基板を湾曲させようとする力が隙間部分に集中して折れやすくなることがなく、搬送方向に平行な辺の剛性を強めることができる。 【0031】・・・図8において、部品実装時の搬送方向に平行な辺の捨て板部分13bにおいて、第1層のダミーパターン30は、円形のダミーパターンが、一定の間隔で配列されて形成されている。そして、第2層のダミーパターン31は、矩形のダミーパターンが、図8の上下左右方向に位置をピッチの半分ずらせて一定の間隔で配列されている。 【0032】このように構成された多層プリント配線板においては、ダミーパターンは隣接する層で異なる形状とされているので、搬送方向に平行な辺の剛性をさらに強めることができる。」 ウ 上記「イ」の段落【0029】及び【0030】の記載及び図7からみて、第2層のダミーパターン29を、第1層のダミーパターン28に対して上下方向に位置をピッチの半分ずらせて配置することは、第2層のダミーパターン29を、第1層のダミーパターン28間に形成された隙間に配置することで、多層プリント配線板の剛性を高めていることが分かる。また、上記「イ」の段落【0031】及び【0032】の記載及び図8からみて、各層のダミーパターンの形状を異ならせることでも多層プリント配線板の剛性を高めていることが分かる。 これらの記載事項及び図面の図示内容からみて、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2に記載された発明」という。)が記載されている。 「第1層のダミーパターン28とは形状が相違する第2層のダミーパターン29を、第1層のダミーパターン28間に形成された隙間に配置すること。」 3 対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「配線パターン」は前者の「配線層」に相当し、以下同様に、「回路本体部分」は「配線形成領域」に、「ダミーパターン34a,34b」は「補強パターン」に、「捨て板部分」は「外周領域」に、「多層プリント配線基板」は「配線基板」に、「各前記層において前記捨て板部分における前記ダミーパターン34a,34bの存在する面積と存在しない面積との比と前記回路本体部分における前記配線パターンの存在する面積と存在しない面積との比とはほぼ等しく」は前者の「各前記層において前記外周領域に対する前記補強パターンの面積率と前記配線形成領域に対する前記配線層の面積率とはほぼ同じ」にそれぞれ相当する。 また、後者の「配線パターンが2層積層された回路本体部分と、前記回路本体部分の周囲に配置され、前記配線パターンと同じ層にダミーパターン34a,34bが形成された捨て板部分とを有する多層プリント配線基板」と前者の「配線層が絶縁層を挟んで少なくとも3層積層された配線形成領域と、前記配線形成領域の周囲に配置され、前記配線層と同じ層に補強パターンが形成された外周領域とを有する配線基板」とは、「配線層が積層された配線形成領域と、前記配線形成領域の周囲に配置され、前記配線層と同じ層に補強パターンが形成された外周領域とを有する配線基板」という限りで共通する。 したがって両者は、 「配線層が積層された配線形成領域と、前記配線形成領域の周囲に配置され、前記配線層と同じ層に補強パターンが形成された外周領域とを有する配線基板であって、 各前記層において前記外周領域に対する前記補強パターンの面積率と前記配線形成領域に対する前記配線層の面積率とはほぼ同じである配線基板。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 本願補正発明では、配線層が「絶縁層を挟んで少なくとも3層」積層され、「前記各層の前記補強パターンの形状を相違させて、前記配線基板を平面透視したときに前記外周領域に前記補強パターンが隙間なく存在するように配置された」ものであるのに対し、 引用発明では、配線パターンが「2層」積層され、「前記各層の前記ダミーパターン34a,34bの形状を六角形として、前記多層プリント配線基板を平面透視したときに前記捨て板部分に前記ダミーパターン34a,34bがほぼ隙間35a,35bなく存在するように配置された」ものである点。 4 当審の判断 上記相違点について検討する。 (1)配線基板の積層数について 刊行物1の「製品部分である配線パターンが2層以上に積層されて形成された回路本体部分」(前記「2」の「(1)ウ」の段落【0029】)との記載からみて、引用発明において、配線パターンの積層数を3層以上とすることが示唆されている。 ここで、多層プリント配線基板において、配線パターンを3層以上としたときに配線パターン間に絶縁層を設けることは通常行われることである。 そうすると、引用発明において、上記示唆された事項及び上記周知技術に基いて、配線パターンが「絶縁層を挟んで少なくとも3層」積層されたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 また、刊行物1の「各層のダミーパターン34a,34b・・・が完全に一致して重ならないようにピッチをずらせているので、ダミーパターン34a,34b・・・の存在しないスペース部分(隙間35a,35b・・・)が、隣接する層間で同一の場所に存在しないことになる。そのため、例えばプリント配線基板の残銅率が低下しても、剛性の低下を最小限に抑えることができる」(前記「2」の「(1)ウ」の段落【0033】)との記載からみて、引用発明において、ダミーパターン34a間の隙間35aとダミーパターン34b間の隙間35bとが同一の場所に存在すると、プリント配線基板の剛性の低下が大きくなることが示唆されている。そして、引用発明は、前記ダミーパターン34a,34bがほぼ隙間35a,35bなく存在するように配置されたもので、隙間35a,35bの一部が同一の場所に存在するから、プリント配線基板の剛性の低下という課題を内在するものといえる。 そうしてみると、先に述べた、引用発明において配線パターンが「絶縁層を挟んで少なくとも3層」積層されたものとするにあたって、引用発明に内在した上記課題からみて、引用発明において、配線パターンが「絶縁層を挟んで少なくとも3層」積層され、「前記配線基板を平面透視したときに前記外周領域に前記補強パターンが隙間なく存在するように配置された」ものとすることは当業者が容易になし得たことである。 (2)補強パターンの形状について 刊行物1の「各層のダミーパターン34a,34b・・・が完全に一致して重ならないようにピッチをずらせているので、ダミーパターン34a,34b・・・の存在しないスペース部分(隙間35a,35b・・・)が、隣接する層間で同一の場所に存在しないことになる。そのため、例えばプリント配線基板の残銅率が低下しても、剛性の低下を最小限に抑えることができる」(前記「2」の「(1)ウ」の段落【0033】)との記載からみて、引用発明は、上層のダミーパターン34aを、下層のダミーパターン34b間に形成された隙間35bに配置することで、多層プリント配線基板の剛性の低下を抑えるものである。 また、刊行物2に記載された発明は、前記「2」の「(2)ウ」で示したように、第2層のダミーパターン29を、第1層のダミーパターン28間に形成された隙間に配置することで、多層プリント配線板の剛性を高めるものであると共に、各層のダミーパターン28,29の形状を異ならせることでも多層プリント配線板の剛性を高めるものである。 引用発明及び刊行物2に記載された発明は、一方のダミーパターンを、他方のダミーパターン間に形成された隙間に配置することで、多層プリント配線基板の剛性を維持するものである点で共通する。 そうしてみると、引用発明の「前記各層の前記ダミーパターン34a,34b」において、刊行物2に記載された発明を適用して、「前記各層の前記補強パターンの形状を相違させ」ることは、当業者が容易になし得たことである。 (3)まとめ 上記(1)及び(2)を総合すると、引用発明に刊行物2に記載された発明を適用して、引用発明において、「配線層が『絶縁層を挟んで少なくとも3層』積層され、『各層のダミーパターン34a,34bの形状を相違させて、多層プリント配線基板を平面透視したときに捨て板部分にダミーパターン34a,34bが隙間なく存在するように配置された』もの」とすることは、当業者が容易になし得たことである。 また、本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び刊行物2に記載された発明から、当業者が予測できる範囲のものであって、格別なものではない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5 むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成25年1月25日付け手続補正により補正された特許請求の範囲1ないし9に記載された事項により特定されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2 刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物1に記載された事項、引用発明、刊行物2に記載された事項及び刊行物2に記載された発明は、前記「第2[理由]2」に記載したとおりである。 3 対比及び当審の判断 本願発明は、前記「第2[理由]」で検討した本願補正発明において、「配線基板」について、「配線層が絶縁層を挟んで少なくとも3層積層された」を、「配線層が絶縁層を挟んで複数積層された」に拡張するものである。 そうしてみると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含んだものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]3及び4」に記載したとおり、引用発明及び刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、引用発明及び刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-07-03 |
結審通知日 | 2014-07-08 |
審決日 | 2014-07-25 |
出願番号 | 特願2008-307810(P2008-307810) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中尾 麗、吉澤 秀明 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
森川 元嗣 稲葉 大紀 |
発明の名称 | 配線基板及び電子部品装置 |
代理人 | 岡本 啓三 |