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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16D |
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管理番号 | 1291948 |
審判番号 | 不服2013-8106 |
総通号数 | 179 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-05-02 |
確定日 | 2014-09-09 |
事件の表示 | 特願2009-523241「電気機械式パーキングブレーキ及びその動作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月14日国際公開、WO2008/017613、平成22年 1月 7日国内公表、特表2010-500511〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2007年7月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年8月7日(102006037098.8)及び2006年8月7日(102006037100.3)、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成24年12月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。 2.平成25年5月2日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年5月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由1] 本件補正により、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 原動機付き車両用の電気機械的に操作可能なパーキングブレーキであって、少なくとも1つの電気機械式のアクチュエータ(15)を備え、該アクチュエータの回転運動が操作ユニット(2)を介して直線運動に変換され、少なくとも1つのブレーキシュー(3,4)が、車輪に結合されたブレーキドラム(5)に対して、前記ブレーキシュー(3,4)に少なくとも1つ設けられたブレーキライニング(10,11)を所定の力で圧接するように摺動され、当該パーキングブレーキの作動時に前記アクチュエータの消費電流が検出される上記パーキングブレーキにおいて、 あらかじめ設定した所定のパーキングブレーキ力が検出されるよう前記アクチュエータ(15)の消費電流を変更させる手段(9)を設け、該手段(9)を、所定のパーキングブレーキ力を推定するための、当該パーキングブレーキの作動時における前記アクチュエータ(15)の消費電流の特徴的な変化が生じるように形成するとともに、当該パーキングブレーキの剛性に影響を与えるあらかじめ付勢された少なくとも1つの弾性部材で形成し、該弾性部材(9)を、あらかじめ付勢された皿バネとして当該パーキングブレーキにおける力伝達箇所に設けるか、又はあらかじめ付勢されたねじりバネとして当該パーキングブレーキにおけるトルク伝達箇所に設けたことを特徴とするパーキングブレーキ。 【請求項2】 前記手段を少なくとも1つのすべりクラッチとして形成したことを特徴とする請求項1記載のパーキングブレーキ。 【請求項3】 原動機付き車両用の電気機械的に操作可能なパーキングブレーキの動作方法であって、少なくとも1つの電気機械式のアクチュエータ(15)を備え、該アクチュエータの回転運動が操作ユニット(2)を介して直線運動に変換され、少なくとも1つのブレーキシュー(3,4)が、車輪に結合されたブレーキドラム(5)に対して、前記ブレーキシュー(3,4)に少なくとも1つ設けられたブレーキライニング(10,11)を所定の力で圧接するように摺動され、当該パーキングブレーキの作動時に前記アクチュエータの消費電流が検出されるよう構成されたパーキングブレーキの上記動作方法において、 当該パーキングブレーキの作動時における前記アクチュエータ(15)の消費電流を、あらかじめ設定した所定のパーキングブレーキ力が検出されるよう利用することを特徴とするパーキングブレーキ動作方法。 【請求項4】 前記所定のパーキングブレーキ力を、前記ブレーキシュー(3,4)の位置特定について調整されるパーキングブレーキ力の決定に使用される、前記アクチュエータの消費電流の信号変化における変曲点(23,24)を検出することにより検出することにより検出することを特徴とする請求項3記載のパーキングブレーキ動作方法。 【請求項5】 前記アクチュエータ(15)の消費電流の信号変化の勾配を検出するとともに、該勾配を、付与されたパーキングブレーキ力及び/又は前記ブレーキシュー(3,4)の位置の特定に使用することを特徴とする請求項4記載のパーキングブレーキ動作方法。 【請求項6】 前記アクチュエータ(15)の消費電流の絶対値を検出し、該絶対値を、検出されたパーキングブレーキ力の正確性判断に用いることを特徴とする請求項3又は4記載のパーキングブレーキ動作方法。 【請求項7】 前記アクチュエータ(15)の消費電流に基づき当該パーキングブレーキの作動過程を複数の段階に区分することを特徴とする請求項3?6のいずれか1項に記載のパーキングブレーキ動作方法。 【請求項8】 当該パーキングブレーキの作動過程を初動段階(段階1)、惰性段階(段階2)、接触段階(段階3)、圧接段階(段階4)及び圧力保持段階(段階5)に区分することを特徴とする請求項7記載のパーキングブレーキ動作方法。 【請求項9】 前記各段階を、劣化プロセス及び摩耗プロセスを考慮するために学習手順を備えたモデルによって特定することを特徴とする請求項8記載のパーキングブレーキ動作方法。」に補正された。 上記補正は、請求項3についてみると、実質的に、本件補正前の請求項4に記載した発明を特定するために必要な事項である「当該パーキングブレーキの作動時及び/又は解除時に」を「当該パーキングブレーキの作動時に」に減縮するものであって、これは、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項3に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は上記のとおりである。 (2)引用例 (2-1)引用例1 特開平11-105680号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。 (あ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電動駐車ブレーキ装置に関する。」 (い)「【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明に係る電動駐車ブレーキ装置の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。 【0013】図1は、本発明に係る電動駐車ブレーキ装置1を示す図である。この電動駐車ブレーキ装置1は、駐車ブレーキ機構付きドラムブレーキ11と、このドラムブレーキの11内側に固定され駐車ブレーキ用パーキングレバー12の自由端に取り付けられた電動アクチュエータ13とを備えている。 【0014】ドラムブレーキ11は、円弧状のライニング14、14を備え、ブレーキ操作時に図示しないドラムに押し付けられるシュー15、15と、これらシュー15、15を押し広げるためのホイールシリンダ16とを備えている。そして、パーキングレバー12は、図中右側のシュー15に沿って配置されており、その上端部が枢軸17でシュー15に旋回自在に取り付けられている。このパーキングレバー12の上部側と、図中左側のシュー15との間には連結部材18が介挿されている。 【0015】電動アクチュエータ13は、ドラムブレーキ11内に固定されている。この電動アクチュエータ13は、図2に示すように電動機21と、電動機21の回転軸に取り付けられたピニオン22と、ピニオン22に噛合されたギヤ23と、ギヤ23の中心に取り付けられたボールネジ24と、ボールネジ24の取り付け板25に固定されたスライド軸26とを備えている。そして、このスライド軸26がパーキングレバー12(図1)の自由端に固定されている。 【0016】この電動駐車ブレーキ装置1は、図3に示すように車両30の両方の後車輪31、31に装着されている。また、車両30の運転席には、両方の電動駐車ブレーキ装置1、1をそれぞれ別々に操作するため駐車ブレーキ用スイッチ32、33が設けられている。この駐車ブレーキ用スイッチ32、33を操作することによって、電動駐車ブレーキ装置1、1の電動機21、21(図2)が所定の方向に回転するようになっている。なお、図中の符号35はハンドル、36、36は前車輪を示す。 【0017】次に、この電動駐車ブレーキ装置1の作用について説明する。駐車ブレーキをかける場合は、駐車ブレーキ用スイッチ32、33を押す。そうすると、図2に示すように電動駐車ブレーキ装置1の電動機21が回転し、この回転力がピニオン22、ギヤ23を介してボールネジ24に伝達される。 【0018】このボールネジ24では、回転力が直進力に変換され、この直進力によってスライド軸26が図中左側にスライドしてパーキングレバー12が左側に引っ張られる。これにより、図1に示すようにパーキングレバー12に時計回転方向の旋回力が発生し、この旋回力によって連結部材18を介して図中左側のシュー15のライニング14が図示しないドラムに押し付けられ、枢軸41を介して右側のシュー15のライニング14もドラムに押し付けられて駐車ブレーキがかけられる。 【0019】そして、電動機21に一定以上の電流が流れたら電動機21を停止させることにより、常に一定の駐車ブレーキ力を得ることができる。また、駐車ブレーキ解除時は電動機21を逆回転させて無負荷電流になったら電動機21の電源が切られる。」 以上の記載事項及び図面からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「車両用電動駐車ブレーキの動作方法であって、電動機21を備え、該電動機21の回転運動がボールネジ24等の機構を介して直線運動に変換され、シュー15が、車輪に結合されたドラムに対して、前記シュー15に設けられたライニング14を押し付けるように摺動され、電動駐車ブレーキの作動時に、電動機21に一定以上の電流が流れたら電動機21を停止させることにより、常に一定の駐車ブレーキ力を得ることができるようにする電動駐車ブレーキ動作方法。」 (2-2)引用例2 特開2000-130482号公報(以下、「引用例2」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。 (か)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、モータを駆動源とする電動ブレーキを備えた電動ブレーキ装置に関するものであり、特に、そのモータを制御する技術の改良に関するものである。」 (き)「【0024】一方、図6にグラフで示すように、モータ電流iと加圧力Fとの間には、モータ電流iに比例して加圧力Fが増加するという比例関係が存在する。例えば、モータ電流iの増加時には、加圧力Fを、 F=b×(i-a) なる式で表すことができる。ここに、bは、比例定数を表しており、一方、aは、モータ12に供給されても加圧力Fが増加しない無効電流を表している。そして、それらモータ電流iと加圧力Fとの関係は、前述の、押圧ロッド40のストロークSと加圧力Fとの関係とは異なり、パッド剛性値Cの影響を受けない。 【0025】このように、モータ電流iと加圧力Fとの関係には、パッド剛性値Cの影響を受けないという利点があり、よって、加圧力Fの実際値を取得することが必要である場合に、加圧力Fの実際値を直接に検出するセンサがなくても、モータ電流センサ102さえあれば、加圧力Fの実際値を精度よく取得可能となる。」 (2-3)引用例3 特開2002-357235号公報(以下、「引用例3」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。 (さ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換して制動力を発生させる電動ディスクブレーキおよびその制御プログラムに関するものである。」 (し)「【0007】したがって、本発明は、低コストで、ブレーキパッドがディスクロータに接触する際のピストンのストローク位置を検出することができる電動ディスクブレーキおよびその制御プログラムの提供を目的としている。」 (す)「【0031】以上のように構成した本実施形態の電動ディスクブレーキの基本作動について次に説明する。 【0032】非制動状態では、ボールランプ機構21のボール34がボール溝38,39の最も深い端部にあり、第1ディスク32と第2ディスク33とが最も近い位置にある。制動時に、電動モータ19のロータ28を時計回りに回転させると、偏心板59が公転し、サイクロイド溝64,65及びボール66の作用によって第1ディスク32がロータ28に対して、次式で示される一定の回転比Nで反時計回りに回転する。 N=(d-D)/D ここで、 d:サイクロイド溝64の基準円直径 D:サイクロイド溝65の基準円直径 すなわち、第1ディスク32は、ロータ28に対して一定の減速比α(=1/N)で減速されて反時計回りに回転し、その分、トルクが増幅される。 【0033】第1ディスク32の回転力は、コイルスプリング69を介して第2ディスク33に伝達される。ピストン40がブレーキパッド14,15を押圧する前は、ピストン40に軸方向の荷重が殆ど作用せず、ピストン40と第2ディスク33との間のネジ部41,43に生じる抵抗が小さいので、コイルスプリング69のセット荷重によって第2ディスク33が第1ディスク32と一体に回転し、第2ディスク33とピストン40との間に相対回転が生じて、ネジ部41,43の作用によってピストン40がディスクロータ11側ヘ前進する。なお、これにより、ネジ部41,43は電動モータ19の回転運動をピストン40の直線運動に変換する変換機構部を構成している。 【0034】上記前進時において、第1ディスク32と一体に回転する第2ディスク33に固定されたリング部材52と、爪部13に円筒部材53を介して固定配置されたリング部材54とが相対回転することになり、これらの間に介装されたウエーブワッシャ55は、その屈曲部55aがこれらリング部材52、54の凸部52b、54bを順次乗り越えることで、第2ディスク33の回転に対して適度な抵抗力を付与する。なお、リング部材52、54の凸部52b、54bに対するウエーブワッシャ55の屈曲部55aのこのような乗り越えは、断続的に発生することになり、第2ディスク33および第1ディスク32には、回転に対する抵抗力が断続的に発生する。このような抵抗力が断続的に発生することにより、電動モータ19の電流値に図3に範囲X1で示すように電流リップルが発生することになる。 【0035】そして、ピストン40が一方のブレーキパッド14をディスクロータ11ヘ押圧し、その反力によってキャリパ本体12がキャリア16のスライドピンに沿って移動して、爪部13が他方のブレーキパッド15をディスクロータ11に押圧する。 【0036】両ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に押圧された後は、その反力によってピストン40に軸方向の大きな荷重が作用するため、ネジ部41,43の抵抗が増大してコイルスプリング69のセット荷重を超えて、第2ディスク33が回転を停止させることになり、その結果、コイルスプリング69が撓んでボールランプ機構21の第1ディスク32および第2ディスク33間に相対回転が生じる。これにより、ボール34がボール溝38,39内を転動して第2ディスク33およびピストン40を一体に前進(すなわち直線運動)させ、ピストン40によってブレーキパッド14,15をディスクロータ11にさらに押付ける。なお、これにより、ボールランプ機構21も電動モータ19の回転運動をピストン40の直線運動に変換する変換機構部を構成している。また、回転検出器20は、電動モータ19のロータ28の回転位置を検出しており、ロータ28の回転位置に対応して前進するピストン40のストローク位置すなわちこのピストン40で進退させられるブレーキパッド14,15のストローク位置を検出する位置検出手段を構成している。 【0037】上記のように両ブレーキパッド14,15がディスクロータ11に押圧された時点で、回転が停止させられた第2ディスク33に固定されたリング部材52と、爪部13に円筒部材53を介して固定配置されたリング部材54とが相対回転を停止させることになり、これらの間に介装されたウエーブワッシャ55も停止して、その屈曲部55aがこれらリング部材52、54の凸部52b、54bを乗り越えることがなくなって、第1ディスク32には回転に対する抵抗力が断続的に発生することがなくなる。その結果、電動モータ19の電流値からは、図3に範囲X2で示すように電流リップルは消失することになり、電流値はブレーキパッド14,15からの反力の増大にともなってほぼ直線的に上昇することになる。」 (せ)「【0040】そして、本実施形態の電動ディスクブレーキ10においては、コントローラが、電動モータ19の電流値における電流リップルの発生状態と回転検出器20で検出されるピストン40のストローク位置すなわちブレーキパッド14,15のストローク位置とからブレーキパッド14,15のディスクロータ11への接触位置である上記パッド接触位置を検出する。そして、コントローラは、別途入力されるブレーキペダルの踏力を検出する図示せぬ踏力センサの信号等から目標推力を割り出し、パッド接触位置を原点(0位置)とした図4に示すような目標推力と目標位置との制御テーブルから、割り出された目標推力に対する目標位置を求めて、この目標位置にピストン40が位置するように回転検出器20で検出しつつ電動モータ19を制御する。 【0041】また、コントローラは、上記パッド接触位置に基づいてブレーキパッド14,15のディスクロータ11との制動解除時におけるクリアランスすなわちパッドクリアランスを調整する。すなわち、このパッド接触位置からピストン40を所定のパッドクリアランスに相当する一定距離だけ後退させることにより、常にパッドクリアランスを一定に維持する。」 (3)対比 本願補正発明と引用例1発明とを対比すると、後者の「車両用電動駐車ブレーキ」は前者の「原動機付き車両用の電気機械的に操作可能なパーキングブレーキ」に相当し、以下同様に、「電動機」は「電気機械式のアクチュエータ」に、「ボールネジ24等の機構」は「操作ユニット」に、「シュー」は「ブレーキシュー」に、「ドラム」は「ブレーキドラム」に、「ライニング」は「ブレーキライニング」に、「押し付けるように」は「圧接するように」に、それぞれ相当する。 したがって、本願補正発明の用語に倣って整理すると、両者は、 「原動機付き車両用の電気機械的に操作可能なパーキングブレーキの動作方法であって、少なくとも1つの電気機械式のアクチュエータを備え、該アクチュエータの回転運動が操作ユニットを介して直線運動に変換され、少なくとも1つのブレーキシューが、車輪に結合されたブレーキドラムに対して、前記ブレーキシューに少なくとも1つ設けられたブレーキライニングを所定の力で圧接するように摺動されるパーキングブレーキ動作方法。」である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明は、 「少なくとも1つのブレーキシュー」が「ブレーキドラム」に対して「ブレーキライニング」を「所定の力で圧接するように摺動され」るのに対して、 引用例1発明は、 「シュー」が「ドラム」に対して「ライニング」を「押し付けるように摺動され」る点。 [相違点2] 本願補正発明は、 「当該パーキングブレーキの作動時に前記アクチュエータの消費電流が検出されるよう構成され」ており、「当該パーキングブレーキの作動時における前記アクチュエータの消費電流を、あらかじめ設定した所定のパーキングブレーキ力が検出されるよう利用する」のに対し、 引用例1発明は、 「電動駐車ブレーキの作動時に、電動機に一定以上の電流が流れたら電動機を停止させることにより、常に一定の駐車ブレーキ力を得ることができるようにする」点。 (4)判断 (4-1)相違点1について 引用例1発明は、「電動駐車ブレーキの作動時に、電動機に一定以上の電流が流れたら電動機を停止させることにより、常に一定の駐車ブレーキ力を得ることができるようにする」ものであって、電動駐車ブレーキの作動時に一定の駐車ブレーキ力を得ることができるものであるから、実質的に、シューがドラムに対してライニングを「所定の圧力」で押し付けるように摺動されるものであるということができる。したがって、この点は、実質的な相違点ではない。 (4-2)相違点2について 引用例1発明は、「電動駐車ブレーキの作動時に、電動機に一定以上の電流が流れたら電動機を停止させることにより、常に一定の駐車ブレーキ力を得ることができるようにする」ものであるが、一般に、電動ブレーキにおいて電流とブレーキ力が所定の関係にあることは、例えば、引用例2(特に(き))、引用例3(特に(す)、(せ))に示されているように広く知られている。また、電流値に応じてブレーキ力を制御することが従来技術にすぎないことは、本願明細書(特に【0006】)にも記載されているところである。以上からすると、引用例1発明において、電動機に流れる電流を検出し、それを利用して所定の(一定の)駐車ブレーキ力が得られるようにすることは、従来の技術ともいえるごく基本的な普通の設計にすぎず、このような構成とすることに格別の創作性・困難性があるとは認められない。 (4-3)効果について そして、本願補正発明の効果は、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が予測し得たものにすぎない。 (5)まとめ したがって、本願補正発明は、引用例1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (6)むすび 本願補正発明について以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [理由2] 本件補正後の特許請求の範囲(請求項1?9)は上記のとおりである。 この請求項2は、「前記手段を少なくとも1つのすべりクラッチとして形成したことを特徴とする請求項1記載のパーキングブレーキ。」であり、請求項1の記載を引用している。当初の特許請求の範囲、及びその後の手続補正の経緯をみると、請求項2の「前記手段」は請求項1の「手段(9)」を指しており、請求項1における該手段(9)を弾性部材である「皿バネ」や「ねじりバネ」ではなく、「少なくとも1つのすべりクラッチとして形成した」という構成を意味していると認められる。したがって、参考までに請求項2を独立形式に書き改めると、一応、次のように表わすことができる(なお、これは、以下の理解の一助のための一案であって、一字一句このとおりであると断定するものではない)。 「【請求項2】 原動機付き車両用の電気機械的に操作可能なパーキングブレーキであって、少なくとも1つの電気機械式のアクチュエータ(15)を備え、該アクチュエータの回転運動が操作ユニット(2)を介して直線運動に変換され、少なくとも1つのブレーキシュー(3,4)が、車輪に結合されたブレーキドラム(5)に対して、前記ブレーキシュー(3,4)に少なくとも1つ設けられたブレーキライニング(10,11)を所定の力で圧接するように摺動され、当該パーキングブレーキの作動時に前記アクチュエータの消費電流が検出される上記パーキングブレーキにおいて、 あらかじめ設定した所定のパーキングブレーキ力が検出されるよう前記アクチュエータ(15)の消費電流を変更させる手段(9)を設け、該手段(9)を、所定のパーキングブレーキ力を推定するための、当該パーキングブレーキの作動時における前記アクチュエータ(15)の消費電流の特徴的な変化が生じるように形成するとともに、前記手段を少なくとも1つのすべりクラッチとして形成したことを特徴とするパーキングブレーキ。」 本件補正後の請求項2は、実質的に、本件補正前の請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である「当該パーキングブレーキの作動時及び/又は解除時に」を「当該パーキングブレーキの作動時に」に減縮するものであって、これは、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本願補正発明2 本願補正発明2は上記のとおりである。 (2)引用例 (2-1)引用例1 引用例1及びその記載事項は上記のとおりである。 以上の記載事項及び図面からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「車両用電動駐車ブレーキであって、電動機21を備え、該電動機21の回転運動がボールネジ24等の機構を介して直線運動に変換され、シュー15が、車輪に結合されたドラムに対して、前記シュー15に設けられたライニング14を押し付けるように摺動され、電動駐車ブレーキの作動時に、電動機21に一定以上の電流が流れたら電動機21を停止させることにより、常に一定の駐車ブレーキ力を得ることができるようにする電動駐車ブレーキ。」 (2-2)引用例2 引用例2及びその記載事項は上記のとおりである。 (2-3)引用例3 引用例3及びその記載事項は上記のとおりである。 (2-4)引用例4 特開2003-106355号公報(以下、「引用例4」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。 (た)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、モータのトルクによって制動力を発生させる電動ブレーキ装置に関する。 【0002】 【従来の技術】電動ブレーキ装置としては、モータの回転を運動変換機構を介して直線運動に変換してピストンに伝達し、該ピストンを推進して、その推力でブレーキパッドをディスクロータに押圧して制動力を発生するものがある。そして、このような電動ブレーキ装置においては、前記モータに供給する電流値を制御して必要なピストン推力を得る制御方式が多く採用されている。より詳しくは、ブレーキパッドとディスクロータとが接触したときの電流値を基準値として、必要ピストン推力に対して予め設定された基準値からの増加量分の電流をモータに供給する制御方式を多く採用している。ただし、この場合は、機構部の回転抵抗や機械損失が無効トルク(無効電流)となるため、これらの無効電流を予め把握し、この無効電流分だけ前記増加量分の電流値(有効電流値)を補正する必要がある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記したようにモータに供給する電流値を制御して必要なピストン推力を得る制御方式を採用している従来の電動ブレーキ装置によれば、環境温度によって得られるピストン推力(制動力)にかなりのバラツキがあることが分かってきており、特に、モータの小型化を図る目的で、モータと運動変換機構との間に減速機構を配置した最近の電動ブレーキ装置において、前記したバラツキが顕著に現われることが、確認されている。なお、制動力の制御方式としては、ピストンに加わる反力からピストン推力を直接的に検出して目標推力(押圧力)が得られるようにモータの回転を制御するものもあり(例えば、特開2000-213575号公報)、このような方式では、上記した環境温度による影響は現われない。しかし、このような制御方式によれば、ピストンに加わる反力を検出するための特別の検出手段、例えば、ロードセル、圧電センサ、半導体荷重センサ、磁わい式力センサ等をピストンに組込まなければならず、構造の複雑大型化が避けられないようになる。本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、モータに供給する電流値に基いて必要なピストン推力を得る制御方式を維持しつつその補正量の決定に温度による変動要因を加え、もって環境温度によらずに所望の制動力を安定して得ることができる電動ブレーキ装置を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明は、ピストンと、モータと、該モータの回転を減速する減速機構と、該減速機構の回転を直線運動に変換して前記ピストンに伝達する運動変換機構とを配設してなるキャリパを備え、前記モータの回転に応じて前記ピストンを推進し、その推力でブレーキパッドをディスクロータに押圧して制動力を発生する電動ブレーキ装置であって、前記モータに供給する電流値に基いて必要なピストン推力を得るための制御を行う電動ブレーキ装置において、前記キャリパに、該キャリパ内の温度を検出する温度センサを設け、該温度センサにより検出した温度に基いて求めた、機構部の回転抵抗による無効電流値を前記モータに供給する電流値の補正に用いることを特徴とする。上記減速機構にはグリスが封入されており、この場合は、グリスの粘度が環境の温度により変化するため、機構部の回転抵抗による無効電流も温度により変化することになる。しかし、本発明においては、上記したようにキャリパ内の温度を温度センサにより検出して、この検出した温度に基いて求めた、機構部の回転抵抗による無効電流値を補正に用いるので、必要なピストン推力を得るための目標電流値を環境温度に応じて補正して、所望の制動力を得ることができる。一方、ピストン推力が発生している状態の機械効率も、環境温度によって変化する場合があるので、この場合は、上記温度センサにより検出した温度に基いて、モータ推力発生に伴う機械損失による無効電流値を推定し、該無効電流値を前記モータに供給する電流値の補正に用いるようにするのが望ましい。本発明において、上記温度センサは、特にその種類を問うものではないが、モータ温度測定センサとすることができ、この場合は、既存のモータ温度測定センサを共用することで、電流値補正用のセンサを特別に追加する必要はなくなる。」 (ち)「【0024】ところで、ピストン推力が発生している状態の機械効率は、環境温度によって変化する場合があるので、この場合は、図7に示すようにピストン推力とモータ電流値(有効電流値)との相関に及ぼす温度の影響を予め把握し、この相関に基いてモータ推力発生に伴う機械損失の温度変化による無効電流値を推定して、該無効電流値を前記有効電流の補正に用いるようにする。」 (3)対比 本願補正発明2と引用例1発明2とを対比すると、後者の「車両用電動駐車ブレーキ」は前者の「原動機付き車両用の電気機械的に操作可能なパーキングブレーキ」に相当し、以下同様に、「電動機」は「電気機械式のアクチュエータ」に、「ボールネジ24等の機構」は「操作ユニット」に、「シュー」は「ブレーキシュー」に、「ドラム」は「ブレーキドラム」に、「ライニング」は「ブレーキライニング」に、「押し付けるように」は「圧接するように」に、それぞれ相当する。 したがって、本願補正発明2の用語に倣って整理すると、両者は、 「原動機付き車両用の電気機械的に操作可能なパーキングブレーキであって、少なくとも1つの電気機械式のアクチュエータを備え、該アクチュエータの回転運動が操作ユニットを介して直線運動に変換され、少なくとも1つのブレーキシューが、車輪に結合されたブレーキドラムに対して、前記ブレーキシューに少なくとも1つ設けられたブレーキライニングを所定の力で圧接するように摺動されるパーキングブレーキ。」である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明2は、 「少なくとも1つのブレーキシュー」が「ブレーキドラム」に対して「ブレーキライニング」を「所定の力で圧接するように摺動され」るのに対して、 引用例1発明2は、 「シュー」が「ドラム」に対して「ライニング」を「押し付けるように摺動され」る点。 [相違点2] 本願補正発明2は、 「当該パーキングブレーキの作動時に前記アクチュエータの消費電流が検出され」ており、「あらかじめ設定した所定のパーキングブレーキ力が検出されるよう前記アクチュエータ(15)の消費電流を変更させる手段(9)を設け、該手段(9)を、所定のパーキングブレーキ力を推定するための、当該パーキングブレーキの作動時における前記アクチュエータ(15)の消費電流の特徴的な変化が生じるように形成するとともに、前記手段を少なくとも1つのすべりクラッチとして形成した」のに対し、 引用例1発明2は、 「電動駐車ブレーキの作動時に、電動機に一定以上の電流が流れたら電動機を停止させることにより、常に一定の駐車ブレーキ力を得ることができるようにする」点。 (4)判断 (4-1)相違点1について 引用例1発明2は、「電動駐車ブレーキの作動時に、電動機に一定以上の電流が流れたら電動機を停止させることにより、常に一定の駐車ブレーキ力を得ることができるようにする」ものであって、電動駐車ブレーキの作動時に一定の駐車ブレーキ力を得ることができるものであるから、実質的に、シューがドラムに対してライニングを「所定の圧力」で押し付けるように摺動されるものであるということができる。したがって、この点は、実質的な相違点ではない。 (4-2)相違点2について 引用例1発明2は、「電動駐車ブレーキの作動時に、電動機に一定以上の電流が流れたら電動機を停止させることにより、常に一定の駐車ブレーキ力を得ることができるようにする」ものであるが、一般に、電動ブレーキにおいて電流とブレーキ力が所定の関係にあることは、例えば、引用例2、引用例3(特に(す)、(せ))に示されているように広く知られている。また、電流値に応じてブレーキ力を制御することが従来技術にすぎないことは、本願明細書(特に【0006】)にも記載されているところである。以上からすると、引用例1発明2において、電動機に流れる電流を検出し、それを利用して所定の(一定の)駐車ブレーキ力が得られるようにすることは、従来の技術ともいえるごく基本的な普通の設計にすぎず、このような構成とすることに格別の創作性・困難性があるとは認められない。 引用例3では、制動時に、電動モータ19のロータ28を時計回りに回転させると第1ディスク32が回転し、第1ディスク32の回転力は、コイルスプリング69を介して第2ディスク33に伝達される。ピストン40がブレーキパッド14,15を押圧する前では、第2ディスク33が第1ディスク32と一体に回転し、ピストン40がディスクロータ11側ヘ前進する。この前進時において、電動モータ19の電流値に図3に範囲X1で示すように電流リップルが発生する。ピストン40がブレーキパッド14をディスクロータ11ヘ押圧し、その反力によってピストン40に軸方向の大きな荷重が作用すると、第2ディスク33が回転を停止し、コイルスプリング69が撓んで第1ディスク32および第2ディスク33間に相対回転が生じる。その結果、電動モータ19の電流値からは、図3に範囲X2で示すように電流リップルは消失することになり、電流値はブレーキパッド14,15からの反力の増大にともなってほぼ直線的に上昇することになる。このように、ピストン40がブレーキパッド14をディスクロータ11ヘ押圧したときのその反力(すなわちブレーキ力)が所定値を超えると、第2ディスク33の回転を停止し、それまで一体に回転している第1ディスク32と第2ディスク33の間に相対回転が生じる。これは、一種のすべりクラッチとしての機能にほかならない。電流リップルが消失し第1ディスク32と第2ディスク33の間に相対回転が生じる時点の上記反力は、コイルスプリング69のセット荷重と所定の関係にあり、図3の電流の変化から、コイルスプリング69のセット荷重に応じた所定のブレーキ力が作用していることを検知・推定することができることは明らかである。 引用例1発明2において、電動機に流れる電流を検出し、それを利用して所定の(一定の)駐車ブレーキ力が得られるようにすることに格別の創作性・困難性があるとは認められないことは上述したとおりであるが、このような電動ブレーキ装置において、そのピストン推力(制動力)が環境温度の影響を受けて変化し得るという問題があることは、引用例4(特に【0003】、図7)に示されている。そして、引用例3における第1ディスク32と第2ディスク33の間に相対回転が生じる時点におけるブレーキ力と電流との関係が、このような温度の影響を受け難いことは当業者に明らかである。したがって、引用例1発明2において、上記の駐車ブレーキ力の制御を適切に行うために、引用例1発明2に特に引用例3の上記事項を適用して、駐車ブレーキ力の制御を行なうように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たものと認められる。このようにしたものは、実質的に、相違点2に係る本願補正発明2の上記事項を具備するといえる。 (4-3)効果について 本願補正発明2の効果は、引用例1?4に記載された発明に基づいて当業者が予測し得たものにすぎない。 (5)まとめ したがって、本願補正発明2は、引用例1?4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (6)むすび 本願補正発明2について以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明 平成25年5月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成21年5月26日付け手続補正、及び平成24年7月5日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものである。 4.本願の請求項3、4に係る発明について (1)本願の請求項3、4に係る発明 上記のとおりである。 (2)引用例 引用例1?4、及び、その記載事項は上記2.に記載したとおりである。 (3)対比・判断 まず、本願の請求項4に係る発明は、上記2.で検討した本願補正発明の「当該パーキングブレーキの作動時に」を「当該パーキングブレーキの作動時及び/又は解除時に」に拡張したものに相当する。 そうすると、本願の請求項4に係る発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.に記載したとおり、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項4に係る発明は、実質的に同様の理由により、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 次に、本願の請求項3に係る発明は、上記2.で検討した本願補正発明2の「当該パーキングブレーキの作動時に」を「当該パーキングブレーキの作動時及び/又は解除時に」に拡張したものに相当する。 そうすると、本願の請求項3に係る発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明2が、上記2.に記載したとおり、引用例1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項3に係る発明は、実質的に同様の理由により、引用例1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび したがって、本願の請求項3、4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 なお、平成25年11月26日付け回答書において補正案が提示されているので、これについて検討したが、これによっても、依然として、拒絶の理由が解消したとはいえない。理由は以下のとおりである。 補正案の請求項3において請求項2を引用する発明について検討する。請求項1に「手段」の記載がなく、したがって、請求項2の「上記手段…」の意義が必ずしも明らかではないが、当初の特許請求の範囲、及びその後の手続補正の経緯を参照して、参考までに請求項3を独立形式に書き改めると、次のとおりである。なお、上記したとおり、これは、以下の理解の一助のための一案であって、一字一句このとおりであると断定するものではない。 「[請求項3] 原動機付き車両用の電気機械的に操作可能なパーキングブレーキであって、少なくとも1つの電気機械式のアクチュエータ(15)を備え、該アクチュエータの回転運動が操作ユニット(2)を介して直線運動に変換され、少なくとも1つのブレーキシュー(3,4)が、車輪に結合されたブレーキドラム(5)に対して、前記ブレーキシュー(3,4)に少なくとも1つ設けられたブレーキライニング(10,11)を所定の力で圧接するように摺動され、当該パーキングブレーキの作動時に前記アクチュエータの消費電流が検出可能な上記パーキングブレーキにおいて、 前記パーキングブレーキの作動時における前記電気機械式のアクチュエータ(15)の消費電流の特徴的な変化が生じるように形成され、 この変化によってあらかじめ設定されたパーキングブレーキ力が検出され、 これが、少なくとも1つのすべりクラッチとして形成されたパーキングブレーキの動作方法において、 当該パーキングブレーキの作動時における前記電気機械式のアクチュエータ(15)の消費電流を、あらかじめ設定した所定のパーキングブレーキ力が検出されるよう利用することを特徴とするパーキングブレーキ動作方法。」 この[請求項3]に係る発明は、[理由2]で検討した【請求項2】に係る発明(すなわち、本願補正発明2)と格別異なるものではない。特に敷衍すると、後者の発明が、「所定のパーキングブレーキ力を推定するための、当該パーキングブレーキの作動時における前記アクチュエータの消費電流の特徴的な変化が生じるように形成する」ものである以上、前者の発明において、「当該パーキングブレーキの作動時における前記電気機械式のアクチュエータの消費電流を、あらかじめ設定した所定のパーキングブレーキ力が検出されるよう利用する」ことは、当然のことであって、後者の発明に内在している事項にすぎないともいえる。 したがって、後者の発明が、上述したように、引用例1?4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前者の発明は、実質的に同様の理由により、引用例1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.結語 以上のとおり、本願の請求項3、4に係る発明が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである以上、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-02-13 |
結審通知日 | 2014-03-11 |
審決日 | 2014-03-25 |
出願番号 | 特願2009-523241(P2009-523241) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F16D)
P 1 8・ 121- Z (F16D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 塩澤 正和、鶴江 陽介 |
特許庁審判長 |
山岸 利治 |
特許庁審判官 |
森川 元嗣 島田 信一 |
発明の名称 | 電気機械式パーキングブレーキ及びその動作方法 |
代理人 | 江崎 光史 |
代理人 | 清田 栄章 |
代理人 | 篠原 淳司 |
代理人 | 今村 良太 |
代理人 | 鍛冶澤 實 |