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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1292064
審判番号 不服2013-3763  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-27 
確定日 2014-09-17 
事件の表示 特願2006- 46894「センサ-ガイドワイヤ・アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月 7日出願公開、特開2006-231059〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年2月23日(パリ条約による優先権主張 平成17年2月24日 米国)の出願(特願2006-46894号)であって、平成23年3月17日付けで拒絶理由が通知され、同年7月20日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年8月5日付けで拒絶理由が通知され、同年11月9日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年11月24日付けで拒絶理由が通知され、平成24年3月1日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年6月5日付けで拒絶理由が通知され、同年9月12日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年10月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成25年2月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年2月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成24年9月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の、

「生体における血管内測定に適合された、センサ(23)およびコアワイヤ(22)を備えたセンサ-ガイドワイヤ・アセンブリであって、
前記センサは、第1のチップ(26,33)からなる圧力感知部分(24,31)と、第2のチップ(28,38)からなる電子部分(25,32)とに物理的に分離され、
前記第1のチップ(26,33)は、前記ガイドワイヤの遠位端の所で前記コアワイヤ(22)に配置され、単一の圧力感知領域(27)と、前記圧力感知領域(27)に形成された単一の圧電要素、ピエゾ抵抗要素、またはピエゾ容量性要素と、前記第2のチップ(28,38)に電気リード線(42a,42b)を介して接続された接続部(37a,37b)と、前記単一の圧電要素、ピエゾ抵抗要素、またはピエゾ容量性要素の両端部の一方のみを前記各接続部(37a,37b)にそれぞれ直接接続する電気リード線(36a,36b)を設けられ、
前記第2のチップ(28)は、圧力に非感受性の要素のみを含み、少なくとも1つの電気回路を設けられ、
前記圧力感知部分(24)および前記電子部分(25)は相互に空間的に分離され、かつ少なくとも1つの前記電気リード線で接続されている
ことを特徴とするセンサ-ガイドワイヤ・アセンブリ。」が

「生体における血管内測定に適合された、センサ(23)およびコアワイヤ(22)を備えたセンサ-ガイドワイヤ・アセンブリであって、
前記センサは、第1のチップ(26,33)からなる圧力感知部分(24,31)と、第2のチップ(28,38)からなる電子部分(25,32)とに物理的に分離され、
前記第1のチップ(26,33)は、前記ガイドワイヤの遠位端の所で前記コアワイヤ(22)に配置され、単一の圧力感知領域(27)と、前記圧力感知領域(27)に形成された単一の圧電要素、ピエゾ抵抗要素、またはピエゾ容量性要素と、前記第2のチップ(28,38)に電気リード線(42a,42b)を介して接続された接続部(37a,37b)と、前記単一の圧電要素、ピエゾ抵抗要素、またはピエゾ容量性要素の両端部の一方のみを前記各接続部(37a,37b)にそれぞれ直接接続する電気リード線(36a,36b)を設けられ、
前記第2のチップ(28)は、圧力に非感受性の要素のみを含み、少なくとも1つの電気回路を設けられ、
前記圧力感知部分(24)および前記電子部分(25)は相互に空間的に分離され、互いに近傍に配置され、かつ少なくとも1つの前記電気リード線で接続されている
ことを特徴とするセンサ-ガイドワイヤ・アセンブリ。」と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

そして、上記の本件補正による請求項1の補正は、本件補正前の「相互に空間的に分離され」ている「圧力感知部分(24)」および「電子部分(25)」の位置関係について、「互いに近傍に配置され」るものであることを限定する補正事項からなり、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正であるといえる。
すなわち、本件補正における請求項1に係る発明の補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2001-517993号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下記「イ 引用例1に記載された発明の認定」に直接関与する記載に下線を付した。)

(ア)「2.ガイド・ワイヤ組み立て体であって、
遠端部分(16)と近端とを有していて、前記遠端に測定装置(14)が取り付けられているガイド・ワイヤ(2)と、
制御ユニット(8)に接続可能な第1の端部と、適宜のコネクタ(6)によってガイド・ワイヤ(2)の前記近端に接続可能な第2の端部とを有するインターフェース・ケーブル(4)と、
2つの半ブリッジからなり、その一方の半ブリッジが前記測定装置(14)に配置され、他の半ブリッジが前記コネクタ(6)の近端側に配置されたホイートストーン・ブリッジと、
を具備するガイド・ワイヤ組み立て体。」(第2ページ第12?21行)

(イ)「9.圧力測定用ガイド・ワイヤ組み立て体であって、
遠端部分(16)と近端とを有するガイド・ワイヤ(2)と、
前記ガイド・ワイヤの前記遠端部分に取り付けられ、圧力に応答して電気信号を発生する感圧素子(14)と、
制御ユニット(8)に接続可能な第1の端部と、噛み合う雄部分と雌部分とを有するコネクタ(6)によって前記ガイド・ワイヤの前記遠端部分に接続可能な第2の端部とを有するインターフェース・ケーブル(4)であって、前記雄部分が前記ガイド・ワイヤに設けられ、前記雌部分が前記インターフェース・ケーブルに設けられているインターフェース・ケーブル(4)と、
前記ガイド・ワイヤ(2)に設けられた圧力依存部分(Ra、Rp)と前記コネクタ(6)の近端側に設けられた圧力非依存部分(R_(1)、R_(2))とを有する電気信号発生回路であって、前記感圧素子(Ra、14)が該電気信号発生回路の一部を形成しており、前記感圧素子からの信号を補正するようプリセットされた補償回路素子(Rc)を備えた電気信号発生回路と、
を具備するガイド・ワイヤ組み立て体。」(第4ページ第7?21行)

(ウ)「【発明の詳細な説明】
圧力測定装置
この発明は、もとの場所での圧力、特に冠血管内圧力の測定のための装置に関するもので、該装置は、遠端に圧力センサが設けられたガイド・ワイヤを備える。特に、この発明は、切り離し可能なガイド・ワイヤを有するそうした装置に関するもので、該ガイド・ワイヤの外部に温度補償回路が設けられている。」(第7ページ第1?7行)

(エ)「ガイド・ワイヤはその長さに沿って延びる丈夫な芯線を有しており、該芯線上に設けられた保護管の下に電気リード線が芯線に沿って設けられる。圧力センサはガイド・ワイヤの遠端部分において芯線上に取り付けられる。
この発明の装置は、校正及び/又は温度補償の目的の電気回路を備える(その種々の実施の形態を後に詳述する)。この電気回路手段は、前記ガイド・ワイヤに設けられた圧力依存部分と、前記コネクタの近端側に設けられた圧力非依存部分とを備える。センサ上の感圧素子は前記電気回路手段の一部を形成する。
また、前記インターフェース・ケーブル上には情報蓄積手段が設けられる。この蓄積手段は、前記センサ素子に特有の校正及び/又は温度補償データを収容する。」(第10ページ第2?11行)

(オ)「第1の実施の形態(能動校正)
図2を参照して、校正のための手段を有する、この発明に係る装置の第1の実施の形態を説明する。採用された校正原理は「能動」温度校正と称される。
この場合の電気回路は二重ホイートストーン・ブリッジであり、能動ピエゾ抵抗(感圧素子)Raはセンサの膜上に配置される。受動抵抗(圧力非依存素子)RpはRaの近傍に配置されるが、膜上ではなく基板上に配置されることが好ましい。Ra及びRpの第1の端部は共通接地に接続される。残りの抵抗R_(1)?R_(4)は固定抵抗であり、センサの外に、好ましくは外部制御ユニット又はインターフェース・ケーブルに配置される。Raの第2の端部は適宜のリード線を介して1つの固定抵抗R1の第1の端部に接続される。R_(1)の第2の端部は励起電圧源に接続される。Rpの第2の端部は適宜のリード線を介して別の固定抵抗R_(2)の第1の端部に接続される。R_(2)の第2の端部はR1と同じ励起電圧源に接続される。固定抵抗R3、R4は直列に共通接地に接続される。他端において、R_(3)及びR_(4)はR_(1)及びR_(2)と同じ励起電圧源に接続される。
ブリッジには3つの電圧U_(1)、U_(2)、U_(3)(基準接地)がある。U_(1)はR_(1)とRaとの間の点に存在する。U_(2)はR_(2)とRpとの間の点に存在し、U_(3)はR_(3)とR_(4)との間の点に存在する。U(P、T)_(out)=U_(1)-U_(2)に対応する温度及び圧力依存信号は、温度依存信号を表す差U(T)_(ou)t=U_(2)-U_(3)と同様に連続的に監視される。ガイド・ワイヤの組み立てが完了すると、校正が以下のように実行される。
近端が雌ネジを介してインターフェース・ケーブルに接続され、組み立て体はインターフェース・ケーブルの近端接触子を介して制御ユニットに接続される。センサは圧力室内の恒温水槽に沈められる。通常、温度は約37℃に保たれるが、重要なのは温度が一定であることである。量U(P、T)_(out)=U_(1)-U_(2)を圧力を増しながら監視し、Pに対するU(P、T)_(out)のプロットを得る。その一例が図3に示されている。このプロットの傾斜K_(37)は37℃におけるセンサの感度を表しており、前記情報蓄積手段に記憶される。これは、感度が温度に依存しないと仮定して、未補償の圧力値がP=U_(out)/K37として計算されることを意味する。
感度K37は、それ自体温度依存性であり、原理的には個別に決定されて更なる補償のために使用され得る。しかしながら、今のところ、センサは37℃で校正され、20℃における小さな誤りは許容される。前記の温度依存係数が個別に決定されるならば、該係数は他の校正データと共に前記情報蓄積手段に記憶される。
次に、いわゆる温度オフセット(TO)が測定される。これは、センサを大気圧において水槽に沈め、U(P、T)_(out)を監視しながら、温度を変えることによって行われる。同時にU(T)_(out)も監視され、これら2つの量は図4に示すように互いに対してプロットされる。
こうして、U(T)_(out)に対するU(P、T)_(out)のプロットを得ることができ、その傾斜TOも前記情報蓄積手段に記憶され、所与の圧力におけるオフセットを計算するのに使用される。計算されたオフセットはU(P、T)_(out)から差し引かれる。
実際の圧力は
P=(U(P、T)_(out)-TO*U(T)_(out))/K_(37)
として計算される。他の補償係数及びシステムパラメータ、例えば、ブリッジの固有の不平衡に関する情報は、前記蓄積手段に記憶される。
絶対圧センサを用いるとき、大気圧の変化は制御ユニットの内部に設けられた気圧計によって処理される。」(第10ページ第24行?第12ページ第15行)

(カ)「第2の実施の形態(受動校正)
図5を参照して、センサを校正する他の方法、即ち、「受動」温度校正と称されるものを説明する。「受動」とは、抵抗を固定抵抗値へトリミングすることにより、それぞれの回路が製造時に設定されることを意味する。これは、上述の「能動」校正とは対照的であり、温度依存特性が決定されてPROMに記憶され、それぞれの測定信号は測定時に温度補償される。
受動校正は、センサ・チップ上の2つの抵抗の温度感度の差を釣り合わせる。したがって、測定回路からの出力信号は圧力を直接指示する信号として使用することができる。
センサ上の抵抗には上記のように参照符号が付され、Raは能動(感圧)抵抗に対して、Rpは受動抵抗に対して付される。
図5に示すように、能動抵抗Ra及び受動抵抗Rpはセンサ・チップ上に設けられ、少なくともRaは膜に取り付けられる。RpはRaの近傍に取り付けられるのが好ましいが、抵抗Rpに対する圧力の影響を除去するために、膜上ではなくシリコン基板上に取り付けられる。両方の抵抗の一端は同電位の共通の端子に、即ち接地に接続される。RaとRpの他端は電気リード線に接続される。この電気リード線はガイド・ワイヤの内部に配置され、コネクタ装置の雄部分を形成する前記ガイド・ワイヤの近端で終わる。実際の受動校正回路はインターフェース・ケーブル上に、即ち、外部電源、コンピュータのような計算手段、モニタ等とのインターフェースを行う大きなディメンションのケーブル上に設けられる。
受動校正回路は3つの抵抗R_(1)、R_(2)、Rcを有する。抵抗Ra、Rp、R_(1)、R_(2)はホイートストーン・ブリッジを形成し、Ra及びRpは前記ホイートストーン・ブリッジの2つの枝に結合され、R_(1)はRaと、R_(2)はRpと直列に接続され、Ra及びRpの他端は共通接地に接続される。R_(1)及びR_(2)は共通の励起電圧源に接続される。簡単化のために、抵抗網Rxという用語が使用される。
RaとRpの温度依存性の差を釣り合わせるために、前記の追加の抵抗Rcが、最大のTCR値を有するブリッジの枝に直列に接続される。TCR(抵抗の温度係数)は
TCR=(R_(T2)-R_(T1))/(R_(T1)*(T_(2)-T_(1)))
として定義される。ここで、T_(2)は高い温度、例えば40℃を表し、T_(1)は周囲温度、例えば20℃を表す。
2つの電圧、即ち、RaとR_(1)との間の点に存在するU_(1)と、R_(2)とRcとの間の点に存在するU_(2)が重要である。基準は接地電位である。
この補償により、出力U_(1)-U_(2)は圧力を直接的に表し、正しい圧力を得るための計算は不要である。
Rcの値の計算は以下に実施例として与えられる。
実施例
Raは2500オームであって470ppm/℃の温度係数(TCR)を持ち、Rpは2300オームであってTCRが500ppm/℃であると仮定する。
この場合、TCRpはTCRaの値まで減少されねばならない。下記の式(1)を用いてRaの値を見出すことができる。
TC(Rp)_(comp)=TC(Ra)=
[(R_(p、T2)+Rc)-(R_(p、T1)+Rc)]/(R_(p、T1)+Rc) (1)
ここから
(TCRp-TCRa)/TCRa*Rp=R_(comp) (2)
が与えられ、仮定した値を挿入すると、
R_(comp)=((500-470)/470))
*2300=146.8オーム (3)
となる。
ブリッジは大気圧及び20℃に対してゼロ調整される。R_(1)及びR_(2)の値は次の式(4)から近似的に求められる。
(Ra/R_(1))=(Rp+Rc)/(R_(2)) (4)
実際には、抵抗網を平衡させるための周知の技術であるレーザー・トリミングを用いて、Rcの値を正しい値に設定する。図5に示すように、抵抗RcはRpと直列に接続される。しかし、ブリッジの不平衡によってRcをRaと直列に接続することが必要となることが起こり得る。したがって、実際のトリミング設定においては、それぞれRa、Rpに直列に可変抵抗を接続する。そこで、トリミング手順は相互作用的な手順となり、漸増的なトリミングの結果は帰還され、トリミングはブリッジの平衡まで調整される。したがって、実際には、図5に示すブリッジは実際のブリッジの等価的な表現である。」(第12ページ第16行?第14ページ第19行)

(キ)「【図2】



(ク)「【図5】



イ 引用例1に記載された発明の認定
図5から、固定抵抗R_(1),R_(2),Rcが、能動抵抗Ra及び受動抵抗Rpが設けられているセンサ・チップから離れた位置に設けられていることは明らかといえる。また、図2及び図5から、センサ・チップ上においては、(複数ではない)単一の領域に(複数ではない)単一の能動ピエゾ抵抗素子からなる能動抵抗Raが設けられていることが見て取れる。
よって、上記記載(図面の記載も含む)を総合すれば、引用例1には、
「冠血管内圧力の測定のための、遠端に圧力センサが設けられたガイド・ワイヤの芯線を備えるガイド・ワイヤ組立体に関し、
該装置は、
前記ガイド・ワイヤの前記遠端部分において前記芯線に取り付けられ、圧力に応答して電気信号を発生する圧力依存部分(Ra、Rp)からなる感圧素子(14)と、
適宜のコネクタ(6)によってガイド・ワイヤ(2)の前記近端に接続可能な第2の端部とを有するインターフェース・ケーブル(4)と、
前記コネクタ(6)の近端側に設けられ、電気信号発生回路の一部を形成する圧力非依存部分(R_(1)、R_(2))とを具備し、
能動抵抗Ra及び受動抵抗Rpはセンサ・チップ上に設けられ、
固定抵抗R_(1),R_(2),Rcが、能動抵抗Ra及び受動抵抗Rpが設けられているセンサ・チップから離れた位置に設けられ、
能動抵抗Raは能動ピエゾ抵抗素子からなり、
センサ・チップ上においては、単一の領域に単一の能動ピエゾ抵抗素子からなる能動抵抗Raが設けられ、
能動抵抗Raの第2の端部は適宜のリード線を介して1つの固定抵抗R_(1)の第1の端部に接続され、受動抵抗Rpの第2の端部は適宜のリード線を介して別の固定抵抗R_(2)の第1の端部に接続されるガイド・ワイヤ組立体。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(2)本願補正発明と引用発明との対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「圧力センサ」及び「ガイド・ワイヤ」の「芯線」が本願補正発明の「センサ(23)」及び「コアワイヤ(22)」に相当するといえるから、引用発明の「冠血管内圧力の測定のための、遠端に圧力センサが設けられたガイド・ワイヤの芯線を備えるガイド・ワイヤ組立体」が本願補正発明の「生体における血管内測定に適合された、センサ(23)およびコアワイヤ(22)を備えたセンサ-ガイドワイヤ・アセンブリ」に相当する。

(イ)引用発明の「前記ガイド・ワイヤの前記遠端部分において芯線に取り付けられ、圧力に応答して電気信号を発生する圧力依存部分(Ra、Rp)からなる感圧素子(14)」と、「前記コネクタ(6)の近端側に設けられ、電気信号発生回路の一部を形成する圧力非依存部分(R_(1)、R_(2))とを具備し」、「能動抵抗Ra及び受動抵抗Rpはセンサ・チップ上に設けられ」、「固定抵抗R_(1),R_(2),Rcが、能動抵抗Ra及び受動抵抗Rpが設けられているセンサ・チップから離れた位置に設けられ」ることと、本願補正発明の「前記センサは、第1のチップ(26,33)からなる圧力感知部分(24,31)と、第2のチップ(28,38)からなる電子部分(25,32)とに物理的に分離され」ることとは、「前記センサは、チップからなる圧力感知部分と、電子部分とに物理的に分離され」る点で共通する。

(ウ)引用発明の「圧力に応答して電気信号を発生する圧力依存部分(Ra、Rp)からなる感圧素子(14)」が「前記ガイド・ワイヤの前記遠端部分において芯線に取り付けられ」ることと、本願補正発明の「前記第1のチップ(26,33)は、前記ガイドワイヤの遠位端の所で前記コアワイヤ(22)に配置され」ることとは、「前記圧力部分のチップは、前記ガイドワイヤの遠位端の所で前記コアワイヤに配置され」る点で共通する。

(エ)引用発明の「能動ピエゾ抵抗素子からなる能動抵抗Raが設けられ」る「単一の領域」が、本願補正発明の「単一の圧力感知領域(27)」に相当し、また、引用発明の「単一の能動ピエゾ抵抗素子からなる」「能動抵抗Raの第2の端部」が、本願補正発明の「前記単一の圧電要素、ピエゾ抵抗要素、またはピエゾ容量性要素の両端部の一方のみ」の「接続部(37a,37b)」に相当するといえるから、引用発明の「能動抵抗Raは能動ピエゾ抵抗素子からなり、センサ・チップ上においては、単一の領域に単一の能動ピエゾ抵抗素子からなる能動抵抗Raが設けられ、能動抵抗Raの第2の端部は適宜のリード線を介して1つの固定抵抗R_(1)の第1の端部に接続され、受動抵抗Rpの第2の端部は適宜のリード線を介して別の固定抵抗R_(2)の第1の端部に接続される」ることと、本願補正発明の「単一の圧力感知領域(27)と、前記圧力感知領域(27)に形成された単一の圧電要素、ピエゾ抵抗要素、またはピエゾ容量性要素と、前記第2のチップ(28,38)に電気リード線(42a,42b)を介して接続された接続部(37a,37b)と、前記単一の圧電要素、ピエゾ抵抗要素、またはピエゾ容量性要素の両端部の一方のみを前記各接続部(37a,37b)にそれぞれ直接接続する電気リード線(36a,36b)を設けられ」ることとは、「単一の圧力感知領域と、前記圧力感知領域に形成された単一の圧電要素、ピエゾ抵抗要素、またはピエゾ容量性要素と、前記電子部分に電気リード線を介して接続された接続部と、前記単一の圧電要素、ピエゾ抵抗要素、またはピエゾ容量性要素の両端部の一方のみを前記各接続部にそれぞれ直接接続する電気リード線を設けられ」る点で共通する。

(オ)引用発明の「前記コネクタ(6)の近端側に設けられ、電気信号発生回路の一部を形成する圧力非依存部分(R_(1)、R_(2))とを具備」すること及び「固定抵抗R_(1),R_(2),Rcが、能動抵抗Ra及び受動抵抗Rpが設けられているセンサ・チップから離れた位置に設けられ」ことと、本願補正発明の「前記第2のチップ(28)は、圧力に非感受性の要素のみを含み、少なくとも1つの電気回路を設けられ」ることとは、「前記電子部分は、圧力に非感受性の要素のみを含み、少なくとも1つの電気回路を設けられ」る点で共通する。

(カ)引用発明の「前記ガイド・ワイヤの前記遠端部分に取り付けられ、圧力に応答して電気信号を発生する圧力依存部分(Ra、Rp)からなる感圧素子(14)と」「前記コネクタ(6)の近端側に設けられ、電気信号発生回路の一部を形成する圧力非依存部分(R_(1)、R_(2))とを具備し」「能動抵抗Raの第2の端部は適宜のリード線を介して1つの固定抵抗R_(1)の第1の端部に接続され、受動抵抗Rpの第2の端部は適宜のリード線を介して別の固定抵抗R_(2)の第1の端部に接続される」ことと、本願補正発明の「前記圧力感知部分(24)および前記電子部分(25)は相互に空間的に分離され、互いに近傍に配置され、かつ少なくとも1つの前記電気リード線で接続されている」こととは、「前記圧力感知部分および前記電子部分は相互に空間的に分離され、かつ少なくとも1つの前記電気リード線で接続されている」点で共通する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明は、
「生体における血管内測定に適合された、センサおよびコアワイヤを備えたセンサ-ガイドワイヤ・アセンブリであって、
前記センサは、チップからなる圧力感知部分と、電子部分とに物理的に分離され、
前記圧力感知部分のチップは、前記ガイドワイヤの遠位端の所で前記コアワイヤに配置され、単一の圧力感知領域と、前記圧力感知領域に形成された単一の圧電要素、ピエゾ抵抗要素、またはピエゾ容量性要素と、前記電子部分に電気リード線を介して接続された接続部と、前記単一の圧電要素、ピエゾ抵抗要素、またはピエゾ容量性要素の両端部の一方のみを前記各接続部にそれぞれ直接接続する電気リード線を設けられ、
前記電子部分は、圧力に非感受性の要素のみを含み、少なくとも1つの電気回路を設けられ、
前記圧力感知部分および前記電子部分は相互に空間的に分離され、かつ少なくとも1つの前記電気リード線で接続されているセンサ-ガイドワイヤ・アセンブリ。」
の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

ウ 相違点
(ア)相違点1
電子部分(引用発明においては「固定抵抗R_(1),R_(2),Rc」)が、本願補正発明においては「(第2の)チップからなる」のに対して、引用発明においては、その点が明確でない点。

(イ)相違点2
相互に空間的に分離されている「圧力感知部分」と「電子部分」について、本願補正発明においては「互いに近傍に配置され」ているのに対して、引用発明においては、圧力依存部分からなる感圧素子(「圧力感知部分」に相当)がガイド・ワイヤの遠端部分に取り付けられ、電気信号発生回路の一部を形成する圧力非依存部分(「電子部分」に相当)がコネクタの近端側に設けられることから、「圧力感知部分」と「電子部分」が「互いに近傍とはいえない位置に配置され」ている点。

(3)当審の判断
ア 上記の各相違点について検討する。
(ア)相違点1について
引用例1の上記摘記事項(オ)及び(カ)並びに図5の記載から、引用発明において電子部分(「固定抵抗R_(1),R_(2),Rc」)はインターフェース・ケーブル上に設けられるものであるから、チップ上に搭載可能なサイズであることは明らかである。
そして、一般に、チップ上に搭載可能なサイズの電子回路をチップ上に搭載して構成することは周知の技術であり、また、それによって当業者の予測を超える効果を奏するものでもないから、引用発明において、電子部分(「固定抵抗R_(1),R_(2),Rc」)をチップ上に搭載して、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点2について
上記相違点2について、本願の明細書には、【0018】において「本発明のセンサが使用される状況のより良き理解のために、従来のセンサ-ガイドワイヤ・アセンブリ1を図1に示す。」「センサ要素8は(図1中では見えない)膜10の形の圧力感知装置を備えている。」と記載され、【0019】において「図1には図示されていないが、センサ要素8はさらに電子回路を備えている。この電子回路はホイートストン・ブリッジ型の構成において、膜10上に設けられた1つ以上のピエゾ抵抗要素に接続されている。」と記載されており、また、【図1】から、圧力感知装置と電子回路を備えるセンサ要素8が1つのチップで構成されていることが明らかであるから、本件出願前の従来より、「圧力感知部分」の素子と「電子部分」の素子は1つのチップ上に搭載され「互いに近傍に配置され」ているセンサ-ガイドワイヤ・アセンブリが周知であったことは明らかである。
そして、一般に、製造法上の観点や熱の影響の回避など種々の理由から、1つのチップ上に搭載されていた素子を、チップを分割して別々のチップに搭載するようにすることは周知の技術であるといえるから、上記の本件出願前の従来より周知の、「圧力感知部分」の素子と「電子部分」の素子は1つのチップ上に搭載され「互いに近傍に配置され」ているセンサ-ガイドワイヤ・アセンブリにおいても、1つのチップを分割して、1つのチップ上に搭載されていた「圧力感知部分」の素子と「電子部分」の素子を別々のチップに搭載するようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、その際に、「圧力感知部分」の素子と「電子部分」の素子を、本願補正発明や従来からの周知例のように「互いに近傍に配置する」か、引用発明のように「互いに近傍とはいえない位置に配置する」かの選択については、いずれに配置することも設計者の自由意思で任意に行われることであって阻害要因が認めらないからいずれに配置することにも困難性がなく、また、いずれに配置したとしても当業者の予測を超える格別の効果を奏するものでもないから、いずれに配置するかは当業者が必要に応じて適宜選択し得ることに過ぎないといえる。よって、引用発明のような「互いに近傍とはいえない位置に配置する」構成とすることなく、「互いに近傍に配置する」ように構成して、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。


イ 本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用例1に記載された事項及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年9月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成25年2月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成25年2月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 平成25年2月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明の対比」の「ア 対比」において記載したのと同様の理由により、本願発明と引用発明は、「イ 一致点」において記載したのと同じ点で一致し、また、「ウ 相違点」における相違点1のみで相違する。なお、相違点2については、本願発明と引用発明との相違点とはならない。
そして、上記の相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、それぞれ、上記「第2 平成25年2月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(3)当審の判断」の「ア」における「(ア)」における記載と同じ理由により、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-15 
結審通知日 2014-04-22 
審決日 2014-05-08 
出願番号 特願2006-46894(P2006-46894)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多田 達也早川 貴之福田 裕司  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 森林 克郎
右▲高▼ 孝幸
発明の名称 センサ-ガイドワイヤ・アセンブリ  
代理人 酒井 宏明  

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