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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1292070
審判番号 不服2012-23892  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-03 
確定日 2014-10-01 
事件の表示 特願2009-123330「太陽電池セルの接続方法及び太陽電池ユニットの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月24日出願公開、特開2009-218612〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成16年5月20日(優先日、平成15年9月5日)に出願した特願2004-150373号(以下「原出願」という。)の一部を平成21年5月21日に新たな特許出願としたものであって、平成22年9月9日付け、平成24年3月26日付け、同年7月11日付けで手続補正がなされ、同年8月29日付けで拒絶の査定がなされ、同年12月3日に拒絶査定に対する審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正がなされ、これらに対し、平成25年4月16日付けで審尋がなされ、同年6月20日に回答書が提出されたものである。

2.平成24年12月3日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「接続部材を介して複数の結晶系太陽電池セルを電気的に接続する太陽電池セルの接続方法であって、
フィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に前記フィルム状接着剤を熱硬化させて前記複数の結晶系太陽電池セルを電気的に接続し、
前記フィルム状接着剤は、高分子樹脂及び導電粒子を含んで異方導電性を有する熱硬化型フィルム状接着剤である、太陽電池セルの接続方法。」
と補正された。(下線は審決で付した。以下同じ。)
上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「フィルム状接着剤」に関し、「(フィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に)前記フィルム状接着剤を熱硬化させて」と限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、前記に記載された事項により特定されるところ、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
本願の原出願の優先日前に頒布された「特開平10-313126号公報 」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
・「次に、太陽電池素子16の作製方法について説明する。図4は、作製手順を示した図である。」(段落【0016】)
・「まず、ステップ#5で厚さ約400μm、比抵抗約3Ω・cmのp型単結晶シリコン基板14を洗浄する。そして、この基板14に、NaOH水溶液とイソプロピルアルコールの混合液を用いて液温約90゜Cでテクスチャエッチングを行い、表面に高さ数μmの微小ピラミッド状の凹凸を形成する。尚、基板14に凹凸を形成するのは、光吸収率を上げるためである。」(段落【0017】)
・「本実施形態は、第3の実施形態とは、太陽電池素子16を接続するために用いるリード線9が異なる。本実施形態では、厚み100?200μmの銅等の金属片より成り、その全表面に片面20?70μm厚の黒色に着色した導電性接着剤が施されたリード線により、複数の太陽電池素子16を所望の出力が得られるように直列あるいは並列に接続する。」(段落【0038】)
・「前記導電性接着剤は、導電性フィラーとバインダーを主成分とし、有機溶剤や希釈剤、硬化剤等の添加剤から構成されている。導電性フィラーとしては、金、銀、銅、アルミニウム等の金属の微粉末やカーボンブラックやグラファイト粉末が用いられる。」(段落【0039】)
・「導電性接着剤は、バインダーの種類により、常温乾燥型、常温硬化型、熱硬化型、紫外線硬化型、高温焼成型に分類される。本実施形態では、どの型の導電性接着剤を用いてもよい。以下、各型の導電性接着剤について説明する。」(段落【0040】)
・「熱硬化型の導電性接着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂をバインダーに用い、100?300゜Cで数十秒?数十分間加熱することにより硬化し接着する。紫外線硬化型の導電性接着剤は、エポキシアクリレート等のオリゴマーを用い、UVランプで数十秒?数十分間紫外線を照射することにより接着する。高温焼成型の導電性接着剤は、バインダーとしてガラスフリットを用い、300゜C以上の高温で数十秒?数十分間加熱することにより接着する。」(段落【0042】)
また、上記の記載から、「リード線9を介して複数の太陽電池素子16を電気的に接続する複数の太陽電池素子16の接続方法」が示されていると認められる。
これらの記載事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「リード線を介して複数のp型単結晶シリコン基板からなる太陽電池素子を電気的に接続する複数の太陽電池素子の接続方法であって、熱硬化型の導電性接着剤が施されたリード線における熱硬化型の導電性接着剤を加熱することにより硬化させて、複数の太陽電池素子を接続し、熱硬化型の導電性接着剤は、導電性フィラーとバインダーを主成分とし、導電性フィラーとしては、金属の微粉末が用いられ、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂をバインダーに用いたものである、太陽電池素子の接続方法。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
後者における「リード線」は、その機能、作用等からみて、前者における「接続部材」に相当し、以下同様に、「p型単結晶シリコン基板からなる太陽電池素子」は「『結晶系太陽電池セル』及び『太陽電池セル』」に、「バインダーとしてのエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂」は「高分子樹脂」に、「導電性フィラーとしての金属の微粉末」は「導電粒子」に、それぞれ相当する。
また、前者における「『フィルム状接着剤』及び『熱硬化型フィルム状接着剤』」と後者における「熱硬化型の導電性接着剤」とは、「『接着剤』及び『熱硬化型接着剤』」との概念で共通する。
また、後者における「熱硬化型の導電性接着剤が施されたリード線における熱硬化型の導電性接着剤を加熱することにより硬化させて、複数の太陽電池素子を接続し」とは、「熱硬化型の導電性接着剤を介してp型単結晶シリコン基板からなる太陽電池素子とリード線とを前記熱硬化型の導電性接着剤を熱硬化させて前記複数のp型単結晶シリコン基板からなる太陽電池素子を電気的に接続し」といえる。
また、後者における「熱硬化型の導電性接着剤は、導電性フィラーとバインダーを主成分とし、導電性フィラーとしては、金属の微粉末が用いられ、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂をバインダーに用いたものである」とは、「熱硬化型の導電性接着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂及び金属の微粉末を含んでいる熱硬化型の導電性接着剤」といえる。
したがって、両者は、
「接続部材を介して複数の結晶系太陽電池セルを電気的に接続する太陽電池セルの接続方法であって、
接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを前記接着剤を熱硬化させて前記複数の結晶系太陽電池セルを電気的に接続し、
前記接着剤は、高分子樹脂及び導電粒子を含んでいる熱硬化型接着剤である、太陽電池セルの接続方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
接着剤、熱硬化型接着剤に関し、本願補正発明は、「フィルム状接着剤」であり、「異方導電性を有する熱硬化型フィルム状接着剤」であるのに対し、引用発明は、熱硬化型の導電性接着剤である点。
[相違点2]
結晶系太陽電池セルと接続部材との接続に関し、本願補正発明は、フィルム状接着剤を介して結晶系太陽電池セルと接続部材とを「熱圧着すると共に」前記フィルム状接着剤を熱硬化させて接続しているのに対し、引用発明は、熱硬化型の導電性接着剤が施された熱硬化型の導電性接着剤を加熱することにより硬化させて、接続している点。

(4)判断
上記相違点1、及び2について以下検討する。
一般に接着剤において、熱圧着と共に熱硬化させて接着する高分子樹脂及び導電粒子を含んだ異方導電性を有する熱硬化型フィルム状接着剤は、本願の原出願の優先日の時点で、周知の技術事項(例えば、特開2001-31915号公報の【請求項1】、特開平11-61060号公報の段落【0018】?段落【0022】、並びに特開昭62-188184号公報の第1頁左欄第3?5行、及び第9頁左上欄第13行?左下欄第7行参照。以下「周知の技術事項1」という。)である。
そして、引用発明の「フィルム状接着剤(熱硬化型フィルム状接着剤)」と上記周知の技術事項1とは、2つの部材を接着剤により接続するという共通の機能、作用を奏するものであり、また一般に太陽電池セルと他の部材とを接続する手段において、異方導電性を有する接着剤を用いることは、本願の原出願の優先日の時点で、周知の技術事項(例えば、特開平7-147424号公報の段落【0008】、並びに特開2001-345465号公報の段落【0051】、段落【0052】、段落【0057】、段落【0075】、段落【0118】、及び段落【0119】参照。以下「周知の技術事項2」という。)であるから、引用発明において、上記周知の技術事項1を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明において、上記周知の技術事項1を適用することにより、相違点1、及び2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明、及び上記周知の技術事項1、2から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明、及び上記周知の技術事項1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願の発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年7月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「接続部材を介して複数の結晶系太陽電池セルを電気的に接続する太陽電池セルの接続方法であって、
フィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着して前記複数の結晶系太陽電池セルを電気的に接続し、
前記フィルム状接着剤は、高分子樹脂及び導電粒子を含んで異方導電性を有する熱硬化型フィルム状接着剤である、太陽電池セルの接続方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は、上記「2.(2)引用例」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、実質的に上記「2.(1)補正後の本願の発明」で検討した本願補正発明の「フィルム状接着剤」に関し、「(フィルム状接着剤を介して前記結晶系太陽電池セルと前記接続部材とを熱圧着すると共に)前記フィルム状接着剤を熱硬化させて」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(3)対比」及び「2.(4)判断」に記載したとおり、引用発明、及び上記周知の技術事項1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、及び上記周知の技術事項1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、及び上記周知の技術事項1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-11 
結審通知日 2013-11-12 
審決日 2013-11-25 
出願番号 特願2009-123330(P2009-123330)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 昌伸山本 元彦  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
吉野 公夫
発明の名称 太陽電池セルの接続方法及び太陽電池ユニットの製造方法  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 城戸 博兒  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 古下 智也  
代理人 池田 正人  
代理人 清水 義憲  
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