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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N |
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管理番号 | 1292270 |
審判番号 | 不服2011-22787 |
総通号数 | 179 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-21 |
確定日 | 2014-09-25 |
事件の表示 | 特願2006-540415「キメラ抗CD44抗体およびそれらの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 2日国際公開、WO2005/049082、平成19年 5月31日国内公表、特表2007-513610〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成16年(2004年)11月19日を国際出願日(パリ条約による優先権主張2003年11月19日 欧州特許庁)とする出願であって、その請求項2に係る発明は、平成23年1月13日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された、以下のとおりのものである。 「【請求項2】 配列番号2の配列からなるポリペプチドと配列番号4の配列からなるポリペプチドの組み合わせ。」(以下、「本願発明」という。) 第2 引用例 原査定の拒絶の理由で、引用文献2として引用された本願優先日前に頒布された刊行物であるBlood(2002)Vol.99,No.1,p.290-299(以下、「引用例2」という。)には、下記の事項が記載されている。(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。下線は、当審により付与した。) a.「ヒト骨髄性白血病細胞株の分化及びアポトーシスに対する抗CD44モノクローナル抗体の効果」(タイトル) b.「急性骨髄性白血病(AML)は、異なるAMLサブタイプ(AML-M0からAML-M5)で定義される、異なるステージにおける、骨髄分化の妨害により特徴付けられる異種の白血病である。興味深いことに、CD44細胞表面抗原は、全てのAMLサブタイプの白血病芽球に発現している。」(290頁左欄1?5行) c.「2つの活性化モノクローナル抗体(mAbs)であるA3D8及びH90とCD44の連結は、抗原性、機能及び細胞学に関する基準に基づくAML-M1/2からAML-M5の、白血病芽球の最終分化のトリガーとなることが最近報告された。」(290頁左欄9?13行) d.「NB4細胞は、AML-M3(前骨髄球フェノタイプ)に特異的な、PML-RARαをコードするt(15;17)転座を示す前骨髄球細胞である。・・・。最後に、HL60はAML-M2患者から単離された骨髄芽球細胞である。・・・。結果的に、A3D8及びH90抗CD44mAbsとのCD44の連結が、THP-1、NB4及びHL60細胞株の最終分化を誘導するかどうかを我々はここに調査する。」(290左欄下から4行?右欄6行) e.「我々のここの結果は、(1)A3D8及びH90は全てのAML細胞株の増殖を阻害する;(2)A3D8及び/またはH90はTHP-1、HL60及びNB4細胞株の最終分化を誘導する;・・・ことを示す。」(291頁左欄10?15行) f.「抗ヒトCD44mAbsは、A3D8(IgG1,Sigma Immunochemicals St Louis,MO)、H90(IgG1,Pr A.Bernard,Nice,France)及びJ173(IgG1,Counlter-Immunotech,Marseille-Luminy,France)であった。」(291頁左欄「Materials and methods」の「Anti-CD44 mAbs,isotypic controls,and RA」の項) よって、記載事項c.、f.より、引用例2には、以下の発明が記載されている。 「抗CD44モノクローナル抗体であるH90」(以下、「引用発明」という。) 第3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 本願明細書には、配列番号2または4のアミノ酸配列について、「さらなる実験により、本発明者らは、特定の抗CD44抗体、H90(P245とも呼ばれる)を選択するに至った。」(段落【0011】)と記載され、また、(実施例2:バキュロウイルス-Sf9細胞系でのマウス抗体H90のキメラ化および発現-IgG1の発現)には、「(出発材料) H90ハイブリドーマの5×10^(6)個の細胞の2種のペレット(ドライアイス上)が用いられた。H90モノクローナル抗体は、IgG1カッパである。」と記載され、当該出発材料の、VL領域(軽鎖可変領域)のアミノ酸配列としての配列番号2(段落【0055】)と、VH領域(重鎖可変領域)のアミノ酸配列としての配列番号4(段落【0063】)が同定されたことが記載されている。 そして、本願発明者の一部は、引用例2の著者の一部と一致し、さらに、本願明細書に記載のマウス抗CD44モノクローナル抗体H90と、引用発明の抗体とは、その抗原及び名称(H90)が一致するから、両者は、同一のモノクローナル抗体である。 そうすると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、以下のようになる。 一致点:抗CD44モノクローナル抗体であるH90に関する発明である点。 相違点:本願発明は、アミノ酸配列である配列番号2の配列及び配列番号4の配列からなることによりそれぞれ特定される、モノクローナル抗体の軽鎖可変領域(以下「VL」という。)及び重鎖可変領域(以下「VH」という。)のポリペプチドの組み合わせであるのに対し、引用発明は、モノクローナル抗体であって、そのようなアミノ酸配列による特定はない点。 第4 当審の判断 特定の機能を有するマウス等の非ヒト動物由来のモノクローナル抗体が知られていた場合、キメラ抗体、scFv又はCDR-グラフト化抗体の作成のために、抗体のVL及びVLのアミノ酸配列を同定することは、本願優先日前既に自明の技術的課題である。また、ポリペプチドを酵素で断片に切断し、得られた断片をエドマン分解する等により、アミノ酸配列を同定する手法は、当業者の周知技術であって(要すれば特開平7-308192号の段落【0007】、特開平7-132090号の段落【0019】、及び、特開昭62-186798号の4頁左下欄1?18行等参照)、特に抗体の場合は、まずパパイン又はペプシンを用いてFab又はF(ab’)_(2)に切断することは既に周知の技術的事項であった。 このような本願優先日前の技術水準の下、引用例2の、CD44細胞表面抗原に結合するモノクローナル抗体H90が、AML細胞株の増殖を阻害し、また、それぞれAML-M2、M3サブタイプの細胞株であるHL60、NB4細胞の分化を誘導するという優れた機能を有するという記載(記載事項a.、b.、d.、e.)に接した当業者であれば、モノクローナル抗体H90のVL及びVHのアミノ酸配列を同定しようとすることは自然の発想である。そして、そのように着想した当業者が、周知技術により、引用発明のモノクローナル抗体H90のVL及びVHのアミノ酸配列を決定し、VL及びVHのポリペプチドの組み合わせを取得することは当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明が、引用例2及び周知技術より、予測し得ない有利な効果を奏するとは認められない。 したがって、本願発明は、引用例2に記載された発明及び当業者の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 請求人の主張 請求人は、審判請求書の手続補正書において、下記の点を主張しているが、いずれも理由はない。 ア.引用例には、本願発明において挙げられた特定の配列を有するポリペプチドは開示されていない。本願発明に規定された配列に関する示唆は引用例にはない。 イ.段落【0086】の表4に示された結果は、引用例より予想外である。 それぞれの主張について検討すると以下のとおりである。 ア.について 引用例2に本願発明の配列そのものが記載されていなくとも、引用例2の、モノクローナル抗体H90が、優れた機能を有するという記載に接した当業者であれば、モノクローナル抗体H90のVL及びVHのアミノ酸配列を同定しようとすることは自然の発想であり、そのように着想した当業者が、周知技術により、モノクローナル抗体H90のVL及びVHのアミノ酸配列を決定し、VL及びVHのポリペプチドの組み合わせを取得することは当業者が容易になし得たことであることは、上記第4.で述べたとおりである。 イ.について 表4に示された結果は、引用例2に記載されたモノクローナル抗体であるマウスH90の定常領域をヒト定常領域で置換することによりキメラ化した抗体の効果を示すものであり、これらはいずれも定常領域をも含む抗体に関するものである。一方、本願発明は、可変領域であるVL及びVHのポリペプチドの組み合わせであるから、抗体の一部である可変領域のみのポリペプチドの組み合わせである本願発明が、有利な効果を奏することを裏付ける証拠として表4に示された結果を参酌することはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-04-16 |
結審通知日 | 2014-04-22 |
審決日 | 2014-05-07 |
出願番号 | 特願2006-540415(P2006-540415) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C12N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 大輔 |
特許庁審判長 |
鈴木 恵理子 |
特許庁審判官 |
田中 晴絵 高堀 栄二 |
発明の名称 | キメラ抗CD44抗体およびそれらの使用 |
代理人 | 岸本 瑛之助 |
代理人 | 岸本 瑛之助 |
代理人 | 渡邉 彰 |
代理人 | 渡邉 彰 |