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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04H
管理番号 1292288
審判番号 不服2013-3117  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-18 
確定日 2014-09-22 
事件の表示 特願2008-127408「駐車装置用パレット」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月26日出願公開、特開2009-275405〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成20年5月14日出願の特願2008-127408号であって、平成24年11月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成25年2月18日に審判請求がなされたものであり、その請求項1から6に係る発明は、平成24年8月31日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1から6に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という)
「左右幅方向の中央部の両側に自動車の左右両輪を載せる一対の車輪載置部が形成されたパレット本体と、パレット本体の下面側に配設されて左右幅方向に延びる補強梁とを備え、一対の車輪載置部が中央部よりも低位置になるように板材を加工してパレット本体が形成され、パレット本体の下面側が該パレット本体の上面側と対応した形状に形成されてなる駐車装置用パレットにおいて、前記補強梁は、左右幅方向と直交する前後方向に並び、上端側が互いに間隔をあけて下端同士が互いに接触した状態又は互いに間隔をあけた状態で接続された一対の縦リブを備え、一対の縦リブの各上端は、少なくともパレット本体の中央部及び一対の車輪載置部の下面に対して左右幅方向に連続的又は断続的に沿うように形成されるとともに、パレット本体の中央部及び一対の車輪載置部の下面に対して左右幅方向に連続的又は断続的に接続されていることを特徴とする駐車装置用パレット。」

2.引用例
(1)これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2000-282700号公報(以下、「引用例1」という。)には、駐車装置のパレットに関して、次の事項が記載されている。
ア 「【0016】【発明の実施の形態】添付の図面を参照しながら本発明の駐車装置のパレットの実施形態を説明する。
【0017】図1は本発明のパレットの一実施形態を示す斜視図であり、図2?図5はそれぞれ本発明のパレットの他の実施形態を示す斜視図である。これらのパレットは鋼板をプレスなどによって湾曲させて形成したものである。・・・(略)・・・
【0018】図1のパレット1はその前部(図示の手前側)から車両が入出するものである。このパレット1には、その車両載置面たる上面に、前後方向(載置される車両の前後方向)に沿った中央凸部2を挟んで車輪が乗るべき平行二カ所の傾斜部3が形成されている。中央凸部2は図示のごとくその横断面が矩形を呈したものである。傾斜部3は左右外方に向けて下方に傾斜して水勾配を形成している。両傾斜部3の外側には連続して上方に突出するようにガイド部4が形成されている。ガイド部4はパレット1上に出入りする車両の車輪が側方から外方に外れないようにガイドするためのものである。
・・・(略)・・・
【0021】・・・(略)・・・ なお、パレット1の下面側に幅方向にわたる補強リブ9を固着することも容易である。後述のパレット6、16ではその長手方向の中間部にもリブ19を設けている(図2、図4)が、少なくとも両端にリブを設けるのが望ましく、中間部には必要に応じて配設すればよい。このリブ9、19は平板だけではなく平板とパイプ材との組合せで形成することもある。」

イ 図1(a)は上記「ア」で摘記した「【発明の実施の形態】」で述べられているパレットを示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)のI-I線断面図である。図1(a)、(b)には以下のことが示されている。(なお引用例1においては、載置される車両を基準として、車両の前後方向を「前後」、車両の左右方向を「左右」としている。)
・中央凸部2、平行二カ所の傾斜部3、ガイド部4を形成するようプレスなどによって湾曲させて形成される鋼板部分及び補強リブ9で構成される全体が「パレット1」とされている。(この全体としての「パレット1」と、その部分である、上述の中央凸部2、平行二カ所の傾斜部3、ガイド部4を形成している鋼板部分とを区別するために、以下、該鋼板部分を「パレット1の鋼板部分」と言う。)
・パレット1の鋼板部分の中央凸部2は左右幅方向の中央に位置する。
・車両の車輪が乗る、パレット1の鋼板部分の平行二カ所の傾斜部3は左右幅方向に中央凸部2を挟んで一対となっている。
・パレット1の鋼板部分の平行二カ所の傾斜部3は中央凸部2よりも低位置になるように形成されている。
・パレット1の鋼板部分の下面側はその上面側と対応した形状に形成されている。
・補強リブ9は平板で構成された縦方向のリブであり、補強リブ9の上端は、パレット1の鋼板部分の中央凸部2及び平行二カ所の傾斜部3の下面に対し、左右幅方向に沿うように形成される。

これらの記載事項及び、パレット1の鋼板部分の一対の平行二カ所の傾斜部3に乗る車両の車輪は車両の左右の車輪であることは明らかであることによると、引用例1には
「左右幅方向の中央凸部2を挟んで車両の左右の車輪が乗る一対の平行二カ所の傾斜部3が形成されたパレット1の鋼板部分と、パレット1の鋼板部分の下面側に設けられ左右幅方向にわたる補強リブ9とを備え、一対の平行二カ所の傾斜部3が中央凸部2よりも低位置になるように鋼板をプレスしてパレット1の鋼板部分が形成され、パレット1の鋼板部分の下面側がその上面側と対応した形状に形成されてなる駐車装置のパレット1において、補強リブ9は平板で構成された縦方向のリブであり、補強リブ9の上端はパレット1の鋼板部分の中央凸部2及び一対の平行二カ所の傾斜部3の下面に対して左右幅方向に沿うように形成されるとともに、パレット1の鋼板部分の下面に対して固着されている駐車装置のパレット1。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)同じく原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2004-211295号公報(以下、「引用例2」という。)には、駐車装置のパレットとその補強梁について、次の事項が記載されている。
ア 「【0013】【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施形態について、図1?図6を参照して説明する。
図4に示す駐車装置10は、自動車11を乗せるパレット12と、パレット12の四隅に設けられたローラ13(2個のみ示す)と、ローラ13を支持する一対のレール14と、パレット12をレール14に沿って走行させる駆動機構15などを備えている。
【0014】図1に示すようにパレット12は、自動車の左右の車輪11a,11bのうち一方の車輪11aが乗る第1のサイドパレット部材21と、他方の車輪11bが乗る第2のサイドパレット部材22と、パレット12の中央部に位置するセンターパレット部材23と、補強梁24などを備えている。第1および第2のサイドパレット部材21,22は、互いに同一形状のものを左右対称に配置している。
【0015】センターパレット部材23は、サイドパレット部材21,22の互いに隣り合う内側の縁部21a,22aを上方から覆うように設けられている。補強梁24は、サイドパレット部材21,22とセンターパレット部材23の下面側に設けられ、パレット12の幅方向に延びている。
・・・(略)・・・
【0019】図3に示すように補強梁24は、水平方向に延びる底壁部50と、底壁部50の両側から立上がる一対の縦壁部51,52と、縦壁部51,52の上端に形成されて互いに逆側に水平方向に延びるフランジ部53,54を備えている。すなわちこの補強梁24は、上面側が開放するハット形断面をなしている。フランジ部53,54の所定位置に、上下方向に貫通する締結材挿入孔55が形成されている。」

イ 図1は上記「ア」で摘記した「本発明の一実施形態」を示すパレット12の正面図であり、図3はそのパレット12の補強梁24の一部の斜視図であり、図4はそのパレット12を備えた駐車装置10の側面図である。図1、3、4には、以下のことが示されている。
・図3によれば補強梁24の「一対の縦壁部51,52」は、上端側が互いに間隔をあけて下端同士が互いに間隔をあけた状態で水平方向に延びる底壁部50によって接続されたものとなっており、さらに図1、4によればその「一対の縦壁部51,52」が並ぶ方向は左右幅方向と直交する方向となっている。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
・引用発明の「駐車装置のパレット1」、「パレット1の鋼板部分」、「中央凸部2」、「車両の車輪が乗る一対の平行二カ所の傾斜部3」はそれぞれ本願発明の「駐車装置用パレット」、「パレット本体」、「中央部」、「一対の車輪載置部」に相当し、引用発明の「左右幅方向の中央凸部2を挟んで車両の左右の車輪が乗る一対の平行二カ所の傾斜部3が形成されたパレット1の鋼板部分」は本願発明の「左右幅方向の中央部の両側に自動車の左右両輪を載せる一対の車輪載置部が形成されたパレット本体」に相当する。
・引用発明の「補強リブ9」は、本願発明の「補強梁」に相当し、引用発明の「パレット1の鋼板部分の下面側に設けられ左右幅方向にわたる補強リブ9」は、本願発明の「パレット本体の下面側に配設されて左右幅方向に延びる補強梁」に相当する。
・引用発明の「鋼板をプレスしてパレット1の鋼板部分が形成」されることは、本願発明の「板材を加工してパレット本体が形成」されることに相当する。
・引用発明の補強リブ9の「平板で構成された縦方向のリブ」は、本願発明の補強梁の「縦リブ」に相当する。
・引用発明の「補強リブ9の上端はパレット1の鋼板部分の中央凸部2及び一対の平行二カ所の傾斜部3の下面に対して左右幅方向に沿うように形成されるとともに、パレット1の鋼板部分の下面に対して固着されている」ことは、本願発明の「縦リブ」の「上端は、少なくともパレット本体の中央部及び一対の車輪載置部の下面に対して左右幅方向に連続的又は断続的に沿うように形成されるとともに、パレット本体の中央部及び一対の車輪載置部の下面に対して左右幅方向に連続的又は断続的に接続されている」ことに相当する。(引用発明では「連続的又は断続的に」とはされていないが、「連続的」も「断続的」もどちらも包含する本願発明との相当関係が満たされることは明らかである。)

したがって、両者は
「左右幅方向の中央部の両側に自動車の左右両輪を載せる一対の車輪載置部が形成されたパレット本体と、パレット本体の下面側に配設されて左右幅方向に延びる補強梁とを備え、一対の車輪載置部が中央部よりも低位置になるように板材を加工してパレット本体が形成され、パレット本体の下面側が該パレット本体の上面側と対応した形状に形成されてなる駐車装置用パレットにおいて、補強梁は縦リブからなり、縦リブの上端は、少なくともパレット本体の中央部及び一対の車輪載置部の下面に対して左右幅方向に連続的又は断続的に沿うように形成されるとともに、パレット本体の中央部及び一対の車輪載置部の下面に対して左右幅方向に連続的又は断続的に接続されている駐車装置用パレット。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
補強梁が、本願発明においては「左右幅方向と直交する前後方向に並び、上端側が互いに間隔をあけて下端同士が互いに接触した状態又は互いに間隔をあけた状態で接続された一対の縦リブを備え」るものであり、また「一対の縦リブ」の「各上端」は、パレットの下面に沿うように形成され接続されるのに対し、引用発明の補強リブ9は「平板で構成された縦方向のリブ」であって「一対の縦リブ」を備えるものでない点。

4.当審の判断
(1)相違点について
上記相違点について検討する。
上記「2.(2)ア」に摘記したように、引用例2には「駐車装置10」の「パレット12の幅方向に延び」る「補強梁24」について、「図3に示すように補強梁24は、水平方向に延びる底壁部50と、底壁部50の両側から立上がる一対の縦壁部51,52と、縦壁部51,52の上端に形成されて互いに逆側に水平方向に延びるフランジ部53,54を備えている。」と記載されており、該記載の「一対の縦壁部51,52」は「水平方向に延びる底壁部50」「の両側から立上がる」ものであって、その図1、3、4において左右幅方向と直交する方向に並び、上端側が互いに間隔をあけて下端同士が互いに間隔をあけた状態で水平方向に延びる底壁部50によって接続されたものとして記載されたものであるので、本願発明の「左右幅方向と直交する前後方向に並び、上端側が互いに間隔をあけて下端同士が互いに接触した状態又は互いに間隔をあけた状態で接続された一対の縦リブ」に相当する。
そして、「一対の」縦リブは、単なる平板のリブよりも強度が高くなることは当業者ならば自明であるところ、引用発明の補強リブ9においても、強度の高いものが望ましいことは明らかであり、引用発明の補強リブ9を引用例2記載の「底壁部50の両側から立上がる一対の縦壁部51,52と、縦壁部51,52」の構成に代替し、本願発明の相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

なおここで、上述の議論では引用例2において「補強梁24」は「縦壁部51,52の上端に形成されて互いに逆側に水平方向に延びるフランジ部53,54」も備えているものであることについて触れなかったが、この点、引用発明の補強リブ9を設計変更するにあたりこの「フランジ部53,54」に係る構成を採用しても採用しなくても、そのために本願発明の「前記補強梁は、左右幅方向と直交する前後方向に並び、上端側が互いに間隔をあけて下端同士が互いに接触した状態又は互いに間隔をあけた状態で接続された一対の縦リブを備え、一対の縦リブの各上端は、少なくともパレット本体の中央部及び一対の車輪載置部の下面に対して左右幅方向に連続的又は断続的に沿うように形成されるとともに、パレット本体の中央部及び一対の車輪載置部の下面に対して左右幅方向に連続的又は断続的に接続されてい」るという規定と抵触あるいは実質上整合しなくなるような点は生じず、またそのために単なる平板のリブよりも「一対の」リブとした方がより強度が高いものが得られるという状況を変えてしまうような点もないこと、念のために補足しておく。

(2)請求人の主張について
請求人は審判請求理由の「3.本願請求項1の発明(本願発明)が特許されるべき理由」の「(3)本願発明と引用例の発明との対比及び評価」において、とくに引用例2に関し、「すなわち、引用発明2は、センターパレット部材を補強梁に固定するといった思想があるものの、補強梁の上端をサイドパレット部材及びセンターパレット部材の両方の下面に沿った状態で連続的又は断続的に接続するといった思想はありません。
これに伴い、引用例2には、一対の車輪載置部が中央部よりも低位置になるように板材を加工してパレット本体が形成され、パレット本体の下面側が該パレット本体の上面側と対応した形状に形成されることや、補強梁を構成する一対の縦リブの各上端が、少なくともパレット本体の中央部及び一対の車輪載置部の下面に対して左右幅方向に連続的又は断続的に沿うように形成されるとともに、パレット本体の中央部及び一対の車輪載置部の下面に対して左右幅方向に連続的又は断続的に接続されることについての開示乃至示唆が一切ありません。
・・・(略)・・・
そのため、引用発明2は、車輪載置部よりも高位置にある中央部の下面に縦リブの上端を沿わせることはできません。仮に、引用発明2において、車輪載置部よりも高位置にある中央部の下面に縦リブの上端を沿わせようとすると、サイドパレット部材の内側端縁がセンターパレット部材(中央部)内に配置されなくなるだけでなく、サイドパレット部材の移動(パレット幅の調整)までもが阻害されます。
従いまして、引用例2において、一対の縦リブを有する補強梁が開示されていたとしても、その発明の機能(効果)を滅却するような形態(縦リブを中央部及び車輪載置部の下面に沿わせた形態)に変更してまで引用発明1に適用するといった発想に至るはずがありません。」旨主張している。
しかし、引用発明はパレット幅を調整するものではなく、そして引用例2には、サイドパレット部材が移動できる構成(パレット幅が調整できる構成)が「縦壁部51,52」が一対という構成の何らかの前提である旨の記載あるいは示唆は無く、また、サイドパレット部材が移動できる構成(パレット幅が調整できる構成)であることにより単なる平板のリブよりも「一対の」リブとした方がより強度が高いものが得られるということが否定される旨の記載あるいは示唆もない。さらに、引用発明において縦リブを一対とすると引用発明の「縦方向のリブの上端はパレット1の中央凸部2及び二カ所の傾斜部3の下面に対して左右幅方向に沿うように形成されるとともに、パレット1の下面に対して固着」という構成を取ることが格別困難になるような状況も発生しない。
そうすると、請求人の上記主張について検討しても、本願発明の相違点に係る発明特定事項の容易想到性が否定されるものではない。

(3)総合判断
そして、本願発明の作用効果は、引用発明、及び、引用例2記載の事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は引用発明及び引用例2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、上記引用発明及び引用例2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-18 
結審通知日 2014-06-20 
審決日 2014-08-12 
出願番号 特願2008-127408(P2008-127408)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 真理子  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 住田 秀弘
竹村 真一郎
発明の名称 駐車装置用パレット  
代理人 藤本 昇  
代理人 中谷 寛昭  

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