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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1292370
審判番号 不服2013-1739  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-30 
確定日 2014-09-29 
事件の表示 特願2010-276971号「縫糸留具を骨の穴に移植するための挿入装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年4月21日出願公開、特開2011-78816号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.出願の経緯
本願は、平成11年12月15日(パリ条約による優先権主張 1999年3月2日米国、1999年9月7日 米国)を国際出願日とする特願2000-601972号の一部を、平成19年10月4日に新たな特許出願とした特願2007-261139号の一部をさらに平成22年12月13日に新たな特許出願としたものであって、平成24年9月28日付けで拒絶査定され、これに対して平成25年1月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、さらに、前置審査において、平成25年4月15日付けで拒絶理由が通知され、平成25年7月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明について
1.本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年7月18日付け手続補正書により補正された次のとおりのものである。

「【請求項1】
楔式の縫糸留具の回転を防止して、楔式の縫糸留具を骨の穴に移植するための挿入装置において、
対向する両端を有する剛直な軸と、
前記軸の一端の先端部と
からなり、
前記先端部は、形状記憶材料で形成され、前記軸と操作可能に係合された近位端と、骨穴当接面を備える楔式の縫糸留具に形成された挿入穴に係合するように構成されている遠位端とを有し、
前記挿入穴の外部に位置する前記先端部の部分は弾性を有し、
前記縫糸留具を前記骨の穴に移植するために、前記骨穴当接面は、前記挿入装置の前記先端部により前記骨の穴の壁面に押し込め密着した状態で維持させられ、
前記先端部の少なくとも前記遠位端は、前記挿入穴の長さ方向に沿って均一な略正方形の断面形状に対応する、長さ方向に沿って均一な略正方形の断面形状を有し、
前記先端部の前記遠位端が前記挿入穴と係合し、前記縫糸留具を前記骨の穴内に移植する間、前記先端部の前記遠位端により前記骨穴当接面が前記骨の穴の壁面に押し込め密着した状態で維持させられ、前記挿入穴の外部に位置する前記先端部の部分が弾性変形され、前記挿入穴の外側の前記先端部の部分が前記骨の穴に進入するとき、前記遠位端における前記先端部の軸心回りの前記楔式の縫糸留具の回転が防止される
ことを特徴とする挿入装置。」

2.刊行物
刊行物1:国際公開第97/37595号
刊行物2:特表平8-506510号公報

3.刊行物に記載された事項
(1)前置審査の拒絶理由において引用され、本願優先日前に頒布された刊行物1には、「楔形の縫合材アンカー及びその植え込み方法」について以下の事項が記載されている。(なお、日本語訳として、刊行物1のパテントファミリーである特表平11-507863号の記載を援用した。ただし、訳語の統一のため、当審において、"mounting end 131"を、「挿入端部131」、"distal tip"を、「遠位端部」とした。)

1a)「Referring now to Fig. 27, an alternate and preferred embodiment is shown. The body of the suture anchor is shaped as described above, however a mounting opening 130 is provided at one end of the body of the device. This opening is sized to receive the mounting end 131 of the insertion device shown in Figs. 28 and 29. The insertion device 132 having mounting end 131 is comprised of an elongated shaft 133. The shaft has two sections, a narrower distal section and a wider proximal section separated by a transitional section 134. The transitional section 134 is conical in shape for reasons which will be described below in connection with the implantation procedure. A handle 135 is provided at the proximal end of the insertion device to facilitate gripping of the device during the implantation procedure.」(23ページ16?25行)
(次に、図27を参照すると、一つの代替的で且つ好適な実施の形態が図示されている。この縫合材アンカーの本体は、上述したような形状とされているが、この装置の本体の一端には、取り付け開口部130が形成されている。この開口部は、図28及び図29に図示した挿入装置の挿入端部131を受け入れ得るような寸法とされている。挿入端部131を有する挿入装置132は、細長い軸133から成っている。この軸は、狭小な末端部分と、より幅の広い基端部分という2つの部分を有しており、これらの部分は遷移部分134により分離されている。該遷移部分134は、植え込み方法に関して以下に説明する理由のために、円錐形の形状をしている。植え込み方法中に装置を把持し易くするため挿入装置の基端にはハンドル135が設けられている。)

1b)「In use, (Figs. 30 and 31 ) insertion end 131 is received within mounting opening 130 of the body of the suture anchor as shown in Figs. 28 and 29. Mounting opening 130 is offset from the center line of the body of the suture anchor for reasons which will become apparent below. During the insertion procedure the suture anchor is inserted into a previously-formed bore hole. The insertion tool travels in a position off axis from the hole in the bone. Once the transition portion 134 reaches the top of the bore hole the transition surface forces the insertion tool towards the axis of the bore hole (i. e. , the transition portion causes the tool to center) This causes the distal end of the tool to flex slightly and provides additional torque to the suture anchor assisting the plow edge in digging into the bone. A pair of slots 137 are provided to permit the protected passage of the suture out of the bore. Upon removal of the insertion tool, (Fig 32) the flex of the tool forces the plow edge of the suture anchor into the soft cancellous portion of the bone and the distal tip of the insertion tool slips out of the mounting opening 130 due to the upward force provided on the insertion tool. This provides an extra impetus to the insertion of the suture anchor and its final implantation and mounting.」(23ページ26行?24ページ14行)
(使用時、(図30及び図31)挿入端部131を図28及び図29に図示するように、縫合材アンカーの本体の取り付け開口部130内に受け入れる。取り付け開口部130は、以下の説明から明らかになる理由のため縫合材アンカーの本体の中心線からずらした位置に配置されている。挿入操作中、予め形成した穴内に縫合材アンカーを挿入する。挿入具は、骨の穴から軸がずれた位置まで移動する。遷移部分134が穴の頂部に達すると、遷移面は、挿入具を穴の軸線に向けて付勢する(即ち、遷移部分は器具を中心位置に配置する)。これにより、器具の末端は僅かに曲がって、縫合材アンカーに更なるトルクを提供し、プラウ端縁が骨に咬合うのを支援する。縫合材が保護された状態にて穴外に出ることができるように一対のスロット137が形成されている。この挿入具を取り外したとき(図32)、この器具の曲がりにより、縫合材アンカーのプラウ端縁は骨の柔軟な海綿状部分内に付勢され、挿入具の遠位端部は、該挿入具に加わった上向きの力により取り付け開口部130外に滑り出す。これにより、縫合材アンカーを挿入し、またそのアンカーを最終的に植え込み且つ取り付けるための余分な力が得られる。)

1c)「In an alternative embodiment the insertion tool may be provided with a distal end 136 of a soft polymer material having therein a stiffening member such as a metal wire or polymer of more rigid material Thus, a soft and manipulate insertion tool is provided having the resilience at the distal end to provide the insertion forces described above. The softer polymer insertion tool aids in producing a friction fit between the distal tip of the insertion tool and the mounting opening 130. Thus, a more sure grip is provided between the tool and the body of the suture anchor.」(24ページ15?21行)
(一つの代替的な実施の形態において、該挿入具には、金属ワイヤー又はより剛性な材料のポリマーのような補強部材を有する柔軟なポリマー材料の末端136を設けることができる。このように、上述した挿入力を提供し得るように、末端に弾性を有する柔軟で且つ操作可能な挿入具が提供される。より柔軟なポリマーから成る挿入具は、該挿入具の遠位端部と取り付け開口部130とを摩擦嵌めさせるのに役立つ。このように、該器具と縫合材アンカーの本体との間にはより確実な把持部分が提供される。)

1d)「In general the mounting opening 130 need not be cylindrical in shape. The mounting opening and distal tip of the insertion tool may be shaped so as to prevent rotation of the suture anchor about the tip.」(24ページ22?24行)
(一般には、取り付け開口部130は、円筒状の形状である必要はない。取り付け開口部及び挿入具の遠位端部は、縫合材アンカーがその遠位端部の周りで回転するのを防止するような形状とすることができる。)

1e)「Next, the user uses installation tool 400 to drive suture anchor 300 into a bore hole. This is done by aligning suture anchor 300 with a bore hole 600 formed in a bone 601 (Fig. 63) and then pushing the suture anchor into the bone hole. As this occurs, the suture anchor's plow surface 316 will first tend to engage rim 603 of bore hole 600, causing the distal end of shaft tip 404 to flex as the suture anchor pivots to enter the bore hole. Further downward pressure on the installation tool's handle 410 causes the distal end of the shaft tip to flex even further as the suture anchor's plow surface 316 engages, and then rides along, wall 602 of the bore hole, with the suture anchor's cam surface 326 being slightly spaced from, or insignificantly in contact with, the bore hole's opposing wall 606 (see Fig. 64). 」(34ページ1?10行)
(次に、取り付け器具400を使用して縫合材アンカー300を穴内に押し込む。これは、骨601に形成された穴600と縫合材アンカー300とを整合させ(図63)、次に、その縫合材を骨の穴内に押し込むことで行われる。この状態のとき、縫合材アンカーのプラウ面316は、最初に、穴600の縁部603に係合し、縫合材アンカーが回動して穴内に入るとき、軸の先端404の末端を曲げる。取り付け器具のハンドル410に更に下方への圧力を加えると、縫合材アンカーのプラウ面316が係合するに伴い、軸の先端の末端を更に曲げて、次に、穴の壁602に沿って乗り上げ、縫合材アンカーのカム面326が穴の対向壁606から僅かに隔てられ、又は該対向壁と僅かに接触する(図64参照)。)

1f)Fig.30ないしFig.32の記載から、縫合材アンカーの本体は、その形状からみると楔形のものであって、骨の穴に植え込まれるものである。

1g)上記1a)、1b)の記載およびFig.28ないしFig.32の図示内容によると、挿入装置132は、縫合材アンカーの本体を骨の穴に挿入するものであり、ハンドル135、細長い軸133、遷移部分134からなる対向する両端を有する軸と、軸の一端に設けられた縫合材アンカーの本体を取り付ける挿入端部131とからなるものであって、挿入端部131の近位端部は軸と係合し、遠位端部は、縫合材アンカーの挿入装置を取り付ける開口部130に係合するように構成されている。

1h)上記1c)の記載およびFig.29の図示内容によると、挿入端部131の部分には、補強部材を有する柔軟なポリマー材料からなり、かつ、軸に係合する末端136が用いられている。

1i)上記1d)の記載およびFig.27において、開口部130が略楕円形状であることが図示されていることからみて、互いに係合する縫合材アンカーの挿入装置を取り付ける開口部130及び挿入具の挿入端部131の形状は、縫合材アンカーが挿入具の挿入端部131の周りで回転するのを防止するような形状となっている。

1j)上記1e)の記載およびFig.63,64の図示内容において、縫合材アンカーのプラウ面316は、取り付け器具のハンドル410に更に下方への圧力を加えると、縫合材アンカーのプラウ面316が係合するに伴い、軸の先端の末端を更に曲げて、次に、穴の壁602に沿って乗り上げるものであるから、取り付け器具のハンドル410による下方への圧力により穴の壁602に対して付勢されて当接するものである。
よって、挿入装置132によって骨の穴に楔形の縫合材アンカーを挿入するFig.30、31に図示されたものにおいても同様に、縫合材アンカーの側面(図面からみて左側面)は、骨穴に当接する側面であって、挿入装置132による下方への圧力により、骨の穴に付勢されて当接するものである。

1k)上記1d)、1i)の記載によると、縫合材アンカーの挿入装置を取り付ける開口部130及び係合する挿入具及び挿入端部131の形状は、縫合材アンカーがその先端の周りで回転するのを防止するような形状となっているのであるから、挿入端部131が骨の穴に進入するときに、挿入端部131の軸心回りの縫合材アンカーの回転が防止されるのは明らかである。

以上の1a)?1e)の記載と、1f)?1k)において刊行物1の記載から認定した事項から、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「楔形の縫合材アンカーが回転するのを防止して、楔形の縫合材アンカーを骨の穴に植え込むための挿入装置132において、
対向する両端を有する軸と、
軸の一端に設けられた縫合材アンカーの本体を取り付ける挿入端部131とからなり、
挿入端部131は、補強部材を有する柔軟なポリマー材料からなり、軸に係合された近位端部と、骨穴に当接する側面を備えた縫合材アンカーの取り付け開口部130内に摩擦嵌めされるよう構成されている遠位端部とを有し、
取り付け開口部130の外部に位置する挿入端部131は、弾性を有するものであって、
縫合材アンカーを骨の穴に植え込むために、縫合材アンカーの側面は、挿入端部131により骨の穴の内面に対して付勢されて当接しており、
取り付け開口部130及び挿入端部131の遠位端部は、縫合材アンカーが挿入端部131の遠位端部の周りで回転するのを防止できるような形状を有し、
挿入端部131の遠位端部が開口部130と摩擦嵌めされ、縫合材アンカーを骨の穴に植え込む間、縫合材アンカーの骨穴に当接する側面は、挿入端部131により骨の内面に対して付勢され、取り付け開口部130の外部に位置する挿入端部131が曲がって、取り付け開口部130の外部に位置する挿入端部131が骨の穴に進入するときに、挿入端部131の軸心回りの縫合材アンカーの回転が防止される
挿入装置。」

(2)前置審査の拒絶理由において引用され、本願優先日前に頒布された刊行物2には、「縫合材を定着する装置及び方法」について以下の事項が記載されている。

2a)「図9の挿入工具40は、縫合材アンカーのアンカー穴34内に挿入される挿入端部44にて終端となる略直線状の細長の本体42を備えている。」(20ページ12?13行)

2b)「本発明の方法では、以下に述べる理由により、挿入工具40、48、56、56′の少なくとも挿入端部44、52、60は、弾性的性質を有する材料、望ましくは形状記憶材料のような超弾性的性質を有する材料で形成する必要がある。
材料の弾性的又は超弾性的性質は、縫合材アンカーの挿入中、挿入端部が略恒久的に変形せず、また挿入端部がその最初の形態(全体として、縫合材アンカーを患者の骨内に挿入する前に、アンカー穴34内に最初に取り付けるときの挿入端部の形態)に略復帰するものでなければならない。挿入工具の少なくとも挿入端部に対する好適な材料は、ニッケル・チタニウム合金である。かかる材料はニチノール(登録商標名)又はティネル(登録商標名)、レイケム又はセンチノール(登録商標名)(ジーエイシー・インターナショナル・インコーポレーテッド)という商品名で市販されている。超弾性的性質を有するかかる形状記憶合金は、当該技術分野で周知である。」(21ページ17?28行)

以上の2a)、2b)の記載から、刊行物2には、以下の事項(以下「刊行物2の記載事項」という。)が記載されている。
「縫合材アンカーのアンカー穴34内に挿入される挿入工具40の挿入端部44を、弾性的性質を有する材料、望ましくは形状記憶材料のような超弾性的性質を有する材料で形成したこと。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「楔形」は、本願発明の「楔式」に相当し、引用発明の「縫合材アンカー」は、本願発明の「縫糸留具」に相当し、引用発明の「植え込む」ことは、本願発明の「移植」に相当し、引用発明の「挿入装置132」は、本願発明の「挿入装置」に相当し、引用発明の「軸」は、縫合材アンカーを骨の穴に挿入するためのものであって、ある程度の剛性があることは明らかであるから、本願発明の「剛直な軸」に相当し、引用発明の「挿入端部131」は、軸の一端に設けられたものであるから本願発明の「先端部」に相当し、引用発明の「軸に係合された近位端部」は、軸と係合している以上、軸による操作が可能であることは明らかであるから、本願発明の「軸と操作可能に係合された近位端」に相当し、引用発明の「骨穴に当接する側面」は、本願発明の「骨穴当接面」に相当し、引用発明の「取り付け開口部130」は、本願発明の「挿入穴」に相当し、引用発明の「摩擦嵌め」は、本願発明の「係合」に、引用発明の「骨の穴の内面」は、本願発明の「骨の穴の壁面」に相当し、引用発明の「骨の内面に対して付勢されて当接する」ことは、本願発明の「骨の壁面に押し込め密着した状態で維持させられる」ことに相当し、引用発明の「曲がって」は、本願発明の「弾性変形され」に相当する。
そして、引用発明の「補強部材を有する柔軟なポリマー材料」と、本願発明の「形状記憶材料」は、「弾性材料」である点で共通する。

よって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「楔式の縫糸留具の回転を防止して、楔式の縫糸留具を骨の穴に移植するための挿入装置において、
対向する両端を有する剛直な軸と、
前記軸の一端の先端部と
からなり、
前記先端部は、弾性材料で形成され、前記軸と操作可能に係合された近位端と、骨穴当接面を備える楔式の縫糸留具に形成された挿入穴に係合するように構成されている遠位端とを有し、
前記挿入穴の外部に位置する前記先端部の部分は弾性を有し、
前記縫糸留具を前記骨の穴に移植するために、前記骨穴当接面は、前記挿入装置の前記先端部により前記骨の穴の壁面に押し込め密着した状態で維持させられ、
前記先端部の前記遠位端が前記挿入穴と係合し、前記縫糸留具を前記骨の穴内に移植する間、前記先端部の前記遠位端により前記骨穴当接面が前記骨の穴の壁面に押し込め密着した状態で維持させられ、前記挿入穴の外部に位置する前記先端部の部分が弾性変形され、前記挿入穴の外側の前記先端部の部分が前記骨の穴に進入するとき、前記遠位端における前記先端部の軸心回りの前記楔式の縫糸留具の回転が防止される挿入装置。」

[相違点1]
挿入装置の軸の一端の先端部に用いる弾性材料が、本願発明においては、「形状記憶材料」からなるのに対して、引用発明においては、「補強部材を有する柔軟なポリマー材料」からなる点。

[相違点2]
本願発明においては、「先端部の少なくとも遠位端は、挿入穴の長さ方向に沿って均一な略正方形の断面形状に対応する、長さ方向に沿って均一な略正方形の断面形状を有」するものであるのに対して、引用発明においては、先端部の遠位端と挿入穴の形状を、縫糸留具が軸の先端部の周りで回転するのを防止できるような形状であるものの、その形状が具体的にどのようなものであるのか不明である点。

そこで、上記相違点について判断する。

[相違点1について]
刊行物2には、「縫合材アンカーのアンカー穴34内に挿入される挿入工具40の挿入端部44を、弾性的性質を有する材料、望ましくは形状記憶材料のような超弾性的性質を有する材料で形成したこと。」という事項が記載されているから、引用発明において、挿入端部131に用いる弾性材料として、刊行物2の記載事項における形状記憶材料を採用し、上記相違点1に係る本願発明とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

[相違点2について]
引用発明において、先端部の遠位端と挿入穴の形状に関して、縫糸留具が軸の先端部の周りで回転するのを防止するための形状は、断面円形以外のものであればよいことは明らかであるから、先端部や挿入穴の断面形状として、断面円形以外の略正方形の断面形状を選択し、長さ方向に沿って均一なものとして上記相違点2に係る本願発明とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明によって得られる効果も、引用発明及び刊行物2に記載された事項から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.結び
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-07 
結審通知日 2014-05-08 
審決日 2014-05-20 
出願番号 特願2010-276971(P2010-276971)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 聡  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 関谷 一夫
松下 聡
発明の名称 縫糸留具を骨の穴に移植するための挿入装置  
代理人 河村 英文  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  

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