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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B27K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B27K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B27K
管理番号 1292389
審判番号 無効2013-800228  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-12-16 
確定日 2014-09-29 
事件の表示 上記当事者間の特許第5138080号発明「塑性加工木材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5138080号(請求項の数[1]、以下、「本件特許」という。)は、平成22年6月3日に出願した特願2010-127593号の一部を平成23年9月2日に新たな特許出願とした特願2011-191396号に係るものであって、その請求項1に係る発明について、平成24年11月22日に特許権の設定登録がなされた。

これに対して、平成25年12月16日に、本件特許の請求項1に係る発明の特許に対して、本件無効審判請求人(以下「請求人」という。)により本件無効審判〔無効2013-800228号〕が請求されたものであり、本件無効審判被請求人(以下「被請求人」という。)により指定期間内の平成26年3月10日付けで審判事件答弁書が提出されたものである。

また、平成26年5月30日付けで被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、同日付けで請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、同年6月10日及び12日付けで被請求人より上申書が提出され、同13日付けで請求人より口頭審理陳述要領書(2)が提出され、同日に口頭審理が行われたものである。

さらに、平成26年6月27日付けで請求人より上申書が提出され、同年7月11日付けで被請求人より上申書が提出され、同年7月15日付けで請求人より上申書が提出されたものである。


第2 当事者の主張
1.請求人の主張、及び提出した証拠の概要
請求人は、特許5138080号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、平成26年5月30日付け口頭審理陳述要領書、同年6月13日付け口頭審理陳述要領書(2)、同年6月13日の口頭審理、及び、同年6月27日付け上申書、同年7月15日付け上申書において、甲第1?20号証を提示し、以下の無効理由を主張した。

[無効事由]
(1)無効事由1
特許第5138080号の特許(以下、「本件特許」と称する)に係る特許発明は、特許出願前に当業者が甲第1号証?甲第13号証の1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであることから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。従って、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるものである。
具体的には、甲第1号証から抽出される、構成要件a、構成要件bからなるものを主引用発明として、本件発明と主引用発明との相違点i)は、甲第4号証又は甲第6号証から容易に想到しうる。
相違点ii)は、副引用発明(甲第11号証)、及び追加実証試験の結果を示した甲第18号証、甲第19号証により、構成要件C、D1及びD2の摩耗深さも従来から存在していたものであり、且つ、副引用発明(甲第11号証)により構成要件C、D1及びD2の摩耗深さが数値範囲の最適化という程度のものであるので容易に想到しうる。
相違点iii)は、甲第6号証及び未圧縮の板目材には交差角度が45度以下の範囲内にあるものが存在するという周知事項から容易に想到しうる。
というものである。
(なお、甲第16号証、甲第17号証を直接証拠として容易想到とする主張は、平成26年6月13日の口頭審理で却下された。)

(2)無効事由2
本件特許の特許請求の範囲の請求項1は、機能・特性等により特定されている結果、発明の範囲が不明確となっている。しかも、本件特許の請求項1に記載の発明特定事項のうち、「塑性加工木材を大気中で乾燥して含水率15%の時の気乾比重を0.85以上とし」て「摩耗深さ=(m_(1)-m_(2))/A・ρとして算出した摩耗深さが0.12〔mm〕以下とし」たことについては、発明の詳細な説明にはその算出の過程が記載されておらず、請求項1に係る発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないことから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
従って、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるものである。

(3)無効事由3
本件特許の特許請求の範囲の請求項1は、機能・特性等により特定されている結果、発明の範囲が不明確となっている。しかも、本件特許の請求項1に記載の発明特定事項のうち、「塑性加工木材を大気中で乾燥して含水率15%の時の気乾比重を0.85以上とし」て「摩耗深さ=(m_(1)-m_(2))/A・ρとして算出した摩耗深さが0.12〔mm〕以下とし」たことについては、発明の詳細な説明にはその算出の過程が記載されておらず、請求項1に係る発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないことから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
従って、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるものである。

(4)無効事由4
本件特許の特許請求の範囲の請求項1は、機能・特性等により特定されている結果、発明の範囲が不明確となっている。しかも、本件特許の請求項1に記載の発明特定事項のうち、「塑性加工木材を大気中で乾燥して含水率15%の時の気乾比重を0.85以上とし」て「摩耗深さ=(m_(1)-m_(2))/A・ρとして算出した摩耗深さが0.12〔mm〕以下とし」たことについては、発明の詳細な説明にはその算出の過程が記載されておらず、請求項1に係る発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないことから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
従って、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるものである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開平5-50409号公報
甲第2号証:林産試だより(2012年12月号)「木材と水の関係」
甲第3号証:高圧水蒸気中での圧縮成形固定による丸太からの非切削角材製造技術の開発
甲第4号証:高圧水蒸気処理による木材の圧縮成形加工(IX) 高圧密化が物性に与える影響(2000年度日本木材学会中部支部大会)
甲第5号証:機能材料(2001年4月号)「圧縮木材と水蒸気処理」
甲第6号証:特開2003-236806号公報
甲第7号証:木材の試験方法(JIS Z 2101:2009)
甲第8号証:受託研究結果通知書「杉圧縮材の性能評価に関する研究」
甲第9号証:圧縮杉 技術レポート(受託研究結果通知書「杉圧縮材の性能評価に関する研究」の要約)
甲第10号証:木材科学講座3 物理(第2版)
甲第11号証:圧縮木材を用いた木製品の開発-グランドゴルフセットの試作-(愛知県工業技術センター研究報告 第37号(2001))
甲第12号証:杉を使うということ(飛騨杉研究開発協同組合カタログ)
甲第12号証の1:杉を使うということ(飛騨杉研究開発協同組合カタログ)
甲第13号証:SUGI Cryptomeria japonica(飛騨産業株式会社製品カタログ)
甲第13号証の1:SUGI Cryptomeria japonica(飛騨産業株式会社製品カタログ)
甲第14号証:特開2009-174214号公報
甲第15号証:特開2007-332612号公報
甲第16号証:木材工業ハンドブック
甲第17号証:特開2000-246706号公報
甲第18号証:依頼試験成績書の写し
甲第19号証:依頼試験成績書(生活研第13号の20)に係る試験体及びその作製工程についての説明書の写し
甲第20号証:拒絶査定不服の審決(審判番号:不服2012-1129)

2.被請求人の主張
これに対して、被請求人は、平成26年3月10日付け審判事件答弁書、同年5月30日付け口頭審理陳述要領書、同年6月10日付け上申書、同年6月12日付け上申書、同年6月13日の口頭審理、及び、同年7月11日付け上申書において、乙第1?5号証を提示し、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の無効理由に対して以下のように反論した。

[無効理由に対する反論]
本件審判の請求には理由がない。

[証拠方法]
乙第1号証:JIS Z 2101-1994
乙第2号証:JIS A 1453-1973
乙第3号証:テーパー社のウェブサイト(http://www. taberindustries.com/action/print/100013)を印刷したもの及びその抄訳
乙第4号証:実験報告書
乙第5号証:株式会社コベルコ科研ウェブサイト 技術ノート「こべるにくす」Vo1.12、OCT.2003(http://www.kobelcokaken.co.jp/tech_library/pdf/no24/d.pdf)を印刷したもの

第3 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1に係る発明は特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。(「A:」?「F:」の文字は当審で付与。)
「【請求項1】
A:木材の厚み方向に対して加えた加熱圧縮力によって、前記木材が加熱圧縮されて塑性加工され、B:前記加熱圧縮された後の前記塑性加工木材は、前記塑性加工木材を大気中で乾燥して含水率15%の時の気乾比重を0.85以上とし、
C:かつ、前記塑性加工木材に加える荷重を5.2[N]、回転速度が約60[rpm]となるように前記塑性加工木材と摩耗輪を500回転させたときの前記塑性加工木材の重量m_(2)[g]を測定し、D1:試験前の木材の重量m_(1)[g]と摩耗輪により摩耗を受ける部分の面積A[mm^(2)]と密度ρ[g/cm^(3)]とから
摩耗深さ=(m_(1)-m_(2))/A・ρ
D2:として算出した摩耗深さが0.12[mm]以下とし、
E:しかも、前記塑性加工された後の前記木材の木口面の全ての年輪線と、前記木材の裏側板目面または樹心側柾目面の面とがなす鋭角側の交差角度が45度以下の範囲内にあることを特徴とする塑性加工木材。」(以下、「本件特許発明」という。)


第4 無効理由1についての当審の判断
1.甲第1?甲第10号証の記載事項
(1)甲第1号証の記載事項
本件特許出願遡及日前に頒布された刊行物である甲第1号証には、木材の処理方法および装置に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 木材を高温高圧容器内で水蒸気と高周波により急速に加熱軟化させた後、この木材を圧縮成形してその変形を高温高圧雰囲気内に置いて固定化したことを特徴とする木材の処理方法。」
(イ)「【0005】本発明者は、上述のような問題点を解決すべく鋭意研究を進めた結果、木材を高温高圧容器内で水蒸気と高周波により急速に加熱軟化させた後、圧縮成形して固定化することが、木材の堅牢化に極めて有効な手段であることを見出した。」
(ウ)「【0017】次に、高温高圧容器1の容器本体1aの開口部の蓋1bを閉じて該高温高圧容器1を密閉した後、この高温高圧容器1内に水蒸気発生装置からスチーム管3を通して高温(100?230℃)、かつ、高圧(1?30kgf/cm^(2))の水蒸気を供給させるとともに、高周波発振器4から導波管5を通して高周波を供給させ、この水蒸気と高周波により木材Wを加熱する。・・・木材Wは高温高圧の水蒸気を吸収して内部温度が上昇するとともに、高周波により内部から温度が上昇し、これによって木材Wは急速に加熱軟化する。」
(エ)「【0018】このようにして木材Wを急速に加熱軟化させた後、プレス機2のプレス金型6,6をプレスシリンダー7,7…でお互いに近接させ、プレス金型6,6間の空間S内に保持されている木材Wを、図3に示すように、プレス金型6,6によりプレス補助治具8,8を介して断面積比で1/3?2/3程度になるように圧縮成形する。そして、この状態で木材Wを所定時間(数秒?数十分)置くと、木材Wは水蒸気によって化学変化を起こして圧縮が固定化される。」
(オ)「【0019】・・・圧縮成形された木材Wを高温高圧容器1から取り出して大気に放置すると、木材Wは内部からの自己放熱により乾燥して処理を終了する。」
(カ)「【0022】上記実施例では、木材Wに上下2方向から圧縮力を加えて木材Wを圧縮成形するようにしているが、図4に示すように、高温高圧容器1内の上下並びに左右に、プレスシリンダー7,7…で互いに接近、或いは、離反駆動するフラットなプレスプレート6a,6a…をそれぞれ対向配置し、かつ、これらの隣接するプレスプレート6a,6a間に、直角に折曲成形されたL字状のプレス補助治具8a,8a…をそれぞれ該プレスプレート6a,6a…に対して摺動可能に装架することによって上下左右4方向から、木材Wに圧縮力を加えて圧縮成形するようにしてもよい。また、図5に示すように、高温高圧容器1内の左右に、固定台1c上でプレスシリンダー7,7…により互いに接近、或いは、離反駆動する直角に折曲成形されたL字状のプレスプレート6b,6bを対向配置するとともに、両プレスプレート6b,6bの中間上方に、プレスシリンダー7により昇降駆動するフラットなプレスプレート6cを配置し、かつ、プレスプレート6b,6bの水平板間およびプレスプレート6b,6bの垂直板とプレスプレート6cとの間に、フラットなプレス補助治具8bおよび直角に折曲形成されたL字状のプレス補助治具8c,8cをそれぞれプレスプレート6b,6bおよび6cに対して摺動可能に装架することによって上方および左右の3方向から、木材Wに圧縮力を加えて圧縮成形するようにしてもよい。」
(キ)「【0029】更に、床板用、机の天板用、家具用および木型用等の板材を成形する場合には、図12に示すように、断面形状が凹型状のプレス金型19、および、このプレス金型19内に嵌挿し得るプレス金型20によって、高温高圧容器1内で水蒸気と高周波により急速に加熱軟化させた木材Wを圧縮成形させて固定化させる。」
(ク)「【図4】第1の実施例のプレス機の変形例を示す断面図である。」
(ケ)図4には、上下左右方向から圧縮することが、図12には、厚み方向から圧縮することが記載されている。
(コ)上記(ア)の「木材を圧縮成形してその変形を高温高圧雰囲気内に置いて固定化」は、(ケ)の上下左右方向から圧縮する態様、及び厚み方向から圧縮する態様でなされるものであるので「上下2方向または上下左右4方向から木材に圧縮力を加えて圧縮成形して固定化」といえる。
(サ)上記(ア)の「木材の処理」は、(オ)の「圧縮成形された木材Wを高温高圧容器1から取り出して大気に放置すると、木材Wは内部からの自己放熱により乾燥して処理を終了する」態様でなされるものであるので「固定化後の木材を自然大気中に放置して乾燥させたもの」といえる。
(シ)上記(ア)の処理がなされた後のものも「木材」といえる。
(ス)上記(オ)の「圧縮成形された木材Wを高温高圧容器1から取り出して大気に放置すると、木材Wは内部からの自己放熱により乾燥して処理を終了する」態様でなされるものであるので「固定化後の木材を自然大気中に放置して乾燥させたもの」といえる。

上記記載事項から、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。(「a:」?「b:」の文字は当審で付与。)
「a:木材を高温高圧容器内で水蒸気と高周波により急速に加熱軟化させた後、上下2方向または上下左右4方向から木材に圧縮力を加えて圧縮成形して固定化し、
b:固定化後の木材を自然大気中に放置して乾燥させた木材。」(以下、これを「引用発明」という。)

(2)甲第2号証の記載事項
本件特許出願遡及日後に頒布された刊行物である甲第2号証には、木材と水の関係に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「自然大気中に放置したときの平衡含水率を気乾含水率と呼び・・中略・・日本における気乾含水率は全国平均でおおよそ15%とされています。」(第5頁右段第17?21行)

(3)甲第3号証の記載事項
本件特許出願遡及日前に頒布された刊行物であることに争いのある、甲第3号証には、高圧水蒸気中での圧縮成形固定による丸太からの非切削角材製造技術の開発に関して、次の事項が記載されている。
(ア)図11には、表題「表面硬度測定結果(3-1-1-1)」と共に、比重(測定時の気乾比重)1.0までの範囲で測定された硬さの値が記載されている。

(4)甲第4号証の記載事項
本件特許出願遡及日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、木材と水の関係に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【結果、考察】本研究では、高圧水蒸気処理を用いた圧縮加工によって木材を圧密化し、圧縮率の変化に伴う物性の変化について検討した。
圧縮率が増加するにつれて・・・表面硬度が上昇し、・・・比重が1.0を超えると、ばらつきが大きくな・・る傾向が現れた。」(第75頁)
(イ)第76頁右下の図には、表題「スギ表面硬度」と共に、横軸に比重0?1.5のメモリが付され、比重0.9程度、表面硬度40程度の所に「柾目サンプル」及び「板目サンプル」測定結果がプロットされている。

(5)甲第5号証の記載事項
本件特許出願遡及日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、圧縮木材と水蒸気処理に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「2.2 圧縮木材の物性・・・圧縮の程度により、物性に影響を与える比重をコントロ?ルすることができる。・・比重は、圧縮セット量の増加に従い急激に増加し、圧縮セット量が60%では約0.9となる。曲げヤング率、曲げ強さ、耐摩耗度およびブリネル硬さも、圧縮セット量の増加とともに増加し、これらは比重の増加と相関が高い。・・・」(第68頁右側?第70頁左側)
(イ)「4.2密閉熱処理・・・木材を加熱、圧縮する(図7)。・・・」(第73頁右側第11行目?同第74頁左側第8行目)

(6)甲第6号証の記載事項
本件特許出願遡及日前に頒布された刊行物である甲第6号証には、板材の圧密接合構造に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0013】・・・この圧縮成形による圧密化処理は、この実施例では熱盤プレス装置を用いて行った。次に、圧密化処理について説明する。
【0014】板部材としては、請求項3の発明として規定するように、軟質材であるスギ板目材を用い、幅100mm、長さ1800mmのもので、圧密化処理前の厚みが15mmで、圧密化処理後の厚みは6mmである。この例では圧縮率は60%である((圧密化処理前厚み?圧密化処理後厚み)÷圧密化処理前厚み×100(%))。」
(イ)「【0019】・・・板材はその表面硬さを大幅に向上させることができる。」

(7)甲第7号証の記載事項
本件特許出願遡及日前に頒布された刊行物である甲第7号証には、木材の試験方法に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「25摩耗試験」(第41頁)
(イ)「25.2.4試験手順
・・・
c)試験荷重・・・試験体に加えられる荷重は、5.2±0.05Nとする。
・・・回転盤の回転速度は、60±2rpmとする。
・・・
e)試験回転数 500回転とする。
・・・
D=m_(1)-m_(2)/Aρ
ここに、 D:摩耗量(mm)
m_(1):試験前質量(mg)
m_(2):試験後質量(mg)
A:摩耗輪による摩耗を受ける部分の面積(mm^(2))
ρ:試験体の密度(g/cm^(3))」(第44?45頁)

(8)甲第8号証の記載事項
本件特許出願遡及日前に頒布された刊行物であることに争いのある、甲第8号証には、杉圧縮材の性能評価に関する研究に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「6.5.7 摩耗試験
・・・摩耗試験機(東洋精機製)にセットした。・・・材表面への加重は1000gとし、500回転後の試験体の重量変化及び摩耗輪軌跡の厚さ変化(4カ所)を測定した。
・・・
表8 摩耗試験結果(平均値)
圧縮率 厚さ(mm) 質量(g) 密度 含水率
変化量 変化量 (g/cm^(3)) (%)
0% 0.1518 0.10714 0.39 10.4
30% 0.0584 0.07924 0.54 4.4
40% 0.0476 0.06992 0.51 4.8
50% 0.0226 0.05742 0.78 6.7」
(「6.5.7」欄の頁)

(9)甲第9号証の記載事項
本件特許出願遡及日前に頒布された刊行物であることに争いのある、甲第9号証には、圧縮杉技術に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「圧縮杉摩耗試験
試験方法 圧縮杉の摩耗試験を、摩耗試験装置を用いて評価する。
摩耗輪を、試験体の上で500回転させた後の重量、厚さ変化を測定する。

結果 圧縮率 厚さ摩耗量(mm) 重量摩耗量(g)
無垢スギ 0.15 0.11
30%圧縮 0.06 0.08
40%圧縮 0.05 0.07
50%圧縮 0.02 0.06 」

(10)甲第10号証の記載事項
本件特許出願遡及日前に頒布された刊行物である、甲第10号証には、木材の物理に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「図4-14 気乾比重と摩耗抵抗との関係」(第114頁)には、気乾比重と摩耗抵抗が正の相関で記載されている。
(イ)「摩耗抵抗(木材の単位体積を摩滅させるのに必要な仕事量)に最も影響を与える組織的因子は比重で図4-14に示すように、比重の増加とともに抵抗も増加する」(第115頁)
(ウ)「表4-10 含水率変化1%に対する力学的性質の変化率
・・・
硬さ(木口) 4%
硬さ(側面) 2.5%」(第123頁)

(11)甲第11号証の記載事項
本件特許出願遡及日前に頒布された刊行物である、甲第11号証には、圧縮木材を用いた木製品の開発に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「圧縮木材を用いた木製品の開発
-グランドゴルフクラブヘッドの試作-」(第1頁表題欄)
(イ)「2.実験方法
2.1供試材・・・圧縮加工に用いる供試材は、・・・ハードメープル及びイエローポプラとした。・・・イエローポプラについては、密度の比較的・・低いもの(0.48g/cm^(3))が存在した・・・
2.2 圧縮加工・・・試料は圧縮と同時に加熱され・・・密閉された治具内で水蒸気処理が施される。試料の取り出しは、所定時間プレスした後、・・・十分冷えた後に行った。
・・・
2.4.4 耐摩耗性
圧縮面について、平面摩耗試験機を用いて行い、摩耗による厚さ変化量を求めた。研磨紙はJIS A 1453研磨紙法に使用する研磨紙・・・#180を用い、加重は14.7N、往復回数は400回とした。」(第1頁左欄?第2頁左欄)
(ウ)図8には「密度と摩耗量の関係」として、イエローポプラ(低密度材)の密度約1.1g/cm^(3)で摩耗量約0.08mmのデータ、及び、密度が増大するに従って摩耗量は減少する傾向が記載されている。

(12)甲第12号証、及び甲第12号証の1の記載事項
本件特許出願遡及日前に頒布された刊行物である、甲第12号証には、杉を使うということに関して、次の事項が記載されている。
(ア)「杉の特徴-技術開発」(第2頁)
(イ)第2頁「木材の圧縮とは」の3枚の写真のうち右端のものには、「たとえば50%圧縮すると、ブナとほぼ同じ表面強度になります。」との説明と共に、圧縮前後の木材の状態が掲載されている。
写真の加工後の木材は、一部の年輪線が45度以下の角度で木材の裏側面と交差し、一部の年輪線が45度を超える角度で木材の裏側面と交差している。

(13)甲第13号証、及び甲第13号証の1の記載事項
本件特許出願遡及日前に頒布された刊行物である、甲第13号証には、SUGIに関して、次の事項が記載されている。
(ア)「杉の圧縮」の項には、「圧縮前」と「圧縮後」の写真が記載されている。
写真の圧縮後の木材は、一部の年輪線が45度以下の角度で木材の裏側面と交差し、一部の年輪線が45度を超える角度で木材の裏側面と交差している。

2.本件特許発明と引用発明との対比
本件特許発明と引用発明を対比する。
引用発明の「木材を高温高圧容器内で水蒸気と高周波により急速に加熱軟化させた後、上下2方向または上下左右4方向から木材に圧縮力を加えて圧縮成形して固定化」することは、本件特許発明の「木材の厚み方向に対して加えた加熱圧縮力によって、前記木材が加熱圧縮されて塑性加工され」ることに相当し、以下同様に、
「固定化後の木材を自然大気中に放置して乾燥させた」ものは、「塑性加工木材を大気中で乾燥し」たものに、
「加熱圧縮されて塑性加工され」「乾燥させた木材」は、「塑性加工木材」に相当する。

一致点:
そうすると、両者は、
「木材の厚み方向に対して加えた加熱圧縮力によって、前記木材が加熱圧縮されて塑性加工され、前記加熱圧縮された後の前記塑性加工木材は、前記塑性加工木材を大気中で乾燥した塑性加工木材。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本件特許発明は、塑性加工木材が「含水率15%の時の気乾比重を0.85以上」としたものであるのに対して、引用発明は、そのようなものであるか否か不明な点。

相違点2:本件特許発明は、塑性加工木材が「塑性加工木材に加える荷重を5.2[N]、回転速度が約60[rpm]となるように前記塑性加工木材と摩耗輪を500回転させたときの前記塑性加工木材の重量m_(2)[g]を測定し、:試験前の木材の重量m_(1)[g]と摩耗輪により摩耗を受ける部分の面積A[mm^(2)]と密度ρ[g/cm^(3)]とから
摩耗深さ=(m_(1)-m_(2))/A・ρ
として算出した摩耗深さが0.12[mm]以下」としたものであるのに対して、引用発明は、そのようなものであるか否か不明な点。

相違点3:本件特許発明は、塑性加工木材が「塑性加工された後の前記木材の木口面の全ての年輪線と、前記木材の裏側板目面または樹心側柾目面の面とがなす鋭角側の交差角度が45度以下の範囲内にある」ものであるのに対して、引用発明は、そのようなものであるか否か不明な点。

3.相違点についての判断
(1)請求人の主張
請求人は、平成26年5月30日付け口頭審理陳述要領書において、各相違点に関して前記「第2 1.(1)」の具体的理由を主張している。
なお、請求人のいう相違点i)?iii)は、以下のものであり、それぞれ上記相違点1?3に対応している。
i)本件特許発明の構成要件Bの後段「含水率15%の時の気乾比重を0.85以上とし、」について
主引用発明の「圧縮成形して固定化し」た「固定化後の木材」は、自然大気中に放置して乾燥させたその木材の「含水率15%の時の気乾比重」が「0.85以上」であるか不明な点がある。
ii)本件特許発明の構成要件C,D1及びD2について
本件特許発明は、「前記塑性加工木材に加える荷重を5.2[N]、回転速度が約60[rpm]となるように前記塑性加工木材と摩耗輪を500回転させたときの前記塑性加工木材の重量m_(2)[g]を測定し試験前の木材の重量m_(1)[g]と摩耗輪により摩耗を受ける部分の面積A[mm^(2)]と密度ρ[g/cm^(3)]とから摩耗深さ = (m_(1)-m_(2))/A・ρとして算出した摩耗深さが0.12[mm]以下」としているが、主引用発明の圧縮成形した木材はそのようなものであるか不明な点がある。
iii)本件特許発明の構成要件Eについて
本件特許発明は、構成要件Eに示すように、「前記塑性加工された後の前記木材の木口面の全ての年輪線と、前記木材の裏側板目面または樹心側柾目面の面とがなす鋭角側の交差角度が45度以下の範囲内にある」が、主引用発明はそのようなものであるか不明な点がある。

(2)相違点1についての当審の判断
そこで、まず、相違点1について、前記「第2 1.(1)」の請求人が具体的に主張した理由で容易に想到し得たものであるかについて検討する。
(a)まず、引用発明の木材は、「高温高圧容器内で水蒸気と高周波により急速に加熱軟化させた後・・圧縮成形して固定化」し、それを「固定化後の木材を自然大気中に放置して乾燥させた」ものであり、本件特許明細書【0062】で「気乾比重とは、木材を大気中で乾燥した時の比重で、通常、含水率15%の時の比重で表すものであり、木材を乾燥させた時の重さと同じ体積の水の重さを比べた値である。」と記載されていることからして、「固定化後の木材を自然大気中に放置して乾燥させた」引用発明の木材は、含水率15%に極近い状態のものと言える。
(b)次に、甲第4号証記載事項(ア)には「高圧水蒸気処理を用いた圧縮加工によって木材を圧密化」すること、「圧縮率が増加するにつれて・・・表面硬度が上昇」することが、同じく(イ)には、スギの「柾目サンプル」及び「板目サンプル」として比重0.9程度、表面硬度40程度のものが存在することが記載されている。
(c)そして、木材の硬さ、すなわち表面硬度が木材に要求される公知の特性と認識されるものであるところ、引用発明の「高温高圧容器内で水蒸気と高周波により急速に加熱軟化させた後・・圧縮成形して固定化」し、それを「固定化後の木材を自然大気中に放置して乾燥させた木材」において、甲第4号証記載の「圧縮率が増加するにつれて・・・表面硬度が上昇」するとの示唆に基づいて、圧縮成形の程度、すなわち圧縮率を選択して、所望の表面硬度となるようにすることは、当業者が適宜なし得ることであって、しかも、甲第4号証に比重0.9程度のものも例示され、気乾比重として0.85以上なる値を採用することに特段の技術的困難性が存在するものでもない以上、引用発明の木材を、甲第4号証記載の様なスギの柾目若しくは板目材とするとして、本件特許発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(d)さらに、甲第6号証に関しても検討する。
まず、本件特許明細書【0019】以降に記載されている発明の実施の形態についての説明に、加熱圧縮された後の大気中での乾燥を実施する箇所の記載がなされていないのと同様に、木材加工において、通常、断りがない限り、製品は大気中に置かれるものと考えるのが普通である。
そうすると、甲第6号証の圧密化された板材も、普通に大気中に置かれるものといえ、その状態で、大気中での乾燥が実質的になされるものといえる。
さらに、甲第6号証は、「スギ板目材」を15mmから6mmに圧密化処理するものであり、本件特許明細書【0062】に「通常、含水率15%の時の比重で表す」気乾比重として、「国産或いは国内でよく使用される材木のスギは0.36」とされているように、スギ板目材が、含水率15%の時の気乾比重0.36程度であることを考慮すると、甲第6号証の圧密化処理後のスギ板目材は、本件特許明細書に記載されたような「国内でよく使用される材木」の使用を前提として、含水率15%の時の気乾比重は0.9(すなわち、0.36×15/6)程度になり、本件特許発明の「気乾比重を0.85以上」とした「塑性加工木材」となるといえる。
なお、上記例示されたスギの気乾比重は、当業者に広く知られた値と変わるものではなく、上記圧密化処理後の気乾比重の求め方も当業者における技術常識といえるものでもある。
そうすると、引用発明の木材を甲第6号証のスギ板目材とすると共に、本件特許明細書に記載されたような国内でよく使用される材木とし、圧密化された板材を置く環境を通常の大気中として、本件特許発明の相違点1に係る発明特定事項とすることも、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点2についての当審の判断
次に、相違点2について、前記「第2 1.(1)」の請求人が具体的に主張した理由で容易に想到し得たものであるかについて検討する。
(a)まず、甲第11号証の記載事項(イ)には、圧縮加工をしたイエローポプラの試料に対して、平面摩耗試験機を用いて耐摩耗性が評価されたこと、及びその結果が、同じく記載事項(ウ)に示され、密度約1.1g/cm^(3)で摩耗量約0.08mmのものが存在することが記載されている。
(b)しかし、甲第11号証に記載されたイエローポプラの試料の摩耗量は、平面摩耗試験機を用いて計測された値であって、構成要件C、D1で特定された方法で求めた、本件特許発明の摩耗深さとは異なるものである。
(c)このことに関して、請求人は、平成26年5月30日付け口頭審理陳述要領書において、「甲第11号証の試験片(圧縮木材)が、・・より摩耗しにくい試験である本件特許発明の摩耗試験を・・に対して行えば、当然摩耗深さは0.12mm以下となり、本件特許発明の摩耗試験の要件を満たすことは自明である。」旨主張しているが、被請求人が、平成26年6月10日付け上申書で「構成要件Gに用いられる摩耗試験装置と甲11に記載の平面摩耗試験機とは、摩耗の生じる機構が全く異なるのみならず、甲11には『単位面積当たりの荷重の大きさ』を算出し得る記載がなく、甲11には速度の記載がないから、両者の耐摩耗性のデータを対比のしようがないし、そもそも、両試験の耐摩耗性の値に基本的に相関はないから、それらを対比することに何ら技術的意義がない」と主張する様に、さらに、両試験の結果を相互に換算できるようにする様なデータも提示されていない以上、請求人の主張を採用することはできない。
(d)なお、請求人は、甲第18号証、及び甲第19号証に追加実証試験の結果を示しているが、それらの試験内容も、甲第11号証の平面摩耗試験機を用いた摩耗量と、本件特許発明の摩耗試験で特定された摩耗深さの値を相互に換算し得る様なものではない。
(e)さらに、上記(2)の相違点1についての当審の判断で検討した、甲第4号証に記載された比重0.9程度のものや、甲第6号証の板目材は、いずれもスギ材であるのに対して、甲第11号証の摩耗量は、イエローポプラの試料についてのものであり、異なる材質を前提とする甲第4号証や甲第6号証記載の数値と、甲第11号証の記載の数値とを併用すること自体、容易なこととは言えない。
また、請求人は「副引用発明(甲第11号証)により構成要件C、D1及びD2(G)の摩耗深さが数値範囲の最適化という程度のものであるので容易に想到しうる。」とも主張しているが、一般的に、材料や各部の寸法等を特定して、発明を製品等として具現化することは、当業者が通常なし得ることであるが、それらの特定は、技術的知識や経験等に基づき適切に選択されるものであるところ、請求人の主張は、それらの技術的知識や経験を前提として論理づけたものではないので、この主張も採用出来るものではない。
(f)そうすると、甲第1?20号証のすべてを参酌しても、請求人が具体的に主張した論理で、甲第1号証、甲第4号証、甲第6号証、甲第11号証、及び追加実証試験の結果を示した甲第18号証、甲第19号証に基づいて、本件特許発明の相違点2に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。

(4)相違点3についての当審の判断
次に、相違点3について、前記「第2 1.(1)」の請求人が具体的に主張した理由で容易に想到し得たものであるかについて検討する。
(a)まず、請求人は審判請求書において、圧縮後の木材に関して、甲第12号証を提示して「甲第12号証に記載された『杉の圧縮とは』の写真において、圧縮後の木材の木口面の全ての年輪線と裏側板目面の面とがなす鋭角側の交差角度が45度以下となっていることを一見して把握することが可能であり、このことは、加工後の木材の木口面の全ての年輪線と木材の裏側板目面または樹心側柾目面の面とがなす鋭角側の交差角度が45度以下の範囲内にあることに相当する。」と主張しているが、当該写真の加工後の木材は、一部の年輪線が45度を超える角度で木材の裏側面と交差しているので当該主張は採用出来るものではない。
また、甲第13号証に関しても同様である。
(b)次に、請求人が平成26年5月30日付け口頭審理陳述要領書において「甲第16号証の第882頁の図には板目材であるスギ無処理材(A)及び甲第17号証の明細書の図6中のBで示す材料取りされた木材に示すように、未圧縮の板目材には、その木口面の全ての年輪線と、その板目材の裏側板目面の面とがなす鋭角側の交差角度が45度以下の範囲内にあるものが存在することは周知である。
よって、甲第6号証を参考としてスギ板目材を15mmから6mmまで圧密化すれば、この処理により年輪線の傾斜は圧密の程度に応じて緩くなるのは自明である。よって、市場に流通する板目材の中からその木口面の全ての年輪線と、その板目材の裏側板目面の面とがなす鋭角側の交差角度が45度以下の範囲内にあるスギ板目材が選択され、圧密化処理が施された場合、得られた圧密化木材の木口面の全ての年輪線と、その木材の裏側板目面の面とがなす鋭角側の交差角度が45度以下の範囲内にあることは自明である。
よって、相違点iii)は、甲第6号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到することができるものである。」と主張しているので、このことについて検討する。
(c)まず仮に、請求人が主張する様に「未圧縮の板目材には、その木口面の全ての年輪線と、その板目材の裏側板目面の面とがなす鋭角側の交差角度が45度以下の範囲内にあるものが存在することは周知である」としても、それは「交差角度が45度以下の範囲内にあるもの」以外の態様の板目材の存在を否定するものではない。
そして、上記請求人の主張は、当該前提のもとに、周知のものが「選択され」圧密化処理が施された場合、得られた圧密化木材の木口面の全ての年輪線と、その木材の裏側板目面の面とがなす鋭角側の交差角度が45度以下の範囲内にあることは自明いうものであるが、たとえ請求人が主張する様な態様の未圧縮の板目材が周知のものであっても、それ以外の態様の板目材も存在する以上、複数の態様から一部を「選択」する為には、何らかの知見が必要と解されるところ、請求人の主張は、それらの知見をともなって論理づけられたものではない。
一方、本件特許発明は、相違点3に係る構成によって、被請求人が平成26年5月30日付け口頭審理陳述要領書において説明した「傷跡や窪みが付き難くなる」(本件特許明細書【0009】)、「製品間の品質にばらつきが少ない。・・・製品化後の周囲環境条件の変化による歪みの発生がない。」(本件特許明細書【0016】)という作用効果を生ずるものである。
そうすると、複数の年輪線の態様が存在する木材から、特定のものを「選択」する論理なしに、上記(2)(c)の引用発明の木材を、甲第4号証記載の様なスギの柾目若しくは板目材とする、若しくは、同(d)の引用発明の木材を甲第6号証のスギ板目材とするにあたり、さらに市場に流通する板目材の中から特定の態様のものを選択して、本件特許発明の相違点3に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。
(d)なお、甲第16号証、甲第17号証は、平成26年5月30日付け口頭審理陳述要領書に添附して提出された証拠であり、それらを直接証拠として容易想到とする主張は、口頭審理において却下されているので、それらを直接証拠として容易想到とする主張採用できるものではない。
(e)そうすると、甲第1?20号証のすべてを参酌しても、請求人が具体的に主張した論理で、甲第1号証、甲第4号証、甲第6号証及び未圧縮の板目材には交差角度が45度以下の範囲内にあるものが存在するという周知事項に基づいて、本件特許発明の相違点3に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。

(5)まとめ
従って、本件特許発明は、甲第1号証、甲第4号証、甲第6号証、甲第11号証、及び未圧縮の板目材には交差角度が45度以下の範囲内にあるものが存在するという周知事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 無効理由2についての当審の判断
「含水率15%の時の気乾比重」及び「摩耗深さ=(m_(1)-m_(2))/A・ρとして算出した摩耗深さ」は、いずれも当業者が計測により測定しえるものであり、当該当業者が測定しえる条件で特定される発明が不明確である」とはいえない。

第6 無効理由3、4についての当審の判断
「塑性加工木材を大気中で乾燥して含水率15%の時の気乾比重を0.85以上」ととすること、及び、塑性加工木材を「摩耗深さ=(m_(1)-m_(2))/A・ρとして算出した摩耗深さが0.12〔mm〕以下」となる様にすることは、当業者であれば、本件特許明細書の【発明の詳細な説明】に記載された加熱圧縮及び乾燥によりなし得ることと認められる。
従って、本件特許明細書の【発明の詳細な説明】は、本件特許発明の実施をすることができる程度に記載したものである。
また、同様に、本件特許発明は、本件特許明細書の【発明の詳細な説明】に記載されたものである。

第7 むすび
以上のとおり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-30 
結審通知日 2014-08-05 
審決日 2014-08-19 
出願番号 特願2011-191396(P2011-191396)
審決分類 P 1 113・ 537- Y (B27K)
P 1 113・ 536- Y (B27K)
P 1 113・ 121- Y (B27K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 中川 真一
竹村 真一郎
登録日 2012-11-22 
登録番号 特許第5138080号(P5138080)
発明の名称 塑性加工木材  
代理人 山口 修  
代理人 山口 修  
代理人 高見 憲  
代理人 江藤 聡明  
代理人 江藤 聡明  
代理人 江藤 聡明  
代理人 山口 修  
代理人 江藤 聡明  
代理人 山口 修  
代理人 鮫島 正洋  

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