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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1292413
審判番号 不服2013-19053  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-02 
確定日 2014-10-02 
事件の表示 特願2010-514364「白色LEDおよびそれを用いたバックライトならびに液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月 3日国際公開、WO2009/144922〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、2009年5月26日(優先権主張2008年5月30日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成25年4月5日付けで拒絶理由が通知され、同年6月10日に明細書及び特許請求の範囲の補正がなされたが、同年6月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲の補正がなされたものである。(以下、この平成25年10月2日になされた補正を「本件補正」という。)

II.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、本願特許請求の範囲の請求項1を
「発光ピーク波長が380nm以上420nm以下の発光素子と、少なくとも青色蛍光体、緑色蛍光体、および赤色蛍光体を含む3種以上の蛍光体を含有する蛍光体層とを具備する白色LEDであって、
前記蛍光体層は、前記緑色蛍光体と前記赤色蛍光体との混合物を含有する第1の透明樹脂硬化物を有する第1の蛍光体層と、前記第1の蛍光体層の前記発光素子側とは反対側に配置され、前記青色蛍光体を含有する第2の透明樹脂硬化物を有する第2の蛍光体層とを有し、
前記第1の蛍光体層は、前記第1の蛍光体層に含有される蛍光体全体における前記青色蛍光体の含有量が5質量%以下、または前記青色蛍光体を含まず、
前記第2の蛍光体層は、前記第2の蛍光体層に含有される蛍光体全体における前記青色蛍光体以外の蛍光体の含有量が5質量%以下、または前記青色蛍光体以外の蛍光体を含まず、
前記第1の蛍光体層の厚さに対する前記第2の蛍光体層の厚さの比が1以上3以下であると共に、前記第1の蛍光体層における前記赤色蛍光体の含有量に対する前記緑色蛍光体の含有量の質量比が0.05以上0.4以下であり、
前記赤色蛍光体は、
一般式:(La_(1-x-y)Eu_(x)M_(y))_(2)O_(2)S
(式中、Mは、Sb、Sm、GaおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素であり、xおよびyは、0.08<x<0.17、0≦y<0.003を満たす値である。)
で表されるユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体であることを特徴とする白色LED。」
と補正することを含むものであって、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるので、以下に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、独立特許要件の検討を行う。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-88261号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の記載がある(下線は、当審による。)。

ア 「【0029】
[第1実施形態]
(本発明の第1実施形態に係る発光装置)
以下において、本発明の第1実施形態に係る発光装置100について説明する。図1は、第1実施形態の白色の光を放出する発光装置100(白色LED)を示す断面図である。
【0030】
第1実施形態に係る発光装置100は、図1に示すように、発光変換部70と、発光変換部70内にマウントされた発光素子10とを備える。
【0031】
発光変換部70は、発光素子10に近い領域である第1の領域20aと、第1の領域20aよりも発光素子10から離れた領域である第2の領域30aと、第1の領域20a及び第2の領域30aの間に設置される波長選択材料40とで構成される。なお、図1では、発光素子10をマウントする配線等は、省略されている。
【0032】
発光装置100から白色の光を発光させる場合、発光素子10は、第1の波長の光として、紫外線を放出する。具体的には、発光素子10は、発光変換部70からの発光波長の補色関係や発光変換部70に配置される透光性樹脂50及び透光性樹脂60の劣化等を考慮して波長のピークが、380nm?420nmの範囲である紫外線を放出するGaN系の素子を用いることが好ましい。
【0033】
第1の領域20aには、マウントされた発光素子10の周辺に、透光性樹脂50が配置され、透光性樹脂50中に長波長変換材料として赤色発光色変換材料20Rと、長波長変換材料として緑色発光色変換材料20Gとが含まれる。
【0034】
第2の領域30aには、透光性樹脂60が配置され、透光性樹脂60中に短波長変換材料として青色発光色変換材料30が含まれる。
【0035】
赤色発光色変換材料20R、緑色発光色変換材料20G、青色発光色変換材料30には、それぞれ既知の色変換材料を用いる。3種の色変換材料の粒径は、3?10μm、比重は3.5?4.5g/cm^(3)である。3種の色変換材料の粒径及び、比重を揃える事により色変換材料を透光性樹脂50及び透光性樹脂60中にほぼ均一に分散させることができる。
【0036】
透光性樹脂50及び透光性樹脂60は、色変換材料を内部に含むことができるものであればよく、例えば、脂環式エポキシ樹脂、含窒素エポキシ樹脂等の熱硬化性エポキシ樹脂
やシリコン樹脂が好適であるが、これに限らず、他のエポキシ樹脂等も用いられる。
【0037】
なお、これらの透光性樹脂50及び透光性樹脂60は、所望の波長をカットする着色剤、所望の光を拡散させる酸化チタン、酸化アルミニウムなどの無機拡散材やメラニン樹脂、グアナミン樹脂、ベンゾググアナミン樹脂などの有機拡散材、樹脂の耐光性を高める紫外線吸収剤、酸化防止剤や有機カルボン酸亜鉛、酸無水物、亜鉛キレート化合物などの硬化促進剤を種々の添加剤の一つとして含んでもよい。
【0038】
その他の材料は、既知のものを使用するので、それらの説明を省略する。
【0039】
(本発明の第1実施形態に係る発光装置の発光過程)
次に、図1に示すような発光装置100の発光過程を図2に示す。図2に示すように、上述した発光装置100は、青色発光色変換材料30が、青色の光を放出し、緑色発光色変換材料20Gが、緑色の光を放出し、赤色発光色変換材料20Rが、赤色の光を放出することで、高演色性の白色の光を作製する。
【0040】
ここで、青色発光色変換材料30は、発光素子10から放出される紫外線を励起光として吸収し、青色の光を放出する。具体的には、青色発光色変換材料30中の電子が、励起光を吸収し基底状態から励起状態に遷移し、再び基底状態にもどるときに紫外線よりも長波長である青色の光を放出する。同様にして、赤色発光色変換材料20Rは、紫外線を励起光として吸収し、赤色の光を放出する。また、緑色発光色変換材料20Gは、紫外線を励起光として吸収し、緑色の光を放出する。
【0041】
加えて、青色発光色変換材料30により放出された青色の光は、エネルギーが大きく、緑色発光色変換材料20G或いは赤色発光色変換材料20Rに吸収され、緑色或いは赤色の光を放出する。
【0042】
しかしながら、本実施形態に係る発光装置100は、第1の領域20aと第2の領域30aとの間に波長選択材料40を備える。波長選択材料40は、紫外線及び青色の波長よりも長い波長の光として例えば、緑色及び赤色の光を透過し、青色の光を反射する。従って、第2の領域30aの青色発光色変換材料30により放出された青色の光は、波長選択材料40により反射されるため、緑色発光色変換材料20G或いは赤色発光色変換材料20Rに吸収されずに、青色の光のまま外部へ放出される。
【0043】
このようにして、複数の色変換材料を配置することにより、発光装置100は、高演色性の白色光を作製することができる。」

イ 「【0052】
(本発明の第1実施形態に係る発光装置の作用・効果)
以上説明した本発明に係る第1実施形態の発光装置100によれば、発光変換部70は、第1の領域20aと、第2の領域30aと、第1の領域20aと第2の領域30aとの間の波長選択材料40とで構成される。第1の領域20aには、緑色発光色変換材料20G及び赤色発光色変換材料20Rが含まれる。また、第2の領域30aには、青色発光色変換材料30が含まれる。
【0053】
このように青色発光色変換材料30を第2の領域30aに配置することにより、青色発光色変換材料30から放出される青色の光は、緑色発光色変換材料20G及び赤色発光色変換材料20Rに吸収されることなく発光変換部70の外側へ放出されやすくなる。つまり、青色発光色変換材料30から放出される青色の光が、緑色発光色変換材料20G及び赤色発光色変換材料20Rに再度吸収されて、緑色及び赤色の光に変換されるという、変換過程の増加を低減することができる。
【0054】
また、青色発光色変換材料30から放出された青色の光は、波長選択材料40により反射され、第2の領域30aの波長選択材料40とは反対側から発光変換部70の外側へ放出される。
【0055】
つまり、青色の光は、青色の光を吸収する緑色発光色変換材料20G及び赤色発光色変換材料20Rが含まれている第1の領域20aに放出されにくくなる。これにより、青色発光色変換材料30を経て緑色発光色変換材料20G或いは赤色発光色変換材料20Rに至る紫外線の変換過程を低減できるため、更に変換効率を向上することができる。
【0056】
(本発明の第1実施形態に係る発光装置における変形例)
以下において、本発明の第1実施形態に係る発光装置100における変形例について、図4及び図5を参照して説明する。なお、図4、図5に示す変形例については、上述した
第1実施形態に係る発光装置100との相違点を主として説明する。」

ウ 「【0071】
図5に示す発光装置102は、図4の発光装置101と同様に、発光変換部72が、波長選択材料40を備えず、第1の領域22aと、第2の領域32aとで構成される。また、色変換材料としては、発光装置100の3種類の色変換材料と同様に、赤色発光色変換材料22Rと、緑色発光色変換材料22Gと、青色発光色変換材料32の3種類の色変換材料を用いた。
【0072】
このようにして、波長選択材料40を備えていない発光装置102によっても、青色発光色変換材料32を第2の領域32aに配置することにより、青色発光色変換材料32から放出される青色の光は、緑色発光色変換材料22G及び赤色発光色変換材料22Rに吸収されることなく発光変換部72の外側へ放出されやすくなるため、青色の光が、緑色発光色変換材料22G及び赤色発光色変換材料22Rに再度吸収されて、緑色及び赤色の光に変換されるという、変換過程の増加を低減することができる。」

上記記載ア、イを踏まえてウをみれば、引用例には、図5に示される発光装置102として、
「発光変換部72と、発光変換部72内にマウントされた発光素子12とを備え、
発光変換部72は、発光素子12に近い領域である第1の領域22aと、第1の領域22aよりも発光素子12から離れた領域である第2の領域32aとで構成され、
発光素子12は、波長のピークが、380nm?420nmの範囲である紫外線を放出するGaN系の素子を用いることが好ましいものであり、
第1の領域22aには、マウントされた発光素子12の周辺に、透光性樹脂52が配置され、透光性樹脂52中に赤色発光色変換材料22Rと、緑色発光色変換材料22Gとが含まれ、
第2の領域32aには、透光性樹脂62が配置され、透光性樹脂62中に青色発光色変換材料32が含まれている白色の光を放出する発光装置102(白色LED)。」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「発光素子12」は、「波長のピークが、380nm?420nmの範囲である紫外線を放出するGaN系の素子を用いることが好ましいもの」であるから、本願補正発明の「発光ピーク波長が380nm以上420nm以下の発光素子」に相当する。
(2)引用発明の「青色発光色変換材料32」、「緑色発光色変換材料22G」及び「赤色発光色変換材料22R」が本願補正発明の「青色蛍光体」、「緑色蛍光体」及び「赤色蛍光体」に相当するところであり、引用発明の「発光変換部72」は、本願補正発明の「少なくとも青色蛍光体、緑色蛍光体、および赤色蛍光体を含む3種以上の蛍光体を含有する蛍光体層」に相当する。
(3)引用発明の「透光性樹脂52」が本願補正発明の「第1の透明樹脂硬化物」に相当するところであり、引用発明の「第1の領域22a」は、「透光性樹脂52中に赤色発光色変換材料22Rと、緑色発光色変換材料22Gとが含まれ」るものであるから、本願補正発明の「前記緑色蛍光体と前記赤色蛍光体との混合物を含有する第1の透明樹脂硬化物を有する第1の蛍光体層」に相当する。
(4)引用発明の「透光性樹脂62」が本願補正発明の「第2の透明樹脂硬化物」に相当するところであり、引用発明の「第2の領域32a」は、「第1の領域22aよりも発光素子12から離れた領域」であり、また、「透光性樹脂62中に青色発光色変換材料32が含まれている」ものであるから、本願補正発明の「前記第1の蛍光体層の前記発光素子側とは反対側に配置され、前記青色蛍光体を含有する第2の透明樹脂硬化物を有する第2の蛍光体層」に相当する。
(5)引用発明において、「第1の領域22a」が「青色発光色変換材料32」を含むとはされていないから、引用発明の「第1の領域22a」は、本願補正発明の「第1の蛍光体層」と同様に「含有される蛍光体全体における前記青色蛍光体の含有量が5質量%以下、または前記青色蛍光体を含ま」ないものといえる。
(6)引用発明の「第2の領域32a」は、「青色発光色変換材料32」を含むものであるところ、「赤色発光色変換材料22R」や「緑色発光色変換材料22G」を含むとはされていないから、本願補正発明の「第2の蛍光体層」と同様に「含有される蛍光体全体における前記青色蛍光体以外の蛍光体の含有量が5質量%以下、または前記青色蛍光体以外の蛍光体を含ま」ないものといえる。
(7)以上のことから、本願補正発明と引用発明は、次の点で一致する。
「発光ピーク波長が380nm以上420nm以下の発光素子と、少なくとも青色蛍光体、緑色蛍光体、および赤色蛍光体を含む3種以上の蛍光体を含有する蛍光体層とを具備する白色LEDであって、
前記蛍光体層は、前記緑色蛍光体と前記赤色蛍光体との混合物を含有する第1の透明樹脂硬化物を有する第1の蛍光体層と、前記第1の蛍光体層の前記発光素子側とは反対側に配置され、前記青色蛍光体を含有する第2の透明樹脂硬化物を有する第2の蛍光体層とを有し、
前記第1の蛍光体層は、前記第1の蛍光体層に含有される蛍光体全体における前記青色蛍光体の含有量が5質量%以下、または前記青色蛍光体を含まず、
前記第2の蛍光体層は、前記第2の蛍光体層に含有される蛍光体全体における前記青色蛍光体以外の蛍光体の含有量が5質量%以下、または前記青色蛍光体以外の蛍光体を含まない白色LED。」
(8)一方、両者は、次の点で相違する。
a.本願補正発明では、「前記第1の蛍光体層の厚さに対する前記第2の蛍光体層の厚さの比が1以上3以下である」とされているのに対し、引用発明において、「第1の領域22a」の厚さに対する「第2の領域32a」の厚さの比が1以上3以下であるか不明な点。
b.本願発明では、「前記第1の蛍光体層における前記赤色蛍光体の含有量に対する前記緑色蛍光体の含有量の質量比が0.05以上0.4以下」であるとされているのに対し、引用発明において、「第1の領域22a」における「赤色発光色変換材料22R」に対する「緑色発光色変換材料22G」の質量比が0.05以上0.4以下であるか不明な点。
c.本願補正発明では、
「前記赤色蛍光体は、
一般式:(La_(1-x-y)Eu_(x)M_(y))_(2)O_(2)S
(式中、Mは、Sb、Sm、GaおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素であり、xおよびyは、0.08<x<0.17、0≦y<0.003を満たす値である。)
で表されるユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体である」とされているのに対し、引用発明の「赤色発光色変換材料22R」がこのようなものであるか不明な点。

4.相違点についての判断
(1)上記相違点aについて検討する。
引用発明において、「第1の領域22a」の厚みに対して「第2の領域32a」の厚みが薄すぎると、「第2の領域32a」から射出される青色光が相対的に少なくなり、また、「第1の領域22a」の厚みに対して「第2の領域32a」の厚みが厚すぎると、「第2の領域32a」から射出される青色光が相対的に多くなることが当業者には明らかであるから、白色LEDとして所望とする白色色度を得るための手段として、「第1の領域22a」の厚さに対する「第2の領域32a」の厚さの比を1以上3以下とすることに格別の困難性は認められない。
(2)上記相違点bについて検討する。
引用発明において、「第1の領域22a」における「緑色発光色変換材料22G」と「赤色発光色変換材料22R」との含有割合は、「第2の領域32a」との関係で所望とする白色色度が得られるように調製すればよいことであり、引用例に記載される実施例においても「赤色発光色変換材料22R」に対する「緑色発光色変換材料22G」の質量比として0.25のものが採用されている(【0096】の「緑色発光色変換材料及び赤色発光色変換材料は、発光変換部全体に塗布されるシリコン樹脂に対して重量比でそれぞれ緑色発光色変換材料が6%、赤色発光色変換材料が24%になるように量られた。」の記載を参照されたい。)ことからすれば、「赤色発光色変換材料22R」に対する「緑色発光色変換材料22G」の質量比として0.05以上0.4以下を採用することに格別の困難性は認めれない。
(3)上記相違点cについて検討する。
原査定の拒絶理由に引用された特開2007-96133号公報の【0020】?【0028】にその実施例1?9に用いられる赤色蛍光体として、赤色蛍光体ユーロピウム付活酸硫化ランタン(La_(0.833)Sb_(0.002)Eu_(0.115))_(2)O_(2)S、(La_(0.884)Sb_(0.001)Eu_(0.115))_(2)O_(2)S及び(La_(0.883)Sn_(0.002)Eu_(0.115))_(2)O_(2)Sが記載され、また、同じく国際公開第2007/083521号の【0052】に「赤色蛍光体としてEu付活酸硫化ランタン蛍光体((La_(0.883)Sb_(0.002)Eu_(0.115))_(2)O_(2)S)を用意した。」と記載されているように、赤色蛍光体として、「一般式:(La_(1-x-y)Eu_(x)M_(y))_(2)O_(2)S(式中、Mは、Sb、Sm、GaおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素であり、xおよびyは、0.08<x<0.17、0≦y<0.003を満たす値である。)で表されるユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体」は周知であり、引用発明の「赤色発光色変換材料22R」としてこのようなユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体を採用することに格別の困難性は認められない。

5.むすび
以上のとおりであって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成25年6月10日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「発光ピーク波長が380nm以上420nm以下の発光素子と、少なくとも青色蛍光体、緑色蛍光体、および赤色蛍光体を含む3種以上の蛍光体を含有する蛍光体層とを具備する白色LEDであって、
前記蛍光体層は、前記緑色蛍光体と前記赤色蛍光体との混合物を含有する第1の透明樹脂硬化物を有する第1の蛍光体層と、前記第1の蛍光体層の前記発光素子側とは反対側に配置され、前記青色蛍光体を含有する第2の透明樹脂硬化物を有する第2の蛍光体層とを有し、
前記第1の蛍光体層は、前記第1の蛍光体層に含有される蛍光体全体における前記青色蛍光体の含有量が5質量%以下、または前記青色蛍光体を含まず、
前記第2の蛍光体層は、前記第2の蛍光体層に含有される蛍光体全体における前記青色蛍光体以外の蛍光体の含有量が5質量%以下、または前記青色蛍光体以外の蛍光体を含まず、
前記第1の蛍光体層の厚さに対する前記第2の蛍光体層の厚さの比が1以上3以下であることを特徴とする白色LED。」

2.対比
本願発明は、本願補正発明から、「前記第1の蛍光体層における前記赤色蛍光体の含有量に対する前記緑色蛍光体の含有量の質量比が0.05以上0.4以下であり、
前記赤色蛍光体は、
一般式:(La_(1-x-y)Eu_(x)M_(y))_(2)O_(2)S
(式中、Mは、Sb、Sm、GaおよびSnから選ばれる少なくとも1種の元素であり、xおよびyは、0.08<x<0.17、0≦y<0.003を満たす値である。)
で表されるユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体である」との事項を削除したものであるから、本願発明と引用発明は、前記II.[理由]3.(7)において一致するとした点で一致し、前記II.[理由]3.(8)において相違するとした点aにおいて相違する。

3.判断
相違点aについては、前記II.[理由]4.(1)において検討したとおりであって、引用発明において、「第1の領域22a」の厚さに対する「第2の領域32a」の厚さの比を1以上3以下とすることに格別の困難性は認められない。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-30 
結審通知日 2014-08-05 
審決日 2014-08-18 
出願番号 特願2010-514364(P2010-514364)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 吉美小林 謙仁  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 星野 浩一
近藤 幸浩
発明の名称 白色LEDおよびそれを用いたバックライトならびに液晶表示装置  
代理人 特許業務法人サクラ国際特許事務所  
代理人 特許業務法人サクラ国際特許事務所  

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