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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1292502
審判番号 不服2014-1356  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-24 
確定日 2014-10-30 
事件の表示 特願2012-45805「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年9月12日出願公開、特開2013-182786、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成24年3月1日の出願であって、平成25年12月16日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年12月19日)、これに対し、平成26年1月24日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、その請求項1ないし4に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成25年6月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、本願発明1は、次のとおりである。

「【請求項1】
被挟持部及び被係止部を備えた板状又はシート状の対象物であって接点部が設けられた帯状領域を有している前記対象物を、前端から後方に向けて挿入方向に沿って挿入可能なコネクタであって、
前記対象物が挿入される際に前記対象物を受容する受容部と、係止部及び凹部を有するハウジングと、開位置と閉位置との間で回動可能となるように前記ハウジングに支持されるアクチュエータとを備えており、
前記凹部は、前記係止部の後側に位置しており、
前記係止部は、前記受容部の底面よりも上方に突出しており、
前記凹部の底部は、前記受容部の前記底面よりも下側に位置しており、
前記アクチュエータは、前記閉位置にあるときに前記凹部の上方に位置する押圧部を有しており、
前記アクチュエータが前記開位置にあるときに前記対象物を前記受容部に受容させると、前記被挟持部が前記凹部の上方に位置すると共に前記被係止部が前記係止部の後側に位置し、更に、前記アクチュエータを前記開位置から前記閉位置まで倒すと、前記アクチュエータの押圧部と前記凹部の前記底部とが前記被挟持部を挟むコネクタであり、
前記受容部に前記対象物を受容した状態において、前記アクチュエータを前記閉位置まで倒した際に前記対象物の前記帯状領域が載置される載置部を更に有しており、
前記受容部の前記底面は、前記ハウジングの前記載置部からなり、
前記アクチュエータが前記開位置にあるときに、前記受容部に受容された前記対象物の前記帯状領域の前記載置部に向かう移動を妨げることなく前記帯状領域を前記載置部へ向けて押さえることにより、前記対象物の上方への移動を一時的に防止する押さえ部を更に備えている
コネクタ。」

第2 原査定の理由の概要
本願発明1ないし4は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:特開平11-74043号公報
刊行物2:特開2011-65935号公報
刊行物3:実願平4-59385号(実開平6-17153号)のCD- ROM
刊行物4:特開2011-198571号公報

本願発明1と刊行物1に記載された発明を対比すると、両者は、下記の相違点1及び2で相違している。

[相違点1]
本願発明1は、アクチュエータの押圧部と凹部の底部とが被挟持部を挟むのに対して、刊行物1に記載された発明は、かかる限定がない点。

[相違点2]
本願発明1は、帯状領域の載置部に向かう移動を妨げることなく帯状領域を載置部へ向けて押さえることにより対象物の上方への移動を一時的に防止する押さえ部を備えているのに対して、刊行物1に記載された発明は、かかる限定がない点。

上記相違点1及び2について検討する。
[相違点1]について
アクチュエータの押圧部と凹部の底部とが被挟持部を挟むことは、本願出願前において周知技術である(例えば、刊行物2の【図12】等参照。)
してみると、刊行物1に記載された発明のコネクタにおいて上記周知技術を適用し、本願発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
帯状領域を載置部へ向けて押さえることにより対象物の上方への移動を一時的に防止する押さえ部を備えることは、本願出願前において周知技術である(例えば、刊行物3の段落【0024】、刊行物4の段落【0042】等参照。)。
してみると、刊行物1に記載された発明のコネクタにおいて上記周知技術を適用し、帯状領域を載置部へ向けて押さえることにより対象物の上方への移動を一時的に防止する押さえ部を備えること当業者が容易に相当し得た事である。また、当該適用の際に、帯状領域の載置部に向かう移動を妨げることがないように構成することは、当業者が必要に応じて適宜なし得た設計的事項である。

第3 当審の判断
1 刊行物
原審において通知した拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開平11-74043号公報(以下「刊行物1」という。)には、「平型柔軟ケーブル用コネクタとケーブルの接続構造」に関して、図面(特に、図1、図3、図6ないし図8参照。)と共に、次の事項が記載されている。
(1)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記のようなFPCとFPC用コネクタの接続構造においては、FPCはアクチュエータと端子のコンタクト部の挟持する力のみで引き抜き方向の外力に対抗することになっていたので、保持力が不足して意に反する引き抜きを完全に阻止することが難しい問題点があった。
【0004】本発明は斯かる問題点に鑑みてなされたもので、FPC用コネクタに接続したFPCが意に反して引き抜かれないようにできるロック構造を提供することを目的としている。」

(2)「【0009】
【作用】本発明によれば、FPCに設けた切欠係合部がFPC用コネクタの絶縁ハウジングに設けた係合突部に係合してロックするので、接続状態におけるFPCの保持力を強化し、意に反する引き抜きを未然に防止することができる。」

(3)「【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付の図を参照して説明する。図1は、図2乃至図4に示した実施例のFPC用コネクタ1の断面図であり、図3のA-A線に沿って拡大して表したものである。また図3のB-B線に沿って拡大して表した図が図5である。
【0011】実施例のFPC用コネクタ1は、絶縁ハウジング2と、この絶縁ハウジング2に形成されたケーブル受入空洞3を開閉するように取り付けられたアクチュエータ4とを備えている。アクチュエータ4の開閉は、アクチュエータ4を回動とスライドを合成した動作のもとに操作して行うものであるが、その機構はここではふれないことにする。絶縁ハウジング2には、複数の端子5が幅方向(図2、3において左右の方向)で所定のピッチで並列させて装着してあり、端子5のコンタクト片6をケーブル受入空洞3に臨ませて(図5)、コンタクト片6に形成されたコンタクト部6aが、ケーブル受入空洞3を閉鎖した状態のアクチュエータ4の本体下面4aと対向するようにしてある。端子5は、図5に表れているように、装着片7からコンタクト片6が片持ち状に延びているもので、装着片7を絶縁ハウジング2に係止させて装着状態が維持されるようにしてある。また、装着片7から外側に半田テイル8が延びており、絶縁ハウジング2の底面2aと略面一の状態となって、プリント回路基板(図示していない)などに表面実装できるようにしてある。この表面実装のために、絶縁ハウジング2の両側部には、取り付け金具9が装着してあり、半田テイル8の半田付けと同時に取り付け金具9もプリント回路基板などに半田付けができるようにしてある。
【0012】端子5のコンタクト片6が片持ち状に延びている絶縁ハウジング2のケーブル受入空洞3は、後に説明するFPC10の端縁部11が図1に示したように受け入れられるようにしたもので、FPC10の端縁部11をアクチュエータ4と端子5のコンタクト片6とで挟持できるようにしてある。このケーブル受入空洞3の両側部に、係合突部12が設けてあり、FPC10の端縁部11に形成したノッチ13と互いに係合できるようにしてある。
【0013】前記アクチュエータ4は、ケーブル受入空洞3を覆う幅の板体を本体としているもので、本体がケーブル受入空洞3を閉鎖した際に、前記係合突部12と隣接できるようにした押下突部14が本体下面4aに突出させて設けてある。
【0014】次ぎに、FPC10の構造を図7、8を参照して説明する。このFPC10は、前記ケーブル受入空洞3の幅に略等しい幅の絶縁性可撓性基板15の一側面(表面)に長手方向に沿って複数の導電体16が並列させて設けてあるもので、導電体16の並列ピッチが前記端子5の並列ピッチ(例えば0.5mmピッチ)と略等しくしてある。FPC10の端縁部11は、可撓性基板15の他側面(裏面)側に補強板17が装着されている。そして、端縁部11を構成している絶縁性可撓性基板15と補強板17の両側縁に、側縁で開放する前記ノッチ13が形成してある。
【0015】上記実施例のFPC用コネクタ1にFPC10を接続するには、先ず、FPC用コネクタ1のアクチュエータ4を図6のような状態にしてケーブル受入空洞3を開放し、このケーブル受入空洞3にFPC10の端縁部11を挿入する。次ぎに、アクチュエータ4を回動およびスライド動作のもとに、図1乃至図5の状態、即ち、ケーブル受入空洞3を閉鎖するようにすることで接続が完了する。この状態の詳細を表しているのが図1である。FPC10の導電体16とFPC用コネクタ1の端子5のコンタクト片6に形成したコンタクト部6aが1対1の関係で対向して、アクチュエータ4を介して挟持されて電気的に接続状態にされる。また、FPC10の端縁部11の両側縁に形成したノッチ13と、絶縁ハウジング2に設けた係合突部12が互いに係合する。また、アクチュエータ4の本体下面4aに形成した押下突部14は、ノッチ13の縁部で、FPC10の端縁部11を押下し、ノッチ13と係合突部12の係合を確実なものとして、係合が外れるのを防止する。
【0016】従って、この接続状態において、FPC10に矢示18のような引き抜き方向の外力が作用しても、係合突部12とノッチ13の係合が引き抜き力に対抗し、FPC10が引き抜かれて接続状態が解除されるのを未然に防止することができる。」

(4)図1には、上記(3)の「FPC10に矢示18のような引き抜き方向の外力が作用しても、係合突部12とノッチ13の係合が引き抜き力に対抗し、FPC10が引き抜かれて接続状態が解除されるのを未然に防止することができる。」(段落【0016】)との記載と合わせみると、ノッチ13の周壁が係合突部12と係合して引き抜き力に対抗することが示されている。
また、図1には、上記(3)の「アクチュエータ4の本体下面4aに形成した押下突部14は、ノッチ13の縁部で、FPC10の端縁部11を押下し」(段落【0015】)との記載と合わせみると、押下突部14が押下するFPC10の部分は、端縁部11のノッチ13の縁部であることが示されている。

(5)図1及び図5には、FPC用コネクタ1がFPC10を一方側(図の左側)から他方側(図の右側)に向けて挿入方向に沿って挿入可能であること、及びケーブル受入空洞3の下面を形成する絶縁ハウジング2が、一方側から他方側に向けて、順に、傾斜面、係合突部12、平坦面からなり、係合突部12が傾斜面よりも上方に突出することが示されている。
また、図1には、アクチュエータ4が閉鎖状態にあるときに、押下突部14が、ケーブル受入空洞3の下面を形成する絶縁ハウジング2の平坦面の上方に位置することが示されている。

(6)図6におけるアクチュエータ4の開放状態を踏まえると、図1には、アクチュエータ4が開放状態にあるときにFPC10をケーブル受入空洞3に受け入れさせると、ノッチ13の縁部が絶縁ハウジング2の平坦面の上方に位置すると共にノッチ13の周壁が係合突部12の他方側(図の右側)に位置することが示されているといえる。

(7)図7には、FPC10の端縁部11に複数の導電体16を並列して設ける領域が示されている。また、図8には、FPC10が板状であることが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「ノッチ13の縁部及びノッチ13の周壁を備えた板状のFPC10であって複数の導電体16を並列して設けた領域を有している前記FPC10を、一方側から他方側に向けて挿入方向に沿って挿入可能なFPC用コネクタ1であって、
前記FPC10が挿入される際に前記FPC10を受け入れるケーブル受入空洞3と、係合突部12及び平坦面を有する絶縁ハウジング2と、開放状態と閉鎖状態との間で回動とスライドを合成した動作をするように前記絶縁ハウジング2に支持されるアクチュエータ4とを備えており、
前記平坦面は、前記係合突部12の他方側に位置しており、
前記係合突部12は、前記ケーブル受入空洞3の下面を形成する絶縁ハウジング2の傾斜面よりも上方に突出しており、
前記アクチュエータ4は、前記閉鎖状態にあるときに前記平坦面の上方に位置する押下突部14を有しており、
前記アクチュエータ4が前記開放状態にあるときに前記FPC10を前記ケーブル受入空洞3に受け入れさせると、前記ノッチ13の縁部が前記平坦面の上方に位置すると共に前記ノッチ13の周壁が前記係合突部12の他方側に位置し、更に、前記アクチュエータ4を前記開放状態から前記閉鎖状態まで倒すと、前記アクチュエータ4の押下突部14が前記ノッチ13の縁部を押下するFPC用コネクタ1」。

2 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「ノッチ13の周壁」は前者の「被係止部」に相当し、以下同様に、「FPC10」は「対象物」に、「導電体16」は「接点部」に、「複数の導電体16を並列して設けた領域」は「接点部が設けられた帯状領域」に、「一方側」は「前端」に、「他方側」は「後方」及び「後側」に、「FPC用コネクタ1」は「コネクタ」に、「FPC10を受け入れる」ことは「対象物を受容する」ことに、「ケーブル受入空洞3」は「受容部」に、「係合突部12」は「係止部」に、「絶縁ハウジング2」は「ハウジング」に、「開放状態」及び「閉鎖状態」は「開位置」及び「閉位置」に、「回動とスライドを合成した動作をする」ことは「回動可能となる」に、「アクチュエータ4」は「アクチュエータ」に、「押下突部14」は「押圧部」にそれぞれ相当する。

また、前者の「被挟持部」について、本願明細書の「切欠き部240は、挿入端230の近傍に位置しており、切欠き部240と挿入端230との間には被挟持部260が形成されている。」(段落【0017】)との記載及び図4からみて、後者の「ノッチ13の縁部」と前者の「被挟持部」とは、「切欠き部の縁部」という限りで共通する。

さらに、前者の「凹部」について、本願明細書の「本実施の形態による凹部326は、底板部320の上面に形成された窪みであり、底部328と後壁329とを有している。」(段落【0024】)との記載並びに図5及び図6からみて、後者の「平坦面」と前者の「凹部」とは、「底部」という限りで共通する。

したがって、両者は、
「切欠き部の縁部及び被係止部を備えた板状の対象物であって接点部が設けられた帯状領域を有している前記対象物を、前端から後方に向けて挿入方向に沿って挿入可能なコネクタであって、
前記対象物が挿入される際に前記対象物を受容する受容部と、係止部及び底部を有するハウジングと、開位置と閉位置との間で回動可能となるように前記ハウジングに支持されるアクチュエータとを備えており、
前記底部は、前記係止部の後側に位置しており、
前記アクチュエータは、前記閉位置にあるときに前記底部の上方に位置する押圧部を有しており、
前記アクチュエータ4が前記開放状態にあるときに前記対象物を前記受容部に受容させると、前記縁部が前記底部の上方に位置すると共に前記被係止部が前記係止部の後側に位置するコネクタ。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明1は、切欠き部の縁部が「被挟持部」であり、底部が「凹部」であって、「前記アクチュエータを前記開位置から前記閉位置まで倒すと、前記アクチュエータの押圧部と前記凹部の前記底部とが前記被挟持部を挟む」のに対し、
引用発明は、切欠き部の縁部が「ノッチ13の縁部」であり、底部が「平坦面」であって、「前記アクチュエータ4を前記開放状態から前記閉鎖状態まで倒すと、前記アクチュエータ4の押下突部14が前記ノッチ13の縁部を押下する」点。

〔相違点2〕
本願発明1は、「前記係止部は、前記受容部の底面よりも上方に突出しており、前記凹部の底部は、前記受容部の前記底面よりも下側に位置しており」、「前記受容部に前記対象物を受容した状態において、前記アクチュエータを前記閉位置まで倒した際に前記対象物の前記帯状領域が載置される載置部を更に有しており、前記受容部の前記底面は、前記ハウジングの前記載置部からな」るのに対し、
引用発明は、「前記係合突部12は、前記ケーブル受入空洞3の下面を形成する絶縁ハウジング2の傾斜面よりも上方に突出」する点。

〔相違点3〕
本願発明1は、「前記アクチュエータが前記開位置にあるときに、前記受容部に受容された前記対象物の前記帯状領域の前記載置部に向かう移動を妨げることなく前記帯状領域を前記載置部へ向けて押さえることにより、前記対象物の上方への移動を一時的に防止する押さえ部を更に備えている」のに対し、
引用発明は、かかる構成を備えていない点。

3 当審の判断
そこで、各相違点について検討する。
(1)相違点1について
本願発明1の「凹部」は、前述のとおり、底部328と後壁329とを有しており、本願明細書の「係止部350が切欠き部240内に位置している状態(仮保持状態)にある対象物20を更に+X方向に移動させると、挿入端230が凹部326の後壁329に突き当たり、対象物20はコネクタ10に(完全に)受容される。」(段落【0038】)との記載からみて、「凹部」は、対象物20の+X方向における移動範囲を規定するものである。

そうすると、アクチュエータの押圧部とハウジングの底部とが被挟持部を挟むことが、本願出願前において周知技術(例えば、前記「第2」の刊行物2の【図12】等参照。)であるとしても、引用発明において、「平坦部」を「凹部」に変更して、本願発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということができない。

(2)相違点2及び3について
刊行物1には、アクチュエータ4の閉鎖状態に関して、「絶縁ハウジング2のケーブル受入空洞3は、後に説明するFPC10の端縁部11が図1に示したように受け入れられるようにしたもので、FPC10の端縁部11をアクチュエータ4と端子5のコンタクト片6とで挟持できるようにしてある。」(段落【0012】)との記載、及び「FPC10の導電体16とFPC用コネクタ1の端子5のコンタクト片6に形成したコンタクト部6aが1対1の関係で対向して、アクチュエータ4を介して挟持されて電気的に接続状態にされる。また、FPC10の端縁部11の両側縁に形成したノッチ13と、絶縁ハウジング2に設けた係合突部12が互いに係合する。また、アクチュエータ4の本体下面4aに形成した押下突部14は、ノッチ13の縁部で、FPC10の端縁部11を押下し、ノッチ13と係合突部12の係合を確実なものとして、係合が外れるのを防止する。」(段落【0015】)との記載があるが、図1及び図5には、FPC10の下面がどのようにして載置されるのかについて図示されていない。

これらに照らせば、引用発明の「複数の導電体16を並列して設けた領域」を載置するのは、FPC用コネクタ1の端子5のコンタクト片6に形成した複数のコンタクト部6aということになるから、本願発明1の「前記受容部の前記底面は、前記ハウジングの前記載置部からな」るという事項は、刊行物1に記載された事項から、当業者が容易に想到し得たということができない。

そうすると、帯状領域を載置部へ向けて押さえることにより対象物の上方への移動を一時的に防止する押さえ部を備えることが、本願出願前において周知技術(例えば、前記「第2」の刊行物4の段落【0042】等参照。)であったとしても、引用発明において、本願発明1の相違点2及び3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということができない。

(3)まとめ
したがって、本願発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

また、本願発明2ないし4は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第4 むすび
以上により、本願発明1ないし4は、いずれも、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-10-20 
出願番号 特願2012-45805(P2012-45805)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 芝井 隆  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 冨岡 和人
中川 隆司
発明の名称 コネクタ  
代理人 山崎 拓哉  

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