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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1292542
審判番号 不服2012-15979  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-16 
確定日 2014-10-07 
事件の表示 特願2007-548174「単一及び複数プレーヤゲームといった多数のビデオゲームにターゲット配信するための広告のマッチング及びスコアリング」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月 6日国際公開、WO2006/071246、平成20年 7月17日国内公表、特表2008-525884〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成17年3月8日(パリ条約による優先権主張 平成16年12月23日 米国)を国際出願日とする特許出願であって,平成22年9月29日付けの拒絶理由通知に対して,平成23年4月4日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成23年6月8日付けの拒絶理由通知に対して,平成23年12月13日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成24年4月10日付けの拒絶査定に対して平成24年8月16日に審判請求がなされたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成23年12月13日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「ネットワークを介して広告管理システムに結合された多数のゲーム装置上で実行される複数プレーヤビデオゲームに広告を提供するためのシステムであって,
セッションキーと関連づけられたゲームセッションを最初のゲーム装置について確立する手段と,
各々が前記セッションキーを受信する少なくとも2つの追加のゲーム装置を,前記確立されたゲームセッションに加える手段と,
実質的に同様の広告を前記最初のゲーム装置及び前記少なくとも2つの追加のゲーム装置の各々に1グループで配信する手段と,
前記複数プレーヤビデオゲームは前記グループのゲーム装置の各々の上で実行されるが,仮想的に共有されるゲーム環境において実質的に同様の広告を前記グループのゲーム装置の各々に提示する手段と,
を含むシステム。」

第3 原査定の拒絶の理由について
原査定の拒絶理由は,本願発明は後記する引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。

第4 当審の判断
1.引用例について
ア 引用例1について。
原査定の拒絶理由通知で引用した引用例1(特開2003-281439号公報)には,以下のことが記載されている。
(以下「引用例1摘記事項」という。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,通信回線を介して互いにデータを送受信してゲームを実行するサーバ,ゲーム端末,広告依頼装置及びプログラムに関する。」
(イ)「【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は,上記事項に鑑みて成されたものであって,通信回線(例えば,図1に示すネットワーク3)を介してゲーム端末(例えば,図1に示す端末装置2)と接続可能に構成されるサーバ(例えば,図1に示すゲームサーバ1)において,広告情報を記憶する記憶手段(例えば,図12に示す広告テーブル166)と,前記ゲーム端末とデータ通信を行って所定のネットワークゲーム(例えば,本実施の形態におけるバトルゲーム)を実行するゲーム実行手段(例えば,図13に示すCPU10;図24に示すゲーム制御処理)と,前記ゲーム端末に前記記憶手段に記憶された広告情報を送信する広告手段(図13に示すCPU10および伝送制御装置14;図25に示す広告掲載処理)と,前記ゲーム実行手段によるデータ通信と,前記広告手段による前記広告情報の送信とを所定のタイミングで切り換える切換手段(例えば,図13に示すCPU10;図24に示すモード切換処理)と,を備えることを特徴とする。」
(ウ)「【0011】請求項3記載の発明は,請求項1記載のサーバにおいて,前記記憶手段が,前記広告情報を,割付条件(例えば,本実施の形態における割付条件)と対応づけて複数記憶し(例えば,図12および図13に示す広告テーブル166),前記ゲーム実行手段が,割付条件に応じた複数の仮想ゲーム場(例えば,本実施の形態におけるバトルアプリケーションに基づいて展開されるバトルランド)それぞれにおいて前記ネットワークゲームを実行する手段(例えば,図13に示すCPU10;図24に示すゲーム制御処理)を有し,前記ゲーム端末から個人情報(例えば,本実施の形態における個人情報)を受信する個人情報受信手段(例えば,図13に示すCPU10;図19に示す会員登録処理)と,前記個人情報受信手段により受信された個人情報と,前記割付条件とに基づいて,当該ゲーム端末に対応する仮想ゲーム場を割り付ける割付手段(例えば,図13に示すCPU10;図21に示すバトルゲーム割付処理)と,を備えるとともに,前記広告手段が,前記仮想ゲーム場に対応する割付条件に応じた広告情報を,当該仮想ゲーム場に割り付けられたゲーム端末に送信する(例えば,本実施の形態のように,広告テーブル166内の広告情報を読み出す領域をバトルアプリケーション毎に設定する)ことを特徴とする。
【0012】この請求項3記載の発明によれば,サーバは,広告情報を割付条件と対応付けて記憶する。また,割付条件の数に応じた複数の仮想ゲーム場のゲームを実行する。更に,ゲーム端末から受信した個人情報と割付条件とに基づいてゲーム端末に割付ける仮想ゲーム場を決定する。そして広告を送信するタイミングには,同じ仮想ゲーム場に参加する全てのゲーム端末に対して同じ広告情報を送信する。したがって,割付条件に基づいて広告情報,個人情報(ゲーム端末),仮想ゲーム場をそれぞれ各条件毎に分類させることができる。このため,広告の内容に応じて割付条件を設定すれば,各広告情報の配信先のゲーム端末を広告の内容に応じて決定することができる。」
(エ)「【0154】(変形例4)本実施の形態では,バトルゲームのインターバルに広告を表示する場合を例に説明したが,バトルゲームに限定する必要はない。例えば,レースゲーム,スポーツゲーム,シューティングゲームなどのインターバルに広告を掲載してもよい。あるいは,ロールプレイングゲームなどの通常インターバルの存在しないゲームに,一定のインターバルを設けて広告を掲載するように設定してもよい。また,ゲームに限定する必要もない。例えば,ネットワーク3上にリアルタイムにニュースを公開するページに対し,一定のインターバルを設けてその時間内に広告を掲載する。その際,ニュースのページを会員制にし,個人情報を登録した人(若しくは,端末装置2)に対してのみページのデータを配信するように設定してもよい。」

イ 引用発明について。
引用例1摘記事項(ア)?(エ)によれば,引用例1には以下の発明が開示される。
(以下「引用発明」という。)
「通信回線を介して互いにデータを送受信してゲームを実行するサーバとゲーム端末であって,
通信回線を介してゲーム端末と接続可能に構成されるサーバには,広告情報を記憶する記憶手段,ゲーム端末とデータ通信を行いネットワークゲームを実行するゲーム実行手段,ゲーム端末に記憶手段に記憶された広告情報を送信する広告手段,ゲーム実行手段によるデータ通信と,広告手段による広告情報の送信を所定のタイミングで切り換える切換手段とを備え,
ゲーム実行手段が,複数の仮想ゲーム場それぞれにおいてネットワークゲームを実行する手段を有し,広告手段が,仮想ゲーム場に対応する広告情報を仮想ゲーム場に割り付けられたゲーム端末に送信することにより,同じ仮想ゲーム場に参加する全てのゲーム端末に対して同じ広告情報を送信すること,
バトルゲームのインターバルに広告を表示するだけではなくレースゲーム,スポーツゲーム,シューティングゲームなどのインターバルに広告を掲載してもよく,広告は会員制のニュースなどに掲載してもよいこと。」

ウ 引用例2について。
原査定の拒絶理由通知で引用した引用例2(特開2004-065956号公報)には,以下のことが記載されている。
(以下「引用例2摘記事項」という。)
(ア)「【0015】
対戦相手決定システム104は,コンピュータデバイス102がホストしている複数のゲームセッションに関する情報を維持しており,プレイヤがゲームセッションを検索し,新しいゲームセッションを作成し,ゲームセッションに加わり,ゲームセッションから抜け,相互にデータを伝達するためにコンピュータデバイスによって使用される情報を獲得することを可能にする。ゲームセッションのホストデバイスは,新しいゲームセッションを作成するために対戦相手決定システム104(または他の何らかのデバイス)を有することなどによって,ゲームセッションを開始することを担当するデバイスである。ゲームセッションは,1人または複数のプレイヤを含むゲームタイトルの1つの事例を意味している。ゲームセッションのすべてのプレイヤがセッションを終了した場合(例えば,ゲームセッションから抜ける,システム104からログアウトする,プレイヤが自分のデバイスの電源を切る,など),そのゲームセッションは終了する。
(以下略)」
エ 引用例2発明について。
引用例2摘記事項によれば,引用例2には以下の発明が記載されている。
(以下「引用例2発明」という。)
「プレイヤがゲームセッションを作成し,他のプレイヤがセッションに加わることにより,複数プレイヤが1つのタイトルのゲームをすること。」

2.対比
ア 引用発明と本願発明とを対比する。
(ア)引用発明の「通信回線」,「サーバ」,「ゲーム端末」,「仮想ゲーム場のネットワークゲーム」,「広告情報」は,後記する点で相違するものの,それぞれ本願発明の「ネットワーク」,「広告管理システム」,「ゲーム装置」,「複数プレーヤビデオゲーム」,「広告」に相当する。
(イ)引用発明は,通信回線を介して互いにデータを送受信してゲームを実行するサーバとゲーム端末であって,サーバには,広告情報を記憶する記憶手段,ゲーム端末とデータ通信を行いネットワークゲームを実行するゲーム実行手段,ゲーム端末に記憶手段に記憶された広告情報を送信する広告手段,ゲーム実行手段によるデータ通信と,広告手段による広告情報の送信を所定のタイミングで切り換える切換手段とを備え,ゲーム実行手段が,複数の仮想ゲーム場それぞれにおいてネットワークゲームを実行する手段を有し,広告手段が,仮想ゲーム場に対応する広告情報を仮想ゲーム場に割り付けられたゲーム端末に送信することにより,同じ仮想ゲーム場に参加する全てのゲーム端末に対して同じ広告情報を送信する。
してみると,引用発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「ネットワークを介して広告管理システムに結合されたゲーム装置上で実行される複数プレーヤビデオゲームに広告を提供するものであって,複数プレーヤビデオゲームはグループのゲーム装置の各々の上で実行され,同様の広告をグループのゲーム装置の各々に提示する」という点で共通する。
(ウ)そして引用発明と本願発明とは,「複数プレーヤビデオゲームに広告を提供するためのシステム」である点で共通する。

イ してみると,引用発明と本願発明との一致点と相違点とは,以下のとおりである。
[一致点]
「ネットワークを介して広告管理システムに結合されたゲーム装置上で実行される複数プレーヤビデオゲームに広告を提供するシステムであって,
複数プレーヤビデオゲームはグループのゲーム装置の各々の上で実行され,
同様の広告をグループのゲーム装置の各々に提示するシステム。」

[相違点1]
本願発明が,「多数のゲーム装置上で実行される複数プレーヤビデオゲームに広告を提供する」のに対し,引用発明は「仮想ゲーム場」の対戦型の「バトルゲーム」に「広告情報」を提供する点。
[相違点2]
本願発明が,「セッションキーと関連づけられたゲームセッションを最初のゲーム装置について確立する手段と,各々がセッションキーを受信する少なくとも2つの追加のゲーム装置を,確立されたゲームセッションに加える手段」によりグループを構成し,「実質的に同様の広告を最初のゲーム装置及び少なくとも2つの追加のゲーム装置の各々に1グループで配信する手段」を有するのに対し,引用発明はそのようなものではない点。
[相違点3]
本願発明が,「仮想的に共有されるゲーム環境において実質的に同様の広告をグループのゲーム装置の各々に提示する」のに対し,引用発明は「ゲームのインターバルに広告を表示」する点。

3.判断
以上の相違点について,以下に判断する。
[相違点1]について。
引用発明は,レースゲームなどに広告を掲載してもよいから,引用発明のレースゲームは対戦型に限らず多くの参加者が多数のゲーム端末で参加するゲームを含むことが明らかである。
してみると,「多数のゲーム装置上で実行される複数プレーヤビデオゲームに広告を提供」することは,引用発明から当業者が容易に想到することができたものである。
[相違点2]について。
引用例2発明によれば,引用例2には,再掲すれば「プレイヤがゲームセッションを作成し,他のプレイヤがセッションに加わることにより,複数プレイヤが1つのタイトルのゲームをする」との発明が記載されている。
ここで,セッション鍵やセッションIDでセッションを管理しグループを構成することは周知技術である。
例えば,特開平09-252294号公報には「鍵管理装置が,生成したグループ毎に個別のセッション鍵」を管理すること(【要約】参照。)が記載され,特開2003-203054号公報には「セッション管理テーブルがグループセッションID」を管理すること(段落【0036】参照。)が記載されている。
また,多数が参加するレースゲームは,3名以上のプレイヤであってよいことが明らかである。
したがって,引用発明に引用例2発明と上記周知技術とを適用することにより,引用発明のゲームへの参加者を「プレイヤがゲームセッションを確立し,他のプレイヤがセッションに加わることにより,3名以上のプレイヤが1つのタイトルのゲームをする」ことでグループを構成し,セッションキーでセッションを管理してグループを構成すること,すなわち,「セッションキーと関連づけられたゲームセッションを最初のゲーム装置について確立する手段と,各々がセッションキーを受信する少なくとも2つの追加のゲーム装置を,確立されたゲームセッションに加える」ことによりグループを構成することは,当業者が容易に想到することができたものである。
そうすれば,送信される広告情報が「実質的に同様の広告を最初のゲーム装置及び少なくとも2つの追加のゲーム装置の各々に1グループで配信する手段」により配信されることとなるのは自明である。
[相違点3]について。
「仮想的なゲーム環境に広告を提示する」ことは周知技術である。
例えば,原査定の引用例5(特開2002-259823号公報)には「仮想3次元空間を所与の視点から見た様子を表すゲーム画面に広告を表示する」(【要約】参照。)ことが記載され,図3,図4には,仮想3次元空間の看板52,54,56に「KONAMI」の広告を表示することが記載されている。
したがって,引用発明に上記周知技術を適用することにより,ゲームのインターバルに広告を表示することにかえて,「仮想的なゲーム環境に広告を提示する」ものとしたうえで,「同様の広告をグループのゲーム装置の各々に提示する」よう構成すること,すなわち,「仮想的に共有されるゲーム環境において実質的に同様の広告をグループのゲーム装置の各々に提示する」よう構成することは,当業者が容易に想到することができたものである。

以上判断したとおり,本願発明における上記[相違点1]?[相違点3]に係る発明特定事項は,いずれも当業者が容易に想到することができたものであり,上記各相違点を総合しても,想到することが困難な格別の事項は見いだせない。
また,本願発明の作用効果も,引用発明,引用例2発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって,本願発明は,引用発明,引用例2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項の発明について検討するまでもなく,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は原査定で通知した拒絶理由によって拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-02 
結審通知日 2014-05-12 
審決日 2014-05-23 
出願番号 特願2007-548174(P2007-548174)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小太刀 慶明田内 幸治  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 須田 勝巳
清田 健一
発明の名称 単一及び複数プレーヤゲームといった多数のビデオゲームにターゲット配信するための広告のマッチング及びスコアリング  
代理人 大塚 文昭  
代理人 須田 洋之  
代理人 谷口 信行  
代理人 西島 孝喜  
代理人 熊倉 禎男  

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