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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G |
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管理番号 | 1292564 |
審判番号 | 不服2012-26102 |
総通号数 | 179 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-28 |
確定日 | 2014-10-08 |
事件の表示 | 特願2007-542483「LED動作の方法及び駆動回路」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 1日国際公開、WO2006/056960、平成20年 6月26日国内公表、特表2008-522211〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許出願: 平成17年11月25日 (パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年11月29日、EP、2005年7月4日、EP、を伴う国際出願) 手続補正: 平成23年11月7日(以下、「補正1」という。) 手続補正: 平成24年6月12日 (以下、「補正2」という。) 補正2の却下: 平成24年8月30日付け(送達日:同年9月4日) 拒絶査定: 平成24年8月30日付け(送達日:同年9月4日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成24年12月28日 手続補正: 平成24年12月28日(以下、「本件補正」という。) 審尋 : 平成25年8月1日付け(発送日:同年同月6日) 審尋に対する回答書: 平成25年10月30日 第2 補正の却下の決定 [結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正によって、特許請求の範囲は、以下のように補正された。 (補正前) 「 【請求項1】 発光ダイオードを動作する駆動回路であって、前記駆動回路は、前記発光ダイオードへ供給されるべき電流を制御するよう構成され、前記駆動回路は: -供給電圧を受ける入力端子のセット; -共振キャパシター; -変圧器の1次巻線及び前記共振キャパシターは前記入力端子のセットと直列に結合される、前記変圧器; -前記変圧器の2次巻線と結合され、前記変圧器の2次巻線の交流負荷電圧を整流する整流器手段; -前記整流器手段と結合され、整流電圧を受ける出力回路、を有し、前記出力回路はバッファー回路と、前記発光ダイオードを前記駆動回路へ結合する出力端子のセットとを有し、 前記バッファー回路は、前記出力端子のセットに直列に接続されるインダクターを有し、該インダクターの値は、略一定の電流が前記発光ダイオードを流れるように選択される、駆動回路。 【請求項2】 前記変圧器の2次巻線は、第1のコイル及び第2のコイルを有する、請求項1記載の駆動回路。 【請求項3】 前記2次巻線は、分割された巻線である、請求項2記載の駆動回路。 【請求項4】 前記整流器手段は、第1のダイオード及び第2のダイオードを有し、各ダイオードは前記2次巻線の対応するコイルと結合される、請求項2記載の駆動回路。 【請求項5】 前記整流器手段は、第1のスイッチ及び第2のスイッチを有し、各スイッチは前記2次巻線の対応するコイルと結合されており、そして第1及び第2のスイッチは前記交流負荷電圧を整流するよう構成される、請求項2記載の駆動回路。 【請求項6】 前記駆動回路は、前記入力端子のセットと結合されたブリッジ回路を有し、前記ブリッジ回路は、DC電圧を受けるブリッジ入力端子を有し、該ブリッジ回路は、交流供給電流を生成するために前記供給電圧を生成するよう構成される、請求項1記載の駆動回路。 【請求項7】 前記駆動回路は、LED制御信号を受信する制御入力端子を有し、前記交流供給電流のデューティーサイクル及び周波数の少なくとも1つを制御するために前記LED制御信号に応じて前記ブリッジ回路を制御する、請求項6記載の駆動回路。 【請求項8】 前記制御回路は、前記交流供給電流のデューティーサイクルを50%であるよう制御するために前記ブリッジ回路を制御する、請求項7記載の駆動回路。」 (補正後) 「【請求項1】 発光ダイオードを動作する駆動回路であって、前記駆動回路は、前記発光ダイオードへ供給されるべき電流を制御するよう構成され、前記駆動回路は: -供給電圧を受ける入力端子のセット; -共振キャパシター; -変圧器の1次巻線及び前記共振キャパシターは前記入力端子のセットと直列に結合される、前記変圧器; -前記入力端子のセットと結合されたブリッジ回路であって、前記ブリッジ回路は、DC電圧を受けるブリッジ入力端子を有し、該ブリッジ回路は、前記変圧器の1次巻線において交流供給電流を生成するために前記供給電圧を生成するよう構成される、前記ブリッジ回路; -前記変圧器の2次巻線と結合され、前記変圧器の2次巻線の交流2次巻線電圧を整流する整流器手段; -前記整流器手段と結合され、整流電圧を受ける出力回路であって、前記出力回路はバッファー回路と、前記発光ダイオードを前記駆動回路へ結合する出力端子のセットとを有し、前記バッファー回路は、前記出力端子のセットに直列に接続されるインダクターを有し、該インダクターの値は、略一定の電流が前記発光ダイオードを流れるように選択される、前記出力回路;及び -LED制御信号を受信する制御入力端子を有し、必要とされる電力に依存して前記交流供給電流の周波数を制御し且つ前記交流供給電流のデューティーサイクルを50%であるよう制御するために前記LED制御信号に応答して前記ブリッジ回路を制御する制御回路 を有する駆動回路。 【請求項2】 前記変圧器の2次巻線は、第1のコイル及び第2のコイルを有する、請求項1記載の駆動回路。 【請求項3】 前記2次巻線は、分割された巻線である、請求項2記載の駆動回路。 【請求項4】 前記整流器手段は、第1のダイオード及び第2のダイオードを有し、各ダイオードは前記2次巻線の対応するコイルと結合される、請求項2記載の駆動回路。 【請求項5】 前記整流器手段は、第1のスイッチ及び第2のスイッチを有し、各スイッチは前記2次巻線の対応するコイルと結合されており、そして第1及び第2のスイッチは前記交流負荷電圧を整流するよう構成される、請求項2記載の駆動回路。」 上記補正のうち請求項1についての補正を見ると、補正後の請求項1は補正前の請求項8(請求項8は請求項7を引用しており、請求項7は更に請求項6を引用し、請求項6は更に請求項1を引用している。)において、ブリッジ回路について、供給電圧が生成されるのを「変圧器の1次巻線」に限定し、さらに、「交流供給電流のデューティーサイクル及び周波数の少なくとも1つを制御する」としていたものを、「必要とされる電力に依存して」前記交流供給電流の周波数を制御し、「且つ」前記交流供給電流のデューティーサイクルを50%であるよう制御すると限定するものである。 よって、この補正は、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 2 検討 (1)引用例記載の事項・引用発明1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の最先の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-229673号公報(以下「引用例」という。)には、スイッチング電源(【発明の名称】)の発明に関し、次の事項(a)ないし(c)が記載されている。 (a) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、共振型のスイッチング電源に関する。」 (b) 「【0013】2つのスイッチング素子の接続点と、2つのスイッチング素子によって構成される直列回路の一端との間には、共振回路を構成する共振コンデンサ及び共振インダクタと、トランスの一次巻線を直列に接続した直列回路の両端が接続されているから、2つのスイッチング素子の交互動作により、共振回路及びトランスの一次巻線に、共振回路の共振周波数に対応した疑似正弦波電流が流れる。このとき、一次巻線と結合する二次巻線に誘起電圧が発生する。この誘起電圧はトランスの二次巻線に接続された出力整流平滑回路により直流に変換され、出力される。」 (c) 「【0018】 【発明の実施の形態】図1は本発明に係るスイッチング電源の電気回路図である。図示するように、本発明に係るスイッチング電源は、スイッチング回路1と、共振回路2と、トランス3と、出力整流平滑回路4と、過電流保護回路5と、制御回路6とを有する。 【0019】スイッチング回路1は、入力された直流電源Vinをスイッチングする。・・・ 【0020】トランス3は、少なくとも、一次巻線31と、二次巻線32とを含んでいる。・・・二次巻線32は、第1の巻線321と、第2の巻線322の二つの巻線を備え、第1の巻線321及び第2の巻線322は、それぞれの一端が互いに接続されている。 【0021】共振回路2は、共振コンデンサ21と、共振インダクタ22とを有する。共振コンデンサ21及び共振インダクタ22は、スイッチング回路1とトランス3の一次巻線31とを含む回路ループ内に接続されている。実施例では、共振コンデンサ21は、トランス3の一次巻線31の一端と、第1のスイッチング素子11及び第2のスイッチング素子12の接続点との間に接続され、共振インダクタ22は、トランス3の一次巻線31の他端と第2のスイッチング素子12の主電極との間に接続されている。従って、共振回路2は共振コンデンサ21及び共振インダクタ22による直列共振回路を構成している。 【0022】出力整流平滑回路4は、トランス3の二次巻線32に接続され、二次巻線32に生じる誘起電圧を直流に変換して出力する。出力整流平滑回路4は、チョークインプット回路でなる平滑回路41を有する。平滑回路41は、出力チョークコイル411と、出力平滑コンデンサ412とを有する。整流回路42は第1のダイオード421と、第2のダイオード422とを有する。第1のダイオード421のアノードは第1の巻線321の他端に接続され、第2のダイオード422のアノードは第2の巻線の他端に接続されている。第1のダイオード421及び第2のダイオード422のカソードは互いに接続され、平滑回路41を構成する出力チョークコイル411の一端に接続されている。 ・・・ 【0025】制御回路6は、出力整流平滑回路4から出力される出力電圧Voが一定となるようにスイッチング回路1を制御する。制御回路6は、共振回路2の共振周波数foよりも高い周波数領域で、スイッチング回路1を動作させる。 ・・・ 【0028】本発明に係るスイッチング電源は、スイッチング回路1により入力された直流電源をスイッチングし、そのスイッチング出力を共振回路2及びトランス3の一次巻線31に供給する。共振回路2を構成する共振コンデンサ21及び共振インダクタ22はスイッチング回路1とトランス3の一次巻線31とを含む回路ループ内に接続されている。従って、スイッチング回路1のスイッチング動作により、共振回路2及びトランス3の一次巻線31に、共振回路2の共振周波数に対応した疑似正弦波電流が流れる。この時、二次巻線32に誘起電圧が発生する。この誘起電圧はトランス3の二次巻線32に接続された出力整流平滑回路4により直流に変換され、出力される。 【0029】制御回路6は出力整流平滑回路4から出力される出力電圧Voが一定となるように出力電圧が高い場合は動作周波数を増加し、出力電圧が低い場合には動作周波数を低下するように、スイッチング回路1を制御する。これにより、定電圧出力が得られる。」 引用例に記載のスイッチング電源を構成する、スイッチング回路1や共振回路2、平滑回路41等の各回路要素がそれぞれ入出力端子部を備えていることは明らかである。また、上記出力チョークコイル411は出力の平滑処理を行うものであるから、出力端子部に対し直列に接続されていることも明らかである。そうすると、上記記載(a)ないし(c)の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。 「スイッチング電源であって、前記スイッチング電源は、出力電圧Voが一定となる制御がされるように構成され、前記スイッチング電源は: -スイッチング回路1の出力電圧を受ける入力端子; -共振コンデンサ21; -トランス3の一次巻線31及び前記共振コンデンサ21は前記スイッチング回路1を含む回路ループ内に接続される、前記トランス3; -前記入力端子と結合されたスイッチング回路1であって、前記スイッチング回路1は、直流電源Vinを受ける入力端子を有し、該スイッチング回路1は、前記変圧器の1次巻線において擬似正弦波電流を生成するために前記出力電圧を生成するよう構成される、前記スイッチング回路1; -前記トランス3の二次巻線32と結合され、前記トランス3の二次巻線32の誘起電圧を直流に変換する整流回路42の第1のダイオード421及び第2のダイオード422; -前記第1のダイオード421及び第2のダイオード422と結合され、直流電圧を受ける平滑回路41であって、前記平滑回路は出力チョークコイル411と、出力端子とを有し、前記出力チョークコイル411は、前記出力端子に直列に接続される、前記平滑回路41;及び -出力電圧Voを受信し、出力電圧Voに依存して前記スイッチング回路1の動作周波数を制御するために前記出力電圧Voに応答して前記スイッチング回路1を制御する制御回路6 を有するスイッチング電源。」(以下、「引用発明1」という。) (2)対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 まず、引用発明1における「スイッチング電源」は、本願補正発明の「駆動回路」に相当し、引用発明1において「前記スイッチング電源は、出力電圧Voが一定となる制御がされるように構成され」ることと、本願補正発明において「前記駆動回路は、前記発光ダイオードへ供給されるべき電流を制御するよう構成され」ることとは、共に「前記駆動回路は、出力を制御するよう構成され」ている点で共通する。 また、引用発明1の「スイッチング回路1の出力電圧を受ける入力端子」は、本願補正発明の「供給電圧を受ける入力端子のセット」に相当し、同様に、引用発明1の「共振コンデンサ21」、「トランス3の一次巻線31及び前記共振コンデンサ21は前記スイッチング回路1を含む回路ループ内に接続される、前記トランス3」、「前記入力端子と結合されたスイッチング回路1であって、前記スイッチング回路1は、直流電源Vinを受ける入力端子を有し、該スイッチング回路1は、前記変圧器の1次巻線において擬似正弦波電流を生成するために前記出力電圧を生成するよう構成される、前記スイッチング回路1」、及び「前記トランス3の二次巻線32と結合され、前記トランス3の二次巻線32の誘起電圧を直流に変換する整流回路42の第1のダイオード421及び第2のダイオード422」は、それぞれ、本願補正発明の「共振キャパシター」、「変圧器の1次巻線及び前記共振キャパシターは前記入力端子のセットと直列に結合される、前記変圧器」、「前記入力端子のセットと結合されたブリッジ回路であって、前記ブリッジ回路は、DC電圧を受けるブリッジ入力端子を有し、該ブリッジ回路は、前記変圧器の1次巻線において交流供給電流を生成するために前記供給電圧を生成するよう構成される、前記ブリッジ回路」、及び「前記変圧器の2次巻線と結合され、前記変圧器の2次巻線の交流2次巻線電圧を整流する整流器手段」に相当する。 また、引用発明1は一定の出力電圧Voを供給するものであるから、その出力チョークコイル411が、一定の出力が得られるような特性を備えていることは明らかである。したがって、引用発明1の「記第1のダイオード421及び第2のダイオード422と結合され、直流電圧を受ける平滑回路41であって、前記平滑回路は出力チョークコイル411と、出力端子とを有し、前記出力チョークコイル411は、前記出力端子に直列に接続される、前記平滑回路41」と、本願補正発明における「前記整流器手段と結合され、整流電圧を受ける出力回路であって、前記出力回路はバッファー回路と、前記発光ダイオードを前記駆動回路へ結合する出力端子のセットとを有し、前記バッファー回路は、前記出力端子のセットに直列に接続されるインダクターを有し、該インダクターの値は、略一定の電流が前記発光ダイオードを流れるように選択される、前記出力回路」とは、共に「前記整流器手段と結合され、整流電圧を受ける出力回路であって、前記出力回路はバッファー回路と、出力端子のセットとを有し、前記バッファー回路は、前記出力端子のセットに直列に接続されるインダクターを有し、該インダクターの値は、略一定の出力が得られるように選択される、前記出力回路」である点で共通する。 さらに、引用発明1における「出力電圧Voを受信し、出力電圧Voに依存して前記スイッチング回路1の動作周波数を制御するために前記出力電圧Voに応答して前記スイッチング回路1を制御する制御回路6」と、本願補正発明における「制御信号を受信する制御入力端子を有し、必要とされる電力に依存して前記交流供給電流の周波数を制御し且つ前記交流供給電流のデューティーサイクルを50%であるよう制御するために前記LED制御信号に応答して前記ブリッジ回路を制御する制御回路」とは、共に「制御信号を受信する制御入力端子を有し、必要とされる電力に依存して前記交流供給電流の周波数を制御するために前記制御信号に応答して前記ブリッジ回路を制御する制御回路」である点で共通する。 してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「駆動回路であって、前記駆動回路は、出力を制御するよう構成され、前記駆動回路は: -供給電圧を受ける入力端子のセット; -共振キャパシター; -変圧器の1次巻線及び前記共振キャパシターは前記入力端子のセットと直列に結合される、前記変圧器; -前記入力端子のセットと結合されたブリッジ回路であって、前記ブリッジ回路は、DC電圧を受けるブリッジ入力端子を有し、該ブリッジ回路は、前記変圧器の1次巻線において交流供給電流を生成するために前記供給電圧を生成するよう構成される、前記ブリッジ回路; -前記変圧器の2次巻線と結合され、前記変圧器の2次巻線の交流2次巻線電圧を整流する整流器手段; -前記整流器手段と結合され、整流電圧を受ける出力回路であって、前記出力回路はバッファー回路と、出力端子のセットとを有し、前記バッファー回路は、前記出力端子のセットに直列に接続されるインダクターを有し、該インダクターの値は、略一定の出力が得られるように選択される、前記出力回路;及び -LED制御信号を受信する制御入力端子を有し、必要とされる電力に依存して前記交流供給電流の周波数を制御するために前記制御信号に応答して前記ブリッジ回路を制御する制御回路 を有する駆動回路。」 (相違点) 相違点1:電源の供給対象が、本願補正発明は、「発光ダイオード」であるのに対し、引用発明1においては不明である点。 相違点2:本願補正発明は、「交流供給電流のデューティーサイクルを50%であるよう制御する」のに対し、引用発明1においてはそのような制御は行われているか不明である点。 (3)判断 ア 相違点1について 例えば、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特表2001-501362号公報にも記載されているように、この種のいわゆるスイッチング電源を発光ダイオードの電源に用いることは周知技術であり、引用発明1を発光ダイオード用の電源に採用することは、当業者が容易になし得たものである。またそのことにより、当業者の予想し得ない特段の効果が生じているとも認められない。 イ 相違点2について 例えば、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-272887号公報には次の記載があり、スイッチング電源におけるデューティーサイクルを用いた制御は周知慣用なものにすぎない。 「【0002】 【従来の技術】メタルハライドランプ等の放電灯の点灯回路には、直流-直流変換回路、直流-交流変換回路、起動回路を備えた構成が知られており、例えば、直流-直流変換回路(DC-DCコンバータ)を構成するスイッチング電源回路の制御方式として、PWM(パルス幅変調)方式やPFM(パルス周波数変調)方式が知られている。 【0003】PWM方式では、直流-直流変換回路を構成するスイッチング素子に対するオン/オフ比あるいはデューティー比(あるいはデューティーサイクル)を可変制御することによって出力電圧を変化させ、また、PFM方式では、当該スイッチング素子のオン/オフ制御に係る周波数を可変制御することによって出力電圧を変化させることができる。」 また、デューティーサイクルの50%という数値に関しても、例えば本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-151978号公報には次の記載があり、デューティーサイクル制御に際して、50%という値は通常目標とされるべき値にすぎない。 「【0008】絶縁型DC-DCコンバータにおいて変圧器の二次側の整流回路に同期整流回路を採用し双方向の電流が流れ得るようにすると、負荷からの逆流電流は変圧器の一次側に移ることができる。一次側スイッチング回路をプッシュプルまたはハーフブリッジ型とし、デューティーサイクルを完全に50%でふたつのスイッチを交互にオンオフさせると変圧器には正負対称の方形波が入力され、二次側で整流した波形は平滑コンデンサなしでも完全な直流となる。しかも常に一次二次共にどれかのスイッチが導通しているので負荷からの逆流電流もまた常に一次側に移ることができる。この理想的な条件では平滑コンデンサなしでも逆流電流による直流電圧の上昇は発生しない。実際にはデッドタイム等のため完全に50%のデューティーサイクルは実現できず、わずかな電圧の落ち込みと一次二次間非導通の期間が発生する。平滑コンデンサはこのわずかな期間の電圧保持ができれば十分である。」 よって、引用発明1においてデューティーサイクルを50%とする制御を行うことは、当業者が容易になし得たものであり、またそのことにより当業者の予想し得ない特段の効果が生じているとも認められない。 したがって、本願補正発明は、引用発明1及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 請求人の主張について 審判請求人は、審尋に対する回答書において、概略、以下のように主張しているので、検討する。 (1)請求人の主張の概要 「2-2.相違点について ・・・しかしながら、引用文献1に記載のスイッチング電源において引用文献2に記載の回路をどのように接続するのかは、引用文献1及び2のいずれを参酌しても不明です。 ・・・しかしながら、たとえ引用文献1に記載のスイッチング電源において引用文献2に記載の回路が接続され得るとしても、接続に形成された回路においてチョークコイルがどのように接続されるのかは、引用文献1及び2並びに周知技術を参酌しても不明です。 ・・・しかしながら、引用文献1において「制御回路によりスイッチング回路を制御することにより、動作周波数を調整する旨の記載がある」ことのみをもって、「LED制御信号を受信する制御入力端子を有し、必要とされる電力に依存して前記交流供給電流の周波数を制御し且つ前記交流供給電流のデューティーサイクルを50%であるよう制御するために前記LED制御信号に応答して前記ブリッジ回路を制御する」との構成について動機付けとなり得る事項が記載されているとは到底認められません。」 (2)当審による検討 上記「(3)判断」において示したように、いわゆるスイッチング電源を発光ダイオードの電源に用いることは周知技術であり、引用発明1を発光ダイオード用の電源に採用することは、当業者が容易になし得たものである。また、引用発明1の出力チョークコイル411(インダクター)の接続に関しては、その機能からみて、「出力端子のセットに直列に接続され」ていることは明らかであるし、デューティーサイクルの制御に関しても、上記「(3)判断」において示したとおりである。 したがって、審判請求人の主張は採用できない。 4 まとめ したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は前記のとおり却下されたので、本件補正後の請求項1に対応する本件補正前の請求項8に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項8に係る発明は次のとおりである。なお、便宜のために独立形式に書き改めた。 「発光ダイオードを動作する駆動回路であって、前記駆動回路は、前記発光ダイオードへ供給されるべき電流を制御するよう構成され、前記駆動回路は: -供給電圧を受ける入力端子のセット; -共振キャパシター; -変圧器の1次巻線及び前記共振キャパシターは前記入力端子のセットと直列に結合される、前記変圧器; -前記変圧器の2次巻線と結合され、前記変圧器の2次巻線の交流負荷電圧を整流する整流器手段; -前記整流器手段と結合され、整流電圧を受ける出力回路、を有し、前記出力回路はバッファー回路と、前記発光ダイオードを前記駆動回路へ結合する出力端子のセットとを有し、 前記バッファー回路は、前記出力端子のセットに直列に接続されるインダクターを有し、該インダクターの値は、略一定の電流が前記発光ダイオードを流れるように選択される、駆動回路であって、 前記駆動回路は、前記入力端子のセットと結合されたブリッジ回路を有し、前記ブリッジ回路は、DC電圧を受けるブリッジ入力端子を有し、該ブリッジ回路は、交流供給電流を生成するために前記供給電圧を生成するよう構成され、また、 前記駆動回路は、LED制御信号を受信する制御入力端子を有し、前記交流供給電流のデューティーサイクル及び周波数の少なくとも1つを制御するために前記LED制御信号に応じて前記ブリッジ回路を制御し、 前記交流供給電流のデューティーサイクルを50%であるよう制御するために前記ブリッジ回路を制御する、 駆動回路。」(以下「本願発明」という。) 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由2は、本願発明は、その最先の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-229673号公報(引用例)に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3 引用例記載の事項・引用発明2 引用例に記載されている事項は、上記「第2 補正却下の決定 2検討 (1)引用例記載の事項・引用発明1」に示したとおりであり、引用例の上記記載(a)ないし(c)の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。 「スイッチング電源であって、前記スイッチング電源は、出力電圧Voが一定となる制御がされるように構成され、前記スイッチング電源は: -スイッチング回路1の出力電圧を受ける入力端子; -共振コンデンサ21; -トランス3の一次巻線31及び前記共振コンデンサ21は前記スイッチング回路1を含む回路ループ内に接続される、前記トランス3; -前記トランス3の二次巻線32と結合され、前記トランス3の二次巻線32の誘起電圧を直流に変換する整流回路42の第1のダイオード421及び第2のダイオード422; -前記第1のダイオード421及び第2のダイオード422と結合され、直流電圧を受ける平滑回路41であって、前記平滑回路は出力チョークコイル411と、出力端子とを有し、前記出力チョークコイル411は、前記出力端子に直列に接続される、前記平滑回路41; -前記入力端子と結合されたスイッチング回路1であって、前記スイッチング回路1は、直流電源Vinを受ける入力端子を有し、該スイッチング回路1は、前記変圧器の1次巻線において擬似正弦波電流を生成するために前記出力電圧を生成するよう構成される、前記スイッチング回路1;及び -出力電圧Voを受信し、出力電圧Voに依存して前記スイッチング回路1の動作周波数を制御するために前記出力電圧Voに応答して前記スイッチング回路1を制御する制御回路6 を有するスイッチング電源。」(以下「引用発明2」という。) 4 対比 本願発明と引用発明2とを対比する。 まず、引用発明2における「スイッチング電源」は、本願発明の「駆動回路」に相当し、引用発明2において「前記スイッチング電源は、出力電圧Voが一定となる制御がされるように構成され」ることと、本願発明において「前記駆動回路は、前記発光ダイオードへ供給されるべき電流を制御するよう構成され」ることとは、共に「前記駆動回路は、出力を制御するよう構成され」ている点で共通する。 また、引用発明2の「スイッチング回路1の出力電圧を受ける入力端子」は、本願発明の「供給電圧を受ける入力端子のセット」に相当し、同様に、引用発明2の「共振コンデンサ21」、「トランス3の一次巻線31及び前記共振コンデンサ21は前記スイッチング回路1を含む回路ループ内に接続される、前記トランス3」、及び「前記トランス3の二次巻線32と結合され、前記トランス3の二次巻線32の誘起電圧を直流に変換する整流回路42の第1のダイオード421及び第2のダイオード422」は、それぞれ、本願発明の「共振キャパシター」、「変圧器の1次巻線及び前記共振キャパシターは前記入力端子のセットと直列に結合される、前記変圧器」、及び「前記変圧器の2次巻線と結合され、前記変圧器の2次巻線の交流2次巻線電圧を整流する整流器手段」に相当する。 また、引用発明2の「前記第1のダイオード421及び第2のダイオード422と結合され、直流電圧を受ける平滑回路41であって、前記平滑回路は出力チョークコイル411と、出力端子とを有し、前記出力チョークコイル411は、前記出力端子に直列に接続される、前記平滑回路41」と、本願発明における「前記整流器手段と結合され、整流電圧を受ける出力回路、を有し、前記出力回路はバッファー回路と、前記発光ダイオードを前記駆動回路へ結合する出力端子のセットとを有し、前記バッファー回路は、前記出力端子のセットに直列に接続されるインダクターを有し、該インダクターの値は、略一定の電流が前記発光ダイオードを流れるように選択される」ものとは、共に「前記整流器手段と結合され、整流電圧を受ける出力回路であって、前記出力回路はバッファー回路と、出力端子のセットとを有し、前記バッファー回路は、前記出力端子のセットに直列に接続されるインダクターを有し、該インダクターの値は、略一定の出力が得られるように選択される、前記出力回路」である点で共通する。 次に、引用発明2における、「前記入力端子と結合されたスイッチング回路1であって、前記スイッチング回路1は、直流電源Vinを受ける入力端子を有し、該スイッチング回路1は、前記変圧器の1次巻線において擬似正弦波電流を生成するために前記出力電圧を生成するよう構成される、前記スイッチング回路1」は、本願発明における、「前記駆動回路は、前記入力端子のセットと結合されたブリッジ回路を有し、前記ブリッジ回路は、DC電圧を受けるブリッジ入力端子を有し、該ブリッジ回路は、交流供給電流を生成するために前記供給電圧を生成するよう構成され」たものに相当する。 さらに、引用発明2における「出力電圧Voを受信し、出力電圧Voに依存して前記スイッチング回路1の動作周波数を制御するために前記出力電圧Voに応答して前記スイッチング回路1を制御する制御回路6」と、本願発明における「前記駆動回路は、LED制御信号を受信する制御入力端子を有し、前記交流供給電流のデューティーサイクル及び周波数の少なくとも1つを制御するために前記LED制御信号に応じて前記ブリッジ回路を制御し、前記交流供給電流のデューティーサイクルを50%であるよう制御するために前記ブリッジ回路を制御する」ものとは、共に「前記駆動回路は、制御信号を受信する制御入力端子を有し、前記交流供給電流の周波数を制御するために前記制御信号に応じて前記ブリッジ回路を制御する」点で共通する。 してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「駆動回路であって、前記駆動回路は、出力を制御するよう構成され、前記駆動回路は: -供給電圧を受ける入力端子のセット; -共振キャパシター; -変圧器の1次巻線及び前記共振キャパシターは前記入力端子のセットと直列に結合される、前記変圧器; -前記入力端子のセットと結合されたブリッジ回路であって、前記ブリッジ回路は、DC電圧を受けるブリッジ入力端子を有し、該ブリッジ回路は、前記変圧器の1次巻線において交流供給電流を生成するために前記供給電圧を生成するよう構成される、前記ブリッジ回路; -前記変圧器の2次巻線と結合され、前記変圧器の2次巻線の交流2次巻線電圧を整流する整流器手段; -前記整流器手段と結合され、整流電圧を受ける出力回路であって、前記出力回路はバッファー回路と、出力端子のセットとを有し、前記バッファー回路は、前記出力端子のセッ トに直列に接続されるインダクターを有し、該インダクターの値は、略一定の出力が得られるように選択される、前記出力回路;及び -前記駆動回路は、制御信号を受信する制御入力端子を有し、前記交流供給電流の周波数を制御するために前記制御信号に応じて前記ブリッジ回路を制御する制御回路 を有する駆動回路。」 (相違点) 相違点3:電源の供給対象が、本願発明は、「発光ダイオード」であるのに対し、引用発明2においては不明である点。 5 判断 相違点3は相違点1と同一であり、これについては上記「第2 補正却下の決定 2検討 (3)判断」で検討したとおりである。 したがって、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-09 |
結審通知日 | 2014-05-13 |
審決日 | 2014-05-26 |
出願番号 | 特願2007-542483(P2007-542483) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 仁之 |
特許庁審判長 |
飯野 茂 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 清水 稔 |
発明の名称 | LED動作の方法及び駆動回路 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |