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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1292572
審判番号 不服2013-14296  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-25 
確定日 2014-10-08 
事件の表示 特願2010-511360「ジョイントコンパウンドとしての使用に好適な組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月18日国際公開、WO2008/154374、平成22年 8月26日国内公表、特表2010-529261〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、国際出願日である平成20年6月6日(優先権主張 2007年6月8日 アメリカ合衆国(US))を出願日とする特許出願であって、平成23年5月23日に手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲が補正され、平成24年10月15日付けで拒絶理由が通知され、平成25年2月25日に意見書および手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲が補正されたが、同年3月19日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成25年7月25日に拒絶査定不服の審判が請求されると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲が補正され、同年9月9日付けで前置報告がなされた後、同年9月18日付けで当審において審尋がなされ、平成26年1月21日に回答書が提出されたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成25年7月25日提出の手続補正書による手続補正を却下する。
[理由]
1.本件手続補正の内容
平成25年7月25日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件手続補正」という。)の内容は、特許請求の範囲の記載を補正するものであって、本件手続補正前の特許請求の範囲に

「【請求項1】
水と、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム2水和物又は硫酸カルシウム1/2水和物のうちの1以上を含む充填剤と、結合剤と、殺生物剤とを含む組成物であって、硬化後の組成物がホルムアルデヒド無しである、組成物。
【請求項2】
0.01?10重量%の範囲の量で硬化遅延剤を更に含む硬化型の組成物であり、40?90重量%の範囲の量で硫酸カルシウム1/2水和物が存在し、0.1?15重量%の範囲の量で結合剤が存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
硫酸カルシウム1/2水和物無しであり、且つ硫酸カルシウム2水和物、炭酸カルシウム又はそれらの混合物を20?95重量%含み、且つ0.1?15重量%の範囲の量で結合剤が存在する、乾燥型の組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
結合剤が、ビニル含有、アクリル含有及びスチレン含有化合物、ビニル含有、アクリル含有及びスチレン含有化合物のポリマー類又はコポリマー類、デンプン類、カゼイン並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記結合剤がホルムアルデヒド無しである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記殺生物剤がホルムアルデヒド無しである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記殺生物剤がイソチアゾリノンを含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
硬化後の組成物から放出されるホルムアルデヒド量が16μg m^(-3)(13.5ppb)以下である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
硬化後の組成物から放出されるホルムアルデヒド量が5μg m^(-3)(4.1ppb)以下である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
硬化後の組成物から放出されるホルムアルデヒド量が2μg m^(-3)(1.6ppb)以下である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の組成物。」

と記載されていたものを、

「【請求項1】
水と、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム2水和物又は硫酸カルシウム1/2水和物のうちの1以上を含む充填剤と、ホルムアルデヒドを含まない結合剤と、イソチアゾリノンからなる殺生物剤とを含む硬化型組成物であって、硬化後の組成物から放出されるホルムアルデヒド量が16μg m^(-3)(13.5ppb)以下である、硬化型組成物。
【請求項2】
0.01?10重量%の範囲の量で硬化遅延剤を更に含み、40?90重量%の範囲の量で前記硫酸カルシウム1/2水和物が存在し、0.1?15重量%の範囲の量で前記ホルムアルデヒドを含まない結合剤が存在し、組成物に約10,000cps?約80,000cpsの粘度をもたらすのに十分な量で水が存在する請求項1に記載の硬化型組成物。
【請求項3】
硫酸カルシウム2水和物、炭酸カルシウム又はそれらの混合物を20?95重量%含み、且つ0.1?15重量%の範囲の量で結合剤が存在する硬化型組成物であり、組成物に約10,000cps?約80,000cpsの粘度をもたらすのに十分な量で水が存在する請求項1に記載の硬化型組成物。
【請求項4】
前記ホルムアルデヒドを含まない結合剤が、ビニル含有、アクリル含有及びスチレン含有化合物、ビニル含有、アクリル含有及びスチレン含有化合物のポリマー類又はコポリマー類、デンプン類、並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化型組成物。
【請求項5】
前記殺生物剤がC_(1)?C_(8)イソチアゾリノンを含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の硬化型組成物。
【請求項6】
硬化後の組成物から放出されるホルムアルデヒド量が5μg m^(-3)(4.1ppb)以下である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の硬化型組成物。
【請求項7】
硬化後の組成物から放出されるホルムアルデヒド量が2μg m^(-3)(1.6ppb)以下である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の硬化型組成物。」

と補正するものである。

2.本件手続補正の目的
本件手続補正は、以下の補正事項を含むものである。
補正事項1
請求項1について、本件手続補正前の「結合剤」を「ホルムアルデヒドを含まない結合剤」に補正する補正事項。
補正事項2
請求項1について、本件手続補正前の「殺生物剤」を「イソチアゾリノンからなる殺生物剤」に補正する補正事項。
補正事項3
請求項1について、本件手続補正前の「組成物」を「硬化型組成物」に補正する補正事項。
補正事項4
請求項1について、本件手続補正前の「硬化後の組成物がホルムアルデヒド無しである」を「硬化後の組成物から放出されるホルムアルデヒド量が16μg m^(-3)(13.5ppb)以下である」に補正する補正事項。
補正事項5
請求項3について、本件手続補正前の「硫酸カルシウム1/2水和物無しであり、且つ硫酸カルシウム2水和物、炭酸カルシウム又はそれらの混合物を20?95重量%含み、且つ0.1?15重量%の範囲の量で結合剤が存在する、乾燥型の組成物である、請求項1に記載の組成物。」を「硫酸カルシウム2水和物、炭酸カルシウム又はそれらの混合物を20?95重量%含み、且つ0.1?15重量%の範囲の量で結合剤が存在する硬化型組成物であり、組成物に約10,000cps?約80,000cpsの粘度をもたらすのに十分な量で水が存在する請求項1に記載の硬化型組成物。」に補正する補正事項。

まず、請求項1に係る補正事項である補正事項1乃至4について検討する。

補正事項1乃至3は、いずれも発明を特定するための事項をさらに限定するものであって、本件手続補正前の請求項1に記載された発明と本件手続補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
補正事項4は、当初明細書(段落【0009】)に「硬化後の組成物がホルムアルデヒド無しである」の意味するところが具体的には「硬化後の組成物から放出されるホルムアルデヒド量が16μg m^(-3)(13.5ppb)以下である」ことが記載されているので、本件手続補正前の請求項1に記載された発明について、明りょうでない記載の釈明を目的とする補正に該当する。

したがって、補正事項1乃至4は、特許法第17条の2第5項第2号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
上記のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものを含むものであるので、本件手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるもので有るか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満足するか否か)について検討する。

(i)本件手続補正後の請求項1に係る発明
本件手続補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、本件手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次に記載のとおりのものと認める。

「水と、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム2水和物又は硫酸カルシウム1/2水和物のうちの1以上を含む充填剤と、ホルムアルデヒドを含まない結合剤と、イソチアゾリノンからなる殺生物剤とを含む硬化型組成物であって、硬化後の組成物から放出されるホルムアルデヒド量が16μg m^(-3)(13.5ppb)以下である、硬化型組成物。」

(ii)刊行物及び刊行物に記載されている事項
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-121021号公報(以下、「刊行物A」という。平成24年10月15日付け拒絶理由通知書に記載の引用文献2。)には、以下の事項が記載されている。

(あ)「【請求項1】 ポリビニルアルコール及び/又は水性エマルジョンと充填剤とクルードMDIを含む合板製造用接着剤。」
(い)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はホルムアルデヒド(以下、ホルマリンという)を含まない合板製造用接着剤及びこれを用いた合板の製造方法に関するものである。」
(う)「【0002】
【従来の技術】従来より、合板製造用接着剤には、ユリア系樹脂接着剤、メラミン系樹脂接着剤、フェノール系樹脂接着剤等のホルマリンを含む熱硬化性樹脂接着剤が使用されている。これらの接着剤は安価でかつ接着性にも優れているものの、合板の製造中に毒性のあるホルマリンが大気中に放散して作業環境を悪化させるばかりでなく、製品化された後でも合板内部の接着剤層が加水分解することによりホルマリンが長期に亘って徐々に放出する欠点があった。また合板は家具材料や住宅の内装材として密閉された建物内において、放出したホルマリンが使用者の皮膚や粘膜に接触し易い状態で使用されるため、ホルマリンを含まない接着剤が求められていた。またこれらの接着剤は熱硬化性樹脂接着剤であるため、複数の単板を重ね合わせて接着し合板にするときに、110?120℃の高い温度を必要とした。上記ホルマリン含有の接着剤の欠点を解消するために、合板製造用接着剤ではないが、ホルマリンを含まない2液硬化型の水性高分子-イソシアネート系接着剤が知られている。この接着剤はホルマリンを使用せず、木材などに含まれる水酸基を有する成分とも反応して優れた接着性能を示す。またこの接着剤は一般に耐水性、耐久性、耐衝撃性に優れることから、集成材の分野での使用量が大きい。この種のイソシアネート系接着剤としては、例えば特公昭55-18759号公報及び特公昭55-33478号公報にそれぞれ開示される接着剤がある。これらの公報に記載された接着剤は、ホルマリンを含まず、イソシアネート系化合物をポリビニルアルコールなどの水溶液を含む水性のエマルジョンと混合して調製される水性接着剤である。この接着剤は、主として集成材等の表面が平滑で厚い被着材を室温で接着するために使用される。また被着材の緻密性と接着時間の短縮化のために、接着剤の主剤の濃度が50?60重量%であり、架橋剤であるイソシアネート系化合物を含めると57?65重量%と高濃度である。」
(え)「【0004】本発明の目的は、ホルマリンを含まず、安価で接着の際の作業性が良く、脂分の多寡に拘わらずいかなる種類の単板にも良好に接着する合板製造用接着剤を提供することにある。本発明の別の目的は、防虫・防菌性のある合板製造用接着剤を提供することにある。本発明の更に別の目的は、この合板製造用接着剤を用いて簡便にかつ単板を堅固に接着し、耐水性、耐候性、耐久性、耐衝撃性、防虫・防菌性に優れた合板を製造する方法を提供することにある。」
(お)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳述する。本発明の被着材は、合板の構成要素である単板である。ポリビニルアルコールは主として重合度と鹸化度により規定される水溶性高分子である。本発明に用いられるポリビニルアルコールに適する重合度は、500?3000、好ましくは1000?2500、更に好ましくは1200?1800である。重合度が上記下限値未満では接着強度が低くなり、また上記上限値を越えると接着剤の粘度が高くなり過ぎて使用が難しく、いずれも本発明の目的に合致しない。また本発明に適する鹸化度は、82?99モル%、好ましくは85?97モル%、更に好ましくは86?90モル%である。鹸化度が上記下限未満では接着剤が泡立って使いにくく、かつ耐水性も低下し易い。また上記上限値を越えると水溶液の安定性が悪く使いにくくなる。また本発明の水性エマルジョンとしては、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体ラテックス、メチルメタアクリレート-ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックス、各種ポリアクリル酸エステルエマルジョン、クロロプレンゴムラテックス、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、エチレン-酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体エマルジョン等の有機高分子エマルジョンである。これらの中でスチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体ラテックス、各種ポリアクリル酸エステルエマルジョン、エチレン-酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体エマルジョン等はより好ましい水性エマルジョンである。これらの水性エマルジョンにカルボキシル変性、イミノ変性、アミノ変性、一級アルコール変性等の官能基変性をした水性エマルジョンは更に好ましい。」
(か)「【0012】また本発明の充填剤としては、ア)クレー、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、イ)カオリン、タルクなどのケイ酸塩、ウ)硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどのカルシウム化合物、エ)アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、鉄などの金属酸化物又は水酸化物、オ)カーボン、ガラス、マイカなどの無機物の粉末又は繊維状物、カ)樹木の粉末、ヤシ殻粉、モミガラ、キ)玉蜀黍、高りゃんなどの茎の粉末、ク)クルミ、モモなどの種子穀粉、ケ)小麦粉、米粉、イモデンプン、脱脂大豆粉、血粉、カゼインなどのタンパク質やデンプン質が例示される。特に上記ケ)の充填剤は増量剤的な性質をも有する。本発明の充填剤は、自然の含水率であれば、予め加熱乾燥したり、脱水処理したりする必要はない。また充填剤は一種類のものを配合することも、複数種類のものを混合することもできる。粒径の異なる充填剤を混合することは、充填剤の沈降防止に有効である。上記充填剤の中で炭酸カルシウムは安価で比較的容易に入手でき、硬度が低いため、好ましい。また樹木の粉末として、特にヒバ、アスナロ、台湾ヒノキ、ユウカリ、サイプレス等の防虫・防菌効果のある樹木の粉末を充填剤の一部として使用することにより、接着剤や接着した合板に防虫・防菌性を付与することができる。従来のホルマリンを含有する熱硬化性樹脂接着剤に比較して、本発明の接着剤はホルマリンを含有しないため、防虫・防菌性能に劣ると考えられるので、上記防虫・防菌効果のある樹木の粉末を充填剤の一部に使用することにより、防虫・防菌性を付与することができる。」
(き)「【0015】本発明の目的に適合するイソシアネート化合物としては、クルードMDI単独で十分であるが、水素化MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの分子中にイソシアネート基を2個以上含むイソシアネート化合物を併用してもよい。本発明の接着剤には、ポリビニルアルコール、水性エマルジョン、充填剤、クルードMDIの他に、適宜消泡剤、防腐剤、分散剤、着色剤などを添加することができる。」
(く)「【0017】
【実施例】以下に本発明の実施例を示すが、本発明の技術範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>乾燥状態又は溶媒に希釈しない状態での各成分を次の重量比で配合して合板製造用接着剤を製造した。
ポリビニルアルコール:スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス:炭酸カルシウム:クルードMDI=0.5:1.0:2.0:1
ここで、ポリビニルアルコールは重合度が1700、鹸化度が88モル%のものを使用し、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックスはスチレン:ブタジエン=1:1のものを用いた。
(け)「【0034】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の合板製造用接着剤は、ホルマリンを含まないため、接着して作られた合板を家具材料や住宅の内装材に用いても、使用者にホルマリンの放出による悪影響を及ぼすことがない。また安価で接着の際の作業性が良く、脂分の多い単板や接着し難い単板に対しても、単板の種類に拘わらずいかなる単板にも良好に接着することができる。これにより各種合板への高い頻度での使用が見込まれる。またこの合板製造用接着剤を用いて簡便にかつ単板を堅固に接着することができ、その結果、耐水性、耐候性、耐久性、耐衝撃性、防虫・防菌性に優れた合板が得られる。更に防虫・防菌効果のある樹木の粉末を充填剤に用いれば、接着剤及び製造した合板に防虫・防菌性を付与する。」

(iii)刊行物に記載されている発明
摘示(あ)の「水性エマルジョンと充填剤とクルードMDIを含む合板製造用接着剤。」について、刊行物Aには、ホルムアルデヒドを含まない合板製造用接着剤を提供することを目的とするものであること(摘示(い)、(う)、(え)、(け))、及び、「水性エマルジョン」が、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックスなどであって(摘示(お))、スチレン:ブタジエン=1:1のスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスが使用されている実施例も記載されている(摘示(く))ことから、刊行物Aには、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「スチレン-ブタジエン共重合体が水に分散した水性エマルジョンと充填剤とクルードMDIを含み、ホルムアルデヒドを含まない合板製造用接着剤。」

(iv)対比・判断
補正発明の「結合剤」について、本願の明細書(段落【0037】)に「任意の多くの結合剤が本発明の種々の態様において単独か又は組み合わせてかのいずれかで、本発明のホルムアルデヒド無しの硬化した組成物を提供するために使用するのに好適であり得る。これには例えば、ビニル含有、アクリル含有及びスチレン含有化合物、それらのポリマー又はコポリマー並びにデンプンが挙げられる。使用に好適であり得る例示的な結合剤としては、ポリ酢酸ビニル類、ポリビニルアルコール類、(メタ)アクリルポリマー類(例、ポリビニルアクリル)、エチレン酢酸ビニルポリマー類、塩化ビニルポリマー類、スチレンアクリルポリマー類、ポリスチレン類、ポリアクリルアミド類、スチレンブタジエン類、天然及び合成デンプン類(アルファ化デンプンを含む)及びカゼインが挙げられるが、これらに限定されない。ラテックス結合剤は好ましい結合剤であり」と記載されていることから、補正発明の「結合剤」は、任意の樹脂であって具体例としてスチレンブタジエン類(スチレン:ブタジエン=1:1のスチレン-ブタジエン共重合体を包含することは明らかである。)を含むものである。
また、引用発明は、ホルムアルデヒドを含まない合板製造用接着剤であることから、引用発明の「スチレン-ブタジエン共重合体」は、ホルムアルデヒドを含まないといえる。
そうすると、引用発明の「スチレン-ブタジエン共重合体」は、補正発明の「ホルムアルデヒドを含まない結合剤」に相当する。
また、引用発明の「ホルムアルデヒドを含まない合板製造用接着剤」は、「硬化後の組成物から放出されるホルムアルデヒド量が16μg m^(-3)(13.5ppb)以下である」を満足すると認められる。
さらに、引用発明の「合板製造用接着剤」は、「クルードMDI」を含むものであることから、硬化することは明らかであるので、補正発明の「硬化型組成物」に相当する。

したがって、補正発明と引用発明の一致点、及び、相違点は、以下のとおりであると認められる。

<一致点>
「水と充填剤と、ホルムアルデヒドを含まない結合剤とを含む硬化型組成物であって、硬化後の組成物から放出されるホルムアルデヒド量が16μg m^(-3)(13.5ppb)以下である、硬化型組成物」

<相違点>
相違点(1)
充填剤について、補正発明は、「炭酸カルシウム、硫酸カルシウム2水和物又は硫酸カルシウム1/2水和物のうちの1以上を含む」との限定を有するのに対し、引用発明は、このような限定を有していない点。

相違点(2)
組成物について、補正発明が「イソチアゾリノンからなる殺生物剤」を含むのに対し、引用発明は、このような限定を有していない点。

相違点(1)について
刊行物Aには充填剤として炭酸カルシウムが好ましいこと(摘示(か))、及び、炭酸カルシウムを含む実施例が記載されている(摘示(く))。そうすると、充填剤を炭酸カルシウムに限定する程度のことは補正発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)であれば容易に着想しうることであると認められる。
また、充填剤を炭酸カルシウムに限定したことにより当業者に予測することができない格別顕著な効果が奏されているわけでもない。

相違点(2)について
補正発明が属する塗料・接着剤などの水性組成物の分野において、製造後ユーザーでのストック期間中を含めて、容器内での品質保持、保証をはかる義務がメーカーの責任としてあげられ、このため水ベースの水系組成物では防腐剤を必要としており、製造工程における微生物汚染により缶内でのガス発生による容器のふくれ、製品の粘度低下、変色、分離、悪臭の発生などの現象を未然に防止する目的で殺菌剤が用いられることは、周知の技術であり、当該殺菌剤としてイソチアゾリノンは、周知の物質である(例えば、防菌防黴剤事典、日本防菌防黴学会、1986年、p.19,右欄「2.防菌防黴剤の役割」および、表1のNo.9の行の記載を参照。平成25年9月9日付け前置報告書に記載の引用文献13)。
引用発明の接着剤が防腐剤を必要とする水ベースの水系組成物であることは明らかで有り、かつ、刊行物Aには防腐剤を添加することができることについても記載されている(摘示(き))
そうすると、当業者であれば、引用発明においてイソチアゾリノンからなる殺菌剤を配合することにより、相違点(2)に係る構成を満足する接着剤の発明とするという程度のことは容易に着想しうることであると認められる。

(v)小括
以上のとおり、補正発明は、刊行物Aに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができない。

4.請求項3に係る補正事項の検討
補正事項5は、本件手続補正前の請求項3について「硫酸カルシウム1/2水和物無しであり」との事項を削除し、「乾燥型の」を「硬化型」に変更する補正を含むものであるが、本願の明細書の段落【0004】に「レディーミックスコンパウンドはそれらの硬化方法に基づいて、便宜上乾燥型と硬化型の2つのグループに分けられ得る。乾燥型コンパウンドは蒸発に起因する水の喪失の際に硬化するが、その一方で硬化型コンパウンドは、焼石膏(硫酸カルシウム1/2水和物)と水との間で起こる化学反応の結果硬化する。」と記載されていることから、「乾燥型の」を「硬化型」に変更する補正は、請求項3に係る組成物を硫酸カルシウム1/2水和物無しである乾燥型の組成物から、「硫酸カルシウム1/2水和物」を含む硬化型の組成物に変更するものであり、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。

5.むすび
以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項の規定、および、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定にも違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
上記のとおり、平成25年7月25日提出の手続補正書による手続補正は却下されたので、本願の請求項1乃至10に係る発明は、平成25年2月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「水と、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム2水和物又は硫酸カルシウム1/2水和物のうちの1以上を含む充填剤と、結合剤と、殺生物剤とを含む組成物であって、硬化後の組成物がホルムアルデヒド無しである、組成物。」

2.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由とされた、平成24年10月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由は、この出願に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、および、この出願に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、刊行物として下記の刊行物を引用するものである。

1.特開2003-171493号公報
2.特開平10-121021号公報
3.特開平06-287544号公報
4.特開平08-060139号公報
5.特開平10-067929号公報
6.国際公開第2005/014256号
7.国際公開第2005/100279号
8.特開昭59-227965号公報
9.特表2002-531369号公報

3.当審の判断
上記第2.2.に説示したとおり、補正発明が本願発明をさらに限定した発明であるところ、上記第2.3.に説示したとおり補正発明は、刊行物Aに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると、本願発明も刊行物A(特開平10-121021号公報、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物Aに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとする原査定の拒絶の理由は妥当なものであり、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2014-05-08 
結審通知日 2014-05-13 
審決日 2014-05-27 
出願番号 特願2010-511360(P2010-511360)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C08L)
P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 周史  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 田口 昌浩
須藤 康洋
発明の名称 ジョイントコンパウンドとしての使用に好適な組成物  
代理人 石堂 毅彦  
代理人 毛受 隆典  
代理人 桜田 圭  
代理人 森川 泰司  
代理人 木村 満  
代理人 雨宮 康仁  
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