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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1292573
審判番号 不服2013-16805  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-30 
確定日 2014-10-08 
事件の表示 特願2011- 22094「積層型セラミックスキャパシタ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月14日出願公開、特開2012-114395〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は平成23年2月3日(パリ条約に基づく優先権主張 平成22年11月25日 大韓民国(KR))の出願であって、
原審において平成24年8月2日付で拒絶理由が通知され、平成24年11月7日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年11月22日付で再度拒絶理由が通知され、平成25年3月5日付で意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成25年4月22日付で、前記平成24年8月2日付の拒絶理由により拒絶査定となり、
これに対して、同年8月30日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

本願の請求項1ないし11に係る発明は、上記平成25年8月30日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

(本願発明)
「 複数の誘電体層が内部に積層され、予め設定された横の長さ1.6mmおよび予め設定された縦の長さ0.8mmを有するキャパシタ本体と、
前記複数の誘電体層の夫々に複数個が配列される複数の内部電極を有する内部電極部と、
前記キャパシタ本体の側面に配列され、前記複数の内部電極のうちの対応する内部電極と電気的に連結される複数の外部電極を有する外部電極部と、
を備え、
前記複数の内部電極の夫々は、外部電極と連結される突出部を含み、
前記内部電極の突出部の幅は、0.1mm以上、0.2mm以下であり、前記突出部が形成された内部電極の幅方向の端から前記突出部までの距離の2倍より大きく、4倍より小さく、
前記内部電極グループの容量は夫々1uF±10%以上であることを特徴とする積層型セラミックスキャパシタ。」


第2 引用例
原審において、平成24年8月2日付の拒絶理由に引用された、特開2003-272945号公報(以下「引用例」という。)には、「積層セラミック電子部品およびその製造方法」として、図面と共に以下の記載がある。

ア.「【0002】【従来の技術】
昨今のコンピュータや携帯電話に代表される情報通信機器の小型化に伴い、電子部品の高密度実装が進行する中で積層セラミック電子部品においては小型化が望まれている。特に、代表的な積層セラミック電子部品である積層セラミックコンデンサにおいては小型化とともに大容量化が望まれている。
【0003】そして、実装面積低減と実装回数削減によるコスト低減の要求から単一素体内にコンデンサを複数個並設した多連形の積層セラミックコンデンサも開発され使用されてきており、多連形の積層セラミックコンデンサにおいても小型化、大容量化が要望されている。
【0004】従来の多連形の積層セラミックコンデンサについて、図13を参照して説明する。図13は従来の多連形の積層セラミックコンデンサの内部電極の構造を示す模式的分解斜視図である。
【0005】図13に示すように、従来の多連形の積層セラミックコンデンサは、誘電体層3を挟んで第1の内部電極1と第2の内部電極2とが交互に積層され、第1の内部電極1および第2の内部電極2は同一平面に複数(図13では4個)が形成され、この素体の相対向する端面に内部電極の複数対が交互に露出し、この露出した内部電極に接続するように複数対の外部電極(図示せず)を形成している。また、多連形の積層セラミックコンデンサは外部電極の形状を小さくする必要があるため、図13に示すように、第1の内部電極1および第2の内部電極2は、容量形成電極部1a,2aと引出し電極部1b,2bとを設け、引出し電極部1b,2bの幅寸法を容量形成電極部1a,2aに比べ小さくし、外部電極との接続部分の寸法を小さくしている。
【0006】一方、積層セラミックコンデンサの静電容量は、内部電極の重なり面積、内部電極に挟まれた誘電体層の有効層数、誘電体層の厚みおよび誘電体層の比誘電率によって決定される。したがって、所望の静電容量を得るためには、上記の各因子のいずれか一つまたは複数を変更して行う。」

イ.「【0026】図1?図3において、10は積層焼結体、11?14は第1の外部電極、21?24は第2の外部電極、100は誘電体層、110?140は第1の内部電極、210?240は第2の内部電極である。
【0027】図3に示すように、本実施の形態1における積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極とを交互に積層した積層焼結体10とこの積層焼結体10の表面に設けた4対の対向する外部電極、つまり、第1の外部電極11と第2の外部電極21、第1の外部電極12と第2の外部電極22、第1の外部電極13と第2の外部電極23および第1の外部電極14と第2の外部電極24の4対を備えている。そして、図1?図3に示すように、内部電極は、誘電体層100を挟んで一方の層に4つ並設した第1の内部電極110?140と他方の層に4つ並設した第2の内部電極210?240とからなり、第1の内部電極110と第2の内部電極210、第1の内部電極120と第2の内部電極220、第1の内部電極130と第2の内部電極230および第1の内部電極140と第2の内部電極240とがそれぞれ1個のコンデンサを構成し、1個の素体である積層焼結体10内に4個のコンデンサを内蔵した4連形の積層セラミックコンデンサである。
【0028】そして、いずれの内部電極も、容量形成電極とこの容量形成電極と一方の外部電極とを接続する引出し電極と容量形成電極に非接続で他方の外部電極に接続するダミー電極とを1単位としてそれぞれ同一層に有した構成としている。具体的には、図1に示すように、第1の内部電極110は、容量形成電極110aとこの容量形成電極110aと第1の外部電極11とを接続する引出し電極110bと容量形成電極110aに非接続で第2の外部電極21に接続するダミー電極110cとを有し、第2の内部電極210は、容量形成電極210aとこの容量形成電極210aと第2の外部電極21とを接続する引出し電極210bと容量形成電極210aに非接続で第1の外部電極11に接続するダミー電極210cとを有している。また、引出し電極およびダミー電極の幅はほぼ同一でかつ容量形成電極に比して小としている。例えば、引出し電極110bおよびダミー電極110cの幅はほぼ同一でかつ容量形成電極110aに比して小としている。」

ウ.「【0040】作製した本実施の形態1における積層セラミックコンデンサは、長手方向寸法が3.2mm、幅方向寸法が1.6mm、厚み方向寸法が0.85mmであった。」


上記の記載及び関連する図面ならびに積層セラミックコンデンサの分野における技術常識を考慮すると、
引用例に記載された「積層セラミックコンデンサ」は、上記ア.【0005】および【図13】、上記イ.【0026】および【図1】?【図3】にあるように、複数の「誘電体層」(3,100)が積層されてなり、
例えば上記ウ.【0040】にあるように、「長手方向寸法が3.2mm、幅方向寸法が1.6mm、厚み方向寸法が0.85mm」の直方体状の「積層焼結体10」(上記イ.【0026】、【図3】)がその本体である。

また、引用例に記載された「積層セラミックコンデンサ」は、【図13】、【図1】にあるように、前記複数の誘電体層を挟んで各層に複数の第1の「内部電極」(1,110?140)と、複数の第2の「内部電極」(2、210?240)とが交互に積層されてなり、
これら各層の内部電極は、誘電体層を挟んで一方の層の同一平面に4つ並設した第1の内部電極と、他方の層の同一平面に4つ並設した第2の内部電極が各々対となって4個のコンデンサを構成し、1個の本体内に独立した4個のコンデンサを内蔵した4連形の積層セラミックコンデンサを構成している。

また、上記ア.【0005】や、イ.【0027】、【図3】にあるように、引用例に記載された「積層セラミックコンデンサ」は、
前記積層焼結体の表面に設けられた、前記積層焼結体の相対向する端面に露出する4個の前記内部電極に接続される4対の対向する「外部電極」(11?14,21?24)を有しており、
これら「外部電極」に接続する「内部電極」のそれぞれは、「容量形成電極部」(【図13】の1a、2a、【図1】の110a、210a)と、「引出し電極部」(【図13】の1b、2b、【図1】の110b、210b)を有しており、
上記ア.【0005】末尾、および【図13】、上記イ.【0028】末尾、および【図3】から判るように、「前記引出し電極部の幅寸法は、前記容量形成電極部に比べて小さく」なっている。

したがって、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「複数の誘電体層が積層され、長手方向寸法が3.2mm、幅方向寸法が1.6mm、厚み方向寸法が0.85mmの積層焼結体と、
前記複数の誘電体層を挟んで複数の第1の内部電極と複数の第2の内部電極とが交互に積層され、各層の内部電極は、誘電体層を挟んで一方の層の同一平面に4つ並設した第1の内部電極と、他方の層の同一平面に4つ並設した第2の内部電極が各々対となって4個のコンデンサを構成する内部電極と、
前記積層焼結体の表面に設けられた、前記積層焼結体の相対向する端面に露出する4個の前記内部電極に接続される4対の対向する外部電極と、
を備え、
前記内部電極のそれぞれは、容量形成電極部と引出し電極部を有し、
前記引出し電極部の幅寸法は、前記容量形成電極部に比べて小さく、
前記積層焼結体内に4個のコンデンサが並設された
積層セラミックコンデンサ。」


第3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明を対比する。
まず、引用発明の「積層セラミックコンデンサ」において「コンデンサ」は「キャパシタ」であるから、本願発明の「積層型セラミックキャパシタ」である。
また、引用発明と本願発明の「誘電体層」は共通し、
引用発明の「複数の誘電体層が積層され」は、本願発明の「複数の誘電体層が内部に積層され」と実質的な差異は無く、
引用発明の「長手方向寸法が3.2mm、幅方向寸法が1.6mm、厚み方向寸法が0.85mm」は、数値が異なるものの、本願発明と「予め設定された横の長さおよび予め設定された縦の長さを有する」点で一致し、
引用発明の「積層焼結体」は、本願発明の「キャパシタ本体」に相当する。

また、引用発明と本願発明の「内部電極」は共通し、
引用発明の「前記複数の誘電体層を挟んで複数の第1の内部電極と複数の第2の内部電極とが交互に積層され、各層の内部電極は、誘電体層を挟んで一方の層の同一平面に4つ並設した第1の内部電極と、他方の層の同一平面に4つ並設した第2の内部電極が各々対となって4個のコンデンサを構成する内部電極」は、全体として本願発明の「前記複数の誘電体層の夫々に複数個が配列される複数の内部電極を有する内部電極部」にあたる。

また、引用発明と本願発明の「外部電極」は共通し、
引用発明の「積層焼結体の表面に設けられた」における「表面」とは、引用例【図3】からも明らかなように「側面」ということができ、本願発明の「キャパシタ本体の側面に配列され」にあたり、
引用発明の「積層焼結体の相対向する端面に露出する4個の内部電極に接続される」ことは、本願発明の「複数の内部電極のうちの対応する内部電極と電気的に連結される」ことにあたり、
引用発明の「4対の対向する外部電極」は、本願発明の「複数の外部電極」である。
したがって、引用発明の「前記積層焼結体の表面に設けられた、前記積層焼結体の相対向する端面に露出する4個の前記内部電極に接続される4対の対向する外部電極」は、全体として本願発明の「前記キャパシタ本体の側面に配列され、前記複数の内部電極のうちの対応する内部電極と電気的に連結される複数の外部電極を有する外部電極部」にあたる。

そして、引用発明の「引出し電極部」は、「容量形成電極部」から突出して「外部電極」と接続する部位を構成しており、本願発明の「外部電極」と連結される「突出部」にあたり、
引用発明の「内部電極のそれぞれは、容量形成電極部と引出し電極部を有し」は、本願発明の「複数の内部電極の夫々は、外部電極と連結される突出部を含み」にあたる。

以上から、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「複数の誘電体層が内部に積層され、予め設定された横の長さおよび予め設定された縦の長さを有するキャパシタ本体と、
複数の誘電体層の夫々に複数個が配列される複数の内部電極を有する内部電極部と、
前記キャパシタ本体の側面に配列され、前記複数の内部電極のうちの対応する内部電極と電気的に連結される複数の外部電極を有する外部電極部と、
を備え、
前記複数の内部電極の夫々は、外部電極と連結される突出部を含む、
積層型セラミックスキャパシタ。」

(相違点1)
「予め設定された横の長さおよび予め設定された縦の長さを有するキャパシタ本体」に関し、
本願発明は「予め設定された横の長さ1.6mmおよび予め設定された縦の長さ0.8mmを有するキャパシタ本体」であるのに対して、
引用発明は「長手方向寸法が3.2mm、幅方向寸法が1.6mm、厚み方向寸法が0.85mmの積層焼結体」である点。

(相違点2)
内部電極の「突出部」の幅に関し、
本願発明は「前記内部電極の突出部の幅は、0.1mm以上、0.2mm以下であり、前記突出部が形成された内部電極の幅方向の端から前記突出部までの距離の2倍より大きく、4倍より小さく」するのに対して、
引用発明は単に、「前記引出し電極部の幅寸法は、前記容量形成電極部に比べて小さく」する点。

(相違点3)
本願発明は「前記内部電極グループの容量は夫々1uF±10%以上である」のに対して、引用発明はこのように容量を特定していない点。


(2)判断
まず、相違点1のキャパシタ本体の寸法、サイズについて検討する。
するとそもそも、引用例の上記ア.【0002】冒頭にもあるように、情報通信機器のような電子機器の小型化、高密度化をささえるため、電子部品の小型化は従来より絶え間なく進められてきたところであって、近年チップ状電子部品のサイズは、実装時の平面寸法として規格化され、0.1mm単位のサイズを表す縦横各2桁の4つの数字で呼称されることは本願出願前に周知の技術常識であり、
横の長さ3.2mmおよび縦の長さ1.6mmの大きさ(3216)のチップ状キャパシタ、横の長さ1.6mmおよび縦の長さ0.8mmの大きさ(1608)のチップ状キャパシタはいずれも周知である。
(例えば、特開2002-164700号公報【0022】末尾、特開2003-152325号公報【0026】、特開2006-19596号公報【0005】等を参照されたい。)
したがって、引用発明の3216タイプの積層セラミックコンデンサを、より小型の1608タイプとして本願発明の相違点1の構成をなすことは、当業者が適宜になし得ることであって、相違点1は格別のことではない。


ついで、相違点2の内部電極の「突出部」の幅について検討する。
そもそも「引出し電極」にすぎない「突出部」の幅などの寸法は、外部電極や隣接する電極との確実な接続や分離、電気的特性などが確保される範囲内において、当業者であれば必要に応じて適宜設定可能な設計的事項の範疇であって格別のことではないが、念のため更に検討する。

まず、相違点2の前段の「突出部の幅は、0.1mm以上、0.2mm以下」とする点について検討する。
すると、引用発明の積層セラミックコンデンサは長手方向に4個のコンデンサを構成するものであるから、内部電極の容量形成電極部は電気的分離のための隙間をもって、長手方向寸法に略等間隔に4個並設されていることが引用例の【図1】、【図13】から明らかである。
上記相違点1の判断で述べたように、引用発明の3216タイプの積層セラミックコンデンサを、より小型の1608タイプとした場合、内部電極の容量形成電極部の幅は、1.6mmの長さの略等間隔に4つに分けた0.4mmより小さくなることは自明なことである。
引用発明の引出し電極部の幅寸法は、容量形成電極部に比べて小さいものであって、引用例の【図1】、【図13】を見れば、およそ容量形成電極部の幅の1/3程度であるから、1608タイプとした引用発明の引出し電極部(本願発明の「突出部」に相当)の幅寸法は、およそ0.4/3≒0.13mmを越えない程度であり、電極間の隙間を考慮しても、本願発明の「0.1mm以上、0.2mm以下」の範囲内となり得るものである。
したがって、相違点2前段において「前記内部電極の突出部の幅は、0.1mm以上、0.2mm以下であり、」とした点は、当業者が適宜になし得ることであって、格別のことではない。

また、相違点2後段において「前記内部電極の突出部の幅は、・・・前記突出部が形成された内部電極の幅方向の端から前記突出部までの距離の2倍より大きく、4倍より小さく」する点について検討すると、
本願明細書【0033】、【図5】によれば「内部電極の突出部Aの幅d」、「突出部Aが形成された内部電極の一側面から突出部Aまでの距離e」とあるから、この標記によれば上記相違点2後段の条件は、
2e < d < 4e ・・・(式1a)
なる不等式で表される。
ここで、内部電極本体(引用発明の「容量形成電極部」相当)の幅を本願明細書【図5】にならって「a」とすれば、上記不等式の下限と上限において、
a=4e、 a=6e ・・・(式1b)
が成り立ち、上記不等式を辺々aで除せば、
1/2 < d/a < 2/3 ・・・(式1c)
を得る。
これは前段で述べた本願発明の「0.1mm以上、0.2mm以下」の突出部の幅の範囲が(電極間の隙間を無視してa=0.4mmとすれば)概略、
1/4 ≦ d/a ≦ 1/2 ・・・(式2a)
に相当することを考慮すると、範囲の異なる別の条件であるから、相違点2を構成する前段、後段の2つの条件は択一的な要件であって、前述のように1608タイプとした引用発明が0.4/3≒0.13mmを越えない程度であり、本願発明にかかる相違点2前段の「0.1mm以上、0.2mm以下」の条件を充足する以上、実質的な相違点はない。

更に言うならば、本願発明の「0.1mm以上、0.2mm以下」の突出部の幅の範囲は、電極間の隙間をも考慮するならば、例えばa=0.3mmとして、
1/3 ≦ d/a ≦ 2/3 ・・・(式2b)
に相当することとなり、この場合相違点2前段の要件と後段の要件は実質重複するものとなるから、格別のことではない。

なお、最初に述べたように「引出し電極」である「突出部」の幅は、当業者であれば必要に応じて適宜設定可能な設計的事項であるから、例えば外部電極との充分な接続の確保などのため、引用発明の「前記引出し電極部の幅寸法は、前記容量形成電極部に比べて小さく」する範囲内において、より広い幅とするのも適宜のことであって、この観点からも相違点2後段の要件は格別のことではない。


したがって、全体としても相違点2は格別のことではない。


最後に相違点3の、「前記内部電極グループの容量は夫々1uF±10%以上である」点について検討する。
引用例の上記ア.【0006】に「積層セラミックコンデンサの静電容量は、内部電極の重なり面積、内部電極に挟まれた誘電体層の有効層数、誘電体層の厚みおよび誘電体層の比誘電率によって決定される。」とあるように、「積層セラミックコンデンサの静電容量」は当業者が必要に応じ設定すべき設計的事項であって、多連形の積層セラミックコンデンサの各コンデンサを構成する「内部電極グループ」の容量についても同様である。

更に言うならば、例えば特開2005-307229号公報【0039】には、「JIS規格がC1608JB1A105Kのコンデンサ、すなわち1.6mm×0.8mm×0.8mmのサイズで10μFの容量を得るコンデンサを試作した。」とあり、
また、「世界最小! 積層セラミックコンデンサ 1608サイズ 10μF 25V定格品の開発」(平成22年2月18日、(株)村田製作所発表、URL http://www.murata.co.jp/new/news_release/2010/0218/)とあるように、1608サイズの積層セラミックコンデンサにおいて、10μFの容量を有するものは周知である。
引用発明は、4個の並設されたコンデンサからなる4連形の積層セラミックコンデンサであり、上記周知技術を適用して1個のコンデンサ(内部電極グループ)が1/4の容量を分担するとすれば、10μF/4=2.5μFであるから、「内部電極グループの容量は夫々1uF以上」とするのは容易なことに過ぎない。
また、本願明細書を参照しても、この点に特段の技術的意義を見い出せず、格別の臨界的意義を有するものとも認められない。
したがって、相違点3も格別のことではない。

結局、上記各相違点は、いずれも格別なものではなく、また、上記各相違点を総合的に検討しても、奏される効果は当業者が当然に予測できる範囲内のものと認められる。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-12 
結審通知日 2014-05-13 
審決日 2014-05-27 
出願番号 特願2011-22094(P2011-22094)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 大介  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 萩原 義則
石井 研一
発明の名称 積層型セラミックスキャパシタ  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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