ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 H01S 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 H01S 審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 H01S 審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 H01S 審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更 H01S 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) H01S |
---|---|
管理番号 | 1292940 |
審判番号 | 無効2011-800202 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2011-10-07 |
確定日 | 2014-09-30 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3933592号発明「窒化物系半導体素子」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件の概要及び経緯 1 本件の概要 本件は、請求人(日亜化学工業株式会社)が、被請求人(三洋電機株式会社)が特許権者である特許第3933592号(以下、「本件特許」という。特許登録時の請求項の数は8である。)の請求項1?8に係る発明についての特許を無効とすることを求める事案である。 なお、本審決において、摘記箇所を行により特定する場合、行数は空行を含む。 2 出願の経緯概要 本件特許の出願の経緯概要は、次のとおりである。 平成14年 3月26日 先の出願(特願2002-85085号) 平成15年 3月19日 本件出願(優先権主張、特願2003-74966号)(以下、「本願」という。) 平成18年12月25日 手続補正書 平成19年 1月30日 特許査定 平成19年 3月30日 設定登録(特許第3933592号) 平成19年 6月20日 特許公報発行 3 本件審判の経緯 本件審判の経緯は、次のとおりである。 平成23年10月 7日 特許無効審判請求 平成23年12月26日 答弁書、訂正請求書 平成24年 2月24日 審理事項通知書(合議体) 平成24年 3月28日 口頭審理陳述要領書(請求人) 平成24年 4月11日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成24年 4月25日 口頭審理 平成24年 5月14日 上申書(請求人) 平成24年 5月28日 上申書(被請求人) 平成24年 7月 3日 上申書(請求人) なお、請求人が平成24年3月28日付けで提出した口頭審理陳述要領書(13ページ1行目から15ページ27行目、25ページ18行目から30ページ2行目、35ページ17行目から37ページ17行目、及び、37ページ19行目から38ページ8行目)による請求の理由の補正については、同年4月25日の口頭審理において、特許法第131条の2第2項の規定に基づき、許可しないと決定した。 第2 訂正請求についての当審の判断 1 訂正請求の内容 被請求人は、平成23年12月26日に訂正請求書を提出して訂正を求めた(以下、「本件訂正」という。)。本件訂正の内容は、本件特許発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、以下の事項をその訂正内容とするものである(訂正による変更部分に当審で下線を付した。)。 (1)訂正事項1 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1を次のとおり訂正する。 (本件訂正前) 「【請求項1】 ウルツ鉱構造を有するn型の窒化物系半導体層および窒化物系半導体基板のいずれかからなる第1半導体層と、 前記第1半導体層の裏面上に形成されたn側電極とを備え、 前記第1半導体層の前記n側電極との界面近傍における転位密度は、1×10^(9)cm^(-2)以下であり、 前記n側電極と前記第1半導体層との界面において、0.05Ωcm^(2)以下のコンタクト抵抗を有する、窒化物系半導体素子。」 (本件訂正後) 「【請求項1】 ウルツ鉱構造を有するn型の窒化物系半導体基板からなる第1半導体層と、 前記第1半導体層の裏面上に形成されたn側電極とを備え、 前記第1半導体層の前記n側電極との界面近傍における転位密度は、1×10^(9)cm^(-2)以下であり、 前記n側電極と前記第1半導体層との界面において、0.05Ωcm^(2)以下のコンタクト抵抗を有する、窒化物系半導体素子。」 (2)訂正事項2 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項5を次のとおり訂正する。 (本件訂正前) 「【請求項5】 前記第1半導体層は、所定の厚さになるまで裏面側が加工された層であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の窒化物系半導体素子。」 (本件訂正後) 「【請求項5】 前記第1半導体層は、所定の厚さになるまで裏面側が加工され、該加工により発生した転位を含む前記第1半導体層の裏面近傍の領域が除去された層であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の窒化物系半導体素子。」 2 訂正の可否に対する判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1について、「n型の窒化物系半導体層および窒化物系半導体基板のいずれかからなる第1半導体層」から「窒化物系半導体層および」及び「のいずれか」を削除し、「n型の窒化物系半導体基板からなる第1半導体層」に限定するものである。そして、これにより、訂正前の請求項1記載の第1半導体層はn型の窒化物系半導体基板へ減縮されることになるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項1は、新規事項の追加ではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項5に対して、新たな発明特定事項を付加するものである。そして、これにより、訂正前の請求項5に記載された窒化物系半導体素子の第1半導体層は、新たな発明特定事項をさらに備える窒化物形半導体素子の第1半導体層へと減縮されることになるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2は、訂正前の明細書の段落【0045】【0046】【0051】【0056】【0058】の記載から導き出すことができる事項であるから新規事項の追加ではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (3)本件訂正についてのむすび したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 両当事者の主張の概要 1 請求人の主張の概要 請求人は、「特許第3933592号の請求項1ないし8に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、本件特許は次の理由により無効とすべきものであると主張している。 (1)本件特許発明1についての無効理由 本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明と同一であるか、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。 (2)本件特許発明2?8についての無効理由 本件特許発明2?8も、甲第2号証に記載された発明と同一であるか、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。 (3)証拠方法 請求人が提出した甲第1号証ないし甲第33の2号証(以下、それぞれ「甲1」?「甲33の2」という。)は次のとおりである。 甲1:特許第3933592号公報(本件特許) 甲2:特開2001-148357号公報 甲3:特開2000-340511号公報 甲4:特開2000-223779号公報 甲5:特開2000-223790号公報 甲6:特開2001-102690号公報 甲7:特開2001-192300号公報 甲8:特開2002-84040号公報 甲9:特開2001-332817号公報 甲10:平田照二著、「わかる半導体レーザの基礎と応用」、CQ出版株式会社、2001年11月20日発行、112?131ページ、奥付 甲11:奥野保男著、「発光ダイオード」、産業図書株式会社、平成5年1月20日発行、106?113ページ、奥付 甲12:特開2001-176823号公報 甲13:特開2001-85736号公報 甲14:特開2001-313422号公報 甲15:特開2001-322899号公報 甲16:特開2003-51614号公報 甲17:Joon Seop Kwakら著、「Crystal-polarity dependence of Ti/Al contacts to freestanding n-GaN substrate」、APPLIED PHYSICS LETTERS Vol.79、No.20、2001年11月12日発行、3254?3256ページ 甲18:特開2010-67858号公報 甲19:平成23年(ワ)第26676号特許権侵害差止損害賠償等請求事件(原告 三洋電機株式会社、被告 日亜化学工業株式会社)原告第4準備書面(平成24年2月20日付け) 甲20:口頭審理における技術説明で請求人が用いた資料 甲21:結晶成長学辞典編集委員会編、「結晶成長学辞典」、共立出版株式会社、2001年7月25日発行、220?221ページ、奥付 甲22:特開平11-233484号公報 甲23:特開2002-334854号公報 甲24:松永正久ら著、「エレクトロニクス用結晶材料の精密加工技術」、株式会社サイエンスフォーラム、昭和60年1月30日発行、577?584ページ、奥付 甲25:志村忠夫著、「半導体シリコン結晶工学」、丸善株式会社、平成5年9月30日発行、111?114ページ、奥付 甲26:特開2000-252217号公報 甲27:有田潔ら著、「プラズマによるウエハ加工変質層の除去技術」、8th Symposium on “Microjoining and Assembly Technology in Electronics”予稿集、2002年1月31日?2月1日開催、87?92ページ 甲28:大谷昇ら著、「大口径・高品質炭化珪素単結晶基板」、新日鉄技報第374号、2001年発行、32?36ページ 甲29:特開2002-289579号公報 甲30:特表2001-518870号公報 甲31:J. Jasinskiら著、「Characterization of free-standing hydride vapor phase epitaxy GaN」、APPLIED PHYSICS LETTERS Vol.78、No.16、2001年4月16日発行、2297?2299ページ 甲32:G. Nowakら著、「Electrochemical etching of highly conductive GaN single crystals」、Journal of Crystal Growth 222、2001年発行、735?740ページ 甲33の1:平成23年(ワ)第26676号特許権侵害差止損害賠償等請求事件(原告 三洋電機株式会社、被告 日亜化学工業株式会社)原告第5準備書面(平成24年6月15日付け) 甲33の2:特開2001-148357号公報(甲2) 2 被請求人の主張の概要 被請求人は、「本件請求は成り立たない。」との審決を求め、請求人が主張する無効理由はいずれも存在しないと主張している。 被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第4号証(以下、それぞれ「乙1」?「乙4」という。)は次のとおりである。 乙1:特開平11-219910号公報 乙2:陳述書(平成24年4月10日、被請求人従業者作成) 乙3:分析結果報告書(平成24年2月14日、株式会社UBE科学分析センター作成) 乙4:口頭審理における技術説明で被請求人が用いた資料 第4 本件特許発明に対する当審の判断 1 本件特許発明 上記第2のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明8」という。)は、訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 ウルツ鉱構造を有するn型の窒化物系半導体基板からなる第1半導体層と、 前記第1半導体層の裏面上に形成されたn側電極とを備え、 前記第1半導体層の前記n側電極との界面近傍における転位密度は、1×10^(9)cm^(-2)以下であり、 前記n側電極と前記第1半導体層との界面において、0.05Ωcm^(2)以下のコンタクト抵抗を有する、窒化物系半導体素子。 【請求項2】 前記第1半導体層の前記n側電極との界面近傍における転位密度が、1×10^(6)cm^(-2)以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物系半導体素子。 【請求項3】 前記第1半導体層の前記n側電極との界面近傍における電子キャリア濃度は、1×10^(17)cm^(-3)以上である、請求項1または2に記載の窒化物系半導体素子。 【請求項4】 前記第1半導体層の裏面は、前記第1半導体層の窒素面を含む、請求項1?3のいずれか1項に記載の窒化物系半導体素子。 【請求項5】 前記第1半導体層は、所定の厚さになるまで裏面側が加工され、該加工により発生した転位を含む前記第1半導体層の裏面近傍の領域が除去された層であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の窒化物系半導体素子。 【請求項6】 前記第1半導体層のn型ドーパントが酸素であることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の窒化物系半導体素子。 【請求項7】 前記第1半導体層の上面上に、Si、Se及びGeのいずれかがドープされたn型の窒化物系半導体層を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の窒化物系半導体素子。 【請求項8】 前記第1半導体層は、HVPE法を用いて形成されたことを特徴とする請求項1?7のいずれか1項に記載の窒化物系半導体素子。」 2 甲2に記載された発明(以下、「甲2発明」という。) (1)甲2の記載事項 請求人が提出した甲2には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 ア 「【請求項1】 III-N系化合物半導体基板、 前記半導体基板上に形成された複数のIII-N系化合物半導体層、および 前記半導体基板上に形成された前記複数の半導体層に電圧を印加するためのn型電極およびp型電極を備え、 前記半導体基板はn型であり、かつ前記n型電極は、前記半導体基板の窒素終端面上に形成されている、III-N系化合物半導体装置。」 イ 「【0018】典型的に、本発明において、半導体基板中のn型不純物の濃度は、1×10^(17)cm^(-3)?1×10^(21)cm^(-3)の範囲内である。好ましくは、半導体基板中のn型不純物の濃度は、1×10^(17)cm^(-3)?1×10^(19)cm^(-3)の範囲内である。これらの範囲において、n型不純物の濃度は、基板の厚みの方向において一定であってもよいし、変化していてもよい。」 ウ 「【0032】また、基板上にレーザ等の素子構造の作製するため、MOCVD法が好ましく使用される。そのほか、分子線エピタキシー(MBE)法等の他のエピタキシャル成長方法を用いてもよい。MOCVD法に使用される原料には、たとえば、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)、NH_(3)、およびビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp_(2)Mg)がある。これら以外でも、必要な化合物を成長できる原料であれば任意のものを使用することができる。III-N系化合物半導体基板、特にGaN基板、およびレーザ等の素子構造へのドーパントとして、n型の場合は、Si、Ge、Sn、O、S、SeまたはTe、p型の場合は、Mg、Be、Ca、Sr、Ba、ZnまたはCdを使用することができる。」 エ 「【0035】実施例1 以下に示すように、サファイア基板上にH-VPE法によりGaN厚膜を成長させ、得られた厚膜を基板として使用し、図1(a)に示す半導体レーザを調製した。」 オ 「【0039】成長後、研磨によりサファイア基板、MOCVD法によるアンドープGaN膜、SiO_(2)膜を除去し、N終端面が出るまで研磨して、図1(a)に示すGaN基板102を得る。GaN基板の研磨を行った面はN終端面であり、反対側の成長最表面はGa終端面である。 【0040】得られたGaN厚膜を基板として使用し、以下のとおり、MOCVD法により発光素子構造を成長させる。まず、基板をMOCVD装置内に導入し、N_(2)とNH_(3)をそれぞれ5L/min流しながら1050℃まで昇温する。温度が上がればキャリアガスをN_(2)からH_(2)に代えて、TMGを100μmol/min、SiH_(4)を10nmol/min導入して、図1に示すn型GaN層103を4μm成長させる。その後、TMGの流量を50μmol/minに調整し、TMAを40μmol/min導入して、n型Al_(0.1)Ga_(0.9)Nクラッド層104を0.5μmの厚さで成長させる。Al_(0.1)Ga_(0.9)Nの成長が終了すると、TMAの供給を停止し、TMGを100μmol/minに調整して、n型GaN光ガイド層105を0.1μmの厚さになるように成長させる。その後、TMG、SiH_(4)の供給を停止して、キャリアガスをH_(2)からN_(2)に再び代えて、700℃まで降温し、インジウム原料であるトリメチルインジウム(TMI)を10μmol/min、TMGを15μmol/min導入し、In_(0.05)Ga_(0.95)Nよりなる4nm厚の障壁層を成長させる。その後、TMIの供給量を50μmol/minに増加し、In_(0.2)Ga_(0.8)Nよりなる2nm厚の井戸層を成長させる。井戸層は合計3層、同様の手法で成長させ、井戸層と井戸層との間および両側に合計4層の障壁層が存在するような多重量子井戸(MQW)の発光層106を成長させる。MQWの成長が終了すると、TMIおよびTMGの供給を停止して、再び1050℃まで昇温し、キャリアガスを再びN_(2)からH_(2)に代えて、TMGを50μmol/min、TMAを30μmol/min、P型ドーピング原料であるビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp_(2)Mg)を10nmol/min流し、20nm厚のp型Al_(0.2)Ga_(0.8)Nキャリアブロック層107を成長させる。キャリアブロック層の成長が終了すると、TMAの供給を停止し、TMGの供給量を100μmol/minに調整して、0.1μmの厚さのp型GaN光ガイド層108を成長させる。その後、TMGの供給を50μmol/minに調整し、TMAを40μmol/min導入し、0.4μm厚のp型Al_(0.1)Ga_(0.9)Nクラッド層109を成長させ、最後に、TMGの供給を100μmol/minに調整して、TMAの供給を停止し、0.1μm厚のp型GaNコンタクト層110の成長を行い、発光素子構造の成長を終了する。成長が終了すると、TMGおよびCp_(2)Mgの供給を停止して降温し、室温で基板をMOCVD装置より取り出す。 【0041】その後、ドライエッチング装置を用いて、p-GaNコンタクト層110を5μm幅のストライプ状に残し、p-Al_(0.1)Ga_(0.9)N光ガイド層109までエッチングを行い、光導波路を形成する。次いで、p-GaN部分にPdを150Å、Auを1000Å順次蒸着して、p型電極111を形成する。また、基板温度を200℃程度に保ち、GaN基板のN終端面102Aに、Tiを厚さ150Å、Alを1000Å順次蒸着し、n型電極101を形成する。最後に、素子長が約1mmとなるように、劈開あるいはドライエッチング法を行い、ミラーとなる端面を形成する。」 カ 「【0052】また、レーザの作製に使用したGaN基板のN終端面側にn電極を形成し、Trans Mission Line Model(TLM)法により、不純物濃度に対する接触比抵抗を調べた。これは、測定サンプルが面内で均一であると仮定して、電極間距離依存性から接触比抵抗を求める方法である。今回は、Ti(150Å)/Al(1000Å)、サイズ300μm、間隔10?100μmの電極パッドパターンを使用した。 【0053】図10は、GaN基板中の不純物濃度と接触比抵抗との関係を示す。不純物濃度が1×10^(17)cm^(-3)を超えると接触比抵抗が1×10^(-5)Ω・cm^(2)以下となり、その後は不純物濃度の増加とともに比抵抗は下がっていく。」 キ 「【0055】実施例3 以下に示すように、GaN基板のキャリア濃度を厚さ方向に変化させ、レーザ素子を調製した。図11(a)に、作製されたGaN系化合物半導体のレーザの断面図、図11(b)に、GaN基板の厚み方向の不純物濃度プロファイルを示す。ここで使用されるGaN基板1002は、Si高ドープGaN層1002a(Si不純物濃度:8.0×10^(18)cm^(-3))と、Si通常ドープGaN層1002b(Si不純物濃度:3.8×10^(18)cm^(-3))とからなる。n型電極1001は、基板1002のN終端面1002Aに形成されている。n型電極1001に接触するN終端面を形成するGaN層1002aは、レーザ構造に接触するGaN層1002bよりも高い不純物濃度を有する。以下に製造プロセスを示す。」 ク 「【0088】このようにして得られたレーザ素子の閾値電圧および閾値電流密度は、それぞれ5V程度、1.0kA/cm^(2)程度という低い値であった。このようにn型不純物としてSiだけでなくGeも使用できることがわかる。また、Oもn型不純物として利用でき、実際効果を確認している。具体的には、H-VPE法において、HClガスに含まれるO量を調整したり、GaN成長中に酸素ガスを流して膜中にOを導入することができる。」 ケ 図1、図10、図11はそれぞれ次のとおりである。 【図1】 【図10】 【図11】 (2)甲2発明 前記摘記事項ア?ケを含む甲2の全記載からみて、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。 「n型のGaN基板と、 前記GaN基板のN終端面側に形成されたn電極とを備え、 前記n電極と前記GaN基板との界面において、接触比抵抗が1×10^(-5)Ω・cm^(2)以下である、III-N系化合物半導体装置。」 3 対比・判断 (1)本件特許発明1について A 本件特許発明1と甲2発明の一致点、相違点 そこで、本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明(この段落において、以下、「前者」という。)の「n型のGaN基板」は本件特許発明1(この段落において、以下、「後者」という。)の「ウルツ鉱構造を有するn型の窒化物系半導体基板からなる第1半導体層」に相当し、前者の「前記GaN基板のN終端面側」は後者の「前記第1半導体層の裏面上」に相当し、前者の「n電極」は後者の「n側電極」に相当し、前者の「接触比抵抗」は後者の「コンタクト抵抗」に相当し、前者の「n型のGaN基板」を備えた「III-N系化合物半導体装置」は後者の「窒化物系半導体素子」に相当する。 したがって、本件特許発明1と甲2発明とは、次の一致点において一致し、次の相違点において相違する。 [一致点] 「ウルツ鉱構造を有するn型の窒化物系半導体基板からなる第1半導体層と、 前記第1半導体層の裏面上に形成されたn側電極とを備え、 前記n側電極と前記第1半導体層との界面において、0.05Ωcm^(2)以下のコンタクト抵抗を有する、窒化物系半導体素子。」 [相違点] 本件特許発明1においては、「前記第1半導体層の前記n側電極との界面近傍における転位密度は、1×10^(9)cm^(-2)以下」であるのに対し、甲2発明においては、前記GaN基板の前記n電極との界面近傍における転位密度は不明である点。 B 甲各号証(甲1、甲2、甲19?甲21を除く)に記載された事項の概要 ア 甲3 HVPE法等を使って得られた高品質のGaN基板の転位密度が従来10^(5)?10^(7)cm^(-2)であったこと(【0005】)、さらに転位密度を低減させた成長方法を採用したところGaN半導体結晶層の転位密度が10^(2)cm^(-2)まで低下したこと(【0028】【0029】)等が記載されている。 イ 甲4 HVPE法を使って得られたn型GaN基板の転位密度が10^(4)cm^(-2)以下であったこと(【0024】)等が記載されている。 ウ 甲5 HVPE法を使って得られたn型GaN基板の転位密度が10^(4)cm^(-2)以下であったこと(【0026】)等が記載されている。 エ 甲6 HVPE法を使って得られたn型GaN基板の転位密度が10^(4)cm^(-2)以下であったこと(【0011】)等が記載されている。 オ 甲7 HVPE法を使って得られたGaN基板の表面及び裏面を研磨してエピタキシャル成長用の基板に加工し、断面TEM観察したところ、貫通転位密度は10^(4)cm^(-2)と見積もられたこと(【0043】)等が記載されている。 カ 甲8 窒化物半導体基板は、一般に転位密度が低く、例えば、その転位密度は10^(7)cm^(-2)以下であること、したがって、窒化物系半導体基板を用いることにより、貫通転位密度の少ない(貫通転位密度が約3×10^(7)cm^(-2)以下)、結晶性のよい窒化物半導体発光素子を作成できること、擬似窒化物系半導体基板を用いる場合、他の結晶材料上に成長させられた窒化物半導体結晶膜の転位密度は10^(7)cm^(-2)以下であることが好ましいこと、貫通転位密度は透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することができること(【0011】)等が記載されている。 キ 甲9 表面転位密度が10^(8)cm^(-2)未満の窒化ガリウム系材料からなる下地層を用い、この上にクラッド層及び活性層を積層させた窒化物半導体素子(【0029】)等が記載されている。 ク 甲10 半導体レーザの作成方法において、ウエハ裏面にn側電極を付ける前にウエハを研磨し厚さ100μm程度にし、研磨後表面をエッチングできれいに整え、金の薄膜を真空蒸着で取り付けてn側電極プロセスを終了すること(115ページ16行?21行)、劈開前にラッピングによって基板を削り、厚さを約100μmにし、ラッピング後の表面は非常にざらざらしていて表面状態が悪いので、全面を硫酸などのエッチング液で数μmさらにエッチングし、そのあとで裏面側の電極を蒸着すること(121ページ12行?20行)等が記載されている。ただし、例示されているのはGaAs系であり、窒化物半導体素子の作成方法ではない。 ケ 甲11 材料を特定しない発光ダイオードのアセンブリ技術において、結晶成長後の結晶の裏面をラッピングにより目的とする厚さに調整し、バフ上でポリッシングを行い、有機溶媒中などで超音波洗浄し、最後に表面の加工歪を取り除くために化学エッチングが施される場合もあり、この結晶上にオーミック性の電極として適合する金属を蒸着すること(107ページ8行?19行)等が記載されている。 コ 甲12 ウエハのGaN基板側を研磨機により研磨して厚さを100μmにし、鏡面出しをし、次に、フッ酸又は熱燐酸を含む硫酸からなる混合溶液で、前記ウエハをエッチング処理すること、前記エッチング処理は研磨によって生じた表面歪及び酸化膜を除去し、p型、n型電極のコンタクト抵抗の低減と電極剥離を防止するために行うこと(【0040】)等が記載されている。 サ 甲13 ウエハのGaN基板側を研磨機により研磨して厚さを150μmにし、鏡面出しをし、次に、フッ酸又は熱燐酸を含む硫酸からなる混合溶液で、前記ウエハをエッチング処理すること、前記エッチング処理は研磨によって生じた表面歪及び酸化膜を除去し、p型、n型電極のコンタクト抵抗の低減と電極剥離を防止するために行うこと(【0040】)、ウエハのGaN基板側を研磨機により研磨して厚さを100μmにし、鏡面出しをし、次に、フッ酸又は熱燐酸を含む硫酸からなる混合溶液で、前記ウエハをエッチング処理すること、前記エッチング処理は研磨によって生じた表面歪及び酸化膜を除去し、p型、n型電極のコンタクト抵抗の低減と電極剥離を防止するために行うこと(【0095】、【0271】)等が記載されている。 シ 甲14 サファイアC面を基板として用い、バッファ層を介してn型窒化物半導体層、活性層等を形成すること(【0048】)、その後、前記基板を前記n型窒化物半導体層が露出するまで研磨すること、n型窒化物半導体層の研磨によりダメージを受けた領域をRIEにて1?2μm程度エッチングを行うこと、その後、露出した前記n型窒化物半導体層にn電極を形成すること(【0054】)等が記載されている。 ス 甲15 窒化ガリウム半導体基板を粒径が非常に小さい砥粒を用いて研磨速度を徐々に遅くしながら表面を研磨することにより、基板の表面平坦性が大幅に改善されること(【0016】)、研磨後の窒化ガリウム系半導体基板は、研磨によって表面に物理的なダメージを受けているため、表面ダメージ層が発生していること(【0078】)、RIE(反応性イオンエッチング装置)を用いて、低いエッチングレートで基板の表面をエッチングし、表面ダメージ層を除去すること(【0080】【0081】)により、研磨直後のピットの少ない、かつ平坦性のすぐれた表面を維持した状態で、基板表面の結晶性が改善されることを見出したこと(【0017】【0082】【0083】)等が記載されている。 セ 甲16 本件特許の優先日より後に公開された特許公報である。 研磨過程でGaN基板の下面部が損傷するので、前記下面部にダメージ層が形成されること(【0006】)、機械的に研磨されたn型GaN基盤の下面部に形成されたダメージ層は、乾式又は湿式エッチングによって除去されること、ダメージ層を完全に除去するため、前記乾式又は湿式エッチングは、ダメージ層が除去されると見積もった時間よりも長い時間実施されることが望ましいこと(【0036】)等が記載されている。 ソ 甲17 GaNウエハは、平滑なエピレディ面を得るため、Ga面とN面の両方を、機械研磨とドライエッチ処理したこと(3254ページ右欄6行?8行)、Ga面及びN面ともに、標準的な転位密度は10^(7)cm^(-2)よりも低かったこと(3254ページ右欄13行?15行)、n型GaNのGa面の電極の場合、アニール温度が500℃から600℃に上昇するにつれて電流が大幅に増加し、600℃?800℃で30秒アニールした後、TLMから計算された接触抵抗率は2×10^(-5)Ωcm^(2)であったこと(3255ページ右欄1行?5行)等が記載されている。 タ 甲18 本件特許の優先日より後に公開された特許公報である。 n型GaN基板が所定の厚みを有するようにn型GaN基板の下面を研磨し、研磨によるダメージ層をドライエッチングにより除去した後、n型GaN基板11の下面上にn側電極を形成すること(【0028】【0075】)等が記載されている。 チ 甲22 湿式エッチングを施すことにより、単結晶シリコンインゴットから基板をスライスして切り出すときに基板表面の深さ数十μmの領域にまで生成される結晶構造の歪である加工歪を取り除くと同時に基板表面に凹凸構造を形成する方法が知られていること(【0008】)、第一工程は、基板表面の深さ数十μmの領域にまで生成された加工歪、及び表面の付着物を除去することが目的であるので、基板表面の深さ数十μmの領域までエッチング除去する工程であることが望ましいこと(【0020】)等が記載されている。 ツ 甲23 本件特許の優先日より後に公開された特許公報である。 半導体装置の製造方法において、#2000程度の砥石を用いたグラインド研削により所望の厚みとされたシリコンウエハは、その表面が加工欠陥や不完全結晶域を含む加工歪層となっていること(【0006】)、シリコンウエハの表面を化学的・機械的ポリッシング法(CMP)により鏡面加工して、グラインド研削による加工歪層を除去すること(【0007】)、グラインド研削工程における加工欠陥や不完全結晶領域である加工歪層が残っていると、デバイス形成後に加工欠陥によりリーク電流が大きくなり、デバイス特性を劣化させてしまうこと(【0009】)等が記載されている。 テ 甲24 エレクトロニクス用結晶材料の加工方法として、グラインディングとポリッシングがあり、その両者とも適用対象は単結晶、多結晶、非晶質であり、被加工系への影響として加工面付近の塑性変形があり、エッチングとの併用があること(577ページの表-1)、単結晶表面に対し、前記表-1に示す加工を行ったとすると、モデル的には、1クラック層、2モザイク層、3多結晶層(均等分布構造)、4多結晶層(双晶構造)、5多結晶層(異方構造)、6非晶質層が、単独あるいはそのいくつかが組み合わさって生ずると考えられること(578ページ右欄22行?579ページ左欄12行)等が記載されている。 ト 甲25 ブロック切断、外径研削、スライシング、ラッピングの機械加工プロセスを経たシリコンウエハは表面にダメージ層すなわち加工変質層を有していること(111ページ2行?3行)、機械加工プロセスでシリコンウエハに導入された加工変質層は化学エッチングによって完全に除去されること(111ページ16行?17行)等が記載されている。 ナ 甲26 GaN単結晶基板上に形成された窒化物系半導体層を備える化合物半導体の製造方法に関する。GaN単結晶基板の研磨時に基板表面にダメージが導入され、このダメージを含む加工変質層はデバイスの特性に悪影響を与えること、加工変質層を除去するためには、化学研磨やメカノケミカル研磨を用いる必要があるが、加工変質層を完全に除去することは難しく、特に、研磨キズ部に入ったやや深い加工変質層は除去が難しいこと(【0044】)等が記載されている。 ニ 甲27 シリコンウエハの加工変質層の除去技術に関する。ウエハの薄型加工は、主に、ウエハを機械的に研削するグラインディング工程と、グラインディング時にウエハに導入されたマイクロクラック等を含むストレス層(加工変質層)を除去するストレスリリーフ工程からなっていること(87ページ左欄8行?15行)、グラインディング処理後、フッ素系ガスによるプラズマエッチングによってウエハ裏面に導入された加工変質層の除去を行うこと(第87ページ右欄第2行?第16行)、プラズマストレスリリーフする前後で透過型電子顕微鏡により断面観察した写真に示すように、最終仕上げ#2000でグラインディング処理されたままのウエハには、厚さ約0.2μmの加工変質層が観察されたこと(88ページ左欄1行?19行、Fig.2)等が記載されている。 ヌ 甲28 炭化珪素(SiC)単結晶基板開発に関するものである。ダメージのない高平坦な表面を得るには、メカノケミカル研磨(CMP)が通常用いられていること、表面酸化とCMPを組み合わせた方法を採用すると、50nm程度あった加工損傷層は、酸化によりその大部分が酸化膜となり、CMPにより簡単に除去できること、酸化+CMPにより得られた基板表面の断面TEM写真と、ダイヤモンド研磨のみのものを比較すると、ダイヤモンド研磨で取りきれていなかった基板表面の加工損傷層が酸化+CMPにより取り除かれていること(34ページ左欄27行?同ページ右欄10行、図3)等が記載されている。 ネ 甲29 本件特許の優先日より後に公開された特許公報である。 GaN結晶表面の平坦性、基板厚の均一性、厚み精度の要求からCMPによる研磨加工・仕上げは必然的なものであるが、特にHVPE法により厚膜成長したGaN結晶の場合、CMPによる研磨加工・仕上げの必要性は顕著に高まること(【0018】)、しかし、CMPによる研磨加工・仕上げ加工は、GaN結晶表面に大きな損傷を与えること(【0019】)、エッチングガスを用いたエッチングを行うことによって、処理後に損傷を残さないように、GaN結晶の表層を好適に除去し得ること(【0020】)、ガスエッチングによるGaN結晶のうちの表層の除去は、GaN結晶層のうちの表面から0.01μm?10μm程度の厚さまでを除去することが好ましいが、研磨損傷は数十μm入っている場合もあり、対象とするGaN基板表面の損傷深さに応じて、適宜、除去すべき表層の厚さを決定すればよいこと(【0026】)、HVPE法で厚膜成長された後、MCPによって鏡面研磨仕上げされたGaN基板を平行平板型RIE装置に装填して、厚さ2.5μmの表層を除去するガスエッチング処理を行ったこと(【0052】)等が記載されている。 ノ 甲30 GaN単結晶の基板表面をダイヤモンドマイクロパウダーで研磨するとともに高温アニール処理するとエピタキシャル層の成長に重大な悪影響を与える好ましくない欠陥表面が生成されること、機械・化学研磨として、化学エッチング処理剤の存在下においてソフトパッドで研磨することにより、他の結晶の不規則表面を除去する方法が知られていること(3ページ9行?24行)、本発明の利点は原子単位での平滑性を達成し得ることであること(4ページ10行?11行)、GaN六方板状結晶の表面は、ダイヤモンドマイクロパウダーを用いて、数個の原子間隔単位まで平滑となるように機械的に研磨され、このようにして得られた平滑領域は、およそ100原子間隔の深さのスクラッチ間において形成されること(4ページ20行?28行)、さらに、この研磨は、高い位置ずれ密度を有する欠陥度の大きい結晶を含む厚さ数ミクロンの隣接層を生成すること(4ページ29行?5ページ1行)、次いで、結晶の表面は、エッチング溶液で飽和している研磨クロスで覆われた研磨パッドで研磨され、その際、研磨クロス上に1秒間当たり1滴の割合で化学的薬剤を連続的に加えながら研磨が行われること(5ページ2行?12行)等が記載されている。 ハ 甲31 HVPE法で成長させたGaNテンプレートを透過電子顕微鏡(TEM)で特性評価し、断面TEM、平面TEMにより測定したN面近傍の転位密度は、それぞれ3±1×10^(7)cm^(-2)、4±1×10^(7)cm^(-2)であったこと(2297ページ要約)、GaN層を機械研磨し、Ga面をドライエッチして平滑なエピレディー面としたのに対して、N面はメカノケミカルポリッシングのみとしたこと(2297ページ左欄21行?26行)、断面TEMから、N面(基板側)は比較的悪質であることが判明し、表面粗さは約0.1μmであり、約0.2?0.3μmの表面下層は激しくダメージを受けており、多くの欠陥を含んでいたこと(2298ページ左欄5行?9行)等が記載されている。 ヒ 甲32 バルクGaNサンプルを用い、Ga面はダイヤモンド粒子で機械研磨することにより作成し、TEMで観察したところ、機械研磨で深さ200nmのワークダメージが入っていたこと(736ページ左欄第24行?40行)、このエッチング方法は、GaN結晶のダイヤモンド研磨によって生じた残留ワークダメージの除去に使用できると判断したこと(739ページ右欄41行から44行)等が記載されている。 C 相違点についての判断 a 甲3?甲33の2のうち、甲19及び甲33の1は本件特許権の侵害差止損害賠償等請求事件における原告(本件被請求人)の準備書面であり、甲20は口頭審理における技術説明で請求人が用いた資料であり、甲21は技術用語の解説であり、甲33の2は甲2と同じものである。 また、甲16、甲18、甲23、甲29は本件特許の優先日より後に公開された特許公報である。本件特許発明1は、優先権主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載された発明であるから、特許法第41条第2項の規定により、本件特許発明1についての同法第29条の規定の適用については、本件特許出願は先の出願の時、つまり優先日にされたものとみなされる。 したがって、相違点についての判断に当って採用すべき証拠は、甲3?甲15、甲17、甲22、甲24?甲28、甲30?甲32である。 b 甲10は、GaAs系に関するものであり、甲11は材料を特定しない発光ダイオードに関するものである。また、甲22、甲25、甲27、甲28はシリコンや炭化珪素の加工技術に関するものであり、甲24は材料を特定しないエレクトロニクス用結晶材料の加工方法に関するものである。これら各号証に記載された事項が、ウルツ鉱構造を有するn型の窒化物系半導体基板にそのまま適用できるとすべき理由はない。 c 甲3?甲9については、甲3に記載されているのは、GaN基板の転位密度(【0005】)及びGaN半導体結晶層の転位密度(【0028】、【0029】)であり、甲4(【0024】)、甲5(【0026】)、甲6(【0011】)に記載されているのはGaN基板の転位密度であり、甲7(【0043】)に記載されているのはGaN基板の貫通転位密度であり、甲8(【0011】)に記載されているのは窒化物半導体基板の貫通転位密度及び他の結晶材料上に成長させられた窒化物系半導体結晶膜の転位密度であり、甲9(【0029】)に記載されているのは窒化物半導体素子の表面転位密度であって、いずれにも、n型の窒化物系半導体基板の裏面上に形成されたn側電極との界面近傍における転位密度どころか、窒化物系半導体基板の裏面の転位密度すら示されていない。 d 甲12?甲15、甲17、甲26、甲30?甲32の各号証に、表面のクラック等よりもさらに深いところまで伸びている転位をエッチングにより除去することが、明記されているとは認められない。 また、これら各号証により、GaN又は窒化物系半導体の単結晶に研磨等の機械加工を加えた後、エッチングすることにより加工面のダメージ層を取り除き整えることが常套手段であり、本件特許の優先日当時、周知技術となっていたことが認められるとしても、研磨やエッチングをどの程度の深さまで進めるか(どの程度の深さで止めるか)についての設定基準が周知又は公知であったと認めることはできない。 さらには、ウルツ鉱構造を有するn型の窒化物系半導体基板において機械加工面をエッチングする際に、転位が伸びている深さまでエッチングを進めるとともに、どの程度の深さまでエッチングするかの基準を、加工面における転位密度が特定の値以下になることに設定するという思想が、本件特許の優先日前に公知であったことを示す証拠は提示されていない。 e 仮に、GaN単結晶の加工法において、研磨加工後にエッチングを施すことは周知技術であるから、甲2発明においても研磨加工後のエッチングは当然実施されている、あるいは、甲2発明に研磨加工後のエッチングを採用することが当業者にとって容易であると仮定しても、本件特許発明の課題の認識がない以上、エッチングを加工面の転位密度が特定の値以下(具体的には1×10^(9)cm^(-2)以下)になる深さまで進めるという着想に至ることはできないのであり、該着想を持たずに、当業者が甲2発明において研磨加工後にエッチングを施したとしても、必ずしも、GaN基板のN終端面の転位密度が1×10^(9)cm^(-2)以下の窒化物系半導体素子は得られないのである。 f したがって、前記相違点に係る本件特許発明1の構成が、甲各号証に記載されているとも、前記構成が甲各号証の記載事項により本件特許の優先日当時周知の技術となっていたとも認められないから、本件特許発明1は甲2発明及び甲各号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。 D 本件特許発明1が甲2の記載事項から新規性を欠如するとの主張について a 請求人は、本件特許発明1は甲2の記載事項から新規性を欠如すると主張している(平成24年5月14日付け上申書5.(3)エ(第19ページ?21ページ)参照。)ので、これについて検討する。 b 本件特許発明1の実施例と甲2発明とを対比すると、不純物濃度、電極の材質、電極の接着条件は一致する。そして、転位密度以外の条件が通常の条件であれば、本件特許発明の転位密度以下にすることでコンタクト抵抗も自ずと本件特許発明のコンタクト抵抗以下になるはずであるから、N終端面側に形成したn電極の接触比抵抗が1×10^(-5)Ωcm^(2)である甲2発明において、GaN基板のN終端面の転位密度が1×10^(9)cm^(-2)以下である蓋然性が高いと請求人は主張している。 c しかしながら、不純物濃度、電極の材質、電極の接着条件はコンタクト抵抗に影響を与える条件だとしても、それらがコンタクト抵抗に影響を与える条件のすべでではなく、その外にも条件がある。そして、本件訂正発明1と甲2発明とはその外の条件までが一致するか否かは不明なのであるから、甲2発明において、GaN基板のN終端面の転位密度は、必ずしも1×10^(9)cm^(-2)以下の範囲に入っているとはいえない。 よって、本件訂正発明1と甲2発明とが同一であるとはいえない。 d 請求人は、さらに、被請求人が甲33の1において「転位の除去」は「コンタクト抵抗低下」の必要条件であることを述べており、そうであるとすれば、甲2発明では、コンタクト抵抗が本件訂正発明1よりもはるかに低くなっているのであるから、転位密度が本件訂正発明1の数値範囲に入る(甲2発明が前記相違点に係る本件訂正発明1の構成を充足する)ことに異論の余地はないと主張している(平成24年7月3日付け上申書)ので、これについて検討する。 e 甲33の1の17ページ7行?18行において、被請求人は、機械研磨によって転位密度が高くなった状態では、転位の除去を行うことで所望のコンタクト抵抗値が実現可能となるということを定性的に述べているに過ぎず、これを、本件訂正発明1の転位密度の数値範囲(1×10^(9)cm^(-2)以下)を充たさない限り、本件訂正発明1のコンタクト抵抗の数値範囲(0.05Ωcm^(2)以下)を充たさないとの意味に解釈することはできない。 すなわち、仮に、被請求人は甲33の1において「転位の除去はコンタクト抵抗低下の必要条件である」ことを述べていると認めることができるとしても、「転位密度が1×10^(9)cm^(-2)以下となるまで除去することがコンタクト抵抗低下の必要条件である」ことを述べているとまでは認めることはできない。当該被請求人の主張を前提として、甲2発明との関係でいうと、甲2発明は、コンタクト抵抗が低いことから、転位の除去を行っているのかもしれないが、そうだとしても、転位密度が1×10^(9)cm^(-2)以下となるまで除去したかどうかはわからないということになる。 したがって、甲33の1の被請求人の主張を根拠にして、甲2発明は、コンタクト抵抗が本件訂正発明1の数値範囲を充たしているから、本件訂正発明1の転位密度の数値範囲を充たす(すなわち、前記相違点に係る本件訂正発明1の構成を充足する)ということはできない。 よって、平成24年7月3日付け上申書における請求人の主張を採用することはできない。 (2)本件特許発明2?6及び本件特許発明8について 本件特許発明2?6及び本件特許発明8は、優先権主張の基礎とされた先の出願の当初明細書等に記載された発明であるから、特許法第41条第2項の規定により、本件特許発明2?6及び本件特許発明8についての同法第29条の規定の適用については、本件特許出願は先の出願の時、つまり優先日にされたものとみなされる。 本件特許発明1が、甲2発明と同一であるとも、甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないのであるから、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加した本件特許発明2?6及び本件特許発明8が、甲2発明と同一であるとも、甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないことは当然である。 (3)本件特許発明7について A 本件特許発明7のうち、「前記第1半導体層の上面上に、Si及びSeのいずれかがドープされたn型の窒化物系半導体層を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の窒化物系半導体素子。」の発明(以下、「第1の選択発明」という。)は、優先権主張の基礎とされた先の出願の当初明細書等に記載された発明であるから、特許法第41条第2項の規定により、第1の選択発明についての同法第29条の規定の適用については、本件特許出願は先の出願の時、つまり優先日にされたものとみなされる。 本件特許発明1が、甲2発明と同一であるとも、甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないのであるから、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加した第1の選択発明が、甲2発明と同一であるとも、甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないことは当然である。 B 本件特許発明7のうち、「前記第1半導体層の上面上に、Geがドープされたn型の窒化物系半導体層を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の窒化物系半導体素子。」の発明(以下、「第2の選択発明」という。)は、優先権主張の基礎とされた先の出願の当初明細書等に記載された発明であるとはいえない。よって、第2の選択発明についての特許法第29条の規定の適用については、本件特許出願は、現実の出願日にされたものとすべきであり、したがって、甲3?甲15、甲17、甲22、甲24?甲28、甲30?甲32に加えて、甲16、甲18、甲23、甲29も採用すべき証拠となる。 しかしながら、甲16、甲18、甲23、甲29にも、表面のクラック等よりもさらに深いところまで伸びている転位をエッチングにより除去することが明記されているとは認められないから、前記(1)Cで述べた事情は何ら変わらない。よって、第2の選択発明は、甲2発明と同一であるとも、甲2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1?8についての特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 窒化物系半導体素子 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ウルツ鉱構造を有するn型の窒化物系半導体基板からなる第1半導体層と、 前記第1半導体層の裏面上に形成されたn側電極とを備え、 前記第1半導体層の前記n側電極との界面近傍における転位密度は、1×10^(9)cm^(-2)以下であり、 前記n側電極と前記第1半導体層との界面において、0.05Ωcm^(2)以下のコンタクト抵抗を有する、窒化物系半導体素子。 【請求項2】 前記第1半導体層の前記n側電極との界面近傍における転位密度が、1×10^(6)cm^(-2)以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物系半導体素子。 【請求項3】 前記第1半導体層の前記n側電極との界面近傍における電子キャリア濃度は、1×10^(17)cm^(-3)以上である、請求項1または2に記載の窒化物系半導体素子。 【請求項4】 前記第1半導体層の裏面は、前記第1半導体層の窒素面を含む、請求項1?3のいずれか1項に記載の窒化物系半導体素子。 【請求項5】 前記第1半導体層は、所定の厚さになるまで裏面側が加工され、該加工により発生した転位を含む前記第1半導体層の裏面近傍の領域が除去された層であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の窒化物系半導体素子。 【請求項6】 前記第1半導体層のn型ドーパントが酸素であることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の窒化物系半導体素子。 【請求項7】 前記第1半導体層の上面上に、Si、Se及びGeのいずれかがドープされたn型の窒化物系半導体層を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の窒化物系半導体素子。 【請求項8】 前記第1半導体層は、HVPE法を用いて形成されたことを特徴とする請求項1?7のいずれか1項に記載の窒化物系半導体素子。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、窒化物系半導体素子に関し、特に、電極を有する窒化物系半導体素子に関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、窒化物系半導体レーザ素子は、次世代の大容量光ディスク用光源としての利用が期待され、その開発が盛んに行われている。 【0003】 通常、窒化物系半導体レーザ素子を形成する場合、絶縁性のサファイア基板が用いられる。しかし、サファイア基板上に、窒化物系半導体層を形成する場合、サファイア基板と窒化物系半導体層との格子定数の差が大きいので、窒化物系半導体層内に格子定数の差に起因した多数の結晶欠陥(転位)が発生するという不都合があった。その結果、窒化物系半導体レーザ素子の特性が低下するという問題点があった。 【0004】 そこで、従来、窒化物系半導体層との格子定数の差が小さいGaN基板などの窒化物系半導体基板を用いた窒化物系半導体レーザ素子が提案されている。 【0005】 図7は、n型GaN基板を用いて形成された従来の窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。図7を参照して、従来の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスでは、n型GaN基板101上に成長される窒化物系半導体層(102?110)の結晶性を向上させるため、窒化物系半導体層(102?110)は、ウルツ鉱構造を有するn型GaN基板1のGa面((HKLM)面:Mは正の整数)上に成長される。また、ウルツ鉱構造を有するn型GaN基板101の窒素面((HKL-M)面:Mは正の整数)は、裏面として用いられるとともに、このn型GaN基板101の裏面上にn側電極112が形成される。以下、従来の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを詳細に説明する。 【0006】 図7に示すように、約300μm?約500μmの厚みを有するn型GaN基板101の上面(Ga面)上に、MOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;有機金属化学気相成長法)などを用いて、約3μmの厚みを有するn型GaNからなるn型層102と、約100nmの厚みを有するn型In_(0.05)Ga_(0.95)Nからなるn型バッファ層103と、約400nmの厚みを有するn型Al_(0.05)Ga_(0.95)Nからなるn型クラッド層104と、約70nmの厚みを有するn型GaNからなるn型光ガイド層105と、MQW(Multiple Quantum Well;多重量子井戸)構造を有するMQW活性層106と、約200nmの厚みを有するp型Al_(0.2)Ga_(0.8)Nからなるp型層107と、約70nmの厚みを有するp型GaNからなるp型光ガイド層108と、約400nmの厚みを有するp型Al_(0.05)Ga_(0.95)Nからなるp型クラッド層109と、約100nmの厚みを有するp型GaNからなるp型コンタクト層110とを順次形成する。 【0007】 次に、p型コンタクト層110の上面上の所定領域に、p側電極111を形成する。そして、n型GaN基板101の裏面をn型GaN基板101が所定の厚み(100μm程度)になるまで研磨した後、n型GaN基板101の裏面(窒素面)上に、n側電極112を形成する。最後に、n型GaN基板101および各層102?110を劈開することにより、素子分離および共振器端面の形成を行う。これにより、図7に示した従来の窒化物系半導体レーザ素子が完成される。 【0008】 図7に示した従来の窒化物系半導体レーザ素子では、n型GaN基板101の硬度が非常に大きいので、劈開により素子分離および共振器端面の形成を良好に行うのが困難であるという不都合がある。このような不都合に対処するため、劈開工程の前にn型GaN基板の裏面を機械研磨して、n型GaN基板の裏面の凹凸の大きさを小さくすることによって、素子分離および共振器端面の形成を良好に行う方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。 【0009】 【特許文献1】 特開2002-26438号公報 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記特許文献1に開示された従来の方法では、n型GaN基板の裏面を機械研磨する際に、n型GaN基板の裏面近傍に応力が加わる。このため、n型GaN基板の裏面近傍にクラックなどの微細な結晶欠陥が発生するという不都合がある。その結果、n型GaN基板と、n型GaN基板の裏面(窒素面)上に形成されたn側電極とのコンタクト抵抗が増加するという問題点があった。 【0010】 また、n型GaN基板の窒素面は、酸化されやすいので、これによっても、n型GaN基板の裏面(窒素面)上に形成されたn側電極とのコンタクト抵抗が増加するという問題点があった。 【0013】 この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、 この発明の目的は、窒化物系半導体基板などの窒素面と電極とのコンタクト抵抗を低減することが可能な窒化物系半導体素子を提供することである。 【0024】 【課題を解決するための手段および発明の効果】 上記目的を達成するために、この発明の窒化物系半導体素子は、ウルツ鉱構造を有するn型の窒化物系半導体層および窒化物系半導体基板のいずれかからなる第1半導体層と、第1半導体層の裏面上に形成されたn側電極とを備え、第1半導体層のn側電極との界面近傍における転位密度は、1×10^(9)cm^(-2)以下であり、n側電極と第1半導体層との界面において、0.05Ωcm^(2)以下のコンタクト抵抗を有する。 【0025】 この発明の窒化物系半導体素子では、n側電極と第1半導体層とのコンタクト抵抗を、0.05Ωcm^(2)以下にすることによって、n側電極と第1半導体層とのコンタクト抵抗が低減された良好な素子特性を有する窒化物系半導体素子を得ることができる。 【0026】 上記の窒化物系半導体素子において、好ましくは、第1半導体層のn側電極との界面近傍における電子キャリア濃度は、1×10^(17)cm^(-3)以上である。このように構成すれば、容易に、n側電極と第1半導体層とのコンタクト抵抗が低減された窒化物系半導体素子を得ることができる。 【0028】 上記の窒化物系半導体素子において、好ましくは、第1半導体層の裏面は、第1半導体層の窒素面を含む。 【0035】 上記の窒化物系半導体素子において、第1半導体層は、GaN、BN、AlN、InNおよびTlNからなるグループより選択される少なくとも1つの材料からなるn型の窒化物系半導体層および窒化物系半導体基板を含んでいてもよい。また、n側電極は、Al膜を含んでいてもよい。 【0036】 上記の局面による窒化物系半導体素子において、好ましくは、窒化物系半導体素子は、窒化物系半導体発光素子である。このように構成すれば、窒化物系半導体発光素子において、第1半導体層とn側電極とのコンタクト抵抗を低減することができるので、良好な発光特性を有する窒化物系半導体発光素子を得ることができる。 【0037】 【発明の実施の形態】 以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。 【0038】 図1?図5は、本発明の一実施形態による窒化物系半導体レ-ザ素子の製造プロセスを説明するための断面図および斜視図である。 【0039】 図1?図5を参照して、本発明の一実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。まず、本実施形態では、たとえば、特開2000-44400号公報に開示された方法によりウルツ鉱構造を有する酸素ドープのn型GaN基板1を形成する。具体的には、HVPE法を用いてGaAs基板(図示せず)上に、酸素ドープのn型GaN層を約120μm?約400μmの厚みで形成する。その後、GaAs基板を除去することによって、図1に示されるようなn型GaN基板1を得る。このn型GaN基板1のホール効果測定による基板キャリア濃度は、5×10^(18)cm^(-3)である。また、n型GaN基板1のSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)分析による不純物濃度は、1×10^(19)cm^(-3)である。なお、n型GaN基板1は、本発明の「第1半導体層」の一例である。 【0040】 そして、n型GaN基板1の(0001)面である上面(Ga面)上に、常圧MOCVD法を用いて、約1気圧(約100kPa)の圧力下で、約5μmの厚みを有するn型GaNからなるn型バッファ層2と、約1μmの厚みを有するn型Al_(0.08)Ga_(0.92)Nからなるn型クラッド層3と、InGaNからなるMQW活性層4と、約0.28μmの厚みを有するp型Al_(0.08)Ga_(0.92)Nからなるp型クラッド層5と、約70nmの厚みを有するp型GaNからなるp型コンタクト層6とを順次形成する。 【0041】 なお、MQW活性層4は、約20nmの厚みのGaNからなる4層のバリア層と、約3.5nmの厚みのIn_(0.15)Ga_(0.85)Nからなる3層の井戸層とを交互に積層することにより形成する。また、原料ガスとしては、Ga(CH_(3))_(3)と、In(CH_(3))_(3)と、Al(CH_(3))_(3)と、NH_(3)とを用い、キャリアガスとしては、H_(2)とN_(2)とを用いる。本実施形態では、これらの原料ガスの供給量を変化させることにより、各層2?6の組成を調整している。また、n型バッファ層2およびn型クラッド層3のn型ドーパントとしては、SiH_(4)ガス(Si)を用いる。p型クラッド層5およびp型コンタクト層6のp型ドーパントとしては、Cp_(2)Mgガス(Mg)を用いる。 【0042】 次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、p型コンタクト層6およびp型クラッド層5の一部の領域をエッチングする。これにより、図2に示すように、p型クラッド層5の凸部とp型コンタクト層6とからなる約2μmの幅を有する凸部(リッジ部)を形成する。次に、p型コンタクト層6の上面上に、下から上に向かって、約1nmの厚みを有するPt膜と、約10nmの厚みを有するPd膜と、約300nmの厚みを有するNi膜とからなるp側電極7を形成する。これにより、図2に示したような複数の素子が形成される領域を含む窒化物系半導体レーザ素子構造20が形成される。 【0043】 この後、図3および図4に示すように、n型GaN基板1の(000-1)面である裏面(窒素面)を機械研磨する。この研磨工程に用いる機械研磨装置30は、図3に示すように、平坦な表面を有するガラス基板11と、上下に移動可能で、かつ、R方向に回転可能に支持されたホルダ12と、バフ13とから構成されている。バフ13上には、約0.2μm?約1μmの粒子粗さのダイヤモンド、酸化ケイ素またはアルミナなどからなる研磨剤(図示せず)が配置されている。この研磨剤の粒子粗さは、約0.2μm?約0.5μmの範囲であれば、特に良好に裏面研磨を行うことができる。また、ホルダ12の下面には、図3および図4に示すように、窒化物系半導体レーザ素子構造20が、ワックス14により、ホルダ12と直接接触することのないように間隔を隔てて取り付けられている。これにより、機械研磨に際して、窒化物系半導体レーザ素子構造20が破損するのを防止する。なお、ガラス基板11などに代えて、金属などからなる平坦な研磨盤を用いてもよい。 【0044】 図3に示した機械研磨装置30を用いて、n型GaN基板1の裏面(窒素面)をn型GaN基板1の厚みが約120μm?約180μmになるまで研磨する。具体的には、ホルダ12の下面に取り付けられた窒化物系半導体レーザ素子構造20のn型GaN基板1の裏面(図4参照)を、研磨剤が配置されているバフ13の上面に、一定の負荷で押圧する。そして、バフ13(図3参照)に水またはオイルを流しながら、ホルダ12をR方向に回転する。このようにして、n型GaN基板1の厚みが約120μm?約180μmになるまで機械研磨を行う。なお、n型GaN基板1の厚みを、約120μm?約180μmの範囲に加工するのは、この範囲の厚みであれば、後述する劈開工程を良好に行うことができるためである。 【0045】 この後、本実施形態では、反応性イオンエッチング(RIE)法により、n型GaN基板1の裏面(窒素面)を、約20分間エッチングする。このエッチングは、ガス流量、Cl_(2)ガス:10sccm、BCl_(3)ガス:5sccm、エッチング圧力:約3.3Pa、RFパワー:200W(0.63W/cm^(2))、エッチング温度:常温の条件下で行った。これにより、n型GaN基板1の裏面(窒素面)を約1μmの厚み分だけ除去する。その結果、上記機械研磨に起因して発生した結晶欠陥を含むn型GaN基板1の裏面近傍の領域を除去することができる。また、n型GaN基板1の裏面を、機械研磨のみで加工した場合と比べて、より平坦な鏡面にすることができる。なお、n型GaN基板1の裏面の反射像を目視により良好に確認することができる表面状態を鏡面とする。 【0046】 ここで、上記したエッチングによる効果を確認するために、エッチング前後におけるn型GaN基板1の裏面の結晶欠陥(転位)密度を、TEM(Transmission Electron Microscope)分析により測定した。その結果、エッチング前には、結晶欠陥密度は、1×10^(10)cm^(-2)以上であったのに対して、エッチング後には、結晶欠陥密度は、1×10^(6)cm^(-2)以下にまで減少していることが判明した。また、エッチング後のn型GaN基板1の裏面近傍の電子キャリア濃度を、エレクトロケミカルC-V測定濃度プロファイラーにより測定した。その結果、n型GaN基板1の裏面近傍の電子キャリア濃度は、1.0×10^(18)cm^(-3)以上であった。これにより、RIE法によるエッチングによって、裏面近傍の電子キャリア濃度を、n型GaN基板1の基板キャリア濃度(5×10^(18)cm^(-3))と同程度にできることがわかった。 【0047】 また、上記したエッチング条件では、エッチング時間とエッチング深さとは比例関係になる。したがって、エッチング時間を調整することにより、エッチング深さを精度よく制御することができる。また、エッチングガスの組成により、エッチングレートおよび表面状態は変化する。図6は、RIE法のエッチングガスを変化させた場合のエッチングレートの変化を示したグラフである。この場合、Cl_(2)ガス流量を10sccmに固定するとともに、BCl_(3)ガス流量を変化させた場合のエッチングレートを測定した。その結果、図6に示すように、Cl_(2)ガスに対するBCl_(3)ガスの流量比が、30%以上70%以下の範囲であれば、エッチングされた面が平坦な鏡面になることが判明した。なお、Cl_(2)ガスに対するBCl_(3)ガスの流量比が、5%未満の場合または85%を越える場合には、エッチングされた面の平坦性が損なわれるとともに、白濁した面となった。 【0048】 上記のようなエッチング工程を行った後、窒化物系半導体レーザ素子構造20を、室温のHCl溶液(濃度10%)に1分間浸漬することにより塩酸処理を行う。これにより、RIE法によるエッチング時に、n型GaN基板1の裏面に付着した塩素系残留物が除去される。 【0049】 この後、スパッタリング法または真空蒸着法などを用いて、窒化物系半導体レーザ素子構造20のn型GaN基板1の裏面(窒素面)上に、n型GaN基板1の裏面に近い方から順に、6nmの厚みを有するAl膜と、2nmの厚みを有するSi膜と、10nmの厚みを有するNi膜と、300nmの厚みを有するAu膜とからなるn側電極8を形成する。 【0050】 最後に、劈開により、素子分離および共振器端面の形成を行うことによって、図5に示すような本実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が完成される。 【0051】 本実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスでは、上記したように、n型GaN基板1の裏面(窒素面)を、RIE法によりエッチングすることによって、研磨工程に起因して発生したn型GaN基板1の裏面近傍の結晶欠陥を含む領域を除去することができる。これにより、結晶欠陥による電子キャリアのトラップなどに起因する電子キャリア濃度の低下を抑制することができる。また、n型GaN基板1の裏面が窒素面である場合には、n型GaN基板1の裏面が酸化されやすいので、その酸化された部分をエッチングにより除去することができる。これらの結果、n型GaN基板1とn側電極8とのコンタクト抵抗を低減することができる。なお、本実施形態に沿って作製された窒化物系半導体レーザ素子におけるn型GaN基板1とn側電極8とのコンタクト抵抗をTLM法(Transmission Line Model)により測定したところ、コンタクト抵抗は、2.0×10^(-4)Ωcm^(2)以下であった。また、n型GaN基板1の裏面(窒素面)上にn側電極8を形成した後、さらに500℃の窒素ガス雰囲気中で10分間の熱処理を行った場合には、コンタクト抵抗はさらに低い1.0×10^(-5)Ωcm^(2)であった。 【0052】 また、本実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスでは、上記したように、n型GaN基板1の裏面を、RIE法によりエッチングすることによって、機械研磨の場合に比べて、n型GaN基板1の裏面の平坦性をより向上させることができる。これにより、n型GaN基板1の裏面上に形成されたn側電極8の平坦性を向上させることができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子をジャンクションダウンで取り付ける構造の場合には、n側電極8に対するワイヤボンディングのボンディング特性を向上させることができる。また、n側電極8を放熱基台(サブマウント)に取り付ける構造の場合には、n側電極8と放熱基台との密着性を向上させることができるので、良好な放熱特性を得ることができる。 【0053】 次に、RIE法を用いてn型GaN基板の裏面(窒素面)のエッチングを行う本発明の効果をより詳細に確認するため、以下の表1に示すような実験を行った。 【0054】 【表1】 上記表1を参照して、ウルツ鉱構造を有するn型GaN基板からなる試料1?7に、種々の窒素面(裏面)処理を施した後、n型GaN基板の裏面近傍の電子キャリア濃度を、エレクトロケミカルC-V測定濃度プロファイラーにより測定した。また、電子キャリア濃度測定後の試料1?7のn型GaN基板の裏面上に、n側電極を形成した後、n型GaN基板とn側電極とのコンタクト抵抗を、TLM法により測定した。 【0055】 なお、試料1?7のn側電極は、上記した一実施形態と同様、Al膜とSi膜とNi膜とAu膜とにより形成した。また、基板研磨、RIE法によるエッチングおよび塩酸処理のその他の条件は、上記した一実施形態と同様である。なお、試料6は、上記した一実施形態の製造プロセスを用いて作製した。 【0056】 結果としては、RIE法を用いてn型GaN基板の裏面のエッチングを行った本発明による試料3?7では、従来と同様の方法により作製された試料1よりもコンタクト抵抗が大きく低減された。具体的には、試料1のコンタクト抵抗は、20Ωcm^(2)であったのに対して、本発明による試料3?7のコンタクト抵抗は、0.05Ωcm^(2)以下であった。これは以下の理由によると考えられる。すなわち、本発明による試料3?7では、機械研磨により発生した結晶欠陥を含むn型GaN基板の裏面近傍の領域が、RIE法によるエッチングにより除去されたと考えられる。このため、n型GaN基板の裏面近傍における結晶欠陥に起因して電子キャリア濃度が低下するのが抑制されたためであると考えられる。 【0057】 また、本発明による試料3?7では、従来例に対応する試料1よりも、n型GaN基板の裏面近傍の電子キャリア濃度が高かった。具体的には、従来例に対応する試料1の電子キャリア濃度は、2.0×10^(16)cm^(-3)であったのに対して、本発明による試料3?7の電子キャリア濃度は、1.0×10^(17)cm^(-3)以上であった。 【0058】 また、Cl_(2)ガスを用いたRIE法により、n型GaN基板の裏面を約1μmの厚み分だけ除去した試料4では、Cl_(2)ガスを用いたRIE法により、n型GaN基板の裏面を約0.5μmの厚み分だけ除去した試料3よりも、低いコンタクト抵抗を得ることができた。これは、約0.5μmの厚み分の除去では、機械研磨により発生した結晶欠陥を含むn型GaN基板の裏面近傍の領域を十分に除去することができなかったためであると考えられる。これらの試料において、n型GaN基板の裏面の結晶欠陥(転位)密度を、TEM分析により測定したところ、試料3の結晶欠陥密度は1×10^(9)cm^(-2)であった。一方、試料4では、観察した視野中に結晶欠陥は観察されず、結晶欠陥密度は1×10^(6)cm^(-2)以下であった。したがって、RIE法によりn型GaN基板の裏面を約1.0μm以上の厚み分除去するのが好ましい。 【0059】 また、Cl_(2)ガスおよびBCl_(3)ガスを用いたRIE法によるエッチングを行った試料5では、Cl_(2)ガスのみを用いたRIE法によってn型GaN基板の裏面のエッチングを行った試料4に比べて、さらに低いコンタクト抵抗を得ることができた。 【0060】 また、Cl_(2)ガスおよびBCl_(3)ガスを用いたRIE法によりn型GaN基板の裏面をエッチングした後、塩酸処理を行った上記一実施形態に対応する試料6、および、さらに500℃の窒素雰囲気中で10分間の熱処理を行った試料7では、塩酸処理および熱処理を行わない試料5に比べて、さらに低いコンタクト抵抗を得ることができた。また、試料6と試料7との比較から、熱処理によって、n型GaN基板とn側電極とのコンタクト抵抗をさらに減少することができるとともに、n型GaN基板の裏面近傍の電子キャリア濃度をさらに向上させることが判明した。 【0061】 なお、RIE法によるエッチングを行わずに、10%の濃度のHCl溶液による約10分間の浸漬処理(塩酸処理)を行った試料2では、塩酸処理を行わなかった従来例に対応する試料1よりも、低いコンタクト抵抗を得ることができた。具体的には、試料1のコンタクト抵抗は、20Ωcm^(2)であったのに対して、試料2のコンタクト抵抗は、0.1Ωcm^(2)であった。これは、塩酸処理により、n型GaN基板の裏面が清浄化されたためであると考えられる。 【0062】 また、n型GaN基板のn型ドーパントとして酸素を用いた場合、コンタクト抵抗を低くするために酸素のドーピング量を多くしてキャリア濃度を上げると結晶性が低下する。しかし、本発明により、上記一実施形態によるn型GaN基板1の酸素ドープ量(基板キャリア濃度:5×10^(18)cm^(-3))においてもコンタクト抵抗を低くすることができる。 【0063】 なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。 【0064】 たとえば、上記一実施形態では、n型GaN基板1を用いて窒化物系半導体レーザ素子を形成した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、ウルツ鉱構造を有するn型の窒化物系半導体基板または窒化物系半導体層を用いた場合であってもよい。たとえば、BN(窒化ホウ素)、AlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)またはTlN(窒化タリウム)などからなる窒化物系半導体基板または窒化物系半導体層が考えられる。また、これらの混晶からなる窒化物系半導体基板または窒化物系半導体層であってもよい。 【0065】 また、上記一実施形態では、n型GaN基板1の裏面(窒素面)をRIE法によりエッチングしたが、本発明はこれに限らず、他のドライエッチング(反応性エッチング)を用いてもよい。たとえば、反応性イオンビームエッチングや、ラジカルエッチングや、プラズマエッチングを用いてもよい。 【0066】 また、上記一実施形態では、n型GaN基板1の裏面(窒素面)を、Cl_(2)ガスとBCl_(3)ガスとを用いて、RIE法によりエッチングを行ったが、本発明はこれに限らず、他のエッチングガスを用いてもよい。たとえば、Cl_(2)とSiCl_(4)との混合ガスやCl_(2)とCF_(4)との混合ガスやCl_(2)ガスを用いてもよい。 【0067】 また、上記一実施形態では、RIE法によるエッチング後、窒化物系半導体レーザ素子構造20をHCl溶液に浸漬(塩酸処理)することにより、n型GaN基板1の裏面に付着した塩素系残留物を除去したが、本発明はこれに限らず、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、イオウおよびアンモニアの少なくとも1つを含む溶液に浸漬してもよい。 【0068】 また、上記一実施形態では、n型GaN基板1の上面(Ga面)上に各層2?6を成長した後、n型GaN基板1の裏面(窒素面)を機械研磨した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、n型GaN基板1の裏面(窒素面)をあらかじめ所定の厚みに機械研磨した後、n型GaN基板1の上面(Ga面)上に各層2?6を形成する場合であってもよい。また、n型GaN基板1の窒素面の機械研磨を行わない場合であってもよい。 【0069】 また、上記一実施形態では、各層2?6を形成する際のn型ドーパントおよびp型ドーパントとして、それぞれ、SiおよびMgを用いたが、本発明はこれに限らず、他のn型またはp型のドーパントを用いてもよい。たとえば、n型ドーパントして、SeやGeなどを用いてもよい。また、p型ドーパントして、BeやZnなどを用いてもよい。 【0070】 また、上記一実施形態では、常圧MOCVD法により、n型GaN基板1上に各層2?6を形成したが、本発明はこれに限らず、他の成長法により、各層2?6を形成してもよい。たとえば、減圧MOCVD法により、各層2?6を形成してもよい。 【0071】 また、上記一実施形態では、n型GaN基板1上に、n型バッファ層2を形成した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、n型バッファ層2を形成しない場合であってもよい。この場合、各層3?6の結晶性は若干低下するが、製造プロセスを簡略化することができる。 【0072】 また、上記一実施形態では、n側電極8材料としてAl/Si/Ni/Au膜を用いたが、本発明はこれに限らず、10nmの厚みを有するTi膜と500nmの厚みを有するAl膜とからなるn側電極、6nmの厚みを有するAl膜と10nmの厚みを有するNi膜と300nmの厚みを有するAu膜とからなるn側電極、または、10nmの厚みを有するAlSi膜と300nmの厚みを有するZn膜と100nmの厚みを有するAu膜とからなるn側電極などのAlを含む他の電極構造を用いてもよい。 【0073】 また、上記一実施形態では、電流狭窄構造または横方向光閉じ込め構造として、リッジ構造を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、高抵抗のブロック層またはn型のブロック層を用いた埋め込み構造により電流狭窄を行ってもよい。また、イオン注入法などにより、電流狭窄層または横方向光閉じ込め構造としての光吸収層を形成してもよい。 【0074】 また、上記一実施形態では、本発明を窒化物系半導体レーザ素子に適用する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、ウルツ鉱構造を有するn型の窒化物系半導体層または窒化物系半導体基板を用いた半導体素子であればよい。たとえば、表面の平坦性が要求されるMESFET(Metal Semiconductor Field Effect Transistor)、HEMT(High Electron Mobility Transistor)、発光ダイオード素子(LED)または面発光レーザ素子(VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser))などに本発明を適用してもよい。 【0075】 また、上記一実施形態では、所定の厚みを有するp側電極7およびn側電極8を用いたが、本発明はこれに限らず、他の厚みを有する電極であってもよい。たとえば、電極の各層の厚みを薄くして、電極が透光性を有するように形成することによって、面発光レーザ素子や発光ダイオード素子として用いてもよい。特に、n側の電極は透光性を有するような薄い厚みに形成しても、本発明により、n側電極のコンタクト抵抗を十分に低くすることができる。 【0076】 また、上記一実施形態では、n型GaN基板1の裏面(窒素面)を、RIE法によりドライエッチングを行ったが、本発明はこれに限らず、n型GaN基板1の裏面(窒素面)をウェットエッチングするようにしてもよい。n型GaN基板1の裏面の窒素面をウェットエッチングする場合には、ウェットエッチング液として、王水、KOHやK_(2)S_(2)O_(8)などを用いる。たとえば、0.1Molの濃度のKOHを用いてn型GaN基板1の裏面の窒素面を室温でウェットエッチングすればよい。なお、この場合、約120℃に昇温すれば、室温の場合に比べて、エッチングレートを約10倍にすることができる。 【0077】 また、上記一実施形態では、n型GaN基板1の窒素面からなる裏面を、RIE法によりドライエッチングする場合について説明したが、本発明はこれに限らず、n型GaN基板1の裏面がGa面からなる場合に、そのn型GaN基板1のGa面からなる裏面をウェットエッチングするようにしてもよい。n型GaN基板1の裏面のGa面をウェットエッチングする場合には、ウェットエッチング液として、王水、KOHやK_(2)S_(2)O_(8)などを用いる。たとえば、0.1Molの濃度のKOHを用いて365nmの水銀ランプを用いて、室温でn型GaN基板1の裏面のGa面をウェットエッチングすればよい。なお、この場合、約120℃に昇温すれば、室温の場合に比べて、エッチングレートを約10倍にすることができる。 【0078】 また、上記一実施形態では、裏面が全て窒素面であるn型GaNジャスト基板を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限らず、n型GaN基板の裏面に少しGa面が存在するn型GaNオフ基板を用いてもよい。このn型GaNオフ基板の場合にも、裏面は本発明の窒素面に含まれる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。 【図2】本発明の一実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。 【図3】本発明の一実施形態による窒化物系半導体レ-ザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。 【図4】図3に示したプロセスにおける拡大断面図である。 【図5】本発明の一実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための斜視図である。 【図6】RIE法のエッチングガスを変化させた場合のエッチングレートの変化を示したグラフである。 【図7】従来の窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。 【符号の説明】 1 n型GaN基板(第1半導体層) 8 n側電極 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2012-06-29 |
結審通知日 | 2012-07-05 |
審決日 | 2012-07-20 |
出願番号 | 特願2003-74966(P2003-74966) |
審決分類 |
P
1
113・
113-
YA
(H01S)
P 1 113・ 121- YA (H01S) P 1 113・ 841- YA (H01S) P 1 113・ 851- YA (H01S) P 1 113・ 854- YA (H01S) P 1 113・ 855- YA (H01S) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橿本 英吾 |
特許庁審判長 |
西村 仁志 |
特許庁審判官 |
清水 康司 金高 敏康 |
登録日 | 2007-03-30 |
登録番号 | 特許第3933592号(P3933592) |
発明の名称 | 窒化物系半導体素子 |
代理人 | 鷹見 雅和 |
代理人 | 今田 瞳 |
代理人 | 豊岡 静男 |
代理人 | 尾崎 英男 |
代理人 | 堀籠 佳典 |
代理人 | 牧野 知彦 |
代理人 | 豊岡 静男 |
代理人 | ▲廣▼瀬 文雄 |
代理人 | 今田 瞳 |
代理人 | 鷹見 雅和 |
代理人 | ▲廣▼瀬 文雄 |
代理人 | 尾崎 英男 |
代理人 | 加治 梓子 |
代理人 | 蟹田 昌之 |
代理人 | 古城 春実 |