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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27N
管理番号 1292954
審判番号 不服2012-13040  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-09 
確定日 2014-10-16 
事件の表示 特願2007-336287「木質系複合材料およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月16日出願公開、特開2009-154437〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年12月27日の出願であって、平成24年5月1日付けで拒絶査定がなされ、この査定に対し、平成24年7月9日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成25年1月30日付けの審尋に対して平成25年4月3日付けで回答書を提出している。

第2 平成24年7月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年7月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の【請求項1】及び【請求項6】を、それぞれ、
「【請求項1】
複数の木質系成形材料がタンニン系接着剤で接着成形されてなる木質系複合材料であって、木質系成形材料がタンニンを含む樹種の木質部由来のものであり、且つ、タンニン系接着剤がタンニンを含む樹種の樹皮由来のものであり、前記タンニンを含む樹種が、アカシアであることを特徴とする木質系複合材料。」、
「【請求項5】
タンニンを含む樹種の樹皮を分離する工程と、該樹皮からタンニンを抽出する工程と、タンニンを含む樹種の木質部から木質系成形材料を調製する工程と、この木質系成形材料の複数個を、上記工程で抽出されたタンニンを含有するタンニン系接着剤で接着成形させて木質系複合材料とする工程とからなり、前記タンニンを含む樹種が、アカシアであることを特徴とする木質系複合材料の製造方法。」
と補正することを含むものである。
上記の請求項1に係る補正は、補正前の請求項1に記載された請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「木質系成形材料」について、これを「タンニンを含む樹種由来のもの」としていたものを「タンニンを含む樹種の木質部由来のもの」に補正して、当該「木質系成形材料」がタンニンを含む樹種の「木質部」に由来するものであることを限定した。同様に、「タンニン系接着剤」について、これを「タンニンを含む樹種から分離されたタンニンを含有するもの」としていたものを「タンニンを含む樹種の樹皮由来のもの」と補正することにより「タンニン系接着剤」がタンニンを含む樹種の「樹皮」に由来するものであることを限定したものである。
また、上記の請求項5に係る補正は、補正前の請求項6に記載された請求項6に係る発明を特定するために必要な事項である「タンニン高含有部」及び「タンニンを含む樹種から木質系成形材料を調製する工程」について、前者を「樹皮」と補正して、後者を「タンニンを含む樹種の木質部から木質系成形材料を調製する工程」に補正することにより、それぞれの事項を具体的ものに特定あるいは要素を付加して、それぞれの事項を何れも限定したものである。
そして、これらの補正後の請求項1及び請求項5に係る発明は、何れも補正前の請求項1及び請求項6に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、先ずは、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-79607号公報(以下、「刊行物1」という。)には、集積木材に関して、次の事項が記載されている。

(1a)「【請求項1】長手方向に繊維方向を揃えて切断または割裂された木材小片が、その繊維方向を略一定方向に揃えた状態で接着剤を介して加熱圧着成形されてなる集積材層を備えている集積木材において、木材小片が、原木密度0.5g/cm^(3 )以上のアカシア・マンギュームから形成されていることを特徴とする集積木材。」

(1b)「【0004】しかしながら、従来の上記集積木材の場合、湿度の影響を受けやすく、日本の夏のような高温多湿の気候風土の土地では、施工後に寸法が伸縮したり、反りが発生したり、強度低下を起こす恐れがあった。そこで、本発明の発明者は、吸水厚さ膨張率が7.0%以下にすれば、上記の問題が解決できると言う知見を得た。そして、さらに鋭意検討した結果、木材小片の原木として密度の大きいものを用いればよいのではないかと考え、密度の比較的高い地中海松やラジアータパインなどを原木として用いようとしたが、いずれも十分なものではなかった。」

(1c)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような事情に鑑みて、吸水厚さ膨張率が小さく優れた寸法安定性を有し、強度的に優れた集積木材を提供することを目的としている。」

(1d)「【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、本発明にかかる集積木材は、長手方向に繊維方向を揃えて短冊状に切断された木材小片が、その繊維方向を略一定方向に揃えた状態で接着剤を介して加熱圧着成形されてなる集積材層を備えている集積木材において、木材小片が、原木密度0.5g/cm^(3) 以上のアカシア・マンギュームから形成されている構成とした。」

(1e)「【0008】また、本発明において、接着剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリメリックMDI等のイソシアネート系接着剤、フェノール系接着剤などが挙げられる。接着剤の塗布量は、特に限定されないが、木材小片に対して3?8重量%の割合いで塗布することが好ましい。」

(1f)「【実施例】以下に、本発明の実施例をより詳しく説明する。
【0025】(実施例1)ポリメリックMDIが5重量%の割合で塗布された密度0.6g/cm^(3) のアカシア・マンギュームの厚み3mm、幅15mm、長さ500mmの木材小片を、マット状に積層し、開放型水蒸気噴射プレス成形装置で加熱圧密化し、密度0.71g/cm^(3) 、厚さ42mm、幅240mm、長さ1000mmの集積木材を得た。

(1g)「【0027】(比較例1)アカシア・マンギュームに代えて、密度0.6g/cm^(3) の地中海松を用いた以外は、実施例1と同様にして・・・・・・集積木材を得た。
(比較例2)アカシア・マンギュームに代えて、密度0.55g/cm^(3) のラジアータパインを用いた以外は、実施例1と同様にして・・・・・・集積木材を得た。
【0028】(比較例3)アカシア・マンギュームに代えて、密度0.45g/cm^(3) のカメレレを用いた以外は、実施例1と同様にして・・・・・・集積木材を得た。
(比較例4)アカシア・マンギュームに代えて、密度0.43g/cm^(3) のカメレレを用いた以外は、実施例2と同様にして・・・・・・集積木材を得た。
【0029】(比較例5)アカシア・マンギュームに代えて、密度0.30g/cm^(3) のファルカータを用いた以外は、実施例1と同様にして密度0.45g/cm^(3) 、厚さ42mm、幅240mm、長さ1000mmの集積木材を得た。
(比較例6)アカシア・マンギュームに代えて、密度0.29g/cm^(3) のファルカータを用いた以外は、実施例2と同様にして・・・・・・集積木材を得た。」

(1h)「【0036】
【発明の効果】本発明にかかる集積木材は、以上のように構成されているので、吸水厚さ膨張率が小さく優れた寸法安定性を有し、強度的に優れている。したがって、高温多湿な日本などの気候環境を有する土地でも、建築物の構造材として十分に使用することができる。」

以上より、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると言える。
「木材小片が、接着剤を介して加熱圧着成形されてなる集積材層を備えている集積木材において、木材小片が、アカシア・マンギュームから形成されている集積木材。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2004-231814号公報(以下、「刊行物2」という)には、水性接着剤組成物及びそれを用いる木質パネルに関して、次の事項が記載されている。

(2a)「【請求項2】
木質材料を、木材から抽出されたタンニンの水溶液と、多官能エポキシ化合物と、第三級アミンとを含む水性接着剤組成物により、相互に接着してなることを特徴とする木質パネル。」

(2b)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑み、タンニンを含む接着剤であって、被着材に対して優れた耐水性、耐久性を付与することができ、しかもホルムアルデヒドを放出することのない水性接着剤組成物を提供することを目的とする。」

(2c)「【0010】
【課題を解決するための手段】
前記不都合を解消するために、本発明の水性接着剤は、木材から抽出されたタンニンの水溶液と、多官能エポキシ化合物と、第三級アミンとを含むことを特徴とする。」

(2d)「【0017】
前記タンニンとしては、南アフリカ、アルゼンチンで産出されるワットルタンニン、アルゼンチンで産出されるケブラチョ(ケブラコ)タンニン、ニュージーランド、オーストラリア、チリで産出されるラジアタパインタンニン等の他、ユーカリ、マングローブ、日本産カラマツ等から抽出されるタンニン等を挙げることができる。前記タンニンは、スルホン化等の化学変成により、水に対する溶解性を高めたものであってもよい。」

(2e)以上より、刊行物2には、次の事項が開示されていると言える。
木質材料を、木材から抽出されたタンニンの水溶液と、多官能エポキシ化合物と、第三級アミンとを含む水性接着剤組成物により、相互に接着してなることを特徴とする木質パネルであって、前記タンニンとして、ワットルタンニンを用いること。

(3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2006-62327号公報(以下、「刊行物3」という)には、木質系複合材料の製造方法(タンニンの自己硬化)に関して、次の事項が記載されている。

(3a)「【請求項1】
木質系成形材料と、タンニンに少なくともタンニンの自己硬化を促進する触媒を混合したタンニン系接着剤を含む結合剤とを混和して混和物とし、この混和物を積層して木質積層マットを形成し、木質積層マット内に高温水蒸気を浸透させて加熱及び加圧して結合剤を硬化させることにより、木質系成形材料が硬化した結合剤で結合された木質系複合材料を得ることを特徴とする木質系複合材料の製造方法。」

(3b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を破砕して得られる木質チップが結合剤で結合されてなる木質系複合材料の製造方法に関する。」

(3c)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来のタンニン系接着剤を用いた木質系複合材料及びその製造方法の問題点を鑑み、タンニン系接着剤を用いてしかも有害な揮発性物質を発生させることがなく、かつ生産性に優れた木質系複合材料の製造方法を提供することにある。」

(3d)「【0014】
木質系成形材料の原料樹種としては、スギ、ヒノキ、マツ、スプルース、ファーなどの針葉樹、シラカバ、アピトン、センゴンラウト、アスペンなどの広葉樹が挙げられ、更に、これらの樹木だけでなく竹、コウリャンといった植物材料をも含めることができる。」

(3e)「【0021】
結合剤に含まれるタンニン系接着剤の主成分であるタンニンは、天然木材からの抽出成分であり、木質系成形材料との親和性が良く、適度な粘着性を有し、硬化すると高強度になる。タンニンを抽出する樹木は特に限定されないが、ラジアータパインやミモザ(ワットル又はアカシアともいう)、ケブラチョから採取される縮合型タンニンが好ましい。」

(3f)以上より、刊行物3には、次の事項が開示されていると言える。
木質系成形材料とタンニン系接着剤を含む結合剤とを混和して、木質系成形材料が硬化した結合剤で結合された木質系複合材料において、結合剤に含まれるタンニン系接着剤の主成分であるタンニンを抽出する樹木としてミモザ(ワットル又はアカシアともいう)が好ましいこと。

3.本願補正発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
引用発明の「木材小片」は、本願補正発明の「木質系成形材料」に相当し、また、引用発明の「アカシア・マンギューム」は、本願明細書に「・・・・第3の発明において、アカシアが、モリシマアカシアまたはアカシアマンギウムである・・・・」(【0014】)と記載されているように、アカシアの一種であることから、本願補正発明の「アカシア」に相当する。
そして、引用発明の「木材小片が、接着剤を介して加熱圧着成形されてなる集積材層」と本願補正発明の「複数の木質系成形材料がタンニン系接着剤で接着成形されてなる木質系複合材料」とは、「複数の木質系成形材料」が「接着剤で接着成形されてなる木質系複合材料」である点で共通する。
また、引用発明の「木材小片が、アカシア・マンギュームから形成されている」ことと本願補正発明の「木質系成形材料がタンニンを含む樹種の木質部由来のもの」であり「タンニンを含む樹種が、アカシアである」こととは、「木質系成形材料がタンニンを含む樹種由来のもの」であり「タンニンを含む樹種が、アカシアである」点で共通する。

(2)両発明の一致点
複数の木質系成形材料が接着剤で接着成形されてなる木質系複合材料であって、木質系成形材料がタンニンを含む樹種由来のものであり、前記タンニンを含む樹種が、アカシアである木質系複合材料。

(3)両発明の相違点
ア 木質系複合材料の成形に用いられる接着剤が、本願補正発明では、「タンニン系接着剤」において「タンニンを含む樹種の樹皮由来のもの」であり、「前記タンニンを含む樹種が、アカシアである」のに対して、引用発明では接着剤に何を用いるのか特定していない点。

イ 木質系成形材料の材料が、本願補正発明では、アカシアの「木質部」由来のものであるのに対して、引用発明では、アカシアの木質部あるいは樹皮のいずれの部分を用いるのか不明である点。

4.本願補正発明の容易推考性の検討
(1)相違点アについて
ア 刊行物2には、上記「(2)」の「(2e)」に示したように、「木質材料を、木材から抽出されたタンニンの水溶液と、多官能エポキシ化合物と、第三級アミンとを含む水性接着剤組成物により、相互に接着してなることを特徴とする木質パネルであって、前記タンニンとして、ワットルタンニンを用いること。」が開示されている。
刊行物2記載の「木質パネル」は、「木質材料」を接着剤により相互に接着して「木質パネル」を形成していることから、本願補正発明の「木質系成形材料」を接着成形されてなる「木質系複合材料」に相当する。また、刊行物2記載の「ワットルタンニンを用いる」ことは、「ワットルタンニン」とは「アカシア」から抽出される「タンニン」であることから(例えば、特許第3796604号公報の段落【0002】には、「木材用接着剤又は結合剤のタンニン原料として、アカシア樹皮から抽出されるワトルタンニン・・・(中略)・・・が1960年代から工業的に利用されている。」ことが記載されている。)、本願補正発明の「前記タンニンを含む樹種が、アカシアである」ことに相当する。
したがって、刊行物2記載の「木質材料を、木材から抽出されたタンニンの水溶液と、多官能エポキシ化合物と、第三級アミンとを含む水性接着剤組成物」及び「前記タンニンとして、ワットルタンニンを用いること」と本願発明の木質系複合材料の成形に用いられる接着剤が「タンニン系接着剤」において「前記タンニンを含む樹種が、アカシアであること」とは、「タンニン系接着剤」において「前記タンニンを含む樹種が、アカシアである」点で共通する。
そうすると、刊行物2には、本願補正発明の表現に倣えば、木質系複合材料の成形に用いられる接着剤として、「タンニン系接着剤」において「前記タンニンを含む樹種が、アカシアである。」ことが開示されているといえる。
加えて、刊行物3には、「(3)」の「(3f)」に示したように、「木質系成形材料とタンニン系接着剤を含む結合剤とを混和して、木質系成形材料が硬化した結合剤で結合された木質系複合材料において、結合剤に含まれるタンニン系接着剤の主成分であるタンニンを抽出する樹木としてミモザ(ワットル又はアカシアともいう)が好ましいこと。」が開示されている。
刊行物3には「タンニン系接着剤」の「タンニンを抽出する樹木としてミモザ(ワットル又はアカシアともいう)が好ましいこと」が記載されていることから、刊行物3にも、刊行物2と同様に、本願補正発明の表現に倣えば、木質系複合材料の成形に用いられる接着剤として、「タンニン系接着剤」において「前記タンニンを含む樹種が、アカシアである。」ことが開示されているといえる。

イ また、「タンニン系接着剤」のタンニン原料として「タンニンを含む樹種の樹皮由来のもの」を用いることは、当業者に周知な事項にすぎない(例えば、上記特許第3796604号公報の段落【0002】参照)。

ウ そして、刊行物1に「本発明において、接着剤としては、特に限定されない」(上記の「(1)」の「(1e)」参照)と記載されているように、引用発明においては、木質系複合材料を成形する木質系成形材料に用いる接着剤として、各種の接着剤が試みられていることが認められることから、引用発明において、集積木材を成形するアカシアからなる木材小片を接着する接着剤として、刊行物2あるいは3に開示されている「タンニンを含む樹種としてのアカシアの由来の」ものであり、当業者に周知である「樹皮」から抽出されたものを採用して、本願補正発明の相違点アに係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点イについて
アカシアの「樹皮」を分離して木材用の接着剤に用いる「タンニン」を抽出することは周知な事項であり(例えば、上記特許第3796604号公報の上記段落【0002】参照)、引用発明において集積木材を成形する木材小片の材料としてアカシア・マンギューム(本願発明のアカシアに相当)を用いる場合に、資源の有効活用の観点から、アカシアから「樹皮」を分離した残りの「木質部」を利用することは、通常想定されることであるので、アカシアの「木質部」を木質系成形材料の材料として用いて、本願補正発明の相違点イに係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(3)本願補正発明の効果について
請求人は、審判請求書に添付して提出された7月2日付けの実験成績証明書によれば、接着剤をフェノール樹脂から本願発明のタンニン系のアカシア樹皮由来のものを用いた場合に、例えば、アカシアマンギウムでは、曲げ強度は30Mpaが22Mpa、厚さ膨張率は8%から11%になり、同様の条件において、比較例としてのカラマツでは曲げ強度は28Mpaが15Mpaに、吸水厚さ膨張率は9%から28%になり顕著な差がみられることから、木質系複合材料の接着剤及び木質系成型材料の組み合わせに予測できない相乗効果があり、本願発明は、引用文献1?3には記載されていない有利な効果であって、異質な効果、又は同質であるが際だって優れた効果を有し、技術水準から予測できたものではないことが証明された旨主張する。
しかしながら、接着剤と接着剤が用いられる材料の間には、接着により生じる性質に違いがあることは技術常識であることから、接着剤として本願発明のタンニン系のアカシア樹皮由来のものを用いた場合に、接着剤が用いられる材料がアカシアマンギウムとカラマツとで接着により生じる性質に差が生じることは通常予測されることにすぎず、この実験成績証明書の結果をもって、本願補正発明が予測し得ない,異質のあるいは際だって優れた効果を有するものとはいえない。

(4)総合判断
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2及び3記載の事項並びに当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成24年7月9日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成23年10月28日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
複数の木質系成形材料がタンニン系接着剤で接着成形されてなる木質系複合材料であって、木質系成形材料がタンニンを含む樹種由来のものであり、且つ、タンニン系接着剤がタンニンを含む樹種から分離されたタンニンを含有するものであり、前記タンニンを含む樹種が、アカシアであることを特徴とする木質系複合材料。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1乃至3の記載事項は、前記の「第2」の「2」に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比
本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2」に記載したとおり、引用発明、刊行物2及び3記載の事項並びに当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、刊行物2及び3記載の事項並びに当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-15 
結審通知日 2014-07-22 
審決日 2014-08-21 
出願番号 特願2007-336287(P2007-336287)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B27N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 隆一  
特許庁審判長 杉浦 淳
特許庁審判官 中川 真一
住田 秀弘
発明の名称 木質系複合材料およびその製造方法  
代理人 河備 健二  

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