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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1292956 |
審判番号 | 不服2012-25556 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-25 |
確定日 | 2014-10-16 |
事件の表示 | 特願2008-149897「成果物管理サーバ,成果物管理方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月17日出願公開,特開2009-295050〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成20年6月6日の出願であって, 平成22年11月16日付けで審査請求がなされ,平成24年6月19日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成24年9月3日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成24年9月19日付けで審査官により拒絶査定がなされ(発送;平成24年9月25日),これに対して平成24年12月25日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成25年2月1日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成25年8月13日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋がなされ,平成25年10月18日付けで回答書の提出があったものである。 第2.平成24年12月25日付けの手続補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年12月25日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成24年12月25日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成24年9月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲, 「 【請求項1】 工程毎に作成される成果物を管理する成果物管理サーバであって, 各工程で作成される成果物を識別する成果物情報と,当該成果物の変更の影響を受ける成果物である関連成果物を識別する関連成果物情報とを関連付けて,成果物の工程間の前後関係を示す前後関係情報として記憶する成果物管理情報記憶部と, 成果物の変更の有無を監視するとともに,当該成果物の変更に伴って,当該変更の影響を受ける前記関連成果物を,前記成果物管理情報記憶部の前記前後関係情報に基づいて,確認順序情報として修正を行うべき順に抽出する成果物更新監視部と, 前記確認順序情報に基づいて,利用者端末に修正の確認を行うべき成果物の確認依頼を順次送信する成果物変更通知部と, を備えることを特徴とする成果物管理サーバ。 【請求項2】 前記成果物更新監視部は,さらに,変更有りと確認された成果物が,前記成果物変更通知部が送信した確認依頼に基づいて変更された成果物だった場合,前記成果物管理情報記憶部から新たに修正の確認をすべき成果物を抽出し,確認順序情報を更新することを特徴とする請求項1に記載の成果物管理サーバ。 【請求項3】 前記成果物更新監視部は,変更が生じた成果物を基点として,前工程の成果物を順次遡って抽出した後に,後工程の成果物を工程に沿って順次抽出する事を特徴とする請求項1または2に記載の成果物管理サーバ。 【請求項4】 前記成果物管理情報記憶部は,さらに,成果物と,当該成果物と前後関係にある成果物との関係の重要度を記憶し, 前記成果物更新監視部は,修正の確認を行うべき複数の成果物の中から前記関連成果物を前記重要度に基づいて選択し,選択した前記関連成果物を,前記前後関係情報に基づいて,前記確認順序情報として修正を行うべき順に抽出する ことを特徴とする請求項1から3いずれか1の項に記載の成果物管理サーバ。 【請求項5】 工程毎に作成される成果物を管理する成果物管理方法であって 各工程で作成される成果物を識別する成果物情報と,当該成果物の変更の影響を受ける成果物である関連成果物を識別する関連成果物情報とを関連付けて,成果物の工程間の前後関係を示す前後関係情報として記憶する成果物管理情報記憶部を備える成果物管理サーバが,成果物の変更の有無を監視するとともに,当該成果物の変更に伴って,当該変更の影響を受ける前記関連成果物を,前記成果物管理情報記憶部の前記前後関係情報に基づいて,確認順序情報として修正を行うべき順に抽出するステップと, 前記成果物管理サーバが,前記確認順序情報に基づいて,利用者端末に修正の確認を行うべき成果物の確認依頼を順次送信するステップと, を有することを特徴とする成果物管理方法。 【請求項6】 工程毎に作成される成果物を管理するためのプログラムであって, 各工程で作成される成果物を識別する成果物情報と,当該成果物の変更の影響を受ける成果物である関連成果物を識別する関連成果物情報とを関連付けて,成果物の工程間の前後関係を示す前後関係情報として記憶する成果物管理情報記憶部を備えるコンピュータに, 成果物の変更の有無を監視するとともに,当該成果物の変更に伴って,当該変更の影響を受ける前記関連成果物を,前記成果物管理情報記憶部の前記前後関係情報に基づいて,確認順序情報として修正を行うべき順に抽出するステップと, 前記確認順序情報に基づいて,利用者端末に修正の確認を行うべき成果物の確認依頼を順次送信するステップと, を実行させるためのプログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は, 「 【請求項1】 工程毎に作成される成果物を管理する成果物管理サーバであって, 各工程で作成される成果物を識別する成果物情報と,当該成果物の変更の影響を受ける成果物である関連成果物を識別する関連成果物情報とを関連付けて,成果物の工程間の前後関係を示す前後関係情報として記憶する成果物管理情報記憶部と, 後の工程において作成される複数の成果物に影響を及ぼす分岐元成果物である成果物の変更の有無と,当該分岐元成果物に影響を及ぼす成果物の変更の有無との少なくともいずれかを監視するとともに,当該成果物の変更に伴って,当該変更の影響を受ける前記関連成果物を,前記成果物管理情報記憶部の前記前後関係情報に基づいて,確認順序情報として修正を行うべき順に抽出する成果物更新監視部と, 前記確認順序情報に基づいて,利用者端末に修正の確認を行うべき成果物の確認依頼を順次送信する成果物変更通知部と, を備えることを特徴とする成果物管理サーバ。 【請求項2】 前記成果物更新監視部は,さらに,変更有りと確認された成果物が,前記成果物変更通知部が送信した確認依頼に基づいて変更された成果物だった場合,前記成果物管理情報記憶部から新たに修正の確認をすべき成果物を抽出し,確認順序情報を更新することを特徴とする請求項1に記載の成果物管理サーバ。 【請求項3】 前記成果物更新監視部は,変更が生じた成果物を基点として,前工程の成果物を順次遡って抽出した後に,後工程の成果物を工程に沿って順次抽出する事を特徴とする請求項1または2に記載の成果物管理サーバ。 【請求項4】 前記成果物管理情報記憶部は,さらに,成果物と,当該成果物と前後関係にある成果物との関係の重要度を記憶し, 前記成果物更新監視部は,修正の確認を行うべき複数の成果物の中から前記関連成果物を前記重要度に基づいて選択し,選択した前記関連成果物を,前記前後関係情報に基づいて,前記確認順序情報として修正を行うべき順に抽出する ことを特徴とする請求項1から3いずれか1の項に記載の成果物管理サーバ。 【請求項5】 工程毎に作成される成果物を管理する成果物管理方法であって 各工程で作成される成果物を識別する成果物情報と,当該成果物の変更の影響を受ける成果物である関連成果物を識別する関連成果物情報とを関連付けて,成果物の工程間の前後関係を示す前後関係情報として記憶する成果物管理情報記憶部を備える成果物管理サーバが,後の工程において作成される複数の成果物に影響を及ぼす分岐元成果物である成果物の変更の有無と,当該分岐元成果物に影響を及ぼす成果物の変更の有無との少なくともいずれかを監視するとともに,当該成果物の変更に伴って,当該変更の影響を受ける前記関連成果物を,前記成果物管理情報記憶部の前記前後関係情報に基づいて,確認順序情報として修正を行うべき順に抽出するステップと, 前記成果物管理サーバが,前記確認順序情報に基づいて,利用者端末に修正の確認を行うべき成果物の確認依頼を順次送信するステップと, を有することを特徴とする成果物管理方法。 【請求項6】 工程毎に作成される成果物を管理するためのプログラムであって, 各工程で作成される成果物を識別する成果物情報と,当該成果物の変更の影響を受ける成果物である関連成果物を識別する関連成果物情報とを関連付けて,成果物の工程間の前後関係を示す前後関係情報として記憶する成果物管理情報記憶部を備えるコンピュータに, 後の工程において作成される複数の成果物に影響を及ぼす分岐元成果物である成果物の変更の有無と,当該分岐元成果物に影響を及ぼす成果物の変更の有無との少なくともいずれかを監視するとともに,当該成果物の変更に伴って,当該変更の影響を受ける前記関連成果物を,前記成果物管理情報記憶部の前記前後関係情報に基づいて,確認順序情報として修正を行うべき順に抽出するステップと, 前記確認順序情報に基づいて,利用者端末に修正の確認を行うべき成果物の確認依頼を順次送信するステップと, を実行させるためのプログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。 2.補正の適否 本件手続補正は,補正前の請求項1,請求項5,及び,請求項6にかかる発明における発明特定事項である,「成果物の変更の有無を監視する」という処理過程に対して, 「後の工程において作成される複数の成果物に影響を及ぼす分岐元成果物である成果物の変更の有無と,当該分岐元成果物に影響を及ぼす成果物の変更の有無との少なくともいずれかを監視する」との限定を加えるものであって,当該補正は,願書に最初に添付された明細書の段落【0003】,及び,【0014】,並びに,【0015】に記載された事項に基づくものであるから,本件手続補正は,特許法第17条の2第3項の規定を満たすものである。 そして,上記引用の補正内容は,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)を目的とするものであるから,本件手続補正は,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものである。 そこで,本件手続補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。 (1)補正後の請求項に係る発明 補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した記載のとおりのものである。 (2)引用刊行物に記載の発明 一方,原審が,平成24年6月19日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2007-122135号公報(平成19年5月17日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 A.「【請求項1】 ソフトウェアの要求を記述した要求記述文書,該要求記述文書から作成される設計モデル,および,該設計モデルから作成されるプログラムコードである成果物の開発を支援する開発支援装置であって, 成果物および成果物間の対応情報を格納する記憶部と, 修正する成果物の入力を受け付ける修正受付部と, 前記修正受付部により受け付けた成果物を起点として,前記記憶部に格納された成果物間の対応情報を辿ることにより,修正する成果物が影響する他の成果物を追跡する修正追跡部と, 前記修正追跡部により追跡された成果物を通知する修正通知部と, を有することを特徴とする開発支援装置。」 B.「【0068】 修正受付部40は,ユーザからの既存の成果物への修正を受け付ける。 【0069】 修正追跡部42は,受け付けた修正が影響する成果物を追跡する。追跡は,設計モデル格納部24およびプログラムコード格納部34に格納されている成果物間の対応関係を,リンクとして辿ることにより実現される。追跡する契機は,修正前(事前実行),または,修正後(事後実行)である。修正追跡部42は,追跡を繰り返し実行することで,開発者が過去に行った修正によって必要となる修正を行うことによって新たに修正が必要となる成果物を,発見する。 【0070】 修正通知部44は,修正が影響する成果物をユーザに通知する。修正が影響する成果物を開発者が別途に修正しようとした際,先に行われた修正により,情報の不整合が発生する可能性があることを開発者に通知する。」 C.「【0080】 図25(a)を参照して,設計モデルへの修正を説明する。修正受付部40が設計モデルC1への修正を受け付けると,修正追跡部42は,設計モデルC1からリンクのある要求記述文書R1,および,プログラムコードP1,P2を追跡する。」 D.図25(a)には,修正箇所が「設計モデル」の「C1」であるとき,該修正が影響を及ぼす箇所が,矢印と,網掛けによって示され,該「C1」の修正は,前段の「要求記述文書」の「R1」と,後段の「プログラムコード」の「P1」と「P2」に影響することが表現されている。 ア.上記Aの「成果物の開発を支援する開発支援装置であって,成果物および成果物間の対応情報を格納する記憶部と,修正する成果物の入力を受け付ける修正受付部と,前記修正受付部により受け付けた成果物を起点として,前記記憶部に格納された成果物間の対応情報を辿ることにより,修正する成果物が影響する他の成果物を追跡する修正追跡部と,前記修正追跡部により追跡された成果物を通知する修正通知部と,を有することを特徴とする開発支援装置」という記載から,引用刊行物1に記載の「開発支援装置」は, “成果物の開発を支援する開発支援装置であって,前記成果物および前記成果物間の対応情報を格納する記憶部” を有していることが読み取れる。 イ.上記Aの「修正する成果物の入力を受け付ける修正受付部」という記載,及び,上記Bの「修正受付部40は,ユーザからの既存の成果物への修正を受け付ける」という記載から,引用刊行物1に記載の「開発支援装置」は, “既存の成果物の修正を受け付ける修正受付部” を有していることが読み取れる。 ウ.上記Aの「修正受付部により受け付けた成果物を起点として,前記記憶部に格納された成果物間の対応情報を辿ることにより,修正する成果物が影響する他の成果物を追跡する修正追跡部」という記載,及び,上記Bの「修正追跡部42は,受け付けた修正が影響する成果物を追跡する。追跡は,設計モデル格納部24およびプログラムコード格納部34に格納されている成果物間の対応関係を,リンクとして辿ることにより実現される」という記載から,引用刊行物1に記載の「開発支援装置」は, “修正受付部により受け付けた成果物を起点として,前記記憶部に格納された前記成果物間の対応情報である成果物間の対応関係を,リンクとして辿ることにより,修正する前記成果物が影響する他の成果物を追跡する修正追跡部” を有していることが読み取れる。 エ.上記Aの「修正追跡部により追跡された成果物を通知する修正通知部」という記載から,引用刊行物1に記載の「開発支援装置」は, “修正追跡部により追跡された成果物を通知する修正通知部” を有していることが読み取れる。 以上ア.?エ.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。 “成果物の開発を支援する開発支援装置であって, 前記成果物および前記成果物間の対応情報を格納する記憶部と, 既存の成果物の修正を受け付ける修正受付部と, 前記修正受付部により受け付けた前記成果物を起点として,前記記憶部に格納された前記成果物間の対応情報である成果物間の対応関係を,リンクとして辿ることにより,修正する前記成果物が影響する他の成果物を追跡する修正追跡部と, 前記修正追跡部により追跡された前記成果物を通知する修正通知部と, を備える開発支援装置。” (3)本件補正発明と,引用発明との対比 ア.引用発明における「開発支援装置」は,各段階で作成される「成果物」を管理していることは明らかであり,また,該「開発支援装置」を「サーバ」として実現することも,当業者が適宜なし得る事項であるから, 引用発明における「成果物の開発を支援する開発支援装置」が, 本件補正発明における「工程毎に作成される成果物を管理する成果物管理サーバ」に相当する。 イ.引用発明においても,「記憶部」に格納される「対応情報」とは,修正した「成果物」の修正が影響を与える「成果物」との「対応関係」であるから, 引用発明における「前記成果物および前記成果物間の対応情報を格納する記憶部」と, 本件補正発明における「各工程で作成される成果物を識別する成果物情報と,当該成果物の変更の影響を受ける成果物である関連成果物を識別する関連成果物情報とを関連付けて,成果物の工程間の前後関係を示す前後関係情報として記憶する成果物管理情報記憶部」とは, “各工程で作成される成果物を識別する成果物情報と,当該成果物の変更の影響を受ける成果物である関連成果物を識別する関連成果物情報とを関連付けて,記憶する成果物関係情報記憶部”である点で共通する。 ウ.引用発明においても,「修正受付部」において,「成果物」の修正を受け付けているので,この時点で,他の「成果物」に影響を及ぼす「成果物」に対して,修正が入るか否かを監視し得ることは明らかであり,修正対象の「成果物」がわかると,「リンクを辿」って,影響を受ける「成果物」を追跡しているので, 引用発明における「既存の成果物の修正を受け付ける修正受付部」,及び,「修正受付部により受け付けた前記成果物を起点として,前記記憶部に格納された前記成果物間の対応情報である成果物間の対応関係を,リンクとして辿ることにより,修正する前記成果物が影響する他の成果物を追跡する修正追跡部」と, 本件補正発明における「後の工程において作成される複数の成果物に影響を及ぼす分岐元成果物である成果物の変更の有無と,当該分岐元成果物に影響を及ぼす成果物の変更の有無との少なくともいずれかを監視するとともに,当該成果物の変更に伴って,当該変更の影響を受ける前記関連成果物を,前記成果物管理情報記憶部の前記前後関係情報に基づいて,確認順序情報として修正を行うべき順に抽出する成果物更新監視部」とは, “他の成果物に影響を及ぼす成果物の変更の有無を監視し,当該成果物の変更に伴って影響を受ける成果物を,確認情報として追跡する成果物修正監視部”である点で共通する。 エ.引用発明においても,“追跡された成果物を通知する”ということは,「成果物」の修正を行う者などに,“影響を受ける成果物ついての,何らかの確認を促すものである”ことは明らかであるから, 引用発明における「修正追跡部により追跡された前記成果物を通知する修正通知部」と, 本件補正発明における「前記確認順序情報に基づいて,利用者端末に修正の確認を行うべき成果物の確認依頼を順次送信する成果物変更通知部」とは, “確認情報に基づいて,利用者に成果物の確認依頼を送信する更新通知部”である点で共通する。 以上,ア.?エ.において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。 [一致点] 工程毎に作成される成果物を管理する成果物管理サーバであって, 各工程で作成される成果物を識別する成果物情報と,当該成果物の変更の影響を受ける成果物である関連成果物を識別する関連成果物情報とを関連付けて,記憶する成果物関係情報記憶部と, 他の成果物に影響を及ぼす成果物の変更の有無を監視し,当該成果物の変更に伴って影響を受ける成果物を,確認情報として追跡する成果物修正監視部と, 前記確認情報に基づいて,利用者に成果物の確認依頼を送信する更新通知部と, を備えることを特徴とする成果物管理サーバ。 [相違点1] “成果物関係情報記憶部”に関して, 本件補正発明においては,「成果物の工程間の前後関係を示す前後関係情報として記憶」しているのに対して, 引用発明において「前後関係」が意識されているか,不明である点。 [相違点2] “確認情報”に関して, 本件補正発明においては,“変更の影響を受ける関連成果物を,前後関係に基づいて,確認順序情報として修正を行うべき順に抽出”しているのに対して, 引用発明においては,「修正を行うべき順に抽出する」点については,特に言及されていない点。 [相違点3] “確認依頼”に関して, 本件補正発明においては,“確認順序情報に基づいて,確認依頼を順次送信している”のに対して, 引用発明においては,「影響を受ける成果物」を「順次」通知する点については,言及されていない点。 (3)相違点についての当審の判断 ア.[相違点1]について 引用発明においても,上記Cに記載された事項,及び,上記Dにおいて指摘した【図25】(a)に示された内容から,「前後関係」に相当する情報を有していることは明らかであるから,引用発明において,明文の記載はないものの,「記憶部」に,「前後関係」に関する情報も格納されていると言える よって,相違点1は,格別のものではない。 イ.[相違点2],及び,[相違点3]について 原審拒絶理由において引用された,本願の出願前に既に公知である,「小谷正行,落水浩一郎,ソフトウェア共同開発におけるワークフロー実行制御の一方式,電子情報通信学会技術研究報告 ソフトウェアサイエンス,社団法人電子情報通信学会,2006年 1月27日,第105巻,第597号,第31?36頁」(以下,これを「引用刊行物2」という)に, E.「2.変更作業支援ワークフロー 変更作業支援ワークフローは,変更される成果物を示すノードと,ノードを変更する順番を示すノード間の矢印で,図2のように構成される。 本章では,変更作業支援ワークフローが持つ情報として,単独/共同作業の両方の場合において有用な情報を定義し,さらに共同作業の場合において有用な情報を定義する。 2.1 変更作業に有用な情報 変更作業支援ワークフローが生成されたとき持っている,変更作業に有用な情報を2つ挙げる。 ・変更される成果物 変更作業に有用な情報の1つとして,変更すべき成果物の情報がある。変更される直前まで,成果物間の依存関係に矛盾が無いと仮定する。このとき,変更すべき成果物の情報は,変更作業によって発生した依存関係の矛盾をなくすために必要な情報である。 ・変更順序 変更すべき成果物を適切に変更させるため,変更する順序も有用な情報である。ほとんどの成果物は,他の成果物を参照して生成される。そのため,参照した情報を持つ成果物が変更されないと,それを参照した成果物の適切な変更作業を行えない。変更作業に掛かる時間を減らすために,変更順序は必要な情報である。」(32頁左欄9行?29行) と記載されているように,当該技術分野において,「順序情報」を用いることは,当業者に広く知られた技術である。 そして,引用発明においても,“前後関係を考慮した,影響を受ける「成果物」を,順次,リンクを辿って行く”ことは明らかであるから,この“辿って行った順番”に,“修正依頼をした者”に通知するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。 よって,相違点2,及び,相違点3は,格別のものではない。 上記で検討したごとく,相違点1?相違点3はいずれも格別のものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。 よって,本件補正発明は,引用発明,及び,引用刊行物2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3.補正却下むすび したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 平成24年12月25日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成24年9月3日付けの手続補正により補正された,上記「第2.平成24年12月25日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次に記載のとおりのものである。 「 工程毎に作成される成果物を管理する成果物管理サーバであって, 各工程で作成される成果物を識別する成果物情報と,当該成果物の変更の影響を受ける成果物である関連成果物を識別する関連成果物情報とを関連付けて,成果物の工程間の前後関係を示す前後関係情報として記憶する成果物管理情報記憶部と, 成果物の変更の有無を監視するとともに,当該成果物の変更に伴って,当該変更の影響を受ける前記関連成果物を,前記成果物管理情報記憶部の前記前後関係情報に基づいて,確認順序情報として修正を行うべき順に抽出する成果物更新監視部と, 前記確認順序情報に基づいて,利用者端末に修正の確認を行うべき成果物の確認依頼を順次送信する成果物変更通知部と, を備えることを特徴とする成果物管理サーバ。」 第4.引用刊行物に記載の発明 一方,上記「第2.平成24年12月25日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(2)引用刊行物に記載の発明」において,引用刊行物1として引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2007-122135号公報(平成19年5月17日公開)には,上記「(2)引用刊行物に記載の発明」において認定したとおりの,次の発明(以下,上記「(2)引用刊行物に記載の発明」と同じく「引用発明」という)が記載されているものと認める。 “成果物の開発を支援する開発支援装置であって, 前記成果物および前記成果物間の対応情報を格納する記憶部と, 既存の成果物の修正を受け付ける修正受付部と, 前記修正受付部により受け付けた前記成果物を起点として,前記記憶部に格納された前記成果物間の対応情報である成果物間の対応関係を,リンクとして辿ることにより,修正する前記成果物が影響する他の成果物を追跡する修正追跡部と, 前記修正追跡部により追跡された前記成果物を通知する修正通知部と, を備える開発支援装置。” 第5.本願発明と引用発明との対比 本願発明は,上記「2.補正の適否」において検討した,本件補正発明から, 「後の工程において作成される複数の成果物に影響を及ぼす分岐元成果物である成果物の変更の有無と,当該分岐元成果物に影響を及ぼす成果物の変更の有無との少なくともいずれか」という構成の下線で示した部分の構成を取り除いたものであるから, 本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。 [一致点] 工程毎に作成される成果物を管理する成果物管理サーバであって, 各工程で作成される成果物を識別する成果物情報と,当該成果物の変更の影響を受ける成果物である関連成果物を識別する関連成果物情報とを関連付けて,記憶する成果物関係情報記憶部と, 他の成果物に影響を及ぼす成果物の変更の有無を監視し,当該成果物の変更に伴って影響をうける成果物を,確認情報として追跡する成果物修正監視部と, 前記確認情報に基づいて,利用者に成果物の確認依頼を送信する更新通知部と, を備えることを特徴とする成果物管理サーバ。 [相違点a] “成果物関係情報記憶部”に関して, 本願発明においては,「成果物の工程間の前後関係を示す前後関係情報として記憶」しているのに対して, 引用発明において「前後関係」が意識されているか,不明である点。 [相違点b] “確認情報”に関して, 本願発明においては,“変更の影響を受ける関連成果物を,前後関係に基づいて,確認順序情報として修正を行うべき順に抽出”しているのに対して, 引用発明においては,「修正を行うべき順に抽出する」点については,特に言及されていない点。 [相違点c] “確認依頼”に関して, 本願発明においては,“確認順序情報に基づいて,確認依頼を順次送信している”のに対して, 引用発明においては,「影響を受ける成果物」を「順次」通知する点については,言及されていない点。 第6.相違点についての当審の判断 本願発明と,引用発明との[相違点a]?[相違点c]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点1]?[相違点3]と同じものであるから,「第2.平成24年12月25日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(3)相違点についての当審の判断」において検討したとおり格別のものではない。 そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,引用発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって,格別のものとはいえない。 第7.むすび したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-08-18 |
結審通知日 | 2014-08-19 |
審決日 | 2014-09-02 |
出願番号 | 特願2008-149897(P2008-149897) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 塚田 肇、石川 亮 |
特許庁審判長 |
仲間 晃 |
特許庁審判官 |
田中 秀人 石井 茂和 |
発明の名称 | 成果物管理サーバ、成果物管理方法及びプログラム |
代理人 | 特許業務法人 志賀国際特許事務所 |