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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1292961 |
審判番号 | 不服2013-13143 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-07-09 |
確定日 | 2014-10-16 |
事件の表示 | 特願2012-228383「白色LEDランプ、バックライトおよび照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月21日出願公開、特開2013- 38447〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成21年2月19日(優先権主張平成20年2月25日、同年11月28日、同年12月2日、何れも日本国)を国際出願日とする特願2010-500662号の一部を平成24年10月15日に新たな特許出願としたものであって、以降の手続の経緯は以下のとおりである。 平成24年12月 4日 拒絶理由通知(同年12月11日発送) 平成25年 2月12日 意見書・手続補正書 平成25年 4月 5日 拒絶査定(同年4月9日送達) 平成25年 7月 9日 審判請求書・手続補正書 平成25年10月 9日 審尋(同年10月15日発送) 平成25年12月16日 回答書 平成26年 4月23日 拒絶理由通知(同年5月7日発送、以下「当審拒絶理由通知」という。) 平成26年 7月 7日 意見書・手続補正書 2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成26年7月7日付け手続補正により補正された請求項1-26に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1は以下のとおりである。 「導電部と、 この導電部に実装され、ピーク波長360nm以上420nm以下の1次光を発光する発光ダイオードチップと、 この発光ダイオードチップを封止し、第1の透明樹脂硬化物からなる透明樹脂層と、 第2の透明樹脂硬化物中に前記1次光を受光して前記1次光より長波長の2次光を発光する蛍光体粉末が分散された蛍光体層と、を備えた白色LEDランプにおいて、上記蛍光体粉末の粒径が10μm以上100μm以下であり、上記蛍光体層は、蛍光面全面に亘り厚さが0.1mm以上1.5mm以下であり、かつ上記蛍光体層に含有される蛍光体重量が、スラリー濃度に換算して40重量%以上80重量%以下であり、上記透明樹脂層の厚さが、0.2mm以上1mm以下であり、白色LEDランプの発光効率が20lm/W以上であると共に、出射光に含まれる前記1次光のエネルギーが0.4mW/lm以下であることを特徴とする白色LEDランプ。」(以下「本願発明」という。) 3 当審拒絶理由通知 当審拒絶理由通知で通知した拒絶理由の概要は、本件出願の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、その遡及出願の最先の優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その遡及出願の最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 ・特開2007-235104号公報(以下「刊行物1」という。) ・特開2002-118292号公報(以下「刊行物2」という。) ・特開2006-135225号公報(以下「刊行物3」という。) ・特開2004-134805号公報(以下「刊行物4」という。) ・特開2006-352178号公報(以下「刊行物5」という。) ・特開2007-116139号公報(以下「刊行物6」という。) ・特開2007-59758号公報(以下「刊行物7」という。) ・特開2005-191197号公報(以下「刊行物8」という。) ・特開2007-300043号公報(以下「刊行物9」という。) 4 引用発明 (1)引用する刊行物 本願の遡及出願の最先の優先日(2008年2月25日)前の2007年9月13日に公開され、当審拒絶理由通知で引用した刊行物1(特開2007-235104号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている(当審注:下線は、引用発明の認定と特に関連する箇所に当審が付加した下線である。)。 ア 「【発明を実施するための最良の形態】 【0040】 以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に参照する複数の図面において、同一または相当部分には同一符号を付している。 【0041】 図1は、本発明により製造される発光装置の一例としてのLEDランプの構成を示す断面図、図2は、図1に示すLEDランプを例えば一平面上に3行3列のマトリックス状に複数配置したLEDモジュール21の一例を示す平面図、図3は、図2のIII-III線断面図である。 【0042】 図1乃至図3に示すLEDランプ1は、発光素子としてLEDチップ2を有している。LEDチップ2には、例えば青色発光タイプのLEDチップや紫外発光タイプのLEDチップ等が用いられている。このLEDチップ2は、基板3上に電気絶縁層4を介して設けられた回路パターン5上に搭載されている。 【0043】 基板3は、放熱性と剛性を有するアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、ガラスエポキシ等の平板からなり、また、回路パターン5は、銅(Cu)とニッケル(Ni)の合金、金(Au)等により、陽極側と陰極側の回路パターン5a,5bに形成されている。LEDチップ2は、底面電極を回路パターン5a,5bの一方、例えば陽極側回路パターン5a上に載置して電気的に接続する一方、上面電極を回路パターン5a,5bの他方、例えば陰極側回路パターン5bにボンディングワイヤ6により電気的に接続している。 【0044】 基板3上には、上方に向けて徐々に拡径する円錐台状の凹部7を形成するフレーム8が設けられており、LEDチップ2はこの凹部7内に配置されている。凹部7は、例えば底面直径が2.0?4.0mm、上面直径が1.5?4.5mm、深さが0.5?1.0mmの円錐台状に形成されており、フレーム8は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリカーボネート(PC)等により形成されている。 【0045】 LEDチップ2が配置された凹部7内には、蛍光体を含有する透明な熱硬化性樹脂からなる蛍光体含有樹脂層9が設けられており、LEDチップ2は蛍光体含有樹脂層9で凹部7内に封止されている。蛍光体含有樹脂層9は、蛍光体を混合した透明な液状の熱硬化性樹脂をディスペンサなどの注入装置を用いてLEDチップ2が配置された凹部7内に注入し、後述するような方法で加熱硬化させることにより形成されている。蛍光体を混合した透明な液状の熱硬化性樹脂の注入量は、ほぼ5?10mgである。なお、図面では、蛍光体含有樹脂層9の上端面が凹部7の上端とほぼ面一に形成されているが、特にこれに限定されるものではない。 【0046】 この蛍光体含有樹脂層9は、LEDチップ2を凹部7内に封止する機能とともに、発光部としての機能を併せ有している。すなわち、蛍光体含有樹脂層9内に含有されている蛍光体は、LEDチップ2から放射される光、例えば青色光や紫外線により励起されて可視光を発光する。 【0047】 ここで、蛍光体含有樹脂層9の形成に用いる透明な液状の熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。液状のシリコーン樹脂の使用が好ましく、注入の容易さの観点から、25℃における粘度が1?70Pa・sのシリコーン樹脂の使用が特に好ましい。また、このような熱硬化性樹脂に含有させる蛍光体は、特に限定されるものではなく、目的とするLEDランプ1の発光色などに応じて適宜選択することができる。 【0048】 例えば、青色発光タイプのLEDチップ2を使用して白色発光を得る場合には、黄色光から橙色光間の光を発光する黄色系蛍光体が主として用いられる。また、演色性等の向上を図るために、黄色系蛍光体に加えて赤色発光蛍光体を使用してもよい。黄色光から橙色光間の光を発光する黄色系蛍光体としては、例えばRE_(3)(Al,Ga)_(5)O_(12):Ce蛍光体(REはY、GdおよびLaから選ばれる少なくとも1種を示す。以下同じ)等のYAG蛍光体、AE_(2)SiO_(4):Eu蛍光体(AEはSr、Ba、Ca等のアルカリ土類元素である。以下同じ)等の珪酸塩蛍光体が用いられる。 【0049】 また、紫外発光タイプのLEDチップ2を使用して白色発光を得る場合には、RGB蛍光体が主として用いられる。青色発光蛍光体としては、例えばAE_(10)(PO_(4))_(6)Cl_(12):Eu蛍光体のようなハロ燐酸塩蛍光体や(Ba,Mg)Al_(10)O_(17):Eu蛍光体のようなアルミン酸塩蛍光体等が用いられる。緑色発光蛍光体としては、(Ba,Mg)Al_(10)O_(17):Eu,Mn蛍光体のようなアルミン酸塩蛍光体等が用いられる。赤色発光蛍光体としては、La_(2)O_(2)S:Eu蛍光体のような酸硫化物蛍光体等が用いられる。 【0050】 さらに、上記したような蛍光体に代えて、組成に応じて種々の発光色が得られる窒化物系蛍光体(例えばAE_(2)Si_(5)N_(8):Eu)、酸窒化物系蛍光体(例えばY_(2)Si_(3)O_(3)N_(4):Ce)、サイアロン系蛍光体(例えばAE_(x)(Si,Al)_(12)(N,O)_(16):Eu)等を適用してもよい。なお、LEDランプ1は白色発光ランプに限られるものではなく、白色以外の発光色を有するLEDランプ1を構成することも可能である。LEDランプ1で白色以外の発光、例えば中間色の発光を得る場合には、目的とする発光色に応じて種々の蛍光体が適宜に使用される。 【0051】 蛍光体は、分散タイプおよび沈降タイプのいずれの蛍光体であってもよい。」 イ 「【0062】 図5は、本発明により製造される発光装置の他の例としてのLEDランプの構成を示す断面図である。 【0063】 図5に示すように、このLEDランプ11は、凹部7内のLEDチップ2を封止する透明な蛍光体非含有樹脂層12と、この透明な蛍光体非含有樹脂層12の上端に密着されるようにフレーム8に固定された蛍光体シート13を有する点で、図1乃至図3に示したLEDランプ1と異なっている。なお、第1の実施形態に係る発光装置の構成と同一の構成部分には、同一の符号を付して、その説明を簡略化または省略する。 【0064】 蛍光体非含有樹脂層12は、蛍光体を含有しない透明な液状の熱硬化性樹脂により形成されている点を除いて、図1乃至図3に示したLEDランプ1の蛍光体含有樹脂層9と同様に形成されている。すなわち、透明な液状の熱硬化性樹脂をディスペンサなどの注入装置を用いてLEDチップ2が配置された凹部7内に注入し、前述したような第1の所定温度で加熱する第1の加熱工程と、熱硬化性樹脂を第1の所定温度よりも高い第2の所定温度で加熱する第2の加熱工程を含む多段加熱で加熱硬化させることにより形成されている。 【0065】 また、蛍光体シート13は、上記のように蛍光体非含有樹脂層12が形成された凹部7内に、蛍光体非含有樹脂層12上端に密着させた状態で、例えば接着、ハーメチックシール、圧着等の方法によって固定されている。蛍光体シート13は、透明な熱硬化性または熱可塑性樹脂に前述したような蛍光体を添加混合した後、例えばドクターブレード法等により150℃で1時間硬化することにより形成される。 【0066】 このようなLEDランプ11において、印加された電気エネルギーは、LEDチップ2で例えば青色光や紫外線に変換され、それらの光は蛍光体非含有樹脂層12を透過して、蛍光体シート13中に含有された蛍光体で、より長波長の光に変換される。そして、LEDチップ2から放射される光の色と蛍光体の発光色とに基づく色、例えば白色の光が LEDランプ11から放出される。 【0067】 このようなLEDランプ11においても、蛍光体非含有樹脂層12が、凹部7内に注入した透明な液状の熱硬化性樹脂を多段加熱により硬化させているので、前述した実施形態の適用例と同様、熱硬化性樹脂硬化時の泡の発生が抑えられ、良好な光透過特性を具備することができる。また、従来に比べて、硬化に伴う収縮が低減されるため、硬化後の樹脂層のしわや、樹脂層とフレームやLEDチップ等との界面剥離、樹脂層とLEDチップに接続されたボンディングワイヤ間の剥離が生ずるのを抑制することができる。」 ウ 「【図面の簡単な説明】 【0103】 【図1】本発明により製造される発光装置の一例のLEDランプを示す断面図である。 【図2】図1に示すLEDランプを複数配置したLEDモジュールの一例を示す平面図である。 【図3】図2のIII-III線断面図である。 … 【図5】本発明により製造される発光装置の他の例のLEDランプを示す断面図である。…」 エ 図1乃至図3、図5は、以下のとおりである。 図1 図2 図3 図5 オ 上記ア、イの記載を踏まえて図5を見ると、LEDランプ11は、LEDチップ2、基板3、電気絶縁物4、陽極側回路パターン5a、陰極側回路パターン5b、ボンディングワイヤ6、凹部7を形成するフレーム8、蛍光体非含有樹脂層12、蛍光体シート13を備えることが理解できる。 (2)引用発明の認定 ア 以下、「発光装置の他の例としてのLEDランプ」について、上記(1)イ、オ、図5に基づいて引用発明を認定する。その際、「【0063】…なお、第1の実施形態に係る発光装置の構成と同一の構成部分には、同一の符号を付して、その説明を簡略化または省略する。」と記載されているから、第1の実施形態に係る発光装置の構成と同一の構成部分は、上記(1)アの記載を参酌する。 イ 上記(1)ア、イ、オによれば、以下のLEDランプ11の発明が記載されている。 「LEDチップ2、基板3、電気絶縁物4、陽極側回路パターン5a、陰極側回路パターン5b、ボンディングワイヤ6、凹部7を形成するフレーム8、蛍光体非含有樹脂層12、蛍光体シート13を備えるLEDランプ11であって、 LEDチップ2は、例えば紫外発光タイプのLEDチップが用いられ、 基板3は、放熱性と剛性を有するアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、ガラスエポキシ等の平板からなり、 陽極側と陰極側の回路パターン5a,5bは、銅(Cu)とニッケル(Ni)の合金、金(Au)等により形成され、 LEDチップ2は、底面電極を回路パターン5a,5bの一方、例えば陽極側回路パターン5a上に載置して電気的に接続する一方、上面電極を回路パターン5a,5bの他方、例えば陰極側回路パターン5bにボンディングワイヤ6により電気的に接続され、 基板3上には、上方に向けて徐々に拡径する円錐台状の凹部7を形成するフレーム8が設けられており、LEDチップ2はこの凹部7内に配置され、 凹部7は、例えば底面直径が2.0?4.0mm、上面直径が1.5?4.5mm、深さが0.5?1.0mmの円錐台状に形成されており、フレーム8は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリカーボネート(PC)等により形成され、 蛍光体非含有樹脂層12は、凹部7内のLEDチップ2を封止する透明な層であり、蛍光体を含有しない透明な液状の熱硬化性樹脂により形成され、 蛍光体シート13は、蛍光体非含有樹脂層12が形成された凹部7内に、蛍光体非含有樹脂層12上端に密着させた状態で、例えば接着、ハーメチックシール、圧着等の方法によって固定され、 蛍光体シート13は、透明な熱硬化性樹脂に前述したような蛍光体を添加混合した後、例えばドクターブレード法等により150℃で1時間硬化することにより形成され、 紫外発光タイプのLEDチップ2を使用して白色発光を得る場合には、RGB蛍光体が主として用いられる、 LEDランプ11。」(以下「引用発明」という。) 5 対比 本願発明の引用発明を対比する。 (1)本願発明の「導電部」と、引用発明の「銅(Cu)とニッケル(Ni)の合金、金(Au)等により形成され」る「陽極側と陰極側の回路パターン5a,5b」を対比すると、両者は相当関係にある。 (2)本願発明の「この導電部に実装され、ピーク波長360nm以上420nm以下の1次光を発光する発光ダイオードチップ」と、引用発明の「底面電極を回路パターン5a,5bの一方、例えば陽極側回路パターン5a上に載置して電気的に接続する一方、上面電極を回路パターン5a,5bの他方、例えば陰極側回路パターン5bにボンディングワイヤ6により電気的に接続され」る「LEDチップ2」であって、「例えば紫外発光タイプのLEDチップ」を対比すると、両者は「この導電部に実装され、1次光を発光する発光ダイオードチップ」の点で一致する。 (3)本願発明の「この発光ダイオードチップを封止し、第1の透明樹脂硬化物からなる透明樹脂層」と、引用発明の「凹部7内のLEDチップ2を封止する透明な層であり、蛍光体を含有しない透明な液状の熱硬化性樹脂により形成され」る「蛍光体非含有樹脂層12」を対比すると、両者は相当関係にある。 (4)本願発明の「第2の透明樹脂硬化物中に前記1次光を受光して前記1次光より長波長の2次光を発光する蛍光体粉末が分散された蛍光体層」と、引用発明の「透明な熱硬化性樹脂に前述したような蛍光体を添加混合した後、例えばドクターブレード法等により150℃で1時間硬化することにより形成され」る「蛍光体シート13」を対比する。 引用発明の「透明な熱硬化性樹脂」が本願発明の「第2の透明樹脂」に相当し、「蛍光体シート13」が本願発明の「蛍光体層」に相当する。また、一般に、蛍光体が、1次光を受光し、受光した1次光より長波長の2次光に変換して出力する性質を有することは、技術常識である。してみると、両者は相当関係にある。 (5)引用発明の「LEDランプ11」は、「紫外発光タイプのLEDチップ2を使用し」、「RGB蛍光体」を「主として用い」ることで「白色発光」が得られるから、本願発明の「白色LEDランプ」に相当する。 (6)以上のことから、本願発明と引用発明は、 「導電部と、 この導電部に実装され、1次光を発光する発光ダイオードチップと、 この発光ダイオードチップを封止し、第1の透明樹脂硬化物からなる透明樹脂層と、 第2の透明樹脂硬化物中に前記1次光を受光して前記1次光より長波長の2次光を発光する蛍光体粉末が分散された蛍光体層と、を備えた白色LEDランプ。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:発光ダイオードチップが発光する1次光が、本願発明では「ピーク波長360nm以上420nm以下」であるのに対し、引用発明では紫外光である点。 相違点2:本願発明は「上記蛍光体粉末の粒径が10μm以上100μm以下であり、上記蛍光体層は、蛍光面全面に亘り厚さが0.1mm以上1.5mm以下であり、かつ上記蛍光体層に含有される蛍光体重量が、スラリー濃度に換算して40重量%以上80重量%以下であり、上記透明樹脂層の厚さが、0.2mm以上1mm以下であり、白色LEDランプの発光効率が20lm/W以上であると共に、出射光に含まれる前記1次光のエネルギーが0.4mW/lm以下である」のに対し、引用発明はそのようなものであるのか否か明らかでない点。 6 判断 以下、上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 紫外発光タイプのLEDチップが代表的には360?420nmの範囲の発光波長を有することは、例えば、国際公開第2006/033239号公報(「[0014]…このような紫外発光タイプのLEDチップ2は、代表的には360?420nmの範囲の発光波長を有する。」との記載を参照。)に記載されるように周知技術である。前記周知技術を踏まえると、相違点1は実質的な相違点ではない。 (2)相違点2について ア 一般に、LEDランプにおいて発光効率を高めること、また、紫外発光タイプのLEDを用いる際に紫外光の漏出を防止することは、何れも周知の技術課題である(例えば、平成26年7月7日付け意見書には「(3)…従来から高輝度の発光装置を得ることは一般的かつ永遠の課題であり、ほぼ全ての引用文献に記載された発光装置は、高輝度を実現することを第一の目的としている…」とあり、請求人が記載するとおり発光効率を高める課題は周知である。また、例えば、当審拒絶理由通知で引用する刊行物2には「【0020】(c)更に、第2の従来技術の第3の問題点は、蛍光体の励起光である紫外線が半導体発光装置の外部に漏出しやすい点である。一般に紫外線は高いエネルギーを持っているため、樹脂等を劣化させるだけでなく生体細胞をも傷付け破壊するので、その強い照射を受けるのは人体にとっても良くない。…【0030】本発明の更に他の目的は、紫外線の漏出がなく、安全で明るい光が得られる半導体発光装置を提供することである。…」(当審注:下線は、当審が付した。以下同様である。)と記載されており、紫外発光タイプのLEDを用いる際に紫外光の漏出を防止する課題は周知である。)。 イ 当審拒絶理由通知で引用した刊行物2には、「【0020】…第2の従来技術において紫外線発光素子2UVの紫外線が外部に漏出する原因は、蛍光体の粒子が蛍光コーティング部材20全体に充満しているのではなく、蛍光体粒子間に間隙が存在するためそこを通って外に出て行く紫外線が存在するためである。したがって、これを防ぐには蛍光コーティング部材20に多量の蛍光体を配合し、蛍光コーティング部材20中の蛍光体濃度を極力高くすれば良いと考えられる。…、実際にこの様な配合にすると確かに漏出する紫外線は減少するものの、可視光成分もまた減少する。その要因は、蛍光体による光散乱が増加し蛍光コーティング部材20の光透過性が低下するためである。一般に蛍光体はその発光波長域で必ずしも光透過性が高いものばかりであるとは言えない。加えて屈折率が比較的高いものが多いため、屈折率の低い蛍光コーティング部材20との界面において乱反射を起こしやすい。したがって、蛍光コーティング部材20中の蛍光体濃度が比較的低い状態では、濃度を高くして行くと確かに可視光成分は増加して行くが、ある蛍光体濃度を頂点としてそれ以上濃度を上げると可視光成分は反対に減少して行く。即ち、可視光成分の量に着目すると、蛍光体濃度の最適値がある。…」との記載がある。該記載によれば、蛍光体濃度を高くすることにより、紫外線が外部に漏出することを防ぐ旨の技術事項が開示されている。 ウ 当審拒絶理由で引用した刊行物3には、「【0036】また、UV漏れの挙動は、無機蛍光体、有機蛍光体ともに、蛍光体濃度の上昇や蛍光層の厚みの増加に従って減少するという傾向を示す。」との記載がある。該記載によれば、蛍光体濃度の上昇や蛍光層の厚みの増加に従ってUV漏れが減少する旨の技術事項が開示されている。 エ 当審拒絶理由で引用した刊行物4には、「【0021】…いくつかの実施形態においては、Sr-SiON:Eu^(2+)は、白色光を生成するために、赤色放射蛍光体、青色放射蛍光体、及びUV発光ダイオードと組み合わせて使用することができる。…Sr-SiON:Eu^(2+)、赤色放射蛍光体、及び青色放射蛍光体の量は、白色光を作り出し、デバイスから変換されずに漏出するUV光の量を最小にするように調節される。…」との記載がある。該記載によれば、蛍光体の量は、UV光の量を最小にするように調節される旨の技術事項が開示されている。 オ 当審拒絶理由で引用した刊行物5には、「【0042】…また、蛍光物質の粒径は1μm?100μmの範囲が好ましく、より好ましくは5μm?50μmである。さらに好ましくは10μmから30μmである。15μmより小さい粒径を有する蛍光物質は、比較的凝集体を形成しやすい傾向にある。また粒径範囲により蛍光物質は光の吸収率及び変換効率が高く且つ励起波長の幅が広い。このように、光学的に優れた特徴を有する大粒径蛍光物質を含有させることにより、発光素子の主波長周辺の光をも良好に変換し発光することができ、発光装置の量産性を向上することもできる。」との記載があり、近紫外LEDと組み合わせた蛍光体についてではあるが、大粒径蛍光物質(1μm?100μm)は光の変換効率が高い旨の技術事項が開示されている。 カ 当審拒絶理由で通知した刊行物7には、「【0005】このようなチップ前面への光量の増加にともなって、透明樹脂に添加、混合させる蛍光体粒子の粒径の大きさも光取出し効率に影響を及ぼすようになってきている。一般に、蛍光体粒子の粒径が大きいほど、発光効率が高く光取出し効率が向上することが知られている。」との記載があり、蛍光体粒子の粒径が大きいほど、発光効率が高く光取出し効率が向上する旨の技術事項が開示されている。 キ 特開2003-298117号公報には、「【0008】…発光素子と蛍光体層が離れているので、蛍光体で反射された発光素子の光も励起光も発光素子へ戻って吸収される割合は格段に小さくなる。」と記載され、また、特開2005-277331号公報には、「【0054】…例えば、図2に示すように蛍光体5を含有した透光性部材4を反射部材2に充填する前に透明部材6を充填しておき、その上面に透光性部材4を充填してもよい。これにより、発光素子3の外部量子効率光をより向上させるとともに、蛍光体5の光変換効率を向上させることができる。その結果、発光装置の放射光強度を向上させるとともに、発光面における色むらや照度分布の偏りを抑制することができる。」と記載され、さらに、特開2002-50800号公報には、「【0066】(実施例3)キャビティ内に充填させるエポキシ樹脂のうち上層部のみに蛍光物質を含有させる以外は実施例1と同様にして発光ダイオードを形成すると、発光出力は実施例1より約10%向上する。」と記載され、エポキシ樹脂の上層部のみに蛍光物質を含有させると発光出力が10%向上することが記載されている。前記各記載によれば、LEDチップと蛍光体との間に透明な樹脂を配置し、LEDチップと蛍光体を離して配置することにより、発光出力が向上するであろうことは、技術常識と認められる。 ク 蛍光体の粒径として、10μm以上100μm以下のものは、刊行物5に記載されるよう周知である(上記オで引用する刊行物5の記載を参照。)。 また、蛍光体シートの厚さとして、300?800μm程度のものは、例えば特開2007-116116号公報(【0046】等参照)、特開2007-317816号公報(【0014】等参照)、特開2007-88060号公報(【0060】等参照。)に記載されるよう周知である。 そして、引用発明は、LEDチップ、蛍光体非含有樹脂層、蛍光体シートが配置される凹部の深さが0.5?1.0mmであるところ、上記のとおり、蛍光体シートの厚さとして300?800μm程度のものが周知であること、LEDチップの高さとして、全高が70?90μmのLEDチップ(特開2001-111119号公報【0023】参照)や、250μmの高さのチップ(特開2002-324918号公報【0023】参照)が周知であることに照らすと、蛍光体非含有樹脂層の層厚として0.2mm以上0.6mm程度のものは、予測し得る範囲のものである。 更に、LEDランプの発光効率として20lm/W以上の効率は、刊行物5(例えば、【0067】には、23.9lm/Wのものが記載されている。)、刊行物6(例えば、【0391】には、20lm/W以上のものが記載されている。)の記載に照らし、格別のものとは認められない。 ケ 以下、上記ア?クを踏まえて、判断する。 引用発明は、紫外発光タイプのLEDチップを用いた白色発光を得るLEDランプであるところ、上記アを踏まえると、発光効率を高めること、そして、紫外光の漏出を防止することは、何れも周知の課題である。そして、引用発明は、「凹部7内のLEDチップ2を封止する透明な層であ」る「蛍光体非含有樹脂層12」を備え、「蛍光体シート13は、…蛍光体非含有樹脂層12上端に密着させた状態で、…固定され」ているところ、LEDチップ2と蛍光体シート13は離して配置されているから、上記キに照らし、LEDチップ2と蛍光体シート13が接しているものと比較して発光出力が向上する配置となっている。更に、上記イ?オによれば、紫外光の漏出や、発光効率は、蛍光体の濃度、蛍光体層の厚さ、蛍光体の粒径等に依存するところ、引用発明において、紫外光の漏出を防止(低減)すると共に、発光効率が高まるように、蛍光体の濃度、蛍光体シートの厚さ、蛍光体の粒径、蛍光体非含有樹脂層の層厚(LEDチップと蛍光体シートとの間の距離)を設定することは、当業者が容易に為し得たことと認められる。そしてその際、各設定値を具体的にどの様な値に設定するかは、許容する紫外線の漏出量や所望する発光効率に応じ、当業者が適宜設定し得る設計事項と認められるから、引用発明において、蛍光体の粒径を「10μm以上100μm以下」に、蛍光体シートの厚さを「0.1mm以上1.5mm以下」に、蛍光体の濃度を「スラリー濃度に換算して40重量%以上80重量%以下」に、蛍光体非含有樹脂層の層厚を「0.2mm以上1mm以下」にして、白色LEDランプの発光効率が20lm/W以上であると共に、出射光に含まれる前記1次光のエネルギーが0.4mW/lm以下」となるように為し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項と為すことに困難性は認められない。 (3)作用効果について 本願発明が奏する作用効果は、引用発明、上記周知技術に基づいて当業者が予測しうる程度のものであって、格別のものとは認められない。 (4)小括 以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-08-08 |
結審通知日 | 2014-08-12 |
審決日 | 2014-09-02 |
出願番号 | 特願2012-228383(P2012-228383) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 百瀬 正之 |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
小松 徹三 鈴木 肇 |
発明の名称 | 白色LEDランプ、バックライトおよび照明装置 |
代理人 | 特許業務法人東京国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人東京国際特許事務所 |