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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1292964
審判番号 不服2013-15192  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-07 
確定日 2014-10-16 
事件の表示 特願2011-103855「携帯電子機器および携帯電子機器の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月15日出願公開、特開2011-181092〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成19年8月20日(優先権主張 平成18年8月25日、日本)を国際出願日とする出願である特願2008-530898号の一部を平成23年5月6日に新たな特許出願としたものであって、平成23年6月6日付けて手続補正がなされ、平成24年10月15日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月21日付けで意見書が提出されたが、平成25年4月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月7日付けで拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
そして、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年6月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
接触を検出する第1の検出部と、
前記第1の検出部へ接触が検出されると第1状態から第2状態に遷移し、当該第2状態にて前記第1の検出部への接触が検出されない状態が前記所定時間継続すると前記第1状態へと遷移する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2状態から前記第1状態へと遷移する際に、当該第1状態に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する制御を実行する第1接触検出モードを有することを特徴とする携帯電子機器。」

2.引用刊行物(引用例1)の記載、 引用例1記載の発明(引用発明)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2002-297318号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)引用刊行物(引用例1)の摘示
(a)「【請求項1】タッチパネル上の所定位置において、発光素子と受光素子との間を結ぶ光の遮断の有無により上記所定位置を操作しているか否かを判別するタッチパネル制御装置であって、
上記受光素子が上記発光素子からの光を検出しない場合に、上記所定位置を操作していることを示すタッチ位置データを送信するタッチ位置データ送信部と、
上記受光素子が上記発光素子からの光を検出した場合に、上記タッチパネルを操作していないことを示すタッチオフデータを送信するタッチオフデータ送信部と、
上記タッチオフデータを取得した場合に、タッチオフの時間の計測を開始するタイマと、
上記タッチ位置データ送信部および上記タッチオフデータ送信部からの各データを受信可能であって、上記タッチ位置データを受け取った場合および上記計測時間が所定時間以内の場合には上記タッチパネルを操作していると判断する一方で、上記計測時間が上記所定時間を越えた場合には上記タッチパネルを操作していないと判断する制御部と、を備えることを特徴とするタッチパネル制御装置。」(【請求項1】の記載。)

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タッチパネル上の所定位置において、発光素子と受光素子との間を結ぶ光の遮断の有無により所定位置を操作しているか否かを判別するタッチパネル制御装置ならびにタッチパネル制御用プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】車両用のナビゲーション装置のようにタッチパネル上で操作可能な装置には、タッチパネル上への押圧を感知して制御する感圧式タッチパネル制御、あるいはタッチパネル上を走る赤外線の遮断の有無で制御する赤外線式タッチパネル制御が採用されている。
【0003】感圧式タッチパネル制御は、赤外線式タッチパネル制御に比べて低コストであるが、一般的にその信頼性は低い。感圧式タッチパネル制御の信頼性は、タッチパネルの材料に依存するためである。一方、赤外線式タッチパネル制御は、感圧式タッチパネル制御に比べて高コストであるが、その信頼性は高い。発光ダイオードおよびトランジスタを用いているため、その信頼性はデバイスに依存するためである。なお、このような感圧式タッチパネル制御あるいは赤外線式タッチパネル制御に関する発明として、特開平9-44308号公報および特開平11-3440号公報記載の各発明が知られている。」(【0001】?【0003】の記載。当審注:下線は当審で付与した。以下、同様。)

(c)「【0009】特に、タッチパネル10上を指でなぞる際に、赤外線同士の間に指等がくる機会がある。したがって、指等が離れたと誤認識されることになる。かかる誤認識を防止するために、赤外線発光ダイオード11,13とフォトトランジスタ12,14を増やして、赤外線同士の間を狭くする方法も考えられる。しかし、それでは、コストが高くなるという問題がある。また、指よりも細いタッチパネル専用のペンを用いた場合には、赤外線同士の間をいくら狭くしても、誤認識を解消できない。
【0010】また、感圧式タッチパネル制御に関する特開平9-44308号公報記載の発明は、タッチ検出を2度行うことによりタッチ位置を確定するものである。したがって、当該発明では、指等が離れていないにもかかわらずタッチオフと誤認識される問題を解決できない。また、特開平11-3440号公報記載の発明は、ある一定領域でのオンオフの精度を出すものである。したがって、特開平9-44308号公報記載の発明と同様、指等が離れていないにもかかわらずタッチオフと誤認識される問題を解決できない。
【0011】本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、タッチパネル上を操作する際に、低コストで正確なタッチ判別ができるタッチパネル制御装置ならびにタッチパネル制御用プログラムを提供することを目的とする。」(【0009】?【0011】の記載。)

(d)「【0019】図1は、本発明のタッチパネル制御装置1の構成を示すブロック図である。タッチパネル制御装置1は、タッチ位置データ送信部2と、タッチオフデータ送信部3と、タイマとしてのリリースタイマ4と、制御部5と、ROM6と、コマンドデータ送信部7とを備えている。
【0020】タッチ位置データ送信部2は、所定位置にある図示されないフォトトランジスタ(受光素子)が、対向する図示されない赤外線発光ダイオード(発光素子)からの赤外線を検出しなくなった際に、その所定位置をタッチしていることを示すタッチ位置データを送信する構成部である。タッチ位置データ送信部2は、指等が別の位置における赤外線を遮った場合には、その別の位置をタッチしていることを示すタッチ位置データを送信する。
【0021】タッチオフデータ送信部3は、フォトトランジスタが赤外線発光ダイオードからの赤外線を再び検出した場合に、その所定位置と共にタッチパネルを操作していないことを示すタッチオフデータを送信する構成部である。
【0022】なお、タッチ位置データ送信部2とタッチオフデータ送信部3とを別個に設けずに、一つのデータ送信部としても良い。その場合には、フォトトランジスタからの受光量に基づく信号によって、タッチ位置データとタッチオフデータとを切り換えて制御部5に送信する。
【0023】リリースタイマ4は、タッチオフデータを取得した際に時間の計測を開始するタイマである。リリースタイマ4は、タッチ位置データ送信部2から新たな位置データが送信されると、そのカウントをリセットする。
【0024】制御部5は、タッチ位置データ送信部2からのタッチ位置データおよびタッチオフデータ送信部3からのタッチオフデータを受信可能な構成部である。制御部5は、タッチ位置データを受け取った場合およびリリースタイマ4が計測する計測時間が所定時間以内の場合には、タッチパネルを操作していると判断する。一方、計測時間が所定時間を越えた場合にはタッチパネルを操作していないと判断する。なお、この実施の形態では、所定時間を、0.15から0.20秒の範囲の時間に設定している。この理由については後述する。
【0025】ROM6は、制御部5の制御プログラムを記録した読み取り専用のメモリである。ROM6には、制御部5がタッチ位置データ送信部2、タッチオフデータ送信部3およびリリースタイマ4から送信される各データに基づいてタッチのオンオフおよびタッチ位置のデータを判別し、その判別結果に基づいてコマンドデータ送信部7に各処理データを送信するためのプログラムが記録されている。コマンドデータ送信部7は、制御部5からの各処理データを受け取って、別の回路にコマンドを出力する構成部である。
【0026】図2は、タッチパネル制御装置1の処理動作の流れを示すフローチャートである。
【0027】タッチパネルに指等をタッチすることにより、制御部5がタッチ位置データ送信部2からタッチ位置データを取得する時点から開始する(ステップS101:タッチ位置データ取得ステップ)。すると、制御部5は、タッチオフデータ送信部3からタッチオフデータを取得したか否かを判別する(ステップS102:タッチオフデータ取得判別ステップ)。この結果、タッチオフデータを取得した場合には、リリースタイマ4はカウントを開始する(ステップS103:時間計測ステップ)。
【0028】次に、制御部5は、タッチ位置データ送信部2から所定時間以内にタッチ位置データを取得したか否かを判別する(ステップS104:計測時間判別ステップ)。この結果、制御部5は、所定時間以内にタッチ位置データを取得した場合にはカウントをクリアし(ステップS105)、指等でタッチパネルを押し下げ中と判断した上で(ステップS106:オン判断ステップ)、ステップS102に戻る。
【0029】一方、制御部5は、ステップS104において、所定時間以内にタッチ位置データを取得しなかった場合には、指等がタッチパネルから離れたものと判断する(ステップS107:オフ判断ステップ)。また、制御部5は、ステップS102において、タッチオフデータを取得していない場合には、未だ指等でタッチパネルを押し下げ中と判断する(ステップS108:オン判断ステップ)。かかる一連の流れで、処理が終了する。
【0030】図3は、本発明のタッチパネル制御装置1と従来のタッチパネル制御装置との機能を比較して示す図である。
【0031】図3において、Aは、従来のタッチパネル制御装置における制御システム(以後、従来システムという)を示す。また、Bは、本発明のタッチパネル制御装置1における制御システム(以後、本発明のシステムという)を示す。
【0032】タッチパネル上を指でなぞっていき、途中でタッチパネルから指を離す操作をした場合、従来のシステムは、タッチパネルをなぞっている最中でタッチオフデータを取得すると、(1)(当審注:(1)は丸付き数字の1を置き換えたものである。以下、同様。)で示すように指が離れたと判断する。そして、従来のシステムは、再びタッチ位置データを取得すると、(2)で示すように押し下げ操作をしたと判断する。一番右側の(1)の位置は、実際にタッチパネルから指が離れた時期なので正しい認識である。しかし、左から3つ目までの(1)の位置は、まだタッチパネルをなぞっている最中なので誤認識をした位置ということになる。
【0033】これに対して、本発明のシステムは、タッチパネルをなぞっている最中でタッチオフデータを取得しても、(3)で示すようにまだ指がタッチされていると判断している。タッチオフデータを取得した時には、リリースタイマ4は、(5)の位置でタイマのカウントを開始するが、次のタッチ位置データの取得によって、(6)の位置でカウントをリセットする。タッチオフデータの取得から次のタッチ位置データの取得までの時間が、予め設定されていた所定時間内であったからである。
【0034】また、(3)の位置から(4)の位置に示すように、本発明のシステムは、タッチパネルから指を離しても、リリースタイマ4が所定期間をカウントするまで((5)の位置から(7)の位置まで)、指が離れていないと判断している。しかし、かかる誤認識は、ユーザにとって不都合はない。」(【0019】?【0034】の記載。)

(e)図3は、タッチパネル制御装置1の機能を示す図であり、タッチパネル上を指でなぞっていき、途中でタッチパネルから指を離す操作をした場合が示されている。
図3には、第1行に「タッチ操作」、第2行に「タッチデータ」、第4行にBとして「本発明のシステム」、第5行に「リリースタイマの動作状況」が示され、具体的には、「タッチ操作」として「タッチパネル上をなぞる」操作に応じて、「時間の流れ」にしたがって、「タッチデータ」として3つの「タッチ位置データ」、1つの「タッチオフデータ」、6つの「タッチ位置データ」、1つの「タッチオフデータ」、2つの「タッチ位置データ」、1つの「タッチオフデータ」、3つの「タッチ位置データ」をこの順に受信し、その後、「タッチ操作」として「タッチパネルから指を離す」操作に応じて、「時間の流れ」にしたがって、6つの「タッチオフデータ」を受信した場合が示されている。
そして、上記のような操作をした場合に、「本発明のシステム」は、「タッチパネル上をなぞる」操作に応じる「タッチデータ」を受信している期間は、「タッチ位置データ」を受信している期間のみでなく「タッチオフデータ」を受信している(3)の位置の期間も含め「押下中」と判断し、また、「タッチパネルから指を離す」操作に応じる「タッチオフデータ」を2つ受信する(3)の位置の期間も、「押下中」と判断し、「タッチパネルから指を離す」操作に応じる3つ目の「タッチオフデータ」を受信する(4)の位置以降は、「押下中でない」と判断することが示されている。
また、「リリースタイマの動作状況」は、「タッチオフデータ」を受信した(5)の位置で「動作中」となり、次の「タッチ位置データ」を受信した(6)の位置で「停止中」となること、また、「タッチパネルから指を離す」操作に応じる1つ目の「タッチオフデータ」を受信した(5)の位置で「動作中」となり、3つ目の「タッチオフデータ」を受信する(7)の位置で「停止中」となることが示されている。

(2)引用発明

(a)目的、タッチパネル、対象装置
上記摘示(a)?(e)から、「タッチパネル」の存在は明らかであり、本願発明と対比する引用発明として、「タッチパネル上を操作する際に、指等が離れたと誤認識されることを防止し、正確なタッチ判別ができるようにするための」、「タッチパネル」と上記「タッチパネル制御装置1」を備える装置、を認めることができる。

(b)制御部5の動作,図3について
「タッチパネル制御装置1」における制御部5は、上記ROM6に記録されているプログラムにしたがって、「タッチ位置データ送信部2、タッチオフデータ送信部3およびリリースタイマ4から送信される各データに基づいてタッチのオンオフおよびタッチ位置のデータを判別し、その判別結果に基づいてコマンドデータ送信部7に各処理データを送信する」ように動作することは明らかである。
また、図3は、タッチパネル制御装置1の機能を示す図であり、「時間の流れ」にしたがって、「タッチパネル上をなぞる」操作をしその後「タッチパネルから指を離」した場合の例が示されており、上記(1)の摘示(d),図2を考慮すれば、制御部5は、図3の表の第2行の「タッチ位置データ」/「タッチオフデータ」を受信し、第4行のBの「押下中」(タッチパネルを操作している)/「押下中でない」(タッチパネルを操作していない)という判別、および、タッチ位置の判別をしていると理解される。

(c)引用発明
上記(1)の摘示および上記(a),(b)によれば、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「タッチパネル上を操作する際に、指等が離れたと誤認識されることを防止し、正確なタッチ判別ができるようにするための装置であって、
タッチパネルと、タッチパネル上の所定位置において、発光素子と受光素子との間を結ぶ光の遮断の有無により所定位置を操作しているか否かを判別するタッチパネル制御装置を備える装置において、
タッチパネル制御装置1は、タッチ位置データ送信部2と、タッチオフデータ送信部3と、タイマとしてのリリースタイマ4と、制御部5と、ROM6と、コマンドデータ送信部7とを備え、
タッチ位置データ送信部2は、所定位置にあるフォトトランジスタ(受光素子)が、赤外線を検出しなくなった際に、その所定位置をタッチしていることを示すタッチ位置データを送信する構成部であり、
タッチオフデータ送信部3は、フォトトランジスタが赤外線を再び検出した場合に、その所定位置と共にタッチパネルを操作していないことを示すタッチオフデータを送信する構成部であり、
リリースタイマ4は、タッチオフデータを取得した際に時間の計測を開始するタイマであり、リリースタイマ4は、タッチ位置データ送信部2から新たな位置データが送信されると、そのカウントをリセットするものであり、
制御部5は、タッチ位置データ送信部2からのタッチ位置データ(例えば、図3の第2行)およびタッチオフデータ送信部3からのタッチオフデータ(例えば、図3の第2行)を受信可能な構成部であり、制御部5は、タッチ位置データを受け取った場合およびリリースタイマ4が計測する計測時間が所定時間以内の場合には、タッチパネルを操作している(例えば、図3の第4行のBの「押下中」)と判断し、一方、計測時間が所定時間を越えた場合にはタッチパネルを操作していない(例えば、図3の第4行のBの「押下中でない」)と判断するものであって、
ROM6に記録されているプログラムにしたがって、タッチオフデータ送信部3およびリリースタイマ4から送信される各データに基づいてタッチのオンオフおよびタッチ位置のデータを判別し、その判別結果に基づいてコマンドデータ送信部7に各処理データを送信するように動作し、
コマンドデータ送信部7は、制御部5からの各処理データを受け取って、別の回路にコマンドを出力する構成部であり、
タッチパネル制御装置1の処理動作の流れは、タッチパネルに指等をタッチすることにより、制御部5がタッチ位置データ送信部2からタッチ位置データを取得する時点から開始する
装置。」
3.対比、一致点、相違点
本願発明と引用発明とを対比する。

ア 「接触を検出する第1の検出部と、」について
引用発明は「タッチパネル」を備え、「タッチパネル制御装置」は「タッチパネル上の所定位置において、発光素子と受光素子との間を結ぶ光の遮断の有無により所定位置を操作しているか否かを判別する」ものであるところ、
その「タッチパネル」は、本願発明の「接触を検出する第1の検出部」といい得るものであることは明らかである。

イ 「前記第1の検出部へ接触が検出されると・・・第1状態へと遷移する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2状態から・・・前記第1の検出部への接触に対応する制御を実行する第1接触検出モードを有する」について

イ-1 本願発明の「制御部」について
請求項1では、「制御部」は、
・「前記第1の検出部へ接触が検出されると第1状態から第2状態に遷移し、当該第2状態にて前記第1の検出部への接触が検出されない状態が前記所定時間継続すると前記第1状態へと遷移する」(前段)ものであり、かつ、
・「前記第2状態から前記第1状態へと遷移する際に、当該第1状態に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する制御を実行する第1接触検出モードを有する」(後段)ものである、
としている。
つまり、前段では、「制御部」自身の状態が変化(遷移)するものとしつつ、後段では「制御部」がその変化(遷移)に基づいて制御を実行するとしていて「その変化(遷移)に基づいて制御を実行する部分」の存在が認められるところ、
その「制御を実行する部分」の状態が変化するとは考え難く、技術合理的には、その「制御を実行する部分」と「状態が変化(遷移)する部分」は同じものではなく、「状態が変化(遷移)する部分」に基づいて制御する「制御を実行する部分」が存在するのが通常である。
以上のことからすれば、本願発明の「制御部」は、その両者を含むものと解するのが妥当であり、そのように解したとしても、発明の実質的内容は変わらない。
すなわち、請求項1に特定される「制御部」は、技術合理的には、以下のように解される。
A:「制御部」は、「前記第1の検出部へ接触が検出されると第1状態から第2状態に遷移し、当該第2状態にて前記第1の検出部への接触が検出されない状態が前記所定時間継続すると前記第1状態へと遷移する」ような第1状態か若しくは第2状態を決定すると共に、
B:「制御部」は、「前記第2状態から前記第1状態へと遷移する際に、当該第1状態に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する制御を実行する」ようにする「第1接触検出モードを有する」ものである、
(すなわち、「制御部」は、上記状態の決定とその決定に基づく制御の実行の機能を行うもの、と技術合理的に解される。)
{なお、
A’:「制御部」は、「前記第1の検出部へ接触が検出されると第1状態から第2状態に遷移し、当該第2状態にて前記第1の検出部への接触が検出されない状態が前記所定時間継続すると前記第1状態へと遷移する」ような第1状態か若しくは第2状態を決定し自身の状態とするもの、すなわち、決定の機能のみを行うもので、
B’:その決定された状態は、「前記第2状態から前記第1状態へと遷移する際に、当該第1状態に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する制御を実行する」ように用いられる「第1接触検出モード」が存在する、とするもの、
とも解することが可能ではあるものの、
上記Aの「状態の決定」機能の部分のみを「制御部」とすれば、AはA’となり、これに伴い、BはB’となる。すなわち、A・Bがいえれば、A’・B’もいえることになり、且つ発明の実質も変わらず、上記A,Bのように解したとしても、支障はない。}

以下、本願発明の「制御部」を上記A、Bのように解することとして、引用発明の「タッチパネル制御装置」と対比する。

イ-2 上記A(「制御部」は、「前記第1の検出部へ接触が検出されると第1状態から第2状態に遷移し、当該第2状態にて前記第1の検出部への接触が検出されない状態が前記所定時間継続すると前記第1状態へと遷移する」ような第1状態か若しくは第2状態を決定する)について

(a)「前記第1の検出部へ接触が検出されると第1状態から第2状態に遷移し、」について
〈前記第1の検出部へ接触が検出される、第2状態〉
引用発明の「タッチパネル制御装置」は、「タッチパネル上の所定位置において、発光素子と受光素子との間を結ぶ光の遮断の有無により所定位置を操作しているか否かを判別する」ものであり、
・その「タッチ位置データ送信部2」は、「所定位置にあるフォトトランジスタ(受光素子)が、赤外線を検出しなくなった際に、その所定位置をタッチしていることを示すタッチ位置データを送信する」ものであり、
・その「制御部5」は、「タッチ位置データを受け取った場合」「には、タッチパネルを操作している(例えば、図3の第4行のBの「押下中」)と判断」するものである。
以上のことから、引用発明の「タッチ位置データを受け取った場合」は、本願発明の「前記第1の検出部へ接触が検出される」場合、といい得るものである。
そして、引用発明の「タッチパネルを操作している(例えば、図3の第4行のBの「押下中」)と判断」される状態は、「タッチパネル制御装置」(詳しくは、その「制御部5」)が判断し決定するもので、本願発明の(「制御部」が決定する)「第2状態」といい得るものである。

〈第1状態〉
また、引用発明の「タッチパネル制御装置」の
・「タッチオフデータ送信部3」は、「フォトトランジスタが赤外線を再び検出した場合に、その所定位置と共にタッチパネルを操作していないことを示すタッチオフデータを送信する」ものであり、
・「リリースタイマ4は、タッチオフデータを取得した際に時間の計測を開始するタイマ」であり、
・「制御部5は、」「リリースタイマ4が計測する」「計測時間が所定時間を越えた場合にはタッチパネルを操作していない(例えば、図3の第4行のBの「押下中でない」)と判断するもの」である。
この、引用発明の「タッチパネルを操作していない(例えば、図3の第4行のBの「押下中でない」)と判断」される状態は、「タッチパネル制御装置」(詳しくは、その「制御部5」)が判断し決定するもので、本願発明の(「制御部」が決定する)「第1状態」といい得るものである。

〈第1状態から第2状態に遷移〉
そして、引用発明でも、「タッチパネルを操作していない(例えば、図3の第4行のBの「押下中でない」)と判断」される状態(本願発明でいう「第1状態」)において、「タッチ位置データを受け取った場合」(本願発明の「前記第1の検出部へ接触が検出され」た場合)、「タッチパネルを操作している(例えば、図3の第4行のBの「押下中」)と判断」される状態(本願発明でいう「第2状態」)となることは明らかであり、
引用発明の「タッチパネル制御装置」も、「前記第1の検出部へ接触が検出されると第1状態から第2状態に遷移し、」とする状態を決定しているということができる。

(b)「当該第2状態にて前記第1の検出部への接触が検出されない状態が前記所定時間継続すると前記第1状態へと遷移する」について
上記のとおり、引用発明の「タッチパネル制御装置」(詳しくは、「制御部5」)は、
そのリリースタイマ、すなわち、「タッチオフデータを取得した際に時間の計測を開始するタイマ」である「リリースタイマ4」「が計測する」「計測時間が所定時間を越えた場合にはタッチパネルを操作していない(例えば、図3の第4行のBの「押下中でない」)と判断するもの」であるから、「タッチオフデータを取得した際に時間の計測を開始」した「計測時間が所定時間を越えた場合にはタッチパネルを操作していない(例えば、図3の第4行のBの「押下中でない」)と判断する」ものである。
すなわち、引用発明の「タッチパネル制御装置」も、「当該第2状態にて前記第1の検出部への接触が検出されない状態が前記所定時間継続すると前記第1状態へと遷移する」ような第1状態か若しくは第2状態を決定しているということができる。

(c)まとめ
以上のことから、引用発明の「タッチパネル制御装置」も、本願発明の「制御部」と同様、「前記第1の検出部へ接触が検出されると第1状態から第2状態に遷移し、当該第2状態にて前記第1の検出部への接触が検出されない状態が前記所定時間継続すると前記第1状態へと遷移する」ような第1状態か若しくは第2状態を決定する、ものといえ、この点において、本願発明と相違しない。

イ-3 上記B(「制御部」は、「前記第2状態から前記第1状態へと遷移する際に、当該第1状態に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する制御を実行する」ようにする「第1接触検出モードを有する」ものであるについて

上記Bは、
B1:制御部が、前記第2状態・前記第1状態に基づいて制御を実行すること
B2:実行される制御が、第1状態に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する制御であること
B3:制御の実行が、前記第2状態から前記第1状態へと遷移する際に、行われること、
B4:そのようなモードを「第1接触検出モード」とすること
を要件としている。

(a)B1について
引用発明の「タッチパネル制御装置」は、
その「制御部5が」「タッチのオンオフおよびタッチ位置のデータを判別し、その判別結果に基づいてコマンドデータ送信部7に各処理データを送信する」ものであり、その「コマンドデータ送信部7は、制御部5からの各処理データを受け取って、別の回路にコマンドを出力する」ものであるから、その「判別結果」(図3の第4行のBの「押下中」/「押下中でない」)に基づいて「コマンド」を出力しているといえ、「コマンド」の「出力」は「制御の実行」ということができる。
また、上記「判別結果」は、これまでの検討結果から、本願発明でいう「前記第2状態」か若しくは「前記第1状態」といえることから、
引用発明の「タッチパネル制御装置」も、「前記第2状態・前記第1状態に基づいて制御を実行する」といえ、引用発明も、要件B1を満たしている。

(b)B2、B3、B4について
引用例1には、引用発明の上記「コマンド」についての具体的記載がなく、「タッチパネルを操作している(例えば、図3の第4行のBの「押下中」)と判断される状態(本願発明でいう「第2状態」)から、タッチパネルを操作していない(例えば、図3の第4行のBの「押下中でない」)と判断される状態(本願発明でいう「第1状態」)へと遷移する際に、行われる」との記載はないし、「コマンド」が「タッチパネルを操作していない(例えば、図3の第4行のBの「押下中でない」)と判断される状態(本願発明でいう「第1状態」)に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する」ものであるとの記載もない。
すなわち、引用発明の「タッチパネル制御装置」の「コマンド」の「出力」が「前記第2状態から前記第1状態へと遷移する際に、行われる」とも、コマンドが「第1状態に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する」ものともしていない。
引用発明は、要件B2、B3、B4を満たしているとはいえず、この点、本願発明と相違する。
もっとも、引用発明も、「前記第2状態・前記第1状態に基づいて制御を実行する」「モード」を有している、とはいえ、この限りにおいては本願発明と相違しない。

(c)まとめ
引用発明の「タッチパネル制御装置」も、「前記第2状態・前記第1状態に基づいて制御を実行する」「モードを有している」点では、本願発明の「制御部」と相違しないものの、
そのモードが、「前記第2状態から前記第1状態へと遷移する際に、当該第1状態に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する制御を実行する第1接触検出モード」とはしておらず、この点、相違する。

ウ 「携帯電子機器」について
引用例1の上記摘示(b)の【0002】に「車載用のカーナビゲーション装置」が記載されているように、引用発明の「装置」は「電子機器」とはいい得るものの、「携帯電子機器」ではない。

したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。

〈一致点〉

「接触を検出する第1の検出部と、
前記第1の検出部へ接触が検出されると第1状態から第2状態に遷移し、当該第2状態にて前記第1の検出部への接触が検出されない状態が前記所定時間継続すると前記第1状態へと遷移する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第2状態・前記第1状態に基づいて制御を実行するモードを有する」点

〈相違点1〉
「前記第2状態・前記第1状態に基づいて制御を実行するモード」が、
本願発明では、
「前記第2状態から前記第1状態へと遷移する際に、当該第1状態に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する制御を実行する第1接触検出モード」
であるのに対して、
引用発明では、そのようなモードとはしていない点

〈相違点2〉
本願発明は「携帯電子機器」であるのに対し、引用発明は「電子機器」といい得るものであるものの「携帯電子機器」ではない点。

4.当審の判断
〈相違点1についての判断〉
引用発明は、「タッチパネル上を操作する際に、指等が離れたとの誤認識を防止し、正確なタッチ判別ができるようにするための」ものとしている。
このことは、「指等が離れた」ことを正確に判別することは重要であることを前提に、「指等が離れた」との誤認識によって引き起こされるであろう不都合を防止しようとするものと理解されるところ、
仮に、「指等が離れた」と誤認識したとしても、これにより何らの動作制御も実行されないのであれば、そもそも何らの不都合も生じない。
このことからすれば、当業者であれば、「指等が離れた」との正確な判別によって、これに基づく動作制御が実行されることが予定されていているものと普通に想定するものであり、また、どの位置で「指等が離れた」のかも重要であることは明らかであり、動作制御が単に「指等が離れた」ことのみならず、そのときの「位置」の情報に基づいて実行されることも当業者は普通に想定するものである。
そして、かかる普通に想定される動作制御は、引用発明では、「タッチパネル制御装置」が「コマンド」を「出力」することでなされるものである。
以上のことからすれば、引用例1に接した当業者であれば、引用発明の「タッチパネル制御装置」の「コマンド」の「出力」が、「指等が離れた」との判別、すなわち、前記第2状態(押下中)から前記第1状態(押下中でない)へと遷移する際になされると、ごく普通に想定するものである。
また、引用発明において、「指等が離れた」と判別されたときの「位置」は、図3の第4行のBの「押下中」から「押下中でない」に遷移する前、「タッチ位置データ送信部2」から最後に受信した「タッチ位置データ」の示す「所定位置」と同じであることは明らかである(「押下中でない」と判別したときの「タッチオフデータ」に「位置」の情報が含まれていて、それが、「指等が離れた」と判別されたときの「位置」の情報であるとしても、それは、「押下中」から「押下中でない」に遷移する前、上記の「タッチ位置データ送信部2」から最後に受信した「タッチ位置データ」の示す「所定位置」と同じであることは明らかである。)。
すなわち、「当該第1状態に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する制御を実行する」ことも、当業者が容易に想到し得ることというべきである。

事実、タッチのオフを判別した際、すなわち、タッチパネルを操作していないと判断した際に、それまでタッチパネルに接触していた位置に対応する制御を実行すること(これが、本願発明の「前記第2状態から前記第1状態へと遷移する際に、当該第1状態に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する制御を実行する」ことに相当することは明らかである。)は、本願優先日前ごく普通に知られており、かかる周知技術(下記の周知例参照のこと。)からみても、
「前記制御部は、前記第2状態から前記第1状態へと遷移する際に、当該第1状態に遷移する前に検出された前記第1の検出部への接触に対応する制御を実行する」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、そのように制御するモードのことを「第1接触検出モード」と称することも、当業者が普通になしえることにすぎない。

以上によれば、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

記(上記周知技術の例)

・特開平11-3440号公報(引用例1が従来例としている刊行物)
「【0021】図9はタッチパネルに指が触れた位置と指の離れた位置が同じ金額エリア内にあるとき、発券処理するフローを説明する図である。まず、タッチパネルがオンか否か判断し、オンした位置座標を取得する(ステップ21、22)。次いで、タッチパネルから指が離れたか否か判断し、オフした位置座標を取得する(ステップ23、24)。次いで、取得したオンした位置座標と、オフした位置座標とを比較し、同じ金額エリア内であれば発券処理し、異なるエリアであれば発券処理は行わない。この処理により、なぞりによる誤った乗車券が発券されるのを防止することができる。」(【0021】の記載。)
とあり、タッチパネルから指が離れた際の位置座標に基づいて発券処理の制御を行っていることは明らかである。

・特開平2-136914号公報
「次に、第3図の拡大制御及び入力キー決定プログラムに従って拡大制御及び入力キー決定につき以下説明する。
ステップ1にて、タッチオンされたT(x,y)点の座標がタッチパネルコントローラ15,シリアルインタフェース16を介してプロセッサ1に知らされる。
すると、ステップ2にて上記説明の(1)式にて表示スタートアドレスを求め、又(2)式にて遅延回路13にて遅延させるドツト数を求める。
そして、ステップ3にて、表示スタートアドレスをCRTコントローラ10に通知し、ステップ4にてCRT制御信号を2ワード遅延させるように遅延回路14に通知し、ステップ5にて表示信号を18ドット遅延させるように遅延回路13に通知する。
又ステップ6にて並直列変換部12にシフトドットクロックの周波数を1/2にするよう通知する。
すると、表示装置4の表示画面のキーボード状のイメージは2倍に拡大される。
拡大されて大きくなったので、操作者は所望のキーボードの略真中の位置に指等のポインティングデバイスを移動しタッチオフする。
すると、ステップ7にてタッチオフした位置の座標がタッチパネルコントローラ15,シリアルインタフェース16を介してプロセッサ1に入力する。
すると、ステップ8にて、タッチしたキーの判定を行いキー入力とする。」(第4頁左下欄第1行?同頁右下欄第10行の記載。)
とあり、所望のキーボードに位置する指等のポインティングデバイスをタッチオフした際に、タッチオフした位置の座標に基づいてタッチしたキーの判定を行いキー入力とする制御を行っていることは明らかである。

・特開平6-309138号公報
「【0016】次に、図2に示すフローチャートを参照しながら、この実施例の動作を説明する。
【0017】まず、CPU5はインタフェース回路3の出力を監視して、操作員などの指7によってCRT1の画面8上がタッチされているかどうかを示す情報を取込み、前記CRT1の画面8上の一部がタッチされるまで待つ(ステップST1)。
【0018】そして、図3に示す如く操作員などの指7によってCRT1の画面8上がタッチされ、タッチパネル2によってこれが検出されてインタフェース回路3からタッチ位置データが出力されれば、CPU5はこのタッチ位置データを取り込むとともに、予め設定されている一定時間、前記インタフェース回路3から前記タッチ位置データが出力され続けるかどうかをチェックする(ステップST2)。
【0019】そして、前記インタフェース回路3からタッチ位置データが前記一定時間、出力されていなければ、CPU5は操作員によってスクロール入力以外の入力指示が入力されたと判定してタッチ位置データによって指定された座標にあるアイコンなどに従ったタッチ入力処理を行なう。
【0020】また、前記インタフェース回路3からタッチ位置データが前記一定時間以上、出力されていれば(ステップST2)、CPU5は操作員によってスクロール指令が出されたと判定して、前記タッチ位置データを始点座標(X1、Y1)として記憶した後(ステップST3)、前記インタフェース回路3からタッチ位置データが出力されなくなるまで待つ(ステップST4)。
【0021】このとき、前記CRT1上をタッチしている操作員の指7が画面8上から離されることなく動かされ、これに対応してタッチパネル2から出力されるタッチ位置データの値が変化する毎に、CPU5はインタフェース回路3を介してタッチ位置データを取り込んでこれを終点候補座標(X3、Y3)として記憶する。
【0022】そして、前記CRT1上から操作員の指7が離され、これがタッチパネル2によって検出され、インタフェース回路3からタッチ位置データが出力されなくなれば、CPU5は最後に記憶されている終点候補座標(X3、Y3)を正式な終点座標(X2、Y2)として記憶する(ステップST5)。
【0023】この後、CPU5は図4に示す如く始点座標(X1、Y1)と、終点座標(X2、Y2)とに基づいて次式に示す演算を行なって移動量(ΔX、ΔY)を計算する(ステップST6)。
【0024】ΔX=X2-X1 …(1)
ΔY=Y2-Y1 …(2)
次いで、CPU5はメモリ内にある全体の制御画面10(図3参照)の中から、CRT1上に表示されている現在の画面8に対し、移動量(ΔX、ΔY)だけずれた部分の画像を切り出し、これを制御画面データとしてバス6上に送出してインタフェース回路4に供給し、CRT1上に前記制御画面データに対応する画面8を表示させる(ステップST7)。」(【0016】?【0024】の記載。)
とあり、指が離されタッチ位置データが出力されなくなれば、最後に記憶されている座標を終点座標とし、終点座標に基づいて移動量を計算し、移動量だけずれた部分の画像を表示させる制御を行っていることは明らかである。

〈相違点2についての判断〉
タッチパネルを備えた「携帯電子機器」は、携帯電話やPDAとして例示するまでも無く周知のものであり、引用発明を「携帯電子機器」とし、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

〈まとめ(当審の判断)〉
以上、本願発明は、引用発明及び各周知技術に基づいて当業者が容易に為し得たものである。

本願発明の構成によってもたらされる効果は、上記相違点1,2を克服した構成のものが奏するであろうと当業者が予測する効果に比して格別顕著なものではなく、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は、引用例1に記載された発明及び各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-11 
結審通知日 2014-08-19 
審決日 2014-09-03 
出願番号 特願2011-103855(P2011-103855)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土居 仁士  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 和田 志郎
山田 正文
発明の名称 携帯電子機器および携帯電子機器の制御方法  
代理人 大倉 昭人  
代理人 杉村 憲司  

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