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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1292966 |
審判番号 | 不服2013-15933 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-08-16 |
確定日 | 2014-10-16 |
事件の表示 | 特願2010-288603「入力装置および入力装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月24日出願公開、特開2011- 60333〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【第1】経緯 [1]手続の経緯 本願は、平成21年7月29日に出願した特願2009-177074号(以下、「原出願」という)の一部を、平成22年12月24日に新たな特許出願(特願2010-288603号)としたものであり、手続きの概要は以下の通りである。 拒絶理由通知 :平成24年12月21日(起案日) 意見書 :平成25年 3月11日 手続補正 :平成25年 3月11日 拒絶査定 :平成25年 5月17日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成25年 8月16日 手続補正 :平成25年 8月16日 前置審査報告 :平成25年 9月 5日 [2]査定 原審での査定の理由は、平成24年12月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由2とするものであり,概略,以下のとおりである。 〈査定の理由の概略〉 本願の請求項1、2に係る発明は,下記の刊行物1?3に記載された発明、及び周知技術(下記参照)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 記(刊行物一覧) 刊行物1:特開2009-53857号公報 刊行物2:特開平09-269861号公報 刊行物3:特開平10-293644号公報 〈周知技術を示す刊行物〉 刊行物4:特開2004-70920号公報 刊行物5:特開2004-192413号公報 刊行物6:特開2005-149197号公報 刊行物7:特開2005-92472号公報 【第2】補正の却下の決定(当審の判断) 平成25年8月16日付けの補正(以下「本件補正」という。)について次のとおり決定する。 《結論》 平成25年8月16日付けの補正を却下する。 《理由》 【第2-1】本件補正の内容 本件補正は特許請求の範囲についてする補正であり、補正前請求項1の記載を補正後請求項1とする補正を含んでおり、本件補正前および本件補正後の請求項1の記載は下記のとおりである。 記(補正前、平成25年3月11日補正によるもの) 【請求項1】 入力を受け付けるタッチセンサと、 前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、 前記タッチ面を振動させる触感呈示部と、 前記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、操作者がボタンを押したと錯覚するように前記触感提示部の駆動を制御する制御部と、 を有することを特徴とする入力装置。 記(補正後、補正部分をアンダーラインで示す。) 【請求項1】 入力を受け付けるタッチセンサと、 前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、 前記タッチ面を振動させる触感呈示部と、 前記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、操作者がボタンを押し込んだと錯覚するように前記触感提示部の駆動を制御する制御部と、 を有することを特徴とする入力装置。 【第2-2】本件補正の適否1(範囲、目的) 〈補正の範囲(第17条の2第3項)〉 本件補正は、請求人の主張するとおり、当初明細書の段落【0018】-【0033】,【0088】等の記載を根拠とするものと認められ、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正であるといえ、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。 〈補正の目的(第17条の2第5項)、シフト(第17条の2第4項)〉 本件補正は、補正前請求項1に記載のあった「操作者がボタンを押したと錯覚するように・・・駆動を制御する制御部」を「操作者がボタンを押し込んだと錯覚するように・・・駆動を制御する制御部」とするものであって、「押した」態様を限定するものであり、また、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 また、本件補正が、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。 【第2-3】本件補正の適否2 独立特許要件(第17条の2第6項) そこで、独立特許要件について検討するに、補正後請求項1に記載される発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、上記本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「補正後発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由の詳細は、以下のとおりである。 《理由:独立特許要件に適合しない理由の詳細》 [1]補正後発明 補正後発明1は、前記【第2-1】の補正後の【請求項1】のとおりである。 [2]引用刊行物の記載 刊行物1:特開2009-53857号公報 原査定の拒絶の理由で引用された原出願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-53857号公報(上記刊行物1)には、以下の記載(下線は、注目箇所を示すために当審で施したものである。)が認められる。 〈特許請求の範囲〉 【請求項1】 外装ケースに変位可能な状態で収納された操作パネルと、 該操作パネル部の裏側または下部に設けられ、前記操作パネル面に対する押圧操作の有無を検出する圧力検知機構と、 該圧力検知機構によって前記操作パネルに押圧力が印加されたことを検出すると、入力信号を作成する駆動制御部と、 前期操作パネル、もしくは前記外装ケースの一端に取り付けられた振動発生装置とを有し、 前記力信号に応答して振動発生装置が前記操作パネル部に力学的な振動を与えるよう構成したことを特徴とする感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュール。 【請求項5】 前記振動発生機構は前記押し圧力が、所定の閾値を超えた時と、該閾値を下回った時、との2つのタイミングで前記操作パネル部に力学的な振動を与えるよう構成したことを特徴とする請求項1記載の感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュール。 【請求項6】 前記操作パネルは表示パネルを有し、 該表示パネルには複数のアイコンが表示可能とされ、 どのアイコンが選択されているかを検出するアイコン検出手段を有し、 前記駆動制御部は前記入力信号を複数種類発生可能に構成され、 前記選択されたアイコンによって異なった前記入力信号を前記振動発生機構に与えることを特徴とする請求項1記載の感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュール。 〈技術分野、従来の技術〉 【技術分野】 【0001】 本発明は、感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュールに関する。 【背景技術】 【0002】 近年グラフィック・ユーザー・インターフェイスとしてキーボードよりも表示画面の当該箇所を直接押圧するタイプが好まれ始めている。 このようなタイプではタッチパネルとかタッチパッドと呼ばれているパネルを表示パネルの上に重ね、該パネルの押された場所を検出して表示パネルのどの位置を押そうとしたのかを算出して処理を行っている。 【0003】 この例として、金融機関の端末に用いられるシステムで、表示パネルの上部にタッチパッドのような操作パネルを配置し、該操作パネルの4角で圧力を検出し、該検出した圧力からどの位置が押されたかを計算して押された位置を算出する方法が提案された(例えば特許文献1参照)。 しかしこのような方式は機械的な精密さを保つ必要があるため携帯電話のような小型携帯機器には不向きという問題(が)あった。 【0004】 また使用感覚をよりよくするため例えば表示パネルの上にタッチパネルを一体化した操作パネルにアクチュエータを設け、操作パネルを押した動作に対し、押した指に触覚を、すなわちアクチュエータによる振動を、フィードバックするという提案もなされた(例えば特許文献2参照)。 【0005】 さらに、同様の操作パネルを押した時、操作パネルの変位や振動で触覚をフィードバックするとともに、チャタリングによる誤動作を防止するため、操作パネルの変位量に応じてタイマー時間を設定し、該タイマーの計時中に押圧操作の終了タイミングを検出したときは、このタイミングをタイマーの終了時まで遅延させるという提案がある(例えば特許文献3参照)。 しかしこの方式では、押し圧が閾値を越えた以降の操作者の押し具合が考慮されないので、例えば操作者が押し圧操作を終了しているのに振動が継続する等の、操作者と応答振動の感覚的なずれが生じやすい。このため誤作動もしくは操作の妨げになることがあった。 【0006】 【特許文献1】特開平11-212725 【特許文献2】実用新案登録第3085481号 【特許文献3】特開2004-192413 〈課題〉 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 解決しようとする問題点は、従来提案されていた方式が小型携帯機器には適さず、また操作者と応答振動の感覚的なずれが生じやすく、誤作動もしくは操作の妨げになることがあった点である。 〈発明の効果〉 【発明の効果】 【0014】 本発明によれば、操作者の押し圧操作時間と操作者に帰還する振動の時系列が一致するため、すなわち操作者がパネルモジュールを押したタイミングと帰還される振動のタイミングとが一致しているので、違和感のないクリック感のフィードバックが可能な感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュールを実現できる。 また選択されたアイコンによって異なったクリック感を与えることができるので、操作者が行っている処理内容を、指先の感覚でも知ることもできる感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュールを実現できる。 〈実施例1〉 【実施例1】 【0016】 図1は本発明による感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュールの断面図である。 1において、18は操作パネルで、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置のような平板な、いわゆるFPDよりなる。26は圧力検知機構で、操作パネル18の裏側または下部に設けられ、操作パネル18の上面に対する押圧操作の有無を検出し、例えば感圧シートよりなる。該感圧シートは、圧縮されると圧力を検知する、感圧導電ゴムや感圧抵抗体素子(FSR:フォースセンシングレジスタ)など、押し圧に対する抵抗値等の何らかの電気的要素の変化を管理出来るもの、またはPVDF等の圧電特性を有する高分子などよりなるものであればよい。 また圧力検知機構26の感圧シートは操作パネル18が指12により押される可能性のある場所の付近のみに、すなわち操作パネル18よりも小さいものが配設されて原価低減に寄与している。 【0017】 操作パネル18が押されると該パネル18のたわみによって圧力検知機構26が操作パネル18によって押され、押されたことを検出することができる。20は振動発生機構であるアクチュエーターで、操作パネル18もしくは後述する外装ケース14の一端に取り付けられ、PZT等の圧電素子をもしくは、磁気駆動型のもので構成されている。該振動発生機構20は例えば両面テープのような粘着材で操作パネル18に固定されている。操作パネル18に押圧力が印加されたことを圧力検知機構26が検出すると、振動発生装置20が操作パネル18に力学的な振動を与える。 【0018】 なお圧力検知機構26が操作パネル18に押圧力が印加されたことを検出すると、図示されていないシステム内の駆動制御部が振動発生機構20の入力信号を作成し、該入力信号に応答して振動発生装置20が操作パネル18に力学的な振動を与えるよう構成されている。 【0019】 22は操作パネル18と圧力検知機構26との間に適度な隙間を設けるためのスペーサー、24は圧力検知機構26や振動発生機構20が搭載される基板、14が外装ケース、16は操作パネル18を外装ケース14に変位可能な状態で収納するためのフィルム等の弾性材もしくはダンパー材である。 なお以下の図において、同様の部材には同様の番号を付して説明を省略している。 【0020】 また操作パネル18は表示パネル上に透明なタッチパネルを置いた構造、該透明なタッチパネルをフロントライトの導光板に用いた構造、照明はバックライトとして表示パネルの下に置く構造が選択し得る。 【0021】 図2は操作パネル18に対する押圧と振動発生装置20に対する前記入力信号の関係を示した図で、図2(a)は該押圧と時間の関係、図2(b)は振動発生機構20を構成する感圧シートの抵抗値と時間の関係、図2(c)は振動発生装置20に対する前記入力信号と時間の関係を示している。 図2(a)の縦軸は押圧、横軸は時間で、押圧は太線で示したように時間と共に上昇し最大値を保った後下降する特性となっている。 図2(b)の縦軸は感圧シートの抵抗値、横軸は時間で、感圧シートの抵抗値は太線で示したように、図2(a)で示した押圧に応答して、時間と共に下降し最小値を保った後上昇する特性となっている。 ここで該抵抗値に図示のように閾値を設定すると、タイミングt1で抵抗値が該閾値を下回り、すなわち押し圧力が閾値を超え、タイミングt4で抵抗値が該閾値をこえる、すなわち押し圧力が閾値を下回る。 図2(c)の縦軸は振動発生装置への印加電圧、すなわち前記した入力信号で、横軸は時間である。 【0022】 振動発生装置20への電圧印加は押し圧力が閾値を超えた時、すなわちタイミングt1で図示のP1によってと、該閾値を下回った時、すなわちタイミングt2で図示のP2によってとの2つのタイミングでなされ、該電圧印加により振動発生装置20が操作パネル18に振動を与え、使用者は該振動をクリック感として感知することができる。 印加電圧パルスP1,P2においては、実際には特定の周波数の信号をパルスの持続時間tcの間振動発生装置20に与えている。 【0023】 このように本発明によれば操作パネルを押し始めたときと離したときに指にクリック感が伝わり、押し圧が閾値を越えた以降の操作者の押し具合が考慮されているので、操作パネルを長い時間押しても短い時間押しても離したことをクリック感で伝えることができる。 〈実施例〉 【実施例2】 【0024】 図3、4は本発明による感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュールの第2の実施例を説明するための図で、図3は表示パネル上のアイコンを示した図である。 図3は表示パネルを有する操作パネル18の平面図で、第2に実施例においては少なくとも2つのアイコン30,32が設けられ、システムは選択されたアイコンによって異なる処理がなされるよう構成されている。 【0025】 図4は第2の実施例を説明するブロック図で、特徴部のブロックのみを示している。 34はアイコン検出手段でどのアイコンが選択されているかを検出する。40は駆動制御部で圧力検知機構26が操作パネルが押されたことを検知すると該検知信号に応答して少なくとも2つの入力信号作成手段、第1の入力信号作成手段36と第2の入力信号作成手段38とを起動させる。すなわち駆動制御部40は入力信号を複数種類発生可能に構成されている。該少なくとも2つの入力信号は選択手段42でアイコン検出手段34に応答して選択され、アクチュエーター(振動発生装置26)に送られる。アクチュエーター(振動発生装置26)は送られてきた入力信号に従って操作パネル18に力学的な振動を与える。 【0026】 第1と第2の入力信号は例えば周波数が異なる信号であり、それらの信号によって得られるクリック感が異なる。このような入力信号は図2(c)で示した印加電圧パルスP1,P2の内部に細線で示した信号に相当する。 すなわち本発明による感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュールの第2の実施例においては選択されたアイコンによって指に伝わるクリック感が異なり、該クリック感によっても処理している内容を確認できるという効果がある。 [3]刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。) ア 刊行物1概要、引用発明認定の対象 刊行物1は、「感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュール」に関し(【0001】、→引用発明のp)、小型携帯機器に適し、操作者と応答振動の感覚的なずれが生じにくく(【0007】)「違和感のないクリック感のフィードバックが可能な感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュールを実現」し、また、「選択されたアイコンによって異なったクリック感を与えることができる」ようにしようとするもので(【0014】)、 概要を請求項1,5、6とし、その実施例を実施例1(【0016】?【0023】,図1,2),実施例2(【0024】?【0026】,図3,4)とするものが示されている。 実施例1についての段落【0020】で「また操作パネル18は表示パネル上に透明なタッチパネルを置いた構造」「が選択し得る。」としており、 また、表示パネル上にアイコン表示しアイコンを選択する実施例2についての段落【0026】で「入力信号は図2(c)で示した印加電圧パルスP1,P2の内部に細線で示した信号に相当する。」、「選択されたアイコンによって指に伝わるクリック感が異なり・・・」としていること、 からすれば、実施例1(請求項1、5に対応する)において、「操作パネル」として「表示パネル上に透明なタッチパネルを置いた」ものであって、表示パネル上にアイコンを表示しこれを指で選択するようにしたものも認めることができ、そのようなものを基礎に刊行物記載の発明(以下、「引用発明」という。)を認定する。 イ パネルモジュールの構成 パネルモジュールは、 「外装ケースに変位可能な状態で収納された操作パネルと、 該操作パネル部の裏側または下部に設けられ、前記操作パネル面に対する押圧操作の有無を検出する圧力検知機構と、 該圧力検知機構によって前記操作パネルに押圧力が印加されたことを検出すると、入力信号を作成する駆動制御部と、 前期操作パネル、もしくは前記外装ケースの一端に取り付けられた振動発生装置とを有し、 前記力信号に応答して振動発生装置が前記操作パネル部に力学的な振動を与えるよう構成し」(請求項1)、 また、「操作パネル18は表示パネル上に透明なタッチパネルを置いた」ものであり(【0020】)、表示パネル上にアイコンを表示しこれを指で選択するようにしたものである。 以上から、パネルモジュールは、以下のものを有しているということができる。 ・表示パネル上に透明なタッチパネルを置いた操作パネルであって、表示パネル上にアイコンを表示しこれを指で選択するようにされる操作パネル(→引用発明のq) ・前記操作パネル面に対する押圧操作の有無を検出する圧力検知機構(引用発明のr) ・該圧力検知機構によって前記操作パネルに押圧力が印加されたことを検出すると、入力信号を作成する駆動制御部 ・入力信号に応答して前記操作パネル部に力学的な振動を与える振動発生装置 ウ 振動発生(押し圧力、閾値)、クリック感 「振動発生機構は前記押し圧力が、所定の閾値を超えた時と、該閾値を下回った時、との2つのタイミングで前記操作パネル部に力学的な振動を与えるよう」(請求項5)にされ、 具体的には、「圧力検知機構26が操作パネル18に押圧力が印加されたことを検出すると、図示されていないシステム内の駆動制御部が振動発生機構20の入力信号を作成し、該入力信号に応答して振動発生装置20が操作パネル18に力学的な振動を与える」(【0018】)ようにされる。 そして、「図2は操作パネル18に対する押圧と振動発生装置20に対する前記入力信号の関係を示した図で、図2(a)は該押圧と時間の関係、・・・図2(c)は振動発生装置20に対する前記入力信号と時間の関係を示している。」(【0021】)、 「振動発生装置20への電圧印加は押し圧力が閾値を超えた時、すなわちタイミングt1で図示のP1によって・・・のタイミングでなされ、該電圧印加により振動発生装置20が操作パネル18に振動を与え、使用者は該振動をクリック感として感知することができる。 印加電圧パルスP1,P2においては、実際には特定の周波数の信号をパルスの持続時間tcの間振動発生装置20に与えている」(【0022】)とあり、 以上からすれば、 駆動制御部は、図2に示されるように、操作パネルに対する押し圧力が所定の閾値を超えた時(タイミングt1)、パルス(P1)の持続時間(tc)持続する特定の周波数の信号(図2(c))を振動発生装置に与えて、振動発生装置が操作パネル部に力学的な振動を与え、使用者は該振動をクリック感として感知することができる、ようにされる。 そして、上記イでの検討結果を踏まえれば、 ・操作パネルに対する押し圧力は、圧力検知機構が検出すること(引用発明のr)、 ・また、操作パネルに対する押し圧力は、表示パネル上に表示されたアイコンを指で選択して生じるようにできること、 ・「駆動制御部」は、圧力検知機構によって検出した操作パネルに対する押し圧力が所定の閾値を超えた時(タイミングt1)、パルス(P1)の持続時間(tc)持続する特定の周波数の信号(図2(c))を振動発生装置に与え(→引用発明のs)、これにより、 振動発生装置が前記信号(図2(c))に応答して操作パネル部に力学的な振動を与え(→引用発明のt)、使用者は該振動をクリック感として感知することができる(→引用発明のu)こと、 以上は明らかである。 以上によれば、引用発明として、下記の発明を認定することができる(便宜上、p?uに分説しておく)。 記(引用発明) p:感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュールであって、 q:表示パネル上に透明なタッチパネルを置いた操作パネルであって、表示パネル上にアイコンを表示しこれを指で選択するようにされる操作パネルと、 r:前記操作パネル面に対する押圧操作の有無を検出する圧力検知機構であって、操作パネルに対する押し圧力を検出する圧力検知機構と、 s:駆動制御部であって、圧力検知機構によって検出した操作パネルに対する押し圧力が所定の閾値を超えた時(タイミングt1)、パルス(P1)の持続時間(tc)持続する特定の周波数の信号(図2(c))を振動発生装置に与える駆動制御部と、 t:前記信号(図2(c))に応答して操作パネル部に力学的な振動を与える振動発生装置と、 を有し、 u:使用者は該振動をクリック感として感知することができるようにした p:モジュール [4]補正後発明と引用発明との対比(対応関係) (1) 補正後発明(構成要件の分説) 補正後発明は,以下のように要件A?Eに分説することができる。 記(補正後発明,分説) A :入力を受け付けるタッチセンサと、 B :前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、 C :前記タッチ面を振動させる触感呈示部と、 D :前記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、操作者がボタンを押し込んだと錯覚するように前記触感提示部の駆動を制御する制御部と、 を有することを特徴とする E :入力装置。 (2)対比 ア 要件E「入力装置」、要件A「入力を受け付けるタッチセンサ」(を有する)、について 引用発明のq「表示パネル上に透明なタッチパネルを置いた操作パネル」の「タッチパネル」は、「タッチセンサ」とも呼ばれるものであって、「使用者の入力を受け付ける」ためのものであるといえるから、補正後発明でいう「入力を受け付けるタッチセンサ」と相違しない。 そして、引用発明の、qの「操作パネル」を有するp「感圧式振動発生装置を備えたパネルモジュール」が「入力装置」といいえることも明らかである。 要件A,Eにおいて、補正後発明と引用発明は相違しない。 イ 要件B「前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部」について 引用発明のrの「圧力検知機構」は、 「前記操作パネル面に対する押圧操作の有無を検出する圧力検知機構であって、操作パネルに対する押し圧力を検出する」ものであるところ、「操作パネル」はq「表示パネル上に透明なタッチパネルを置いた」ものであるから、当該機構が検出するとする「操作パネルに対する押し圧力」は「タッチパネルに対する押し圧力」といえると共に、「タッチパネルのタッチ面に対する押圧荷重」ともいうことができる。 したがって、かかる引用発明のr「前記操作パネル面に対する・・・圧力検知機構」は、上記要件Bの「前記タッチセンサの・・・荷重検出部」と相違しない。 ウ 要件C「前記タッチ面を振動させる触感呈示部」について 引用発明のtの「振動発生装置」は、 「操作パネル部に力学的な振動を与える」ものであり、操作パネルを振動させた際、タッチパネルのタッチ面も振動することは明らかであるから、上記要件C「前記タッチ面を振動させる触感呈示部」と相違しない、 エ 要件D「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、操作者がボタンを押し込んだと錯覚するように前記触感提示部の駆動を制御する制御部」について エ-1 上記要件Dは、明細書の段落【0030】?【0036】(特に【0033】「以上のことから、タッチセンサのようなプレート状のタッチ面を押圧する際、図1に示すA点からB点までの荷重では、タッチ面を振動させずに、操作者に自発的に押下させて圧覚を刺激し、その状態で、B点において、例えば、周波数170Hzでタッチ面を約1周期分振動させて触覚を刺激すれば、また、例えば実際に押しボタンスイッチから測定された振動波形を操作者に呈示して触感を刺激すれば、操作者に対して図4の測定結果に係る押しボタンスイッチを操作した場合と同様のクリック触感を呈示することが可能となる。」)、図7,【0047】?【0045】(特に【0044】「さらに、制御部15は、荷重検出部12により検出される押圧荷重が、タッチセンサ11の押圧によって増加しながら触感を呈示する基準(第1の基準)を満たしたのを検出すると(ステップS703)、触感呈示部13を所定の駆動信号で駆動して、タッチセンサ11を予め設定した所定の振動パターンで振動させてクリック触感を呈示する(ステップS704)。」)、図8,段落【0052】?【0053】の記載に照らせば、 「前記触感提示部の駆動を制御する制御部」が行う「駆動の制御」が、 ・駆動するのが(駆動するタイミングが)「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際、」であるように制御すること、と、 ・駆動の態様が「操作者がボタンを押し込んだと錯覚するよう」な態様であるように制御すること、 を特定するものと理解される。 すなわち、 上記要件Dは、 D1:「前記触感提示部の駆動を制御する制御部」が行う「駆動の制御」が、「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に」、「前記触感提示部」を駆動するように制御すること、および、 D2:該「駆動の制御」(「前記触感提示部の駆動を制御する制御部」が行う「駆動の制御」)が、駆動の態様が「操作者がボタンを押し込んだと錯覚するよう」な態様であるように制御すること を特定するものと理解される。 エ-2 上記D1について 引用発明のsの「駆動制御部」は、「圧力検知機構によって検出した操作パネルに対する押し圧力が所定の閾値を超えた時(タイミングt1)、パルス(P1)の持続時間(tc)持続する特定の周波数の信号(図2(c))を振動発生装置に与える」ものであるところ、 かかる「駆動制御部」も「前記触感提示部(「振動発生装置」)の駆動を制御する制御部」といえることは明らかであり、 その「所定の閾値」は、補正後発明(上記D、D1)でいう「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準」といい得るものであるから、 引用発明の「駆動制御部」が行う「駆動の制御」(前記触感提示部の駆動を制御する制御部」が行う「駆動の制御」)は、「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に」、「前記触感提示部」を駆動するように制御すること、ということができる。 したがって、引用発明も、上記D1を満たしている。 エ-2 上記D2について (ア)『駆動の態様が「操作者がボタンを押し込んだと錯覚するよう」な態様』の解釈について 「操作者がボタンを押し込んだと錯覚する」とは、その字義及び要件Bからみて、具体的には、実際は(押しボタンスイッチのようには物理的に変位しない)タッチセンサを操作者が押下操作した際に、操作者が実際の「ボタンを押し込んだと錯覚する」という意であることは明らかではあるから、 そのような駆動の態様とは、実際は(押しボタンスイッチのようには物理的に変位しない)タッチセンサを押下操作した際に、「操作者が(実際の)ボタンを押し込んだと錯覚する」ように、「操作者がボタンを押し込んだ」と同様に感じられる駆動の態様と理解される。 また、要件C「前記タッチ面を振動させる触感呈示部」から、「駆動」は「振動」であることは特定されているということができる。 しかし、上記『駆動の態様が「操作者がボタンを押し込んだと錯覚するよう」な態様』が、『振動であってボタンを押し込んだと同様に感じられる駆動の態様』とは理解されても、それが、いかなる態様なのか、必ずしも明瞭ではない。 そこで、これについて明細書の記載に照らし検討する。 明細書には、「ボタンを押し込んだと錯覚するよう」(な)との直接的表現記載はないが、その技術上の意義(それが意味する上記『振動であってボタンを押し込んだと同様に感じられる駆動の態様』の技術上の意義)を示すものと解される記載として以下の記載がある。 〈明細書の記載〉 【0003】このようなタッチセンサには、抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の種々の方式が知られている。しかしながら、いずれの方式のタッチセンサにおいても、指やスタイラスペンによるタッチ入力を受け付けるものであって、タッチセンサ自体は、タッチされても、押しボタンスイッチのようには物理的に変位しない。 【0013】かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、操作者がタッチセンサを操作した際に、押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を呈示できる入力装置および入力装置の制御方法を提供することにある。」 【0016】本発明によれば、タッチセンサへの押圧荷重が触感を呈示する基準を満たすと、タッチセンサのタッチ面が振動して、操作者に対してクリック触感が呈示され、その後、タッチセンサへの押圧荷重が触感を呈示する基準を満たすと、タッチセンサのタッチ面が振動して、操作者に対してクリック触感に対するリリース触感が呈示される。これにより、操作者に対して押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感が呈示される。 【0033】以上のことから、タッチセンサのようなプレート状のタッチ面を押圧する際、図1に示すA点からB点までの荷重では、タッチ面を振動させずに、操作者に自発的に押下させて圧覚を刺激し、その状態で、B点において、例えば、周波数170Hzでタッチ面を約1周期分振動させて触覚を刺激すれば、また、例えば実際に押しボタンスイッチから測定された振動波形を操作者に呈示して触感を刺激すれば、操作者に対して図4の測定結果に係る押しボタンスイッチを操作した場合と同様のクリック触感を呈示することが可能となる。 【0034】以上の原理に基づく本出願人の先の提案に係る入力装置は、タッチ面を押圧する場合に、押圧荷重が入力を受け付ける所定の基準を満たすまでは圧覚を刺激し、所定の基準を満たした際に、振動部により所定の駆動信号、すなわち一定周波数、駆動時間である周期(波長)、波形、振幅、でタッチ面を振動させて触覚を刺激する。 【0035】また、ヒトが押しボタンスイッチを操作すると、押下時のみならず、リリース時においても、図4に示したように、指に押しボタンスイッチからの触感刺激が与えられる。そこで、本出願人の先の発明に係る入力装置においては、リリース時にも操作者にクリック触感(以下、リリース時のクリック触感を、適宜、リリース触感とも言う)を呈示する。これにより、操作者に対して、押しボタンスイッチを押下した場合と同様のリアルなクリック触感を呈示するものである。 【0036】以下、上述した原理に基づく本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。 【0037】本発明は、タッチセンサが入力を受け付ける動作とは独立して押圧荷重を検出して、タッチセンサを振動させて、タッチセンサの操作者に対して押しボタンスイッチを押下した場合と同様のリアルなクリック触感を呈示するものである。すなわち、タッチセンサが操作された場合に、その操作によりタッチセンサが入力を受け付ける動作とは分離して、押圧荷重を検出して、タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、操作者に違和感のないリアルなクリック触感を呈示するように、タッチ面を振動させるものである。 【0044】さらに、制御部15は、荷重検出部12により検出される押圧荷重が、タッチセンサ11の押圧によって増加しながら触感を呈示する基準(第1の基準)を満たしたのを検出すると(ステップS703)、触感呈示部13を所定の駆動信号で駆動して、タッチセンサ11を予め設定した所定の振動パターンで振動させてクリック触感を呈示する(ステップS704)。なお、荷重検出部12は、例えば、4つの歪みゲージセンサ31の出力の平均値から荷重を検出する。また、触感呈示部13は、例えば、2つの圧電振動子32を同相で駆動する。 【0046】また、ステップS704で触感呈示部13を駆動する所定の駆動信号、すなわち触覚を刺激する一定周波数、周期(波長)、波形、振幅は、呈示するクリック触感に応じて適宜設定すればよい。例えば、携帯端末に使用されているメタルドームスイッチに代表されるクリック触感を呈示する場合は、上記の基準の荷重が加わった時点で、例えば、170Hzの一定周波数のSin波からなる1周期分の駆動信号により触感呈示部13を駆動して、タッチ面11aを、基準の押圧荷重が加わった状態で、約15μm振動させる。これにより、操作者にリアルなクリック触感を呈示することができる。 【0049】このように、本実施の形態に係る入力装置は、荷重検出部12で検出されるタッチセンサ11に加わる荷重が、触感を呈示する基準(第1の基準)を満たすまでは圧覚を刺激するようにし、基準を満たすと、触感呈示部13を所定の駆動信号で駆動してタッチ面11aを所定の振動パターンで振動させて触覚を刺激する。これにより、操作者に対してクリック触感を呈示して、当該入力操作が完了したことを認識させる。したがって、操作者は、押しボタンスイッチ(プッシュ式ボタンスイッチ)のようなボタンスイッチがタッチセンサ上部に描画されていても、タッチセンサ11を、押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を得ながら、入力操作を行うことができるので、違和感を覚えることがない。また、タッチセンサ11を「押した」と言う意識との連動で入力操作を行うことができるので、単なる押圧による入力ミスも防止することができる。 そして、特に、上記【0016】【0033】?【0037】によれば、 補正後発明は、操作者がタッチ面を押圧操作する際、押圧荷重が入力を受け付ける所定の基準を満たすまでは圧覚を刺激し、所定の基準を満たした際に、タッチ面を振動させることで、押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を呈示することを実現するものとされており、 このことからすれば、 上記『駆動の態様が「操作者がボタンを押し込んだと錯覚するよう」な態様』(『振動であってボタンを押し込んだと同様に感じられる駆動の態様』と理解される)とは、 『駆動の態様が“操作者がボタンを操作した場合と同様なクリック触感を与えるように振動する”態様』を含んでいうものと解される。 以上をまとめれば、上記D2は、 「駆動の制御」が、『駆動の態様が“操作者がボタンを操作した場合と同様なクリック触感を与えるように振動する”態様』であるように制御することを含んでいうものと解される。 なお、上記〈明細書の記載〉には、実施の形態としては、振動する態様が、例えば、所定の振動パターンや一定周波数・一定駆動時間(周期)の振動であること、さらには、振動の周波数・駆動時間について考察し、特定範囲の周波数・特定範囲の駆動時間(周期)等が望ましいこと等が記載されている(とはいえ、それらは、呈示するクリック触感に応じて適宜設定すればよいとも記載されている。)が、 補正後請求項1は、それらの具体的内容を特定していない以上、補正後発明が特定し要求する技術思想は、それら個々の実施の形態のいずれに限定されるものではなく、 上記のとおり、『駆動の態様が「操作者がボタンを押し込んだと錯覚するよう」な態様』とは、『駆動の態様が“操作者がボタンを操作した場合と同様なクリック触感を与えるように振動する”態様』とする技術思想に止まるものである。 (イ)対比 上記D2は、上記のとおり、「駆動の制御」が、『駆動の態様が“操作者がボタンを操作した場合と同様なクリック触感を与えるように振動する”態様』であるように制御すること、を含んでいうものと解し得るものであるから、その場合について検討する。 引用発明はsで「圧力検知機構によって検出した操作パネルに対する押し圧力が所定の閾値を超えた時(タイミングt1)」、「駆動制御部」は、「パルス(P1)の持続時間(tc)持続する特定の周波数の信号(図2(c))を振動発生装置に与え」、 「振動発生装置」は、この「信号(図2(c))に応答して操作パネル部に力学的な振動を与え」(引用発明のt)、「使用者は該振動をクリック感として感知することができる」(引用発明のu)のであるところ、 かかる「クリック感」は「クリック触感」ともいうことができる。 したがって、引用発明の「駆動制御部」が行う駆動の制御は、『駆動の態様が“クリック触感を与えるように振動する”態様』であるような制御といえ、この点においては、補正後発明と相違しない。 もっとも、引用発明では、その「クリック触感」が“操作者がボタンを操作した場合と同様なクリック触感”とはしておらず、この点、補正後発明との相違が認められる。 エ-3 まとめ(要件D) 以上によれば、 補正後発明と引用発明とは、 「前記触感提示部の駆動を制御する制御部」が行う「駆動の制御」が ・「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に」、「前記触感提示部」を駆動するように制御すること、であり、 ・駆動の態様が“クリック触感を与えるように振動する”態様であるように制御すること、である点では一致する。 補正後発明の要件Dの特定の仕方でいえば、すなわち、 「前記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に」、“クリック触感を与えるように振動する態様であるように”「前記触感提示部の駆動を制御する制御部」を有する点では一致する。 もっとも、その“クリック触感を与えるように振動する態様であるように”が、補正後発明では、「操作者がボタンを押し込んだと錯覚するように」(“操作者がボタンを操作した場合と同様なクリック触感を与えるように振動する態様であるように”を含む)とはしておらず、この点、補正後発明との相違が認められる。 オ 一致点・相違点 したがって、補正後発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] A 入力を受け付けるタッチセンサと、 B 前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、 C 前記タッチ面を振動させる触感呈示部と、 D’前記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、クリック触感を与えるように振動する態様であるように、前記触感提示部の駆動を制御する制御部と、を有することを特徴とする E 入力装置。 [相違点] 「クリック触感を与えるように振動する態様であるように」が、 補正後発明では、 「操作者がボタンを押し込んだと錯覚するように」(「操作者がボタンを操作した場合と同様なクリック触感を与えるように振動する態様であるように」を含む)、とするのに対して、 引用発明では、そのようにはしていない点。 [5]相違点等の判断 (1)[相違点の克服] 引用発明を出発点とし、 引用発明の、クリック触感を与えるように振動する態様であるように前記触感提示部の駆動を制御する制御部を、 「操作者がボタンを操作した場合と同様なクリック触感を与えるように振動する態様であるように」前記触感提示部の駆動を制御する制御部とすることで、「操作者がボタンを押し込んだと錯覚するように」前記触感提示部の駆動を制御する制御部とすることとなり(以下、[相違点の克服]という)、上記[相違点]は克服され、補正後発明に到達する。 (2)[相違点の克服]の容易想到性の判断 〈周知技術〉 一般に、表示部に重ねたタッチパネル(タッチセンサ)を有する入力装置において、表示部に操作者が選択する「ボタン」を表示することは周知慣用にすぎない。 また、かかる入力装置において、操作者が表示部に表示されたボタンを操作した際、操作者が(機械式)ボタンを操作した場合と同様なクリック触感を与えるように振動させることも普通のことにすぎない。 これには、例えば、査定で引用された下記周知例1,2を含め、下記周知例が参照される。 記(周知例) ・周知例1:特開2004-70920号公報 {【0055】,【0059】,【0065】、図14,図18(S39:ボタンプッシュ時のクリック振動を発生する)等} ・周知例2:特開2005-149197号公報 {【0002】,【0003】,【0050】,【0051】、図5等} ・特表2008-516348号公報 {請求項1,2,31,【0055】?【0061】、図10,図11等} ・特開2009-3716号公報 {【0005】,【0024】?【0025】,【0029】等} ・特開2007-94993号公報 {【0002】,【0003】等} 〈容易想到性の判断〉 上記周知慣用技術からすれば、刊行物1に接した当業者が、引用発明の、表示パネル上のアイコン表示をボタン表示とする動機付けは十分あるといえ、その際、引用発明の「クリック触感を与えるように振動する態様」を、「操作者がボタンを操作した場合と同様なクリック触感を与えるように振動する態様」とすることは、ごく自然であり、上記周知技術からみても当業者が容易に想到し得ることである。 そして、そのようにすれば、「操作者がボタンを押し込んだと錯覚するように」前記触感提示部の駆動を制御する制御部とすること、となり、上記[相違点の克服]がなされることとなる。 したがって、上記[相違点の克服]は、当業者が容易に想到し得ることである。 (3)まとめ 以上、引用発明を出発点として、上記[相違点の克服]をして本願発明に到達することは、当業者が容易に想到し得たことである。 [6]小活 以上によれば、補正後の請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 【第3】査定の当否(当審の判断) [1]本願発明 平成25年8月16日付けの補正は上記のとおり却下する。 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は下記の通りである。 記(本願発明(請求項1)) 入力を受け付けるタッチセンサと、 前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、 前記タッチ面を振動させる触感呈示部と、 前記荷重検出部により検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、ボタンを押したと錯覚するように前記触感提示部の駆動を制御する制御部と、 を有することを特徴とする入力装置。 [2]引用刊行物の記載、引用発明、対比 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2009-053857号公報(上記刊行物1に同じ)には、前記「【第2-3】[3]」で認定したとおりの引用発明が認められ、 本願発明と引用発明との対応については、前記「【第2-3】[4]補正後発明と引用発明との対応」を援用する。 [3]一致点、相違点 本願発明は、前記補正後発明における「ボタンを押し込んだ」が、「ボタンを押した」であるものである。 したがって、[本願発明と引用発明との一致点]は、前記【第2-3】[4]で示した[一致点]と同じであり、 [本願発明と引用発明との相違点]は、前記【第2-3】[4]で示した[相違点](補正後発明と引用発明との相違点)において、「押し込んだ」を「押した」と変更したものとなる。 つまり、[本願発明と引用発明との一致点]と[本願発明と引用発明との相違点]は、次のようになる。 [本願発明と引用発明との一致点] 前記[補正後発明と引用発明との一致点]と同じである。 [本願発明と引用発明との相違点] 「クリック触感を与えるように振動する態様であるように」が、 本願発明では、 「操作者がボタンを押したと錯覚するように」(「操作者がボタンを操作した場合と同様なクリック触感を与えるように振動する態様であるように」を含む)、とするのに対して、 引用発明では、そのようにはしていない点。 [4]相違点等の判断(容易想到性の判断) 前記「【第2-3】[5]」でした判断(補正後発明と引用発明との相違点等の判断)と同じである。 [5]まとめ(本願発明) 本願発明は、上記刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 【第4】むずび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-08-13 |
結審通知日 | 2014-08-19 |
審決日 | 2014-09-01 |
出願番号 | 特願2010-288603(P2010-288603) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内田 正和 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
乾 雅浩 山田 正文 |
発明の名称 | 入力装置および入力装置の制御方法 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 大倉 昭人 |