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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1293027
審判番号 不服2013-17393  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-09 
確定日 2014-10-15 
事件の表示 特願2007-558077「レイヤ転送プロセス用の基板強化方法および結果のデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月 8日国際公開,WO2006/093817,平成20年 8月14日国内公表,特表2008-532317〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2006年2月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年2月28日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,平成23年12月20日付けで拒絶の理由が通知され,平成24年5月7日に意見書と手続補正書が提出され,同年8月29日付けで最後の拒絶の理由が通知され,同年12月11日に誤訳訂正書と意見書及び手続補正書が提出され,平成25年4月22日付けで,平成24年12月11日に提出した手続補正書でした補正を却下するとともに,拒絶査定がされたものである。
その後,平成25年9月9日に,前記拒絶査定に対する不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され,同年12月9日付けで審尋がおこなわれ,平成26年3月17日に前記審尋に対する回答書が提出されたものである。

第2 平成25年9月9日に提出された手続補正書でした手続補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年9月9日に提出された手続補正書による手続補正を却下する。

[理 由]
1 本件手続補正の内容
平成25年9月9日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は,特許請求の範囲についてするものであって,そのうち補正前後の請求項1は,各々次のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
第1たわみ特性を有し,さらに,背面,正面,劈開領域を有するとともに前記劈開領域と前記正面との間で決められる材料の層を含むドナー基板を用意すること,
前記ドナー基板の前記正面をハンドル基板の正面に結合することと,
マルチレイヤ構造を形成するためにバッキング基板を前記ドナー基板の前記背面に連結することであって,前記バッキング基板は,前記ドナー基板の前記第1たわみ特性を所定のレベルまで減少させるのに適切であり,前記所定のレベルは,材料の前記層をハンドル基板の前記正面に転写するのに適切なたわみ特性である,前記連結することと,
前記バッキング基板が少なくとも前記適切なたわみ特性を維持するために前記ドナー基板に対して損なわれないままである間に,前記劈開領域の部分で前記ドナー基板からの材料の前記層の除去を開始するために 前記ドナー基板の前記劈開領域の部分内での制御された劈開プロセスを開始することと
を含み,
前記バッキング基板は,前記ドナー基板と比較してより厚いシリコン・ウエハであり,
前記バッキング基板と前記ドナー基板との間の前記連結することは,結合プロセスを使用してもたらされ,前記結合プロセスは,共有結合,陽極結合,化学結合,静電結合,プラズマ活性化結合から選択されることを特徴とする
マルチレイヤ基板を製造する方法。」

(補正後)
「【請求項1】
第1たわみ特性を有し,さらに,背面,正面,劈開領域を有するとともに前記劈開領域と前記正面との間で決められる材料の層を含むドナー基板を用意すること,
前記ドナー基板の前記正面をハンドル基板の正面に結合することと,
マルチレイヤ構造を形成するためにバッキング基板を前記ハンドル基板に結合された前記ドナー基板の前記背面に連結することであって,前記バッキング基板は,前記ドナー基板の前記第1たわみ特性を所定のレベルまで減少させるのに適切であり,前記所定のレベルは,材料の前記層をハンドル基板の前記正面に転写するのに適切なたわみ特性である,前記連結することと,
前記バッキング基板が少なくとも前記適切なたわみ特性を維持するために前記ドナー基板に対して損なわれないままである間に,前記劈開領域の部分で前記ドナー基板からの材料の前記層の除去を開始するために 前記ドナー基板の前記劈開領域の部分内での制御された劈開プロセスを開始することと
を含み,
前記劈開プロセスでは,前記ドナー基板の選択された深さまでエネルギ粒子が導入され,選択された深さは前記材料の層の厚さを定義し,前記エネルギ粒子は水素イオンまたは希ガスイオンを含み,前記エネルギ粒子の注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり,
前記バッキング基板は,前記ドナー基板と比較してより厚いシリコン・ウエハであり,
前記バッキング基板と前記ドナー基板との間の前記連結することは,結合プロセスを使用してもたらされ,前記結合プロセスは,共有結合,陽極結合,化学結合,静電結合,プラズマ活性化結合から選択されることを特徴とする
マルチレイヤ基板を製造する方法。」

2 補正の適否について
本件補正の補正事項を整理すると次のとおりである。

(1)補正事項1
補正前の請求項1の「マルチレイヤ構造を形成するためにバッキング基板を前記ドナー基板の前記背面に連結すること」を補正して,補正後の「マルチレイヤ構造を形成するためにバッキング基板を前記ハンドル基板に結合された前記ドナー基板の前記背面に連結すること」にすること。

(2)補正事項2
補正前の請求項1の「劈開プロセスを開始することと
を含み」を補正して,
補正後の「劈開プロセスを開始することと
を含み,
前記劈開プロセスでは,前記ドナー基板の選択された深さまでエネルギ粒子が導入され,選択された深さは前記材料の層の厚さを定義し,前記エネルギ粒子は水素イオンまたは希ガスイオンを含み,前記エネルギ粒子の注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり」にすること。

(3)補正事項3
補正前の請求項4を削除して,補正前の請求項5-6を,補正後の請求項4-5にすること。

3 新規事項の追加の有無,及び,補正の目的の適否についての検討
(1)補正事項2について
ア 特許法第17条の2(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2をいう。以下同じ。)第3項は,拒絶査定不服審判を請求する場合において,その審判の請求と同時にする補正の要件を定めるものであり,特許法第36条の2(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第36条の2をいう。以下同じ。)第2項の外国語書面出願にあっては,同条第4項の規定により明細書,特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第2項に規定する外国語書面の翻訳文(以下「翻訳文」という。)に記載した事項の範囲内においてしなければならないことを規定する。
そこで,上記補正事項2が,翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものであるかについて検討する。

イ 上記補正事項2は,補正前の発明の「劈開プロセス」を,「前記劈開プロセスでは,前記ドナー基板の選択された深さまでエネルギ粒子が導入され,選択された深さは前記材料の層の厚さを定義し,前記エネルギ粒子は水素イオンまたは希ガスイオンを含み,前記エネルギ粒子の注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり」という技術的事項によって特定しようとするものである。

ウ 一方,翻訳文には,例えば,審判請求人が回答書において,本件補正が新規事項の追加に該当するものでないことが明らかであるとする根拠として主張する【0107】-【0109】に,以下の記載がある。(なお,下線は,当合議体において付したものである。以下同じ。)
(翻a)「【0107】
実施形態に応じて,劈開領域を,さまざまな技法を使用して形成することができる。すなわち,劈開領域は,注入される粒子,堆積されるレイヤ,拡散される物質,パターン形成される領域,その他の技法の任意の適切な組合せを使用して形成することができる。特定の実施形態で,この方法は,ドナー基板の上面を介する選択された深さまでの注入プロセスを使用して,あるエネルギ粒子を導入し,この選択された深さは,材料の「薄膜」と称する材料領域の層を定義する。さまざまな技法を使用して,エネルギ粒子をシリコン・ウエハに注入することができる。これらの技法に,たとえば,Applied Materials,Inc.社や他の会社によって製造されるビーム・ライン・イオン注入機器を使用するイオン注入が含まれる。代替案では,注入は,プラズマ浸入イオン注入(「PIII」)技法,イオン・シャワー,その他の質量固有でない技法を使用して行われる。そのような技法の組合せを使用することもできる。もちろん,使用される技法は,応用例に依存する。
【0108】
応用例に応じて,より小さい質量の粒子が,一般に,好ましい実施形態に従って材料領域の層への損傷の可能性を減らすために選択される。すなわち,より小さい質量の粒子は,その粒子が通る材料領域の層に実質的に損傷を与えずに,基板材料を通って選択された深さまで簡単に移動する。たとえば,より小さい質量の粒子(またはエネルギ粒子)は,ほとんどが,任意の帯電した(たとえば正または負の)および/または中性の原子または分子,あるいは電子や類似物とすることができる。特定の実施形態で,粒子は,実施形態に応じて,水素とその同位元素のイオン,ヘリウムとその同位元素,ネオンなどの希ガス・イオンまたは他のイオンなどのイオンを含む中性のおよび/または帯電した粒子とすることができる。粒子は,たとえば水素ガス,水蒸気,メタン,水素化合物のガス,その他の軽い原子質量の粒子などの化合物から導出することもできる。代替案では,粒子を,上記の粒子および/またはイオンおよび/または分子種および/または原子種の任意の組合せとすることができる。粒子は,一般に,表面を通って表面の下の選択された深さまで貫通するのに十分な運動エネルギを有する。
【0109】
例として,シリコン・ウエハに注入される種として水素を使用すると,注入プロセスは,条件の特定の組を使用して実行される。注入線量は,約10^(15)原子/cm^(2)から約10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,好ましくは,線量は,約10^(16)原子/cm^(2)を超える。注入エネルギは,約1KeVから約1MeVまでの範囲にわたり,一般に約50KeVである。注入温度は,約200℃または約250℃から約600℃の範囲にわたり,好ましくは,かなりの量の水素イオンが,注入されるシリコン・ウエハから外に拡散し,注入された損傷と応力をアニールする可能性を防ぐために,約400℃未満である。水素イオンを,約±0.03μから約±0.05μまでの正確さでシリコン・ウエハの選択された深さまで選択的に導入することができる。もちろん,使用されるイオンの種類やプロセス条件は,応用例に依存する。」

エ そうすると,上記補正事項2のうち,「ドナー基板」が「シリコン・ウエハ」であって,「エネルギ粒子」が「水素イオン」であるという組合せについては,「注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり」というプロセス条件が,翻訳文に記載されていることが理解できる。

オ しかしながら,上記補正事項2によって特定しようとする技術的事項は,「ドナー基板」を「シリコン・ウエハ」に限定しておらず,また,「エネルギ粒子」は「水素イオン」である場合とともに,「希ガスイオン」である場合をも含むものである。
他方,翻訳文には,シリコン・ウエハ「以外」のドナー基板を用いる場合,あるいは,エネルギ粒子として「希ガスイオン」を用いる場合に,「注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり」というプロセス条件を適用することは記載されていない。
すなわち,翻訳文には,「ドナー基板」が「シリコン・ウエハ」であって,「エネルギ粒子」が「水素イオン」であるという組合せ以外の場合について,プロセス条件が記載されていない。

カ 一方,イオン注入において,より小さい質量の粒子が,基板材料を通って簡単に移動することは技術常識といえる。また,上記摘記(翻a)の「より小さい質量の粒子は,その粒子が通る材料領域の層に実質的に損傷を与えずに,基板材料を通って選択された深さまで簡単に移動する。」との記載からも,エネルギ粒子の保有する質量の大きさが,その粒子が通る材料領域の層に与える損傷の程度,及び,前記エネルギ粒子が到達する深さ等を左右することを理解できる。
そうすると,「水素イオン」と「ネオンなどの希ガスイオン」の質量が異なることは周知であるから,「ドナー基板」が「シリコン・ウエハ」であって,「エネルギ粒子」が「水素イオン」であるという組合せにおける「注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり」というプロセス条件が,「エネルギ粒子」が「ネオンなどの希ガスイオン」である場合においても,そのまま妥当するといえないことは明らかである。
しかも,「ドナー基板」が,「シリコン・ウエハ」であるか,他の材料の基板であるかの違いによっても,適切なプロセス条件が異なることは,当業者にとって自明といえる。
そうすると,「ドナー基板」が「シリコン・ウエハ」であって,「エネルギ粒子」が「水素イオン」であるという組合せにおける,「注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり」というプロセス条件が,「ドナー基板」が「シリコン・ウエハ」以外の材料からなる基板であり,「エネルギ粒子」が「ネオンなどの希ガスイオン」である場合においても妥当するといえることが自明であると認めることもできない。

キ そうすると,補正事項2によって補正しようとする技術的事項のうち,「ドナー基板」が「シリコン・ウエハ」以外の材料からなる基板であり,「エネルギ粒子」が「ネオンなどの希ガスイオン」である場合のプロセス条件を「注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり」とする部分は,翻訳文に記載された事項ではなく,また,記載された事項から自明な事項であるとも認められない。
したがって,補正事項2は,翻訳文のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものということはできない。

ク 以上検討したように,補正事項2が,翻訳文のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものということはできないから,他の補正事項については検討するまでもなく,本件補正は,翻訳文に記載された事項の範囲内においてしたものということはできない。

4 むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

<予備的検討>
なお,仮に,上記補正事項を含む本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に違反しないとしても,下記のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

すなわち,平成25年9月9日に提出された手続補正書による補正は,補正前の請求項1の「劈開プロセス」を,「前記ドナー基板の選択された深さまでエネルギ粒子が導入され,選択された深さは前記材料の層の厚さを定義し,前記エネルギ粒子は水素イオンまたは希ガスイオンを含み,前記エネルギ粒子の注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり」と限定する上記補正事項2を含むから,本件補正は,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とした補正を含むこととなる。
そこで,平成25年9月9日に提出された手続補正書により補正された補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明1」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて検討する。

5 サポート要件について
(1)本願補正発明1は,「ドナー基板の選択された深さまでエネルギ粒子が導入され,選択された深さは前記材料の層の厚さを定義し,前記エネルギ粒子は水素イオンまたは希ガスイオンを含み,前記エネルギ粒子の注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり」を発明特定事項として含むものである。

(2)一方,本願の明細書及び図面には,「【0109】
例として,シリコン・ウエハに注入される種として水素を使用すると,注入プロセスは,条件の特定の組を使用して実行される。注入線量は,約10^(15)原子/cm^(2)から約10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,好ましくは,線量は,約10^(16)原子/cm^(2)を超える。注入エネルギは,約1KeVから約1MeVまでの範囲にわたり」と記載されている。
しかしながら,シリコン・ウエハ「以外」のドナー基板を用いた場合,あるいは,エネルギ粒子として,「希ガスイオン」を用いた場合の,「注入線量」及び「注入エネルギ」については,記載も示唆もない。

(3)そして,イオン注入において,より小さい質量の粒子が,基板材料を通って簡単に移動することは技術常識であり,イオンを注入する基板の材料の違いによって,当該イオン注入時のエネルギ粒子の挙動が異なることも周知の事項である。

(4)そうすると,「ドナー基板」が「シリコン・ウエハ」以外であり,あるいは,「エネルギ粒子」が「希ガスイオン」を含むものである場合においても,「エネルギ粒子の注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり」というプロセス条件によって,本願の明細書に記載された,発明が解決しようとする課題を解決することができるとまで,発明の詳細な説明に記載された,前記「例として,シリコン・ウエハに注入される種として水素を使用すると,注入プロセスは,条件の特定の組を使用して実行される。注入線量は,約10^(15)原子/cm^(2)から約10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,好ましくは,線量は,約10^(16)原子/cm^(2)を超える。注入エネルギは,約1KeVから約1MeVまでの範囲にわたり」という記載から把握できる発明を,一般化することができるとは認められない。
したがって,本願補正発明1は,発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認めることはできない。

(5)すなわち,特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって,本願補正発明1は,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 進歩性について
(1)本願補正発明1
本願補正発明1を再掲すると,以下のとおりである。

「【請求項1】
第1たわみ特性を有し,さらに,背面,正面,劈開領域を有するとともに前記劈開領域と前記正面との間で決められる材料の層を含むドナー基板を用意すること,
前記ドナー基板の前記正面をハンドル基板の正面に結合することと,
マルチレイヤ構造を形成するためにバッキング基板を前記ハンドル基板に結合された前記ドナー基板の前記背面に連結することであって,前記バッキング基板は,前記ドナー基板の前記第1たわみ特性を所定のレベルまで減少させるのに適切であり,前記所定のレベルは,材料の前記層をハンドル基板の前記正面に転写するのに適切なたわみ特性である,前記連結することと,
前記バッキング基板が少なくとも前記適切なたわみ特性を維持するために前記ドナー基板に対して損なわれないままである間に,前記劈開領域の部分で前記ドナー基板からの材料の前記層の除去を開始するために前記ドナー基板の前記劈開領域の部分内での制御された劈開プロセスを開始することと
を含み,
前記劈開プロセスでは,前記ドナー基板の選択された深さまでエネルギ粒子が導入され,選択された深さは前記材料の層の厚さを定義し,前記エネルギ粒子は水素イオンまたは希ガスイオンを含み,前記エネルギ粒子の注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり,
前記バッキング基板は,前記ドナー基板と比較してより厚いシリコン・ウエハであり,
前記バッキング基板と前記ドナー基板との間の前記連結することは,結合プロセスを使用してもたらされ,前記結合プロセスは,共有結合,陽極結合,化学結合,静電結合,プラズマ活性化結合から選択されることを特徴とする
マルチレイヤ基板を製造する方法。」

(2)引用例とその記載事項,及び,引用発明
原査定の理由で引用した,本願の優先権の主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である下記の引用例1には,次の事項が記載されている。

ア 引用例1:特開2005-5708号公報
(1a)「【請求項1】
第1の物質の層を,第2の物質によって構成される基板上に形成する方法であって,
前記第1および第2の物質は異なる熱膨張係数を有し,
第1の物質によって構成される第1の基板と,第2の物質によって構成される第2の基板と,前記第1および第2の物質の一方または他方と同じである物質から形成されるか,或いは前記第1および第2の物質の一方または他方の熱膨張係数と近似するかまたは同じである熱膨張係数を有する物質で構成される第3の基板とを選択する工程と,
前記第1の基板と前記第2の基板とが貼り合わさるように,且つ,前記第1および第2の基板のうちの1つと前記第3の基板とが貼り合わさるように集合体を形成する工程と,
前記第1の基板の厚み内に亀裂を生じさせる工程とを含む方法。
【請求項2】
前記第1および第2の基板のうちの1つと前記第3の基板とを貼り合わせてから,前記第1および第2の基板を貼り合わせる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2の基板のうちの1つの基板と前記第3の基板とを貼り合わせる前に,前記第1および第2の基板を貼り合わせる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の基板の内部に脆弱化層が形成されている請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記脆弱化層は,原子打ち込みまたはイオン打ち込みによって,或いは,ポーラスシリコン層を形成することによって形成される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記脆弱化層が原子打ち込みまたはイオン打ち込みによって形成され,
打ち込まれるイオンが,水素イオン,または水素イオンおよびヘリウムイオンの混合イオンである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の基板は,250℃?600℃の範囲の温度で亀裂が生じる請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1および第2の基板は,接着剤による接合または分子接合によって貼り合わせられている請求項1?7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の基板の集合体の界面を強化するために昇温する工程をさらに含む請求項1?8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の基板が半導体によって形成されている請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の基板の厚さが500μm?800μmの範囲である請求項1?10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第3の基板の厚さが700μm?1200μmの範囲である請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の物質の前記層および前記第2の物質によって構成される前記基板が,シリコン-石英,シリコン-ガラス,シリコン-サファイア,ゲルマニウム-シリコン,ゲルマニウム-ガラス,シリコンカーバイド(SiC)-石英,またはシリコンカーバイド(SiC)-ガラスの構造を形成している請求項1?12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の物質がシリコンであり,前記第2の物質および前記第3の基板を構成する第3の物質が石英である請求項1?12のいずれか1項に記載の方法。」

(1b)「【0013】
用意される2つの基板10および12は,比肩しうるまたは近似する厚さである。それらは,ウェハ接合技術(直接接合技術),接着剤を用いた接合,分子接合(フランス語では「collage moleculaire」,英語ではたとえば「molecular bonding」),および/または陽極接合(anodic bonding)を用いて,表面16と表面18とが向き合うように貼り合わされる。
【0014】
次に,所定の温度で且つ基板10に熱的に亀裂が入る熱的見積もり量(thermal budget)よりも低い熱的見積もり量で,予備的な熱処理が行われる。
【0015】
熱的見積もり量(thermal budget)は,熱処理の継続時間と熱処理の温度との積で与えられる。
【0016】
このように,基板10に熱的に亀裂が入ることがない条件が採用される。
【0017】
基板10は,機械的に,たとえば必要な力を加えるためのブレードを用いて,分離される。」

(1c)「【0029】
2つの基板のうちの一方または他方への第3の基板の利用(貼り合わせ)は,第1および第2の基板の間の熱膨張係数の差に起因する湾曲を実質的に減少させる。これは,2つの基板に亀裂を生じさせるための昇温,または,第1および第2の基板の接触の質を向上させるための昇温のときの湾曲に特に関連がある。
【0030】
第3の基板は,第1の基板上に配置してもよいし,第2の基板上に配置してもよい。
【0031】
シリコン-石英系では,第3の基板または石英板(ウェハ)が用いられ,それは石英の一方の側に配置される。
【0032】
第3の基板の厚さは,第3の基板の厚さと第3の基板が配置される基板の厚さとの合計が,第3の基板が配置されない基板の厚さよりも大きくなるような厚さであることが好ましい。第3の基板および第3の基板が配置される基板が石英からなる場合,それらのトータルの厚さは,1800マイクロメートル(μm)?2500μmの範囲であってもよい。」

(1d)「【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の第1の例を,図3(A)?(C)を参照して説明する。なお,背景技術について説明した技術を,必要に応じて本発明に適用してもよい。
【0036】
図3(A)において,符号20は,第1の物質から形成された第1の基板を示し,符号22は,第2の物質から形成された第2の基板(厚さは500μm?1200μmの範囲)を示す。第2の物質の熱膨張係数は,第1の物質のそれとは異なる。常温における2つの熱膨張係数の相対的な差は,たとえば10%や20%,またはそれよりも大きい。
【0037】
一例では,第1の基板はシリコンからなり,第2の基板は石英からなる。また,シリコン-サファイア系やシリコン-ガラス系であってもよい。
【0038】
第1の工程(図3(A))では,基板20への原子打ち込みまたはイオン打ち込みが行われ,その結果,脆弱領域または亀裂領域となる層(脆弱化層)23が形成される。このようにして,基板20は,物質22上に形成される層となる下側の領域25(厚さ50nm?500nm)と,基板20の大部分を構成する上側の領域24とに分離される。通常,水素が打ち込まれるが,他の種を打ち込んでもよく,2つ以上の種(たとえば,水素/ヘリウム)をともに打ち込んでもよい。
【0039】
脆弱な亀裂層または亀裂面23は,ポーラス層(porous layer)を形成することによっても形成できる。そのようなポーラス層は,K.Sataguchiらの「"ELTRAN by Splitting Porous Si Layers",Proceedings of the 9th Int. Symposium on Silicon-on-Insulator Tech. and Device, 99-3, The Electrochemical Society, Seattle, p 117-121 (1999)」などに記載されている。
【0040】
このようにして用意された2つの基板20および22は,面27が面28と対向するように貼り合わされる。このとき,ウェハ接合技術(マイクロエレクトロニクス分野で公知の任意の方法を用いたウェハ貼り合わせ)や,接着剤を用いた接着や,接合や,化学的方法(2つの面のうちの1つを親水性または疎水性にする)や,研磨による表面の活性化が用いられる。2つの基板は,2つの基板間の距離を縮めるように機械的な補助を受けて接触され,付着を開始する。このようなテクニックは,たとえば,Q.Y.TongおよびU.Gosele(oはウムラウト)による研究,「"Semiconductor Wafer Bonding", (Science and Technology), Wiley Interscience Publications」に記載されている。
【0041】
基板22は,基板26に接触されて貼り合わされる。基板26は,基板22および26の厚さの合計が基板20の厚さよりも大きくなるような厚さである。貼り合わせは,たとえば,分子接合や接着剤を用いて行うことができる。
【0042】
基板26(第3の基板)の熱膨張係数は,(第3の基板が貼り合わされる)基板22の熱膨張係数に近く,それらの熱膨張係数の常温における相対的な差は,10%未満である。一例では,基板26は基板22の物質と同一の物質で形成され,たとえば両者は石英で形成される。
【0043】
基板20および22を貼り合わせたのち,たとえば熱処理および/または機械的圧力(ブレードまたは加圧されたウォータージェット)を用いて脆弱面23に沿って亀裂を生じさせ,基板20の一部24が除去される。熱処理では,たとえば,350℃?500℃または650℃の範囲にまで温度が上昇する。
【0044】
昇温工程において,基板20および22の熱膨張係数が異なるにもかかわらず,また,石英のカウンタープレート26がない場合よりもより高い応力を層25が受けるにもかかわらず,基板26は,系を平坦にし,2つの基板20および22の湾曲を防止する。
【0045】
基板26がない場合,2つの基板20および22は初めは比肩しうる厚さであり異なる熱膨張係数を有するため,薄層25を基板22に移動させる際に,貼り合わせられた薄層25-基板22の構造が破壊されるおそれがある。さらに,2つの基板20および22の接合界面が接合されないおそれもある。このおそれは,熱膨張係数の差によって生じる応力および湾曲と関連する。
【0046】
上記のおそれは,より高い応力が基板22および/または層25に存在するとしても,基板26を用いることによって回避できる。
【0047】
このようにして,図3(B)に示される構造が得られる。
【0048】
次に,基板22上に堆積または形成された層25を含む全体から,基板26が分離される(図3(C))。
【0049】
基板26および22が分子接合によって貼り合わされている場合,それらは,2つの基板の界面にブレードを挿入することによって分離できる。それらが接着剤によって貼り合わされている場合,それらを分離するために溶剤を用いてもよい。
【0050】
基板20の一部24は,初期の構造が異質構造であったのにもかかわらず,回収して再利用することができる。
【0051】
さらに,上述した従来の方法で得られる層の品質に比べて,層25は品質(物質中にずれ面や転移面が存在しない)が高い。
【0052】
本発明によれば,上記構造を得るために,「スマートカット(Smart Cut:登録商標)」または基板亀裂タイプの技術を実施することが可能である。」

(1e)「【0055】
基板22とを貼り合わせる前に,基板20上に基板26を配置(たとえば,分子接合または接着剤を用いる)するという,本発明の1つのバリエーションを図4に示す。この場合でも,基板26は,基板20および22の熱膨張係数の差に起因する膨張および変形を防止する。基板26および20の厚さの合計は,基板22の厚さよりも大きいか実質的に大きいことが好ましい。基板20および26の熱膨張係数は,上述した意味(相対的な差が10%未満)で互いに近似する値である。
【0056】
上述したように,亀裂23の面において基板20を割ったのち,基板26と基板20の一部24とが取り去られる。これによって,図3(C)と同一の構造を製造することができる。
【0057】
1つのバリエーションでは,基板26は,基板20の膨張係数と同じ膨張係数を有する。たとえば,シリコン(基板20)-サファイア(基板22)の集合体では,シリコンの膨張係数と同じ膨張係数を有する基板26が用いられる。基板26は,たとえば,シリコンからなる基板であり,基板20の側に配置される。」

(1f)「【0058】
第1の実施例(図3(A))の場合,プレート(ウェハ)26を用いることによって,通常の厚さよりも薄い基板22を用いることが可能となる。
【0059】
従来の方法では,厚さ800μm以下の石英からなる基板22は,基板20の層25を移動させるための熱処理の間に破壊されてしまう。そのため,実質的に1000μm以上の厚さの基板を使用しなければならない。
【0060】
これに対して,本発明によれば,より薄い基板,800μm未満の厚さの基板,特に,500μm?800μmの範囲の基板,たとえば厚さ525μmの石英基板を用いることができる。」

イ 引用発明
引用例1の上記摘記(1d)の【0035】-【0052】では,引用例1に記載された発明の「第1の例」が,また,引用例1の上記摘記(1e)の【0055】-【0057】では,引用例1に記載された発明の「1つのバリエーション」が説明されている。
そうすると,前記【0055】-【0057】に記載された,前記「1つのバリエーション」についての説明では,前記【0035】-【0052】に記載された「第1の例」についての説明と共通する部分については省略されているものと理解することが自然といえる。
したがって,上記摘記(1d)と上記摘記(1e)の記載から,引用例1には,引用例1に記載された発明の「1つのバリエーション」として,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「(a)シリコンからなる第1の基板20を用意する工程と,
(b)サファイアからなる第2の基板22を用意する工程と,
(c)前記第1の基板20へ水素イオンを打ち込み,脆弱領域または亀裂領域となる層(脆弱化層)23を形成することで,前記第1の基板20を,前記第2の基板22上に形成される層となる下側の領域25(厚さ50nm?500nm)と,前記第1の基板20の大部分を構成する上側の領域24とに分離する工程と,
(d)前記第1の基板20と前記第2の基板22とを貼り合わせる前に,前記第1の基板20上に,シリコンからなる第3の基板26を配置(たとえば,分子接合または接着剤を用いる)する工程と,
(e)前記第1の基板20および前記第2の基板22を貼り合わせる工程と,
(f)熱処理および機械的圧力(ブレードまたは加圧されたウォータージェット)を用いて,前記脆弱領域または亀裂領域となる層(脆弱化層)23に沿って亀裂を生じさせ,前記第3の基板26及び前記第1の基板20の大部分を構成する上側の領域24を,前記領域25から除去する工程と,
を含む,
シリコンの層をサファイアによって構成される第2の基板22上に形成する方法。」

(3)対比
ア 引用発明の「脆弱領域または亀裂領域となる層(脆弱化層)23」及び「領域25」は,それぞれ,本願補正発明1の「劈開領域」及び「前記劈開領域と前記正面との間で決められる材料の層」に相当する。
また,引用発明の「シリコンからなる第1の基板20」が,背面及び正面を有することは自明であり,また,固有の「たわみ特性」を有することも明らかである。
したがって,引用発明の「第1の基板20」は,本願補正発明1の「第1たわみ特性を有し,さらに,背面,正面,劈開領域を有するとともに前記劈開領域と前記正面との間で決められる材料の層を含むドナー基板」に相当する。

イ 引用発明の「サファイアからなる第2の基板22」は,本願補正発明1の「ハンドル基板」に相当する。
したがって,引用発明の「前記第1の基板20および前記第2の基板22を貼り合わせる工程」は,本願補正発明1の「前記ドナー基板の前記正面をハンドル基板の正面に結合すること」に相当する。

ウ 引用発明の「シリコンからなる第3の基板26」及び「配置(たとえば,分子接合または接着剤を用いる)」は,本願補正発明1の「『シリコン・ウエハであ』る『バッキング基板』」及び「連結」に相当する。

エ 引用発明の「熱処理および機械的圧力(ブレードまたは加圧されたウォータージェット)を用いて,前記脆弱領域または亀裂領域となる層(脆弱化層)23に沿って亀裂を生じさせ,前記第3の基板26及び前記第1の基板20の大部分を構成する上側の領域24を,前記領域25から除去する」は,本願補正発明1の「前記劈開領域の部分で前記ドナー基板からの材料の前記層の除去を開始するために前記ドナー基板の前記劈開領域の部分内での制御された劈開プロセスを開始する」に相当する。

オ 引用発明の「前記第1の基板20へ水素イオンを打ち込み,脆弱領域または亀裂領域となる層(脆弱化層)23を形成することで,前記第1の基板20を,前記第2の基板22上に形成される層となる下側の領域25(厚さ50nm?500nm)と,前記第1の基板20の大部分を構成する上側の領域24とに分離する」と,本願補正発明1の「前記ドナー基板の選択された深さまでエネルギ粒子が導入され,選択された深さは前記材料の層の厚さを定義し,前記エネルギ粒子は水素イオンまたは希ガスイオンを含み,前記エネルギ粒子の注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたり」とは,「ドナー基板の選択された深さまでエネルギ粒子が導入され,選択された深さは材料の層の厚さを定義し,前記エネルギ粒子は水素イオンを含み」の点で一致する。

カ 引用発明の「シリコンの層をサファイアによって構成される第2の基板22上に形成する方法」は,本願補正発明1の「マルチレイヤ基板を製造する方法」に相当する。

そうすると,本願補正発明1と,引用発明との一致点と相違点は,次のとおりである。

<一致点>
「第1たわみ特性を有し,さらに,背面,正面,劈開領域を有するとともに前記劈開領域と前記正面との間で決められる材料の層を含むドナー基板を用意すること,
前記ドナー基板の前記正面をハンドル基板の正面に結合することと,
マルチレイヤ構造を形成するためにバッキング基板を前記ドナー基板の前記背面に連結することと,
前記劈開領域の部分で前記ドナー基板からの材料の前記層の除去を開始するために前記ドナー基板の前記劈開領域の部分内での制御された劈開プロセスを開始することと
を含み,
前記劈開プロセスでは,前記ドナー基板の選択された深さまでエネルギ粒子が導入され,選択された深さは前記材料の層の厚さを定義し,前記エネルギ粒子は水素イオンまたは希ガスイオンを含み,
前記バッキング基板は,シリコン・ウエハであり,
前記バッキング基板と前記ドナー基板との間の前記連結することは,結合プロセスを使用してもたらされる
マルチレイヤ基板を製造する方法。」

<相違点>
・相違点1:本願補正発明1では,「バッキング基板を前記ハンドル基板に結合された前記ドナー基板の前記背面に連結する」のに対して,引用発明では,「前記第1の基板20と前記第2の基板22とを貼り合わせる前に,前記第1の基板20上に,シリコンからなる第3の基板26を配置(たとえば,分子接合または接着剤を用いる)」している点。
すなわち,「バッキング基板」を「ドナー基板」に連結するタイミングが,本願補正発明1では,「ハンドル基板」に「ドナー基板」を結合した「後」であるのに対して,引用発明では,「第3の基板」を「第1の基板」に配置するタイミングが,「第2の基板」に「第1の基板」を貼り合わせる「前」である点。

・相違点2:本願補正発明1では,「前記バッキング基板は,前記ドナー基板の前記第1たわみ特性を所定のレベルまで減少させるのに適切であり,前記所定のレベルは,材料の前記層をハンドル基板の前記正面に転写するのに適切なたわみ特性である」のに対して,引用発明では,このような特定がされていない点。

・相違点3:本願補正発明1は,「前記バッキング基板が少なくとも前記適切なたわみ特性を維持するために前記ドナー基板に対して損なわれないままである間に」劈開プロセスを開始するのに対して,引用発明では,このような特定がされていない点。

・相違点4:本願補正発明1では,「前記エネルギ粒子の注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわた」るのに対して,引用発明では,第1の基板20へ水素イオンを打ち込む条件が特定されていない点。

・相違点5:本願補正発明1では,バッキング基板は,ドナー基板と比較して「より厚い」のに対して,引用発明では,このような特定がされていない点。

・相違点6:本願補正発明1では,バッキング基板とドナー基板との間の連結が,「共有結合,陽極結合,化学結合,静電結合,プラズマ活性化結合から選択される」結合プロセスを使用してもたらされるのに対して,引用発明では,第1の基板20上に,シリコンからなる第3の基板26を配置する方法として「(たとえば,分子接合または接着剤を用いる)」ことが例示されている点。」

(4)相違点についての判断
・相違点1について
引用例1の上記摘記(1a)に「【請求項2】
前記第1および第2の基板のうちの1つと前記第3の基板とを貼り合わせてから,前記第1および第2の基板を貼り合わせる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2の基板のうちの1つの基板と前記第3の基板とを貼り合わせる前に,前記第1および第2の基板を貼り合わせる請求項1に記載の方法。」と記載されている。
すなわち,引用例1に記載された発明においては,「第3の基板」を「第1の基板」に配置するタイミングを,「第2の基板」に「第1の基板」を貼り合わせる「前」とするか,「後」とするかは,適宜選択し得た設計事項であると理解できる。
そして,引用発明は,引用例1に記載された発明の「1つのバリエーション」であることから,引用発明において,「第3の基板」を「第1の基板」に配置するタイミングとして,「第2の基板」に「第1の基板」を貼り合わせた「後」を選択することは当業者が適宜なし得たことと認められる。また,このような構成を採用したことによる効果は,当業者が予測する範囲内のものである。
したがって,引用発明において,上記相違点1について本願補正発明1の構成とすることは,当業者にとって容易である。

・相違点2について
ア 本願の明細書の【0022】,【0119】-【0120】及び【0172】には以下の記載がある。
「【0022】
・・・<省略>・・・ さらに,用語たわみ特性(たとえば,第1たわみ特性)は,特定の実施態様による,ある厚さの材料の能力である曲げパラメータによって定義することができる。特定の実施態様で,各基板は,たわみ特性を有する。好ましい実施態様で,劈開に有効に使用することができず,劈開に不適切な,ある基板のより弱いたわみ特性が,より強い有効たわみ特性を与えるためにバッキング基板または類似するフィーチャを使用して変更される(たとえば,増やされる)。そのようなより強い有効たわみ特性は,ボイド,破損,粗い表面,膜剥離などの実質的な望ましくない特性を一切伴わずに劈開を介して材料の薄膜を除去することを可能にする。」,
「【0119】
好ましい実施形態では,本発明は,図32に示されているように,ハンドル基板に結合されているドナー基板に剛性を追加するためにバッキング基板3215を用意する。好ましくは,バッキング基板は,ドナー基板からの材料の層をハンドル基板の正面に転写するのに適切な,少なくともバッキング基板とドナー基板からなるマルチレイヤ構造の有効たわみ特性を与えるのに適切な厚さと材料を有する。
【0120】
単に例として,バッキング基板は,シリコン・ウエハである。そのようなバッキング基板は,725μ±15μの厚さを有し,たとえば200mmドナー/ハンドル/バッキング基板構造を備える単結晶シリコンから作られる。」及び
「【0172】
式1?8を使用して,800μ厚石英ウエハの片持ばり堅さを<110>方向で曲げられるシリコン・ウエハの片持ばり堅さと等しくなるようにするために800μ厚石英ウエハに追加される,ヤング率Eを有するレイヤの正しい層を計算することができる。図51を参照すると,我々は,異なるヤング率,たとえば100MPa,1GPaなどを有するさまざまな材料の層に対してたわみ(m)をプロットした。示されているのは,800μ石英ウエハのたわみ特性である。725μシリコン・ウエハのたわみ特性も示されている。他の材料のたわみ特性も示されている。基本的に,そのような計算は,79μのシリコンまたは追加の160μの石英(合計800+160=960μ)または約1.5mmの堅いエポキシを有する複合物が形成された場合に,石英ウエハを725μシリコン・ウエハのレベルまで強化することができることを示す。もちろん,当業者は,他の変形形態,修正形態,代替形態を認めるはずである。」
また,図51には,表題を「石英複合物「試験片持ばり」のたわみ対厚さ」とする,横軸が「厚さ(μ)」,縦軸が「たわみ(m)」であるグラフが示されている。
そうすると,本願補正発明1における「たわみ特性」は,材料の層の「試験片持ばり」によって評価される曲げパラメータ,すなわち,材料の層に,他から力を加えた場合の,曲がりやすさ,という特性を示す指標であると理解することが自然である。
そして,上記「そのようなより強い有効たわみ特性は,ボイド,破損,粗い表面,膜剥離などの実質的な望ましくない特性を一切伴わずに劈開を介して材料の薄膜を除去することを可能にする。」との記載に照らして,本願補正発明1の前記「所定のレベル」,すなわち「材料の前記層をハンドル基板の前記正面に転写するのに適切なたわみ特性」は,「ボイド,破損,粗い表面,膜剥離などの実質的な望ましくない特性を一切伴わずに劈開を介して材料の薄膜を除去することを可能にする」「より強い有効たわみ特性」に相当するものと認められ,具体的には,バッキング基板が,シリコン・ウエハである場合には,例えば,725μ±15μの厚さを備えることによって可能とされる程度のレベルであると理解することができる。

イ 一方,引用発明は,シリコンからなる第1の基板20上に,シリコンからなる第3の基板26を配置(たとえば,分子接合または接着剤を用いる)する工程を有するものである。
そして,前記第1の基板上に前記第3の基板を配置することによって,前記第1の基板のたわみ易さが抑えられることは自明である。
そうすると,引用発明の第3の基板は,第1の基板のたわみ特性を減少させるものといえる。

ウ さらに,引用例1の上記摘記(1d)には次の記載がある。
「【0045】
基板26がない場合,2つの基板20および22は初めは比肩しうる厚さであり異なる熱膨張係数を有するため,薄層25を基板22に移動させる際に,貼り合わせられた薄層25-基板22の構造が破壊されるおそれがある。さらに,2つの基板20および22の接合界面が接合されないおそれもある。このおそれは,熱膨張係数の差によって生じる応力および湾曲と関連する。
【0046】
上記のおそれは,より高い応力が基板22および/または層25に存在するとしても,基板26を用いることによって回避できる。」及び
「【0051】
さらに,上述した従来の方法で得られる層の品質に比べて,層25は品質(物質中にずれ面や転移面が存在しない)が高い。」

エ そうすると,引用発明は,第1の基板上に第3の基板を配置する等の構造を備えることによって,薄層25を基板22に移動させる際に,貼り合わせられた薄層25-基板22の構造が破壊されるおそれ,及び,2つの基板20および22の接合界面が接合されないおそれのいずれをも回避し,また,従来の方法で得られる層の品質に比べて,品質(物質中にずれ面や転移面が存在しない)が高い,層25を得ることができるという効果を奏するものと理解できる。

オ そして,前記エにおいて検討した各効果は,前記アで検討した「ボイド,破損,粗い表面,膜剥離などの実質的な望ましくない特性を一切伴わずに劈開を介して材料の薄膜を除去することを可能にする」という効果と類似の効果であると認められる。

カ してみれば,引用発明において,前記エにおいて検討した効果が得られる場合には,引用発明の第3の基板が配置された第1の基板のたわみ特性は,「材料の前記層をハンドル基板の前記正面に転写するのに適切なたわみ特性である」という条件を満たすものといえる。
そして,引用発明において,記第1の基板に配置する第3の基板の厚さを,前記エにおいて検討した効果を得るために十分なだけの厚さとすることは,当然に考慮すべきことであるから,引用発明において,第3に基板の厚さを十分なものとすることで,第1の基板のたわみ特性を,材料の層をハンドル基板の前記正面に転写するのに適切なたわみ特性である所定のレベルまで減少させるのに適切であるものとすることは,容易になし得たことである。
また,引用例1の上記摘記(1a)の「【請求項12】
前記第3の基板の厚さが700μm?1200μmの範囲である請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。」との記載に照らして,引用発明の「シリコンからなる第3の基板26」の厚さとして,700μm?1200μm程度の範囲が想定されていることが認められるところ,上記アで検討したように,本願補正発明1における「所定のレベル」は,バッキング基板が,シリコン・ウエハである場合には,例えば,725μ±15μの厚さを備えることによって可能とされる程度のレベルであると理解することができ,両者のたわみ特性において顕著な相違は認められないから,上記相違点2について,本願補正発明1の構成を採用したことによる効果も当業者が予測する範囲内のものと認められる。
したがって,引用発明において,上記相違点2について本願補正発明1の構成とすることは,当業者にとって容易である。

・相違点3について
引用発明の「(d)前記第1の基板20と前記第2の基板22とを貼り合わせる前に,前記第1の基板20上に,シリコンからなる第3の基板26を配置(たとえば,分子接合または接着剤を用いる)する工程」と,「(f)熱処理および機械的圧力(ブレードまたは加圧されたウォータージェット)を用いて,前記脆弱領域または亀裂領域となる層(脆弱化層)23に沿って亀裂を生じさせ,前記第3の基板26及び前記第1の基板20の大部分を構成する上側の領域24を,前記領域25から除去する工程」との間には,前記「シリコンからなる第3の基板26」が損なわれる工程は存在しない。
したがって,引用発明の前記「(f)熱処理および機械的圧力(ブレードまたは加圧されたウォータージェット)を用いて,前記脆弱領域または亀裂領域となる層(脆弱化層)23に沿って亀裂を生じさせ,前記第3の基板26及び前記第1の基板20の大部分を構成する上側の領域24を,前記領域25から除去する工程」が開始される時点において,前記第3の基板26は,前記第1の基板20上に配置されたままであり,損なわれていないものと認められる。
そうすると,引用発明においては,前記第3の基板26が少なくとも適切なたわみ特性を維持するために前記第1の基板20に対して損なわれないままである間に劈開プロセスが開始されると認められるから,上記相違点3は実質的なものではない。

・相違点4について
シリコンからなる基板へ水素イオンを打ち込み,脆弱領域または亀裂領域となる層を形成する際に,イオン注入の条件として,「エネルギ粒子の注入線量は,10^(15)原子/cm^(2)から10^(18)原子/cm^(2)までの範囲にわたり,注入エネルギは,1KeVから1MeVまでの範囲にわたる」という範囲に含まれる条件を用いることは,下記の周知例の(周a)の記載からも明らかなように,周知であるから,引用発明において,当該範囲に含まれるイオン注入の条件を用いること,すなわち,引用発明において,上記相違点4について本願補正発明1の構成とすることは,当業者にとって容易である。

・周知例:特表2001-525991号公報
(周a)「例としてシリコンウェハへの注入スペシーとして水素を使用して,注入プロセスは特定の1組の条件を使用して実行される。注入ドーズは約10^(15)乃至10^(18)アトム/cm^(2)の範囲であり,好ましくはドーズは約10^(16)アトム/cm^(2)よりも大きい。注入エネルギは約1KeV乃至約1MeVの範囲であり,通常約50KeVである。注入温度は約-200℃乃至約250℃から約600℃の範囲であり,実質的な量の水素イオンが注入シリコンウェハから拡散し,注入されたダメージと応力を焼きなます可能性を防止するために約400℃よりも低温であることが好ましい。」(第10頁第14-20行)

(周b)「代わりに,取外されるフィルムを有する基体は制御された劈開プロセスの前にスチフナ等のような転送基体上に一時的に配置されることができる。転送基体は制御された劈開プロセス中に材料の薄膜に対する構造支持を与えるためのフィルムを有する基体の上部表面または注入された表面に接合する。転送基体は例えば静電的,接着剤,原子間接合のような種々の結合または接合技術を使用してフィルムを有する基体に一時的に接合されることができる。これらのうちの幾つかの結合技術をここで説明する。転送基体は誘電性材料(例えば水晶,ガラス,サファイヤ,窒化シリコン,二酸化シリコン)と,導電材料(シリコン,炭化シリコン,ポリシリコン,III/V族材料,金属)と,プラスティック(例えばポリイミドベースの材料)から作られている。勿論,使用される転送基体のタイプは応用に依存している。さらに,転送基体は制御された劈開プロセスの後,劈開された基体から材料の薄膜を除去することに使用されることができる。」(第20頁第11-22行)

(周c)「その代わりに,自己結合プロセスはウェハ表面の一方をプラズマ洗浄により結合されるように活性化することにより行われる。特に,プラズマ洗浄はアルゴン,アンモニア,ネオン,水蒸気,酸素のようなガスから得られるプラズマを使用してウェハ表面を活性化する。活性化されたウェハ表面2203は他方のウェハの面に対向して位置され,これは酸化被覆2205を有する。ウェハは露出されたウェハ面を有するサンドウィッチ構造である。選択された量の圧力がウェハの各露出面に与えられ,1つのウェハを他方のウェハへ自己結合する。」(第23頁第16-32行)

(周d)「代わりに,種々のその他の低温技術がドナーウェハをターゲットウェハに接合するために使用されることができる。例えば静電結合技術が2つのウェハを共に接合するために使用されることができる。特に一方または両者のウェハ表面が他方のウェハ表面に吸着されるために帯電される。さらにドナーウェハは種々の普通に知られている技術を用いてターゲットウェハに融着されることができる。勿論,使用される技術は応用に依存している。」(第24頁第3-8行)

・相違点5について
ア 引用例1の上記摘記(1d)の「2つの基板20および22は初めは比肩しうる厚さ」との記載から,引用発明において,第1の基板と第2の基板とを同程度の厚さとする場合があることは想定されているものと理解できる。
一方,引用例1の上記摘記(1a)の「【請求項11】
前記第2の基板の厚さが500μm?800μmの範囲である請求項1?10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第3の基板の厚さが700μm?1200μmの範囲である請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。」との記載から,第3の基板を第2の基板よりも厚くするという技術的思想が理解できる。
そうすると,上記摘記(1d)及び(1a)の記載から,第1の基板の厚さを第2の基板とを同程度の500μm?800μmとなし,第3の基板の厚さを700μm?1200μmとすることで,第3の基板の厚さを第1の基板の厚さよりも大きくすること,すなわち,バッキング基板を,ドナー基板と比較して「より厚く」することは,当業者が適宜なし得たことである。

イ また,仮に上記アの理由を認めることができなかったとしても,引用例1の上記摘記(1c)の「2つの基板のうちの一方または他方への第3の基板の利用(貼り合わせ)は,第1および第2の基板の間の熱膨張係数の差に起因する湾曲を実質的に減少させる。これは,2つの基板に亀裂を生じさせるための昇温,または,第1および第2の基板の接触の質を向上させるための昇温のときの湾曲に特に関連がある。」との記載に照らして,第3の基板は,第1および第2の基板の間の熱膨張係数の差に起因する湾曲を実質的に減少させることを目的として配置されているといえるから,前記湾曲を減少させるために十分な厚さを確保することが望ましいことは直ちに理解できることである。
そして,十分な厚さを確保するために,第3の基板の厚さを大きくすることは当業者が容易に想到し得たことと認められるから,前記第3の基板を,第1の基板と比較して「より厚く」することは当業者が適宜なし得たことである。
しかも,バッキング基板の厚さを,ドナー基板の厚さとの比較において,「より厚く」したことによる,臨界的な意義は明細書及び図面の記載からは認められない。
したがって,バッキング基板を,ドナー基板と比較して「より厚く」することは,当業者が適宜なし得たことである。

ウ そうすると,上記アまたはイの理由によって,上記相違点5について本願補正発明1の構成とすることは,当業者にとって容易である。

・相違点6について
引用発明の「分子接合」は,分子間を化学結合によって接合する接合形態を意味すると解されるから,本願補正発明1の「化学結合」の範疇に含まれる接合形態の一種であるといえる。したがって,相違点6は実質的なものではない。
仮に,引用発明の「分子接合」が,本願補正発明1の「化学結合」の範疇に含まれないとしても,引用例1の上記摘記(1d)の「本発明の第1の例を,図3(A)?(C)を参照して説明する。なお,背景技術について説明した技術を,必要に応じて本発明に適用してもよい。」との記載,及び,引用例1の上記摘記(1b)の「それらは,ウェハ接合技術(直接接合技術),接着剤を用いた接合,分子接合(フランス語では「collage moleculaire」,英語ではたとえば「molecular bonding」),および/または陽極接合(anodic bonding)を用いて,表面16と表面18とが向き合うように貼り合わされる。」との記載に照らして,引用発明の第1の基板20上に,シリコンからなる第3の基板26を配置する方法として,本願補正発明1の「陽極結合」に相当する結合プロセスであると認められる「陽極接合(anodic bonding)」を必要に応じて適用すること,あるいは,上記周知例の(周b)-(周d)に記載される,本願補正発明1の「プラズマ活性化結合」及び「静電結合」に相当する結合プロセスであると認められる「ウェハ表面の一方をプラズマ洗浄により結合されるように活性化する」結合プロセス,あるいは,「静電結合技術」を適用することは容易になし得たことである。

(5)まとめ
以上のとおり,本願補正発明1は,上記引用発明と周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

7 補正却下についてのむすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また,仮に,本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に違反しないとしても,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成25年9月9日に提出された手続補正書でした補正は上記のとおり却下され,平成24年12月11日に提出された手続補正書でした補正が,平成25年4月22日付けの補正の却下の決定によって却下されているので,本願の請求項1-6に係る発明は,平成24年5月7日に提出された手続補正書により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1-6に記載されている事項により特定されるとおりのものであるところ,そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,次のとおりである。

「【請求項1】
第1たわみ特性を有し,さらに,背面,正面,劈開領域を有するとともに前記劈開領域と前記正面との間で決められる材料の層を含むドナー基板を用意すること,
前記ドナー基板の前記正面をハンドル基板の正面に結合することと,
マルチレイヤ構造を形成するためにバッキング基板を前記ドナー基板の前記背面に連結することであって,前記バッキング基板は,前記ドナー基板の前記第1たわみ特性を所定のレベルまで減少させるのに適切であり,前記所定のレベルは,材料の前記層をハンドル基板の前記正面に転写するのに適切なたわみ特性である,前記連結することと,
前記バッキング基板が少なくとも前記適切なたわみ特性を維持するために前記ドナー基板に対して損なわれないままである間に,前記劈開領域の部分で前記ドナー基板からの材料の前記層の除去を開始するために 前記ドナー基板の前記劈開領域の部分内での制御された劈開プロセスを開始することと
を含み,
前記バッキング基板は,前記ドナー基板と比較してより厚いシリコン・ウエハであり,
前記バッキング基板と前記ドナー基板との間の前記連結することは,結合プロセスを使用してもたらされ,前記結合プロセスは,共有結合,陽極結合,化学結合,静電結合,プラズマ活性化結合から選択されることを特徴とする
マルチレイヤ基板を製造する方法。」

2 進歩性について
(1)引用例及びその記載事項,及び,引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1に記載されている事項,及び,引用発明は,上記「第2 <予備的検討> 6 進歩性について (2)引用例とその記載事項,及び,引用発明」の項で指摘したとおりである。

(2)当審の判断
本願発明1を特定するに必要な事項を全て含み,さらに具体的に限定したものに相当する本願補正発明1が,前記「第2 <予備的検討> 6 進歩性について (4)相違点についての判断」に記載したとおり,引用発明と周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明1も同様に,引用発明と周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用例1に記載された発明と周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって,本願の他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-19 
結審通知日 2014-05-20 
審決日 2014-06-03 
出願番号 特願2007-558077(P2007-558077)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 561- Z (H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 周治  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 加藤 浩一
西脇 博志
発明の名称 レイヤ転送プロセス用の基板強化方法および結果のデバイス  
代理人 山川 茂樹  
代理人 山川 政樹  
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