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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D
管理番号 1293098
審判番号 不服2012-18354  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-20 
確定日 2014-10-24 
事件の表示 特願2008-170134「折板屋根の屋上緑化用トレイ取付構造」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月14日出願公開、特開2010- 7407〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成20年6月30日の出願であって,その請求項1に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「【請求項1】
山部及び谷部を連続形成した折板屋根の上面に、取付用台座を介して屋上緑化用トレイを取付けてなる折板屋根の屋上緑化用トレイ取付構造において、
前記屋上緑化用トレイは、方形状に形成したトレイ本体の対向する両側縁部に、内側に凹んだボルト嵌挿用切欠部を、山部の間隔が異なる複数の種類の折板屋根の各々の山部の位置に対応させて長手方向に亘って複数形成すると共に、
前記取付用台座は、前記折板屋根の山部に固定可能な固定部から鉛直方向にボルト部を立設してなり、
前記取付用台座の固定部を前記山部の所望の位置に固定したうえで、前記屋上緑化用トレイを隣り合う折板屋根の山部に跨って架設すると共に、立設された前記ボルト部の一方から前記屋上緑化用トレイのボルト嵌挿用切欠部を外嵌し、更に、前記同様にして立設された前記ボルト部の他方から山部の形成方向に隣り合う屋上緑化用トレイのボルト嵌挿用切欠部を外嵌して、これら2つの屋上緑化用トレイを隣設させ、前記ボルト部の上方からナット等の固定具を螺着し、隣設した2つの屋上緑化用トレイを連結させて固定するようにしたことを特徴とする折板屋根の屋上緑化用トレイ取付構造。」

2 引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成20年2月28日に頒布された刊行物である特開2008-45324号公報(以下、「刊行物1」という)には、立ちはぜ折板屋根への緑化基盤材の固定構造とその固定構造を用いた立ちはぜ折板屋根緑化構造体に関して、次の事項が記載されている。

(1a)「【請求項1】
立ちはぜ折板屋根の上に緑化基盤材を固定する固定構造であって、
一対のクランプ片で立ちはぜの突条を左右から挟み付けるようにして立ちはぜ部に固定されたクランプと、
該固定されたクランプに立設された支柱と、
該固定されたクランプのクランプ片を利用して立ちはぜ折板屋根が平坦面となるように屋根面に取り付けられた発泡樹脂製断熱板と、
該発泡樹脂製断熱板の上に前記支柱を利用して固定された緑化基盤材と、
を少なくとも有することを特徴とする立ちはぜ折板屋根への緑化基盤材の固定構造。」

(1b)「【0008】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、立ちはぜ折板屋根の上に高い断熱効果と高い安定性を備えた状態で緑化基盤材を固定するための固定構造を提供することを目的とする。また、そのようにして固定された緑化基盤材の上に植物が植生された緑化構造体を提供することを目的とする。」

(1c)「【0012】
本発明の固定構造において、緑化基盤材は従来の屋上緑化で用いられている緑化基盤材を任意に用いることができる。素材は軽量性と成形容易性の観点から発泡樹脂製が好ましいが、非発泡樹脂や発泡モルタルのような材料で造られていてもよい。緑化基盤材は客土層等からなる植栽層をそのまま収容する形態であってもよく、保水排水機能を備え、その上に植栽層を載置する形態のものでもよい。また、緑化基盤材は一枚物でよく、複数枚の単位緑化基盤材を組み合わせて構成されるものであってもよい。」

(1d)「【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、立ちはぜ折板屋根の上に高い断熱効果と高い安定性を備えた状態で緑化基盤材を固定することができる。また、そのようにして固定した緑化基盤材の上に植物を植生することにより、安定した構造の屋上緑化構造体を立ちはぜ折板屋根の上に構築することができる」

(1e)「【0020】
図1に示すように、立ちはぜ折板屋根Rは、図1bに断面を示す左右の立ち上がり縁の上端部に互いに係合する湾曲部3a,3bを形成した長尺状の屋根板3を、隣接する屋根板3,3の湾曲部同士を係合(はぜ継ぎ)しながら、梁5の上に専用の取り付け具6を利用して固定するようにしており、屋根勾配方向であるX方向に走る山形部1が軒先方向であるY方向に所定ピッチPaで連続している。そして、該山形部1の頂部2には屋根板3を連接したときの丸みを持つ突条(立ちはぜ)4が屋根勾配方向に走っている。このような立ちはぜ折板屋根Rの上に緑化基盤材A(図5等参照)を固定して、本発明による立ちはぜ折板屋根緑化構造体とする。」

(1f)「【0021】
図2は、そこで用いるクランプ60およびそこに立設される支柱70を示す。クランプ60は、一定の横幅を持つ左右一対のクランプ片61,61で構成される。各クランプ片61は、立ちはぜである突条4の下方領域を押さえ付ける挟持先端部62aとその上方の第1の水平部62bとからなる膨出部63と、前記挟持先端部62aの先端位置とほぼ同じ垂直位置において前記第1の水平部62bから立ち上がる垂直部64と、該垂直部64の上端に位置する第2の水平部65とを有し、垂直部64には左右のクランプ片61、61を一体に締め付けるときに用いるボルトのためのボルト孔66が形成されている。また、第2の水平部65には、本発明でいう支柱の一例であるネジ桿70を取り付けるためのボルト孔67が形成されている。前記ネジ桿70は、この例では支持板71のほぼ中央に溶着等により立設されており、該支持板71には、クランプ片61、61の第2の水平部65に形成したボルト孔67,67に対向する位置に、ボルト孔72、72が形成されている。なお、ボルトナットを用いずにドリルビス等を用いてこれらを固定する場合は、ボルト孔66,67、72は省略してもよく、ボルト孔に替えて小孔を形成しておいてもよい。」

(1g)「【0023】
クランプ60の固定に際しては、図3に示すように、左右のクランプ片61,61の膨出部63の間に突条4を挟み込んだ姿勢とし、双方の垂直部64に形成したボルト孔66にボルトを通してナットで締め付ける。一定の横幅を持つ挟持先端部62の先端と膨出部63の内面側とで突条4を両側から押さえ付けた状態で、クランプ60は突条4に固定されるので、クランプ60の固定状態はきわめて安定したものとなる。図3には示されないが、クランプ60を固定した後、その第2の水平部65、65の上に前記した支持板71を置き、ボルト孔72、67を利用して両者を一体に固定することにより、前記ネジ桿70はクランプ70に垂直状に立設される。」

(1h)「【0024】
上記のようにして、複数個のクランプ60およびネジ桿70を立ちはぜである突条4の必要箇所に固定し、それを利用して、発泡樹脂製断熱板40および緑化基盤材Aを立ちはぜ折板屋根Rの上に固定する。以下、それを説明する。なお、ここで使用する緑化基盤材Aは、図5に示すように、屋根勾配方向であるX方向と軒先方向であるY方向に所定ピッチ(P1,P2)で取り付け孔11が形成されており、軒先方向のピッチP2は立ちはぜ折板屋根Rの突条4・・のピッチPaと等しいかその整数倍である。従って、立ちはぜ折板屋根Rの軒先方向であるY方向では、緑化基盤材10のY方向の取り付け孔のピッチP2に一致した突条4に対して、クランプ60およびネジ桿70が固定される。そして、当該突条4での屋根勾配方向であるX方向には、緑化基盤材10のX方向の取り付け孔のピッチP1に一致したピッチで突条4にクランプ60およびネジ桿70が固定される。

(1i)「【0025】
なお、この例において、立ちはぜ折板屋根Rに固定する緑化基盤材Aは、図5に示すように、実質的な正方形である単位緑化基盤材10を複数枚組み付けて構成される。単位緑化基盤材10は発泡樹脂の成形品であり、保水用空間12と植栽層支持体13を有し、周壁部には互いに嵌合する接続用凹凸部14が形成される。各偶部には孔11が形成されており、該孔11は、接続用凹凸部14を利用して隣接する単位緑化基盤材10、10を組み付けたときに、上下に連通する取り付け孔11となる。この例では、複数枚の単位緑化基盤材10を組み付けて緑化基盤材Aとしたときに、前記各取り付け孔11は、屋根勾配方向であるX方向ではピッチP1で配列しており、軒先方向であるY方向ではピッチP2で配列している。なお、緑化基盤材Aは一枚物で作られていてもよいが、その場合でも、ピッチP1およびピッチP2で取り付け孔11が形成される。」

(1j)「【0029】
次ぎに、発泡樹脂製断熱板40の敷き詰め作業と平行して、あるいはその前後の作業として、前記のようにしてクランプ60の各クランプ片61にネジ桿70を立設する。立設したネジ桿70・・を利用して、単位緑化基盤材10に形成した取り付け孔11にネジ桿70を貫通させながら、必要枚数の単位緑化基盤材10を発泡樹脂製断熱板40の上に配置する。単位緑化基盤材10から飛び出ているネジ桿70にナット73をネジ込むことにより、単位緑化基盤材10は立ちはぜ折板屋根Rの上にしっかりと固定される。すべての単位緑化基盤材10に対してナット73による締め付けを行うことにより、図4、図5に示すように、本発明による固定構造で固定された緑化基盤材Aが立ちはぜ折板屋根Rの上に完成する。」

(1k)上記記載事項(1e)、(1h)及び(1j)と共に図1、5及び6を見ると、これらの図には、以下の事項が示されている。
a 単位緑化基盤材10を隣り合う折板屋根の山部に跨って架設すること。
b 単位緑化基盤材10に形成した取り付け孔11にネジ桿70を貫通させ、山部の形成方向に隣り合う単位緑化基盤材10に形成した取り付け孔11に当該ネジ桿70を貫通させて、隣設した2つの単位緑化基盤材10を立ちはぜ折板屋根Rの上に固定すること。

以上より、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているといえる。
「複数個のクランプ60およびネジ桿70を山形部1が軒先方向であるY方向に所定ピッチPaで連続している立ちはぜ折板屋根Rの山形部1の立ちはぜ部である突条4の必要箇所に固定し、それを利用して、緑化基盤材Aを立ちはぜ折板屋根Rの上に固定する構造において、
緑化基盤材Aは、実質的な正方形である単位緑化基盤材10を複数枚組み付けて構成されており、周壁部には互いに嵌合する接続用凹凸部14が形成され、各偶部には孔11が形成されており、該孔11は、接続用凹凸部14を利用して隣接する単位緑化基盤材10、10を組み付けたときに、上下に連通する取り付け孔11となっており、また、屋根勾配方向であるX方向と軒先方向であるY方向に所定ピッチ(P1,P2)で取り付け孔11が形成されており、軒先方向のピッチP2は立ちはぜ折板屋根Rの突条4のピッチPaと等しいかその整数倍であり、
各ピッチ(P1,P2)に一致したピッチで突条4にクランプ60が固定され、
クランプ60の各クランプ片61にネジ桿70を立設し、
前記単位緑化基盤材10を隣り合う折板屋根の山部に跨って架設し、
単位緑化基盤材10に形成した取り付け孔11にネジ桿70を貫通させ、山部の形成方向に隣り合う単位緑化基盤材10に形成した取り付け孔11に当該ネジ桿70を貫通させて、必要枚数の単位緑化基盤材10を配置して、単位緑化基盤材10から飛び出ているネジ桿70にナット73をネジ込むことにより、山部の形成方向に隣設した2つの単位緑化基盤材10を立ちはぜ折板屋根Rの上に固定する単位緑化基盤材10の固定構造。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成15年6月3日に頒布された刊行物である特開2003-158923号公報(以下、「刊行物2」という)には、屋上緑化用植生パレットに関して、次の事項が記載されている。

(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 建物の屋上に複数連接して設置される屋上緑化用植生パレットにおいて、植生パレットの底部裏面に複数の突起又は複数の溝を設けることにより植生パレット底部裏面と屋上面との間に底部通路を形成し、複数の植生パレットを連接した状態で、前記植生パレットの底部通路と植生パレットの上面とを連通する通気路が形成されることを特徴とする屋上緑化用植生パレット。」

(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】建物の屋上に緑化を目的として複数連接して設置される屋上緑化用植生パレットに関する。」

(2c)「【0013】図1に示されるように、屋上緑化用植生パレット1の4つの外側コーナ部には、断面1/4円形の溝10が形成される。この溝10は、複数の屋上緑化用植生パレット1を連接して屋上面に設置した際、4個の屋上緑化用植生パレット1のコーナ部の断面1/4円形溝10が合わさり断面円形の孔を形成し、この孔に後述する連結具を設置し、屋上緑化用植生パレット1同士を連結するものである。屋上緑化用植生パレット1同士を連結しない場合には、前記溝10は、底部通路9と屋上緑化用植生パレット1の上面とを連通する通気路としての機能を有する。

(2d)「【0016】屋上緑化用植生パレット1を複数連接して屋上に設置する際、屋上緑化用植生パレット1同士を連結しなくても、強風に対して十分安定性が確保されるが、屋上緑化用植生パレット1同士を連結して一体化すると、より安定性を増すので、図6及び図7により、屋上緑化用植生パレット1同士を連結する連結具16の構成を説明する。屋上緑化用植生パレット1同士を連結するための連結具16は、屋上面に設置されるベース17と、ベース17上に立設し、上端部に雄ねじ部19を形成した支柱18と、支柱18の雄ねじ部19に螺合する雌ねじ部を有するキャップ20とナット21により構成される。」

(2e)「【0017】図7により、連結具16を用いて屋上緑化用植生パレット1同士を連結する構成を説明する。屋上緑化用植生パレット1を連設して屋上に設置する際、屋上緑化用植生パレット1のコーナ部の位置に連結具16を設置する。4個の屋上緑化用植生パレット1のコーナ部に形成した断面1/4円形の溝を連結具16の支柱18に位置させ、支柱18の上部の雄ねじ部19に、前記4個の断面1/4円形の溝10により形成される断面円形の孔の直径より大きいな径のキャップ20の雌ねじ部を螺合して、ナット21により締着し、4個の植生パレット1のコーナ部を連結する。連設する屋上緑化用植生パレット1のコーナ部を同様に連結して、連設される複数の屋上緑化用植生パレット1同士を一体に連結する。」

(3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成13年10月31日に頒布された刊行物である特開2001-303724号公報(以下、「刊行物3」という)には、太陽電池モジュールの取付構造に関して、次の事項が記載されている。

(3a)「【請求項1】 折版屋根の上面に南方向に向けて太陽電池モジュールを取り付ける構造において、太陽電池モジュールの架台の下面部に複数の取り付け部を設け、各取り付け部の前後両側に前側ボルト孔と後側ボルト孔とをそれぞれ設けると共に、折版屋根の山部に対して固定される複数の固定ベースを前側ボルト孔及び後側ボルト孔に対してそれぞれ取付ボルトにより回転自在に取り付け、前側ボルト孔に取り付けられる固定ベースと後側ボルト孔に取り付けられる固定ベースとの間の距離を可変自在とする手段を設けたことを特徴とする太陽電池モジュールの取付構造。」

(3b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、太陽電池モジュールの取付構造に関するものである。」

(3c)「【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0010】本実施形態の太陽電池モジュール2は、パネル状の太陽電池本体12と、これを支持する架台3と、架台3を折版屋根の山部7に対して固定する固定ベース8とで主体が構成されている。」

(3d)「【0011】上記架台3の下面部には、複数の取り付け部4が設けられている。ここでは、複数の取り付け部4は左右2本の長尺の支持バー4aで構成されている。各支持バー4aは、図5(d)に示すように、例えばC型鋼からなり、長手方向の前部に前側ボルト孔5が、後部に後側ボルト孔6がそれぞれ穿設されている。図5(d)に示す例では、1本の支持バー4aに、2つの丸孔10と2つの長孔11とが設けられており、山部7の間隔に応じていずれか1つの丸孔10と1つの長孔11とを選ぶことで、山部7の間隔が異なる折版屋根にも容易に対応できるようにしてある。もちろん、1本の支持バー4aに1つの丸孔10と1つの長孔11とを設けたものであってもよい。」

(3e)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例を示し、(a)は太陽電池モジュールを折版屋根の山部の方向に対して直交方向に向けた状態を示す斜視図、(b)は太陽電池モジュールを折版屋根の山部の方向に対して傾斜した方向に向けた状態を示す斜視図である。」

(3f)上記(3c)、(3d)及び(3e)の記載を参照すると、図1には、支持バー4aを折版屋根の山部の方向に対して直交方向に設置することが記載されている。

(3g)以上より、刊行物3には、以下の技術的事項が記載されている。
「折版屋根の上面に南方向に向けて太陽電池モジュールを取り付ける構造において、太陽電池モジュール2は、パネル状の太陽電池本体12と、これを支持する架台3と、架台3を折版屋根の山部7に対して固定する固定ベース8とで主体が構成されており、上記架台3の下面部には、複数の取り付け部4が設けられており、複数の取り付け部4は左右2本の長尺の支持バー4aで構成されており、各支持バー4aは、長手方向の前部に前側ボルト孔5が、後部に後側ボルト孔6がそれぞれ穿設されており、1本の支持バー4aに、2つの丸孔10と2つの長孔11とが設けられており、山部7の間隔に応じていずれか1つの丸孔10と1つの長孔11とを選ぶことで、支持バー4aを折版屋根の山部の方向に対して直交方向に設置して、山部7の間隔が異なる折版屋根にも容易に対応できるようにしてある太陽電池モジュールの取付構造。」

3 本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
ア 引用発明の「山形部1が軒先方向であるY方向に所定ピッチPaで連続している立ちはぜ折板屋根」は、「山形部1が軒先方向であるY方向に所定ピッチPaで連続している」ことにより「折板屋根」の「山部及び谷部を連続形成」しているので、本願発明の「山部及び谷部を連続形成した折板屋根」に相当する。
また、引用発明の「単位緑化基盤材10」は、「複数枚組み付けて」「緑化基盤材A」を構成するものであり、当該「緑化基盤材A」は、刊行物1の明細書に「【0012】本発明の固定構造において、緑化基盤材は従来の屋上緑化で用いられている緑化基盤材を任意に用いることができる。素材は軽量性と成形容易性の観点から発泡樹脂製が好ましいが、非発泡樹脂や発泡モルタルのような材料で造られていてもよい。緑化基盤材は客土層等からなる植栽層をそのまま収容する形態であってもよく、保水排水機能を備え、その上に植栽層を載置する形態のものでもよい。」(上記2(1)(1c)参照)と記載されていることから、屋上に設置されて植栽層を収容する容器であるといえる。これに対して、本願発明の「屋上緑化用トレイ」は、本願明細書に「【0004】そして、このように固定した屋上緑化用トレイ上に、苗場等で育成したセダム類などを植え付けることによって、施工を簡易にできる点で優れている。」と記載されているように、屋根の上面にとりつけられてセダム類などの植物を植え付けるトレイ(容器)であることから、両者は何れも屋根の上面にとりつけられ、植物を植え付ける容器であるので、引用発明の「単位緑化基盤材10」は、本願発明の「屋上緑化用トレイ」に相当する。
さらに、引用発明の「クランプ60」は、立ちはぜ折板屋根Rの山形部1の立ちはぜ部である突条4の必要箇所に固定され、緑化基盤材Aを立ちはぜ折板屋根Rの上に固定する部材であることから、折板屋根の上面に屋上緑化用トレイを取付けるための部材である本願発明の「取付用台座」に相当し、また、引用発明の「ネジ桿70」は、クランプ60のクランプ片61に立設されるものであるので、取付用台座の「固定部から鉛直方向に」「立設して」いる本願発明の「ボルト部」に相当する。
そこで、引用発明の「複数個のクランプ60およびネジ桿70を山形部1が軒先方向であるY方向に所定ピッチで連続している立ちはぜ折板屋根Rの山形部1の立ちはぜ部である突条4の必要箇所に固定し、それを利用して、緑化基盤材Aを立ちはぜ折板屋根Rの上に固定する構造」は、本願発明の「山部及び谷部を連続形成した折板屋根の上面に、取付用台座を介して屋上緑化用トレイを取付けてなる折板屋根の屋上緑化用トレイ取付構造」に相当し、引用発明の「クランプ60の各クランプ片61にネジ桿70を立設」することは、本願発明の「取付用台座は、前記折板屋根の山部に固定可能な固定部から鉛直方向にボルト部を立設」することに相当する。

イ 次に、引用発明の「取り付け孔11」と、本願発明の「内側に凹んだボルト嵌挿用切欠部」とは、「ボルト挿通部」であることで共通し、引用発明の取り付け孔11が形成される単位緑化基盤材10の「偶部」と、本願発明の内側に凹んだボルト嵌挿用切欠部が形成される屋上緑化用トレイの「側縁部」とは、前者の「偶部」は「縁部」ではないものの単位緑化基盤材10の「側部」に位置することから、両者は「側部」であることで共通する。
さらに、引用発明の「取り付け孔11」が「軒先方向」に「ピッチP2」で形成されて「軒先方向のピッチP2は立ちはぜ折板屋根Rの突条4のピッチPaと等しいかその整数倍」であることと、本願発明の「内側に凹んだボルト嵌挿用切欠部」が「折板屋根」の「山部の位置に対応させて長手方向に亘って」形成されることとは、「ボルト挿通部」が「折板屋根」の「山部の位置に対応させて」形成される点で共通する。
そこで、引用発明の「緑化基盤材Aは、実質的な正方形である単位緑化基盤材10を複数枚組み付けて構成されており、周壁部には互いに嵌合する接続用凹凸部14が形成され、各偶部には孔11が形成されており、該孔11は、接続用凹凸部14を利用して隣接する単位緑化基盤材10、10を組み付けたときに、上下に連通する取り付け孔11となっており、また、屋根勾配方向であるX方向と軒先方向であるY方向に所定ピッチ(P1,P2)で取り付け孔11が形成されており、軒先方向のピッチP2は立ちはぜ折板屋根Rの突条4のピッチPaと等しいかその整数倍」であることと、本願発明の「屋上緑化用トレイは、方形状に形成したトレイ本体の対向する両側縁部に、内側に凹んだボルト嵌挿用切欠部を、山部の間隔が異なる複数の種類の折板屋根の各々の山部の位置に対応させて長手方向に亘って複数形成する」ものであることとは、「屋上緑化用トレイは、方形状に形成されており、トレイ本体の対向する両側部に、ボルト嵌挿部が折板屋根の山部の位置に対応させて形成」されている点で共通する。

ウ また、引用発明では「各ピッチ(P1,P2)に一致したピッチで突条4に対してクランプ60が固定」されていることに対して、本願発明の「取付用台座」を「所望の位置」に固定することは、本願明細書には「ボルト嵌挿用切欠部3は、複数の種類の山部Y1の間隔に対応するように・・・(中略)・・・形成してなる。」(段落【0017】)、「取付用台座2の固定部21を山部Y1の所望の位置に固定する。」(段落【0022】)、「 次に、屋上緑化用トレイ1を隣り合う折板屋根Yの山部Y1に跨って架設すると共に、固定部21に立設されたボルト部22の一方から屋上緑化用トレイ1のボルト嵌挿用切欠部3を外嵌する」(【0023】)と記載されていることから、「取付用台座」を山部Y1の間隔であるピッチに応じて固定することを意味するので、引用発明の「各ピッチ(P1,P2)に一致したピッチで突条4に対してクランプ60が固定」されていることは、本願発明の「取付用台座の固定部を前記山部の所望の位置に固定した」ことに相当する。

エ さらに、引用発明の「前記単位緑化基盤材10を隣り合う折板屋根の山部に跨って架設し、前記単位緑化基盤材10に形成した取り付け孔11にネジ桿70を貫通させ、山部の形成方向に隣り合う隣接した単位緑化基盤材10に形成した取り付け孔11に当該ネジ桿70を貫通させて、必要枚数の単位緑化基盤材10を配置して、単位緑化基盤材10から飛び出ているネジ桿70にナット73をネジ込むことにより、山部の形成方向に隣設した2つの単位緑化基盤材10を立ちはぜ折板屋根Rの上に固定する」ことと、本願発明の「屋上緑化用トレイを隣り合う折板屋根の山部に跨って架設すると共に、立設された前記ボルト部の一方から前記屋上緑化用トレイのボルト嵌挿用切欠部を外嵌し、更に、前記同様にして立設された前記ボルト部の他方から山部の形成方向に隣り合う屋上緑化用トレイのボルト嵌挿用切欠部を外嵌して、これら2つの屋上緑化用トレイを隣設させ、前記ボルト部の上方からナット等の固定具を螺着し、隣設した2つの屋上緑化用トレイを連結させて固定するようにした」こととは、
「屋上緑化用トレイを隣り合う折板屋根の山部に跨って架設すると共に」、「山部の形成方向に」「2つの屋上緑化用トレイを隣設させ」、「ボルト部の上方からナット等の固定具を螺着し、隣設した2つの屋上緑化用トレイを連結させて固定するようにした」点で共通する。

(2)両発明の一致点
山部及び谷部を連続形成した折板屋根の上面に、取付用台座を介して屋上緑化用トレイを取付けてなる折板屋根の屋上緑化用トレイ取付構造において、
前記屋上緑化用トレイが方形状に形成されており、トレイ本体の対向する両側部にボルト挿通部が折板屋根の山部の位置に対応させて形成されており、
前記取付用台座は、前記折板屋根の山部に固定可能な固定部から鉛直方向にボルト部を立設してなり、
前記取付用台座の固定部を前記山部の所望の位置に固定し、前記屋上緑化用トレイを隣り合う折板屋根の山部に跨って架設すると共に、山部の形成方向に2つの屋上緑化用トレイを隣設させ、前記ボルト部の上方からナット等の固定具を螺着し、隣設した2つの屋上緑化用トレイを連結させて固定するようにした折板屋根の屋上緑化用トレイ取付構造。

(3)両発明の相違点
ア 隣設した2つの屋上緑化用トレイをボルト部により連結させて固定する手段として、本願発明は、ボルト挿通部を、トレイ本体の「側縁部に」「内側に凹んだボルト嵌挿用切欠部」として形成し、「前記ボルト部の一方から前記屋上緑化用トレイのボルト嵌挿用切欠部を外嵌し、更に、前記同様にして立設された前記ボルト部の他方から」「隣り合う屋上緑化用トレイのボルト嵌挿用切欠部を外嵌」するのに対して、引用発明は、ボルト挿通部を、単位緑化基盤材10の「隅部に」「取り付け孔11」として形成し、「単位緑化基盤材10に形成した取り付け孔11にネジ桿70を貫通」させる点。

イ 屋上緑化用トレイの「ボルト挿通部」を、本願発明は「山部の間隔が異なる複数の種類の折板屋根の各々の山部の位置に対応させて長手方向に亘って複数形成」しているのに対して、引用発明は、そうではない点。

4 本願補正発明の容易推考性の検討
(1)相違点アについて
刊行物2には、次の技術的事項が記載されている(上記2(2)(2b)及び(2e)参照)。
「建物の屋上に緑化を目的として複数連接して設置される屋上緑化用植生パレット」に関して、「4個の屋上緑化用植生パレット1のコーナ部に形成した断面1/4円形の溝を連結具16の支柱18に位置させ、支柱18の上部の雄ねじ部19に、前記4個の断面1/4円形の溝10により形成される断面円形の孔の直径より大きいな径のキャップ20の雌ねじ部を螺合して、ナット21により締着し、4個の植生パレット1のコーナ部を連結する。」

この刊行物2記載の技術的事項を本願発明と対比すると、刊行物2記載の「屋上緑化用植生パレット」は、本願発明の「屋上緑化用トレイ」に相当し、前者の連結具16の「支柱18」及び「雄ねじ部19」は、後者の「ボルト部」に、また、前者の「キャップ20」及び「ナット21」は、後者の「ナット等の固定具」に相当する。
さらに、前者の「屋上緑化用植生パレット1の4つの外側コーナ部」の「断面1/4円形の溝10」は、後者のトレイ本体の対向する「縁部に」形成した「内側に凹んだボルト嵌挿用切欠部」に相当する。
そして前者の「屋上緑化用植生パレット1のコーナ部に形成した断面1/4円形の溝を連結具16の支柱18に位置させ、」「植生パレット1のコーナ部を連結する。」ことは、後者の「ボルト部の一方から前記屋上緑化用トレイのボルト嵌挿用切欠部を外嵌し、更に、前記同様にして立設された前記ボルト部の他方から山部の形成方向に隣り合う屋上緑化用トレイのボルト嵌挿用切欠部を外嵌して」、「屋上緑化用トレイをボルト部により連結させて固定する」ことに相当する。
そこで、刊行物2には、隣設した2つの屋上緑化用トレイをボルト部により連結させて固定する手段として、ボルト挿通部を、トレイ本体の「側縁部に」「内側に凹んだボルト嵌挿用切欠部」として形成し、「前記ボルト部の一方から前記屋上緑化用トレイのボルト嵌挿用切欠部を外嵌し、更に、前記同様にして立設された前記ボルト部の他方から」「隣り合う屋上緑化用トレイのボルト嵌挿用切欠部を外嵌」する技術的事項が開示されている。
そして、引用発明は「高い安定性を備えた状態で緑化基盤材を固定するための固定構造を提供すること」を発明が解決しようとする課題の一つにしており(上記2(1)(1b)参照)、刊行物2の技術的事項は、屋上緑化用植生パレット1同士を連結して一体化することにより、強風に対しての安定性を増すものであるところ(上記2(2)(2d)参照)、引用発明に刊行物2の技術的事項を適用することは、「高い安定性を備えた状態で緑化基盤材を固定する」という引用発明の課題の解決に合致するので、引用発明に、刊行物の2の技術的事項を採用して、本願発明の相違点アに係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点イについて
刊行物3には、次の技術的事項が記載されている(上記の2(3)(3g)参照)。
「折版屋根の上面に南方向に向けて太陽電池モジュールを取り付ける構造において、
太陽電池モジュール2は、パネル状の太陽電池本体12と、これを支持する架台3と、架台3を折版屋根の山部7に対して固定する固定ベース8とで主体が構成されており、上記架台3の下面部には、複数の取り付け部4が設けられており、複数の取り付け部4は左右2本の長尺の支持バー4aで構成されており、各支持バー4aは、長手方向の前部に前側ボルト孔5が、後部に後側ボルト孔6がそれぞれ穿設されており、1本の支持バー4aに、2つの丸孔10と2つの長孔11とが設けられており、山部7の間隔に応じていずれか1つの丸孔10と1つの長孔11とを選ぶことで、支持バー4aを折版屋根の山部の方向に対して直交方向に設置して、山部7の間隔が異なる折版屋根にも容易に対応できるようにしてある太陽電池モジュールの取付構造。」

刊行物3のこの技術的事項において、「折版屋根の上面に」取り付けられる「パネル状の太陽電池本体12と、これを支持する架台3」の「取り付け部4」を構成する「長尺の支持バー4a」は、「折板屋根に取り付けられる部材」に相当し、また、「ボルト孔」である「2つの丸孔10と2つの長孔11」が「長尺の支持バー4a」に設けられ、「山部7の間隔に応じていずれか1つの丸孔10と1つの長孔11とを選ぶことで、山部7の間隔が異なる折版屋根にも容易に対応できるようにしてある」ことは、本願発明の「ボルト挿通部」を「山部の間隔が異なる複数の種類の折板屋根の各々の山部の位置に対応させて複数形成」していることに相当する。また、支持バー4aは「折版屋根の山部の方向に対して直交方向に設置」されているので、本願発明の緑化用トレイの「ボルト挿通部」が形成される「長手方向」と同じ方向に亘って、ボルト挿通部が複数配置されているといえる。
そこで、刊行物3には、「折板屋根に取り付けられる部材」において、「ボルト挿通部」を、「山部の間隔が異なる複数の種類の折板屋根の各々の山部の位置に対応させて長手方向に亘って複数形成」する技術的事項が開示されている。
そして、引用発明と刊行物3の技術的事項は、何れも「折板屋根に取り付けられる部材」に関するものであり、また、刊行物3の技術的事項が課題とする山部の間隔が異なる複数の種類の折板屋根の各々の山部の位置に対応させて部材を取り付けられるようにすることは、折板屋根に部材を取り付けるにあたっての一般的な課題であることから、引用発明に刊行物の3の技術的事項を適用して本願補正発明の相違点イに係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(3)総合判断
そして、本願発明の作用効果は、引用発明、刊行物2及び3記載の事項に基づいて当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2及び3記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-05 
結審通知日 2014-08-12 
審決日 2014-09-09 
出願番号 特願2008-170134(P2008-170134)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瓦井 秀憲  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 杉浦 淳
住田 秀弘
発明の名称 折板屋根の屋上緑化用トレイ取付構造  
代理人 中井 宏行  

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