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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1293134
審判番号 不服2013-16321  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-23 
確定日 2014-10-21 
事件の表示 特願2009-539393「照明装置、および、その製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月15日国際公開、WO2008/058168、平成22年 3月25日国内公表、特表2010-509788〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成19年11月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年11月7日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項に係る発明は、平成24年11月22日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「照明装置であって、
第1のグループの固体発光素子、および、
第1のグループのルミファーを備え、
前記第1のグループの固体発光素子のおのおのが照明され、かつ、前記第1のグループのルミファーのおのおのが励起される場合に、前記第1のグループの固体発光素子、および前記第1のグループのルミファーより出射される光の混合光は、任意の付加的な光のないところでは、1931年CIE色度図上の、第1、第2、第3、および第4の線分により囲まれる領域内にある点を定義するx、yカラー座標を持つ、第1のグループの混合照明を有し、ここで、前記第1の線分は、第1の点を第2の点に接続し、前記第2の線分は、第2の点を第3の点に接続し、前記第3の線分は、第3の点を第4の点に接続し、前記第4の線分は、第4の点を第1の点に接続し、前記第1の点は、0.32、0.40のx、y座標を持ち、前記第2の点は、0.36、0.38のx、y座標を持ち、前記第3の点は、0.41、0.455のx、y座標を持ち、前記第4の点は、0.36、0.48のx、y座標を持つことを特徴とする照明装置。」

2 引用文献の記載内容
(1)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2006/077740号(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある。

ア 「[0001] 本発明は、発光ダイオード、蛍光ランプ等の照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等に使用される窒化物蛍光体、及び窒化物蛍光体の製造方法、並びに窒化物蛍光体を用いた発光装置に関し、特に近紫外光乃至青色光に励起されて赤色に発光する窒化物蛍光体及びその製造方法並びに窒化物蛍光体を用いた発光装置に関する。」

イ 「[0013] 本発明はさらにこの欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の他の目的は、高い発光輝度を持つ、広い色度範囲に渡る所望の色調を有する発光装置を提供することにある。また、演色性の高い発光装置を提供することも目的とする。」

ウ 「[0025] 一方、本発明の他の側面に係る発光装置は、近紫外線乃至青色光を発する第1の発光スペクトルを有する励起光源と、第1の発光スペクトルの少なくとも一部を吸収して、第2の発光スペクトルを発光する1種または2種以上の蛍光体とを備える。ここで蛍光体は、上述した窒化物蛍光体を利用できる。」

エ 「[0095] 励起光源は、半導体発光素子、レーザーダイオード、アーク放電の陽光柱において発生する紫外放射、グロー放電の陽光柱において発生する紫外放射などがある。特に、近紫外領域の光を放射する半導体発光素子及びレーザーダイオード、青色に発光する半導体発光素子及びレーザーダイオード、青緑色に発光する半導体発光素子及びレーザーダイオードが好ましい。
[0096] 近紫外から可視光の短波長領域の光は、270nmから500nm付近までの波長領域をいう。
(発光素子)
[0097] 発光素子10、101は、蛍光物質11、108を効率よく励起可能な発光スペクトルを持った半導体発光素子(すなわち、蛍光物質を効率よく励起可能な発光スペクトルの光を発光する発光層を有する半導体発光素子)が好ましい。このような半導体発光素子の材料として、BN、SiC、ZnSeやGaN、InGaN、InAlGaN、AlGaN、BAlGaN、BInAlGaN、ZnOなど種々の半導体を挙げることができる。また、これらの元素に不純物元素としてSiやZnなどを含有させ発光中心とすることもできる。蛍光物質11、108を効率良く励起できる紫外領域から可視光の短波長を効率よく発光可能な発光層の材料として特に、窒化物半導体(例えば、AlやGaを含む窒化物半導体、InやGaを含む窒化物半導体としてIn_(X)Al_(Y)Ga_(1-X-Y)N、0<X<1、0<Y<1、X+Y≦1)がより好適に挙げられる。」

オ 「[0226] MAlB_(x)SiN_(3+x):Eu、MAlSiN_(3):Euの窒化物蛍光体を必須として、さらに、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類金属ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩、希土類酸硫化物、アルカリ土類金属硫化物、アルカリ土類金属チオガレート、アルカリ土類金属窒化ケイ素、ゲルマン酸塩、又は、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩、又は、Eu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体等を用いることにより、極めて広い色調範囲に発光可能な発光装置を提供することができる。図10は、紫外線領域に発光する励起光源を用いた場合に各種蛍光体を混合して使用した場合に実現可能な色調範囲を示すCIE1931色度図である。図11は、青色系領域に発光する励起光源を用いた場合に各種蛍光体を混合して使用した場合に実現可能な色調範囲を示すCIE1931色度図である。」

カ 「[0229] 図11に示すように、主発光ピークが約460nmの青色系領域に発光する励起光源を用いる場合は、青色系領域に発光する蛍光体が不要となり、蛍光体の複雑な配合調整を省略することができる。表2は、主発光ピークが約460nmの励起光源を用いたときの蛍光体の色度を示す。
[0230]

[0231] これに対し、従来の発光装置に使用されてきたYAG系は、以下のような発光特性を持っている。図12は、YAG系蛍光体の規格化した励起スペクトルを示す図である。
[0232] YAG系蛍光体は、460nm付近で最大の発光効率となり、励起光源の青色光を高効率に黄緑色から黄色に波長変換することができる。それに対し、370nm?400nmの紫外線領域では、発光効率は460nm付近での10%にも満たないため、入射されてきた紫外光のほとんどは、反射される。よって、紫外線領域の光を放出する励起光源と、YAG系蛍光体のみでは、ほとんど光らない。
[0233] 図13は、従来の発光装置が持つ実現可能な色調範囲を示すCIE1931色度図である。
[0234] 従来の発光装置は白色に発光する発光装置である。この従来の発光装置は、励起光源からの青色光と、この青色光により励起されたYAG系蛍光体の黄色光とで白色光を実現するものであるため、色度図の青色発光と黄色発光とを結ぶ直線上の色調しか実現することができなかった。そのため、多色系に発光する発光装置を提供することはできなかった。」

キ 「[0277] 発光層としてピーク波長が青色領域にある460nmのInGaN系半導体層を有する発光素子101を用いる。」

ク 「[0307] 本発明の窒化物蛍光体及びその製造方法並びに窒化物蛍光体を用いた発光装置は、青色発光素子と他の蛍光体と一緒に使用されて、高演色性の白色光源とすることができる。また発光装置は、蛍光ランプ等の一般照明、信号機用、車載照明、液晶用バックライト、ディスプレイ等の発光装置、特に、半導体発光素子を用いる白色系及び多色系の発光装置に利用することができる。」

ケ 図11及び13は次のものである。


(2)引用発明
ア 上記(1)ウによれば、引用文献には、近紫外線乃至青色光を発する第1の発光スペクトルを有する励起光源と、第1の発光スペクトルの少なくとも一部を吸収して、第2の発光スペクトルを発光する1種または2種以上の蛍光体とを備える発光装置が記載されているものと認められる。

イ また、同エによれば、上記アにおける励起光源としては、青色に発光する半導体発光素子が好ましいものと認められ、上記(1)キによれば、引用文献には、発光層としてピーク波長が青色領域にある460nmのInGaN系半導体層を有する発光素子が記載されていることが認められる。

ウ さらに、図11には、上記(1)オのとおり、青色系領域に発光する励起光源を用いて各種蛍光体を混合して使用した場合に実現可能な色調範囲を示すCIE1931色度図が示されている。

エ 以上によれば、引用文献には、
「第1の発光スペクトルを有する励起光源であって、ピーク波長が青色領域にある半導体発光素子と、第1の発光スペクトルの少なくとも一部を吸収して、第2の発光スペクトルを発光する1種または2種以上の蛍光体とを備え、上記励起光源を用いて各種蛍光体を混合して使用した場合にCIE1931色度図において図11で示される色調範囲を実現可能な発光装置。」(以下「引用発明」という。)
が記載されているものと認められる。

3 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「発光装置」は、「照明装置」といえる。

(2)本願発明の「第1のグループの固体発光素子」及び「第1のグループのルミファー」について、本願明細書の【0037】には、「ここで(上記で、および以下のページで)使用される表現“グループの固体発光素子”は、そのグループが、1つ、またはそれ以上の固体発光素子を含む、ことを意味する。ここで使用される表現“グループのルミファー”は、そのグループが、1つ、またはそれ以上のルミファーを含む、ことを意味する。たとえば、本発明の前記第1の側面は、単一の固体発光素子、および単一のルミファーを含む照明装置をカバーする。」との記載がある。かかる記載に照らせば、引用発明の「半導体発光素子」及び「蛍光体」は、それぞれ、本願発明の「第1のグループの固体発光素子」及び「第1のグループのルミファー」に相当する。

(3)そして、引用発明は、ピーク波長が青色領域にある半導体発光素子である励起光源を用いて各種蛍光体を混合して使用した場合にCIE1931色度図において引用文献の図11で示される色調範囲を実現可能なものであるから、本願発明と同様に、「前記第1のグループの固体発光素子のおのおのが照明され、かつ、前記第1のグループのルミファーのおのおのが励起される場合に、前記第1のグループの固体発光素子、および前記第1のグループのルミファーより出射される光の混合光は、任意の付加的な光のないところでは、1931年CIE色度図上の領域内にある点を定義するx、yカラー座標を持つ、第1のグループの混合照明を有する」ものといえる。

(4)以上によれば、本願発明と引用発明は、
「照明装置であって、
第1のグループの固体発光素子、および、
第1のグループのルミファーを備え、
前記第1のグループの固体発光素子のおのおのが照明され、かつ、前記第1のグループのルミファーのおのおのが励起される場合に、前記第1のグループの固体発光素子、および前記第1のグループのルミファーより出射される光の混合光は、任意の付加的な光のないところでは、1931年CIE色度図上の領域内にある点を定義するx、yカラー座標を持つ、第1のグループの混合照明を有する照明装置。」
である点で一致するものと認められる。

(5)そして、「x、yカラー座標」について、本願発明では、「第1、第2、第3、および第4の線分により囲まれる領域内にある点」であって、「前記第1の線分は、第1の点を第2の点に接続し、前記第2の線分は、第2の点を第3の点に接続し、前記第3の線分は、第3の点を第4の点に接続し、前記第4の線分は、第4の点を第1の点に接続し、前記第1の点は、0.32、0.40のx、y座標を持ち、前記第2の点は、0.36、0.38のx、y座標を持ち、前記第3の点は、0.41、0.455のx、y座標を持ち、前記第4の点は、0.36、0.48のx、y座標を持つ」、すなわち、第1の点、第2の点、第3の点及び第4の点を頂点とする4角形の内側領域の点とされているのに対し、引用発明では、図11に示される色調範囲を実現可能な領域内の点とされている点で相違するものと認められる。
この相違点について付言すれば、要するところ、混合光のx、yカラー座標の領域について、引用発明の領域は、本願発明の領域を含むものであるが、引用発明においては、本願発明の領域に限定されてはいないということである。

4 判断
上記相違点について検討するに、相違点に係るx、y座標を踏まえて引用文献の図13を見ると、本願発明の領域は、引用文献の図13のCIE1931色度図に示される、従来の発光装置が持つ実現可能な色調範囲に隣接する領域であると認められる。
しかるところ、上記2(1)カのとおり、引用文献の[0234]には、「この従来の発光装置は、励起光源からの青色光と、この青色光により励起されたYAG系蛍光体の黄色光とで白色光を実現するものであるため、色度図の青色発光と黄色発光とを結ぶ直線上の色調しか実現することができなかった。そのため、多色系に発光する発光装置を提供することはできなかった。」との記載がある。これによれば、引用文献においては、図13に示される直線上の色調に限られない色調の実現が課題として記載されていたことが認められ、引用発明は、図11に示される色調範囲を実現可能な領域にしたものと認められる。そして、引用発明を実施するに際して、引用文献の図13に示される直線上の色調に隣接する領域の色調についても実現するものとすること、すなわち、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることに格別の困難性は認められない。
してみると、引用発明において、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が設計上適宜なし得る程度のことというべきである。
また、本願発明において、引用発明から予測困難なほどの格別顕著な効果が奏されるものとは認められない。
なお、請求人は、審判請求書において、参考資料1?3を提出し、本願発明が非常に高いエネルギー効率を得られるものである旨主張する。しかし、本願明細書には、混合光のx、yカラー座標の領域が本願発明において特定される領域であることにより、特に高いエネルギー効率を得られる旨の記載は認められず、また、混合光のx、yカラー座標の領域が上記領域であれば高いエネルギー効率を得られることが、本願明細書の記載から当業者にとって自明に理解できる根拠も認められないから、請求人の主張は、採用できない。

5 むすび
以上の検討によれば、本願発明は、当業者が引用発明に基いて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-28 
結審通知日 2014-05-29 
審決日 2014-06-11 
出願番号 特願2009-539393(P2009-539393)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高椋 健司  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 松川 直樹
服部 秀男
発明の名称 照明装置、および、その製造方法  
代理人 大牧 綾子  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  

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