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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04W 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04W 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W |
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管理番号 | 1293210 |
審判番号 | 不服2013-11655 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-06-19 |
確定日 | 2014-10-22 |
事件の表示 | 特願2012-157377「無線通信ハンドオーバ中におけるデータ・パケットの順序正しい配信を最適化すること」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月27日出願公開、特開2012-257264〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成20年8月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年8月13日、米国)に国際出願した特願2010-521161号の一部を平成24年7月13日に新たな特許出願としたものであって、平成24年8月10日付けで手続補正がなされ、同年10月3日付けの拒絶理由の通知に対し、平成25年1月9日付けで手続補正がなされ、同年2月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月19日に審判請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2.平成25年6月19日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年6月19日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を削除するとともに、同請求項2において、「前記1または複数の喪失SDUを受信するまで待つこと」なる記載に、「前記取得されたSDUと重複することなく」なる記載を追加することで、「前記1または複数の喪失SDUを、前記取得されたSDUと重複することなく、受信するまで待つこと」なる記載とする補正を含んでいる。 このため、補正後の特許特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりのものである(下線は、請求人が付与した。)。 「【請求項1】 無線通信ネットワークにおける第1の基地局において、ハンドオーバ中に、シーケンス番号にしたがってデータ・パケットを配信する方法であって、 関連するモバイル・デバイスから第2の基地局において順序正しく受信された最後のサービス・データ・ユニット(SDU)に関連するシグナリングを、前記第1の基地局において受信することと、 前記第2の基地局において受信された1または複数のその後のSDUを、前記第1の基地局において取得することと、 前記順序正しく受信された最後のSDUのインデクスと、前記1または複数のその後のSDUのうち最も大きいインデクスとの間でナンバリングされた1または複数の喪失SDUを、前記第1の基地局において判定することと、 前記判定することの結果に基づいて、前記第1の基地局が、前記1または複数の喪失SDUを、前記関連するモバイル・デバイスに通知することと、 前記1または複数の喪失SDUを、前記取得されたSDUと重複することなく、受信するまで待つことと、 その後、順序付けられたデータ・パケットを上部レイヤへ配信することと を備える方法。」 2.補正の適否 上記請求項1は、補正前の請求項2における「前記1または複数の喪失SDUを受信するまで待つこと」に関して、「前記取得されたSDUと重複することなく」との事項を限定するものであるから、この補正は、補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定の違反)について、以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記「1.本件補正の内容」に記載したとおりのものである。 (2)先願発明 これに対して、原査定の拒絶の理由で先願5として引用され、本願優先日前の2007年4月25日を優先日とし、本願の原となる国際出願である特願2010-521161号(以下、「原出願」という。)の出願前の2008年4月23日を国際出願日とする国際特許出願(PCT/SE2008/050468)であって、原出願の出願日後の2008年11月6日に国際公開(国際公開第2008/133587号)され、その後、特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出された国際特許出願である特願2010-506134号(以下、「先願」という。)の国際出願日における明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている(以下、上記先願の翻訳文が記載されている特表2010-525737号公報における記載箇所で示す。下線は当審による。)。 ア.「【0051】 図4において、ソース基地局16-1及びターゲット基地局16-2はそれぞれ、シームレスなハンドオーバについて本明細書で提示する教示に従って動作する。考察のために、移動局20が複数のPDCPプロトコル・データ・ユニットをソース基地局16-1に送信し、そのうちのいくつかは受信に成功し、そのうちのいくつかは成功しなかったものと仮定する。図示した状態表示50は、これら送信されたPDCPサービス・データ・ユニットの移動局20における状態を示し、かつ、シーケンス番号3乃至13を有するPDCPプロトコル・データ・ユニットが、ハンドオーバに先立って移動局20からソース基地局16-1へ送信されていることを示す。 【0052】 しかしながら注記したように、ソース基地局16-1において全てのPDCPプロトコル・データ・ユニットの受信に成功したのではなく、ソース基地局16-1における受信状態表示52は、シーケンス番号3、4、5、6、8、11及び12を有するPDCPプロトコル・データ・ユニットについての受信に成功した場合(圧縮解除/暗号化解除の成功を含む)の例である。対照的に、シーケンス番号7、9及び10については、PDCPサービス・データ・ユニットの受信に成功していない。このように、PDCPサービス・データ・ユニット8、11及び12は、誤った順番で受信されていると考えられる。また図4で注記するのは、転送されるPDCPサービス・データ・ユニット54である。これらのサービス・データ・ユニット54は、ハンドオーバの実行前にソース基地局16-1から関連するコアネットワーク14(例えば、ゲートウェイ18)へ既に転送されたPDCPサービス・データ・ユニットを表す。 【0053】 従って、ハンドオーバの実行中に、ソース基地局16-1は、誤った順序で受信され、ゲートウェイ18への転送のための並べ替えを待っている状態のPDCPサービス・データ・ユニット26を転送する。この例において、転送されるPDCPサービス・データ・ユニットは、8、11及び12である。即ち、転送されるPDCPサービス・データ・ユニットは、当該シーケンスにおける8番目、11番目、及び12番目のPDCPプロトコル・データ・ユニットに対応するものであり、これらはソース基地局16-1において受信には成功したが、誤った順序で受信されたものである。既に注記したように、ソース基地局16-1は、これらの転送されるPDCPサービス・データ・ユニットに対応するシーケンス番号情報28を転送し、1つ以上の実施形態において、当該シーケンス番号情報28は、ゲートウェイ18まで既に転送されたPDCPサービス・データ・ユニット(即ち、直近にシーケンシャルに転送されたPDCPサービス・データ・ユニット)の最も高いシーケンス番号の表示を含む。この例においてその値は「6」である。この情報を符号化する別の方法を適用することができ、例えば、直近にシーケンシャルに転送されたPDCPサービス・データ・ユニット(「6」)が示されてもよいし、あるいは代替的に、シーケンシャルに転送される次のPDCPサービス・データ・ユニット(「7」)が示される。 【0054】 補完的な方法では、ターゲット基地局16-2は、不必要な再送を回避し、それによりハンドオーバの効率を向上させつつ、移動局20による選択的な再送を要求するために、受信したシーケンス番号情報28を使用する。より詳細には、ターゲット基地局16-2は、ゲートウェイ18への転送用の、転送されたPDCPサービス・データ・ユニット26をターゲット基地局16-2が正しく順序付けることを可能にするために移動局20が再送する必要がある、欠落しているPDCPプロトコル・データ・ユニットを特定すべく、受信したシーケンス番号情報28を処理する。ここで、当該シーケンス番号情報28は、本明細書においてこれまでに考察した状態メッセージ情報を含むか又は包含し得る。 【0055】 従って、ターゲット基地局16-2における再送要求(例えば、ARQ手順)が欠落しているデータの再送を移動局20に促していると想定すると、状態表示56は、ハンドオーバ後のある時間の移動局20の状態を表す。即ち、シーケンス番号7、9、10及び13ついての欠落しているデータは、移動局20からターゲット基地局16-2へPDCPプロトコル・データ・ユニットの形式による再送に成功していることがわかる。再送されたPDCPプロトコル・データ・ユニットに対応するPDCPサービス・データ・ユニット58は、ターゲット基地局16-2へのアップリンク上に明示的に示されている。なお、再送されたデータを示すためにハッチングを使用していることに留意されたい。 【0056】 例を用いて続けると、ターゲット基地局16-2における受信状態表示60は、ターゲット基地局16-2が、転送されたPDCPサービス・データ・ユニット26を正しく並べ替えるために必要な、欠落しているデータを取得していることを示す。このようにして、ターゲット基地局16-2は、再送されたPDCPサービス・データ・ユニットと、転送されたPDCPサービス・データ・ユニット26とを、正しいシーケンスの順序でゲートウェイ18へ転送する。転送されるPDCPサービス・データ・ユニット62のセットはその転送を示す。」 イ.図4には、ソース基地局16-1からターゲット基地局16-2へ、「シーケンス番号情報28」及び「PDCPサービス・データ・ユニット26」が転送されること。 以上によれば、先願明細書には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。 「 ソース基地局16-1及びターゲット基地局16-2はそれぞれ、シームレスなハンドオーバについて、 移動局20が複数のPDCPプロトコル・データ・ユニットをソース基地局16-1に送信し、 ハンドオーバの実行中に、ソース基地局16-1は、誤った順序で受信され、ゲートウェイ18への転送のための並べ替えを待っている状態のPDCPサービス・データ・ユニット26をターゲット基地局16-2へ転送し、 ソース基地局16-1は、これらの転送されるPDCPサービス・データ・ユニットに対応するシーケンス番号情報28をターゲット基地局16-2へ転送し、 当該シーケンス番号情報28は、ゲートウェイ18まで既に転送されたPDCPサービス・データ・ユニット(即ち、直近にシーケンシャルに転送されたPDCPサービス・データ・ユニット)の最も高いシーケンス番号の表示を含み、 ターゲット基地局16-2は、不必要な再送を回避し、それによりハンドオーバの効率を向上させつつ、移動局20による選択的な再送を要求するために、受信したシーケンス番号情報28を使用し、より詳細には、ターゲット基地局16-2は、ゲートウェイ18への転送用の、転送されたPDCPサービス・データ・ユニット26をターゲット基地局16-2が正しく順序付けることを可能にするために移動局20が再送する必要がある、欠落しているPDCPプロトコル・データ・ユニットを特定すべく、受信したシーケンス番号情報28を処理し、 ターゲット基地局16-2における再送要求(例えば、ARQ手順)が欠落しているデータの再送を移動局20に促していると想定すると、状態表示56は、ハンドオーバ後のある時間の移動局20の状態を表し、即ち、シーケンス番号7、9、10及び13ついての欠落しているデータは、移動局20からターゲット基地局16-2へPDCPプロトコル・データ・ユニットの形式による再送に成功し、 ターゲット基地局16-2は、再送されたPDCPサービス・データ・ユニットと、転送されたPDCPサービス・データ・ユニット26とを、正しいシーケンスの順序でゲートウェイ18へ転送する方法。」 (3)対比 先願発明は、「ソース基地局16-1及びターゲット基地局16-2はそれぞれ、シームレスなハンドオーバについて」のものであり、「ターゲット基地局16-2は、再送されたPDCPサービス・データ・ユニットと、転送されたPDCPサービス・データ・ユニット26とを、正しいシーケンスの順序でゲートウェイ18へ転送する方法」に関するものである。 そして、先願発明の「ターゲット基地局16-2」は「無線通信ネットワークにおける第1の基地局」といい得る。 してみると、先願発明は、本件補正発明と同様に、「無線通信ネットワークにおける第1の基地局において、ハンドオーバ中に、シーケンス番号にしたがってデータ・パケットを配信する方法」であるといえる。 先願発明は、「移動局20が複数のPDCPプロトコル・データ・ユニットをソース基地局16-1に送信し」、「ソース基地局16-1は、これらの転送されるPDCPサービス・データ・ユニットに対応するシーケンス番号情報28をターゲット基地局16-2へ転送し、当該シーケンス番号情報28は、ゲートウェイ18まで既に転送されたPDCPサービス・データ・ユニット(即ち、直近にシーケンシャルに転送されたPDCPサービス・データ・ユニット)の最も高いシーケンス番号の表示を含」むものである。 そして、先願発明の「移動局20」が「関連するモバイル・デバイス」といい得、「ソース基地局16-1」は「第1の基地局」といい得る。 また、「ソース基地局16-1は、これらの転送されるPDCPサービス・データ・ユニットに対応するシーケンス番号情報28をターゲット基地局16-2へ転送し」ていることから、「第2の基地局」である「ソース基地局16-1」から転送されたシーケンス番号情報28を受信しているといい得る。 してみると、先願発明は、本件補正発明と同様に、「関連するモバイル・デバイスから第2の基地局において順序正しく受信された最後のサービス・データ・ユニット(SDU)に関連するシグナリングを、前記第1の基地局において受信すること」を備えているといえる。 先願発明は、「ハンドオーバの実行中に、ソース基地局16-1は、誤った順序で受信され、ゲートウェイ18への転送のための並べ替えを待っている状態のPDCPサービス・データ・ユニット26をターゲット基地局16-2へ転送し」ているものである。 そして、「ハンドオーバの実行中に、ソース基地局16-1は、誤った順序で受信され、ゲートウェイ18への転送のための並べ替えを待っている状態のPDCPサービス・データ・ユニット26」は、ハンドオーバ開始後に受信したSDU、即ち、その後のSDUであるといい得る。 また、「ソース基地局16-1は、誤った順序で受信され、ゲートウェイ18への転送のための並べ替えを待っている状態のPDCPサービス・データ・ユニット26をターゲット基地局16-2へ転送し」ていることから、「第2の基地局」である「ソース基地局16-1」から、PDCPサービス・データ・ユニット26に含まれた、直近にシーケンシャルに転送されたPDCPサービス・データ・ユニット)の最も高いシーケンス番号の表示を取得しているといい得る。 してみると、先願発明は、本件補正発明と同様に、「前記第2の基地局において受信された1または複数のその後のSDUを、前記第1の基地局において取得すること」を備えているといえる。 先願発明は、「ターゲット基地局16-2は、不必要な再送を回避し、それによりハンドオーバの効率を向上させつつ、移動局20による選択的な再送を要求するために、受信したシーケンス番号情報28を使用し、より詳細には、ターゲット基地局16-2は、ゲートウェイ18への転送用の、転送されたPDCPサービス・データ・ユニット26をターゲット基地局16-2が正しく順序付けることを可能にするために移動局20が再送する必要がある、欠落しているPDCPプロトコル・データ・ユニットを特定すべく、受信したシーケンス番号情報28を処理し」ているものである。 そして、「移動局20が再送する必要がある、欠落しているPDCPプロトコル・データ・ユニット」は、「前記順序正しく受信された最後のSDUインデクス」と、「前記1または複数のその後のSDUのうち最も大きいインデクス」との間のシーケンス番号が付与されたSDUを含むものであるといい得る。 また、「判定」は、判別して定めること(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味し、「判別」は、はっきりと区別すること、見わけること(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味するから、これらを考え合わせると、「判定」なる事項の意味は、はっきり区別して定めることであると理解するのが妥当である。 このため、先願発明の「欠落しているPDCPプロトコル・データ・ユニットを特定すべく、受信したシーケンス番号情報28を処理」することは、「受信したシーケンス番号情報28を処理」することで、「欠落しているPDCPプロトコル・データ・ユニット」をはっきり区別して定めているといい得るから、「欠落しているPDCPプロトコル・データ・ユニット」を判定している。 してみると、先願発明は、本件補正発明と同様に、「前記順序正しく受信された最後のSDUインデクスと、前記1または複数のその後のSDUのうち最も大きいインデクスとの間でナンバリングされた1または複数の喪失SDUを、前記第1の基地局において判定すること」を備えているといえる。 先願発明は、「ターゲット基地局16-2における再送要求(例えば、ARQ手順)が欠落しているデータの再送を移動局20に促していると想定する」ことが可能なものである。 してみると、先願発明は、本件補正発明と同様に、「前記判定することの結果に基づいて、前記第1の基地局が、前記1または複数の喪失SDUを、前記関連するモバイル・デバイスに通知すること」を備えているといえる。 先願発明は、「ターゲット基地局16-2は、不必要な再送を回避し、それによりハンドオーバの効率を向上させつつ、移動局20による選択的な再送を要求」し、「ターゲット基地局16-2における再送要求(例えば、ARQ手順)が欠落しているデータの再送を移動局20に促していると想定すると、状態表示56は、ハンドオーバ後のある時間の移動局20の状態を表し、即ち、シーケンス番号7、9、10及び13ついての欠落しているデータは、移動局20からターゲット基地局16-2へPDCPプロトコル・データ・ユニットの形式による再送に成功し」ているものである。 そして、先願発明は、「ターゲット基地局16-2は、不必要な再送を回避し、それによりハンドオーバの効率を向上させつつ、移動局20による選択的な再送を要求」し、「再送に成功し」ていることから、喪失SDUを前記取得されたSDUと重複することなく受信しているといい得る。 更に、通常のARQ手順では、再送要求を送出した後に、待機タイマのタイムアウトするまで受信を待つことから、先願発明においても、再送要求を送出した後に、タイムアウトするまで受信を待つ動作を行っていると理解するのが妥当である。 これに対して、本件補正後の請求項2において、「前記受信するまで待つことは、少なくとも部分的に待機タイマに基づく請求項1に記載の方法。」なる事項が特定されていることに鑑みると、本件補正発明の「受信するまで待つ」なる事項は、待機タイマに基づて受信を待つことを包含する発明である。 してみると、先願発明は、本件補正発明と同様に、「前記1または複数の喪失SDUを、前記取得されたSDUと重複することなく、受信するまで待つこと」を備えているといえる。 先願発明は、「再送に成功し」、「ターゲット基地局16-2は、再送されたPDCPサービス・データ・ユニットと、転送されたPDCPサービス・データ・ユニット26とを、正しいシーケンスの順序でゲートウェイ18へ転送する」ものである。 そして、再送の成功は、喪失SDUを受信した結果であるから、先願発明の転送は、「待つ」という動作の後、即ち、その後に行われていると理解するのが妥当である。 また、「ゲートウェイ18」は、ターゲット基地局からみると、無線通信ネットワークの上部にレイヤに位置するノードであるから、ゲートウェイ18へ転送することは、上部レイヤに配信することをいい得る。 してみると、先願発明は、本件補正発明と同様に、「その後、順序付けられたデータ・パケットを上部レイヤへ配信すること」を備えているといえる。 以上のことから、本件補正発明と先願発明とは、発明を特定する全ての事項で一致し、相違しない。 よって、本件補正発明はすべての点で先願発明と一致しており、本件補正発明は先願発明と同一の発明である。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正発明は先願発明と同一の発明であるから、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.まとめ したがって、平成25年6月19日付けの手続補正書における他の補正を検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成25年6月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?29に係る発明は、平成25年1月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?29に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである(下線は、請求人が付与した。)。 「【請求項1】 無線通信ネットワークにおける第1の基地局において、ハンドオーバ中に、シーケンス番号にしたがってデータ・パケットを配信する方法であって、 関連するモバイル・デバイスから第2の基地局において受信された、順序が正しい最後のサービス・データ・ユニット(SDU)に関連するシグナリングを、前記第1の基地局において受信することと、 前記第2の基地局において受信された1または複数のその後のSDUを、前記第1の基地局において取得することと、 前記受信された、順序が正しい最後のSDUのインデクスと、前記1または複数のその後のSDUのうち最も大きいインデクスとの間でナンバリングされた1または複数の喪失SDUを、前記第1の基地局において判定することと、 前記判定することの結果に基づいて、前記第1の基地局が、前記1または複数の喪失SDUを、前記関連するモバイル・デバイスに通知することと を備える方法。」 2.先願発明 先願発明は、前記「第2.平成25年6月19日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の「(2)先願発明」に記載したとおりである。 3.対比 本願発明は、前記「第2.平成25年6月19日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の「(1)本件補正発明」で検討した本件補正発明における「前記1または複数の喪失SDUを受信するまで待つこと」についての限定事項、及び、「その後、順序付けられたデータ・パケットを上部レイヤへ配信すること」なる特定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2.平成25年6月19日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」に記載したとおり、先願発明と同一の発明であるから、本願発明も、同様の理由により、先願発明と同一の発明である。 第4.まとめ 以上のとおり、本願発明は先願発明と同一の発明であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-21 |
結審通知日 | 2014-05-27 |
審決日 | 2014-06-10 |
出願番号 | 特願2012-157377(P2012-157377) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W) P 1 8・ 537- Z (H04W) P 1 8・ 161- Z (H04W) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 深津 始 |
特許庁審判長 |
加藤 恵一 |
特許庁審判官 |
江口 能弘 佐藤 聡史 |
発明の名称 | 無線通信ハンドオーバ中におけるデータ・パケットの順序正しい配信を最適化すること |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 赤穂 隆雄 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 竹内 将訓 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 井上 正 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 中村 誠 |