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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1293378
審判番号 不服2013-13596  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-16 
確定日 2014-10-30 
事件の表示 特願2006-119625「医用画像ファイリング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月 7日出願公開、特開2006-326287〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成18年4月24日(優先権主張,平成17年4月26日)の出願であって,平成24年8月6日付けで手続補正がなされ,平成25年4月8日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月16日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成25年7月16日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年7月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「同一被検体に関する複数スライス厚のスライス画像データのうち前記スライス厚が所要値以下の薄いスライス画像データとその薄いスライス画像データに基づいて生成された処理画像データとを一次的に保存する一次記憶装置と,
前記複数スライス厚のスライス画像データを二次的に保存可能な二次記憶装置と,
前記薄いスライス画像データについては前記二次記憶装置に保存しない一方,前記処理画像データについては前記二次記憶装置に保存するように前記二次記憶装置への保存制御を行なう制御手段と,
を設けることを特徴とする医用画像ファイリング装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成24年8月6日付けの手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「同一被検体に関する複数属性の医用画像データを一次的に保存する一次記憶装置と,
前記複数属性の医用画像データを二次的に保存可能な二次記憶装置と,
前記複数属性のうちの一部属性の医用画像データの前記二次記憶装置への保存制御を行なう制御部と,を設けることを特徴とする医用画像ファイリング装置。」

(3)上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「属性」を「スライス厚」に,「一次記憶装置」へ「一時的に保存する」「医用画像データ」を「スライス厚が所要値以下の薄いスライス画像データとその薄いスライス画像データに基づいて生成された処理画像データと」に,「前記複数属性のうちの一部属性の医用画像データの前記二次記憶装置への保存制御を行う」ことについて,「前記薄いスライス画像データについては前記二次記憶装置に保存しない一方,前記処理画像データについては前記二次記憶装置に保存するように前記二次記憶装置への保存制御を行なう」ように,それぞれ限定を付加するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 補正の適否
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2) 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され,本願の優先権主張の日前に公開された特開2004-194869号公報(以下「引用例」という。)には,次の記載がある。なお,後に引用発明の認定に直接的に利用する箇所に当審が下線を付した。

ア 「【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の画像表示システムについて、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の画像表示システム1の概要を示す図である。図1に示すように、この画像表示システム1は、CT装置、MRI装置等の医療用画像生成装置2に接続された画像サーバ3と、画像サーバ3とネットワーク4を介して接続した表示用端末5から概略構成される。
【0025】
画像サーバ3には、被写体をスキャンした薄いスライス厚の断層画像データ100(以下、薄い断層画像データという)を保管する画像保管手段31と、薄い断層画像データ100に基づいて厚いスライス厚の断層画像データ200(以下、厚い断層画像データという)を作成する画像変換手段32を備える。」

イ 「【0027】
画像変換手段32では、薄い断層画像データ群101からスライス厚の厚い断層画像データ200を作成する。具体的には、所定の厚さになるように薄い断層画像データ群101から数枚毎に薄い断層画像データ100を選択して厚い断層画像データ200とする(図2(a))。あるいは、薄い断層画像データ100の数枚毎を結合したものを厚い断層画像データ200としてもよい(図2(b))。また、作成した一連のスライス厚の厚い断層画像データ200は、厚い断層画像データ群201として、例えば、一時記憶手段33に記憶して管理する。」

ウ 「【0040】
本発明の画像表示システムの第2の実施の形態について、図4を用いて説明する。第1の実施の形態と同一のものには同一の符号を付して詳細な説明は省略し、相違する点について説明する。
【0041】
この画像表示システム1aは、CT装置、MRI装置等の医療用画像生成装置2に接続された画像サーバ3aと、画像サーバ3aとネットワーク4を介して接続した表示用端末5aから概略構成される。
【0042】
画像サーバ3には、被写体をスキャンした薄い断層画像データ100を保管する画像保管手段31と、薄い断層画像データ100に基づいてスライス厚の厚い断層画像データ200を作成する画像変換手段32と、表示用端末5aで表示した厚い断層画像データ群200と薄い断層画像データ100を長期保管するための長期保管手段34を備える。この長期保管手段34は画像サーバ3に備えたハードディスク等の記憶装置でもよいが、長期保管用のサーバを用意して、そのサーバに接続するように構成してもよい。
【0043】
また、表示用端末5aには、画像サーバ3aから厚い断層画像データ200を受信する厚い断層画像受信手段51と、受信した厚い断層画像データ200に対応した薄い断層画像データ100を前記画像サーバ3から受信する薄い断層画像受信手段52と、受信した薄い断層画像データ100を記憶する断層画像記憶手段53と、断層画像を表示し、表示に用いた薄い断層画像データ100を画像サーバ3に通知する表示手段54aと、厚い断層画像の表示から薄い断層画像を表示するように切替指示を行う表示切替手段55とを備えている。」

エ 「【0045】
画像サーバ3では、通知された薄い断層画像データ100を、対応する厚い断層画像データ群201とともに画像保管手段31から長期保管手段34に転送して保管する。」

オ 「【0048】
また、長期保管手段34に保管する薄い断層画像データ100を厚い断層画像データ200との差分情報をして保管するようにしてもよい。あるいは、薄い断層画像データ100を長期保管するのではなく、表示用端末5でMPR機能を用いて断面を変換した画像データを画像サーバ3に送信して、断面を変換した画像データを保管するようにしてもよい。これにより保管するデータ量が減り、保管コストを削減することができる。」

カ 「図2



キ 「図4



ク 技術常識を勘案して以上の記載事項を総合すれば,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「画像表示システムは,医療用画像生成装置に接続された画像サーバと,画像サーバとネットワークを介して接続した表示用端末から概略構成され,
画像サーバは,被写体をスキャンした薄い断層画像データを保管する画像保管手段と,薄い断層画像データに基づいてスライス厚の厚い断層画像データを作成する画像変換手段と,作成した一連のスライス厚の厚い断層画像データを記憶する一時記憶手段とを備え,
画像サーバには,厚い断層画像データと薄い断層画像データを長期保管するための長期保管用のサーバが接続され,
画像サーバでは,薄い断層画像データを,対応する厚い断層画像データとともに画像保管手段から長期保管用のサーバに転送して保管し,あるいは,薄い断層画像データを長期保管するのではなく,表示用端末でMPR機能を用いて断面を変換した画像データを画像サーバに送信して,断面を変換した画像データを保管する画像表示システム。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「保管」すること及び「記憶」することは,いずれも本件補正発明の「保存」することに相当する。

イ 引用発明の「画像変換手段」は,「薄い断層画像データに基づいてスライス厚の厚い断層画像データを作成する」から,その「薄い断層画像データ」及び「厚い断層画像データ」が,同一被検体に関するものであることは,技術常識から明らかである。
そして,引用発明の「画像サーバ」における,「被写体をスキャンした薄い断層画像データ」及び「薄い断層画像データに基づいて」「作成」された「厚い断層画像データ」の「保管」は,一次的である。
さらに,引用発明の「薄い断層画像データに基づいて」「作成」された「厚い断層画像データ」は,本件補正発明の「薄いスライス画像データに基づいて生成された処理画像データ」に相当する。
したがって,引用発明の「被写体をスキャンした薄い断層画像データを保管する画像保管手段」及び「薄い断層画像データに基づいて」「作成した一連のスライス厚の厚い断層画像データ」「を記憶する一時記憶手段」とを備えた「画像サーバ」は,本件補正発明の「同一被検体に関する複数スライス厚のスライス画像データのうち前記スライス厚が所要値以下の薄いスライス画像データとその薄いスライス画像データに基づいて生成された処理画像データとを一次的に保存する一次記憶装置」に相当する。

ウ 引用発明の「厚い断層画像データと薄い断層画像データを長期保管するための長期保管用のサーバ」は,「画像サーバ」における一次的な保存を経た後に保存するものであるから,その保存は二次的である。
そして,その「長期保管用のサーバ」は,「厚い断層画像データ」と「薄い断層画像データ」という2種類の厚さの「断層画像データ」が保管され得る。
したがって,引用発明の「厚い断層画像データと薄い断層画像データを長期保管するための長期保管用のサーバ」は,本願発明の「複数スライス厚のスライス画像データを二次的に保存可能な二次記憶装置」に相当する。

エ 引用発明は,「薄い断層画像データを,対応する厚い断層画像データとともに画像保管手段から長期保管用のサーバに転送して保管し,あるいは,薄い断層画像データを長期保管するのではなく,表示用端末でMPR機能を用いて断面を変換した画像データを画像サーバに送信して,断面を変換した画像データを保管する」から,その後者のとき,「長期保管用のサーバ」に保管されるのは,「厚い断層画像データ」と「表示用端末でMPR機能を用いて断面を変換した画像データ」であって,「薄い断層画像データ」は保管されない。
そして,その制御を行う手段を引用発明における「画像表示システム」が有するのは,技術常識から明らかである。
したがって,引用発明が「厚い断層画像データ」と「表示用端末でMPR機能を用いて断面を変換した画像データ」を保管し,「薄い断層画像データ」を保管しない制御手段を備えることは自明であり,これは本件補正発明の「前記薄いスライス画像データについては前記二次記憶装置に保存しない一方,前記処理画像データについては前記二次記憶装置に保存するように前記二次記憶装置への保存制御を行なう制御手段」に相当する。

オ 引用発明の「画像表示システム」は,「医療用画像生成装置2に接続
され」,「被写体をスキャンした」「画像データ」を保管する仕組みを有する物であるから,本件補正発明の「医用画像ファイリング装置」に相当する。

カ 以上より,引用発明と本件補正発明との間に格別な相違は見いだせない。

キ したがって,本件補正発明は,引用発明すなわち引用例に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)本件補正についてのむすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成25年7月16日付けでなされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?18に係る発明は,平成24年8月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は,上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比
本願発明は,上記第2[理由]1(3)に記載したとおり,本件補正発明は,本願発明にさらに限定事項を追加したものであるから,本願発明は,本件補正発明から限定事項を省いた発明といえる。その本件補正発明が,上記第2[理由]2に記載したとおり,引用例に記載された発明である以上,本願発明も同様に引用例に記載された発明である。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3号に該当するから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論の通り審決する。
 
審理終結日 2014-08-25 
結審通知日 2014-08-26 
審決日 2014-09-16 
出願番号 特願2006-119625(P2006-119625)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 直樹  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 右▲高▼ 孝幸
三崎 仁
発明の名称 医用画像ファイリング装置  
代理人 特許業務法人東京国際特許事務所  
代理人 特許業務法人東京国際特許事務所  

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