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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1293443
審判番号 不服2012-15022  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-03 
確定日 2014-10-29 
事件の表示 特願2007-109439「医薬組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月 6日出願公開、特開2007-224041〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年10月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年11月2日 (GB)グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国)を国際出願日とする特願2001-534388号の一部を、平成19年4月18日に新たな特許出願としたものであって、平成23年3月29日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成23年8月4日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出され、平成24年3月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年8月3日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、平成23年8月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
メジアン径が2から12ミクロンであって、40ミクロンのふるいで最大の残さが5%以下のオクスカルバゼピンを有効成分として含有する、絶食状態の患者に経口的に使用するための、発作(seizures)の制御、予防もしくは処置用薬剤。」


3.引用例に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物であるPHARMACEUTICAL RESEARCH, 1994, Vol.11, No.10 Supl., p.S219(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(引用例1は英語で記載されているので、訳文で示す。)

(ア)「オクスカルバゼピンは、最近メキシコに導入された新しい抗癲癇薬である。今回、9名の健康なボランティア(25?45歳、65?80kg)に対し、高炭水化物の朝食後、または、高脂質の朝食後、あるいは一晩絶食後に、600mgのオクスカルバゼピン錠剤を経口投与することにより、食物がこの薬物の吸収に与える影響について研究を行った。・・・(中略)・・・Cmaxの平均値は、絶食状態、高脂質の朝食摂取後、高炭水化物の朝食摂取後において、それぞれ6.8、8.42、8.01mcg/mlであった。Tmax値はそれぞれ4.55、6.22、5.88であった。処置後の曲線下面積の平均値は、187、190、196mcg/ml/hであった。半減期は10?13時間であった。処置の違いによる統計的な差異は見られなかった。」(全文)

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第98/35681号(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。(引用例2は英語で記載されているので、訳文で示す。)

(イ)「中心粒子サイズ約2から12μm、好ましくは4から12μm、より好ましくは4から10μmを有し、40μmのふるいで最大残渣が5%まで、例えば2%までである、オクスカルバゼピンを含む製剤。」(請求項1)

(ウ)「生物学的利用能およびコンプライアンスに関する現存する製剤を超える開発および改善が常に望まれている。
・・・(中略)・・・オクスカルバゼピンの既知の剤形にもかかわらず、改善された製剤の提供が常に望まれる。
我々は、本願発明により、容易に投与剤形に加工され、オクスカルバゼピンの生物学的利用能を改善し得、コンプライアンスを増加させ得るオクスカルバゼピンの製剤を発見した。
従って、本発明はその態様の一つで、中心粒子サイズ約2から12μm、好ましくは4から12μm、より好ましくは4から10μmを有し、40μmのふるいで最大残渣が5%まで、例えば2%までである、好ましくは細かく粉砕された形のオクスカルバゼピンの製剤を提供する。」(1頁9-22行)

(エ)「微粒子サイズおよび狭い粒子サイズ分散はまた、オクスカルバゼピンの生物学的利用能の改善にも有益であり得る。」(2頁13-14行)

(2)記載事項(ア)によれば、引用例1には、オクスカルバゼピンが抗癲癇薬であること、経口投与する薬剤であること、が記載されている。

そうすると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「オクスカルバゼピンの薬剤であって、抗癲癇薬である、経口投与する薬剤。」


4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「オクスカルバゼピンの薬剤」が本願発明の「オクスカルバゼピンを有効成分として含有する薬剤」に相当すること、引用発明の「経口投与する薬剤」が、本願発明の「経口的に使用するための薬剤」に相当することは明らかである。
そうすると、両者は、
「オクスカルバゼピンを有効成分として含有する、経口的に使用するための薬剤。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
・本願発明は「メジアン径が2から12ミクロンであって、40ミクロンのふるいで最大の残さが5%以下」のオクスカルバゼピンを使用するのに対し、引用発明ではそのように規定されていない点(以下、「相違点1」という。)
・本願発明においては、「絶食状態」の患者に使用することが規定されているのに対し、引用発明ではそのように規定されていない点(以下、「相違点2」という。)
・本願発明は「発作(seizures)の制御、予防もしくは処置用薬剤」であるのに対し、引用発明は「抗癲癇薬」である点(以下、「相違点3」という。)


5.判断
上記相違点1?3について検討する。
(相違点1について)
引用例2の記載事項(イ)によれば、引用例2には中心粒子サイズが約2から12μmであって、40μmのふるいで最大残渣が5%までであるオクスカルバゼピン、すなわち、メジアン径が2から12ミクロンであって、40ミクロンのふるいで最大の残さが5%以下のオクスカルバゼピンを含む製剤が記載されており、記載事項(ウ)、(エ)によれば、そのような製剤が、オクスカルバゼピンの生物学的利用能を改善し得、コンプライアンスを増加させ得ること、微粒子サイズおよび狭い粒子サイズ分散がオクスカルバゼピンの生物学的利用能の改善にも有益であり得ることが記載されている。そうすると、薬剤の生物学的利用能を高めることやコンプライアンスを高めることは、本願優先日当時、医薬品製造分野における当業者にとって、周知の課題であったことにかんがみれば、引用発明において、その生物学的利用能を改善し、コンプライアンスを増加させるべく、「メジアン径が2から12ミクロンであって、40ミクロンのふるいで最大の残さが5%以下」であるオクスカルバゼピンを用いることは、当業者が容易に想到しうることである。

(相違点2について)
引用例1には、絶食状態か喫食状態かによって、経口的に投与されたオクスカルバゼピンの曲線下面積(すなわち生物学的利用能)の平均値に統計的な差異はみられなかったことが記載されている。そして、生物学的利用能の高さが薬剤投与において重要であることは本願優先日当時に広く知られていたことであるし、実際、本願明細書においても「生物学的利用能への食物の影響がないことを示している」(【0073】)ことにより、絶食状態でも、喫食状態同様、オクスカルバゼピンを服用できるとしている。そうすると、引用例1には、喫食状態と絶食状態でオクスカルバゼピンの生物学的利用能に差異がないことが記載されているのであるから、患者に投与する際に、摂食状態で服用させるものとするか、絶食状態で服用させるものとするかは、適宜選択し得ることに過ぎない。

(相違点3について)
本願明細書に、「本発明による経口投与形は抗痙攣作用のために有用であり、単剤療法もしくは併合療法として、例えば結果としての癲癇、癲癇症状、脳血管障害、頭部損傷またはアルコール禁断症状などの発症による二次性広汎化を伴うもしくは伴わない一次広汎化硬直間代性発作および部分発作といった発作の制御、予防もしくは処置に使用され得る。」(【0028】)と記載されているとおり、本願発明において、制御、予防もしくは処置する発作(seizures)とは、癲癇の発症による発作を含むものである。そうすると、「抗癲癇薬」である引用発明は、「発作(seizures)の制御、予防もしくは処置用薬剤」でもあり、この点において両者は実質的に相違しない。

そして、引用発明において、「メジアン径が2から12ミクロンであって、40ミクロンのふるいで最大の残さが5%以下」のオクスカルバゼピンを用い、「絶食状態」の患者に用いることにより、予想外の顕著な効果があるとは認められない。

したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-30 
結審通知日 2014-06-03 
審決日 2014-06-17 
出願番号 特願2007-109439(P2007-109439)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩下 直人  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 増山 淳子
穴吹 智子
発明の名称 医薬組成物  
代理人 青山 葆  
代理人 岩崎 光隆  
代理人 山田 卓二  
代理人 落合 康  
代理人 松谷 道子  

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