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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1293533
審判番号 不服2013-7418  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-22 
確定日 2014-11-06 
事件の表示 特願2008- 92646「内視鏡装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月22日出願公開、特開2009-240634〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成20年3月31日の出願であって,平成25年1月16日付けで拒絶査定がなされ,同年4月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ,平成26年6月10日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年8月18日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成26年8月18日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
内視鏡装置の外形を形成する円筒状の外枠部材の内部に,
複数の光学部品が形成された光学ウエハを複数枚積層して形成される,複数の光学部品が積層されて形成されたレンズユニットが複数形成されたレンズウエハの集光面側,及び複数の固体撮像素子が形成されたセンサウエハの素子面側をアライメントして貼り合せた後,個片化することでウエハレベルにて一体形成された,個片化して形成された前記レンズユニットと個片化して形成された前記固体撮像素子とにより構成された多角形状のカメラモジュールと,
少なくとも,被検領域に照明光を照射する照明部により構成される内視鏡機能部と,
を有し,
前記内視鏡機能部は,前記多角形状のカメラモジュールの直線状の縁辺端部から前記外枠部材の内周端の間の領域内の,前記縁辺端部に沿った位置に配置され,
前記カメラモジュールにおける前記レンズユニットの各外側面であって前記光学部品の一部を形成する側面の,前記照明部の発光面より被検側の位置に反射部材を設けたことを特徴とする内視鏡装置。」

第3 引用発明
1 当審拒絶理由で引用された,本願出願日前の平成16年3月18日に公開された特開2004-88713号公報(以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。なお,後に引用例に記載された発明の認定に直接的に利用する箇所に,当審が下線を付した。

(1)「【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る撮像レンズユニットおよび撮像装置について、添付図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
まず本発明に係る第1の実施形態の撮像レンズユニットについて説明する。図1(a)は、本実施形態に係る撮像レンズユニット100を説明するための概略斜視図である。図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。
【0026】
撮像レンズユニット100は3つのレンズ1、2、4および光学フィルター4を有する。3つのレンズ1、2、4をそれぞれの光軸を合わせた状態で光軸方向に重ねられている。そして、レンズ2とレンズ4の間に、光学素子としてパワーを有していないフィルター面を備える光学フィルター3(光学フィルター部材)を挟む構成になっている。それぞれの光学素子は、光軸方向に隣接された光学素子同士が接合されることにより一体化されている。」

(2)「【0035】
また、撮像レンズユニット100は、次のようにして製作される。まず、レンズ1、レンズ2、光学フィルター3およびレンズ4を、同一ピッチで2次元格子状に配列したアレイ101、102、103、104(光学素子アレイ)として製作する。このとき、位置決め突起と位置決め溝も形成しておく。次に、それぞれのアレイを光軸を一致させて位置決めして接合する。そして、図2に示すように、その状態で切断線6に沿ってカッター5などの切断手段で切断する。この場合、フランジ側面1c、2c、3c、4cは、切断線6に沿った切り口として形成される。よって、フランジ側面1c、2c、3c、4cは、同一面内に配されている(同一面に接している)。この同一面は、光軸に沿う方向に直線状にのびる平面である。本例の場合、この同一面は光軸に平行であるが、切断の仕方によっては光軸と非平行になる場合もある。なお、必要に応じて、切断後、ラップ処理などによって、それぞれのフランジ側面1c、2c、3c、4cに面仕上げを施してもよい。」

(3)「【0139】
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る第2の実施形態の撮像装置について説明する。本実施形態の撮像装置は、第1の実施形態に係る撮像レンズユニットを備えているものである。以下、具体的に例を挙げて説明する。」

(4)「【0141】
次に、図38は、本実施形態に係る撮像装置に用いられる撮像ユニット900の概略構成を示す光軸方向断面図である。」

(5)「【0143】
図38(c)に示したのは、さらに別の撮像ユニット900”の例である。撮像ユニット900”は、像側最終面に配置された光学素子のフランジ部などに位置決め突起152aを備えた撮像レンズユニット152と撮像素子910を備えている。そして、CCD902の外周部がフランジ側面152c(側面)に整列された構成を有している。
このような構成は、撮像レンズユニット152を、光学素子アレイを重ねて接合してから切断する方法を用いれば、容易に製作できる。すなわち、接合済みの光学素子アレイを、CCD902がアレイ状に形成された半導体ウエハーに対して位置決めして、位置決め突起152aを接着剤906によって半導体ウエハーに接着し、光学素子アレイと半導体ウエハーを同時に切断することにより製作できる。」

(6)「【0144】
以下に、撮像ユニット900を用いた本実施形態に係る撮像装置の具体的な例を説明する。
図39に示したのは、撮像ユニット900をカプセル内視鏡300に用いた例である。
カプセル内視鏡300は、照明光源304、撮像ユニット900、撮像ユニット900の撮像素子からの信号を処理する画像処理回路302およびそれらに電源を供給するバッテリー301を備え、全体がカバー303で覆われている。カバー303の先端には、透明窓305が設けられている。この透明窓305を介して、照明光の投射と撮像ユニット900による反射光の受光が行われる。」

(7)「図1



(8)「図2



(9)「図38(c)



(10)「図39



(11)上記(1),(2)には,第1の実施形態の撮像レンズユニット100を,次のように製作することが記載されている。
まず,レンズ1,レンズ2,光学フィルター3およびレンズ4を,同一ピッチで2次元格子状に配列したアレイ101,102,103,104(光学素子アレイ)として製作し,
次に,それぞれのアレイを光軸を一致させて位置決めして接合し,
その状態で切断線6に沿ってカッター5などの切断手段で切断し,
切断後,ラップ処理などによって,それぞれのフランジ側面1c,2c,3c,4cに面仕上げを施す。

(12)上記(3)?(5)には,第1の実施形態に係る撮像レンズユニットを備えた第2の実施形態の撮像ユニット900の一例として,撮像ユニット900”を次のように製作することが記載されている。
接合済みの光学素子アレイを,CCD902がアレイ状に形成された半導体ウエハーに対して位置決めして,位置決め突起152aを接着剤906によって半導体ウエハーに接着し,光学素子アレイと半導体ウエハーを同時に切断することにより製作する。

(13)上記(6)には,撮像ユニット900を,照明光源304,撮像ユニット900を備え,全体がカバー303で覆われたカプセル内視鏡300に用いた例が記載されている。
そして,上記(10)に摘記した図39から,照明光源304が,撮像ユニット900の縁辺端部からカバー303の内周端の間の領域に配置されること,また,カバー303がカプセル内視鏡300の外形を形成すること,さらに,撮像ユニット900が照明光源304より被検側に突出する部分を有することが読み取れる。

(14)上記(2),(7),(8)より,撮像ユニット900は,フランジ側面1c,2c,3c,4cを有する多角形状であるといえる。

(15)上記(2)に摘記した図2から,各光学素子アレイ101?104は薄い板状であり,その各光学素子アレイ101?104を積層したものも薄い板状である様子が読み取れる。

(16)以上を総合すれば,引用例1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「カプセル内視鏡(300)の外形を形成するカバー(303)の内部に,
レンズ(1,2,4),光学フィルター(3)を,2次元格子状に配列した薄い板状の光学素子アレイ(101?104)を製作し,各光学素子アレイ(101?104)の光軸を一致させ位置決めして接合して薄い板状とし,これにCCD(902)がアレイ状に形成された半導体ウエハーを位置決めして接着し,光学素子アレイと半導体ウエハーを同時に切断して製作した多角形状の撮像ユニット(900”)と,
照明光源(304)と,
を有し,
前記照明光源(304)は,前記多角形状の撮像ユニット(900”)の縁辺端部から前記カバー(303)の内周端の間の領域内の位置に配置され,
ラップ処理などによってフランジ側面に面仕上げが施された前記撮像ユニット(900”)は,前記照明光源(304)より被検側に突出する部分を有するカプセル内視鏡(300)。」

2 本件の出願前である平成19年5月31日に発行された国際公開2007/060659号(以下「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。なお,引用例2は英語で表現されているため,これに対応する日本語の公表公報である特表2009-519732号公報の表現を参考にした当審の和訳を付して,後に引用例に記載された発明の認定に直接的に利用する箇所に,当審が下線を付した。

(1)明細書1頁14?18行目
「In accordance with the present invention, there is provided an in-vivo imaging device comprising at least one imager and an associated optical system, at least the optical system located in an optical dome of the imaging device, the optical dome having a tip, the optical system comprising an optical lens, the optical system having a given effective focal length f, the optical lens being located at a distance D' from the tip; wherein D'/f ≧ 6. 」
「本発明により,少なくとも一つのイメージャと,付随する光学システム,撮像装置の光学ドームに配置された少なくとも光学システム,先端部を有する光学ドーム,光学レンズを含む光学システム,実効焦点距離fを有する光学システム,先端から距離D'(但し,D'/f ≧ 6)に位置する光学レンズを備えた生体撮像装置が提供される。」

(2)明細書3頁1?5行目
「In one embodiment, the system may include a device 40 having an imager 36 and/or 36' (such as for example a CMOS, a CCD, etc.), an optical system which may include lens holder 32 and/or 32', lenses and other optical elements and illumination sources 34 such as one or more LEDs (Light Emitting Diode), and/or OLEDs (Organic LED) or other suitable illumination sources. 」
「一実施形態では,装置40は(例えばCMOSやCCD等のような)イメージャ36及び/又は36’,レンズホルダ32及び/又は32’を含む光学システム,レンズと,他の光学要素と,一つ又はそれ以上のLED(発光ダイオード)又はOLED(有機LED)又は他の適切な照明源である照明源34を含む。」

(3)明細書3頁31?33行目
「For example, according to one embodiment of the present invention, device 40 may be a cylindrical capsule having a front end and a rear end, which is capable of passing the entire GI tract. 」
「例えば,本発明の一実施形態によれば,装置40は前端と後端を有する円筒形のカプセルであり,消化管全体を通過できる。」

(4)明細書7頁5?9行目
「According to some embodiments the device 40 may include light blockers 22 and 202. The light blockers 22 and 202 and lens holders 54 may be coated with a reflective material so as to redirect illumination to a desired direction and away from the imager 26 or 206, for example, by centering lenses 208", 209". The lens holder 54 may further be used for centering the optical system over the image sensor 26 or 206. 」
「ある実施形態では,装置40は,光遮蔽22及び202を含んでも良い。その光遮蔽22及び202と,レンズホルダ54は,照明光を所望の方向へ向け,照明光をイメージャ26及び206から離すように,反射材料で覆われる。例えば,レンズ208”,209”を中心に配置することによる。さらに,レンズホルダ54は,光学系を画像センサ26又は206上の中心に配置するために利用できる。」

(5)明細書7頁30?32行目
「The elongated optical domes 21, 201 have a longitudinal dimension defined by a distance D from each tip 205 to an associated imager 26, 206. 」
「細長い光学ドーム21,201は,各々の先端205から対応するイメージャ26,206まで,距離Dで規定された長手軸方向の寸法を有する。」

(6)明細書8頁9?12行目
「For an imaging device traveling through a voluminous body lumen such as for example the stomach or colon, the FOV and DOV may be improved by the illumination sources 23 and 203 providing lighting to a larger in- vivo area due to the distance D.」
「例えば胃や大腸のように大きな管腔を通過する撮像装置にとって,視野範囲と視野深度は,距離Dによってより広い生体内範囲を照明する照明源23及び203により,改善される。」

(7)「図3



(8)上記(7)に摘記した図3の例えば右側に着目すれば,レンズホルダ54が,照明源23より被検側に突出する部分を有することが読み取れる。

(9)してみれば,引用例2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「イメージャと,付随する光学システムを備えた生体撮像装置において,
前記装置は円筒形のカプセルであり,消化管全体を通過でき,
照明源より被検側に突出する部分を有するレンズホルダを反射材料で覆うことにより,照明光を所望の方向へ向け,照明光をイメージャから離すようにし,
前記照明源と,前記イメージャとを,光学ドームの先端から距離Dの位置に配置した生体撮像装置。」

第4 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
1 内視鏡装置の外形について
引用発明1の「カプセル内視鏡」は,内視鏡として機能するように構成された装置であるから,本願発明の「内視鏡装置」に相当する。そして,引用発明1の「カバー」は,本願発明の「外枠部材」に相当する。

2 レンズウエハについて
引用発明1の「レンズ」,「光学フィルター」は,光学的に機能する部品であるから,いずれも本願発明の「光学部品」に相当する。
そして,引用発明1の各「光学素子アレイ」には,それぞれ光学的に機能する部品である「レンズ」や「光学フィルター」が2次元格子状に配列される。
また,引用発明1の各「光学素子アレイ」は,「薄い板状」であるからウエハであるといえる。
したがって,引用発明1の「レンズ,光学フィルターを,2次元格子状に配列した光学素子アレイ」は,本願発明の「複数の光学部品が形成された光学ウエハ」に相当する。
また,引用発明1の「各光学素子アレイの光軸を一致させ位置決めして接合し」たものは「薄い板状」であるからウエハであるといえ,「各光学素子アレイの光軸を一致させ位置決めして接合し」た結果,複数のレンズが積層されたレンズユニットが複数形成されるのは自明である。
したがって,引用発明1における,「レンズ,光学フィルターを,2次元格子状に配列した光学素子アレイを製作し,各光学素子アレイの光軸を一致させ位置決めして接合して接合して」得られる「薄い板状」のものは,本願発明の「複数の光学部品が形成された光学ウエハを複数枚積層して形成される,複数の光学部品が積層されて形成されたレンズユニットが複数形成されたレンズウエハ」に相当する。

3 センサウエハについて
引用発明1の「CCD」は,撮像機能を有する固体素子であるから,本願発明の「固体撮像素子」に相当する。
したがって,引用発明1の「CCDがアレイ状に形成された半導体ウエハー」は,本願発明の「複数の固体撮像素子が形成されたセンサウエハ」に相当する。

4 レンズウエハとセンサウエハの貼り合わせについて
引用発明1の「各光学素子アレイ」が「接合」されたものと「半導体ウエハー」との接着が,「各光学素子アレイ」が「接合」されたものに備えられた「レンズ」により集光される側の面と,「半導体ウエハー」の「CCD902」が形成された側の面との間で行われることは,技術常識から明らかである。
また,引用発明1の「位置決めして接着」することは,本願発明の「アライメントして貼り合わせ」ることに相当する。
したがって,引用発明1の「各光学素子アレイの光軸を一致させ位置決めして接合し,これにCCDがアレイ状に形成された半導体ウエハーを位置決めして接着し」たものは,本願発明の「複数の光学部品が形成された光学ウエハを複数枚積層して形成されるレンズウエハの集光面側,及び複数の固体撮像素子が形成されたセンサウエハの素子面側をアライメントして貼り合せた」ものに相当する。

5 カメラモジュールの形成について
引用発明1の「切断」は,その作用から,本願発明の「個片化」に相当する。
そして,引用発明1の「切断」は,薄い板状のレベルで行われ,その「切断」の結果,「多角形状の撮像ユニット」が一体形成される。
その引用発明1の「撮像ユニット」は,カメラとして機能するモジュールであるから,本願発明の「カメラモジュール」に相当する。
したがって,引用発明1の「光学素子アレイと半導体ウエハーを同時に切断して製作した多角形状の撮像ユニット」は,本願発明の「レンズウエハ」と「センサウエハ」を「貼り合せた後,個片化することでウエハレベルにて一体形成された,個片化して形成された前記レンズユニットと個片化して形成された前記固体撮像素子とにより構成された多角形状のカメラモジュール」に相当する。

6 内視鏡機能部について
引用発明1の「照明光源」は,被検領域を照明する機能を有する「カプセル内視鏡」の部分であるから,これは,本願発明の「被検領域に照明光を照射する照明部により構成される内視鏡機能部」に相当する。
そして,上記1,5に示した通り,引用発明1の「カバー」,「撮像ユニット」は,それぞれ本願発明の「外枠部材」,「カメラモジュール」に相当する。
したがって,引用発明1の「前記照明光源は,前記多角形状の撮像ユニットの縁辺端部から前記カバーの内周端の間の領域に配置され」ることと,本願発明の「前記内視鏡機能部は,前記多角形状のカメラモジュールの直線状の縁辺端部から前記外枠部材の内周端の間の領域内の,前記縁辺端部に沿った位置に配置され」ることとは,「前記内視鏡機能部は,前記多角形状のカメラモジュールの縁辺端部から前記外枠部材の内周端の間の領域内の位置に配置され」る点で共通する。

7 上記1?6を総合すると,本願発明と引用発明1との一致点,相違点は次のとおりである。

「一致点」
「内視鏡装置の外形を形成する円筒状の外枠部材の内部に,
複数の光学部品が形成された光学ウエハを複数枚積層して形成される,複数の光学部品が積層されて形成されたレンズユニットが複数形成されたレンズウエハの集光面側,及び複数の固体撮像素子が形成されたセンサウエハの素子面側をアライメントして貼り合せた後,個片化することでウエハレベルにて一体形成された,個片化して形成された前記レンズユニットと個片化して形成された前記固体撮像素子とにより構成された多角形状のカメラモジュールと,
少なくとも,被検領域に照明光を照射する照明部により構成される内視鏡機能部と,
を有し,
前記内視鏡機能部は,前記多角形状のカメラモジュールの縁辺端部から前記外枠部材の内周端の間の領域内の位置に配置された内視鏡装置。」

「相違点1」
本願発明の「外枠部材」は「円筒状」であるのに対し,引用発明1の「カバー」については,その立体的な形状が明らかでない点。

「相違点2」
本願発明の「前記内視鏡機能部は、前記多角形状のカメラモジュールの直線状の縁辺端部から前記外枠部材の内周端の間の領域内の、前記縁辺端部に沿った位置に配置され」るのに対し,引用発明1の「前記照明光源(304)は,前記多角形状の撮像ユニット(900”)の縁辺端部から前記カバー(303)の内周端の間の領域内の位置に配置され」るものの,その「位置」が「撮像ユニット(900”)の」直線状の「縁辺端部」か否か不明な点。

「相違点3」
本願発明では,「前記カメラモジュールにおける前記レンズユニットの各外側面であって前記光学部品の一部を形成する側面の,前記照明部の発光面より被検側の位置に反射部材を設け」る。これに対し,引用発明1では,「ラップ処理などによってフランジ側面に面仕上げが施された前記撮像ユニット(900”)は,前記照明光源(304)より被検側に突出する部分を有する」から,「前記照明光源(304)より被検側に突出する部分」に「ラップ処理などによってフランジ側面に面仕上げが施され」るものの,その面仕上げが施されることが反射部材を設けることに相当しないことから,上記の本願発明に係る構成を有していないといえる点。

第5 相違点についての判断
1 相違点1,2について
まず,引用発明1のようなカプセル内視鏡の外形を形成するカバーを円筒状にすることは技術常識であるから,上記相違点1は実質的な相違点ではない。
そして,引用発明1のような内視鏡においては,細径化が自明の課題である。
その引用発明1において,撮像ユニットは多角形状だから,その縁辺端部は直線状の部分を有する。内視鏡内において,そうした直線状の縁辺端部を有する部材の周囲に他の部材を配置するとき,その直線状の縁辺端部と円筒状の外枠部材との間の領域内において,その直線状の縁辺端部に沿った位置に,他の部材を配置することにより細径化に貢献することは,例えば,特開2005-205078号公報(【0026】,図4),特開2008-12108号公報(【0027】?【0029】,図1),特開2008-36032号公報(【0091】,図20)に記載されているように,本願出願日前における周知技術である。
したがって,引用発明1においても細径化のため,上記周知技術を適用し,照明光源を,直線状の縁辺端部からカバーの内周端の間の領域内の,前記縁辺端部に沿った位置に配置することは,当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点3について
引用発明2は,上記第3の2(9)のとおり,カプセルである生体撮像装置において,照明源より被検側に突出する部分を有するレンズホルダを反射材料で覆うことにより,照明光を所望の方向へ向け,照明光をイメージャから離すようにしたことに関する発明である。その引用発明2における,照明源より被検側に突出したレンズホルダの,反射材料で覆われる部分は,機能及び構造からみて引用発明1における撮像ユニットの各外側面であって,レンズの一部を形成する側面の,照明光源の発光面より被検側の位置を含むところに相当するものである。
したがって,引用発明1における撮像ユニットの各外側面であって,レンズの一部を形成する側面の,照明光源の発光面より被検側の位置を含むところについて,照明光を所望の方向へ向け,照明光をイメージャから離すようにするため,引用発明2にならって当該箇所を反射材料で覆うようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

3 そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明1,2に記載された発明及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものではない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明1,2及び上記周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-05 
結審通知日 2014-09-09 
審決日 2014-09-22 
出願番号 特願2008-92646(P2008-92646)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 裕一  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 右▲高▼ 孝幸
三崎 仁
発明の名称 内視鏡装置  
代理人 伊藤 進  
代理人 篠浦 治  
代理人 長谷川 靖  

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