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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1293558
審判番号 不服2014-400  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-09 
確定日 2014-11-06 
事件の表示 特願2009- 45546「永久磁石形同期電動機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月 9日出願公開、特開2010-200573〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年2月27日を出願日とする出願であって、平成25年5月30日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成25年6月4日)、これに対し、平成25年8月2日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年10月8日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成25年10月15日)、これに対し、平成26年1月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)は、平成25年8月2日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
積層鋼板で形成され、円周方向に所定数に分割された分割コアを円環状に連接させて構成されている固定子コアと、該固定子コア内に回転自在に配設された永久磁石を有する回転子コアと、前記固定子コアの外周面を支持する円筒状フレームとを備えた永久磁石形同期電動機であって、
該フレームの固定子コアと対面する内周面に前記固定子コアと非接触状態となる応力緩和部が円周方向に所定間隔を保って形成され、
前記応力緩和部は、凹部で構成され、
前記固定子コアのスロット数と前記応力緩和部の数とが同数に設定されていることを特徴とする永久磁石形同期電動機。」


3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-80416号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

a「フレームを有し固定子スロット数Nsが12である固定子と、該固定子の内部空間に配置され回転子極数Npが8である回転子とを備える回転電機において」(【請求項1】)

b「応力緩和用応力緩和用空隙部は、フレーム外周および内周に設けられた応力緩和溝、並びにフレーム内部に設けられた応力緩和穴のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の回転電機。」(【請求項3】)

c「コギングトルクの発生する要因の1つとして固定子コア(以下、固定子鉄心ということもある。)の回転子回転方向(以下、単に回転方向と言うこともある。)の応力分布に起因する回転子回転軸中心周りの磁気特性の非対称性(磁気回路の歪)が挙げられる。このような固定子コア内の応力分布は、フレームによる不均一な締め付けが原因と考えられる。これは、主に、フレームの回転子回転軸周りの肉厚の不均一性に起因している。一般的に、矩形フレーム(外形が四角柱形状であるフレーム)が多用される傾向にあり、上記のような肉厚不均一による応力発生の主因となっている。」(【0002】)

d「金属製フレームを有する固定子と、固定子の内部空間に配置される回転子と、回転子を軸方向の両側から回転自在に支持する負荷側および反負荷側ハウジングとで構成されてなるサーボモータ」(【0003】)

e「図5に示すように、固定子鉄心21に固定子巻線22が巻回された、固定子スロット数が12の固定子本体を、フレーム20に焼きばめて固定子を構成している。固定子本体と共に永久磁石式回転電機本体を構成する回転子としては、図6に示すような、回転子鉄心32と永久磁石31とを備えた、回転子極数が8のものを用いた。」(【0016】)

f「図17は、本発明の実施の形態2よるフレームの一例を示す正面図である。
実施の形態1では、応力緩和用空隙部の一例として、フレーム外周部に応力緩和溝201を設けたが、本実施の形態のように、フレーム内周部に応力緩和溝201を設けることでも、有効フレーム厚のフーリエ級数展開係数のk次成分(Tk)やNp次成分(TNp)を低減することができ、これらの含有率の和が低減できるものと考えられる。」(【0054】)

上記記載及び図面を参照すると、固定子鉄心は円環状継鉄を有している。
上記記載及び図面を参照すると、固定子鉄心の外周面を矩形フレームが支持している。
上記記載及び図面を参照すると、矩形フレームの固定子鉄心と対面する内周部に前記固定子鉄心と非接触状態となる応力緩和溝が円周方向に所定間隔を保って形成されている。
上記記載及び図面を参照すると、応力緩和溝は凹部で構成されている。
上記記載及び図面(特に図5、図17、図18)を参照すると、固定子鉄心のスロット数と応力緩和溝の数が12に設定されている。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「円環状継鉄を有している固定子鉄心と、前記固定子鉄心の内部空間に回転自在に配置された永久磁石を備えた回転子鉄心と、前記固定子鉄心の外周面を支持する矩形フレームとを備えた永久磁石式回転電機であって、
該矩形フレームの固定子鉄心と対面する内周部に前記固定子鉄心と非接触状態となる応力緩和溝が円周方向に所定間隔を保って形成され、
前記応力緩和溝は、凹部で構成され、
前記固定子鉄心のスロット数と前記応力緩和溝の数が12に設定されている永久磁石式回転電機。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「固定子鉄心」、「前記固定子鉄心の内部空間」、「配置」、「備えた」、「回転子鉄心」、「永久磁石式回転電機」、「内周部」、「応力緩和溝」は、それぞれ本願発明の「固定子コア」、「該固定子コア内」、「配設」、「有する」、「回転子コア」、「永久磁石形同期電動機」、「内周面」、「応力緩和部」に相当する。

引用発明の固定子鉄心のスロット数と応力緩和溝の数は共に12であるから、引用発明の「前記固定子鉄心のスロット数と前記応力緩和溝の数が12に設定されている」は、本願発明の「前記固定子コアのスロット数と前記応力緩和部の数とが同数に設定されている」に相当する。

固定子鉄心は一般に積層鋼板で形成されているから、引用発明の「円環状継鉄を有している固定子鉄心」と、本願発明の「積層鋼板で形成され、円周方向に所定数に分割された分割コアを円環状に連接させて構成されている固定子コア」は、「積層鋼板で形成され、所定形状で構成されている固定子コア」との概念で一致する。

したがって、両者は、
「積層鋼板で形成され、所定形状で構成されている固定子コアと、該固定子コア内に回転自在に配設された永久磁石を有する回転子コアと、前記固定子コアの外周面を支持するフレームとを備えた永久磁石形同期電動機であって、
該フレームの固定子コアと対面する内周面に前記固定子コアと非接触状態となる応力緩和部が円周方向に所定間隔を保って形成され、
前記応力緩和部は、凹部で構成され、
前記固定子コアのスロット数と前記応力緩和部の数とが同数に設定されている永久磁石形同期電動機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
所定形状で構成されている固定子コアに関し、本願発明は、円周方向に所定数に分割された分割コアを円環状に連接させて構成されるのに対し、引用発明は、円環状継鉄を有している点。
〔相違点2〕
フレームに関し、本願発明は、円筒状であるのに対し、引用発明は、矩形状である点。


5.判断
相違点1について
回転電機の分野において、円周方向に所定数に分割された分割コアを円環状に連接させて構成されている固定子コアは周知の事項(必要があれば、原査定の拒絶の理由に引用された引用例2(特開2008-312304号公報)参照。更に必要があれば、特開2006-311738号公報参照。)であるから、引用発明において、円環状継鉄を有している固定子コアを、円周方向に所定数に分割された分割コアを円環状に連接させて構成することは、当業者が適宜なし得ることと認められる。

相違点2について、
回転電機の分野において、円筒状フレームは周知の事項である。また、円筒状フレームの内周面に凹部を設けて、固定子コアの外周面を支持することは周知の事項(必要があれば、原査定の拒絶の理由に引用された引用例3(特開2009-33860号公報)参照。)である。
積層鋼板に圧縮応力を印加することにより鉄損すなわちコアロスが増加すること(本願【0003】、引用例2【0007】参照。)、フレームによる不均一な締め付けが磁気回路のひずみの原因であること(引用例1【0002】参照。)は、何れも周知の事項である。また、引用発明において、鉄損すなわちコアロスが少なければ少ない程好ましいことは自明のことである。
そうであれば、引用発明において、コアロスを更に少なくするために、矩形フレームを円筒状フレームとして固定子コアの外周面を支持することは、当業者が容易に考えられることと認められる。

なお、本願発明は、応力緩和部の配置について「円周方向に所定間隔」としており、所定とは「定まっていること」を意味し、引用発明もフレームの12個の凹部が定まった間隔で配置されているから、「円周方向に所定間隔」としたが、仮に、所定間隔が等間隔を意味するとしても、フレームを円筒状フレームとした際、フレームによる不均一な締め付けが磁気回路のひずみの原因であることが周知の事項であり、しかも、凹部を円周方向に等間隔配置することが引用例3にみられるように回転電機の分野において周知の事項であるから、フレームによる不均一な締め付けが生じないように凹部を等間隔に配置することは当業者が適宜選択し得る程度のことと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-03 
結審通知日 2014-09-09 
審決日 2014-09-24 
出願番号 特願2009-45546(P2009-45546)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮地 将斗  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
発明の名称 永久磁石形同期電動機  
代理人 松本 洋一  

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