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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1293598
審判番号 不服2012-17943  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-14 
確定日 2014-11-05 
事件の表示 特願2007-319823「設定情報設定システムおよび設定情報設定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月 2日出願公開、特開2009-145969〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成19年12月11日を出願日とする出願であって,
平成22年1月13日付けで審査請求がなされ,平成24年3月14日付けで審査官により拒絶理由が通知(同年同月21日発送)され,これに対して平成24年5月16日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成24年6月8日付けで拒絶査定(同年同月19日謄本送達)がなされた。
これに対して,平成24年9月14日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成24年10月23日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成25年5月16日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年同月20日発送)がなされ,平成25年7月17日付けで回答書の提出がなされたものである。


第2.平成24年9月14日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年9月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成24年9月14日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)により,特許請求の範囲は次のように補正された。

(本件補正後の特許請求の範囲)
(以下,本件補正により補正された特許請求の範囲に記載された各請求項を「補正後の請求項」という。なお,下線は,補正箇所を示すものとして,出願人が付与したものである。)
「 【請求項1】
ICカードに格納された情報を読み取り可能なユーザ端末と,上記ユーザ端末と通信可能な基幹サーバとを備えた設定情報設定システムにおいて,
上記ユーザ端末は,
上記ICカードから読み取った読取情報に上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報のいずれかからなる設定情報が存在するか否かを判断する設定情報存在確認手段と,
上記設定情報存在確認手段が上記設定情報が存在しないと判断したとき,前記読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報に基づいて,上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する要求情報送信手段とを備え,
上記基幹サーバは,上記設定情報提供要求情報を受信したとき,上記設定情報提供要求情報に基づいて上記設定情報を上記ユーザ端末に送信する設定情報送信手段を備え,
さらに上記ユーザ端末は,上記基幹サーバから上記設定情報を受信したとき,上記設定情報を上記ICカードに書き込むICカードデータ書込手段を備えた
ことを特徴とする設定情報設定システム。
【請求項2】
上記ユーザ端末は,上記ユーザ端末に上記ICカードが挿入されたか否かを判断するICカード挿入判断手段を有し,
上記ICカード挿入判断手段が挿入されたと判断したとき,上記ユーザ端末は上記読取情報を読み取ることを特徴とする請求項1に記載の設定情報設定システム。
【請求項3】
上記ユーザ端末は,上記ユーザ端末のアプリケーションが実行されたか否かを判断するアプリケーション実行判断手段を有し,
上記アプリケーション実行判断手段が実行されたと判断したとき,上記ユーザ端末は上記読取情報を読み取る
ことを特徴とする請求項1に記載の設定情報設定システム。
【請求項4】
ICカードに格納された情報を読み取り可能なユーザ端末と,上記ユーザ端末と通信可能な基幹サーバとを備えた設定情報設定システムにおける設定情報設定方法において,
上記ユーザ端末が,上記ICカードから読み取った読取情報に上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報のいずれかからなる設定情報が存在するか否かを判断する設定情報存在確認ステップと,
上記ユーザ端末が,上記設定情報存在確認ステップにおいて上記設定情報が存在しないと判断したとき,前記読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報に基づいて,上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する要求情報送信ステップと,
上記基幹サーバが,上記設定情報提供要求情報を受信したとき,上記設定情報提供要求情報に基づいて上記設定情報を上記ユーザ端末に送信する設定情報送信ステップと,
上記ユーザ端末が,上記基幹サーバから上記設定情報を受信したとき,上記設定情報を上記ICカードに書き込むICカードデータ書込ステップとを有する
ことを特徴とする設定情報設定方法。
【請求項5】
上記ユーザ端末が,上記ユーザ端末に上記ICカードが挿入されたか否かを判断するICカード挿入判断ステップを有し,
上記ICカード挿入判断ステップにおいて挿入されたと判断したとき,上記ユーザ端末が上記読取情報を読み取ることを特徴とする請求項4に記載の設定情報設定方法。
【請求項6】
上記ユーザ端末が,上記ユーザ端末のアプリケーションが実行されたか否かを判断するアプリケーション実行判断ステップを有し,
上記アプリケーション実行判断ステップにおいて実行されたと判断したとき,上記ユーザ端末が上記読取情報を読み取ることを特徴とする請求項4に記載の設定情報設定方法。」

(本件補正前の特許請求の範囲)
(以下,平成24年5月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された各請求項を「補正前の請求項」という。)
「 【請求項1】
ICカードに格納された情報を読み取り可能なユーザ端末と,上記ユーザ端末と通信可能な基幹サーバとを備えた設定情報設定システムにおいて,
上記ユーザ端末は,
上記ICカードから読み取った読取情報に設定情報が存在するか否かを判断する設定情報存在確認手段と,
上記設定情報存在確認手段が上記設定情報が存在しないと判断したとき,上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する要求情報送信手段とを備え,
上記基幹サーバは,上記設定情報提供要求情報を受信したとき,上記設定情報提供要求情報に基づいて上記設定情報を上記ユーザ端末に送信する設定情報送信手段を備え,
さらに上記ユーザ端末は,上記基幹サーバから上記設定情報を受信したとき,上記設定情報を上記ICカードに書き込むICカードデータ書込手段を備えた
ことを特徴とする設定情報設定システム。
【請求項2】
上記読取情報は,上記ユーザ端末が接続先端末と通信するための接続設定情報,上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報および上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の設定情報設定システム。
【請求項3】
上記ユーザ端末は,上記ユーザ端末に上記ICカードが挿入されたか否かを判断するICカード挿入判断手段を有し,
上記ICカード挿入判断手段が挿入されたと判断したとき,上記ユーザ端末は上記読取情報を読み取る
ことを特徴とする請求項1または2に記載の設定情報設定システム。
【請求項4】
上記ユーザ端末は,上記ユーザ端末のアプリケーションが実行されたか否かを判断するアプリケーション実行判断手段を有し,
上記アプリケーション実行判断手段が実行されたと判断したとき,上記ユーザ端末は上記読取情報を読み取る
ことを特徴とする請求項1または2に記載の設定情報設定システム。
【請求項5】
ICカードに格納された情報を読み取り可能なユーザ端末と,上記ユーザ端末と通信可能な基幹サーバとを備えた設定情報設定システムにおける設定情報設定方法において,
上記ユーザ端末が,上記ICカードから読み取った読取情報に設定情報が存在するか否かを判断する設定情報存在確認ステップと,
上記ユーザ端末が,上記設定情報存在確認ステップにおいて上記設定情報が存在しないと判断したとき,上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する要求情報送信ステップと,
上記基幹サーバが,上記設定情報提供要求情報を受信したとき,上記設定情報提供要求情報に基づいて上記設定情報を上記ユーザ端末に送信する設定情報送信ステップと,
上記ユーザ端末が,上記基幹サーバから上記設定情報を受信したとき,上記設定情報を上記ICカードに書き込むICカードデータ書込ステップとを有する
ことを特徴とする設定情報設定方法。
【請求項6】
上記読取情報は,上記ユーザ端末が接続先端末と通信するための接続設定情報,上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報および上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の設定情報設定方法。
【請求項7】
上記ユーザ端末が,上記ユーザ端末に上記ICカードが挿入されたか否かを判断するICカード挿入判断ステップを有し,
上記ICカード挿入判断ステップにおいて挿入されたと判断したとき,上記ユーザ端末が上記読取情報を読み取ることを特徴とする請求項5または6に記載の設定情報設定方法。
【請求項8】
上記ユーザ端末が,上記ユーザ端末のアプリケーションが実行されたか否かを判断するアプリケーション実行判断ステップを有し,
上記アプリケーション実行判断ステップにおいて実行されたと判断したとき,上記ユーザ端末が上記読取情報を読み取ることを特徴とする請求項5または6に記載の設定情報設定方法。」

2.補正の適否
(1)新規事項,補正の目的要件
(1-1)本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。

そして,本件補正は上記「第1.」に示したとおり審判請求と同時にするものであり,上記「第2.」の「1.」に示したとおり特許請求の範囲についてする補正であるから,その目的について検討する。

(1-2)補正前の請求項1が「設定情報」を有する点に注目し,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると仮定すると,
補正前の請求項1,5に記載された「設定情報」について,補正後の請求項1,4において「上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報のいずれかからなる設定情報」と補正し,補正前の請求項1,5に記載された「上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する」について,補正後の請求項1,4において「前記読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報に基づいて,上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する」と補正することは,それぞれ,補正前の「設定情報」を,「上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報のいずれかからなる」と,補正前の「上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する」を,「前記読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報に基づいて,」と,限定を付加するものであって,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。

したがって,本件補正後の請求項1,4についてする補正は,請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの(以下「限定的減縮」と記す。)すなわち,特許法第17条の2第5項第2号に掲げられる事項を目的とするものである。

また,補正後の特許請求の範囲に,補正前の請求項2,6に係る構成が存在しないから,補正前の請求項2,6は削除されたものと認められ,よって補正前の請求項2,6に対する本件補正は,請求項の削除に該当し,特許法第17条の2第5項第1号に掲げられる事項を目的とするものである。

(1-3)なお,本件補正について,審判請求人は,平成24年9月14日付けの審判請求書において,「旧請求項1(5)と2(6)を組合わせたものを新請求項1(4)としました。」と述べている。しかしながら,本件補正が,補正前の請求項2を補正後の請求項1とし,補正前の請求項1の削除を目的とするものであると仮定すると,補正前の請求項2に「上記読取情報は,上記ユーザ端末が接続先端末と通信するための接続設定情報,上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報および上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報である」とあることから,補正後の請求項1は,「読取情報」について,「上記ユーザ端末が接続先端末と通信するための接続設定情報,上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報および上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報である」との限定を付加するものでなければならないところ,補正後の請求項1は,上記「読取情報」についての上記限定の記載はなく,「上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報のいずれかからなる」との限定を,「設定情報」に付加するものとなっており,そもそも請求項の削除に該当するとは言えず,また,補正前の請求項2に対する特許請求の範囲の減縮にも該当しない。そして,誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明でないことも明らかであるから,本件補正が,補正前の請求項2を補正後の請求項1とする補正を含むものとすると,特許法第17条の2第5項のいずれの規定にも適合しないことになる。
したがって,上記(1-2)で検討したとおりとする。

(2)独立特許要件についての判断

上記(1)のとおり,本件補正は限定的減縮を目的とするものであるので,本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて,以下に検討する。

(2-1)本件補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)は,前記平成24年9月14日付けの手続補正(本件補正)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。(再掲する。)

「ICカードに格納された情報を読み取り可能なユーザ端末と,上記ユーザ端末と通信可能な基幹サーバとを備えた設定情報設定システムにおいて,
上記ユーザ端末は,
上記ICカードから読み取った読取情報に上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報のいずれかからなる設定情報が存在するか否かを判断する設定情報存在確認手段と,
上記設定情報存在確認手段が上記設定情報が存在しないと判断したとき,前記読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報に基づいて,上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する要求情報送信手段とを備え,
上記基幹サーバは,上記設定情報提供要求情報を受信したとき,上記設定情報提供要求情報に基づいて上記設定情報を上記ユーザ端末に送信する設定情報送信手段を備え,
さらに上記ユーザ端末は,上記基幹サーバから上記設定情報を受信したとき,上記設定情報を上記ICカードに書き込むICカードデータ書込手段を備えた
ことを特徴とする設定情報設定システム。」

(2-2)引用文献
(2-2-1)引用文献1の記載事項及び引用発明
本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,平成24年3月14日付けの原審の拒絶理由において引用された,特開2003-122654号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で附加したものである。)

A「【請求項1】インターネットに接続する手段を備えた端末装置であって,下記の手段を含むことを特徴とする端末装置。
(1)端末装置の識別情報および第1の接続先情報を記憶している不揮発性メモリ手段。
(2)第2の接続先情報がメモリに記憶されていない場合に,前記第1の接続先情報に基づき,第1の接続先のサーバ装置に接続する第1接続手段。
(3)前記第1の接続先のサーバ装置から前記第2の接続先情報を受信し,メモリに記憶する受信手段。
(4)前記第2の接続先情報が記憶されている場合には,当該情報に従って第2の接続先のサーバ装置に接続する第2接続手段。
【請求項2】端末装置の識別情報および第2の接続先情報を記憶しており,端末装置から第1の接続先情報に基づきアクセスされると,端末装置の識別情報を入力し,対応する第2の接続先情報を端末装置へ送出することを特徴とする接続設定サーバ装置。
【請求項3】請求項1に記載された端末装置,請求項2に記載された接続設定サーバ装置,前記第2の接続先である第2のサーバ装置および,インターネットを含む通信網を備えたことを特徴とする通信システム。」

B「【0005】本発明の目的は,前記のような従来技術の問題点を解決し,電話回線,ISDN回線,携帯電話回線,PHS回線などを通して,インターネットに接続する端末装置の接続情報をインターネット経由で遠隔地から設定できるようにすることが可能な端末装置,接続設定サーバ装置および通信システムを提供することにある。」

C「【0014】図11は,本発明を適用した生活行動遠隔確認システムにおける接続設定方法を示す説明図である。
(1)まず,別居家族・親族等は図示しないパソコン(24)からインターネットに接続し,既知の接続設定サーバ32にアクセスし,設定パラメータ入力のWebページを開く。
【0015】(2)上記Webページにおいて,宅内装置10に固有の識別情報であるIDと,例えば別居家族・親族が契約しているインターネット接続サービス(ISPサーバB21)の接続設定条件を入力し,[送信] を押す。接続情報としては例えば以下のものを入力する。(a)宅内装置の識別情報(b)アクセスポイントBの電話番号(c)ユーザ名(あるいはユーザID)(d)パスワード。
(3)入力/設定された情報は,接続設定サーバ32内に保存される。
(4)モニタしたい住居に宅内装置10を設置し,電話回線等に接続して電源を入れる。
【0016】(5)宅内装置10は電源投入時に,出荷時に予め記憶されているアクセスポイントAあるいはアクセスポイントS((2)で設定したものと異なる)に自動的に接続(図11におけるルート(1)または(2))し,接続設定サーバ32に自分のIDコードを送信し,(2)で設定された接続情報を受信する。
(6)宅内装置10は受信したパラメータを内蔵する不揮発性メモリに記憶する。
(7)これ以降のサーバ30への接続は(6)で記憶した接続情報に従って接続する(図11におけるルート(3))」

D「【0033】図4は,宅内装置10における処理内容を示すフローチャートである。S1においては接続先が既に設定済みか否かが判定され,判定結果が肯定の場合にはS2に移行するが,否定の場合にはS4に移行する。S2においては,接続先変更要求フラグがセットされているか否かが判定され,判定結果が否定の場合にはS3に移行するが,肯定の場合にはS4に移行する。S3においては,後述する遠隔確認処理が行われる。また,S4においてはやはり後述する接続設定処理が行われる。」

E「【0040】図7は,図4のS4の接続設定処理の内容を示すフローチャートである。S50においては,宅内装置10の出荷時に予め記憶されているアクセスポイントA(S)へ発呼する。S51においてはURL(AAA)を送出して,接続設定サーバ32と接続する。S52においては出荷時に記憶されている宅内装置のIDを送出する。
【0041】S53においては接続設定サーバ32から接続先情報(アクセスポイントBの番号およびURL:BBB等)を受信する。S54においては接続先情報を不揮発性メモリの所定のエリアに格納する。S55においては接続を切断し,S56においては接続先変更要求フラグをクリアする。」

上記Aに記載の【請求項1】における,「端末装置」から「第2の接続先情報がメモリに記憶されていない場合に,前記第1の接続先情報に基づき」「接続」され,「第2の接続先情報」を「端末装置」に送る「第1の接続先のサーバ装置」は,同【請求項2】における「端末装置から第1の接続先情報に基づきアクセスされると」,「対応する第2の接続先情報を端末装置へ送出する」「接続設定サーバ装置」に対応するものと解されるから,
上記の点及び上記Aの記載を踏まえると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「端末装置,接続設定サーバ装置,第2の接続先である第2のサーバ装置および,インターネットを含む通信網を備えた通信システムであって,
前記端末装置は,
インターネットに接続する手段と,
前記端末装置の識別情報および第1の接続先情報を記憶している不揮発性メモリ手段と,
第2の接続先情報が前記メモリに記憶されていない場合に,前記第1の接続先情報に基づき,前記接続設定サーバ装置に接続する第1接続手段と,
前記接続設定サーバ装置から前記第2の接続先情報を受信し,前記メモリに記憶する受信手段と,
前記第2の接続先情報が記憶されている場合には,前記第2の接続先情報に従って第2の接続先のサーバ装置に接続する第2接続手段とを備え,
前記接続設定サーバ装置は,
前記端末装置の前記識別情報および前記第2の接続先情報を記憶しており,前記端末装置から前記第1の接続先情報に基づきアクセスされると,端末装置の識別情報を入力し,対応する第2の接続先情報を端末装置へ送出する,
通信システム。」

(2-2-2)引用文献2の記載事項
本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,平成24年3月14日付けの原審の拒絶理由において引用された,特開2002-318788号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で附加したものである。)

F「【0010】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)図1は本発明の実施の形態1の説明図である。本発明のネットワーク端末2は,電源投入時にはサーバへの接続情報が設定されていない白紙の状態となっている。ICカードなどの記録媒体1を,カードリーダなどのドライブ3にセットし,所有者パスワード入力で個人認証されると,各種接続情報が復号化され,端末内記憶エリア24(レジストリなど)に自動設定される。そのために,本発明のネットワーク端末2は,個人認証,接続情報の復号化,レジストリなどへの端末内書き込みの処理を行うカード差込処理部23を備えている。ICカードなどの記録媒体1は,ネットワークサーバへのログイン情報(ユーザーid,パスワード等),そのサーバの所在や接続にかかわる情報(サーバアドレス等),デスクトップサービスやアプリケーションサービスなどの接続形態,その他の情報を暗号化して記憶している。・・・(後略)」

(3)本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア.引用発明の「端末装置」は,「第2の接続先情報が前記メモリに記憶されていない場合に,前記第1の接続先情報に基づき,前記接続設定サーバ装置に接続」し,「第2の接続先情報を受信」するものであるから,当該「端末装置」と「接続設定サーバ装置」とは,通信可能に接続されているといえ,引用発明の「端末装置」,及び,当該「端末装置」に通信可能に接続された「接続設定サーバ装置」は,それぞれ,本件補正発明の「ユーザ端末」,及び,「ユーザ端末」と通信可能な「基幹サーバ」に相当する。
また,引用発明の「端末装置」における「不揮発性メモリ手段」は,「接続先情報」が読み書き可能に記憶されるものであり,一方,本件補正発明の「ICカード」も,「設定情報」が読み書き可能に記憶されていることから,両者は,“記憶手段”である点で共通する。
また,引用発明である「通信システム」は,「接続設定サーバ装置から前記第2の接続先情報を受信し,前記メモリに記憶する」ものであり,上記Bの「本発明の目的は,・・・端末装置の接続情報をインターネット経由で遠隔地から設定できるようにすることが可能な・・・通信システムを提供する」との記載も参酌すれば,「設定情報」を「設定」するためのシステムであるともいえる。
してみると,引用発明の「不揮発性メモリ手段」の「接続先情報」等を読み取り可能な「端末装置,接続設定サーバ装置,第2の接続先である第2のサーバ装置および,インターネットを含む通信網を備えた通信システム」と,
本件補正発明の「ICカードに格納された情報を読み取り可能なユーザ端末と,上記ユーザ端末と通信可能な基幹サーバとを備えた設定情報設定システム」とは,ともに,
“記憶手段に格納された情報を読み取り可能なユーザ端末と,上記ユーザ端末と通信可能な基幹サーバとを備えた設定情報設定システム”である点で共通するといえる。

イ.引用発明の「端末装置」は「第2の接続先情報がメモリに記憶されていない場合に,前記第1の接続先情報に基づき,前記接続設定サーバ装置に接続する第1接続手段」を有することから,「メモリ」から読み取った情報と,「第2の接続先情報」とを対比することで,「第2の接続先情報がメモリに記憶されていない」か否かの“判断”を行っていると言え,また,当該“判断”のための所定の手段を有することは明らかである。また,引用発明の「第2の接続先情報」も,本件補正発明の「上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報のいずれかからなる設定情報」も,ともに,上位概念である,“所定の設定情報”で共通するといえる。
してみると,
引用発明の「端末装置」における,「第2の接続先情報がメモリに記憶されていない」か否かを“判断”するための手段と,
本件補正発明の「ユーザ端末」における,「上記ICカードから読み取った読取情報に上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報のいずれかからなる設定情報が存在するか否かを判断する設定情報存在確認手段」とは,ともに,
“ユーザ端末”における,“上記記憶手段から読み取った読取情報に所定の設定情報が存在するか否かを判断する設定情報存在確認手段”である点で共通するといえる。

ウ.引用発明の「端末装置」は,「第2の接続先情報が前記メモリに記憶されていない場合に,前記第1の接続先情報に基づき,前記接続設定サーバ装置に接続する第1接続手段」,及び,「前記接続設定サーバ装置から前記第2の接続先情報を受信し,前記メモリに記憶する受信手段」によって,「不揮発性メモリ手段」からの「前記第1の接続先情報」に基づき,「接続設定サーバ装置に接続」し,「接続設定サーバ装置から前記第2の接続先情報を受信」するものであるところ,そのために「端末装置」は,「接続設定サーバ装置」に対し「第2の接続先情報」を取得するための提供要求を行っており,かつ,当該提供要求のために所定の情報,すなわち提供要求に係る情報を送信していると言え,引用発明の「第2の接続先情報」の当該提供要求に係る情報は,本件補正発明の「設定情報提供要求情報」に相当するといえる。
また,引用発明の「前記第1の接続先情報」は,「不揮発性メモリ手段」に格納され読み取られる情報であり,「端末装置」が,「接続設定サーバ装置に接続」するために用いるものであるが,本件補正発明の「読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報」も,「ICカード」に格納された「読取情報に含まれる」ものであり,「ユーザ端末」が,「基幹サーバ」に「アクセス」するために用いるものであるから,引用発明の「端末装置」が「接続設定サーバ装置に接続」するための「第1の接続先情報」と,本件補正発明の「読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報」とは,ともに,上位概念である,“読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信するためのアクセス情報”で共通するといえる。
してみると,
引用発明の「端末装置」における,「第2の接続先情報が前記メモリに記憶されていない場合に,前記第1の接続先情報に基づき,前記接続設定サーバ装置に接続する第1接続手段」であって,「第2の接続先情報」の提供要求に係る情報を送信する手段と,
本件補正発明の「ユーザ端末」における,「上記設定情報存在確認手段が上記設定情報が存在しないと判断したとき,前記読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報に基づいて,上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する要求情報送信手段」とは,ともに,
“ユーザ端末”における,“上記設定情報存在確認手段が上記所定の設定情報が存在しないと判断したとき,前記読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信するためのアクセス情報に基づいて,上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する要求情報送信手段”である点で共通するといえる。

エ.引用発明の「接続設定サーバ装置」は,本件補正発明の「基幹サーバ」に対応するところ,「前記端末装置から前記第1の接続先情報に基づきアクセスされると,端末装置の識別情報を入力し,対応する第2の接続先情報を端末装置へ送出する」するものであり,また,上記ウの検討結果を踏まえると,「第2の接続先情報を端末装置へ送出する」ために,「端末装置」からの「第2の接続先情報」の提供要求に係る情報を受信しており,そのための手段を有することは明らかである。
してみると,
引用発明の「接続設定サーバ装置」における,「前記端末装置から前記第1の接続先情報に基づきアクセスされると,端末装置の識別情報を入力し,対応する第2の接続先情報を端末装置へ送出する」ための手段であって,上記「第2の接続先情報を端末装置へ送出する」ために,「端末装置」からの「第2の接続先情報」の提供要求に係る情報を受信する手段と,
本件補正発明の「上記基幹サーバ」における,「上記設定情報提供要求情報を受信したとき,上記設定情報提供要求情報に基づいて上記設定情報を上記ユーザ端末に送信する設定情報送信手段」とは,ともに,
“上記基幹サーバ”における,“上記設定情報提供要求情報を受信したとき,上記設定情報提供要求情報に基づいて上記所定の設定情報を上記ユーザ端末に送信する設定情報送信手段”である点で共通するといえる。

オ.引用発明の「端末装置」における「前記接続設定サーバ装置から前記第2の接続先情報を受信し,前記メモリに記憶する受信手段」は,上記Cの「(6)宅内装置10は受信したパラメータを内蔵する不揮発性メモリに記憶する。・・・これ以降のサーバ30への接続は(6)で記憶した接続情報に従って接続する」との記載,及び,上記Eの「S54においては接続先情報を不揮発性メモリの所定のエリアに格納する。」との記載も参酌すれば,受信した「前記第2の接続先情報」を,「不揮発性メモリ手段」すなわち“記憶手段”に書き込むことは明らかである。
してみると,
引用発明の「端末装置」における,「前記接続設定サーバ装置から前記第2の接続先情報を受信し,前記メモリに記憶する受信手段」と,
本件補正発明の「ユーザ端末」における,「上記基幹サーバから上記設定情報を受信したとき,上記設定情報を上記ICカードに書き込むICカードデータ書込手段」とは,
“ユーザ端末”における,“上記基幹サーバから上記所定の設定情報を受信したとき,上記所定の設定情報を上記記憶手段に書き込むデータ書込手段”である点で共通するといえる。

以上から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)
記憶手段に格納された情報を読み取り可能なユーザ端末と,上記ユーザ端末と通信可能な基幹サーバとを備えた設定情報設定システムにおいて,
上記ユーザ端末は,
上記記憶手段から読み取った読取情報に所定の設定情報が存在するか否かを判断する設定情報存在確認手段と,
上記設定情報存在確認手段が上記所定の設定情報が存在しないと判断したとき,前記読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信するためのアクセス情報に基づいて,上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する要求情報送信手段とを備え,
上記基幹サーバは,上記設定情報提供要求情報を受信したとき,上記設定情報提供要求情報に基づいて上記所定の設定情報を上記ユーザ端末に送信する設定情報送信手段を備え,
さらに上記ユーザ端末は,上記基幹サーバから上記所定の設定情報を受信したとき,上記所定の設定情報を上記記憶手段に書き込むデータ書込手段を備えた
ことを特徴とする設定情報設定システム。

(相違点1)
格納された設定情報が読み取られ,受信した設定情報が書き込まれる“記憶手段”に関し,
本件補正発明が,「ICカード」であるのに対して,引用発明は,「不揮発性メモリ手段」である点。

(相違点2)
設定情報存在確認手段記憶手段によって存在するか否かを判断され,設定情報送信手段によってユーザ端末に送信され,かつ,データ書込手段によって受信したとき記憶手段に書き込まれる,“所定の設定情報”に関し,
本件補正発明が,「上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報のいずれかからなる設定情報」であるのに対して,引用発明は,そのように構成されていない点。

(相違点3)
ユーザ端末が,基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する際に用いられる,“読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信するためのアクセス情報”に関し,
本件補正発明が,「読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報」であるのに対して,引用発明は,そのように構成されていない点。

(4)当審の判断
上記相違点1ないし相違点3について検討する。

(4-1)相違点1について
端末に必要な設定情報を,ICカードに格納し,読み取って利用することは,本願出願前には周知の技術(例えば,引用文献2の上記Fの記載)であった。
そして,引用発明と上記周知技術とが同様の技術分野に属することは明らかであり,また,一般に,「不揮発性メモリ手段」と「ICカード」とは,いずれも,情報端末において読み書き可能に利用される記憶手段として普通に知られた構成(設定情報について読み書き可能なICカードについては,例えば,本願の出願日前に既に公知であった特開2005-25419号公報の段落【0010】?【0012】に「ICカードが装着されているか否かチェックし(ステップS1),装着されると制御プログラムがICカードからURLを読み出し(ステップS2),ブラウザが起動して読み出したURLのWebページを表示する(ステップS3)。・・・(中略)・・・ポイントが一定値nを超えたか否かチェックし(ステップS24),超えた場合URLを変更し(ステップS25),変更したURLのWebページに遷移し,画面ではそのWebページが表示される(ステップS26)。制御プログラムでは変更されたURLにICカードのURLを更新する(ステップS27)。」との記載がある。)であることから,引用発明における,設定情報について読み書き可能な記憶手段として,ICカードを用いるに当たり,格別な技術的支障があるともいえない。
してみると,引用発明に対し上記周知技術等を採用することで,端末において読み書き可能に利用される設定情報の記憶手段である「不揮発性メモリ手段」に代えて,「ICカード」とすること,すなわち,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点1は,格別のものではない。

(4-2)相違点2について
ユーザ端末により利用される設定情報として,ユーザ端末の設定情報や,ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報を用いることは,例えば,本願の出願日前に既に公知であった特開2002-288060号公報に,
(当審注:下線は,参考のために当審で附加したものである。)

G「【0011】また,本発明の公衆端末システムにおいて,前記ICカードに記録された,サービス提供者に依存する端末画面のサービスタイトル名,ユーザエージェントに挿入するHTTP(ハイパー・テキスト・トランスファ・プロトコル)のサービスエージェント名を含む端末動作設定情報を読み取る端末動作設定情報読み取り部と,端末に設定された設定値,あるいは前記ICカードに記録されたサービスエージェント名に基づき端末実行制御を行う端末実行制御部と,前記サービス提供者に依存した通信プロトコルの制御を行うサービスデータ送受信部と,を備えたことを特徴とする。」

と記載されているように,端末の動作設定情報をICカードに格納して利用する態様が示され,同じく本願の出願日前に既に公知であった特開平10-283292号公報に,
(当審注:下線は,参考のために当審で附加したものである。)

H「【0016】図1に携帯型記憶媒体(1)の内容を示す。携帯型記憶媒体(1)は,個人別に複数個用意されており個人識別情報(2)が異なる以外は同一情報が入っている。この中の電子メール動作環境設定情報(3)は個人識別情報(2)と電子メール記憶領域指定情報(4)からなる。
【0017】この電子メール記憶領域指定には,本発明では携帯型記憶媒体(1)内のメール送信受信記憶領域が指定してあり,ここに送信用に作られたメールおよび受信されたメールが蓄積される。
【0018】次に,本発明の動作を図面を参照し説明する。本実施例では携帯型記憶媒体(1)としてフロッピーディスクを使用している。
・図3のフロッピーディスク装置部(11)に特定操作者のフロッピーディスク(1)を装着する。
・操作者はキーボード(20)を操作し,情報制御部(13)の起動をかける。
【0019】・最初にプログラム制御部(14)内のフロッピーディスク起動ソフト(16)が起動する。
・このプログラムによりフロッピーディスク装置部(11)に指示が出て図1の運用フロッピーディスク(1)の内容が読み取られ,内蔵ディスク部(17)のレジストリ(6)の電子メール動作環境設定情報(7),個人識別情報(8),電子メール記憶領域指定情報(9)が書き換えられる。
【0020】・次に,プログラム制御部(14)の電子メールソフト(15)が起動される。
・電子メールソフト(15)はレジストリ(6)を読み取り,電子メールの動作環境を設定する。
【0021】これ以降は端末装置の通常の電子メールの送受信と同じ動作が以下のように行われる。
・・・(中略)・・・
【0024】本実施例では携帯型記憶媒体(1)はフロッピーディスクとして説明を記してあるが,本発明はICカード等その他の記憶媒体であっても同様である。」

と記載されているように,端末のアプリケーション(電子メール)動作環境設定情報をICカードに格納して利用する態様が示されているとおり,本願出願前には周知の技術であり,そして,引用発明と上記周知技術とが同様の技術分野に属することは明らかである。
してみると,引用発明における「端末装置」の「設定情報」において,上記周知技術を採用することで,「上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報のいずれかからなる設定情報」とすること,すなわち,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点2は,格別のものではない。

(4-3)相違点3について
ユーザ端末からサーバにアクセスする際に,サーバとの通信方法に関する情報を用いることは,例えば,本願の出願日前に既に公知であった,引用文献2の上記Fの記載や,特開2001-134508号公報の,
(当審注:下線は,参考のために当審で附加したものである。)

J「【0020】本発明(請求項10)は,ユーザにより携帯され,その時々で異なるネットワークに接続して使用されるメッセージ処理装置におけるメッセージ処理方法であって,自装置が接続されているネットワークを認識し,予め登録された,自装置が接続されているネットワークから前記複数のメッセージサーバ群へアクセスするための通信方法に関する情報を参照して,前記登録されたメッセージサーバ群にアクセスするための通信方法を決定し,前記決定した通信方法を用いて,前記メッセージサーバ群から,前記ユーザ宛に配信されたメッセージ群を取り出して,自装置内に格納し,前記格納したメッセージ群を,自装置と同一のネットワークに接続されているメッセージ入出力を行う他の装置からの要求に応じて,出力することを特徴とする。」

との記載にあるように,本願出願前には周知の技術であり,そして,引用発明と上記周知技術とが同様の技術分野に属することは明らかである。
してみると,引用発明における「端末装置」の「第1の接続先情報」において,上記周知技術を採用することで,「読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報」とすること,すなわち,相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点3は,格別のものではない。

そして,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明,及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

したがって,本件補正発明は,上記引用発明,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.なお,審判請求人は,平成24年9月14日付けで提出された審判請求書において,

「また,(5-1)(5-2)で述べたように,本願発明の設定情報が,『ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報』である点は,全ての文献に記載がありませんので,この点からも,本願発明は文献1-4から容易にできたとは言えないと考えます。この本願の特徴的構成により,ICカードにユーザ端末の設定情報が設定されていないときには,基幹サーバからユーザ端末に設定情報が送信されるから,ICカードにユーザ端末の設定情報が設定されていなくとも,ユーザ端末を利用することが可能であるのであり,また,ICカードにユーザ端末上のアプリケーションの設定情報が設定されていないときには,基幹サーバからユーザ端末に設定情報が送信されるから,ICカードにユーザ端末上のアプリケーションの設定情報が設定されていなくとも,ユーザ端末上のアプリケーションを利用することが可能であるという顕著は効果を生じます。これらは,文献1-4をどのように組合わせても生じることはない本願独自の構成と効果であると確信します。」

と主張している。
しかしながら,本件補正発明の「設定情報」が,「ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報」である点については,上記(4-2)の「相違点2について」において検討したとおり,引用発明に対し周知の技術を適用することで,当業者が容易に想到し得たことであり,また,それにより奏するとしている,「ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報」に係る効果も,引用発明及び上記周知技術の各構成を結合することによりはじめてもたらされたものでもなく,かつ,顕著なものともいえないから,上記審判請求書の主張は理由がなく,採用することができない。

4.補正却下むすび

上記で検討した通り,本願の補正後の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,上記結論のとおり決定する。


第3.本願発明について

1.平成24年9月14日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成24年5月16日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。(再掲する。以下「本願発明」という。)

「ICカードに格納された情報を読み取り可能なユーザ端末と,上記ユーザ端末と通信可能な基幹サーバとを備えた設定情報設定システムにおいて,
上記ユーザ端末は,
上記ICカードから読み取った読取情報に設定情報が存在するか否かを判断する設定情報存在確認手段と,
上記設定情報存在確認手段が上記設定情報が存在しないと判断したとき,上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する要求情報送信手段とを備え,
上記基幹サーバは,上記設定情報提供要求情報を受信したとき,上記設定情報提供要求情報に基づいて上記設定情報を上記ユーザ端末に送信する設定情報送信手段を備え,
さらに上記ユーザ端末は,上記基幹サーバから上記設定情報を受信したとき,上記設定情報を上記ICカードに書き込むICカードデータ書込手段を備えた
ことを特徴とする設定情報設定システム。」

2.引用文献
本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,平成24年3月14日付けの原審の拒絶理由において引用された,前記引用文献1には,前記「第2」の「2.」の(2-2-1)の項で摘記した事項が記載されている。
また,本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,平成24年3月14日付けの原審の拒絶理由において引用された,前記引用文献2には,前記「第2」の「2.」の(2-2-2)の項で摘記した事項が記載されている。

3.対比・判断
本願発明は,前記「第2」の「2.」の(3)及び(4)で検討した,本件補正発明における発明特定事項である「設定情報」について,「上記ユーザ端末の設定情報または上記ユーザ端末上のアプリケーションの設定情報のいずれかからなる」との限定を省くとともに,同じく本件補正発明における発明特定事項である「上記基幹サーバに設定情報提供要求情報を送信する要求情報送信手段」について,「前記読取情報に含まれる上記ユーザ端末が上記基幹サーバと通信する方法に関する情報であるアクセス方法情報に基づいて,」との限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が,前記「第2」の「2.」の(3)及び(4)に記載したとおり,引用発明,及び,周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明,及び,周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして,本願発明の構成により奏する効果も,引用発明,及び,周知技術から当然予測される範囲内のもので,格別顕著なものとは認められない。


第4.むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-27 
結審通知日 2014-08-28 
審決日 2014-09-24 
出願番号 特願2007-319823(P2007-319823)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 誠  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 小林 大介
仲間 晃
発明の名称 設定情報設定システムおよび設定情報設定方法  
代理人 渡部 比呂志  
代理人 豊田 義元  

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