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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1293605
審判番号 不服2013-4390  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-06 
確定日 2014-11-05 
事件の表示 特願2005-377757「表示装置およびその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 2日出願公開、特開2006-301581〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成17年12月28日
(パリ条約による優先権主張2005年4月18日、韓国)
手続補正: 平成21年10月6日(以下、「補正1」という。)
手続補正: 平成22年6月29日 (以下、「補正2」という。)
補正2の却下: 平成23年8月4日付け(送達日:同年同月10日)
手続補正: 平成24年1月10日 (以下、「補正3」という。)
補正3の却下: 平成24年10月31日付け(送達日:同年11月6日)
拒絶査定: 平成24年10月31日付け(送達日:同年11月6日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成25年3月6日
手続補正: 平成25年3月6日(以下、「本件補正」という。)
審尋 : 平成25年10月8日付け(発送日:同年同月10日)
審尋に対する回答書: 平成25年12月27日


第2 補正の却下の決定

[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正によって、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。

(補正前)
「複数の画素を有する表示パネルであって、前記複数の画素の各々は、多数のデータラインおよび多数のスキャンラインとの交差部に形成され、縦方向に配列されたR、G、及びBの各サブピクセル、前記交差部に形成された複数の薄膜トランジスタを含む、表示パネルと、
前記複数のスキャンラインを駆動するための、前記表示パネルの両端側に置かれた第1及び第2スキャンドライバと、
前記複数のデータラインを駆動するためのデータドライバとを含み、
前記第1スキャンドライバは、複数の回路段を備え、前記第2スキャンドライバは、複数の回路段を備え、
前記第1スキャンドライバの回路段の各々は、各スキャンラインを通じて、前記第2スキャンドライバの回路段の各々に接続され、
前記複数の薄膜トランジスタは、奇数番目のスキャンラインと接続される前記サブピクセルの第1薄膜トランジスタ、及び偶数番目のスキャンラインと接続される前記サブピクセルの第2薄膜トランジスタを含み、
各回路段の高さは、前記縦方向に隣接する2つのサブピクセルの高さに等しい表示装置。」
(補正後)
「複数の画素を有する表示パネルであって、前記複数の画素の各々は、多数のデータラインおよび多数のスキャンラインとの交差部に形成され、縦方向に配列されたR、G、及びBの各サブピクセル、前記交差部に形成された複数の薄膜トランジスタを含む、表示パネルと、
前記複数のスキャンラインを駆動するための、前記表示パネルの両端側に置かれた第1及び第2スキャンドライバと、
前記複数のデータラインを駆動するためのデータドライバとを含み、
前記第1スキャンドライバは、複数の回路段を備え、前記第2スキャンドライバは、複数の回路段を備え、
前記第1スキャンドライバの回路段の各々は、各スキャンラインを通じて、前記第2スキャンドライバの回路段の各々に接続され、
前記複数の薄膜トランジスタは、奇数番目のスキャンラインと接続される前記サブピクセルの第1薄膜トランジスタ、及び偶数番目のスキャンラインと接続される前記サブピクセルの第2薄膜トランジスタを含み、
各回路段の高さは、前記縦方向に隣接する2つのサブピクセルの高さに等しく、
前記第1スキャンドライバの回路段の一つから発生したスキャン信号は、一つの対応するスキャンライン上に配置されたサブピクセルと、前記第2スキャンドライバの回路段とに供給され、
前記第2スキャンドライバの回路段は、前記スキャン信号に応じて、該スキャン信号とは別のスキャン信号を発生し
前記第1スキャンドライバは奇数番目の回路段を含み、前記第2スキャンドライバは偶数番目の回路段を含み、
前記第1スキャンドライバの出力信号に応答して、前記奇数番目のスキャンラインに接続された前記サブピクセルの薄膜トランジスタはターンオン/オフされ、前記第1スキャンドライバの出力信号は前記第2スキャンドライバの入力信号として使用され、
前記第2スキャンドライバの出力信号に応答して、前記偶数番目のスキャンラインに接続された前記サブピクセルの薄膜トランジスタはターンオン/オフされ、前記第2スキャンドライバの出力信号は前記第1スキャンドライバの入力信号として使用される、ことを特徴とする表示装置。」

上記補正は、補正前の(すなわち、補正1による補正後の)請求項1に記載されたスキャンドライバの発生するスキャン信号が、他のスキャンドライバに供給され、入力信号として使用されること等を限定するものであるから、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2 検討
(1)引用例1記載の事項・引用発明1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-347628号公報(以下「引用例1」という。)には、「表示装置及び撮像装置」(【発明の名称】)の発明に関し、次の事項(a)ないし(d)が記載されている。

(a)
「【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、表示素子または撮像素子とそれを駆動するドライバとの関係において、表示素子または撮像素子のドライバに対する面積割合を大きくし、しかも表示素子または撮像素子をほぼ中央に配置することができる表示装置及び撮像装置を提供することにある。
【0013】本発明の他の目的は、走査用のドライバを表示素子または撮像素子を介して対向するように配置しても、ドライバを制御するための制御信号の種類が多くならない表示装置及び撮像装置を提供することにある。」

(b)
「【0041】[第1の実施の形態]図1は、この実施の形態にかかる液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図示するように、この液晶表示装置は、液晶表示素子1と、奇数ドライバ2o及び偶数ドライバ2eからなるゲートドライバ2と、データドライバ3と、コントローラ4とから構成されている。
【0042】液晶表示素子1は、一対の基板間に液晶を封入したもので、その一方の基板(以下、第1基板という)上には、複数の画素電極がマトリクス状に形成されており、画素間の行方向には2n本(n:1以上の整数)のゲートラインGL1?GL2n(走査ライン)が、画素間の列方向にはデータラインDLが伸延して形成されている。また、第1基板上には、各画素電極に対応して、ゲートがゲートラインGL1?GL2nに、ドレインがデータラインDLに、ソースが画素電極にそれぞれ接続されたアクティブ素子としてのTFT1aが形成されている。
・・・
【0044】ゲートドライバ2は、奇数行のゲートラインGL1、GL3、・・・を走査するための奇数ドライバ2oと、偶数行のゲートラインGL2、GL4、・・・を走査するための偶数ドライバ2eとからなる。奇数ドライバ2oと偶数ドライバ2eは、いずれも液晶表示素子1を構成する第1基板上に形成されており、ゲートラインGL1?GL(2n-1)を介して互いに接続されている。」

(c)
「【0050】次に、ゲートドライバ2の回路構成について、図3を参照して詳しく説明する。図3に示すように、奇数ドライバ2oの各段RS1o(i)及び偶数ドライバ2eの各段RS1e(i)は、それぞれ5つのnチャネル型のTFT201?205を備える(但し、i=1,2,・・・,n)。TFT201?205の半導体層は、アモルファスシリコン或いはポリシリコンによって構成されている。
・・・
【0056】このとき、制御信号Φ1がローレベルのためTFT201はオフ状態であるので、配線容量C4は、start信号INによりチャージされている状態が保持されている。TFT204のドレインには、制御信号CKが供給されており、タイミングT1において制御信号CKがハイレベルになると、TFT204のドレイン-ソース間に電流が流れ、ハイレベルの選択信号が液晶表示素子1の第1行のゲートラインGL1に出力される。このとき、出力される選択信号電位が高いほどTFT204のゲート-ソース間のゲート絶縁膜及びゲート-ドレイン間のゲート絶縁膜の寄生容量がチャージアップされるため容量C4のチャージ電圧が高くなり、TFT204の選択信号は飽和電圧まで達することができる。このハイレベルの選択信号は、ゲートラインGL1を介して偶数ドライバ2eの第1段RS1e(1)に供給される。
・・・
【0058】なお、奇数ドライバ2oの他の段RS1e(i)における動作は、start信号INをゲートラインGL2(i-1)からの信号に入れ替えれば、奇数ドライバ2oの第1段RS1o(1)と実質的に同一である。また、偶数ドライバ2eの各段RS1e(i)における動作は、start信号INをゲートラインGL2i-1からの信号に、制御信号Φ1を制御信号Φ2に、制御信号CKを?CKにそれぞれ入れ替えれば、奇数ドライバ2oの第1段RS1o(1)と実質的に同一である。」

(d)
「【0059】以下、この実施の形態にかかる液晶表示装置の動作について、図4のタイミングチャートで示されるゲートドライバ2の動作を中心として説明する。
・・・
【0064】タイミングT1?T2の間、ゲートラインGL1の電位がハイレベルになると、液晶表示素子1の第1行のTFT1aがオンする。このとき、データドライバ3は、コントローラ4からの制御信号cntに従って、タイミングT0?T1の間で取り込んでおいた第1行の画像データIMGに対応する表示信号を、各データラインDLに出力する。この表示信号は、オンしているTFT1aを介して第1行の画素容量1bに書き込まれ、書き込まれた表示信号に従ってその間の液晶の配向状態が変化することで、表示信号に対応した画像が表示される。
・・・
【0066】また、タイミングT1?T2の間、液晶表示素子1の第1行のゲートラインGL1のハイレベルの選択信号OUT1は、偶数ドライバ2eの第1段RS1e(1)(以下、偶数第1段という)のTFT201のドレインに供給されている。タイミングT1?T2の間の一定の期間、制御信号Φ2が立ち上がると、偶数ドライバ2eの各段RS1e(i)のTFT201をオンする。これにより、偶数第1段の配線容量C2、C4がチャージされ、その信号レベルがハイレベルとなる。
・・・
【0069】次に、タイミングT2において、制御信号?CKがハイレベルとなる。ここで、偶数第1段のTFT204がオン、偶数第1段のTFT205がオフとなっていることから、偶数第1段からハイレベルの選択信号OUT2が、第2行のゲートラインGL2に出力される。ここで、偶数第1段のTFT204の寄生容量により偶数第1段のTFT204のゲート電圧がより高くなり、制御信号?CKのハイレベルの電圧をVHとすると、偶数第1段のTFT204から出力される電圧は飽和されて、ほとんど減衰されずにほぼ電圧VHで選択信号OUT2としてゲートラインGL2に出力される。ゲートラインGL2に出力されている選択信号OUT1は、タイミングT3で制御信号?CKがローレベルに変化すると、ローレベルとなる。」

上記記載(a)ないし(d)及び図面の図1ないし4の記載から、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。

「複数の画素を有する液晶表示素子1であって、前記複数の画素の各々は、多数のデータラインDLおよび多数のゲートラインGLとの交差部に形成され、前記交差部に形成されたTFT1aを含む、液晶表示素子1と、
前記複数のゲートラインGLを駆動するための、前記液晶表示素子1の両端側に置かれた奇数ドライバ2oと偶数ドライバ2eと、
前記複数のデータラインDLを駆動するためのデータドライバ3とを含み、
前記奇数ドライバ2oは、複数の段RS1o(i)を備え、前記偶数ドライバ2eは、複数の段RS1e(i)を備え、
前記奇数ドライバ2oの段の各々は、各ゲートラインGLを通じて、前記偶数ドライバ2eの段の各々に接続され、
前記TFT1aは、奇数番目のゲートラインGLと接続される前記画素のTFT1a、及び偶数番目のゲートラインGLと接続される前記画素のTFT1aを含み、
前記奇数ドライバ2oの段の一つから発生したハイレベルの選択信号は、一つの対応するゲートラインGL上に配置された画素と、前記偶数ドライバ2eの段とに供給され、
前記偶数ドライバ2eの段は、前記ハイレベルの選択信号に応じて、該ハイレベルの選択信号とは別のハイレベルの選択信号を発生し、
前記第奇数ドライバ2oは奇数番目の段を含み、前記偶数ドライバ2eは偶数番目の段を含み、
前記奇数ドライバ2oの出力信号に応答して、前記奇数番目のゲートラインGLに接続された前記画素のTFT1aはオンされ、前記奇数ドライバ2oの出力信号は前記偶数ドライバ2eの入力信号として使用され、
前記偶数ドライバ2eの出力信号に応答して、前記偶数番目のゲートラインGLに接続された前記画素のTFT1aはオンされ、前記偶数ドライバ2eの出力信号は前記奇数ドライバ2oの入力信号として使用される、ことを特徴とする表示装置。」(以下、「引用発明1」という。)

(2)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
まず、引用発明1における「画素」は、本願補正発明の「サブピクセル」に相当する。同様に、引用発明1の「液晶表示素子1」、「データラインDL」、「ゲートラインGL」、及び「TFT1a」は、それぞれ、本願補正発明の「表示パネル」、「データライン」、「スキャンライン」、及び「薄膜トランジスタ」に相当する。
本願補正発明において、「複数の画素の各々」は、「サブピクセル」を含むものであるから、「複数の画素の各々」がデータライン及びスキャンラインの交差部に形成されるということは、すなわち、「サブピクセル」もまた該交差部に形成されるということである。したがって、引用発明1において「複数の画素を有する液晶表示素子1であって、前記複数の画素の各々は、多数のデータラインDLおよび多数のゲートラインGLとの交差部に形成され」ることと、本願補正発明において「複数の画素を有する表示パネルであって、前記複数の画素の各々は、多数のデータラインおよび多数のスキャンラインとの交差部に形成され」ることとは、共に「複数のサブピクセルを有する表示パネルであって、前記複数のサブピクセルの各々は、多数のデータラインおよび多数のスキャンラインとの交差部に形成され」る点で共通する。
また、引用発明1の「奇数ドライバ2oと偶数ドライバ2e」は、本願補正発明の「第1及び第2スキャンドライバ」に相当し、同様に、引用発明1の「複数の段RS1o(i)」及び「複数の段RS1e(i)」、は、本願補正発明の「複数の回路段」に相当する。
さらに、引用発明1の「ハイレベルの選択信号」は、本願補正発明の「スキャン信号」に相当する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「複数のサブピクセルを有する表示パネルであって、前記複数のサブピクセルの各々は、多数のデータラインおよび多数のスキャンラインとの交差部に形成され、前記交差部に形成された複数の薄膜トランジスタを含む、表示パネルと、
前記複数のスキャンラインを駆動するための、前記表示パネルの両端側に置かれた第1及び第2スキャンドライバと、
前記複数のデータラインを駆動するためのデータドライバとを含み、
前記第1スキャンドライバは、複数の回路段を備え、前記第2スキャンドライバは、複数の回路段を備え、
前記第1スキャンドライバの回路段の各々は、各スキャンラインを通じて、前記第2スキャンドライバの回路段の各々に接続され、
前記複数の薄膜トランジスタは、奇数番目のスキャンラインと接続される前記サブピクセルの第1薄膜トランジスタ、及び偶数番目のスキャンラインと接続される前記サブピクセルの第2薄膜トランジスタを含み、
前記第1スキャンドライバの回路段の一つから発生したスキャン信号は、一つの対応するスキャンライン上に配置されたサブピクセルと、前記第2スキャンドライバの回路段とに供給され、
前記第2スキャンドライバの回路段は、前記スキャン信号に応じて、該スキャン信号とは別のスキャン信号を発生し
前記第1スキャンドライバは奇数番目の回路段を含み、前記第2スキャンドライバは偶数番目の回路段を含み、
前記第1スキャンドライバの出力信号に応答して、前記奇数番目のスキャンラインに接続された前記サブピクセルの薄膜トランジスタはターンオン/オフされ、前記第1スキャンドライバの出力信号は前記第2スキャンドライバの入力信号として使用され、
前記第2スキャンドライバの出力信号に応答して、前記偶数番目のスキャンラインに接続された前記サブピクセルの薄膜トランジスタはターンオン/オフされ、前記第2スキャンドライバの出力信号は前記第1スキャンドライバの入力信号として使用される、ことを特徴とする表示装置。」

(相違点)
相違点1:本願補正発明においては、「縦方向に配列されたR、G、及びBの各サブピクセル」を含む画素が形成されているのに対し、引用発明1においては複数のピクセル(画素)によって画素が形成されているのか否かが不明である点。

相違点2:本願補正発明においては、スキャンドライバの「各回路段の高さは、前記縦方向に隣接する2つのサブピクセルの高さに等し」いのに対し、引用発明1においては回路段(段)の高さとピクセル(画素)の高さとの関係が不明である点。

(3)判断
ア 相違点1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-45072号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項(a)ないし(d)が記載されている。

(a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は複数の基本色、例えば、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)を組み合わせて1つの色を表示するマトリクス駆動の表示装置およびその駆動方法に関する。」

(b)
「【0007】ここで前記ドライバの消費電力は、以下に記載する如くソースドライバSdの方がゲートドライバGdより大きいとされている。
・・・
また、ソースドライバの方がゲートドライバよりも一般に単価において倍程度高価であることも知られている。
【0008】
・・・以上の背景から、更なる大画面化、高階調化が進められている液晶表示装置の低コスト化、低消費電力化を図るためには、これらの高価格なドライバの必要数を少なくすることが望まれている。・・・」

(c)
「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決するために、多数の走査線と多数の信号線とによって多数の画素がマトリクス駆動されるとともに、前記各信号線方向に沿って複数の基本色の組み合わせが繰り返し配列され、前記走査線の数が前記信号線に沿って並ぶ全画素の数とされ、前記信号線に沿って配列された基本色の順番が前記信号線に沿って繰り返し同じ順番とされ、前記走査線に沿って同じ基本色が配列されてなるとともに、ソースドライバから各一走査線当たりの各信号線に送られる信号を順次ソースドライバに送る信号入力手段を有することを特徴とする。」

(d)
「【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明を薄膜トランジスタ駆動方式の液晶表示装置に適用した一形態を示すもので、この形態において2枚の透明基板間に液晶が封入されて液晶表示装置10が構成され、この液晶表示装置10の透明基板の上縁部にソースドライバSdが3個(Sd1?Sd3)、液晶表示装置10の透明基板の左側部と右側部にそれぞれ3個、合計6個のゲートドライバGd(Gd1?Gd6)が設けられている。次に、前記液晶表示装置10を構成する2枚の透明基板のうち、一方の基板には共通電極とカラーフィルタが設けられ、他方の透明基板には薄膜トランジスタ回路が構成されている。その回路構成のうちの1絵素に相当する部分を図2に拡大して示す。この形態における1つの絵素12は、2本の縦列の信号線S1、S2と4本の横列の走査線G1、G2、G3、G4によって区画された領域で構成されている。そして、信号線S1、S2、と走査線G1、G2とにより囲まれた領域に1つの画素電極11が設けられてこの領域が1つの画素とされ、信号線S1、S2、と走査線G2、G3とにより囲まれた領域に1つの画素電極11が設けられてこの領域が1つの画素とされ、信号線S1、S2、と走査線G3、G4とにより囲まれた領域に1つの画素電極11が設けられてこの領域が1つの画素とされ、これら3つの画素によって1つの絵素12が構成されるとともに、各画素電極11の側部側にそれぞれスイッチ素子としての薄膜トランジスタTが構成されている。
【0015】また、前記画素電極11が構成された透明基板に対向する他の基板にはカラーフィルタが設けられるが、この形態においては図2に示す1つの絵素のうち、上段の画素電極11に対向する位置に図3に示すようにRのカラーフィルタが、中段の画素電極11に対向する位置に図3に示すようにGのカラーフィルタが、下段の画素電極11に対向する位置に図3に示すようにBのカラーフィルタがそれぞれ配置される。また、他の複数の絵素も含めたカラーフィルタのRGBの配置関係を図3に示すが、この形態においては、各信号線Sの長さ方向(図3の上下方向)に沿ってRGB、RGBの色の順序でカラーフィルタが配列され、走査線G1の方向にはR、走査線G2の方向にはG、信号線G3の方向にはB、走査線G4の方向にはR、走査線G5の方向にはG、走査線G6の方向にはBの順にそれぞれカラーフィルタが配置され、以下、その他のカラーフィルタも同様な順序で配置されている。」

上記記載(a)ないし(d)及び図面の図1ないし3の記載から、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。

「表示装置の低コスト化、低消費電力化を図るため、縦列の信号線S(データライン)の長さ方向に沿ってRGBの色の順序で画素を配列することにより、ソースドライバの必要数を少なくした表示装置。」(以下、「引用発明2」という。)

引用発明2の、低コスト化及び低消費電力化という課題は、引用発明1においても共通であることは明らかであるから、引用発明2を引用発明1に採用して相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。またそのことにより、当業者の予想し得ない特段の効果を奏するものとも認められない。

イ 相違点2について
いわゆるフラットパネル型の表示装置一般において、スキャンドライバ等の周辺回路の専有面積や幅を小さくすべきという課題は技術常識である。
具体的には、例えば、原審において周知例として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-202295号公報(以下、「周知例」という。)にも、
「【0007】一般に、走査線駆動回路のシフトレジスタを構成する夫々の信号転送部及び出力信号生成部は、隣り合う走査線間の距離、すなわち走査線の繰り返しパターン配列距離(以下、配列ピッチと称す。)内に形成されることが多い。・・・」
「【0009】従って、前記夫々の信号転送部及び出力信号生成部は、前記走査線またはデータ線の配列ピッチ内に形成する構成が最も好ましい。」
と記載されているように、走査線駆動回路(スキャンドライバ)の各信号転送部(回路段)を、走査線(スキャンライン)の配列ピッチ内に形成するのが好ましいことが知られている。これは、周辺回路のサイズが表示パネル部の幅を越えないように設計するためには当然のことといえる。
そして、前記周知例には、
「【0073】一方、走査線駆動回路104は、走査線31の図8における左側の端部には双方向性シフトレジスタの奇数段のみを、また、図8における右側の端部には偶数段のみを設け、奇数段と偶数段とで交互に走査線31に接続するように構成した。このように、櫛歯状に双方向性シフトレジスタの各段を配置することにより、走査線31に平行な方向の各段の占有領域の幅WVを大きくすることなく、走査線31に垂直な方向の各段の占有領域の幅を2LVまでとることができる。」
とも記載されているように、走査線駆動回路を表示パネルの両側に振り分けて配置した場合に、画素ピッチの2倍までの高さ(縦方向に隣接する2つのサブピクセルの高さ)をとり、それによって走査線に平行な方向の幅を大きくすることなく走査線駆動回路を配置するという技術は周知(以下、「周知技術1」という。)といえる。
引用発明1は、第1スキャンドライバと第2スキャンドライバとを表示パネルの両側に振り分けて配置した表示装置であるから、引用発明1に周知技術1を採用することは、当業者が容易になし得たものである。また、その際にスキャンドライバの回路段の高さを「縦方向に隣接する2つのサブピクセルの高さに等しく」するか、それよりも小さくするかは、必要とされる回路段の専有面積や、許容されるスキャンラインに平行な方向の幅等を勘案して適宜選択されるべき設計事項に過ぎない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 請求人の主張について
審判請求人は、審尋に対する回答書において、以下のような補正案を示しているので、これについて検討する。

(1)補正案(請求項1)
「[請求項1]
複数の画素を有する表示パネルであって、前記複数の画素の各々は、多数のデータラインおよび多数のスキャンラインとの交差部に形成され、縦方向に配列されたR、G、及びBの各サブピクセル、前記交差部に形成された複数の薄膜トランジスタを含む、表示パネルと、
前記複数のスキャンラインを駆動するための、前記表示パネルの両端側に置かれた第1及び第2スキャンドライバと、
前記複数のデータラインを駆動するためのデータドライバとを含み、
前記第1スキャンドライバは、複数の回路段を備え、前記第2スキャンドライバは、複数の回路段を備え、
前記第1スキャンドライバの回路段の各々は、各スキャンラインを通じて、前記第2スキャンドライバの回路段の各々に接続され、
前記複数の薄膜トランジスタは、奇数番目のスキャンラインと接続される前記サブピクセルの第1薄膜トランジスタ、及び偶数番目のスキャンラインと接続される前記サブピクセルの第2薄膜トランジスタを含み、
各回路段の高さは、前記縦方向に隣接する2つのサブピクセルの高さに等しく、
前記第1スキャンドライバの回路段の一つから発生したスキャン信号は、一つの対応するスキャンライン上に配置されたサブピクセルと、前記第2スキャンドライバの回路段とに供給され、
前記第2スキャンドライバの回路段は、前記スキャン信号に応じて、該スキャン信号とは別のスキャン信号を発生し
前記第1スキャンドライバは奇数番目の回路段を含み、前記第2スキャンドライバは偶数番目の回路段を含み、
前記第1スキャンドライバの出力信号に応答して、前記奇数番目のスキャンラインに接続された前記サブピクセルの薄膜トランジスタはターンオン/オフされ、前記第1スキャンドライバの出力信号は前記第2スキャンドライバの入力信号として使用され、
前記第2スキャンドライバの出力信号に応答して、前記偶数番目のスキャンラインに接続された前記サブピクセルの薄膜トランジスタはターンオン/オフされ、前記第2スキャンドライバの出力信号は前記第1スキャンドライバの入力信号として使用され、 前記奇数番目のスキャンラインに接続された前記サブピクセルの薄膜トランジスタは、前記奇数番目のスキャンライン及び前記偶数番目のスキャンラインの間に配置されていない、ことを特徴とする表示装置。」(下線部は変更箇所。)

(2)当審による検討
上記補正案により追加された、
「前記奇数番目のスキャンラインに接続された前記サブピクセルの薄膜トランジスタは、前記奇数番目のスキャンライン及び前記偶数番目のスキャンラインの間に配置されていない」
なる記載は、「前記奇数番目」及び「前記偶数番目」が、多数のスキャンラインのうちのいずれを指すのかが特定されておらず、その構成が不明瞭である。しかしながら、本件出願の図面(図2ないし図4)の内容からみて、上記記載は、
「前記奇数番目のスキャンラインに接続された前記サブピクセルの薄膜トランジスタは、前記接続されたスキャンライン及びその次段のスキャンラインの間に配置されていない」
というもの、すなわち、スキャンラインに接続された薄膜トランジスタは、該スキャンラインの下側(次段方向)に配置されていない、という構成を指すものと推測できるので、以下、そのようなものとして検討する。

薄膜トランジスタの配置(すなわち、サブピクセルの配置)を、接続するスキャンラインの上側とするか下側とするかは、当業者が適宜選択すべき設計事項に過ぎない。(必要であれば、上記周知例の図1,8等を参照のこと。)
スキャンラインの上側への配置により、当業者の予想し得ない特段の効果を奏するものとも認められない。

したがって、補正案の請求項1に係る発明も、引用発明1、引用発明2及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。また、補正案の請求項10に係る発明に関しても同様である。

4 まとめ
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。(補正2及び補正3は原審において既に却下されている。)
「複数の画素を有する表示パネルであって、前記複数の画素の各々は、多数のデータラインおよび多数のスキャンラインとの交差部に形成され、縦方向に配列されたR、G、及びBの各サブピクセル、前記交差部に形成された複数の薄膜トランジスタを含む、表示パネルと、
前記複数のスキャンラインを駆動するための、前記表示パネルの両端側に置かれた第1及び第2スキャンドライバと、
前記複数のデータラインを駆動するためのデータドライバとを含み、
前記第1スキャンドライバは、複数の回路段を備え、前記第2スキャンドライバは、複数の回路段を備え、
前記第1スキャンドライバの回路段の各々は、各スキャンラインを通じて、前記第2スキャンドライバの回路段の各々に接続され、
前記複数の薄膜トランジスタは、奇数番目のスキャンラインと接続される前記サブピクセルの第1薄膜トランジスタ、及び偶数番目のスキャンラインと接続される前記サブピクセルの第2薄膜トランジスタを含み、
各回路段の高さは、前記縦方向に隣接する2つのサブピクセルの高さに等しい表示装置。」(以下「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由2は、本願発明は、その優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-347628号公報(引用例1)及び特開平11-45072号公報(引用例2)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用例1記載の事項
引用例1に記載されている事項は、上記「第2 補正却下の決定 2検討 (1)引用例1記載の事項・引用発明1」に示したとおりである。

4 判断
本願発明は、前記「第2 補正の却下の決定」の「1 補正の内容」で検討した本願補正発明から、スキャンドライバの発生するスキャン信号が、他のスキャンドライバに供給され、入力信号として使用されること等の限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を減縮したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 検討」における「(3)判断」に記載したとおり、引用発明1、引用発明2及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1,2及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-16 
結審通知日 2014-06-17 
審決日 2014-06-24 
出願番号 特願2005-377757(P2005-377757)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 575- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 浩史橋本 直明  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 武田 知晋
中塚 直樹
発明の名称 表示装置およびその駆動方法  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  

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