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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C25D
管理番号 1293610
審判番号 不服2013-6032  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-04 
確定日 2014-11-05 
事件の表示 特願2010-519274号「シリコン貫通ビア(throughsiliconvia)の銅金属被膜」拒絶査定不服審判事件〔平成21年2月5日国際公開、WO2009/018581、平成22年11月18日国内公表、特表2010-535289号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年8月4日(パリ条約による優先権主張 2007年8月2日(US)アメリカ合衆国、2008年6月5日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年8月3日付けで手続補正書が提出され、同年12月15日付けの拒絶理由の通知に対して平成24年6月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月2日付けの拒絶理由の通知に対して同年11月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年11月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年4月4日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで手続補正書が提出され、その後、特許法第164条第3項に基づく報告を引用した同年7月5日付けの審尋の通知に対して、同年10月2日付けで回答書が提出され、同年12月25日付けの当審による拒絶理由の通知に対して平成26年5月1日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年5月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
半導体集積回路デバイス基板に、シリコン貫通ビアを形成するためのシリコンビアホールフィーチャー(silicon via hole feature)を金属被膜する方法であって、前記半導体集積回路デバイス基板は前表面、後表面およびビアホールフィーチャーからなり、前記ビアホールフィーチャーは前記基板の前表面に開口、前記基板の前表面から延びる側壁、および底からなり、前記方法は:
前記半導体集積回路デバイス基板を電解銅堆積組成物に浸漬する工程からなり、前記浸漬する工程において、前記シリコン貫通ビアフィーチャーは5μm?300μmの入口寸法、50μm?250μmの深さ寸法および0.3:1より大なるアスペクト比を有し、
堆積組成物は次を含む:
(a)有機スルホン酸銅である銅イオン源;
(b)有機スルホン酸;
(c)分極化合物から選ばれる1つあるいはそれ以上の有機化合物であって、ビア開口よりもビア底で速い銅堆積を促進する1つあるいはそれ以上の有機化合物であって、(i)ビニルピリジン系化合物、または(ii)ビニルピリジン系化合物および次の一般構造(1)を有する有機硫黄化合物の組合せ:

ここで、
XはO、SあるいはS=Oである;
nは1から6である;
Mは価数を満足するために必要な水素、アルカリ金属あるいはアンモニウムである;
R_(1)は1から8の炭素原子のアルキレンあるいは環状アルキレン基、6から12の炭素原子の芳香族炭化水素あるいは脂肪族芳香族炭化水素である;および
R_(2)は水素、1から8の炭素原子を有するヒドロキシアルキルあるいは、MおよびR_(1)は上記で定義されるMO_(3)SR_(1)からなる群から選ばれ、さらにポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ランダム酸化エチレン/酸化プロピレンコポリマーから任意に選ばれ;
(d)塩素イオン;および
底上げ充填し、それにより銅充填ビアホールフィーチャーを生成するために前記底および前記側壁上に銅金属を堆積するように前記電解堆積組成物に電流を供給することからなる。」

3.引用例に記載された事項
当審による拒絶理由通知において引用された特開2007-146285号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、電解金属メッキ組成物の分野に関係する。詳細には、本発明は、銅電気メッキ組成物の分野に関係する。」

(イ)「【0012】
本明細書全体を通じ、使用されている場合、『フィーチャー』は基体上の形状を表す。『開口』は凹所のフィーチャー、例えばビアおよびトレンチを表す。本明細書全体を通じ、使用されている場合、『メッキ』という用語は、基体への金属堆積を表す。『欠陥』は、例えば突起およびピットなどの金属層の表面欠陥、並びに例えば空隙などの金属層内の欠陥を表す。『広い金属線』は、1μmより広い幅を有する金属線を表す。『層』および『皮膜』という用語は互換可能に使用され、文脈が他を明確に示していない限り、金属堆積物を表す。」 (当審注:当審において、「」内の「」を『』とした。以下同じ。)

(ウ)「【0016】
広範囲にわたる様々な金属電気メッキ浴を本発明とともに使用することができる。金属電気メッキ浴は、典型的には、金属イオンのソース;電解質;および重合単位としてエチレン性不飽和窒素含有ヘテロ環式モノマーを含んだポリマー平滑化剤;を含む。任意に、電気メッキ浴は、一以上の促進剤、抑制剤、ハロゲン化物イオンのソース、結晶微粒化剤およびそれらの混合物を含んでいてよい。また、他の添加剤も本電気メッキ浴において好適に使用することができる。
【0017】
金属イオンの典型的なソースは、電気メッキ浴に可溶性のあらゆる金属化合物である。好適な金属化合物としては、これらに限定するものではないが、無機および有機の金属塩、例えば金属硫酸塩、銅過硫酸塩、金属ハロゲン化物、塩素酸金属塩、過塩素酸金属塩、アルカンスルホン酸金属塩、例えばメタンスルホン酸金属塩など、アルカノールスルホン酸金属塩、アリールスルホン酸金属塩、フルオロホウ酸金属塩、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属クエン酸塩および金属グルコン酸塩が挙げられる。例示的な金属としては、これらに限定されないが、銅、スズ、銀、金、ビスマス、ニッケル、亜鉛、イリジウムおよびアンチモンが挙げられる。一つの実施態様では、金属イオンのソースは銅イオンのソースである。更なる実施態様では、金属イオンのソースは硫酸銅である。同じ金属または異なる金属を含有する金属化合物の混合物も使用することができる。金属の例示的な混合物としては、これらに限定するものではないが、銅-スズ、銅-スズ-ビスマス、スズ-ビスマス、スズ-銅-銀、スズ-銀、および銅-銀が挙げられる。かかる金属化合物の混合物は金属合金の堆積物をもたらす。かかる金属イオンのソースは、一般的に、商業的に入手することができる。
【0018】
これらの金属イオンのソースは、比較的広い濃度範囲において、本電気メッキ浴中で使用することができる。典型的には、金属イオンソースは、メッキ浴中において1g/L?100g/Lの金属イオンの量を提供するのに充分な量で存在する。より典型的には、金属イオンのソースは、メッキ浴中において10g/L?80g/Lの金属イオンを提供する。
【0019】
電解質はアルカリ性であってもよいし、または酸性であってもよく、典型的には酸性である。金属化合物と適合する任意の酸を本発明において使用することができる。好適な酸としては、これらに限定するものではないが:硫酸、酢酸、フルオロホウ酸、硝酸、スルファミン酸、リン酸、ハロゲン化水素酸、例えば塩酸、アルカンスルホン酸およびアリールスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸およびベンゼンスルホン酸、ならびにハロゲン化酸、例えばトリフルオロメチルスルホン酸およびハロ酢酸、例えばトリフルオロ酢酸;が挙げられる。典型的には、酸は、硫酸、アルカンスルホン酸またはアリールスルホン酸である。酸の混合物も使用することができる。一般的に、これらの酸は、電気メッキ浴に導電性を付与するのに充分な量で存在する。本発明の酸性電解質のpHは7未満の値を有しており、典型的には2未満である。例示的なアルカリ性電気メッキ浴は、電解質としてピロリン酸塩を使用するが、他の電解質も使用することができる。当業者であれば、この電解質のpHは、必要な場合、任意の好適な方法により調節され得ることを認識する。
【0020】
本電気メッキ浴で使用される酸性電解質の合計量は、0?200g/Lであってよく、典型的には0?120g/Lであるが、特定の用途では、もっと多量の酸、例えば225g/Lまでなどの量の酸、更には300g/Lもの量の酸を使用することもできる。当業者であれば、金属イオンのソースとして金属硫酸塩、アルカンスルホン酸金属塩またはアリールスルホン酸金属塩を使用することにより、何ら酸を加えることなく、酸性の電解質を得られることを認識する。」

(エ)「【0022】
本発明のポリマー平滑化剤は、重合単位としてエチレン性不飽和窒素含有ヘテロ環式モノマーを含む。このような平滑化剤は、重合単位として架橋剤を更に含んでよい。任意に、平滑化剤は、重合単位として(メタ)アクリレートモノマーを更に含むことができる。一つの更なる実施態様では、本平滑化剤はイオウ含有基を含む。
【0023】
本発明に有用な、エチレン性不飽和窒素含有ヘテロ環式モノマーおよびそれらのチオ類似体としては、これらに限定されないが:ビニルピリジン、例えば2-ビニルピリジンまたは4-ビニルピリジン;低級アルキル(C_(1)-C_(8))置換N-ビニルピリジン、例えば2-メチル5-ビニル-ピリジン、2-エチル-5-ビニルピリジン、3-メチル-5-ビニルピリジン、2,3-ジメチル-5-ビニル-ピリジン、および2-メチル-3-エチル-ビニルピリジン;メチル置換キノリンおよびイソキノリン;N-ビニルカプロラクタム;N-ビニルブチロラクタム;N-ビニルピロリドン;ビニルイミダゾール;N-ビニルカルバゾール;N-ビニル-スクシンイミド;(メタ)アクリロニトリル;o-、m-、またはp-アミノスチレン;マレイミド;N-ビニル-オキサゾリドン;N,N-ジメチルアミノエチル-ビニル-エーテル;エチル-2-シアノアクリレート;ビニルアセトニトリル;N-ビニルフタルイミド;N-ビニル-ピロリドン、例えばN-ビニル-チオ-ピロリドン、3-メチル-1-ビニル-ピロリドン、4-メチル-1-ビニル-ピロリドン、5-メチル-1-ビニル-ピロリドン、3-エチル-1-ビニル-ピロリドン、3-ブチル-1-ビニル-ピロリドン、3,3-ジメチル1-ビニル-ピロリドン、4,5-ジメチル-1-ビニル-ピロリドン、5,5-ジメチル-1-ビニル-ピロリドン、3,3,5-トリメチル-1-ビニル-ピロリドン、4-エチル-1-ビニル-ピロリドン、5-メチル-5-エチル-1-ビニル-ピロリドンおよび3,4,5-トリメチル-1-ビニル-ピロリドンなど;ビニルピロール;ビニルアニリン;ならびにビニルピペリジン;が挙げられる。一つの実施態様では、エチレン性不飽和窒素含有ヘテロ環式モノマーは芳香族である。」

(オ)「【0031】
本発明の平滑化剤はコポリマーまたはホモポリマーであってよく、及びより典型的にはコポリマーである。一般的に、本ポリマー平滑化剤は、重合単位として1重量%?100重量%の窒素含有ヘテロ環式モノマーを含み、より典型的には5重量%?90重量%、より一層典型的には10重量%?75重量%の窒素含有ヘテロ環式モノマーを含む。かかる平滑化剤は、一般的に、重合単位として、窒素含有ヘテロ環式モノマーではない、0?99重量%のモノマーを含む。典型的には、かかる非窒素含有ヘテロ環式モノマーは、平滑化剤における重合単位として10重量%?95重量%の量で存在し、より典型的には25重量%?90重量%の量で存在する。ポリマー平滑化剤の分子量は、典型的には1,000?1,000,000の範囲であり、好適には5,000?500,000、より好適には10,000?100,000の範囲である。これらの材料の多分散性は1?20、好適には1.001?15、より好適には1.001?10の範囲である。」

(カ)「【0041】
広範囲にわたる様々な促進剤を本金属電気メッキ浴で使用することができる。かかる促進剤は、単独で使用されてよく、または2以上の混合物として使用されてもよい。一つの実施態様においては、本電気メッキ浴が銅電気メッキ浴である場合、促進剤は、ジスルフィド含有促進剤である。一般的に、ジスルフィド含有促進剤は、5000以下の分子量、より典型的には1000以下の分子量を有している。スルホン酸基も有するジスルフィド含有促進剤が一般的に好適であり、特に、式R’-S-S-R-SO_(3)X(式中、Rは、任意に置換されたアルキル、場合によって置換されていてもよいヘテロアルキル、場合によって置換されていてもよいアリール基、または場合によって置換されていてもよいヘテロ脂環式基であり;Xは、水素または例えばナトリウムまたはカリウムをはじめとする対イオンであり;並びにR’は、水素または有機残基、例えば式-R-SO_(3)Xの基もしくはもっと大きな化合物の置換基である)の基を含む化合物が好適である。アルキル基は、典型的には1個?16個の炭素を有し、より典型的には1個?12個の炭素を有する。ヘテロアルキル基は、その連鎖に一以上のヘテロ(N、OまたはS)原子を有し、且つ、典型的には1個?16個の炭素、より典型的には1個?12個の炭素を有する。炭素環式アリール基としては、これらに限定するものではないが、フェニルおよびナフチルが挙げられる。ヘテロ芳香族基も好適なアリール基であり、典型的には1個?3個の一以上のN、OおよびS原子および1個?3個の分離または縮合した環を含み、例えばクマリニル、キノリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、オキシジゾリル、トリアゾール、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニルおよびベンゾチアゾールを含む。ヘテロ脂環式基は、典型的には1個?3個の一以上のN、OおよびS原子および1個?3個の分離または縮合した環を有し、例えばテトラヒドロフラニル、チエニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリノおよびピロリンジニルを含む。置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロ脂環式基の置換基としては、例えばC_(1-8)アルコキシ;C_(1-8)アルキル;ハロゲン;シアノ;およびニトロが挙げられる。
【0042】
より詳細には、有用なジスルフィド含有促進剤は以下の式のものを含む:XO_(3)S-R-S-S-R-SO_(3)XおよびXO_(3)S-Ar-S-S-Ar-SO_(3)X(式中、Rは、場合によって置換されていてもよいアルキル基であり、典型的には1個?6個の炭素原子、より典型的には1個?4個の炭素原子を有するアルキル基であり;Arは、場合によって置換されていてもよいアリール基、例えば場合によって置換されていてもよいフェニルまたはナフチルなどであり;およびXは、水素または好適な対イオン、例えばナトリウムまたはカリウムである)。例示的なジスルフィド含有促進剤としては、これらに限定されないが、ビス-スルホプロピルジスルフィドおよびビス-ナトリウム-スルホプロピルジスルフィドが挙げられる。」

(キ)「【0047】
特に有用な抑制剤としては、これらに限定するものではないが:エチレンオキシド/プロピレンオキシド(「EO/PO」)ブロックコポリマーまたはランダムコポリマー;12モルのエチレンオキシド(「EO」)を有するエトキシル化ポリスチレン化フェノール、5モルのEOを有するエトキシル化ブタノール、16モルのEOを有するエトキシル化ブタノール、8モルのEOを有するエトキシル化ブタノール、12モルのEOを有するエトキシル化オクタノール、13モルのEOを有するエトキシル化ベータ-ナフトール、10モルのEOを有するエトキシル化ビスフェノールA、30モルのEOを有するエトキシル化スルフェート化ビスフェノールA、および8モルのEOを有するエトキシル化ビスフェノールA;が挙げられる。」

(ク)「【0052】
一般的に、本金属電気メッキ浴は、使用中、攪拌される。任意の好適な攪拌方法を本発明と共に使用することができ、かかる方法は当技術分野において広く知られている。好適な攪拌方法は、これらに限定するものではないが、空気散布、ワークピース攪拌(work piece agitation)、衝突(impingement)などを含む。本発明が、例えばウェーハをはじめとする集積回路基板をメッキするために使用されるときには、ウェーハを、例えば1分間当たり1回転?250回転(『RPM』)で回転させ、メッキ液を、例えばポンピングまたは吹き掛けすることなどにより、回転しているウェーハと接触させてもよい。あるいは、メッキ浴の流れが所望の金属堆積物をもたらすのに充分であるときには、ウェーハを回転させる必要はない。
【0053】
基体は、基体を本発明の金属メッキ浴と接触させ、その基体上に金属層が堆積する時間の間、電流密度を加えることにより電気メッキされる。基体は、典型的には陰極として機能する。メッキ浴は陽極を含み、この陽極は可溶性であってよく、または不溶性であってもよい。電位は典型的には陰極に加えられる。充分な電流密度が加えられ、基体上に所望の厚みを有する金属層、例えば銅層などを堆積させるのに充分な時間の間、メッキが実行される。電子装置上に銅をメッキする場合、好適な電流密度は、これらに限定するものではないが、1mA/cm^(2)?250mA/cm^(2)の範囲を包含する。典型的には、電流密度は、本発明が集積回路の製造において銅を堆積させるために使用されるときには、1mA/cm^(2)?75mA/cm^(2)の範囲である。堆積させるべき具体的の金属、およびメッキされる具体的の基体、選択される架橋されたポリマー平滑化剤、並びに当業者にとって既知の他の考慮すべき事項に依存して、他の電流密度も有用であり得る。かかる電流密度の選択は、当業者の能力の範囲内である。
【0054】
本発明は、金属層、特に銅層を、様々な基体上に、特に様々なサイズの開口を有する基体上に堆積させるのに有用である。従って、本発明は、金属層、例えば銅層を基体上に堆積させる方法を提供し、この方法は:メッキさせるべき基体を銅メッキ浴を用いて銅と接触させる工程;および、次いで、基体上に銅層を堆積させるのに充分な時間の間、電流密度を加える工程を含み、ここで、銅メッキ浴は、銅イオンのソース、酸性電解質、および重合単位としてエチレン性不飽和窒素含有ヘテロ環式モノマーを含むポリマー平滑化剤を含む。例えば、本発明は、小さな直径のビア、トレンチまたは他の開口を伴う集積回路基板、例えば半導体装置上に銅を堆積させるのに特に好適である。一つの実施態様では、半導体装置が本発明によりメッキされる。かかる半導体装置には、これらに限定するものではないが、集積回路の製造において使用されるウェーハが包含される。
【0055】
金属、特に銅が、本発明により、金属堆積物内に空隙を実質的に形成することなく、開口部に堆積される。『実質的に空隙を形成することなく』という用語は、メッキされた開口部のうちの95%より多くに空隙がないことを意味する。メッキされた開口部には空隙がないことが好適である。」

(ケ)「【0057】
本発明の一つの利点は、オーバープレーティング、特にマウンディングが低減されることである。かかるオーバープレーティングの低減は、特に半導体製造において、続く化学的-機械的研磨プロセス過程で、金属、例えば銅などの除去に費やす時間および労力が少なくて済むことを意味している。本発明の更なる利点は、抑制された局部めっきを実質的に伴うことなく、単一の基体内における広範囲にわたる種々の開口サイズを充填できることである。従って、本発明は、様々な開口サイズ、例えば0.01μm(もしくはそれ以下)から100μmまたはそれ以上などの開口サイズを有する基体内の種々の開口を実質的に充填するのに特に好適である。本平滑化剤は、単一の基体内における広範囲にわたる種々のフィーチャーサイズ(例えば0.18μmおよび2μmのトレンチ)上に、本メッキ浴を用いて水平な金属堆積物をもたらす。例えば、密集した0.18μmのフィーチャー上の1500Å以下のマウンディングおよび2μmの開口上の2000Å以下のディッシングを有する堆積物を本発明により得ることができる。」

(コ)「【0073】
実施例18
硫酸銅(40g/Lの銅イオン)、硫酸(10g/L)、塩酸(50mg/Lの塩化物イオン)、ジスルフィド含有スルホン酸促進剤(10mL/L)、EO/POコポリマー抑制剤(5mL/L)、実施例1から得られた平滑化剤(3mL/L)および水を組み合わせることにより、銅メッキ浴を調製した。促進剤は、スルホン酸基を有し、1000未満の分子量を有するジスルフィド化合物であった。抑制剤は、5,000未満の分子量を有するEO/POコポリマーであった。
【0074】
回転しているウェーハ(200RPM)を25℃において上述のメッキ浴と接触させることにより、開口を有するウェーハ基体上に銅の層を電気メッキした。銅メッキは、直流および以下の3段波形を用いて果たされた:7mA/cm^(2)、続いてフィーチャーに充填するための10mA/cm^(2)、次いで59mA/cm^(2)。銅の堆積後、ウェーハをすすぎ、乾燥させた。銅は約1μm堆積された。次いで、この銅堆積物を二次イオン質量分析法(「SIMS」)により合計不純物レベルについて分析したところ、不純物として酸素、窒素、塩素、イオウおよび炭素を含んでいることが判明した。深さ4000Åにおけるこの銅堆積物中の不純物(C、N、O、S、Cl)の平均量は以下の通りであった:Cl=380ppm;S=80ppm;C=310ppm;N=10ppmおよびO=15ppm。この深さにおける平均不純物の合計量は795ppmであった。最初の1000Åの銅の堆積後における不純物の平均量は、Cl=1ppm、S=1ppm、C=6ppmおよびN=5ppmであり、最初の1000Åの堆積での平均合計不純物レベルは13ppmであった。
【0075】
実施例19?20
使用される平滑化剤の量を増やした点を除き、実施例18の手順を繰り返した。実施例17では4mL/Lの平滑化剤を使用し、実施例18では5mL/Lの平滑化剤を使用した。4000Åにおける不純物の平均量を決定した。その値が以下の表に報告されている。」

(サ)「【0078】
実施例21?26
実施例1から得られた平滑化剤の量を変えた点を除き、実施例18の手順を繰り返した。特定の試料では平滑化剤の混合物が使用された。1μmの銅堆積物中における平均不純物(Cl、S、C、NおよびO)のおおよその合計量を実施例16の手順により決定した。その結果が以下の表に報告されている。『平滑化剤1』は実施例1から得られた平滑化剤である。『平滑化剤2』は、約4000の重量平均分子量を有する、イミダゾールとブタンジオールジグリシジルエーテルとの1:1の反応生成物である。」

(シ)「【0083】
実施例29
40g/Lの銅イオン(硫酸銅から)、10g/Lの硫酸、50ppmの塩化物イオン、10mL/Lのジスルフィド含有スルホン酸促進剤、5mL/LのEO/POコポリマー抑制剤、水、および実施例1、27または28から得られた平滑化剤を含有する銅メッキ浴を調製した。60mA/cm2の電流密度にランピングするDC波形を用いて、ブランケットウェーハに銅をメッキした。銅の堆積後、ウェーハをすすぎ、乾燥させた。銅は約1μmの厚みで堆積された。メッキされた銅皮膜を原子間力顕微鏡を用いて分析し、表面粗さを評価した。これらの結果が以下の表に報告されている。
【0084】
【表6】
・・省略・・
【0085】
これらの銅メッキ浴は、密集した0.18μmの開口部および離れた2.0μmの線を有するウェーハに銅を堆積させるためにも使用された。それぞれの試料において、これらの開口部および線が銅で充填され、実質的に平坦な銅表面が観測された。以下の如く、密集した開口部上に僅かなマウンディングが観測された:試料A:1300Å;試料B:1080Å;および試料C:630Å。以下の如く、離れた広い線上に僅かなディッシングが観測された:試料A:1430Å;試料B:1740Å;および試料C:1960Å。」

4.引用例に記載の発明
(A)上記(イ)の「本明細書全体を通じ、使用されている場合、『フィーチャー』は基体上の形状を表す。『開口』は凹所のフィーチャー、例えばビアおよびトレンチを表す。」(【0012】)及び上記(ク)の「本発明は、金属層、特に銅層を、様々な基体上に、特に様々なサイズの開口を有する基体上に堆積させるのに有用である。従って、本発明は、金属層、例えば銅層を基体上に堆積させる方法を提供し、・・・例えば、本発明は、小さな直径のビア、トレンチまたは他の開口を伴う集積回路基板、例えば半導体装置上に銅を堆積させるのに特に好適である。一つの実施態様では、半導体装置が本発明によりメッキされる。かかる半導体装置には、これらに限定するものではないが、集積回路の製造において使用されるウェーハが包含される。」(【0054】)からして、引用例には、「半導体集積回路基板に、『銅堆積されたウェーハのビアフィーチャー』を形成するためのウェーハのビアフィーチャーを銅堆積する方法」が記載されているということができる。

(B)上記(ウ)の「金属電気メッキ浴は、典型的には、金属イオンのソース;電解質;および重合単位としてエチレン性不飽和窒素含有ヘテロ環式モノマーを含んだポリマー平滑化剤;を含む。任意に、電気メッキ浴は、一以上の促進剤、抑制剤、ハロゲン化物イオンのソース、結晶微粒化剤およびそれらの混合物を含んでいてよい。」(【0016】)及び上記(コ)(サ)(シ)からして、引用例には、「銅塩である銅イオンのソース、電解質(酸)、重合単位としてエチレン性不飽和窒素含有ヘテロ環式モノマーを含んだポリマー平滑化剤、促進剤、EO/POコポリマー抑制剤、ハロゲン化物イオンのソース(塩酸)を含む電気メッキ浴(組成物)を用いる」ことが記載されているということができる。

(C)上記(ク)の「一般的に、本金属電気メッキ浴は、使用中、攪拌される。・・・本発明が、例えばウェーハをはじめとする集積回路基板をメッキするために使用されるときには、ウェーハを、例えば1分間当たり1回転?250回転(『RPM』)で回転させ、メッキ液を、例えばポンピングまたは吹き掛けすることなどにより、回転しているウェーハと接触させてもよい。あるいは、メッキ浴の流れが所望の金属堆積物をもたらすのに充分であるときには、ウェーハを回転させる必要はない。」(【0052】)及び「従って、本発明は、金属層、例えば銅層を基体上に堆積させる方法を提供し、この方法は:メッキさせるべき基体を銅メッキ浴を用いて銅と接触させる工程;および、次いで、基体上に銅層を堆積させるのに充分な時間の間、電流密度を加える工程を含み」(【0054】)からして、引用例には、「銅堆積する方法は、半導体集積回路基板を電気メッキ浴に接触させる工程を含む」ことが記載されているということができる。

(D)上記(エ)からして、引用例には、「平滑化剤として、重合単位としてエチレン性不飽和窒素含有ヘテロ環式モノマーを含んだポリマーのビニルピリジン(有機化合物)を用いる」ことが記載されているということができる。

(E)上記(カ)からして、引用例には、「促進剤として、『XO_(3)S-R-S-S-R-SO_(3)X(式中、Rは1?6の炭素原子を有するアルキル基、Xは水素、ナトリウムまたはカリウム)』(有機化合物)を用いる」ことが記載されているということができる。

上記(ア)ないし(シ)の記載事項及び上記(A)ないし(E)の検討事項より、引用例には、
「半導体集積回路基板に、『銅堆積されたウェーハのビアフィーチャー』を形成するためのウェーハのビアフィーチャーを銅堆積する方法であって、半導体集積回路基板はウェーハのビアフィーチャーを含み、銅堆積する方法は:半導体集積回路基板を電気メッキ浴(組成物)に接触させる工程を含み、接触させる工程において、ウェーハのビアフィーチャーは0.01μm?100μmの開口サイズを有し、電気メッキ浴(組成物)は次を含む:
(a)銅塩である銅イオンのソース;(b)電解質(酸);(c)有機化合物である、重合単位としてエチレン性不飽和窒素含有ヘテロ環式モノマーを含んだポリマー平滑化剤としてのビニルピリジンおよび促進剤としての『XO_(3)S-R-S-S-R-SO_(3)X(式中、Rは1?6の炭素原子を有するアルキル基、Xは水素、ナトリウムまたはカリウム)』の組合せ、さらに抑制剤としてのEO/POランダムコポリマー;(d)塩素イオン;および
『銅堆積されたウェーハのビアフィーチャー』を生成するために銅金属を堆積するように電気メッキ浴(組成物)に電流を供給することからなる。」(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

4.対比・判断
本願発明と引用例記載の発明とを対比する。
○引用例記載の発明の「半導体集積回路基板」、「銅堆積する方法」、「接触させる」、「銅イオンのソース」、「重合単位としてエチレン性不飽和窒素含有ヘテロ環式モノマーを含んだポリマー平滑化剤としてのビニルピリジン」、「X」及び「開口サイズ」は、
本願発明の「半導体集積回路デバイス基板」、「金属被膜する方法」と「方法」、「浸漬させる」、「銅イオン源」、「ビニルピリジン系化合物」、「M」及び「入口寸法」にそれぞれ相当する。

○引用例記載の発明の「ウェーハのビアフィーチャー」は、ウェーハとしてシリコンウェーハを用いることは極めて一般的であることから、「シリコンウェーハのビアフィーチャー」を包含するものであり、これは、本願発明の「シリコンビアホールフィーチャー(silicon via hole feature)」、「ビアホールフィーチャー」及び「シリコン貫通ビアフィーチャー」に相当する。

○引用例記載の発明の「銅堆積されたウェーハのビアフィーチャー」は、本願発明の「シリコン貫通ビア」及び「銅充填ビアホールフィーチャー」に相当する。

○引用例記載の発明の「電気メッキ浴(組成物)」は、本願発明の「電解銅堆積組成物」及び「堆積組成物」に相当する。

○引用例記載の発明の「(d)塩素イオン;および
『銅堆積されたウェーハのビアフィーチャー』(銅充填ビアホールフィーチャー)を生成するために銅金属を堆積する」ことは、ウェーハのビアフィーチャーが開口、側壁、底からなることは当然のことであることから、「(d)塩素イオン;および
『銅堆積されたウェーハのビアフィーチャー』(銅充填ビアホールフィーチャー)を生成するために底および側壁上に銅金属を堆積する」に言い換えることができ、これは、本願発明の「(d)塩素イオン;および
銅充填ビアホールフィーチャーを生成するために底および側壁上に銅金属を堆積する」ことに相当する。

○引用例記載の発明の「半導体集積回路基板(半導体集積回路デバイス基板)はウェーハのビアフィーチャー(ビアホールフィーチャー)を含み」は、基板が前表面、後表面を有すること、及び、ウェーハのビアフィーチャーが開口、側壁、底からなることは当然のことであり、また、開口が設けられる基板の表面を前表面とするならば、「半導体集積回路基板(半導体集積回路デバイス基板)は前表面、後表面およびウェーハのビアフィーチャー(ビアホールフィーチャー)を含み、ウェーハのビアフィーチャー(ビアホールフィーチャー)は基板の前表面に開口、基板の前表面から延びる側壁、および底からなり」に言い換えることができ、
一方、本願発明では、「半導体集積回路デバイス基板は前表面、後表面およびビアホールフィーチャーからなり、ビアホールフィーチャーは基板の前表面に開口、基板の前表面から延びる側壁、および底からなり」と特定されているものの、基板が前表面、後表面およびビアホールフィーチャーのみから形成されているとはいえず、側面も有していることは当然のことであることから、基板は前表面、後表面およびビアホールフィーチャーを有するものであるということができるので、「半導体集積回路デバイス基板は前表面、後表面およびビアホールフィーチャーを含み、ビアホールフィーチャーは基板の前表面に開口、基板の前表面から延びる側壁、および底からなり」に言い換えることができ、
上記より、引用例記載の発明の「半導体集積回路基板(半導体集積回路デバイス基板)はウェーハのビアフィーチャー(ビアホールフィーチャー)を含み」は、本願発明の「半導体集積回路デバイス基板は前表面、後表面およびビアホールフィーチャーからなり、ビアホールフィーチャーは基板の前表面に開口、基板の前表面から延びる側壁、および底からなり」に相当する。

○引用例記載の発明の「銅堆積する方法は:半導体集積回路基板(半導体集積回路デバイス基板)を電気メッキ浴(電解銅堆積組成物)に接触させる(浸漬する)工程を含み」は、接触させる工程以外の工程を含むものであり、
一方、本願発明では、「方法は:
半導体集積回路デバイス基板を電解銅堆積組成物に浸漬する工程からなり」と特定されているものの、銅堆積する方法が浸漬する工程のみで構成されるとはいえず、浸漬以外の工程もあることは当然のことであることから、銅堆積する方法は浸漬する工程以外の工程を有するものであるということができるので、「方法は:半導体集積回路デバイス基板を電解銅堆積組成物に浸漬する工程を含み」に言い換えることができ、
上記より、引用例記載の発明の「銅堆積する方法は:半導体集積回路基板(半導体集積回路デバイス基板)を電気メッキ浴組成物(電解銅堆積組成物)に接触させる(浸漬する)工程を含み」は、本願発明の「方法は:
半導体集積回路デバイス基板を電解銅堆積組成物に浸漬する工程からなり」に相当する。

○引用例記載の発明の「銅塩である銅イオンのソース(銅イオン源)」と、本願発明の「有機スルホン酸銅である銅イオン源」とは、「銅塩である銅イオン源」という点で重複する。

○引用例記載の発明の「電解質(酸)」と、本願発明の「有機スルホン酸」とは、「酸」という点で共通する。

○引用例記載の発明の「ウェーハのビアフィーチャー(シリコン貫通ビアフィーチャー)は0.01μm?100μmの開口サイズ(入口寸法)を有し」と、本願発明の「シリコン貫通ビアフィーチャーは5μm?300μmの入口寸法、50μm?250μmの深さ寸法および0.3:1より大なるアスペクト比を有し」とは、「シリコン貫通ビアフィーチャーは5μm?100μmの入口寸法を有し」という点で重複している。

○引用例記載の発明の「有機化合物である、重合単位としてエチレン性不飽和窒素含有ヘテロ環式モノマーを含んだポリマー平滑化剤としてのビニルピリジン(ビニルピリジン系化合物)および促進剤としての『XO_(3)S-R-S-S-R-SO_(3)X(式中、Rは1?6の炭素原子を有するアルキル基、Xは水素、ナトリウムまたはカリウム)』の組合せ、さらに抑制剤としてのEO/POランダムコポリマー」と、本願発明の「分極化合物から選ばれる1つあるいはそれ以上の有機化合物であって、ビア開口よりもビア底で速い銅堆積を促進する1つあるいはそれ以上の有機化合物であって、(i)ビニルピリジン系化合物、または(ii)ビニルピリジン系化合物および次の一般構造(1)を有する有機硫黄化合物の組合せ:

ここで、
XはO、SあるいはS=Oである;
nは1から6である;
Mは価数を満足するために必要な水素、アルカリ金属あるいはアンモニウムである;
R_(1)は1から8の炭素原子のアルキレンあるいは環状アルキレン基、6から12の炭素原子の芳香族炭化水素あるいは脂肪族芳香族炭化水素である;および
R_(2)は水素、1から8の炭素原子を有するヒドロキシアルキルあるいは、MおよびR_(1)は上記で定義されるMO_(3)SR_(1)からなる群から選ばれ、さらにポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ランダム酸化エチレン/酸化プロピレンコポリマーから任意に選ばれ;」とは、「分極化合物から選ばれる有機化合物である、ビニルピリジン系化合物および『MO_(3)S-R-S-S-R-SO_(3)M(式中、Rは1?6の炭素原子を有するアルキレン、Mは水素、アルカリ金属(ナトリウムまたはカリウム))』の組合せ、さらにランダム酸化エチレン/酸化プロピレンコポリマー」という点で重複している。

したがって、本願発明と引用例記載の発明とは、
「半導体集積回路デバイス基板に、シリコン貫通ビアを形成するためのシリコンビアホールフィーチャー(silicon via hole feature)を金属被膜する方法であって、前記半導体集積回路デバイス基板は前表面、後表面およびビアホールフィーチャーからなり、前記ビアホールフィーチャーは前記基板の前表面に開口、前記基板の前表面から延びる側壁、および底からなり、前記方法は:前記半導体集積回路デバイス基板を電解銅堆積組成物に浸漬する工程からなり、前記浸漬する工程において、前記シリコン貫通ビアフィーチャーは5μm?100μmの入口寸法を有し、堆積組成物は次を含む:
(a)銅塩である銅イオン源;(b)酸;(c)分極化合物から選ばれる有機化合物である、ビニルピリジン系化合物および『MO_(3)S-R-S-S-R-SO_(3)M(式中、Rは1?6の炭素原子を有するアルキレン、Mは水素、アルカリ金属(ナトリウムまたはカリウム))』の組合せ、さらにランダム酸化エチレン/酸化プロピレンコポリマー;(d)塩素イオン;および
銅充填ビアホールフィーチャーを生成するために前記底および前記側壁上に銅金属を堆積するように前記電解堆積組成物に電流を供給することからなる。」という点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本願発明では、「(a)有機スルホン酸銅であるである銅イオン源;
(b)有機スルホン酸;」を含む堆積組成物であるのに対して、引用例記載の発明では、「(a)銅塩である銅イオンのソース(銅イオン源);(b)電解質(酸);」を含む電気メッキ浴(堆積組成物)である点。

<相違点2>
本願発明では、「ビア開口よりもビア底で速い銅堆積を促進する」ことで「底上げ充填し、それにより」銅充填ビアホールフィーチャーを生成するのに対して、引用例記載の発明では、銅堆積されたウェハーのビアフィーチャー(銅充填ビアホールフィーチャー)を生成するものの、上記「」内の事項を構成にするかどうか明らかでない点。

<相違点3>
本願発明では、シリコン貫通ビアホールフィーチャーは5μm?300μmの入口寸法「、50μm?250μmの深さ寸法および0.3:1より大なるアスペクト比」を有するのに対して、引用例記載の発明では、ウェハーのビアフィーチャー(シリコン貫通ビアホールフィーチャー)は0.01μm?100μm(5μm?100μm)の開口サイズ(入口寸法)を有するものの、上記「」内の事項を構成にするかどうか明らかでない点。

上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
一般に、ビアフィーチャーを銅充填(堆積)するために、「有機スルホン酸銅(銅塩である銅イオンのソース)と有機スルホン酸(酸)」を含む電気メッキ浴(堆積組成物)を用いることは、従来周知(例えば、特開2001-115294号公報の特に【請求項1】参照)の技術であり、また、引用例の上記(ウ)の「金属イオンの典型的なソースは、電気メッキ浴に可溶性のあらゆる金属化合物である。好適な金属化合物としては、これらに限定するものではないが、・・・アルカンスルホン酸金属塩、例えばメタンスルホン酸金属塩など・・・が挙げられる。例示的な金属としては、これらに限定されないが、銅、スズ、銀、金、ビスマス、ニッケル、亜鉛、イリジウムおよびアンチモンが挙げられる。一つの実施態様では、金属イオンのソースは銅イオンのソースである。」(【0017】)、同「電解質はアルカリ性であってもよいし、または酸性であってもよく、典型的には酸性である。金属化合物と適合する任意の酸を本発明において使用することができる。好適な酸としては、これらに限定するものではないが:硫酸・・・ハロゲン化水素酸、例えば塩酸、アルカンスルホン酸およびアリールスルホン酸、例えばメタンスルホン酸・・・が挙げられる。典型的には、酸は、硫酸、アルカンスルホン酸またはアリールスルホン酸である。」(【0019】)及び上記(コ)(サ)(シ)からして、引用例には、「銅塩である銅イオンのソース(銅イオン源)として、アルカンスルホン酸銅(有機スルホン酸銅)を用いる」こと、「電解質(酸)として、アルカンスルホン酸(有機スルホン酸)を用いる」こと、及び、「銅塩である銅イオンのソースの酸と電解質(酸)とを同じものにする」こと、つまり、ウェーハのビアフィーチャーを銅堆積するために、「有機スルホン酸銅である銅イオンのソース(銅イオン源);有機スルホン酸;」を含む電気メッキ浴(堆積組成物)を一例として用いることの記載があるということができ、ここで、引用例記載の発明と、上記周知の技術及び引用例記載の事項とは、ビアフィーチャーを銅堆積するために、「銅塩である銅イオンのソースと酸」を含む電気メッキ浴(堆積組成物)を用いるという点で共通していることから、引用例記載の発明の、「(a)銅塩である銅イオンのソース;(b)電解質(酸);」を含む電気メッキ浴(堆積組成物)について、上記の点で共通する、上記周知の技術及び引用例記載の事項を適用することで、「(a)有機スルホン酸銅であるである銅イオンのソース(銅イオン源);(b)有機スルホン酸;」を含む電気メッキ浴(堆積組成物)とすることは、当業者であれば容易に想起し得ることである。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の技術事項を採用することは、引用例記載の発明、周知の技術及び引用例記載の事項に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

<相違点2>及び<相違点3>について
引用例記載の発明は、上記(ク)の「金属、特に銅が、本発明により、金属堆積物内に空隙を実質的に形成することなく、開口部に堆積される。『実質的に空隙を形成することなく』という用語は、メッキされた開口部のうちの95%より多くに空隙がないことを意味する。メッキされた開口部には空隙がないことが好適である。」(【0055】)等からして、空隙(空孔)のないウェハーのビアフィーチャーの銅堆積(充填)が達成されるものであるということができる。
ここで、一般に、ビア底の銅堆積速度を側壁の銅堆積速度より速くする(底上げ充填する)ことで、空隙(空孔)のないビアフィーチャーの銅堆積(充填)を達成し得ることは、従来周知(例えば、特開2007-84891号公報の特に【0022】、特開2006-57177号公報の特に【0019】参照)の技術であり、また、ビアフィーチャーを銅充填(堆積)するとき、入口寸法が大きく且つアスペクト比(深さ寸法/入口寸法)が小さいとボイド(空隙)が発生しにくいことも従来周知(例えば、特開2007-138265号公報の特に【0004】、特開2006-57177号公報の特に【0020】参照)の技術であり、さらに、ビアフィーチャーを銅充填(堆積)するとき、0.1:1?4:1のアスペクト比を「低いアスペクト比」とみることも従来周知(例えば、特開2004-250791号公報の特に【00013】ないし【0016】参照)の技術であって、引用例記載の発明と上記周知の技術とは、ビアフィーチャーを銅充填(堆積)するものである点で共通することから、引用例記載の発明について、上記「空隙(空孔)のないウェハーのビアフィーチャーの銅堆積(充填)が達成される」ようにするために、上記の点で共通する上記周知の技術を適用することで、ウェーハのビアフィーチャ(シリコン貫通ビアホールフィーチャー)を、開口サイズ(入口寸法)が大きく且つアスペクト比が小さい(0.1:1?4:1)ものにすると共に「ビア開口よりもビア底で速い銅堆積を促進する」ことで「底上げ充填し、それにより」銅堆積されたウェーハのビアフィーチャー(銅充填ビアホールフィーチャー)を生成しようとすることは、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて当業者であれば容易になし得ることである。
そして、10μm?100μmが大きい入口寸法に当たることは、当業者における技術常識であることから、引用例記載の発明の「0.01μm?100μmの開口サイズ(入口寸法)」が大きい開口サイズ(入口寸法)である10μm?100μmのとき、底上げ充填を達成する「10μm?100μm内の何れかの開口サイズ(入口寸法)」と「0.1:1?4:1内の何れかのアスペクト比」との組合わせを見いだすことは、当業者であれば適宜決定する設計事項であり、特に、「10μm?100μm内において大きい範疇の例えば50μm?100μmの開口サイズ(入口寸法)、0.1:1?4:1内において小さい範疇の例えば1:1?1.5:1のアスペクト比(50μm?150μmの深さ寸法)」を有するウェーハのビアフィーチャ(シリコン貫通ビアホールフィーチャ)であるとき、底上げ充填になっているとみるべきである。
したがって、上記相違点2、3に係る本願発明の技術事項を採用することは、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明の「ビア開口よりもビア底で速い銅堆積を促進する」等の作用効果については、引用例記載の発明、周知の技術及び引用例記載の事項に基いて当業者であれば十分に予測し得るものである。

なお、請求人は、平成26年5月1日付けの意見書において、「引用例において具体的に示されている入口寸法の数値が130nm、1.8μm、2.0μmであることから、引用例記載の発明の『0.01μm?100μmの開口サイズ(入口寸法)』は、5μm?100μmの入口寸法を想定するものではない旨」の主張をしていることから、以下、これについて検討する。
上記で示したように、ビアホールフィーチャーを銅充填(堆積)するとき、入口寸法が大きく且つアスペクト比(深さ寸法/入口寸法)が小さいとボイド(空隙)が発生しにくいことは周知の技術であり、これは、小さい入口寸法でボイド(空隙)が発生しなければ、大きい入口寸法の実例を提示するまでもなく大きい入口寸法においてもボイド(空隙)が発生しないことを示すものであるということができ、引用例記載の発明と上記周知の技術とは、ビアフィーチャーを銅充填(堆積)するものである点で共通していることから、引用例記載の発明は、上記周知の技術と同じく、小さい入口寸法でボイド(空隙)が発生しなければ、大きい入口寸法の実例を提示するまでもなく大きい入口寸法においてもボイド(空隙)が発生しないものであるとみるのが妥当であり、また、引用例の上記(ク)の「本発明の更なる利点は、抑制された局部めっきを実質的に伴うことなく、単一の基体内における広範囲にわたる種々の開口サイズを充填できることである。従って、本発明は、様々な開口サイズ、例えば0.01μm(もしくはそれ以下)から100μmまたはそれ以上などの開口サイズを有する基体内の種々の開口を実質的に充填するのに特に好適である。」(【0057】)からして、「0.01μm?100μmの開口サイズ(入口寸法)」は、充填するのに好適な範囲として示されたものであることから、引用例記載の発明は、「0.01μm?100μmの開口サイズ(入口寸法)」の下限領域の130nm(0.13μm)、1.8μm、2.0μmにおいて空隙が発生しないことをもって、?100μmにおいても空隙が発生しないことを示すものである(5μm?100μmの入口寸法を想定するものである)とみるのが妥当であるので、請求人の上記主張を採用することはできない。

よって、本願発明は、引用例記載の発明、周知の技術及び引用例記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
本願発明は、引用例記載の発明、周知の技術及び引用例記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし19に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-03 
結審通知日 2014-06-10 
審決日 2014-06-25 
出願番号 特願2010-519274(P2010-519274)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀧口 博史  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 鈴木 正紀
豊永 茂弘
発明の名称 シリコン貫通ビア(throughsiliconvia)の銅金属被膜  
代理人 秋元 輝雄  

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