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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1293627
審判番号 不服2013-15750  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-14 
確定日 2014-11-05 
事件の表示 特願2010-168056「データ記憶システムのための記録ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月17日出願公開、特開2011- 34662〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成22年7月27日(パリ条約に基づく優先権主張 平成21年7月29日 米国(US))の出願であって、平成22年12月21日付けで手続補正がなされ、平成24年8月20日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年10月3日付けで手続補正がなされたが、平成25年4月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月14日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされた。
その後、当審がした平成25年11月12日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成26年4月17日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年4月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
データ記憶システムのための記録ヘッドであって、前記記録ヘッドは、
書込磁極と、
バンパーと、
誘電体層と、
記録媒体に面する表面とを備え、
前記記録媒体に面する表面の少なくとも一部分は、前記書込磁極の一部分、前記バンパーの一部分、および前記誘電体層の一部分を含み、
前記書込磁極、前記バンパーおよび前記誘電体層の各々は、ある研磨速度を有する材料からなり、
前記バンパーは、前記誘電体層の材料の研磨速度よりも前記書込磁極の材料の研磨速度に近い研磨速度を有する材料からなり、
前記書込磁極は、前記記録媒体に面する表面において予想される研磨方向に少なくとも部分的に基づいて、前記記録媒体に面する表面における前記バンパーに対して位置づけられる、記録ヘッド。」

3.引用列
これに対して、当審が通知した拒絶の理由に引用された特開2008-123654号公報(以下、「引用例」という。)には、「薄膜磁気ヘッド」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
(1)「【請求項1】
浮上面を有する基板と、該基板の素子形成面に設けられた読み出しヘッド素子及び書き込みヘッド素子と、該基板の素子形成面に設けられており、浮上面側のスライダ端面に自身の端が達した少なくとも1つの突出調整部と、浮上面側のスライダ端面側から見て、該少なくとも1つの突出調整部の後方の位置に設けられた少なくとも1つの発熱部とを備えていることを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
・・・・・(中 略)・・・・・
【請求項4】
前記少なくとも1つの突出調整部が、金属材料からなる層であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。
・・・・・(中 略)・・・・・
【請求項6】
前記書き込みヘッド素子が、垂直磁気記録用であって、前記読み出しヘッド素子の側に主磁極層を備えており、前記少なくとも1つの突出調整部が、該主磁極層と該読み出しヘッド素子との間に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。」

(2)「【請求項18】
基板の素子形成面に、読み出しヘッド素子と、書き込みヘッド素子と、該読み出しヘッド素子及び該書き込みヘッド素子の間に位置する発熱部と、該読み出しヘッド素子及び該書き込みヘッド素子の間であって少なくとも媒体対向面となる研磨面に露出する位置にある突出調整部とを備えた発熱ヘッド素子を複数形成し、
前記発熱ヘッド素子の形成時に又はその後に、前記読み出しヘッド素子と、前記書き込みヘッド素子と、前記発熱部と、前記突出調整部とを覆う被覆部を形成し、
前記発熱ヘッド素子及び前記被覆部が形成された基板を切断して、前記発熱ヘッド素子を少なくとも1つ含む加工バー又はスライダを分離し、
前記加工バー又は前記スライダにおいて、前記読み出しヘッド素子の端部と前記書き込みヘッド素子の端部と前記突出調整部と前記被覆部とが露出した切断面に対して、該突出調整部の研磨レートが該被覆部の研磨レートよりも小さくなる研磨を行い、該突出調整部の端部分が突出した媒体対向面を形成することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項19】
前記突出調整部として金属材料からなる層を用い、前記被覆部として酸化物又は窒化物絶縁材料を用い、前記研磨として化学的機械的研磨を用いることを特徴とする請求項18に記載の製造方法。」

(3)「【0049】
同じく図2において、薄膜磁気ヘッド21は、適切な浮上量を得るように加工された浮上面(ABS)2100を有するスライダ基板210と、ABS2100を底面とした際の1つの側面に相当する素子形成面2101に設けられた磁気ヘッド素子32と、同じく素子形成面2101に設けられた浮上量調整素子としての発熱部35と、発熱部35の発熱による突出を調整するための突出調整部36と、磁気ヘッド素子32、発熱部35及び突出調整部36を、それぞれ及び全体として覆うように素子形成面2101上に設けられた被覆部38と、被覆部38の層面から露出しているそれぞれ2つの信号端子電極50及び51と、同じく被覆部38の層面から露出している2つの駆動端子電極52とを備えている。
【0050】
ここで、磁気ヘッド素子32は、データ信号の読み出し用の読み出しヘッド素子であるMR効果素子33と、データ信号の書き込み用の書き込みヘッド素子である励磁コイル素子34とから構成されており、信号端子電極50及び51は、これらMR効果素子33及び励磁コイル素子34にそれぞれ電気的に接続されている。また、駆動端子電極52は、発熱部35に電気的に接続されている。
【0051】
MR効果素子33及び励磁コイル素子34においては、各素子の一端がABS2100側のスライダ端面211に達している。ここでスライダ端面211は、薄膜磁気ヘッド21の磁気ディスクに対向する媒体対向面のうちABS2100以外の面であって主に被覆部38の端面からなる面である。これらの素子の一端が磁気ディスクと対向することによって、信号磁界の感受によるデータ信号の読み出しと信号磁界の印加によるデータ信号の書き込みとが行われる。なお、スライダ端面211に達した各素子の一端及びその近傍には、保護のために極めて薄いダイヤモンドライクカーボン(DLC)等のコーティングが施されている。」

(4)「【0072】
突出調整部36は、例えば、スパッタリング法等を用いて形成された厚さ0.5?5μm程度の、Cu、Al、Ru、Ti、Rh、W、Si、Au若しくはこれらのうちの複数の元素からなる合金等の非磁性金属膜、又はNiFe(パーマロイ等)、CoFeNi、CoFe、FeN若しくはFeZrN等の磁性金属膜から構成される。なお、突出調整部36の構成材料を選択することによって、後述するMRハイト加工の際に突出調整部36がリセスする度合いを決定することができる。これにより、スライダ端面211の突出プロファイルを調整することが可能となる。また、被覆部38は、例えば、スパッタリング法、CVD等を用いて形成された、Al_(2)O_(3)(アルミナ)、SiO_(2)若しくはSiO等の酸化物絶縁材料、又はAlN、SiN若しくはSiC等の窒化物絶縁材料等から構成される。
【0073】
図3(C)によれば、突出調整部36は、端面が逆台形形状である主磁極層341(主磁極主要層3410)と素子間シールド層37との間に位置しており、下部シールド層330、上部シールド層334、素子間シールド層37及びトレーリングシールド部3450と同様に、トラック幅方向に伸張した層となっている。ここで、突出調整部36のトラック幅方向の幅は、発熱部35の発熱によって突出するトラック幅方向の幅を規定するが、例えば、5μm?150μm程度である。」

(5)「【0081】
ここで、発熱部35が発熱する前のスライダ端面211のプロファイルにおいて、高低が生じている理由を説明する。ヘッドの製造において、後に詳述するように、ABS加工の際、スライダ端面もABSと同様に研磨されて形成されるが、構成材料の研磨レートの差によって、スライダ端面がABSよりも若干リセスする。このリセスの程度が、スライダ端面211に露出している各層の構成材料によっても変化する。具体的には、例えば、金属材料から構成されている磁極層やシールド層の端位置はその周りの絶縁層の端に比べてリセスの程度が小さくなる。その結果、発熱前においてすでに、図4(A)のような高低を有するスライダ端面のプロファイルが生じることになる。
【0082】
これに対して、図4(B)に示す本発明による垂直磁気記録用のヘッドにおいては、発熱部35が発熱する前のスライダ端面211において、突出調整部36端の位置が、主磁極層341端の位置と同程度に突出している(同程度のリセス量である)。さらに、発熱部35が発熱した後においては、むしろ、突出調整部36端の位置が最も突出することになる。これは、スライダ端面211側から見て、突出調整部36の後方に必ず発熱部35が設置されており、スライダ端面211の位置において、突出調整部36が、発熱部35からの熱の影響を最も強く受けるためである。」

(6)「【0118】
図9は、本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートである。また、図10(A)?(F)は、本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法における機械加工工程を説明するための概略図である。なお、以下、図3に示した長手磁気記録用のヘッドの製造方法について説明するが、図6に示した垂直磁気記録用のヘッドの場合についても同様のステップで製造される。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0122】
次いで、図9によれば、ウエハ薄膜工程が終了したこのウエハ基板を切断して、加工バーを切り出す(ステップS6)。具体的には、図10(A)のスライダウエハ60を、樹脂等を用いて切断分離用治具に接着して切断し、図10(B)に示すように、複数の発熱ヘッド素子及び端子電極のパターン61が一列に並んだ加工バー62を切り出す。
【0123】
その後、図9によれば、この加工バーにMRハイト加工を施す(ステップS7)。このMRハイト加工においては、MR効果素子33の端部と励磁コイル素子34の端部と突出調整部36と被覆部38とが露出した加工バーの切断面に対して、例えば、化学的機械的研磨(CMP)を行う。具体的には、図10(B)の加工バー62を、樹脂等を用いて研磨用治具に接着し、図10(C)に示すように、この加工バー62のABS側となる端面620に、MR効果素子33のMR高さ(MRハイト)、すなわちABSに垂直な方向での長さを決定する研磨工程としてのCMPを施す。このMRハイト加工は、最終的に、磁気ヘッド素子32及び突出調整部36がスライダ端面211に露出して、MR効果素子33のMR積層体332が所定のMRハイトになるまで行われる。
【0124】
この際、突出調整部36として上述したような金属材料からなる層を用い、被覆部38として上述したような酸化物又は窒化物絶縁材料を用いることによって、突出調整部36のCMPによる研磨レートが、被覆部38のCMPによる研磨レートよりも小さくなるように設定する。なお、一般に、CMPにおいては、金属材料からなる膜の研磨レートは、酸化物又は窒化物絶縁材料からなる膜の研磨レートよりも小さくなることが知られている。これにより、図10(D)に示すように、突出調整部36の端部分が被覆部38の部分よりも突出した(リセスが小さい)スライダ端面211を形成する。なお、形成されたスライダ端面211は、基板(アルチック)の研磨レートがさらに小さいため、形成されたABS2100から全体としてリセスする。これにより、薄膜磁気ヘッドの動作時において、浮上量を低減して書き込み及び読み出し特性の向上を図りつつ、磁気ディスクとの接触又は衝突が突出調整部36の位置において発生するようにすることができる。」

・上記引用例に記載の「薄膜磁気ヘッド」は、上記(1)の【請求項1】、(3)の記載事項、及び図2、図3によれば、浮上面2100を有するスライダ基板210と、スライダ基板210の素子形成面2101に設けられた読み出しヘッド素子(MR効果素子33)及び書き込みヘッド素子(励磁コイル素子34)と、スライダ基板210の素子形成面2101に設けられており、浮上面側のスライダ端面211に自身の端が達した突出調整部36と、浮上面側のスライダ端面側から見て、突出調整部36の後方の位置に設けられた発熱部35と、それらをそれぞれ及び全体として覆うように素子形成面上に設けられた被覆部38とを備えた薄膜磁気ヘッドに関するものである。
・上記(1)の【請求項6】の記載事項、及び図3によれば、書き込みヘッド素子は、垂直磁気記録用であって、読み出しヘッド素子の側に主磁極層341を備え、突出調整部36が、主磁極層341と読み出しヘッド素子との間に設けられてなるものである。
・上記(3)の段落【0051】の記載事項、及び図3によれば、磁気ディスクに対向する媒体対向面であるスライダ端面211は、主に被覆部38の端面からなり、読み出しヘッド素子の一端及び書き込みヘッド素子の主磁極層341を含む一端は、スライダ端面211に達している。
・上記(1)の【請求項4】、(2)の【請求項19】、(4)の記載事項、及び図3によれば、突出調整部36は、Ruなどの金属材料からなる層であり、そのトラック幅方向の幅は、主磁極層341のトラック幅方向の幅よりも広くなるように伸張した層である。
また、被覆部38は、Al_(2)O_(3)(アルミナ)等の酸化物絶縁材料からなる。
・上記(2)の【請求項18】、(6)の記載事項によれば、スライダ端面211は、例えば加工バーの状態において、読み出しヘッド素子の端部と書き込みヘッド素子の端部と突出調整部36と被覆部38とが露出した切断面に対して研磨加工が施されてなるものであり、
その際、上記(2)、(5)、(6)の記載事項、及び図4(B)によれば、金属材料からなる主磁極層341や突出調整部36は、酸化物絶縁材料からなる被覆部38よりも研磨レートが小さいことから、最終的に、主磁極層341の端部分と突出調整部36の端部分は、被覆部38の部分よりも突出した(リセスが小さい)スライダ端面211を形成し、発熱部35が発熱する前において、突出調整部36端の位置が、主磁極層341端の位置と同程度に突出してなる(同程度のリセス量である)ものである。

したがって、薄膜磁気ヘッドのうちの「書き込みヘッド素子」に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「浮上面を有する基板と、当該基板の素子形成面に読み出しヘッド素子とともに設けられた垂直磁気記録用の書き込みヘッド素子であって、
前記読み出しヘッド素子の側に設けられた主磁極層と、
前記主磁極層と前記読み出しヘッド素子との間に設けられ、そのトラック幅方向の幅が前記主磁極層のトラック幅方向の幅よりも広くなるように伸張した層であり、Ruなどの金属材料からなる突出調整部と、
前記突出調整部の後方の位置に設けられた発熱部と、
それら各ヘッド素子、突出調整部、発熱部をそれぞれ及び全体として覆うように前記素子形成面上に設けられたAl_(2)O_(3)(アルミナ)等の酸化物絶縁材料からなる被覆部とを備え、
磁気ディスクに対向する媒体対向面であるスライダ端面は、主に前記被覆部の端面からなり、前記読み出しヘッド素子の一端、当該書き込みヘッド素子の前記主磁極層を含む一端、及び前記突出調整部の端は、当該スライダ端面に達しており、
前記スライダ端面は、例えば加工バーの状態において、前記読み出しヘッド素子の端部と当該書き込みヘッド素子の端部と前記突出調整部と前記被覆部とが露出した切断面に対して研磨加工が施されてなるものであり、その際、金属材料からなる前記主磁極層や前記突出調整部は、酸化物絶縁材料からなる前記被覆部よりも研磨レートが小さいことから、最終的に、前記主磁極層の端部分と前記突出調整部の端部分は、前記被覆部の部分よりも突出した(リセスが小さい)前記スライダ端面を形成し、前記発熱部が発熱する前において、前記突出調整部端の位置が、前記主磁極層端の位置と同程度に突出してなる(同程度のリセス量である)、書き込みヘッド素子。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「書き込みヘッド素子」は、本願発明における「記録ヘッド」に相当し、
引用発明における「浮上面を有する基板と、当該基板の素子形成面に読み出しヘッド素子とともに設けられた垂直磁気記録用の書き込みヘッド素子であって」によれば、
書き込みヘッド素子は、データを記録媒体(磁気ディスク)に書き込み記憶したり読み出すためのシステム、つまり磁気記録再生装置に組み込まれるものであることは自明であるから、
本願発明と引用発明とは、「データ記憶システムのための記録ヘッドであって」の点で一致する。

(2)引用発明における「主磁極層」、Al_(2)O_(3)(アルミナ)等の酸化物絶縁材料からなる「被覆部」、磁気ディスクに対向する媒体対向面である「スライダ端面」は、それぞれ本願発明における「書込磁極」、「誘電体層」、「記録媒体に面する表面」に相当し、
引用発明における「前記読み出しヘッド素子の側に設けられた主磁極層と、・・・・、それら各ヘッド素子、突出調整部、発熱部をそれぞれ及び全体として覆うように前記素子形成面上に設けられたAl_(2)O_(3)(アルミナ)等の酸化物絶縁材料からなる被覆部とを備え、磁気ディスクに対向する媒体対向面であるスライダ端面は、主に前記被覆部の端面からなり・・」によれば、
本願発明と引用発明とは、「書込磁極と」を備える点、及び「誘電体層と、記録媒体に面する表面と」を備える点で一致する。

(3)引用発明における「前記主磁極層と前記読み出しヘッド素子との間に設けられ、そのトラック幅方向の幅が前記主磁極層のトラック幅方向の幅よりも広くなるように伸張した層であり、Ruなどの金属材料からなる突出調整部と、・・・・前記スライダ端面は、例えば加工バーの状態において、前記読み出しヘッド素子の端部と当該書き込みヘッド素子の端部と前記突出調整部と前記被覆部とが露出した切断面に対して研磨加工が施されるものであり、その際、金属材料からなる前記主磁極層や前記突出調整部は、酸化物絶縁材料からなる前記被覆部よりも研磨レートが小さいことから、最終的に、前記主磁極層の端部分と前記突出調整部の端部分は、前記被覆部の部分よりも突出した(リセスが小さい)前記スライダ端面を形成し、前記発熱部が発熱する前において、前記突出調整部端の位置が、前記主磁極層端の位置と同程度に突出してなる(同程度のリセス量である)」によれば、
(a)まず、主磁極層、突出調整部、及び被覆部の各々がある研磨速度(研磨レート)を有する材料からなるのは当然のことである。
(b)そして、金属材料からなる主磁極層や突出調整部は、酸化物絶縁材料からなる被覆部よりも研磨レートが小さいことや、最終的に、主磁極層の端部分と突出調整部の端部分は、被覆部の部分よりも突出した(リセスが小さい)スライダ端面を形成し、発熱部が発熱する前において、突出調整部端の位置が、主磁極層端の位置と同程度に突出してなる(同程度のリセス量である)ことからして、引用発明における「突出調整部」は、被覆部の材料の研磨速度(研磨レート)よりも主磁極層の材料の研磨速度(研磨レート)に近い研磨速度(研磨レート)を有する材料からなるといえ、しかもそのトラック幅方向の幅が主磁極層のトラック幅方向の幅よりも広くなるように伸張した層であることも考慮すると、本願発明における「バンパー」に相当するとみることができるものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「バンパーと」を備える点、及び「前記書込磁極、前記バンパーおよび前記誘電体層の各々は、ある研磨速度を有する材料からなり、前記バンパーは、前記誘電体層の材料の研磨速度よりも前記書込磁極の材料の研磨速度に近い研磨速度を有する材料からなる」点で一致するということができる。

(4)引用発明における「磁気ディスクに対向する媒体対向面であるスライダ端面は、主に前記被覆部の端面からなり、前記読み出しヘッド素子の一端、当該書き込みヘッド素子の前記主磁極層を含む一端、及び前記突出調整部の端は、当該スライダ端面に達しており」によれば、
被覆部はもちろん、主磁極層の一部分と突出調整部の一部分もスライダ端面に露出してその面の一部を構成しているといえるから、
本願発明と引用発明とは、「前記記録媒体に面する表面の少なくとも一部分は、前記書込磁極の一部分、前記バンパーの一部分、および前記誘電体層の一部分を含み」の点で一致する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「データ記憶システムのための記録ヘッドであって、前記記録ヘッドは、
書込磁極と、
バンパーと、
誘電体層と、
記録媒体に面する表面とを備え、
前記記録媒体に面する表面の少なくとも一部分は、前記書込磁極の一部分、前記バンパーの一部分、および前記誘電体層の一部分を含み、
前記書込磁極、前記バンパーおよび前記誘電体層の各々は、ある研磨速度を有する材料からなり、
前記バンパーは、前記誘電体層の材料の研磨速度よりも前記書込磁極の材料の研磨速度に近い研磨速度を有する材料からなる、記録ヘッド。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
書込磁極について、本願発明では、「前記記録媒体に面する表面において予想される研磨方向に少なくとも部分的に基づいて、前記記録媒体に面する表面における前記バンパーに対して位置づけられる」と特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定がない点。

5.判断
上記相違点を検討する。
引用発明では、「前記主磁極層と前記読み出しヘッド素子との間に設けられ、そのトラック幅方向の幅が前記主磁極層のトラック幅方向の幅よりも広くなるように伸張した層であり、Ruなどの金属材料からなる突出調整部と」とあり、引用例の図3からも明らかなように、主磁極層と突出調整部との位置関係は、トラック幅方向に直交する方向に沿って配列されてなる関係にあるといえる。
そして、例えば特開平7-326020号公報(特に段落【0009】、図9を参照)、特開2000-87011号公報(特に段落【0004】、図1?4を参照)、特開2005-317069号公報(特に段落【0057】、図9を参照)に記載のように、媒体対向面であるスライダ端面を研磨する際の一般的な手法として、複数の磁気ヘッド素子が列状に配列されたバーの状態において、バーの長手方向を回転する研磨定盤の半径方向に合わせて押し付けて研磨することが周知の技術事項であり、これによれば、各磁気ヘッド素子は、研磨方向がおおむねトラック幅方向に直交する方向として研磨されることになるところ、引用発明においても、加工バーの状態で研磨加工するに際し、一般的な手法である上記周知の技術事項を採用することによって、主磁極層と突出調整部との位置関係と研磨方向とがともにトラック幅方向に直交する方向に関して一致するものとすること、表現を変えれば、主磁極層が、記録媒体に面する表面において予想される研磨方向に少なくとも部分的に基づいて、記録媒体に面する表面における突出調整部に対して位置づけられてなるものとすることは当業者であればごく普通になし得ることである。

そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-09 
結審通知日 2014-06-10 
審決日 2014-06-24 
出願番号 特願2010-168056(P2010-168056)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 斎藤 眞  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 井上 信一
関谷 隆一
発明の名称 データ記憶システムのための記録ヘッド  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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