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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1293629
審判番号 不服2013-16649  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-28 
確定日 2014-11-04 
事件の表示 特願2009-502029「コンポーネントまたは回路のための支持体ボディ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月27日国際公開、WO2007/107601、平成21年 9月 3日国内公表、特表2009-531844〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年3月22日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 平成18年3月23日 平成18年11月24日 平成18年12月8日 ドイツ(DE))を国際出願日とする特許出願であって、平成20年11月26日付けで手続補正がなされ、平成24年2月17日付け拒絶理由通知に対応する応答時、同年8月7日付けで手続補正がなされたが、平成25年4月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月28日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。
その後、平成25年12月17日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、平成26年5月7日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成25年8月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年8月28日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
(1)補正後の本願発明
平成25年8月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
熱を排出させるまたは熱を案内する冷却部材(7)が一体的に設けられている、電気的または電子的なコンポーネント(6a,6b,6c,6d)または回路のための、非導電性の支持体ボディ(1,2)において、
該支持体ボディ(1,2)は回路基板であり、該支持体ボディ(1,2)と前記冷却部材(7)はセラミックまたはコンポジット材料から成り、該コンポジット材料には、非導電性のマトリックス材料が熱伝導性の添加物とともに含まれており、
前記マトリックス材料として樹脂、ポリマーまたはシリコーンが用いられ、
前記コンポジット材料は、セラミック成分と混合されたポリマーまたはシリコーンから成る多成分材料系であって、Al_(2)O_(3)を伴うポリマー、AlNを伴うポリマー、Al_(2)O_(3)/AlNを伴うシリコーン、又は、ZrO_(2)/Y_(2)O_(3)を伴うシリコーンおよびポリマーのいずれかであり、
前記支持体ボディ(1,2)の、前記冷却部材(7)とは反対側の表面に、焼結された金属化領域(41)が少なくとも部分的に取り付けられていることを特徴とする、
支持体ボディ。」
と補正された。
上記補正は、
ア.請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、コンポジット材料に含まれる「マトリックス材料」について、「樹脂、ポリマーまたはシリコーンが用いられ」るとの限定を付加するとともに、さらに、その「コンポジット材料」について、「セラミック成分と混合されたポリマーまたはシリコーンから成る多成分材料系であって、Al_(2)O_(3)を伴うポリマー、AlNを伴うポリマー、Al_(2)O_(3)/AlNを伴うシリコーン、又は、ZrO_(2)/Y_(2)O_(3)を伴うシリコーンおよびポリマーのいずれか」であるとの限定を付加するものである。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-94625号公報(以下、「引用例」という。)には、「多層回路基板」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】 導体パターンを多層に形成したパッケージ本体であるセラミックの回路基板に、該回路基板と同一主成分からなるセラミックの放熱体部を一体形成した多層回路基板であって、
前記回路基板と前記放熱体部が同時焼成されて一体に形成されたことを特徴とする多層回路基板。
【請求項2】 放熱体部が放熱フィン構造に形成されたことを特徴とする請求項1記載の多層回路基板。
【請求項3】 セラミックが酸化アルミニウムあるいは窒化アルミニウムを主成分とすることを特徴とする請求項1または2記載の多層回路基板。
【請求項4】 セラミックのグリーンシートに金属ぺーストを用いて導体部を形成した後、前記グリーンシートを積層して形成した回路基板部と、セラミック粉末をプレス成形して形成した放熱体構造部とを重ね合わせ、加熱・加圧して一体成形体を形成し、
この一体成形体を焼成することを特徴とする多層回路基板の製造方法。」

イ.「【0010】図1および図2は本発明方法をセラミックパッケージの製造に適用する例を示す。図1はパッケージの放熱体構造部をプレス成形によって形成する様子、図2は放熱体構造部とグリーンシート法によって形成した回路基板部を加圧して一体にする様子を示す。グリーンシート法によって多層回路基板の本体となる回路基板部を形成する方法は従来の多層回路基板の製造方法と同様で、スクリーン印刷法によって平面配線部を形成し、グリーンシートにスルーホールを形成して金属ぺーストを充填することによってビアを形成する。半導体チップを搭載するキャビティ凹部が必要な場合にはグリーンシートをキャビティ凹部部分で打ち抜いて積層し、40?70℃、50?300kgf/cm2 程度の条件で加熱、加圧して一体化する。」

ウ.「【0013】上記のようにして作製したプレス成形用の混合物を図1に示すように成形治具12a、12b、12cを用いてドライプレスする。プレス力は300?1000kgf/cm^(2) 程度、好ましくは300?500kgf/cm^(2) である。ドライプレスによって放熱体構造部10が得られる。放熱体構造部10をプレス成形した後、図2に示すようにその上にパッケージ本体となる回路基板部14をのせ、加圧して放熱体構造部10と回路基板部14とを一体にする。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0017】次に、上記のようにして得られた一体成形体を脱バインダーし、焼成して回路基板18aと放熱体部18bが一体化された焼結体を得る。前記一体成形体の脱バインダー条件および焼成条件は従来のグリーンシート積層体を処理する場合と同様でよい。得られた焼結体に外部リード20あるいは必要に応じてシールリングをろう付けしパッケージを完成する。図4にこうして得られたパッケージの構成例を示す。
【0018】本発明に係る多層回路基板はパッケージ本体の回路基板18aと放熱体部18bが一体に形成され、回路基板部と放熱体部との間に熱抵抗となる境界部分や介在物がないので低熱抵抗化を図ることができて放熱性のすぐれたパッケージとして提供することが可能になる。また、従来の多層回路基板構造と同一の配線密度を有し、配線パターンの高密度化も達成することができる。また、製造工程も単純で、アルミニウム等の放熱板を別部品として設ける場合にくらべて製造コストの低減を図ることが可能である。」

エ.「【0019】
【実施例】以下、本発明に係る多層回路基板の製造方法についての実施例について説明する。平均粒径1.2μmの窒化アルミニウム粉末に平均粒径約1μmのイットリアを3重量%加え、トルエンを用い、ジブチルフタレート及びアクリルバインダーを混合して得られたグリーンシートを所定形状に打ち抜いた後、直径240μmのスルーホールを形成し、平均粒径約1μmのタングステンを主成分とするぺーストを充填するとともに、所定の平面配線をスクリーン印刷した。キャビティに対応する孔をあけたのちこれらグリーンシートを積層し、中子ゴムを介して60℃、150kgf/cm^(2) の条件で一体化した後、個々の形状に切断した。
【0020】一方、平均粒径1.6μmの窒化アルミニウム粉末に平均粒径約1μmのイットリアを3重量%加え、ポリビニルアルコール、界面活性剤、蒸留水とともに混合した後、スプレードライ法により平均粒径約70μmに造粒した。これを成形治具に充填し、500kgf/cm^(2) の圧力でプレス成形した。次に、成形治具の上型(平型)を外し、前記のグリーンシートの積層体をプレス成形体の上にのせ、キャビティ凹部に対応する中子ゴムをセットして、900kgf/cm^(2) 、10分間加圧して一体化した。
【0021】得られた一体成形体を湿潤窒素ガス雰囲気中で600℃の条件で焼成して有機成分を除いた後、タングステン製セル内に入れ、1kgf/cm^(2) の窒素ガス中で、1850℃、3時間の条件で焼成して焼結体を得た。次に、露出するタングステンメタライズ部に無電解ニッルめっきを施した後、約860℃の還元雰囲気下でAg-Cuろうでピン材をろう付けして放熱体部を一体形成した半導体パッケージを得た。」

・上記引用例に記載の「多層回路基板」は、上記「ア.」の【請求項1】、【請求項2】の記載事項、及び図4によれば、導体パターンを多層に形成したパッケージ本体であるセラミックの回路基板に、当該回路基板と同一主成分からなるセラミックの放熱フィン構造に形成された放熱体部を一体形成した多層回路基板に関するものである。
・上記「ア.」の【請求項1】、【請求項4】、「イ.」?「エ.」の記載事項によれば、多層回路基板は、回路基板部と放熱体構造部とを重ね合わせ加圧して形成した一体成形体を、同時焼成することで得られる焼結体からなるものであり、
回路基板部は、セラミックのグリーンシートにタングステンを主成分とした金属ペーストを用いて平面配線となる導体部(導体パターン)やビアを形成したものを積層して形成されるものである。
放熱体構造部は、セラミック粉末をプレス成形により形成されるものである。
・上記「イ.」の記載事項、図4によれば、回路基板には、放熱体部とは反対側の面に半導体チップを搭載するキャビティ凹部が形成されてなるものである。
・上記「ウ.」の段落【0017】、「エ.」の段落【0021】の記載事項、図4によれば、回路基板には、放熱体部とは反対側の面に露出するタングステンメタライズ部を有し、無電解めっきを施した後、外部リード(ピン材)がろう付けされてなるものである。

したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「平面配線となる導体パターンを多層に形成したパッケージ本体であるセラミックの回路基板に、当該回路基板と同一主成分からなるセラミックの放熱フィン構造に形成された放熱体部を一体形成した多層回路基板であって、
当該多層回路基板は、セラミックのグリーンシートにタングステンを主成分とした金属ペーストを用いて平面配線となる導体パターンやビアを形成したものを積層して形成した回路基板部と、セラミック粉末をプレス成形して形成した放熱体構造部とを重ね合わせ加圧して形成した一体成形体を、同時焼成することで得られる焼結体からなり、
前記回路基板における前記放熱体部とは反対側の面には、半導体チップを搭載するキャビティ凹部と露出するタングステンメタライズ部を有し、当該タングステンメタライズ部には無電解めっきが施され、さらに外部リード(ピン材)がろう付けされてなる多層回路基板。」

(3)対比
本願補正発明において、支持体ボディと冷却部材を構成する材料としては、本願請求項1に「・・該支持体ボディ(1,2)と前記冷却部材(7)はセラミックまたはコンポジット材料から成り、・・」と択一的な記載がなされていることから、「セラミック」または「コンポジット材料」のいずれかを選択可能なものであり、このうちの「セラミック」とした場合の本願補正発明については、以下のように把握することができる。
「【請求項1】
熱を排出させるまたは熱を案内する冷却部材(7)が一体的に設けられている、電気的または電子的なコンポーネント(6a,6b,6c,6d)または回路のための、非導電性の支持体ボディ(1,2)において、
該支持体ボディ(1,2)は回路基板であり、該支持体ボディ(1,2)と前記冷却部材(7)はセラミックから成り、
前記支持体ボディ(1,2)の、前記冷却部材(7)とは反対側の表面に、焼結された金属化領域(41)が少なくとも部分的に取り付けられていることを特徴とする、
支持体ボディ。」

以上のことを踏まえて、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明における、放熱フィン構造に形成された「放熱体部」は、本願補正発明における、熱を排出させるまたは熱を案内する「冷却部材」に相当し、
引用発明における「半導体チップ」は、本願補正発明における、電気的または電子的な「コンポーネント」に相当し、
そして、引用発明における「回路基板」は、本願補正発明における「支持体ボディ」に相当し、
引用発明における「平面配線となる導体パターンを多層に形成したセラミックの回路基板に、当該回路基板と同一主成分からなるセラミックの放熱フィン構造に形成された放熱体部を一体形成した多層回路基板であって」、「前記回路基板における前記放熱体部とは反対側の面には、半導体チップを搭載するキャビティ凹部と露出するタングステンメタライズ部を有し、・・」によれば、
パッケージ本体であるセラミックの回路基板には、同じくセラミックの放熱体部が一体的に設けられてなるものであり、ともにセラミック製であることから非導電性であることは明らかであるから、
本願補正発明と引用発明とは、「熱を排出させるまたは熱を案内する冷却部材が一体的に設けられている、電気的または電子的なコンポーネントまたは回路のための、非導電性の支持体ボディにおいて、該支持体ボディは回路基板であり、該支持体ボディと前記冷却部材はセラミックから成り」の点で一致するということができる。

イ.引用発明における、回路基板における放熱体部とは反対側の面に「露出するタングステンメタライズ部」は、本願補正発明における、支持体ボディの冷却部材とは反対側の表面に取り付けられている「金属化領域」に相当し、
引用発明における「当該多層回路基板は、セラミックのグリーンシートにタングステンを主成分とした金属ペーストを用いて平面配線となる導体パターンやビアを形成したものを積層して形成した回路基板部と、セラミック粉末をプレス成形して形成した放熱体構造部とを重ね合わせ加圧して形成した一体成形体を、同時焼成することで得られる焼結体からなり、前記回路基板における前記放熱体部とは反対側の面には、半導体チップを搭載するキャビティ凹部と露出するタングステンメタライズ部を有し、当該タングステンメタライズ部には無電解めっきが施され、さらに外部リード(ピン材)がろう付けされてなる」によれば、
「露出するタングステンメタライズ部」は、技術常識からして、タングステンを主成分とした金属ペーストを用いて形成された導体パターンやビアの一部からなるものであり、セラミック材とともに一体成形体として焼成されることで「焼結された」ものであるということができるから、
本願補正発明と引用発明とは、「前記支持体ボディの、前記冷却部材とは反対側の表面に、焼結された金属化領域が少なくとも部分的に取り付けられている」点で一致するといえる。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
「熱を排出させるまたは熱を案内する冷却部材が一体的に設けられている、電気的または電子的なコンポーネントまたは回路のための、非導電性の支持体ボディにおいて、
該支持体ボディは回路基板であり、該支持体ボディと前記冷却部材はセラミックから成り、
前記支持体ボディの、前記冷却部材とは反対側の表面に、焼結された金属化領域が少なくとも部分的に取り付けられていることを特徴とする、
支持体ボディ。」
である点で一致し、相違するところがない。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明である。

<<予備的見解>>
また仮に、引用発明における「露出するタングステンメタライズ部」が、「焼結された」ものであるとまではいえず、この点において相違すると認められるとして、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについても検討しておく。
[相違点]
支持体ボディの冷却部材とは反対側の表面に取り付けられている金属化領域について、本願補正発明では、「焼結された」ものである旨特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定がない点。

上記相違点について検討する。
引用発明は、「当該多層回路基板は、セラミックのグリーンシートにタングステンを主成分とした金属ペーストを用いて平面配線となる導体パターンやビアを形成したものを積層して形成した回路基板部と、セラミック粉末をプレス成形して形成した放熱体構造部とを重ね合わせ加圧して形成した一体成形体を、同時焼成することで得られる焼結体からなり・・」とあるように、多層回路基板を構成する少なくとも複数の層には、タングステンを主成分とした金属ペーストを用いて形成され、セラミック材とともに焼成されることで「焼結された」平面配線となる導体パターンやビアが設けられるものであり、放熱体部とは反対側の面を構成する層上についても同様にセラミック材とともに焼成されることで「焼結された」平面配線となる導体パターンやビアを設け、これを外部リード(ピン材)などが取り付けられる「露出するタングステンメタライズ部」として用いるようにすることも当業者であればごく普通になし得ることである〔なお引用例では、この「露出するタングステンメタライズ部」には外部リード(ピン材)がろう付けされるとあるのみであるが、回路基板における放熱体部とは反対側の面のキャビティ凹部には半導体チップが搭載されることからして、当該半導体チップを取り付けたり、電気的に接続するための「露出するタングステンメタライズ部」についても当然有するものと解される。また、必要であれば、例えば特開平9-97861号公報の「表面導体層4」を参照されたい。〕。

そして、本願補正発明が奏する効果についてみても、引用発明から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

したがって、仮に、「金属化領域」についての相違点が認められるとしても、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また仮に、「金属化領域」についての相違点が認められるとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

<<回答書において提示の補正案について>>
なお、請求人は、平成26年5月7日付けの回答書において、特許請求の範囲についての補正案を提示し、改めて補正の機会を求めているので、一応検討しておく。
補正案によれば、支持体ボディと冷却部材を構成する材料について、「・・該支持体ボディ(1,2)と前記冷却部材(7)はセラミックまたはコンポジット材料から成り、・・」と択一的な記載がなされ、「セラミック」または「コンポジット材料」のいずれかを選択可能であったのを、「セラミック」の選択肢を削除し、「コンポジット材料」のみに限定するというものである。
しかしながら、例えば特開平9-270482号公報(特に段落【0005】?【0007】、【0010】を参照)、特開平10-139928号公報(特に段落【0005】?【0007】を参照)、特開2004-50704号公報(特に段落【0002】?【0004】、【0040】を参照)、国際公開第2005/073621号(特に段落【0055】を参照)に記載のように、半導体素子などの電子部品が搭載される絶縁性の基板の材料として、樹脂(ポリマー)からなるマトリックス材料に熱伝導性のAl_(2)O_(3)(アルミナ)やAlN(窒化アルミニウム)などの熱伝導性の添加物を含ませてなるいわゆるコンポジット材料(複合材料)を用いることは周知の技術事項であり、引用発明において、多層回路基板(回路基板と放熱体部)を構成する材料として、セラミックに代えて、当該周知のコンポジット材料を採用することも当業者であれば容易になし得ることである。

加えて付言しておくと、支持体ボディと冷却部材を構成する材料を「セラミック」とした場合には、支持体ボディ及び冷却部材の成形体を焼成した焼結体として得られるのが通常であり、したがって、その表面に対して同時焼成による「焼結された」金属化領域を取り付けることは技術的にみてごく自然なことといえるが、一方、支持体ボディと冷却部材を構成する材料を「コンポジット材料」とした場合、支持体ボディ及び冷却部材の成形体は、その成形時に加熱はされるとしても、焼成(焼結)されるものではないと考えられ、したがって、そのような支持体ボディ及び冷却部材の表面に対して「焼結された」金属化領域を取り付けるということは技術的にみて不自然なことである。
よって、この点からしても、上記補正案については、特許法第36条第4項第1号あるいは特許法第36条第6項第1号・第2号に規定する要件を満たしていない可能性が高く、認められないものである。

3.本願発明について
平成25年8月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年8月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
熱を排出させるまたは熱を案内する冷却部材(7)が一体的に設けられている、電気的または電子的なコンポーネント(6a,6b,6c,6d)または回路のための、非導電性の支持体ボディ(1,2)において、
該支持体ボディ(1,2)は回路基板であり、該支持体ボディ(1,2)と前記冷却部材(7)はセラミックまたはコンポジット材料から成り、該コンポジット材料には、非導電性のマトリックス材料が熱伝導性の添加物とともに含まれており、
前記支持体ボディ(1,2)の、前記冷却部材(7)とは反対側の表面に、焼結された金属化領域(41)が少なくとも部分的に取り付けられていることを特徴とする、
支持体ボディ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.
(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である、コンポジット材料に含まれる「マトリックス材料」について、「樹脂、ポリマーまたはシリコーンが用いられ」るとの限定を省き、さらに、その「コンポジット材料」について、「セラミック成分と混合されたポリマーまたはシリコーンから成る多成分材料系であって、Al_(2)O_(3)を伴うポリマー、AlNを伴うポリマー、Al_(2)O_(3)/AlNを伴うシリコーン、又は、ZrO_(2)/Y_(2)O_(3)を伴うシリコーンおよびポリマーのいずれか」であるとの限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.(3)(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明であり、また仮に、「金属化領域」についての相違点が認められるとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明であり、また仮に相違点が認められるとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また仮に相違点が認められるとしても、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-03 
結審通知日 2014-06-09 
審決日 2014-06-20 
出願番号 特願2009-502029(P2009-502029)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石野 忠志  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 萩原 義則
井上 信一
発明の名称 コンポーネントまたは回路のための支持体ボディ  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 高橋 佳大  

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