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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1293632 |
審判番号 | 不服2013-17686 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-09-12 |
確定日 | 2014-11-05 |
事件の表示 | 特願2011-227535「焦点合わせの方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月17日出願公開、特開2012- 93754〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年10月17日(パリ条約による優先権主張2010年10月28日、欧州)の出願であって、平成25年2月14日に手続補正がなされ、同年5月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。 なお、請求人は、当審における平成25年12月6日付け審尋に対して平成26年3月10日に回答書を提出している。 第2 平成25年9月12日付け手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成25年9月12日付け手続補正を却下する。 〔理由〕 1 本件補正の内容 (1)平成25年9月12日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、本件補正前の請求項1及び請求項12(平成25年2月14日付け補正後のもの)に、 「 【請求項1】 カメラビューにおいて複数の焦点領域が定義されるカメラの焦点合わせの方法であって、 前記カメラのレンズ距離を異なるレンズ距離値に設定することにより、前記カメラの焦点距離を異なる距離において焦点が合うように繰り返し設定することと、 レンズ距離を設定したことに応答して、前記設定されたレンズ距離値における焦点領域ごとに焦点値を求めることと、 複数の焦点値・レンズ距離値対が求められたときに、レンズ距離値の関数としての焦点値を表す、複数の焦点領域についての少なくとも2次の関数を推定することと、 関数が推定されている焦点領域ごとに、レンズ距離値を有する前記関数の極大点を計算することと、 前記焦点領域の前記極大点の前記レンズ距離値と前記焦点領域間の空間的距離に基づいて焦点領域をグループ化することと、 前記焦点領域のグループ化から得られる焦点領域グループを得点を配分することによって評価することと、 前記焦点領域グループの評価に基づいて焦点領域を選択することと、 焦点探索アルゴリズムを実行し、前記選択された焦点領域における前記焦点値の前記計算された極大の前記レンズ距離値において探索を開始することと、 前記レンズ距離値を前記焦点探索アルゴリズムによって見つかった前記レンズ距離値に設定することと を含む方法。 【請求項12】 カメラのカメラビューに対して定義された複数の焦点領域と、 カメラのレンズ距離を異なるレンズ距離値に繰り返し設定する手段と、 レンズ距離を設定したことに応答して、前記設定されたレンズ距離値における焦点領域ごとに焦点値を求める手段と、 複数の焦点値・レンズ距離値対が求められたときに、レンズ距離値の関数としての焦点値を表す、焦点領域ごとの少なくとも2次の関数を推定するように構成された関数推定器と、 焦点領域ごとに、レンズ距離値を含む前記関数の極大点を計算する手段と、 各焦点領域の前記極大点の前記レンズ距離値と前記領域間の空間的距離に基づいて焦点領域をグループ化するように構成された領域グループ化手段と、 前記焦点領域のグループ化から得られる焦点領域グループを得点を配分することによって評価するように構成された評価手段と、 前記焦点領域グループの評価に基づいて焦点領域を選択するように構成された焦点領域選択器と を備えるカメラ。」とあったものを、 「 【請求項1】 カメラビューにおいて複数の焦点領域が定義されるカメラの焦点合わせの方法であって、 前記カメラのレンズ距離を異なるレンズ距離値に設定することにより、前記カメラの焦点距離を異なる距離において焦点が合うように繰り返し設定することと、 レンズ距離を設定したことに応答して、前記設定されたレンズ距離値における焦点領域ごとに焦点値を求めることと、 複数の焦点値・レンズ距離値対が求められたときに、レンズ距離値の関数としての焦点値を表す、複数の焦点領域についての少なくとも2次の関数を推定することと、 関数が推定されている焦点領域ごとに、レンズ距離値を有する前記関数の極大点を計算することと、 前記焦点領域の前記極大点の前記レンズ距離値と前記焦点領域間の空間的距離に基づいて焦点領域をグループ化することと、 前記焦点領域のグループ化から得られる焦点領域グループを得点を配分することによって評価することと、 前記焦点領域グループの評価に基づいて焦点領域を選択することであって、 前記得点を配分することは、前記得点を正規化することを含み、前記焦点領域の選択は、正規化された得点範囲が1であるとき、 Score_(focus region group)>1-ΣScore_(other focus region groups) であれば、Score_(focus region group)が選択されることを含み、 焦点探索アルゴリズムを実行し、前記選択された焦点領域における前記焦点値の前記計算された極大の前記レンズ距離値において探索を開始することと、 前記レンズ距離値を前記焦点探索アルゴリズムによって見つかった前記レンズ距離値に設定することと を含む方法。 【請求項12】 カメラのカメラビューに対して定義された複数の焦点領域と、 カメラのレンズ距離を異なるレンズ距離値に繰り返し設定する手段と、 レンズ距離を設定したことに応答して、前記設定されたレンズ距離値における焦点領域ごとに焦点値を求める手段と、 複数の焦点値・レンズ距離値対が求められたときに、レンズ距離値の関数としての焦点値を表す、焦点領域ごとの少なくとも2次の関数を推定するように構成された関数推定器と、 焦点領域ごとに、レンズ距離値を含む前記関数の極大点を計算する手段と、 各焦点領域の前記極大点の前記レンズ距離値と前記領域間の空間的距離に基づいて焦点領域をグループ化するように構成された領域グループ化手段と、 前記焦点領域のグループ化から得られる焦点領域グループを得点を配分することによって評価するように構成された評価手段と、 前記焦点領域グループの評価に基づいて焦点領域を選択するように構成された焦点領域選択器であって、 前記得点を配分する評価手段は、前記得点を正規化する手段を含み、前記焦点領域選択器は、正規化された得点範囲が1であるとき、 Score_(focus region group)>1-ΣScore_(other focus region groups) であれば、Score_(focus region group)が選択される手段を含む前記焦点領域選択器 を備えるカメラ。」とする補正を含むものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。 なお、本件補正後の請求項1及び請求項12には「前期得点」と記載されているが、「前期」は「前記」の明らかな誤記であるので、本件補正後の請求項1及び請求項12を上記のように訂正して摘記した。 (2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次のア及びイからなるものである。 ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「得点を配分すること」が、「前記得点を正規化することを含」むものであると限定する。 イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「焦点領域を選択すること(焦点領域の選択)」が、「正規化された得点範囲が1であるとき、 Score_(focus region group)>1-ΣScore_(other focus region groups) であれば、Score_(focus region group)が選択されることを含む」ものであると限定する。 また、本件補正後の請求項12に係る上記(1)の補正は、次のウ及びエからなるものである。 ウ 本件補正前の請求項12に係る発明を特定するために必要な事項である「得点を配分することによって評価するように構成された評価手段(得点を配分する評価手段)」が、「前記得点を正規化することを含」むものであると限定する。 エ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「焦点領域選択器」が、「正規化された得点範囲が1であるとき、 Score_(focus region group)>1-ΣScore_(other focus region groups) であれば、Score_(focus region group)が選択される手段を含む」ものであると限定する。 2 本件補正の目的 上記1(1)の補正は、本件補正前の請求項1及び請求項12に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そこで、本件補正後の請求項1及び請求項12に係る発明(以下まとめて「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。 3 記載不備 (1)明確性要件 ア 請求項1及び請求項12には、それぞれ、「Score_(focus region group)」、「Score_(other focus region groups)」なる記載があるが、その定義は記載されていない。「Score・・・」との記載から、両者が「焦点領域グループ」に配分される「得点」に関係したものであろうことが一応推認できるものの、「Score_(focus region group)」及び「Score_(other focus region groups)」が具体的に何れの「焦点領域グループ」に配分される「得点」であるのか、また、両者がどのように違うのかは不明である。 イ 上記アのとおり、請求項1及び請求項12の記載がそれ自体で明確でないので、明細書の記載及び図面を参照すると、本願の明細書及び図面には、「焦点領域グループ」に配分される「得点」、「Score_(focus region group)」及び「Score_(other focus region groups)」に関して、次の(ア)ないし(キ)の記載がある。 (ア)「ステップ222で、焦点領域のグループ化が行われると、結果として得られる焦点領域グループが評価され、評価に基づいてステップ224で、各焦点領域グループにレートまたは得点が与えられる。評価では、例えば、焦点領域グループに含まれる焦点領域の数など、焦点領域グループのサイズや、画像ビューの中心、ドア、窓までの距離、カメラから物体までの距離など、カメラビュー内の特定の点への焦点領域グループの近接性といった、焦点領域グループの特徴を考慮し得る。また評価では、グループが、人間の顔などといった特定の特徴を含むかどうかも考慮し得る。そのような特徴は、カメラリソースの存在するものを使って検出され得る。次いで、ステップ226で、いずれかの焦点領域グループが、他のどの焦点領域グループもそれより良い得点を取得し得ないようなサイズの得点を獲得しているかどうか確かめるために、新しく取得された焦点領域グループの得点、および、利用できる場合には、同じ焦点領域選択セッションにおける、前の焦点領域グループ化からの記憶された焦点領域グループと関連付けられた得点を検査する。検査ステップ226では、これまで、およびこのセッションにおいて識別されたすべての焦点領域グループを考慮することができ、決められた得点範囲が使用される場合には、たとえ焦点領域グループが得点の過半数を獲得していない場合でさえも、その焦点領域グループを選択することが可能になる。よって焦点領域グループは、まだ配分されていない得点がある1つの焦点領域グループの得点より小さい場合に選択され得る。」(【0043】) (イ)「一実施形態によれば、正規化された得点システムが使用され、得点範囲が1である場合、焦点領域グループは、 Score_(focus region group)>1-ΣScore_(other focus region groups) であれば選択される。」(【0044】) (ウ)「またこれは、焦点領域グループの得点が0.5より大きい場合に焦点領域グループが選択されることも意味するはずである。」(【0045】) (エ)「図3bのステップ224に関連して論じた焦点領域グループの評価は、各焦点領域グループに得点を与える動作を含む。焦点領域グループの得点を計算する一方法は、正規化得点システムを使用するものである。しかし、当業者は理解するように、この用途に適用できる得点方法は複数ある。この特定の実施形態では、焦点領域グループのサイズおよびカメラビューにおける焦点領域グループの配置を使って正規化得点が計算される。また、計算にはカメラからの距離も含まれ得る。得点は、それが集計されて1になるという意味において正規化される。ある物体が識別され、得点を獲得するとき、可能な残りの物体の得点が何であるかは明らかである。Οをある焦点領域グループを形成する焦点領域の集合とする。さらに集合Ο⊆Ωである。その場合サイズ得点は以下のように計算される。 式中、nは使用される焦点領域の数である。」(【0102】) (オ)「中心に位置する物体は、多くの場合、より関心の高いものであり、よって、中心得点が導出されてもよい。中心得点は、以下のように、焦点領域グリッドに、カメラビューの中心にピークを有する離散2次元ガウス分布をかけ合わせることにより計算され得る。 」(【0103】) (カ)「最終得点は、以下のように、サイズおよび中心得点の平均値として計算される。 」(【0104】) (キ)図3bは次のとおりである。 ウ 上記イ(ア)ないし(キ)の摘記事項を参照しても、「Score_(focus region group)」及び「Score_(other focus region groups)」の定義は記載されていないから、本願の明細書及び図面の記載を参照しても、依然として、「Score_(focus region group)」及び「Score_(other focus region groups)」が具体的に何れの「焦点領域グループ」に配分される「得点」であるのか、また、両者がどのように違うのかは不明であるといわざるを得ない。 エ 請求人は、「Score_(focus region group)」及び「Score_(other focus region groups)」の定義に関し、平成26年3月10日に提出した回答書の4頁6行?5頁5行において、 「『Score_(focus region group)』については、本願明細書段落[0102]における、サイズ得点Oの計算方法が具体的な例です。 すなわち、『Score_(focus region group)』とは、現在評価中の、任意の焦点領域のグループOに含まれる焦点領域の得点を合計したものです。『Score_(other focus region groups)』は、『Score_(focus region group)』を含んで、『Score_(focus region group)』の評価にいたるまで、選ばれて計算された焦点領域グループの得点の1つを表現しております。 このとき、 Score_(focus region group)>1-ΣScore_(other focus region groups)であるならば、Score_(focus region group)が選ばれるとは、これまで評価して積算されたグループの得点の残りの得点よりも、いま評価している得点が大きければ、すべての領域を評価しなくても、その時点で選択するグループが決定することを意味しております。このことは、本願明細書段落[0043]?[0045]に説明が記載されております。ΣScore_(other focus region groups)は、Score_(focus region group)を含んで計算されています。 上図において、Score_(focus region group)は、現在評価中の焦点領域グループ、Score_(other focus region groups)は、Score_(focus region group)を含んで、現在の評価にいたるまでに評価が済んでいる焦点領域グループを具体的に図示しています。」 と説明している。 また、同回答書の6頁7行?7頁16行に記載された「補正案」の「[請求項1]」には、 「 」 なる記載もある。 オ しかしながら、本願明細書の【0043】?【0045】及び【0102】の記載内容は、上記イ(ア)ないし(エ)に摘記したとおりであり、これらの段落に、「『Score_(focus region group)』が、現在評価中の、任意の焦点領域のグループOに含まれる焦点領域の得点を合計したものであること」が記載されていたとも、「『Score_(other focus region groups)』が、『Score_(focus region group)』を含んで、『Score_(focus region group)』の評価にいたるまで、選ばれて計算された焦点領域グループの得点の1つである」ことが記載されていたとも、 であることが記載されていたとも認められない。 確かに、【0043】には、「新しく取得された焦点領域グループの得点」及び「同じ焦点領域選択セッションにおける、前の焦点領域グループ化からの記憶された焦点領域グループと関連付けられた得点」なる記載があるが、前者が「Score_(focus region group)」に相当し、後者が「Score_(other focus region groups)」に相当することはどこにも記載も示唆もされていないし、仮に上記の相当関係があるとしても、【0044】に記載された式 Score_(focus region group)>1-ΣScore_(other focus region groups) の意味は不明なままである。 また、「Score_(other focus region groups)」が「同じ焦点領域選択セッションにおける、前の焦点領域グループ化からの記憶された焦点領域グループと関連付けられた得点」だとすると、回答書に記載された「Score_(other focus region groups)」の定義と一致しない。 カ 上記アないしオのとおり、請求項1及び請求項12の「Score_(focus region group)」及び「Score_(other focus region groups)」は、その定義は記載されておらず、具体的に何れの「焦点領域グループ」に配分される「得点」であるのか、また、両者がどのように違うのかが不明であり、また、明細書及び図面の記載を参酌しても、この点は依然として不明であるから、本願補正発明は不明確である。 キ 上記アないしカより、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (2)実施可能要件 ア 「Score_(focus region group)」及び「Score_(other focus region groups)」に関して、本願明細書及び図面の記載は、上記(1)イ(ア)ないし(キ)に示したとおりであり、当該記載からは、「Score_(focus region group)」及び「Score_(other focus region groups)」が具体的に何れの「焦点領域グループ」に配分される「得点」であるのか、また、両者がどのように違うのかが不明であるのだから、 「Score_(focus region group)>1-ΣScore_(other focus region groups)」 が成立するかどうかを判定することはできない。 よって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。 イ 上記アより、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 4 小括 以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成25年2月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年2月14日付け手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-25985号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「【0001】 本発明は、撮像装置および撮像方法に関し、特に、画像データを分割した複数のエリアでオートフォーカスを行った場合に、何処のエリアに合焦しているかが一目で判るようにした撮像装置および撮像方法に関する。 【背景技術】 【0002】 デジタルスチルカメラ等の電子撮像装置は、被写体に対して自動的に焦点を合わせるオートフォーカス(以下、「AF」と記す)装置を搭載しているのが一般的である。AF装置におけるAF制御方法として、山登りAF制御が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。 前記山登りAF制御は、撮像素子が出力する映像信号(画像データ)から近接画素の輝度差の積分値を求め、この輝度差の積分値を、合焦度合いを示すAF評価値とする。合焦状態にあるときは被写体の輪郭部分がはっきりしており、近接画素間の輝度差が大きくなるのでAF評価値が大きくなる。非合焦状態のときは、被写体の輪郭部分がぼやけるため、画素間の輝度差は小さくなるので、AF評価値が小さくなる。そして、AF動作実行時は、レンズを移動させながらこのAF評価値を順次取得していき、AF評価値が最も大きくなったところ、即ち、ピーク位置を合焦点として、レンズを停止させる。 【0003】 近年、AF評価値を取得する際に画像データのエリアを分割しAFを行うことで、AFでは苦手とされる高輝度や低コントラスト被写体に対しても、適切にAFを行うことが可能な技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。 また、AFを取得する際のエリアを複数用いて行う技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。 【0004】 【特許文献1】特公昭39-5265号公報 【特許文献2】特開2001-13401号公報 【特許文献3】特開2002-311325号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、画像データを分割した複数のエリア(マルチエリア)でAFを行った場合には、図15(A)に示すように、実際にAF結果としてファインダに出力される結果が、被写体の形状ではないAFエリアで行っているため、表示としては複数エリアとしてバラけて表示されてしまう場合があり、何処に合焦しているかが直感的に判断しづらいという欠点があった。本来、実際に表示するとしたら、図15(B)に示すように、合焦箇所を明示すべきであり、それには被写体形状を捉えるようなAF制御技術が望まれていた。 また、図16に示すように、遠近混在被写体の場合、背景側に合焦してしまう(後ピン状態)可能性が高いため、より細分化されたエリアによってAFを行う必要があった。更に、被写体の形状が複雑であればあるほど、AF時のエリアは細分化しなければ精度が達成できないという問題点もある。 【0006】 本発明は上記の問題を解決すべくなされたものであり、画像データを分割した複数のエリアでAFを行った場合に、何処のエリアに合焦しているかが一目で判るようにした撮像装置および撮像方法の提供を目的とする。 」 (2)「【発明を実施するための最良の形態】 【0020】 以下、本発明を図示の実施形態に基いて説明する。 先ず、本発明を適用するデジタルスチルカメラのハードウェア構成の実施形態について、図1および図2を参照しつつ、説明する。図1(A),(B),(C)は、本発明を適用するデジタルスチルカメラの外観図であって(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は背面図である。図2は、前記デジタルスチルカメラのシステム構成の実施形態を示すブロック図である。 【0021】 図1(A),(B),(C)に示すように、カメラ本体CBの上面には、レリーズスイッチSW1、モードダイアルSW2、サブ液晶ディスプレイ(以下、液晶ディスプレイを「LCD」と記す)1が配置されている。 また、カメラ本体CBの正面には、撮影レンズを含む鏡筒ユニット7、光学ファインダ4、ストロボ発光部3、測距ユニット5、リモコン受光部6、メモリカード装填室および電池装填室の蓋2が配置されている。 ・・・(略)・・・ 【0029】 次に、上記のように構成されたデジタルスチルカメラの動作を説明するが、その前に、従来のデジタルスチルカメラの動作概要を説明しておく。 図1に示すモードダイアルSW2を記録モードに設定することで、カメラが記録モードで起動する。モードダイアルSW2の設定は、図2における操作部に含まれるモードスイッチの状態が記録モードONになったことをCPUが検知し、モータドライバ7-5を制御して、鏡胴ユニット7を撮影可能な位置に移動させる。更にCCD101、F/E-IC102、LCDディスプレイ10等の各部に電源を投入して動作を開始させる。各部の電源が投入されると、ファインダモードの動作が開始される。 【0030】 ファインダモードでは、レンズを通して撮像素子(CCD101)に入射した光は、電気信号に変換されてアナログ信号のR,G,BとしてCDS回路102-1、A/D変換器102-3に送られる。A/D変換器102-3でデジタル信号に変換されたそれぞれの信号(デジタルRGB信号)は、デジタル信号処理IC(SDRAM103)内のYUV変換部でYUV信号に変換されて、メモリコントローラによってフレームメモリに書き込まれる。このYUV信号はメモリコントローラに読み出されて、TV信号表示ブロック104-9を介してTVやLCDモニタ10へ送られて表示が行われる。この処理が1/30秒間隔で行われ、1/30秒ごとに更新されるファインダモードの表示となる。 【0031】 レリーズシャッターボタンSW1が押下されると、デジタル信号処理IC(SDRAM103)のCCD・I/Fブロック(不図示)内に取り込まれたデジタルRGB信号より、画面の合焦度合いを示すAF評価値、露光状態を示すAE評価値が算出される。AF評価値データは、特徴データとしてマイコン(CCD2信号処理ブロック(104-2))に読み出されて、AFの処理に利用される。この積分値は合焦状態にあるとき、被写体のエッジ部分がはっきりとしているため、高周波成分が一番高くなる。これを利用して、AFによる合焦検出動作時は、それぞれのフォーカスレンズ位置におけるAF評価値を取得して、その極大になる点(ピーク位置)を検出する。また極大になる点が複数あることも考慮にいれ、複数あった場合はピーク位置の評価値の大きさや、その周辺の評価値との下降、上昇度合いを判断し、最も信頼性のある点を合焦位置としてAFを実行する。 【0032】 またAF評価値は、デジタルRGB信号内のどの範囲からも算出することが出来る。図3がAF時に用いるエリアである。全域に細分化できるように(ここでは、図3のように最大16×16分割とした)されており、デジタルRGB信号を取得後、全域全てのエリアでAF評価値を取得するようにしている。分割されたエリアに関しては、エリア番号(例えば(1,1)のように)を割り当てるようにしている。 【0033】 AFエリアに関しては、AFモードによって複数、もしくは単エリアで行うようにしている。AFモードに関しては、モードダイアルSW2でシングルAFモード、全域AFモードで切り替えられるようにしている。例えば、シングルAFモードであった場合には図4に示すように、ファインダ内のAF枠の範囲、中央付近(この実施形態では水平方向40%×垂直方向に30%とし、その範囲内の分割されたエリアを合成したもの)の1エリアをAFエリアとし、また全域AFモードでは16×16分割したエリアを用いている。全域AFモードに関しては、図4のようなAF枠を表示することができないため、図5のような枠がない状態となる。 【0034】 次にAE評価値は、デジタルRGB信号を幾つかのエリア(このデジタルカメラではAFエリアと同じにする)に分割し、そのエリア内の輝度データを用いる。各エリア内の画素に対して所定の閾値を超えるものを対象画素とし、その輝度値を加算、対象画素数で乗算することによって求められる。各エリアの輝度分布により、適正露光量を算出し、次のフレームの取り込みに対し補正を行う。」 (3)「【0035】 <第1の実施例> 第1の実施例にかかるデジタルカメラの動作を説明する。 AFに関する全体のフローに関しては、図6に示すフローを用いる。 先ず、カメラは電源ON後、ファインダモードの状態である。 モードダイアルSW2の状態を確認し、AFモードがシングルAFモードもしくは、全域AFモードであるかどうかを確認する(6-1)。全域モード(Aモード)であった場合は、全域エリア設定処理(6-2)を行い、ファインダモードを図5のようにし、シングルAFモード(Sモード)であった場合には、シングルエリア設定処理(6-3)を行い、ファインダモードを図4のようにする(6-4)。 【0036】 次に、レリーズSW1が押下されたかどうかを確認する(6-5)。レリーズSW1が押下された場合に、次の処理を行う。 先ず、フォーカス光学系位置を開始位置へと移動する(6-6)。ここでは至近位置へ移動する。至近位置に関しては光学系によって異なる場合があるが、一般的には30cm前後が好ましい。 次に、レンズ駆動処理(6-7)により、フォーカス光学系を微小な間隔で無限遠位置まで駆動していく(6-7)。ここではフォーカスモータ7-2bとしてパルスモータを利用しているため、30cmから無限遠までを1パルスずつ駆動させることになる。その際にフォーカス光学系を微小駆動させながらAF評価値取得処理により、AFエリアに対するAF評価値を取得する(6-8)。以上の動作をフォーカス位置が無限遠になるまで行う。 【0037】 次に全域AFモードであれば(6-10)、エリア選択処理(6-11)を行う。この部分が本発明の特徴となる部分である。このエリア選択処理(6-11)に関しては、図7に示すフローを用いて説明する。 先ず、取得された各AFエリアに対するAF評価値から、合焦点判定処理(7-1)を行う。ここではAF評価値の信頼性評価を行うとともに、評価値の中でのピーク位置を判定する。もし、信頼性があるピーク位置があった場合(7-2)は、そのエリア位置(エリア番号)を格納しておく。 【0038】 次に、ピーク位置があるエリア(合焦エリア)があった場合に、グルーピング処理(7-3)を行う。グルーピング処理は、分割されたエリアをその周辺で同じピーク位置、もしくはそのピーク位置に対して被写界深度内に収まるようなピーク位置のエリアがあった場合に、そのエリア群を1つのグループとして保存する。グループに関しては、図8に示すようにグループのテンプレートを用意しており、そのテンプレートと同じ形状をもつエリア群を1つのグループとして認定し、保存していく。 【0039】 グルーピングに関しての探索としては、図9に示すような分割されたAFエリアの中での左上の位置から右方向に順次探索を行っていく。ここで、実際の被写体に関しては、図10(A)に示すような人物の場合、人物そのもののコントラストは低いことから、その人物の範囲のエリア全てが信頼性のあるピーク位置を得られるかどうかは分からない(図10(B))。そのため、グルーピングをする際には、図11に示すように、そのグループテンプレートの3/4以上のエリアが合焦エリアであった場合には、そのエリア群をグループとして判定するような補間処理を行う。グループテンプレートは〔1〕から〔8〕の順に用いて(図8参照)、グルーピングをしていく。 【0040】 図7に戻り、グルーピング処理(7-3)にて、グループ分けされたグループの中から、そのグループのピーク位置の中で、最も近い距離のフォーカス位置を示しているグループを選択する、グループ選択処理を行う(7-5)。 もし、ピーク位置が無かった場合(7-2)はNG判定を行い、エリア選択処理を終了する(7-4)。 図6に戻り、エリア選択処理(6-11)が終わると、次にエリア表示処理を行う(6-12)。エリア表示処理では、エリア選択処理(6-11)にて選択されたグループに相当する範囲を表示するようにしている。図12がグループに対する表示エリアの例である。例えば、図10(A)のような人物が被写体の場合は、結果として図14に示した人物のみを含んだ表示エリアとなる。エリア選択処理(6-11)でNG判定をされている場合に関しては、図4に示すように、シングルAFモードのAF枠を表示するようにしている。 【0041】 最後に、合焦位置移動処理(6-13)にて、エリア選択処理(6-11)で選択されたグループでのピーク位置から、それに対応するフォーカス位置(合焦位置)へと移動を行う。エリア選択処理(6-11)にてNG判定されている場合に関しては、NG距離に相当するフォーカス位置へと移動を行う。NG距離に関しては、一般的に過焦点距離を用いる場合があるが、本実施例のデジタルカメラに関しては2.5m位置へと移動している。 以上が、第1の実施例のデジタルカメラの動作に関する説明である。」 (4)上記(1)ないし(3)から、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。 「被写体に対して自動的に焦点を合わせるオートフォーカス(以下「AF」と記す)装置を搭載しているデジタルスチルカメラ等の電子撮像装置において、画像データを分割した複数のエリアでAFを行った場合に、何処のエリアに合焦しているかが一目で判るようにした撮像方法の提供を目的とし、 前記デジタルスチルカメラは、本体の上面に、レリーズスイッチ、モードダイアル等が配置されたものであり、 前記レリーズスイッチが押下されると、デジタルRGB信号より画面の合焦度合いを示すAF評価値が算出されるようにされており、 前記AF評価値は、合焦状態にあるとき、被写体のエッジ部分がはっきりとしているため、高周波成分が一番高くなるものであり、 AFによる合焦検出動作時には、それぞれのフォーカスレンズ位置におけるAF評価値を取得して、その極大になる点(ピーク位置)を検出するものであり、 AF時に用いるエリアは、全域を細分化できるように、例えば、16×16分割とし、デジタルRGB信号を取得後、全てのエリアでAF評価値を取得できるようにされており、 前記ディジタルスチルカメラは、電源ON後、モードダイアルの状態を確認し、AFモードが全域モードであった場合は、全域エリア設定処理を行うようにされており、 前記レリーズスイッチが押下された場合、先ず、フォーカス光学系位置を、例えば至近位置である開始位置へと移動し、次に、レンズ駆動処理により、フォーカス光学系を微小な間隔で無限遠位置まで駆動していき、その際にフォーカス光学系を微小駆動させながら、AF評価値取得処理により、AFエリアに対するAF評価値を取得する動作をフォーカス光学系位置が無限遠になるまで行い、 AFモードが全域モードであれば、エリア選択処理を行い、 前記エリア選択処理は、先ず、取得された各AFエリアに対するAF評価値から、合焦点判定処理を行い、AF評価値の信頼性評価を行うとともに、AF評価値の中でのピーク位置を判定し、信頼性があるピーク位置があった場合は、そのエリアの位置(エリアの番号)を格納しておき、 次に、ピーク位置があるエリア(合焦するエリア)があった場合に、グルーピング処理を行い、 前記グルーピング処理は、分割されたエリアをその周辺で同じピーク位置、もしくはそのピーク位置に対して被写界深度内に収まるようなピーク位置のエリアがあった場合に、そのエリア群を1つのグループとして保存し、 グルーピング処理にて、グループ分けされたグループの中から、そのグループのピーク位置の中で、最も近い距離のフォーカス位置を示しているグループを選択する、グループ選択処理を行い、 最後に、合焦位置移動処理にて、エリア選択処理で選択されたグループでのピーク位置から、それに対応するフォーカス光学系位置(合焦位置)へと移動を行う、 撮像方法。」(以下「引用発明」という。) 3 対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「『AF時に用いるエリア』、『エリア』、『AFエリア』」、「デジタルスチルカメラ等の電子撮像装置」、「撮像方法」、「フォーカス光学系」、「フォーカス光学系位置」、「AF評価値」、「『極大』になった『AF評価値』、『ピーク』、『ピーク位置』」及び「『エリア』の『グループ』」は、それぞれ、本願発明の「焦点領域」、「カメラ」、「カメラの焦点合わせの方法」、「レンズ」、「レンズ距離」、「焦点値」、「極大点」及び「焦点領域グループ」に相当する。 (2)引用発明の「カメラの焦点合わせの方法(撮影方法)」においては、「焦点領域(AF時に用いるエリア)」は、全域を細分化できるように、例えば、16×16分割とし、デジタルRGB信号を取得後、全ての「焦点領域(エリア)」で「焦点値(AF評価値)」を取得できるようにされており、レリーズスイッチが押下された場合、先ず、「レンズ距離(フォーカス光学系位置)」を、例えば至近位置である開始位置へと移動し、次に、レンズ駆動処理により、「レンズ(フォーカス光学系)」を微小な間隔で無限遠位置まで駆動していき、その際に「レンズ(フォーカス光学系)」を微小駆動させながら、「焦点値(AF評価値)」取得処理により、「焦点領域(AFエリア)」に対する「焦点値(AF評価値)」を取得する動作を「レンズ距離(フォーカス光学系位置)」が無限遠になるまで行っているから、引用発明の「カメラの焦点合わせの方法(撮影方法)」と、本願発明の「カメラの焦点合わせの方法」とは、「カメラビューにおいて複数の焦点領域が定義される」点、及び、「前記カメラのレンズ距離を異なるレンズ距離値に設定することにより、前記カメラの焦点距離を異なる距離において焦点が合うように繰り返し設定することと、レンズ距離を設定したことに応答して、前記設定されたレンズ距離値における焦点領域ごとに焦点値を求めること」とを含む点で一致する。 (3)引用発明の「カメラの焦点合わせの方法(撮影方法)」においては、AFモードが全域モードであれば、「焦点領域(エリア)」選択処理を行い、前記「焦点領域(エリア)」選択処理は、先ず、取得された各「焦点領域(AFエリア)」に対する「焦点値(AF評価値)」から、合焦点判定処理を行い、「焦点値(AF評価値)」の信頼性評価を行うとともに、「焦点値(AF評価値)」の中での「極大点(ピーク位置)」を判定し、信頼性がある「極大点(ピーク位置)」があった場合は、その「焦点領域(エリア)」の位置(「焦点領域(エリア)」の番号)を格納しておき、次に、「極大点(ピーク位置)」がある「焦点領域(エリア)」(合焦する「焦点領域(エリア)」)があった場合に、グルーピング処理を行い、前記グルーピング処理は、分割された「焦点領域(エリア)」をその周辺で同じ「極大点(ピーク位置)」、もしくはその「極大点(ピーク位置)」に対して被写界深度内に収まるような「極大点(ピーク位置)」の「焦点領域(エリア)」があった場合に、そのエリア群を1つの「焦点領域グループ(グループ)」として保存することを行っているから、引用発明の「カメラの焦点合わせの方法(撮影方法)」と、本願発明の「カメラの焦点合わせの方法」とは、「複数の焦点値・レンズ距離値対が求められたときに、焦点領域ごとに、合焦するレンズ距離値を求めるために焦点値に基づく極大点を計算することと、前記焦点領域の前記極大点の前記レンズ距離値と前記焦点領域間の空間的距離に基づいて焦点領域をグループ化すること」とを含む点で一致する。 (4)引用発明の「カメラの焦点合わせの方法(撮影方法)」においては、グルーピング処理にて、グループ分けされた「焦点領域グループ(グループ)」の中から、その「焦点領域グループ(グループ)」の「極大点(ピーク位置)」の中で、最も近い距離のフォーカス位置を示している「焦点領域グループ(グループ)」を選択する、グループ選択処理を行っているから、引用発明の「カメラの焦点合わせの方法(撮影方法)」と、本願発明の「カメラの焦点合わせの方法」とは、「前記焦点領域のグループ化から得られる焦点領域グループを評価することと、前記焦点領域グループの評価に基づいて焦点領域を選択すること」とを含む点で一致する。 (5)引用発明の「カメラの焦点合わせの方法(撮影方法)」においては、最後に、合焦位置移動処理にて、「焦点領域(エリア)」選択処理で選択された「焦点領域グループ(グループ)」での「極大点(ピーク位置)」から、それに対応する「レンズ距離(フォーカス光学系位置)」(合焦位置)へと移動を行っているから、引用発明の「カメラの焦点合わせの方法(撮影方法)」と、本願発明の「カメラの焦点合わせの方法」とは、「前記選択された焦点領域における前記焦点値の前記計算された極大の前記レンズ距離値に基づいて、前記レンズ距離値を設定すること」とを含む点で一致する。 (6)上記(1)ないし(5)から、本願発明と引用発明とは、 「カメラビューにおいて複数の焦点領域が定義されるカメラの焦点合わせの方法であって、 前記カメラのレンズ距離を異なるレンズ距離値に設定することにより、前記カメラの焦点距離を異なる距離において焦点が合うように繰り返し設定することと、 レンズ距離を設定したことに応答して、前記設定されたレンズ距離値における焦点領域ごとに焦点値を求めることと、 複数の焦点値・レンズ距離値対が求められたときに、 焦点領域ごとに、合焦するレンズ距離値を求めるために焦点値に基づく極大点を計算することと、 前記焦点領域の前記極大点の前記レンズ距離値と前記焦点領域間の空間的距離に基づいて焦点領域をグループ化することと、 前記焦点領域のグループ化から得られる焦点領域グループを評価することと、 前記焦点領域グループの評価に基づいて焦点領域を選択することと、 前記選択された焦点領域における前記焦点値の前記計算された極大の前記レンズ距離値に基づいて、前記レンズ距離値を設定することと を含む方法。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1: 複数の前記「焦点値」と前記「レンズ距離値」の「対が求められたとき」、 本願発明では、「レンズ距離値の関数としての焦点値を表す、複数の焦点領域についての少なくとも2次の関数を推定」し、「関数が推定されている焦点領域ごとに、レンズ距離値を有する前記関数の極大点を計算」し、「前記焦点領域の前記極大点の前記レンズ距離値と前記焦点領域間の空間的距離に基づいて焦点領域をグループ化」するのに対して、 引用発明では、そのような関数の推定をしておらず、焦点領域ごとに計算する合焦するレンズ距離値を求めるための極大点が、関数の極大点でなく焦点値の極大点であり、焦点領域のグループ化も、関数の極大点でなく焦点値の極大点のレンズ距離値に基づいて行う点。 相違点2: 前記「焦点領域のグループ化から得られる焦点領域グループ」の「評価」が、 本願発明では「得点を配分すること」によって行われるのに対して、 引用発明では焦点領域のグループ化から得られる焦点領域グループを、その焦点領域グループが示しているフォーカス位置が近いか否かによって評価している点。 相違点3: 前記「選択された焦点領域における焦点値の計算された極大のレンズ距離値に基づいて、前記レンズ距離値を設定すること」が、 本願発明では、「焦点探索アルゴリズムを実行し、前記選択された焦点領域における前記焦点値の前記計算された極大の前記レンズ距離値において探索を開始することと、前記レンズ距離値を前記焦点探索アルゴリズムによって見つかった前記レンズ距離値に設定すること」であるのに対して、 引用発明では、選択された焦点領域における焦点値の計算された極大のレンズ距離値をそのままレンズ距離値に設定している点。 4 判断 上記相違点1ないし3について検討する。 (1)相違点1について カメラのオートフォーカス調整において、フォーカス調整に要する時間を短縮化しながら、フォーカスをより正確に調整するために、実際に検出したフォーカス評価値の間を、例えば3次元スプライン関数のような非線形関数に従って補間し、複数の補間値の中から最大のものを求め、求めた補間値に対応するレンズ位置にフォーカスレンズを設定することは、本願優先日前に周知である(以下「周知技術1」という。例えば、いずれも原査定の拒絶の理由において引用された、特開2001-272594号公報(【請求項1】、【0011】、【0017】、【0018】参照。)、特開2001-61096号公報(【請求項1】、【請求項2】、【0008】、【0025】、【0032】、図4参照。))。 引用発明においても、フォーカス調整に要する時間を短縮化しながら、フォーカスをより正確に調整することが好ましいことは明らかであるから、引用発明において、実際に検出したAF評価値の間を、例えば3次元スプライン関数のような非線形関数に従って補間し、複数の補間値の中から最大のものを求め、求めた補間値に対応するフォーカスレンズ位置を利用するようにすること、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術1に基づいて適宜なし得た程度のことである。 (2)相違点2について カメラのオートフォーカス調整において、グループ化したエリア(エリア群)の中から所望の条件に合致する一つのエリア群を選択するために、各エリア群に得点を付与し、得点に基づいてエリア群を評価することは、本願優先日前に周知である(以下「周知技術2」という。例えば、いずれも原査定の拒絶の理由において引用された、特開平10-142490号公報(【0116】?【0123】において、グループ毎に演算される主被写体度が得点に相当する。)、特開2010-78682号公報(【0045】、【0046】において、より多くの顔エリアを含むグループをメイン顔エリア群として選択しており、顔エリアの数が得点に相当する。))。 引用発明においても、最も近い距離のフォーカス位置を示しているグループ以外にも所望の条件に合致するグループを選択できることが好ましいことは明らかであるから、引用発明において、グループの中から所望の条件に合致する一つのグループを選択するために、各グループに得点を付与し、得点に基づいてグループを評価するようにすること、すなわち、相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術2に基づいて適宜なし得た程度のことである。 (3)相違点3について カメラのオートフォーカス調整において、フォーカスをより正確に調整するために、ある評価基準に基づいて合焦対象となる被写体を決定し、決定した被写体に対して所定の焦点探索アルゴリズムを実行し、該焦点探索アルゴリズムの結果によりフォーカスレンズの位置を決定することは、本願優先日前に周知である(以下「周知技術3」という。例えば、特開2010-166519号公報(【0148】?【0156】、図11参照。)、特開2009-53448号公報(【0033】?【0043】参照。))。 引用発明においても、フォーカスをより正確に調整することが好ましいことは明らかであるから、引用発明において、選択したグループでのピーク位置において焦点探索アルゴリズムを実行して、該焦点探索アルゴリズムの結果によりフォーカス光学系位置を決定するようにすること、すなわち、相違点3に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術3に基づいて適宜なし得た程度のことである。 (4)効果について 本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果及び周知技術1ないし3の奏する効果から予測することができた程度のものである。 (5)まとめ したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-06-03 |
結審通知日 | 2014-06-10 |
審決日 | 2014-06-23 |
出願番号 | 特願2011-227535(P2011-227535) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G02B)
P 1 8・ 536- Z (G02B) P 1 8・ 121- Z (G02B) P 1 8・ 537- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鉄 豊郎、居島 一仁 |
特許庁審判長 |
藤原 敬士 |
特許庁審判官 |
清水 康司 西村 仁志 |
発明の名称 | 焦点合わせの方法 |
代理人 | 小林 義教 |
代理人 | 園田 吉隆 |