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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1293932
審判番号 不服2014-5385  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-24 
確定日 2014-12-02 
事件の表示 特願2011-135949「電子部品実装用装置および電子部品実装用の作業実行方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月 7日出願公開、特開2013- 4828、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成23年6月20日の出願であって、平成26年1月22日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年1月28日)、これに対し、同年3月24日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、その請求項1ないし4に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成25年7月31日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次のとおりである。

「【請求項1】
相対向する2辺の側端部をクランプ機構により上下方向に位置規制された矩形状の基板を対象として、電子部品実装用の所定の作業を実行する電子部品実装用装置であって、
前記基板において前記作業が実行される作業位置に対して作業ヘッドを昇降させることにより前記作業を実行する作業動作機構と、
前記クランプ機構による位置規制範囲内に設定された位置規制面の高さ位置を示す規制面高さデータを記憶する記憶部と、
前記位置規制された基板の上面に設定された所定の測定点の高さ位置を測定して高さ測定データを求める高さ測定手段と、
前記規制面高さデータおよび前記高さ測定データに基づいて、前記位置規制された状態における前記基板の反り形状を数式によって近似的に表す曲面モデルを求める反り形状算出部と、
前記曲面モデルによって導出された前記作業位置の高さ位置に基づいて前記作業動作機構を制御することにより、前記作業ヘッドに前記作業を実行させる作業制御部とを備えたことを特徴とする電子部品実装用装置。
【請求項2】
前記曲面モデルは、前記基板表面における任意点の高さ位置を示すZ座標を、当該任意点の水平方向の位置を示すX座標およびY座標の4次式によって求める4次曲面モデルであることを特徴とする請求項1記載の電子部品実装用装置。
【請求項3】
相対向する2辺の側端部をクランプ機構により上下方向に位置規制された矩形上の基板を対象として、電子部品実装用の所定の作業を実行する電子部品実装用装置における作業実行方法であって、
前記電子部品実装用装置は、前記基板において前記作業が実行される作業位置に対して作業ヘッドを昇降させることにより前記作業を実行する作業動作機構を備え、
前記クランプ機構による位置規制範囲内に設定された位置規制面の高さ位置を示す規制面高さデータを記憶する記憶工程と、
前記位置規制された基板の上面に設定された所定の測定点の高さ位置を測定して高さ測定データを求める高さ測定工程と、
前記規制面高さデータおよび前記高さ測定データに基づいて、前記位置規制された状態における前記基板の反り形状を数式によって近似的に表す曲面モデルを求める反り形状算出工程と、
前記曲面モデルによって導出された前記作業位置の高さ位置に基づいて前記作業動作機構を制御することにより、前記作業ヘッドに前記作業を実行させる作業制御工程とを含むことを特徴とする電子部品実装用装置における作業実行方法。
【請求項4】
前記曲面モデルは、前記基板表面における任意点の高さ位置を示すZ座標を、当該任意点の水平方向の位置を示すX座標およびY座標の4次式によって求める4次曲面モデルであることを特徴とする請求項3記載の電子部品実装用装置における作業実行方法。」

第2 原査定の理由の概要
本願発明1ないし4は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特開2009-027015号公報
刊行物2:特開2008-182111号公報
刊行物3:特開2006-235321号公報
刊行物4:国際公開第2007/063763号
刊行物5:特開2000-269692号公報

刊行物1には、基板の縦横高さ方向の3軸(XYZ)方向にクランプした基板を対象として、電子部品実装用の所定の作業を実行する電子部品装着装置であって、
前記基板において前記作業が実行される位置決め部5に対して、装着ヘッド13を昇降させることにより前記作業を実行する作業動作機構と、
前記3軸(XYZ)方向にクランプした基板の上面に設定された所定の測定点の高さ位置を測定して高さ測定データを求める基板高さ計測手段と、
前記高さ測定データに基づいて、前記位置規制された状態における前記基板の反り形状を、XY座標と平面式とによって近似的に表す曲面モデルを求める基板高さ演算部と、
前記曲面モデルによって導出された前記作業位置の高さ位置に基づいて部品装着ストロークを決定して前記作業動作機構を制御することにより、前記作業ヘッドに前記作業を実行させる制御部と
を備えた電子部品装着装置が記載されている。
刊行物2には、基板端部における基準位置において基準高さを測定して保存することが記載されている。
刊行物3には、透明基板の重力変形を4次曲面で予測することが記載されている。
また、電子部品装着装置の技術分野において、刊行物4または5に例示されているように、回路基板に反りや変形がない作業基準面を定め、その変位量に基いて実装高さの補正を行うことは、周知の技術事項である。
そうすると、刊行物1に記載された発明において、刊行物2、3に記載された事項及び周知の技術事項に基いて、本願発明1ないし4とすることは、当業者にとって容易になし得ることである。

第3 当審の判断
1 本願発明1
(1)刊行物
ア 刊行物1
原審において通知した拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開2009-027015号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「電子部品装着装置」に関して、図面(特に、【図1】、【図4】、【図7】、【図8】参照。)と共に、次の事項が記載されている。

(ア)「【0016】
電子部品装着装置1の装置本体2上には、種々の電子部品を供給する部品供給ユニット3が、複数並設されている。併設され対向する部品供給ユニット3群の間には、供給コンベア4、位置決め部5及び排出コンベア6が設けられている。供給コンベア4は、上流より受けた基板Pを位置決め部5に搬入する。基板Pは、位置決め部5で図示しない位置決め機構により位置決めされ、電子部品が装着された後、排出コンベア6によって搬出される。
部品供給ユニット3の夫々には、所定の部品が配置されており、配置番号等によってCPU31等が認識できる。部品供給ユニット3では、その部品取り出し部(電子部品吸着位置)に1個ずつ、夫々の電子部品を供給し、吸着ノズル17が、装着データで指定された電子部品を、電子部品吸着位置で吸着していく。
【0017】
X方向に長いビーム8-1と8-2は、対向して一対のビーム8を形成しており、夫々、Y軸モータ9の駆動によりネジ軸10を回転させ、左右一対のガイド11に沿って基板Pや部品供給ユニット3の電子部品吸着位置上方を個別にY方向に移動する。
ビーム8-1、8-2夫々には、その長手方向、すなわちX方向にX軸モータ12により、図示しないガイドに沿って移動する可動ヘッド7が夫々設けられている。
可動ヘッド7は、吸着ノズル17を備えた装着ヘッド13を上下(Z軸)方向に移動させるための上下軸モータ14と鉛直軸(Z軸)周りに回転させるためのθ軸モータ15を搭載している。従って、2個の装着ヘッド13の各吸着ノズル17はX方向及びY方向に移動可能であり、垂直線回り(角θ)に回転可能で、かつ上下動(Z軸方向移動)可能となっている。」

(イ)「【0032】
次に、ステップ609の基板高さ教示運転モードの動作と、ステップ611の電子部品の吸着動作と装着動作(実装運転モードの動作)の一実施例について、図7と図8に基づいて説明する。図7は、実際の基板Pの高さ(反り)の様子について模式的に示した図である。また図8は、基板P面上で不連続な凹凸形状となる場合を説明するための模式図である。
【0033】
ステップ609に示す本発明の基板高さ教示運転動作は、大きく2種類の基板凹凸計測方法に大別される。その第1の教示運転は、例えば図7に示すように実際に計測された凹凸形態を成す基板の場合である。図7において、基板表面の凹凸はX方向あるいはY方向に連続的変化している。
このような基板に対し、本発明での基板高さの計測は、全ての部品装着部の高さを計測するのではなく、基板全面の中で任意のX方向及びY方向で計測ラインが格子状となるように且つ連続的な高さ情報として計測する。X、Y方向各計測ラインの位置や間隔(ピッチ)は計測条件データとして予めRAM32に記憶されている。」

(ウ)「【0043】
このようにして、基板Pの全面における各電子部品装着領域41と42の平面式を求め記憶する。可動ヘッド7のX方向移動量及びY方向移動量、並びに、基板高さ計測センサ21と装着ヘッドの相対位置関係が既知であるので、基板高さ計測位置(XY)と基板高さ位置(Z)の関係として記憶しておく。ここで、任意の点の位置座標(x',y',z')から、上記式(1)に示した垂線距離Lは、次式で表される。」

(エ)「【0046】
図8のような基板での小領域での決定は、上述した実施例のように行なう。
なお、図7のような基板では、格子状に区切られた各領域において、4つの節点データから任意の3点の(x,y,z)座標を抽出して平面式を算出するようにしても良い。
【0047】
次に、ステップ611の電子部品の吸着動作及び装着動作について説明する。
図6のステップ608からステップ609の基板高さ教示運転動作後にステップ607に戻り、ステップ611に移行する場合で説明する。
このときには、基板Pが既に位置決め部5に搬入され、位置決め機構により位置決め固定された(クランプされた)状態である。先ず、RAM32に格納された基板Pの装着すべき場所のXY座標位置、鉛直軸線回りへの回転角度位置及び各部品供給ユニット3の配置番号等が指定された装着データに従い、電子部品の種類に対応した吸着ノズル17が装着すべき電子部品を所定の部品供給ユニット3から吸着して取り出す。
すなわち、装着ヘッド13の吸着ノズル17は、装着データに従い、部品供給ユニット3の指定された配置番号にある、装着すべき電子部品を収納する位置上方に移動する。この場合、Y方向は、駆動回路27によりY軸モータ9が駆動して一対のガイド11に沿ってビーム8(ビーム8-1若しくはビーム8-2)が移動し、X方向は、駆動回路26に
よりX軸モータ12が駆動して可動ヘッド7が移動する。この時、既に供給ユニット3の所定の配置番号では、部品吸着位置にて部品が取り出し可能状態にある。したがって、吸着ノズル17は、駆動回路29により上下軸モータ14が駆動することによって下降し、電子部品を吸着することができ、その後もとの高さに上昇することによって電子部品が供給ユニット3より取り出される。」

(オ)「【0063】
本発明の一実施例の特徴は、複数種の電子部品を供給する第1の部品供給部及び第2の部品供給部と、第1の部品供給部若しくは第2の部品供給部から電子部品を吸着すると共に吸着した電子部品を基板に交互に装着する第1の部品装着部及び第2の部品装着部と、第1の部品装着部及び第2の部品装着部を吸着位置と装着位置の間で移動若しくは停止位置決め制御し、高さ計測手段によりプリント基板高さを計測し、基板高さ計測情報を用いて部品装着部に配設したノズルの下降ストロークを決定し装着する電子部品装着装置であって、第1の部品装着部及び第2の部品装着部に基板の高さを計測する基板高さ計測手段を一体的に備え、最初に基板が搬入されるタイミングあるいは所望とする任意のタイミングで基板高さ計測手段により電子部品を装着する箇所の基板表面の高さを教示データとして計測しかつ記憶する基板高さ教示運転モードと、基板高さ計測手段により得た計測データ及び教示データから部品装着ストロークを決定して実装する実装運転モードを設けたことを特徴とする。」

(カ)「【0065】
基板をXYZ方向にクランプ(基板固定)した後では、クランプ条件を変えない限り、基板の凹凸形状が変化しないことが判明している。上記2つの実施例によれば、予め実装基板の凹凸の基準となる教示データを求め、実装動作中には、基板高さ計測手段を走査しながら所望の高さを最小限に計測し、その後この高さ計測情報に基づいて部品実装を行い、実装終了後の戻り動作で対向する部品装着部が装着する予定の基板の表面を走査しながら基板高さを計測するため、基板高さの計測するためだけの動作を必要としないため、部品装着総時間に影響せずにノズル高さ位置決め制御を実現できる。
【0066】
電子部品を装着する基板は、表面の凹凸がX方向若しくはY方向に連続的に変化しているもの、あるいは、場所によって不連続な凹凸形状を成す形態の基板など多様である。
そこで、本発明の別の実施例の電子部品装着装置は、基板高さ教示運転モードにおいて、基板全面の中で予め定めた任意のX方向及びY方向で計測ラインが格子状となるように且つ連続的な高さ情報として計測する教示運転と、予め決めておいたランダムな計測ラインに沿って基板高さ計測を実施する教示運転を設け、いずれの教示運転で実行するかを選択できるように成したことを成したことを特徴とする。
【0067】
また、本発明の更に別の実施例である電子部品装着装置では、基板高さ教示運転モードにおいて、予め決めておいた格子状領域、若しくは任意の小領域内において、3箇所のXY位置での高さ計測データで定まる平面式を演算及び記憶し、電子部品を吸着して基板の当該領域に装着する時には、この領域中の任意のXY座標での1点の基板高さを計測し、基板高さの計測値と装着すべきXY座標と平面式とから所望とする位置での基板高さを算出するように成したことを特徴とする。
上述の小領域で複数の装着部品があるときには、1回のみの基板高さ計測のみ実施することで、同一領域内の他の部品装着部の基板高さを算出することができるため、基板高さ計測に要する時間が短縮され、部品装着における時間が短縮できる。」

(キ)上記(オ)の「基板の高さを計測する基板高さ計測手段」(段落【0063】)との記載と【図4】で基板高さ計測センサが基板の上面に設定されていることを踏まえると、基板の上面に設定された基板の高さを計測する基板高さ計測手段が示されている。
また、上記(カ)の「予め決めておいた格子状領域、若しくは任意の小領域内において、3箇所のXY位置での高さ計測データで定まる平面式を演算及び記憶し、電子部品を吸着して基板の当該領域に装着する時には、この領域中の任意のXY座標での1点の基板高さを計測し、基板高さの計測値と装着すべきXY座標と平面式とから所望とする位置での基板高さを算出する」(段落【0067】)との記載と【図7】で基板に反り形状が生じていることを踏まえると、基板の高さ計測データに基づいて、基板の反り形状を平面式で演算する算出部が示されている。

(ク)上記(カ)の「予め実装基板の凹凸の基準となる教示データを求め、実装動作中には、基板高さ計測手段を走査しながら所望の高さを最小限に計測し、その後この高さ計測情報に基づいて部品実装を行い」(段落【0065】)との記載、上記(カ)の「基板高さ教示運転モードにおいて・・・高さ計測データで定まる平面式を演算及び記憶し、電子部品を吸着して基板の当該領域に装着する時には、この領域中の任意のXY座標での1点の基板高さを計測し、基板高さの計測値と装着すべきXY座標と平面式とから所望とする位置での基板高さを算出する」(段落【0067】)との記載、上記(ア)の「可動ヘッド7は、吸着ノズル17を備えた装着ヘッド13を上下(Z軸)方向に移動させるための上下軸モータ14・・・を搭載している」(段落【0017】)との記載、上記(オ)の「高さ計測手段によりプリント基板高さを計測し、基板高さ計測情報を用いて部品装着部に配設したノズルの下降ストロークを決定し装着する」(段落【0063】)との記載を踏まえると、基板高さの計測値と装着すべきXY座標と平面式とから所望とする位置での基板高さを算出し、この高さに基づいて、可動ヘッド7を制御することにより装着ヘッド13を作業させ部品実装を行う装置が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「矩形状の基板を対象として、電子部品が装着される電子部品装着装置1であって、
前記基板において装着される位置に対して装着ヘッド13を上下(Z軸)方向に移動させるための上下軸モータ14を搭載した可動ヘッド7と、
基板の上面に設定された基板の高さを計測する基板高さ計測手段と、
基板の高さ計測データに基づいて、基板の反り形状を平面式で演算する算出部と、
基板高さの計測値と装着すべきXY座標と平面式とから所望とする位置での基板高さを算出し、この高さに基づいて、可動ヘッド7を制御することにより装着ヘッド13を作業させ部品実装を行う装置とを備えた電子部品装着装置1。」

イ 刊行物2
同じく、原審において通知した拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開2008-182111号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「基板固定装置」に関して、図面(特に、【図2】参照。)と共に、次の事項が記載されている。

「【0039】
プリント基板Sが前工程から搬入され、基板搬送部18によって電子部品を搭載する位置決め部30まで到達すると、バックアップテーブル34が上昇すると共にプリント基板Sの両端部を支持する左右の搬送レール40、40も上昇し、プリント基板Sの両端部を図2のように挾持する。図示されているように、この時点においては、プリント基板Sは中央付近が撓んだ状態になっている。この例では、中央部が凸となる上反りの場合が示されているが、状況によっては凹となる下反りの場合もある。
【0040】
以上のようにプリント基板Sの挾持・固定が終了すると、ステップ2で基準高さを取得する。具体的には、前記図6に示したヘッド部10をXY移動させ、図2にB、Cで示すプリント基板Sを挾持している幅方向両端部付近を、該ヘッド部10に付設されている高さセンサ22により計測する。この計測では、図中紙面に垂直な前後方向の基板端部でも行い、ステップ1で取得した基板四隅の位置座標に相当する合計4箇所の基準位置を測定している。
【0041】
上記4箇所の測定高さと測定座標を元に、図中Aで示す基板中央部に撓みがない場合の基準高さを前記CPU82で計算し、その基準値をメモリ84に保存する。
【0042】
なお、本実施形態の装置構造では、基板両端部を保持することによって機械的に基板四隅の高さが一定値に限定されるため、基板四隅の高さ値に関しては、基板を保持する都度計測を行わなくとも、表面実装装置の組付・調整時や各基板生産のロット切換時に一度だけ行うようにしてもよい。
【0043】
次いで、ステップ3では上記高さセンサ22を基板中央部A(SD2)に移動させ、ステップ4でその位置の基板高さを測定して取得すると共に、その測定値と基板端部を測定して求めた上記基準値との偏差を求める。」

ウ 刊行物3
また、原査定において周知例とされ、本願出願前に頒布された国際公開第2007/063763号(以下、「刊行物3」という。)には、「回路基板に対する作業装置」に関して、図面(特に、[図2]、[図3]、[図6]、[図7]参照。)と共に、次の事項が記載されている。

「【0022】
高さ検知センサ10は、基板面3a上の測定箇所sにレーザ光を投射して反射光を受光することにより基板面3aの高さ、すなわちZ方向における位置を検知する。高さ検知センサ10による検知結果は演算部14において演算処理され、測定箇所sの作業基準面3bからの変位量(以下、変位量という)dが測定される。このように、高さ検知センサ10及び演算部14は、測定箇所sの作業基準面3bからの変位量を測定する測定手段として機能する。なお、作業基準面3bとは、反りや変形がないフラットな回路基板3が搬送レール2により位置決めされた状態における基板面3aのことであり、この作業基準面3bに電子部品Pを過不足なく押接して実装することができるようにノズル13の下降ストローク、すなわち実装高さが設定される。従って、回路基板3に反りや変形が生じている場合には基板面3aと作業基準面3bは一致しないので、回路基板3に電子部品Pを実装する際には実装高さの補正を行う必要がある。例えば、図3Aの説明図に示すように、回路基板3における基板面3aが作業基準面3bに対して凸状に変形、すなわち、回路基板3の端部が下方に位置されるように湾曲変形している場合は、上方への変位量d1が実装高さの補正量となり、作業基準面3bに対応して設定された実装高さから減算する。一方、図3Bの説明図に示すように、基板面3aが作業基準面3bに対して凹状に変形、すなわち、回路基板3の端部が上方に位置されるように湾曲変形している場合は、下方への変位量d2が実装高さの補正量となり、作業基準面3bに対応して設定された実装高さに加算する。このように、実装高さの補正に際しては基板面3aの作業基準面3bからの変位量を測定する必要がある。従って、本第1実施形態においては、回路基板3における基板面3aの形状を近似する曲面モデルを想定し、この曲面モデルにおける作業基準面3bからの変位量に基づいて実装高さの補正を行う。
【0023】
図2において、制御部15は、記憶部17に記憶された曲面モデルの作業基準面3bからの変位量に基づいて実装高さの補正を行う補正手段として機能し、昇降装置12aの駆動を制御することによりノズル13の下降ストロークを調整して実装高さの補正を行う。記憶部17は、曲面モデルの他に種々のデータや制御プログラム等が記憶された記憶領域を備えている。入力部16は、制御部15への制御信号の入力、及び記憶部17に記憶させるデータやプログラムの入力を行う。」

エ 刊行物4
また、原査定において周知例とされ、本願出願前に頒布された特開2000-269692号公報(以下、「刊行物4」という。)には、「基板の反り検出方法とこれを用いた部品装着装置」に関して、図面(特に、【図1】参照。)と共に、次の事項が記載されている。

「【0027】部品取り扱い手段25および基板取り扱い手段8は、互いに同じ高さ基準を持つように設計され、または設置され、あるいは調整されている。これによって、基板取り扱い手段8により位置決めされた回路基板2の位置決め高さと、部品取り扱い手段25の装着ヘッド4による部品取り扱いツール3を上下動させる高さとは一義的な関係にあり、回路基板2の位置決め状態での基準高さと、吸着ノズル3aの下端に吸着保持した電子部品1の厚み寸法とのデータによって、部品取り扱いツール3のその時々に実装すべき電子部品1の種類に応じた下動位置、つまり電子部品1を回路基板2に実装するときの最適な実装高さが決まる。また、吸着ノズル3aが位置決めされた回路基板2に当接したときの装着ヘッド4上のボイスコイルモータ7の位置を検出することにより、回路基板2の吸着ノズル3aなどの部品取り扱いツール3が当接している位置の高さを一義的に検出することができる。
【0028】そこで、部品取り扱い手段25および基板取り扱い手段8による電子部品1の実装動作を利用した、疑似実装動作で、部品取り扱いツール3を前記位置決めされた回路基板2上の所定位置に押し当てたときのボイスコイルモータ7の下動位置を検出することにより、回路基板2の部品取り扱いツール3が当接している位置の高さを検出することができ、この検出高さと、回路基板2の上下方向に位置規正している基準高さとなどの既知のデータから、回路基板2の部品取り扱いツール3が当接している位置での、反りの有無と反りの量とを判定することができる。」

(2)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「電子部品装着装置1」、「前記基板において装着される位置に対して装着ヘッド13を上下(Z軸)方向に移動させるための上下軸モータ14を搭載した可動ヘッド7」、「基板の上面に設定された基板の高さを計測する基板高さ計測手段」、「基板高さの計測値と装着すべきXY座標と平面式とから所望とする位置での基板高さを算出し、この高さに基づいて、可動ヘッド7を制御することにより装着ヘッド13を作業させ部品実装を行う装置」は、前者の「電子部品実装用装置」、「前記基板において前記作業が実行される作業位置に対して作業ヘッドを昇降させることにより前記作業を実行する作業動作機構」、「前記基板の上面に設定された所定の測定点の高さ位置を測定して高さ測定データを求める高さ測定手段」、「前記曲面モデルによって導出された前記作業位置の高さ位置に基づいて前記作業動作機構を制御することにより、前記作業ヘッドに前記作業を実行させる作業制御部」に、それぞれ相当する。

また、後者の「基板の高さ計測データに基づいて、基板の反り形状を平面式で演算する算出部」と前者の「前記規制面高さデータおよび前記高さ測定データに基づいて、前記位置規制された状態における前記基板の反り形状を数式によって近似的に表す曲面モデルを求める反り形状算出部」とは、「前記高さ測定データに基づいて、前記基板の反り形状を数式によって近似的に表す曲面モデルを求める反り形状算出部」という限りで共通する。
さらに、後者の「電子部品装着装置1」が電子部品実装用の所定の作業を実行する装置であることは明らかである。

したがって、両者は、
「矩形状の基板を対象として、電子部品実装用の所定の作業を実行する電子部品実装用装置であって、
前記基板において前記作業が実行される作業位置に対して作業ヘッドを昇降させることにより前記作業を実行する作業動作機構と、
前記基板の上面に設定された所定の測定点の高さ位置を測定して高さ測定データを求める高さ測定手段と、
前記高さ測定データに基づいて、前記基板の反り形状を数式によって近似的に表す曲面モデルを求める反り形状算出部と、
前記曲面モデルによって導出された前記作業位置の高さ位置に基づいて前記作業動作機構を制御することにより、前記作業ヘッドに前記作業を実行させる作業制御部とを備えた電子部品実装用装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
〔相違点1〕
本願発明1は、「クランプ機構による位置規制範囲内に設定された位置規制面の高さ位置を示す規制面の高さ位置を示す規制面高さデータを記憶する記憶部」(以下、「記憶部」という。)及び「前記規制面高さデータおよび前記高さ測定データに基づいて、前記位置規制された状態における前記基板の反り形状を数式によって近似的に表す曲面モデルを求める反り形状算出部」(以下、「算出部」という。)を有しているのに対し、
引用発明では、上記「記憶部」を有しておらず、また、引用発明は、「基板の高さ計測データに基づいて、基板の反り形状を平面式で演算する算出部」を有している点。

〔相違点2〕
矩形状の基板の位置規制に関して、本願発明1は、「相対向する2辺の側端部をクランプ機構により上下方向に位置規制された」構成を採用しているのに対し、
引用発明は、かかる構成を採用しているか明らかでない点。

(3)判断
ア そこで、相違点1について検討する。
本願発明1と刊行物2に記載された事項とを対比すると、刊行物2の「プリント基板Sの挾持・固定が終了すると、ステップ2で基準高さを取得する」の「基準高さ」(段落【0040】)は、本願発明1の「クランプ機構による位置規制範囲内に設定された位置規制面の高さ」に相当するようにも思える。
しかしながら、刊行物2の「図2にB、Cで示すプリント基板Sを挾持している幅方向両端部付近を、該ヘッド部10に付設されている高さセンサ22により計測する」(段落【0040】)との記載から、上記刊行物2の「基準高さ」は、プリント基板Sを挾持している幅方向両端部付近で計測された高さであって、プリント基板Sを挾持している部分の高さではないから、本願発明1の「クランプ機構による位置規制範囲内に設定された位置規制面の高さ」とはいえない。
そうすると、当該「位置規制面の高さ」がないのだから、当該「クランプ機構による位置規制範囲内に設定された位置規制面の高さを記憶する記憶部」もあるとはいえない。
したがって、刊行物2には、相違点1に係る本願発明1の「記憶部」が記載されているとはいえない。

また、本願発明1と刊行物3に記載された事項とを対比すると、刊行物3の「作業基準面3b」は、その両端がクランプ機構によってクランプされているか明らかではないし、仮にクランプされているとしても、当該「作業基準面3b」のデータを記憶する記憶部があると解するに足る記載はない。
したがって、刊行物3には、相違点1に係る本願発明1の「記憶部」が記載されているとはいえない。

さらに、本願発明1と刊行物4に記載された事項とを対比すると、刊行物4に記載された【図12】(b)を見るに、確かに、回路基板の両端がクランプ機構によってクランプされてはいるが、刊行物4の「基準高さ」が本願発明1の「規制面高さ」に相当する高さとして、回路基板の両端がクランプ機構によってクランプされているとはいえないし、また、刊行物4の「基準高さ」を記憶する記憶部があると解するに足る記載はない。
したがって、刊行物4には、相違点1に係る本願発明1の「記憶部」が記載されているとはいえない。

イ また、刊行物2ないし4には、本願発明1に係る「規制面高さデータ」および「高さ測定データ」の両方のデータに相当するデータに基いて、本願発明1に係る「曲面モデルを求める」ことに相当する構成を採用すること、すなわち、相違点2に係る本願発明1の「算出部」が記載されているとはいえない。

ウ したがって、刊行物2ないし4には、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項が記載されていないから、相違点2について検討するまでもなく、引用発明において、刊行物2ないし4に記載された事項を適用して、本願発明1の相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということができない。

(4)まとめ
よって、本願発明1は、引用発明、刊行物2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明3
本願発明3は、「クランプ機構による位置規制範囲内に設定された位置規制面の高さ位置を示す規制面高さデータを記憶する記憶工程」及び「前記規制面高さデータおよび前記高さ測定データに基づいて、前記位置規制された状態における前記基板の反り形状を数式によって近似的に表す曲面モデルを求める反り形状算出工程」を発明特定事項として備えるものである。
そして、本願発明3は、本願発明1と発明のカテゴリーを異にするのみであり、前記「1 本願発明1」の「(2)対比」において、本願発明1と引用発明との相違点とした本願発明1の「クランプ機構による位置規制範囲内に設定された位置規制面の高さ位置を示す規制面の高さ位置を示す規制面高さデータを記憶する記憶部」及び「前記規制面高さデータおよび前記高さ測定データに基づいて、前記位置規制された状態における前記基板の反り形状を数式によって近似的に表す曲面モデルを求める反り形状算出部」に関する、前記「(3)判断」で説示された判断が、実質的に、妥当するものである。

そうすると、本願発明1が、前記「1 本願発明1」の「(3)判断」及び「(4)まとめ」のとおり、引用発明、刊行物2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものであるから、本願発明1と発明のカテゴリーのみを異にする本願発明3も、引用発明、刊行物2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明2及び4
本願発明2及び4は、本願発明1及び3を、それぞれ、さらに限定したものであるので、本願発明1及び3と同様に、引用発明、刊行物2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第4 むすび
以上により、本願発明1ないし4は、いずれも、引用発明、刊行物2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-11-18 
出願番号 特願2011-135949(P2011-135949)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 遠藤 邦喜  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 小柳 健悟
島田 信一
発明の名称 電子部品実装用装置および電子部品実装用の作業実行方法  
代理人 鎌田 健司  
代理人 藤井 兼太郎  
代理人 前田 浩夫  
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