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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1293962
審判番号 不服2013-19194  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-03 
確定日 2014-11-12 
事件の表示 特願2010-517488「紫外線遮断フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月29日国際公開、WO2009/013529、平成22年11月 4日国内公表、特表2010-534265〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は,国際出願日である平成20年7月18日(優先権主張 平成19年7月24日 (GB)グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国)を出願日とする特許出願であって,平成24年5月30日付で拒絶理由が通知され,同年9月3日に意見書とともに手続補正書が提出されたが,平成25年5月31日付で拒絶査定がされ,これに対し,同年10月3日に拒絶査定不服審判が請求され,同年10月24日に手続補正書(方式)が提出されたものである。
その後,当審において平成25年12月19日付で,拒絶理由を通知したところ,それに対し,平成26年3月19日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明

本願の請求項1乃至12に係る発明は,平成26年3月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

「透明ポリプロピレンフィルムであって,少なくとも第1と第2の紫外線吸収添加剤を含み,
前記第1の添加剤が,0.1重量%?5.0重量%の量でフィルム組成物中に存在する非凝集性の無機系添加剤であり,該無機系添加剤の平均粒子径が100nm未満であって,
前記第2の添加剤が,2.0重量%未満の量でフィルム中に存在する,トリアジン,ヒンダードアミン,オキサニリド,シアノアクリレート,ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンから選択される有機系添加剤を含み,
前記ベンゾトリアゾールと前記ベンゾフェノンが共にフィルム中に存在する場合,前記ベンゾトリアゾールの前記ベンゾフェノンに対する比が0.5を超え,
且つ前記有機系添加剤を可溶化するための結合剤を含まないポリプロピレンフィルム。」

第3.当審の拒絶の理由

当審において平成25年12月19日付で通知した拒絶の理由は,この出願の請求項1?8,11及び12に係る発明は,その出願前日本国内において頒布された刊行物である特表2002-529563号公報に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない(以下,「理由A」という。),及び, この出願の請求項1?12に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特表2002-529563号公報及び特開2004-161913号公報に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下,「理由B」という。),というものである。

第4.当審の判断

1.理由Aについて
(1)刊行物に記載された事項
特表2002-529563号公報(以下,「刊行物1」という。)には,以下の事項が記載されている。なお,下線は,当審による。
(ア)
「【請求項1】熱可塑性プラスチック材料からつくられたフィルムにおいて,前記フィルムの組成が少なくとも1つの有機抗紫外線化合物と少なくとも1つの無機抗紫外線化合物との組み合わせを含むことを特徴とするフィルム。
【請求項2】フィルムの組成が,前記熱可塑性プラスチック材料中の有機化合物の溶解性の改良のために,少なくとも1つの化学結合剤を含む請求項1に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項3】熱可塑性プラスチック材料が,低密度ポリエチレンである請求項1および2のいずれか1項に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項4】1つの方向に配向されたフィルムである請求項1から3のいずれか1項に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項5】2つの方向に配向されたフィルムである請求項1から3のいずれか1項に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項6】無機化合物が,超微粉砕された金属酸化物である請求項1から5のいずれか1項に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項7】無機化合物が,超微粉砕された酸化亜鉛(ZnO)である請求項1から6のいずれか1項に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項8】無機化合物が,超微粉砕された二酸化チタン(TiO_(2))である請求項1から6のいずれか1項に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項9】有機紫外線吸収化合物が,ベンゾトリアゾールである請求項1から8のいずれか1項に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項10】ベンゾトリアゾール系有機紫外線吸収化合物が,2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-ベンゾトリアゾール,2-(2’-ヒドロキシ-3’-5’-ジ-第3-ブチルフェニル)-ベンゾトリアゾール,2-(2’-ヒドロキシ-3’-5’-ジ-第3-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールに含まれる請求項9に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項11】 結合剤が,ベンゾフェノンである請求項2から10のいずれか1項に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項12】 ベンゾフェノン結合剤が,2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンである請求項11に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項13】 280乃至390nmの範囲内に含まれる波長を有する光に対する遮断物である請求項1から12のいずれか1項に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項14】 80μm未満の,好ましくは35μm未満の,厚さを有する請求項1から13のいずれか1項に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項15】 曇り度が35μmフィルムに対して30%未満,好ましくは20%未満であり,および/または70μmフィルムに対し50%未満,好ましくは40%未満である請求項1から14のいずれか1項に記載のプラスチック・フィルム。
【請求項16】 フローラッピングにより消費者製品を包装するための請求項1から15のいずれか1項に記載のプラスチック・フィルムの使用。
【請求項17】 製造方法が押出しブロー成形法である請求項1から15のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。」
(イ)
「【0004】
一部のフィルムは金属酸化物,たとえば二酸化チタン(TiO_(2))または酸化亜鉛(ZnO)のような無機化合物を含む。そのようなフィルムは広範囲の紫外線の濾光に効果的である。しかしながら,大きな欠点は二酸化チタンが不透明な白色をフィルムに与えることである。一部の適用では,たとえば包装された製品が外側から見えなければならないとき,たとえば消費者が保存中に見るときには,そのようなフィルムは使用されない。この不透明性を制限するための解決方法は超微粉砕された化合物を使用することである。超微粉砕されない二酸化チタン粒子(結晶)は約1μmの粒度を有し,さらにより大きなサイズに凝集する。このことは,この二酸化チタンは光を散乱および反射することにより“白”色を与えることを意味する。超微粉砕された二酸化チタンは約20nmの小さな粒度を有し,また小さな凝集体となる。不利な点は,反射効果と散乱効果の減少により紫外線に対する保護の点で損失が出現することである。これは,光に対する保護が吸収と反射(散乱)に依るためである。
【0005】
一部のフィルムは熱可塑性プラスチック材料中に添加されるまたは塗被物としてフィルム表面に添加される黄色顔料により着色している。そのような黄色フィルムは可視光の紫色部を濾光しそして内容物を品質低下から保護するに際し特に有効である。しかしながらフィルムが透明でありそして着色していないことを必要とする場合もある。たとえば着色製品または食品を包装するときであり,そのような場合には消費者は製品の実際の色を見ることが出来なければならない。
【0006】
紫外線吸収性を有しそして透明色を有する一部のフィルムが開発された。そのような透明フィルムは,紫外線吸収性を有する一方,プラスチック・フィルム組成物に添加されたとき透明のままである極性有機化合物を用いることにより得られる。しかしながら,そのような有機化合物の大きな欠点は無極性の熱可塑性プラスチック基材樹脂中の低安定性である。換言すれば,そのような有機化合物は均質な熱可塑性プラスチック層中へマイグレートする可能性が高く,その結果,フィルムは油を塗ったような表面を呈し,また紫外線吸収性の一部を失う。このようなことが消費者に望まれないことは明らかである。この乏しい安定性を埋合わせるために通常使用される解決法は,いくつかの層を有するフィルムをつくることである。典型的には,紫外線吸収性有機化合物を含む層は,極性熱可塑性プラスチックたとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)からつくられ,そしてこの有機化合物が逃げることが出来ないように2つの他の層で挟まれている。というのは,有機化合物は極性であり,そしてPET/PENは無極性化合物であるからである。このようにして,フィルムはその紫外線吸収性をさらに保持するようである。そのようなフィルムは,しかしながら,いくつかの層をつくるための複雑な方法のためにかなり費用がかかる。」
(ウ)
「【0008】
本発明の1つの主要な目的は,改良された紫外線吸収性を有する熱可塑性プラスチック・フィルムを提供することである。このフィルムは,包装の目的に適する薄い厚さを有し,無色透明でまた明るく,高価でなくまた製造しやすく,そしてその紫外線吸収性が長期間に渡り実質的に一定である。
【0009】
発明の概要
本発明は紫外線吸収性を有する熱可塑性プラスチック材料からつくられたフィルムに向けられ,その組成が,紫外線に対する遮断性を改良するために,少なくとも1種類の紫外線吸収性有機化合物と少なくとも1種類の紫外線吸収性無機化合物の組み合わせをさらに含むことを特徴とする。好ましくは,有機化合物はベンゾトリアゾールであり,無機化合物は超微粉砕された二酸化チタンである。さらに好ましくは,フィルム材料はバインダー化合物たとえばベンゾフェノンをさらに含むことであり,これは有機化合物と基材樹脂との相容性を改良するためである。好ましくは,フィルム厚さは80μm未満であり,さらに好ましくは35μm未満である。
【0010】
発明の詳細な説明
基材樹脂
複数層からなることができるフィルムを製造する。しかし好ましくは単一層からなるフィルムを製造する。前記の層は広範囲の種類の熱可塑性プラスチック化合物の中から選択される基材を含み,基材には好ましくは添加剤たとえば着色剤が添加される。フィルムの製造に使用する基材樹脂は,無極性の熱可塑性樹脂たとえばポリエチレン,ポリプロピレンまたはそのような樹脂の組み合わせであるが,好ましくはポリエチレンのみからつくられ,さらに好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)からつくられる。あるいは,本発明の別の実施例では基材樹脂は複数層基材をつくるために他の層と組み合わせて使用することができる。本発明の好ましい実施例では,フィルムは3層のLDPE樹脂からつくられ,中央層はLDPEと混合した抗紫外線吸収剤を含み,また両外層はLDPEのみを含み,その結果フィルム全体が単一材料である。」
(エ)
「【0013】
超微粉砕された二酸化チタン(TiO_(2))は紫外線吸収性のためフィルム組成にまた添加される別の化合物である。結晶の大きさで異なるそのような金属酸化物の2つの異なる種類が存在する。非超微粉砕二酸化チタン粒子(結晶)はおよそ1μmの粒度を有し,一層大きな粒度に凝集する。このことは,それは可視光により見つけられ,また日光を散乱および反射して“白”色を与えることを意味する。そのような特性は,本発明で要求されるようにフィルムに良好な透明性を達成するには明らかに望ましくない。われわれが使用する超微粉砕二酸化チタンは約20nmの粒度を有し,また小さな凝集体となる。思索の背景は,粒度(凝集度)を可能な限り可視範囲外に持っていって,超微粉砕品種を使用しフィルムの不透明性を減らすが紫外線波長における吸収性を維持することである。不利益は,反射および散乱効果の減少により紫外線からの保護の点でまた損失が存在することである。これは光への保護が吸収と反射(散乱)に依るためである。」
(オ)
「【0019】
本発明の第2の好ましい実施例ではフィルムは,熱可塑性樹脂中のベンゾトリアゾールのマイグレーションを減少する結合剤と共に,相乗的かつ改良された遮断特性のために超微粉砕された金属酸化物と組み合わせてベンゾトリアゾールを含有する。好ましくは,結合剤はベンゾフェノンであり,さらに好ましくはヒドロキシベンゾフェノンである。ベンゾフェノン化合物は紫外線吸収性のために使用される別の有機化合物である。ベンゾフェノンは300と400の間の範囲でベンゾトリアゾールに比較して高い透過率をしめす(すなわち紫外線遮断性はベンゾトリアゾールのそれより低い)。しかしながら,ベンゾフェノンは熱可塑性プラスチック基材化合物中でベンゾトリアゾールよりも安定である。これはベンゾトリアゾール類化合物に勝る明瞭な効果である。ベンゾフェノンは単独使用のとき紫外線吸収性を示すけれども,それは熱可塑性基材樹脂内のベンゾトリアゾールの溶解性を増加するためにすなわち前記熱可塑性樹脂への前記ベンゾトリアゾールの結合剤として本発明に本質的に使用される。
【0020】
最も好ましくは,結合剤は以下の化合物の中で選択される。すなわち,2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン,2,2',4-トリヒドロキシベンゾフェノン,2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン,2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノンである。そのような化合物の吸収範囲はヒドロキシ基によって拡大される一方,基材のいかなる実質的変色も認められない。
【0021】
本発明の好ましい実施例は3層からなるフィルムにより得られ,抗紫外線吸収剤が中央層に含まれ,そして両外層は熱可塑性基材樹脂,さらに好ましくはLDPEのみからなる。フィルムは有機吸収剤/結合剤/無機吸収剤を含有し,これらはそれぞれフィルム質量の0.3/0.6/1.0%にて溶融される。有機吸収剤は2-(2’-ヒドロキシ-3’-5’-ジ-第3-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールであり,無機吸収剤は超微粉砕された金属酸化物,好ましくは二酸化チタンまたは酸化亜鉛である。無機吸収剤はさらに好ましくは酸化亜鉛であり,これは酸化亜鉛が二酸化チタンの吸収性に等しい一方,同一濃度でより良好なフィルム明澄性を提供するからである。結合剤は,有機紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂中により可溶性にするが,ベンゾフェノン系化合物であり,好ましくは2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンである。上述の百分率組成は1つの具体例として与えられるけれども,この組成は要求特性に従い変更可能であることを理解しなければならない。」

(2)刊行物1に記載された発明
適示(ア)の請求項1を引用する8を引用する9に係るフィルムについて,適示(ウ)には,フィルムが無色透明であること(段落【0008】),基材樹脂としてポリプロピレンが使用されること(段落【0010】)が記載されていることから,刊行物1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「熱可塑性プラスチック材料からつくられた無色透明なフィルムにおいて,
前記フィルムの組成が少なくとも1つの有機抗紫外線化合物と少なくとも1つの無機抗紫外線化合物との組み合わせを含むものであり,
熱可塑性プラスチック材料がポリプロピレンであり,
有機抗紫外線化合物がベンゾトリアゾールであり,
無機抗紫外線化合物が超微粉砕された二酸化チタンである無色透明なフィルム。」

(3)対比
本願発明と引用発明を対比すると両者は,

「透明ポリプロピレンフィルムであって,第1と第2の紫外線吸収添加剤を含み,
第1の添加剤が無機系添加剤であり,第2の添加剤が,ベンゾトリアゾールを含むポリプロピレンフィルム。」の点で一致し,次の点で一応相違している。

相違点1
第1の添加剤である無機系添加剤について,本願発明は,「0.1重量%?5.0重量%の量でフィルム組成物中に存在する非凝集性の無機系添加剤であり,該無機系添加剤の平均粒子径が100nm未満であって」との限定を有するのに対し,引用発明は,そのような限定を有していない点。

相違点2
第2の添加剤であるベンゾトリアゾールについて,本願発明は,「2.0重量%未満の量でフィルム中に存在する」との限定を有するのに対し,引用発明は,そのような限定を有していない点。

相違点3
本願発明は,第2の添加剤について,「前記ベンゾトリアゾールと前記ベンゾフェノンが共にフィルム中に存在する場合,前記ベンゾトリアゾールの前記ベンゾフェノンに対する比が0.5を超え」,及び,「前記有機系添加剤を可溶化するための結合剤を含まない」との限定を有するのに対し,引用発明は,そのような限定を有していない点。

(4)判断
相違点1について
刊行物1には引用発明の無機抗紫外線化合物の含有量に関する一般的な記載が無いので,本願発明の属する技術分野(以下,「当業界」という。)において採用されている一般的な量が採用されると解することができ,そして,無機抗紫外線化合物に相当する無機吸収剤の含有量として0.1?5重量%が周知である(後記,2.理由Bについて (1)刊行物に記載された事項 (う))。
また,刊行物1には,「フィルムは有機吸収剤/結合剤/無機吸収剤を含有し,これらはそれぞれフィルム質量の0.3/0.6/1.0%」とした態様が記載されている(適示(オ))。
この態様は,結合剤を含有しているが,結合剤について刊行物1には,「有機化合物の溶解性の改良のために」(摘示(ア))「さらに含むことが好ましい」(摘示(ウ))と記載されていることから,結合剤の添加は,無機吸収剤の溶解性(含有量)とは関係がないと認められる。
そうすると,引用発明は,超微粉砕された二酸化チタンの含有量が1.0質量%である態様を具体的に包含していると認められる。
また,刊行物1には,引用発明の「超微粉砕された二酸化チタン」について「われわれが使用する超微粉砕二酸化チタンは約20nmの粒度を有し,また小さな凝集体となる。思索の背景は,粒度(凝集度)を可能な限り可視範囲外に持っていって,超微粉砕品種を使用しフィルムの不透明性を減らすが紫外線波長における吸収性を維持することである。」と記載されている(適示(エ))ことから,引用発明の「超微粉砕された二酸化チタン」は,非凝集性無機物質に該当すると認められる。
したがって,相違点1は,実質的な相違点ではない。

相違点2について
刊行物1には引用発明の有機抗紫外線化合物の含有量に関する一般的な記載が無いので,当業界において採用されている一般的な量であると解することができ,そして,有機抗紫外線化合物に相当する有機吸収剤の含有量として0.1?5重量%が周知である(後記,2.理由Bについて (1)刊行物に記載された事項 (う))。
また,刊行物1には,「フィルムは有機吸収剤/結合剤/無機吸収剤を含有し,これらはそれぞれフィルム質量の0.3/0.6/1.0%」とした態様が記載されている(適示(オ))。
この態様は,結合剤を含有しており,結合剤について刊行物1には,「有機化合物の溶解性の改良のために」(摘示(ア))「さらに含むことが好ましい」(摘示(ウ))と記載されていることから,結合剤の添加は,有機吸収剤の溶解性を増すことにより,含有量の上限を(例えば,5重量%から10重量%へ)高めると推測されるが,下限値(0.1重量%)は,必要とされる最低限の抗紫外線性能が得られる量に対応して決まると認められるから,結合剤の有無とは関係がなく変化しないと認められる。
そうすると,引用発明は,ベンゾトリアゾールの含有量が0.3質量%である態様を具体的に包含していると認められるから,相違点2も,実質的な相違点ではない。

相違点3について
本願発明は,ベンゾトリアゾールとベンゾフェノンが共にフィルム中に存在する場合に限定されているわけではなく,かつ,引用発明のフィルムは,ベンゾトリアゾールとベンゾフェノンが共にフィルム中に存在するフィルムではないから,結局,本願発明の「前記ベンゾトリアゾールと前記ベンゾフェノンが共にフィルム中に存在する場合,前記ベンゾトリアゾールの前記ベンゾフェノンに対する比が0.5を超え」は,引用発明との相違点にはならない。
また,引用発明は,「有機系添加剤を可溶化するための結合剤」(を含むこと)に関する発明を特定するための事項を有していない。
なお,引用発明は,適示(ア)の請求項1を引用する8を引用する9に係る(請求項2を引用しない)フィルムに基いて認定した発明であるところ,刊行物1には「フィルムの組成が,前記熱可塑性プラスチック材料中の有機化合物の溶解性の改良のために,少なくとも1つの化学結合剤を含む請求項1に記載のプラスチック・フィルム。」(摘示(ア)の請求項2),及び,「さらに好ましくは,フィルム材料はバインダー化合物たとえばベンゾフェノンをさらに含む」(摘示(ウ)の段落【0009】)と記載されている(当審注:「化学結合剤」と「バインダー」は,いずれも本願発明の「結合剤に相当する。」)ことからも,引用発明は,結合剤を含まない発明であると認められる。
したがって,引用発明は,本願発明の「有機系添加剤を可溶化するための結合剤を含まない」も満足する。
結局,相違点3は,実質的な相違点ではない。

したがって,本願発明は,引用発明と同一であるから,刊行物1に記載された発明である。

2.理由Bについて

上記,1.理由Aについて,に記載したとおり,本願発明は,刊行物1に記載された発明であるから,理由Bについてさらに検討するまでもないが,理由Bについても以下に検討する。

本願発明,刊行物1の記載事項,刊行物1に記載された発明(引用発明),本願発明と引用発明の一致点相違点は,上記1.理由Aについて,に記載したとおりである。

(1)刊行物に記載された事項
特開2004-161913号公報(以下,「刊行物2」という。)には,以下の事項が記載されている。
(あ)
「【請求項1】
下記成分(a)?(d)を含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなり,230℃におけるMFRが2?10g/10分であって,且つ190℃におけるスウェル比が1.20?1.40であるポリオレフィン系樹脂材料により形成されるシートであって,装飾処理を施してなることを特徴とする化粧シート。
(a)NMR法によるエチレン含有量が1?4重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体;70?96重量%
(b)190℃におけるMFRが1?10g/10分,Q値が6以上の低密度ポリエチレン;2?15重量%
(c)下記式(1)で表されるトリアリールトリアジン誘導体;0.1?5重量%
【化1】 (化学式の記載を省略)

(式中,R^(1)はイソオクチル基)
(d)エチレンと下記式(2)で表される環状アミノビニル化合物との共重合体;2?10重量%
【化2】 (化学式の記載を省略)

(式中,R^(2)及びR^(3)は,それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し,R^(4)は水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。)
(ただし,ポリオレフィン系樹脂組成物のMFRは,JIS-K6921-2:1997付属書(230℃,21.18N荷重)に準拠し,低密度ポリエチレンのMFRは,JIS-K6922-2:1997付属書(190℃,21.18N荷重)に準拠して測定した値であり,Q値は,ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)であり,スウェル比は,190℃におけるMFR測定装置の押出物の直径とノズルの直径との比で表される値である。)」
(い)
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は,上記問題点及び改良すべき課題に鑑み,ポリオレフィン系樹脂を用いた従来の化粧シートの持つ上記のような品質に関し性能を向上させることを目的としている。
すなわち,本発明は,製造工程においてシート表面が接する冷却ロールの汚れが少なく外観の優れた化粧シートを得ること,化粧シートの物性として,経時・耐熱試験におけるブリードが少ないこと,ポリオレフィン系樹脂が接する層(印刷層,透明上塗り塗膜層,基材シート)との密着を阻害しないこと,高濃度に配合しても耐候添加剤がブリードして外観を悪化させないことといった性能を備えた化粧シートを提供することを課題とする。また,ポリオレフィン系樹脂を用いながらポリ塩化ビニル系樹脂を用いた化粧シートと同等以上の熱成形性及び耐候性,透明性を持つ化粧シートを提供することを課題とする。」
(う)
「【0035】
その他に,ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入した反応型紫外線吸収剤等も用いることができる。或いは,高い透明度を要求されない場合は,無機系紫外線吸収剤を添加することもできる。無機系紫外線吸収剤としては,粒径0.2μm以下の酸化チタン,酸化セリウム,酸化鉄等が用いられる。なお,これらの紫外線吸収剤の添加量は,通常,前記樹脂組成物全量に対し0.1?5重量%程度である。」

(2)判断

相違点1,2について
刊行物2には,耐候性及び透明性を有するポリプロピレン系フイルムからなる化粧シートを得るにあたり,有機系紫外線吸収剤であるトリアジンを0.1?5重量%添加することが記載され(適示(あ),(い)),さらに,高い透明度を要求されない場合には,無機系紫外線吸収剤として,粒径0.2μm以下の酸化チタンを0.1?5重量%添加することも記載されている(適示(う))から,刊行物2に記載された透明なポリプロピレン系フイルムは,有機系紫外線吸収剤あるいは無機系紫外線吸収剤を0.1?5重量%添加した場合においてもポリプロピレン系フイルムの透明性を保ちつつ,紫外線遮断効果が得られるフィルムであると認められる。
そうすると,引用発明の有機抗紫外線化合物及び無機抗紫外線化合物について,その添加量の最適化を着想するとともに,無色透明なフィルムである点で引用発明と一致する刊行物2に記載された透明なポリプロピレン系フイルムにおいて採用されている無機物質及び有機抗紫外線化合物の添加量(それぞれ0.1重量%?5.0重量)を参照して,その中から所望の範囲を選択することにより,相違点1,2に係る構成とするという程度のことは,本願発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)であれば,容易になしうると認められる。
また,本願発明の奏する効果について実施例をみると,単に,第1と第2の紫外線吸収添加剤の添加量の合計に応じて紫外線が吸収される(【図1】乃至【図12】)とともに,第2の紫外線吸収添加剤(Tinuvine234)の添加量が多いと実施例(Tinuvine234の添加量が1%の実施例)においても「移行/ブルーム」が「あり」になる(実施例26,32,38,44,50,56)など,本願発明において,当業者に予測できない格別顕著な効果が奏されているわけでもない。

相違点3について
相違点3は,上記1.理由Aについて(4)判断,に記載したとおり,実質的な相違点ではない。

したがって,本願発明は,刊行物1,2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5.むすび
以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明についての当審の拒絶の理由は妥当なものであり,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願はこの理由により拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-10 
結審通知日 2014-06-17 
審決日 2014-07-01 
出願番号 特願2010-517488(P2010-517488)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08J)
P 1 8・ 121- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 大島 祥吾
田口 昌浩
発明の名称 紫外線遮断フィルム  
代理人 渡邊 薫  
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