• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1293982
審判番号 不服2013-19105  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-02 
確定日 2014-11-13 
事件の表示 特願2008-520154「正荷電制御剤及びその製造方法ならびにこれを用いた電子写真用トナー」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月13日国際公開、WO2007/141967〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年4月23日(優先権主張2006年5月29日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成24年8月21日に手続補正がなされ、平成25年7月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成25年12月6日付け審尋に対して平成26年1月21日に回答書を提出している。

第2 平成25年10月2日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成25年10月2日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成25年10月2日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするものであって、特許請求の範囲についての補正は、本件補正前の請求項1(平成24年8月21日付け手続補正により補正された後のもの)に、

「スチレン単量体(M1)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)とを、過酸化物系開始剤を用いて共重合して得られる共重合体を含む正荷電制御剤であって、
前記共重合体は、各単量体の共重合比(質量%)が(M1)+(M2):(M3)=99.5:0.5?65:35であり、少なくとも一つの末端がRCOO-又はRO-である正荷電制御剤。
(Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリサイクリック基である。)」とあったものを、

「スチレン単量体(M1)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)とを、過酸化物系開始剤を用い、低級アルコール中で共重合して得られる共重合体を含む正荷電制御剤であって、
前記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)が、下記式(1)で示され、
前記共重合体は、各単量体の共重合比(質量%)が(M1)+(M2):(M3)=99.5:0.5?65:35であり、少なくとも一つの末端がRCOO-又はRO-である正荷電制御剤。
(Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリサイクリック基である。)
【化1】

(式(1)中、R^(1)は水素原子又は、メチル基であり、R^(2)はアルキレン基であり、R^(3)?R^(5)はそれぞれアルキル基である。)」とする補正を含むものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次のア及びイからなるものである。
ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「スチレン単量体(M1)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)と」の「共重合」が、「低級アルコール中で」なされることを限定する。
イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)」が、「下記式(1)で示され」るものであると限定する。
「 【化1】

(式(1)中、R^(1)は水素原子又は、メチル基であり、R^(2)はアルキレン基であり、R^(3)?R^(5)はそれぞれアルキル基である。)」

2 本件補正による新規事項の追加の有無及び本件補正の目的
上記1(2)アの限定は、本件補正前の請求項4に記載されていた事項を請求項1に追加するものであり、上記1(2)イの限定は、本件補正前の、製造方法の発明である請求項3に記載されていた、当該製造方法に用いる特定の4級アンモニウム塩を請求項1に追加するものであるから、上記1(1)の補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
また、上記1(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-347445号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0014】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、少なくとも結着樹脂、着色剤、及び帯電制御剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該帯電制御剤が、重量平均分子量が1,000?100,000で、正帯電性をもたらす官能基を有する重合体からなる正帯電制御樹脂(A) と、重量平均分子量が1,000?100,000で、負帯電性をもたらす官能基を有する重合体からなる負帯電制御樹脂(B) とを含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーが提供される。」

(2)「【0015】
【発明の実施の形態】帯電制御剤
(1)正帯電制御樹脂
本発明で用いる正帯電制御樹脂(A) は、重量平均分子量(Mw)が1,000?100,000で、正帯電性をもたらす官能基を有する重合体である。該重合体は、その構造単位の何れかに当該官能基が結合していれば、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。正帯電制御樹脂は、通常、正帯電性をもたらす官能基を有するビニル系単量体と、これと共重合可能な他のビニル系単量体との共重合体であることが好ましいが、官能基を有さないビニル系単量体を重合した後、変性処理により当該官能基を導入した重合体であってもよい。結着樹脂との相溶性の観点からは、正帯電性をもたらす官能基を有する単量体単位とビニル芳香族炭化水素単量体単位と(メタ)アクリレート単量体単位とを含有する共重合体が特に好ましい。正帯電制御樹脂がトナー中の結着樹脂(重合性単量体の重合体)に相溶するものであると、トナーの帯電性がより均一になる。正帯電制御樹脂は、重合性単量体組成物中への分散性の観点から、スチレン系単量体に溶解するものであることが好ましい。
【0016】正帯電性をもたらす官能基としては、例えば、ピリジニウム基、アミノ基、第4級アンモニウム塩基などが挙げられるが、非磁性一成分現像剤中にあっても有効に機能する点で、第4級アンモニウム塩基が特に好ましい。第4級アンモニウム塩基を有する正帯電制御樹脂は、-NR_(3)^(+)・X^(-) で表されるイオン構造を有する。3個のRは、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基などの置換基であり、Xは、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、または-SO_(3)^(-)、-PO_(3)^(-)もしくは-BO_(3)^(-)を有する炭化水素基(アルキル基、芳香族炭化水素基、置換芳香族炭化水素基など)などである。
【0017】正帯電制御樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000?100,000、好ましくは2,000?50,000、より好ましくは3,000?30,000である。正帯電制御樹脂の重量平均分子量が大きすぎると、水系分散媒体中での単量体組成物の液滴の粒径分布がブロードとなる。また、重量平均分子量が大きすぎると、トナーの帯電量分布が広くなり、高温高湿下でカブリが発生しやすくなる。正帯電制御樹脂の重量平均分子量が小さすぎると、トナーの流動性が不十分となり、保存性も低下する。正帯電制御樹脂の重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0018】正帯電制御樹脂中の正帯電性をもたらす官能基が結合した構造単位の割合は、通常0.1?15重量%、好ましくは0.5?10重量%であり、多くの場合、1?6重量%程度で好ましい結果を得ることができる。この構造単位が少なすぎると、帯電能力や帯電抑制能力が低下する傾向がみられる。逆に、この構造単位が多すぎると、正帯電トナーの場合は、帯電量が高くなりすぎて、印字濃度が低くなる傾向があり、負帯電トナーの場合は、帯電量が低くなりすぎて、カブリなどを生じる傾向がある。また、この構造単位が多すぎると、親水性が強くなりすぎるため、重合性単量体組成物の液滴の分散安定性が低下しやすくなる。各構造単位の割合は、各構造単位を与える単量体成分の重合時の仕込み重量比によって代用することができる。
【0019】正帯電制御樹脂としては、トナーの帯電性が均一になることから、第4級アンモニウム塩基を有する共重合体が好ましく、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と(メタ)アクリレート単量体単位と第4級アンモニウム塩基を有する単量体単位とを有する共重合体がより好ましい。第4級アンモニウム塩基含有重合体は、以下の単量体類を用い、重合開始剤の存在下、乳化重合、分散重合、懸濁重合、溶液重合などにより重合し、さらに必要に応じて、適当な四級化剤で四級化反応させることなどにより得ることができる。
【0020】ビニル芳香族炭化水素単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-プロピルスチレン、3-プロピルスチレン、4-プロピルスチレン、2-イソプロピルスチレン、3-イソプロピルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、2-メチル-α-メチルスチレン、3-メチル-α-メチルスチレン、4-メチル-α-メチルスチレンなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン及びα-メチルスチレンが好ましい。これらのビニル芳香族炭化水素単量体は、単独であっても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】アクリレート単量体またはメタクリレート単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート単量体は、単独であっても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位は、式(I)【0022】
【化1】

【0023】〔式中、R^(1) は、水素原子またはメチル基であり、R^(2) は、ハロゲンで置換されてもよい直鎖状または分岐状の炭素原子数1?3のアルキレン基であり、R^(3) ?R^(5) は、それぞれ独立に水素原子、または炭素原子数1?6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基であり、Xは、ハロゲン原子、または炭素原子数1?6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基もしくはハロゲン原子を有していてもよく、-SO_(3)^(-)、-PO_(3)^(-)もしくは-BO_(3)^(-)のいずれかを有するベンゼンもしくはナフタレンである。〕で表される構造単位である。
【0024】特に、Xは、ハロゲン原子であるか、または炭素原子数1?6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基もしくはハロゲン原子を有していてもよいベンゼンスルホン酸アニオンであることが好ましい。このような第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位を共重合体中に導入する方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
【0025】(i) ビニル芳香族炭化水素単量体と(メタ)アクリレート単量体とN,N-二置換アミノアルキル(メタ)アクリレート単量体とを重合開始剤の存在下で共重合させた後、ハロゲン化有機化合物や酸エステル化合物などの第4級化剤を用いて、アミノ基を第4級化する方法。
(ii)N,N-二置換アミノアルキル(メタ)アクリレート単量体を第4級アンモニウム塩化した単量体、ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリレート単量体を重合開始剤の存在下で共重合させた後、有機酸またはその誘導体と反応させて塩にする方法。
【0026】(iii) ビニル芳香族単量体、(メタ)アクリレート単量体、及び第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体を重合開始剤の存在下で共重合させる方法。
(iv)ビニル芳香族炭化水素単量体とハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート単量体との共重合体と、ビニル芳香族炭化水素単量体とアミノ基含有(メタ)アクリレート単量体との共重合体とを混合し、ポリマー間で第4級化する方法。
【0027】アミノ基含有(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、エチルメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、メチルプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ-1-エチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ-1-エチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノ-1-エチル(メタ)アクリレートなどのN,N-二置換アミノアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。アルキル基の炭素原子数は、1?3が好ましい。
【0028】第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体は、前述の-NR_(3)^(+)・X^(-) 構造を有する(メタ)アクリレート化合物である。その具体例としては、N,N,N-トリメチル-N-(2-メタクリルオキシエチル)アンモニウムクロライド(DMC;メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド)やN-ベンジル-N,N-ジメチル-N-(2-メタクリルオキシエチル)アンモニウムクロライド(DML;メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド)等が挙げられる。これらの単量体は、アミノ基含有(メタ)アクリレート単量体をハロゲン化有機化合物で変性して、ハロゲン化第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体とすることによっても調製することができる。
【0029】第4級化剤としては、ハロゲン化有機化合物や酸エステル化合物がある。ハロゲン化有機化合物としては、例えば、クロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタンなどの炭素原子数1?6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキルハライド;クロロベンゼン、4-クロロトルエン、1-クロロナフタレンなどの芳香族ハライド;を挙げることができる。酸エステルとしては、例えば、メチルスルホン酸メチル、メチルスルホン酸エチルなどのアルキルスルホン酸アルキルエステル;ベンゼンスルホン酸メチルなどのベンゼンスルホン酸アルキルエステル;パラトルエンスルホン酸メチルなどのパラトルエンスルホン酸アルキルエステル;トリメチルホスフェートなどのリン酸エステル;トリメトキシボランなどのホウ酸エステル;などが挙げられる。
【0030】有機酸またはその誘導体としては、メチルスルホン酸などのアルキルスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸;トリメチルホスフェートなどのリン酸エステル;トリメトキシボランなどのホウ酸エステル;などが挙げられる。
【0031】重合方法としては、特に限定されないが、目的とする重量平均分子量を有する共重合体を得やすい点で溶液重合法が好ましい。溶剤としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;ニトリル類、アミン類、アミド類、複素環化合物などの含窒素有機化合物;ケトン類、カルボン酸エステル類、エーテル類、カルボン酸類などの含酸素有機化合物;塩素置換脂肪族炭化水素などの含塩素有機化合物;含硫黄有機化合物などが挙げられる。重合開始剤としては、後述する重合性単量体の懸濁重合において用いられるアゾ化合物、過酸化物などが用いられる。重合条件は、重合温度が通常50?200℃で、重合時間が通常0.5?20時間である。
【0032】各単量体の使用割合は、任意に選択することができるが、共重合体中のビニル芳香族炭化水素単量体由来の構造単位の割合は、通常70?98重量%、好ましくは75?95重量%、より好ましくは80?90重量%であり、(メタ)アクリレート単量体由来の構造単位の割合は、通常1.9?29.9重量%、好ましくは4.5?24.5重量%、より好ましくは9?19重量%である。第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位は、通常0.1?15重量%、好ましくは0.5?10重量%、より好ましくは1?6重量%である。」

(3)「【0045】静電荷像現像用トナー本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、及び帯電制御剤(前述の正及び負の帯電制御樹脂)を含有する着色粒子であればよく、その製造法によって特に制限されず、例えば、粉砕法や重合法により得ることができる。また、着色粒子の表面に樹脂被覆層を形成したコア・シェル構造を有するトナー(カプセルトナー)であってもよい。本発明のトナーは、懸濁重合法によって得られる重合法トナーであることが好適である。
【0046】重合法トナーは、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも重合性単量体、着色剤、及び帯電制御剤を含有する単量体組成物を懸濁重合することにより得ることができる。重合性単量体が重合して生成する重合体が結着樹脂となる。コア・シェル構造を有する重合法トナーは、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも重合性単量体、着色剤、及び帯電制御剤を含有する単量体組成物を懸濁重合することにより得られた着色粒子をコアとし、該コアの存在下にシェル用重合性単量体を懸濁重合することにより得ることができる。シェル用単量体が重合して形成される重合体層が樹脂被覆層となる。単量体組成物には、必要に応じて、離型剤、架橋性単量体、マクロモノマー、分子量調整剤、滑剤、分散助剤などの各種添加剤を含ませることができる。
・・・(略)・・・
【0055】(9)重合開始剤
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4′-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′-アゾビス-2-メチル-N-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチルプロピオアミド、2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、1,1′-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;イソブチリルパーオキサイド、2,4-ジ-クロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系;ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジ-カーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジ-カーボネート、ジ-イソプロピルパーオキシジ-カーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジ-カーボネート、ジ(2-エチルエチルパーオキシ)ジ-カーボネート、ジ-メトキシブチルパーオキシジ-カーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジ-カーボネート等のパーオキシジ-カーボネート類;(α,α-ビス-ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート等の他の過酸化物類などが例示される。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。
【0056】これらのうち、油溶性ラジカル開始剤が好ましく、特に、10時間半減期の温度が40?80℃、好ましくは45?80℃で、かつ、分子量が300以下の有機過酸化物から選択される油溶性ラジカル開始剤が定着時の臭気が改善できることから好適である。重合開始剤の使用割合は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.1?10重量部である。この割合が小さすぎると重合速度が遅く、大きすぎると分子量が低くなるので好ましくない。
・・・(略)・・・
【0061】(11)重合法トナーの製造方法
1.懸濁重合法
重合法トナーは、重合性単量体の重合により生成した結着樹脂と着色剤と帯電制御剤などを含有する重合体粒子である。この重合法トナーは、例えば、以下の手順により得ることができる。重合性単量体、着色剤、帯電制御剤(正及び負の帯電制御樹脂)、その他の添加剤などをビーズミル等の混合機を用いて混合し、必要に応じて、メディヤ型湿式粉砕機などを用いて湿式粉砕し、単量体組成物を得る。単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系分散媒体中に分散させ、撹拌し、単量体組成物の均一な液滴(体積平均粒径が50?1000μm程度の一次液滴)を形成する。重合開始剤の添加時期は、早期重合を避けるため、水系分散媒体中で液滴の大きさ均一になってからでよい。
【0062】水系分散媒体中に単量体組成物の液滴が分散した懸濁液に重合開始剤を添加混合し、さらに、高速回転剪断型撹拌機を用いて、液滴の粒径が目的とするトナー粒子に近い小粒径になるまで造粒する。この造粒した液滴(体積平均粒径が1?12μm程度程度の二次液滴)を含有する懸濁液を重合反応器に仕込み、通常5?120℃、好ましくは35?95℃の温度で懸濁重合を行う。重合温度が低すぎると、触媒活性が高い重合開始剤を用いなければならないので、重合反応の管理が困難になる。重合温度が高すぎると、低温で溶融する添加剤を含む場合、これがトナー表面にブリードし、保存性が悪くなることがある。」

(4)上記(1)ないし(3)から、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「少なくとも結着樹脂と着色剤と帯電制御剤とを含有する静電荷像現像用トナーにおける帯電制御剤であって、
前記帯電制御剤は、正帯電性をもたらす官能基を有する重合体である正帯電制御樹脂と負帯電性をもたらす官能基を有する重合体である負帯電制御樹脂とを含有し、
前記正帯電性をもたらす官能基を有する重合体は、その構造単位の何れかに前記正帯電性をもたらす官能基が結合していれば共重合体であってもよく、結着樹脂との相溶性の観点からは、前記正帯電性をもたらす官能基を有する単量体単位とビニル芳香族炭化水素単量体単位と(メタ)アクリレート単量体単位とを含有する共重合体が特に好ましく、
前記正帯電性をもたらす官能基としては、非磁性一成分現像剤中にあっても有効に機能する点で、第4級アンモニウム塩基が特に好ましく、前記正帯電制御樹脂としては、トナーの帯電性が均一になることから、第4級アンモニウム塩基を有する共重合体が好ましく、
前記第4級アンモニウム塩基を有する共重合体である正帯電制御樹脂は、-NR_(3)^(+)・X^(-) (3個のRは、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基などの置換基であり、Xは、-SO_(3)^(-)を有する置換芳香族炭化水素基などの炭化水素基である)で表されるイオン構造、具体的には、下記式(I)

〔式中、R^(1) は水素原子またはメチル基であり、R^(2) は直鎖状または分岐状の炭素原子数1?3のアルキレン基であり、R^(3) ?R^(5) はそれぞれ独立に炭素原子数1?6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基であり、Xは炭素原子数1?6の直鎖状のアルキル基と-SO_(3)^(-)を有するベンゼンである〕で表される構造単位を有する第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位を有し、
前記ビニル芳香族炭化水素単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン等が挙げられ、その中でも、スチレン及びα-メチルスチレンが好ましく、
前記アクリレート単量体またはメタクリレート単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル等が挙げられ、
前記正帯電制御樹脂中に正帯電性をもたらす官能基が結合した構造単位が少なすぎると帯電能力や帯電抑制能力が低下する傾向がみられ、逆に、前記構造単位が多すぎると、正帯電トナーの場合は帯電量が高くなりすぎて印字濃度が低くなり、負帯電トナーの場合は帯電量が低くなりすぎてカブリなどを生じる傾向があり、また、前記構造単位が多すぎると親水性が強くなりすぎて重合性単量体組成物の液滴の分散安定性が低下しやすくなるため、前記構造単位の割合は、通常0.1?15重量%、好ましくは0.5?10重量%であり、多くの場合、1?6重量%程度で好ましい結果を得ることができるので、各単量体の使用割合は、共重合体中のビニル芳香族炭化水素単量体由来の構造単位の割合が、通常70?98重量%、好ましくは75?95重量%、より好ましくは80?90重量%であり、(メタ)アクリレート単量体由来の構造単位の割合が、通常1.9?29.9重量%、好ましくは4.5?24.5重量%、より好ましくは9?19重量%であり、第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位が、通常0.1?15重量%、好ましくは0.5?10重量%、より好ましくは1?6重量%であり、
前記第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位を共重合体中に導入する方法としては、いくつかの方法があるが、例えば、N,N-二置換アミノアルキル(メタ)アクリレート単量体を第4級アンモニウム塩化した単量体、ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリレート単量体を重合開始剤の存在下で共重合させた後、有機酸またはその誘導体と反応させて塩にする方法が挙げられ、
前記共重合体の重合方法としては、目的とする重量平均分子量を有する共重合体を得やすい点で溶液重合法が好ましく、
その場合の溶剤としては、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、n-ヘキサン等の飽和炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ニトリル類等の含窒素有機化合物、ケトン類等の含酸素有機化合物、塩素置換脂肪族炭化水素等の含塩素有機化合物、含硫黄有機化合物が挙げられ、
さらに重合開始剤としては、重合法トナーにおける重合性単量体の懸濁重合において用いられるラジカル重合開始剤、具体的には、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、4,4′-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物、イソブチリルパーオキサイド等のパーオキシジ-カーボネート類、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の他の過酸化物類等が用いられ、これらのラジカル重合開始剤のうちでは、定着時の臭気が改善できることから、10時間半減期の温度が40?80℃、好ましくは45?80℃で、かつ、分子量が300以下の有機過酸化物から選択される油溶性ラジカル開始剤が特に好ましいものである、
帯電制御剤。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「スチレン」、「『(メタ)アクリル酸n-ブチル』等が具体例である『アクリレート単量体またはメタクリレート単量体』」、「『重合開始剤』として『特に好ましいもの』である『10時間半減期の温度が40?80℃、好ましくは45?80℃で、かつ、分子量が300以下の有機過酸化物』」、「メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類」及び「『正帯電性をもたらす官能基を有する重合体である正帯電制御樹脂』を含有する『帯電制御剤』」は、それぞれ、本願補正発明の「スチレン単量体(M1)」、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)」、「過酸化物系開始剤」、「低級アルコール」及び「正荷電制御剤」に相当する。
また、引用発明の「-NR_(3)^(+)・X^(-) (3個のRは、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基などの置換基であり、Xは、-SO_(3)^(-)を有する置換芳香族炭化水素基などの炭化水素基である)で表されるイオン構造、具体的には、下記式(I)

〔式中、R^(1) は水素原子またはメチル基であり、R^(2) は直鎖状または分岐状の炭素原子数1?3のアルキレン基であり、R^(3) ?R^(5) はそれぞれ独立に炭素原子数1?6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基であり、Xは炭素原子数1?6の直鎖状のアルキル基と-SO_(3)^(-)を有するベンゼンである〕で表される構造単位を有する第4級アンモニウム塩基」は、本願補正発明の「『下記式(1)で示され』る『ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)
【化1】

(式(1)中、R^(1)は水素原子又は、メチル基であり、R^(2)はアルキレン基であり、R^(3)?R^(5)はそれぞれアルキル基である。)』」に相当する。

(2)引用発明の「正荷電制御剤(正帯電性をもたらす官能基を有する重合体である正帯電制御樹脂を含有する帯電制御剤)」は、正帯電性をもたらす官能基を有する重合体である正帯電制御樹脂を含有し、前記正帯電性をもたらす官能基を有する重合体は、その構造単位の何れかに前記正帯電性をもたらす官能基が結合していれば共重合体であってもよく、結着樹脂との相溶性の観点からは、前記正帯電性をもたらす官能基を有する単量体単位とビニル芳香族炭化水素単量体単位と(メタ)アクリレート単量体単位とを含有する共重合体が特に好ましいものであり、前記正帯電性をもたらす官能基としては、非磁性一成分現像剤中にあっても有効に機能する点で、第4級アンモニウム塩基が特に好ましく、前記正帯電制御樹脂としては、トナーの帯電性が均一になることから、第4級アンモニウム塩基を有する共重合体が好ましく、前記第4級アンモニウム塩基を有する共重合体である正帯電制御樹脂は、「式(1)(記載省略)で示されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)(-NR_(3)^(+)・X^(-) (3個のRは、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基などの置換基であり、Xは、-SO_(3)^(-)を有する置換芳香族炭化水素基などの炭化水素基である)で表されるイオン構造、具体的には、式(I)(記載省略)で表される構造単位を有する第4級アンモニウム塩基)」含有(メタ)アクリレート単量体単位を有し、前記ビニル芳香族炭化水素単量体の具体例としては、「スチレン単量体(M1)(スチレン)」、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン等が挙げられ、その中でも、「スチレン単量体(M1)(スチレン)」及びα-メチルスチレンが好ましく、前記アクリレート単量体またはメタクリレート単量体の具体例としては、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル等)」が挙げられ、「式(1)(記載省略)で示されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)(前記第4級アンモニウム塩基)」含有(メタ)アクリレート単量体単位を共重合体中に導入する方法としては、いくつかの方法があるが、例えば、N,N-二置換アミノアルキル(メタ)アクリレート単量体を第4級アンモニウム塩化した単量体、ビニル芳香族単量体、及び(メタ)アクリレート単量体を重合開始剤の存在下で共重合させた後、有機酸またはその誘導体と反応させて塩にする方法が挙げられるのであるから、引用発明の「正荷電制御剤」と、本願補正発明の「正荷電制御剤」とは、「スチレン単量体(M1)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)とを、共重合して得られる共重合体を含む」点、及び、「前記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)が、式(1)(記載省略)で示され」る点で一致する。

(3)引用発明は、前記共重合体の重合方法としては、目的とする重量平均分子量を有する共重合体を得やすい点で溶液重合法が好ましく、その場合の溶剤としては、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、n-ヘキサン等の飽和炭化水素類、「低級アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類)」、ニトリル類等の含窒素有機化合物、ケトン類等の含酸素有機化合物、塩素置換脂肪族炭化水素等の含塩素有機化合物、含硫黄有機化合物が挙げられ、さらに重合開始剤としては、重合法トナーにおける重合性単量体の懸濁重合において用いられるラジカル重合開始剤、具体的には、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、4,4′-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物、イソブチリルパーオキサイド等のパーオキシジ-カーボネート類、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の他の過酸化物類等が用いられ、これらのラジカル重合開始剤のうちでは、定着時の臭気が改善できることから、「過酸化物系開始剤(10時間半減期の温度が40?80℃、好ましくは45?80℃で、かつ、分子量が300以下の有機過酸化物)」から選択される油溶性ラジカル開始剤が特に好ましいものであるから、引用発明の共重合体の重合と、本願補正発明の「スチレン単量体(M1)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)と」の「共重合」とは、上記特に好ましい場合において、「過酸化物系開始剤を用い」る点で一致する。

(4)引用発明の共重合体中の各単量体の使用割合は、ビニル芳香族炭化水素単量体由来の構造単位の割合が、通常70?98重量%、好ましくは75?95重量%、より好ましくは80?90重量%であり、(メタ)アクリレート単量体由来の構造単位の割合が、通常1.9?29.9重量%、好ましくは4.5?24.5重量%、より好ましくは9?19重量%であり、「式(1)(記載省略)で示されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)(第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体単位)」が、通常0.1?15重量%、好ましくは0.5?10重量%、より好ましくは1?6重量%であるから、引用発明の共重合体と、本願補正発明の「『スチレン単量体(M1)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)と』を共重合して得られる『共重合体』」とは、上記より好ましい場合において、「各単量体の共重合比(質量%)が(M1)+(M2):(M3)=99:1?94:6であ」る点で一致する。

(5)引用発明の共重合体は、定着時の臭気が改善できることから特に好ましい「過酸化物系開始剤(10時間半減期の温度が40?80℃、好ましくは45?80℃で、かつ、分子量が300以下の有機過酸化物)」を重合開始剤として用いて共重合された場合、少なくとも一つの末端がRCOO-又はRO-となることは当業者には明らかであるから、本願補正発明の「共重合体」と、上記特に好ましい場合において、「少なくとも一つの末端がRCOO-又はRO-である」点で一致する。

(6)上記(1)ないし(5)から、本願補正発明と引用発明とは、
「スチレン単量体(M1)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)とを、過酸化物系開始剤を用い共重合して得られる共重合体を含む正荷電制御剤であって、
前記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)が、下記式(1)で示され、
前記共重合体は、各単量体の共重合比(質量%)が(M1)+(M2):(M3)=99:1?94:6であり、少なくとも一つの末端がRCOO-又はRO-である正荷電制御剤。
(Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリサイクリック基である。)
【化1】

(式(1)中、R^(1)は水素原子又は、メチル基であり、R^(2)はアルキレン基であり、R^(3)?R^(5)はそれぞれアルキル基である。)」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
「スチレン単量体(M1)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(M2)と、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート単量体の4級アンモニウム塩(M3)」とが、
本願補正発明では、「低級アルコール中で共重合」されるのに対し、
引用発明では、共重合体の重合方法は、目的とする重量平均分子量を有する共重合体を得やすい点で溶液重合法が好ましいとされ、その場合の溶剤として、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、「低級アルコール(n-ヘキサン等の飽和炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類)」、ニトリル類等の含窒素有機化合物、ケトン類等の含酸素有機化合物、塩素置換脂肪族炭化水素等の含塩素有機化合物、含硫黄有機化合物が挙げられているものの、特に低級アルコールが好ましいとまではされていない点。

5 判断
上記相違点について判断する。
(1)スチレン単量体とメタクリレート単量体とを過酸化物系開始剤を用いて溶液重合する際の溶剤として低級アルコールを用いることは本願優先日前に周知(以下「周知技術」という。例えば、特開平4-321055号公報(【0124】?【0128】実施例10参照。)、特開平5-43605号公報(【0075】?【0079】実施例1参照。))である。

(2)引用発明の溶液重合で用いる溶剤として複数例示されている中から低級アルコールを選択すること、すなわち、引用発明において相違点に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得た程度のことである。

(3)本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から予測できた程度のものである。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
本願補正発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成24年8月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年8月21日付け手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びそれらの記載事項は、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明の発明特定事項を限定するものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕5」に記載したとおり、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-10 
結審通知日 2014-09-16 
審決日 2014-09-29 
出願番号 特願2008-520154(P2008-520154)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 定文清水 裕勝  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 清水 康司
西村 仁志
発明の名称 正荷電制御剤及びその製造方法ならびにこれを用いた電子写真用トナー  
代理人 高橋 詔男  
代理人 鈴木 三義  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ