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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01C
管理番号 1293992
審判番号 不服2014-234  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-07 
確定日 2014-11-13 
事件の表示 特願2008-209615「チップ抵抗器およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月24日出願公開、特開2009-302494〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年8月18日(優先権主張平成20年5月14日)の出願であって、原審において、平成24年10月26日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日付けで手続補正され、平成25年5月9日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年7月5日付けで手続補正されたが、同年9月27日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年1月7日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正されたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年1月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成24年12月28日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された

「【請求項1】
抵抗体と、この抵抗体の片面に接合された一対の電極と、上記抵抗体を覆う電極絶縁体とを備えているチップ抵抗器であって、
上記一対の電極間となる上記抵抗体の部分に切れ込み部が設けられており、かつ、上記一対の電極が接合された面とは反対側となる上記抵抗体の片面に、絶縁性の接着層を介して補強材が接合されているとともに、上記電極絶縁体と上記接着層とは上記切れ込み部を介して接していることを特徴とする、チップ抵抗器。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「【請求項1】
上面および下面を有する板状の抵抗体と、この抵抗体の上記下面のみに直接接合され電気的に導通する一対の電極と、上記抵抗体の上記下面のうち上記一対の電極の間の部分を覆う電極絶縁体とを備えているチップ抵抗器であって、
上記一対の電極間となる上記抵抗体の部分に切れ込み部が設けられており、かつ、上記上面に、絶縁性の接着層を介して上記抵抗体よりも厚みが大である補強材が接合されているとともに、上記接着層は、ガラス繊維を含んでおり、上記電極絶縁体と上記接着層とは上記切れ込み部を介して接していることを特徴とする、チップ抵抗器。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

なお、補正後の特許請求の範囲の請求項1には「上記一対の電極幹」との記載がある。しかしながら、当該「上記一対の電極幹」という記載の前に、「一対の電極」という用語は存在するが、「一対の電極幹」という用語は存在しない。一方、本願明細書の記載を参酌しても「一対の電極」という用語以外には記載がない。したがって、「上記一対の電極幹」は「上記一対の電極」の誤記と認め、補正後の発明を上記のように認定した。

2.新規事項の有無、シフト補正、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、「抵抗体」に関し、「上面および下面を有する板状の抵抗体」と限定し、また、「一対の電極」に関し、「この抵抗体の上記下面のみに直接接合され電気的に導通する一対の電極」と限定し、また、「電極絶縁体」に関し、「上記抵抗体の上記下面のうち上記一対の電極の間の部分を覆う電極絶縁体」と限定し、また、「上記一対の電極が接合された面とは反対側となる上記抵抗体の片面」に関し、「上記上面」と記載して整合を取り、また、「補強材」に関し、「上記抵抗体よりも厚みが大である補強材」と限定し、また、「接着層」に関し、「上記接着層は、ガラス繊維を含んでおり」と限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するとともに、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。

(2)引用発明
原審の平成25年9月27日付け補正の却下の決定に引用された特開2006-332413号公報(平成18年12月7日公開、以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ抵抗器およびその製造方法に関する。」(2頁)

ロ.「【0021】
図1?図3は、本発明の第1の実施形態に係るチップ抵抗器を示している。本実施形態のチップ抵抗器A1は、抵抗体1、支持体2、絶縁膜31,32、一対の電極4、および一対のハンダ層5を備えている。
【0022】
抵抗体1は、各部の厚みが一定で平面視長矩形状をした薄板状である。その具体的な材質としては、Fe-Cr系合金、Ni-Cr系合金、Ni-Cu系合金などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、チップ抵抗器A1のサイズと目標抵抗値に見合った抵抗率をもつ金属材料を適宜選択すればよい。
【0023】
支持体2は、チップ抵抗器A1の機械的強度を向上させるためのものであり、各部の厚みが一定な抵抗体1と同じ平面形状(長矩形状)をしたチップ状とされている。支持体2は、エポキシ樹脂などの絶縁材料からなり、抵抗体1の上面1bに接合されている。支持体2においては、所望の機械的強度を確保することができるように、その厚みt2が抵抗体1の厚みt1に応じて適宜設定されている。ここで、高抵抗値化を図るべく抵抗体1の厚みt1が小さくされている場合には、支持体2の厚みt2は大きくされており、これとは反対に抵抗体1の厚みt1が大きくされている場合には、支持体2の厚みt2は比較的小さくされている。これら寸法の具体例については後述するが、支持体2の厚みt2は、少なくとも抵抗体1の厚みt1より大きくされている。このことにより、支持体2は所定の剛性を有している。
【0024】
絶縁膜31,32は、いずれもエポキシ樹脂系の樹脂製の塗装膜である。絶縁膜31は、抵抗体1の下面1aのうち、一対の電極4間の領域を覆うように設けられている。絶縁膜32は、X方向(チップ抵抗器A1の長手方向)に沿う両側面1d全体を覆うように設けられている。
【0025】
一対の電極4は、抵抗体1の下面1aにおいてX方向に間隔を隔てて設けられている。各電極4は、後述するように、たとえば抵抗体1に銅メッキ処理を施すことにより形成されたものである。各電極4のX方向における内端面は、絶縁膜31のX方向における両端面31aに接している。すなわち、一対の電極4の間隔s1は、絶縁膜31の両端面31aによって規定されており、絶縁膜31のX方向における長さと同一の寸法となっている。
【0026】
一対のハンダ層5は、たとえば側面視略L字状に形成されている。各ハンダ層5は、抵抗体1のX方向に間隔を隔てた各端面1cおよび各電極4の表面を覆うように繋がった形態を有している。ハンダ層5の材質としては、Snが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
上記した各部の厚みの一例を挙げると、抵抗体1の厚みt1が0.02mm?0.3mm程度、支持体2の厚みt2が0.2mm?0.5mm程度、絶縁膜31,32がそれぞれ20μm程度、各電極4が30?100μm程度、各ハンダ層5が5?20μm程度である。抵抗体1の縦および横の寸法は、それぞれ2?7mm程度である。ただし、抵抗体1のサイズは目標抵抗値に応じて種々に変更され、上記以外の数値にすることもできる。支持体2のサイズについては、抵抗体1のサイズに応じて変更され、上記以外の数値にすることもできる。また、チップ抵抗器A1は、一対の電極4間の抵抗が、たとえば1mΩ?100mΩ程度の低抵抗のものとして構成されている。」(5頁)

ハ.「【0028】
次に、上記したチップ抵抗器A1の製造方法の一例を図4?図8を参照して説明する。
【0029】
まず、図4に示すように、抵抗体1および支持体2の材料となる積層板材Pを準備する。積層板材Pは、全体にわたって厚みの均一化が図られた金属製の板材である抵抗体材料10と、エポキシ樹脂などの接着性に優れた熱硬化性樹脂からなる板状の支持体材料20とを重ねあわせ、これらを加熱加圧することにより圧着接合されたものである。そして、この積層板材Pを打ち抜き加工するなどしてフレームFを形成する。なお、積層板材Pの接合手法としては、上記のような加熱加圧によるものに限定されず、たとえば接着剤を利用するなど他の接合手法を採用してもよい。
【0030】
図5に示すように、フレームFは、一定方向に延びた複数のバー状の板状部11,21(抵抗体材料10における板状部11および支持体材料20における板状部21)と、これら複数の板状部11,21を支持する矩形枠状の枠部12,22(抵抗体材料10における枠部12および支持体材料20における枠部22)とを備えている。板状部11は抵抗体1の原形となる部分であり、板状部21は支持体2の原形となる部分である。隣り合う板状部11,21どうしの間にはスリットSが形成されている。各板状部11,21の長手方向の両端には、板状部11,21と枠部12,22とを連結するための連結部13,23(抵抗体材料10における連結部13および支持体材料20における連結部23)が設けられており、連結部13,23の幅W1は、板状部11,21の幅W2よりも小さくされている。このため、連結部13,23を捩じり変形させて各板状部11,21を矢印N1方向に約90度回転させることが可能となり、各板状部11,21の側面11d,21dに対する後述の絶縁膜32の形成作業を容易化することができる。
【0031】
次いで、図6に示すように、各板状部11の支持体材料20が接合された面と反対側の面11a上に、所定サイズの矩形状の絶縁膜31を、各板状部11の長手方向にそれぞれ一定の間隔を隔てて並ぶように形成する。各絶縁膜31の形成は、たとえばエポキシ樹脂を用いて厚膜印刷することにより行なう。厚膜印刷によれば、絶縁膜31の幅や厚みを所望の寸法に正確に仕上げることができる。なお、必要に応じて、絶縁膜31の表面、あるいは板状部21の表面に標印を施す工程を行なってもよい。
【0032】
次いで、図7に示すように、各板状部11,21の一対の側面11d,21dに絶縁膜32を形成する。絶縁膜32の形成には、絶縁膜31の形成に用いたのと同一の材料を用いる。絶縁膜32の形成は、各板状部11,21を図5(a)の仮想線に示した姿勢に回転させて、一対の側面11d,21dを塗料液中に浸漬させ、その後その塗料を乾燥させることにより行なうことができる。
【0033】
次いで、図8に示すように、各板状部11の上記反対側の面11aのうち、絶縁膜31が形成されていない領域に導電層4’を形成する。導電層4’は、電極4の原形となる部分であり、その形成はたとえば銅メッキ処理により行う。メッキ処理によれば、導電層4’と絶縁膜31との間に隙間を生じさせないようにして、隣り合う絶縁膜31間の領域に導電層4’を形成することが可能である。
【0034】
上記した工程により、バー状の抵抗器集合体A1"が得られる。この抵抗器集合体A1"を仮想線C1の箇所で切断すると、ハンダ層未形成の複数のチップ抵抗器A1'が製造される。この切断位置は、各導電層4'をその幅方向(抵抗器集合体A1”の長手方向)において2分割する位置であり、その切断方向は抵抗器集合体A1"の短手方向である。これにより、チップ抵抗器A1’には、一対の電極4が形成されることとなる。このようにして、1つのフレームFから複数個のチップ抵抗器A1’を作製することができるため、その生産性は良好となる。
【0035】
次いで、チップ抵抗器A1’の抵抗体1の各端面1cおよび各電極4の表面上にハンダ層5を形成する。ハンダ層5の形成は、たとえばバレルメッキにより行なう。このバレルメッキ処理は、複数のチップ抵抗器A1’を1つのバレルに収容して行なう。各チップ抵抗器A1’は、抵抗体1の各端面1cおよび各電極4の表面の金属面が露出した構造を有しており、これら以外の部分は絶縁膜31,32によって覆われている。したがって、上記した金属面のみに対して効率よく、かつ適切にハンダ層5を形成することができる。なお、ハンダ層5を形成する前に上記した金属面に、たとえばNiからなる保護膜を形成し、その後ハンダ層5を形成してもよい。このようにして保護膜を形成すれば、電極4の酸化防止を図ることができるため、好適である。保護膜の形成も、たとえばバレルメッキ処理により行なうことができる。上記した一連の作業工程により、図1?図3に示すチップ抵抗器A1を効率よく製造することができる。」(5?7頁)

上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0021】における「図1?図3は、本発明の第1の実施形態に係るチップ抵抗器を示している。本実施形態のチップ抵抗器A1は、抵抗体1、支持体2、絶縁膜31,32、一対の電極4、・・・を備えている。」との記載、図1ないし図3によれば、チップ抵抗器は、抵抗体(1)と、一対の電極(4)と、絶縁膜(31)とを備えている。
また、上記ロ.の【0022】における「抵抗体1は、各部の厚みが一定で平面視長矩形状をした薄板状である。」との記載、同ロ.の【0023】における「抵抗体1の上面1b」との記載、同ロ.の【0025】における「抵抗体1の下面1a」との記載、及び図2によれば、前述の抵抗体(1)は、上面(1b)及び下面(1a)を有する板状である。
また、上記ロ.の【0025】における「一対の電極4は、抵抗体1の下面1aにおいてX方向に間隔を隔てて設けられている。各電極4は、後述するように、たとえば抵抗体1に銅メッキ処理を施すことにより形成されたものである。」との記載、上記ハ.の【0033】における「図8に示すように、各板状部11の上記反対側の面11aのうち、絶縁膜31が形成されていない領域に導電層4’を形成する。導電層4’は、電極4の原形となる部分であり、その形成はたとえば銅メッキ処理により行う。」との記載、図2及び図8によれば、前述の一対の電極(4)は、抵抗体(1)の下面(1a)の絶縁膜(31)が形成されていない領域に銅メッキ処理により形成されるものであるから、一対の電極(4)は、抵抗体(1)の下面(1a)のみに直接接合され電気的に導通しているということができる。
また、上記ロ.の【0024】における「絶縁膜31,32は、いずれもエポキシ樹脂系の樹脂製の塗装膜である。絶縁膜31は、抵抗体1の下面1aのうち、一対の電極4間の領域を覆うように設けられている。」との記載、及び図2によれば、前述の絶縁膜(31)は、抵抗体(1)の下面(1a)のうち一対の電極(4)の間の領域を覆っている。
また、上記ロ.の【0023】における「支持体2は、チップ抵抗器A1の機械的強度を向上させるためのものであり、各部の厚みが一定な抵抗体1と同じ平面形状(長矩形状)をしたチップ状とされている。支持体2は、エポキシ樹脂などの絶縁材料からなり、抵抗体1の上面1bに接合されている。」との記載、及び図2によれば、前述の支持体(2)は、抵抗体(1)の上面(1b)に接合されている。
また、上記ロ.の【0023】における「支持体2の厚みt2は、少なくとも抵抗体1の厚みt1より大きくされている。このことにより、支持体2は所定の剛性を有している。」との記載、及び図2によれば、前述の支持体(2)の厚み(t2)は、抵抗体(1)の厚み(t1)よりも大きくされている。

したがって、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「上面(1b)及び下面(1a)を有する板状の抵抗体(1)と、この抵抗体(1)の上記下面(1a)のみに直接接合され電気的に導通する一対の電極(4)と、上記抵抗体(1)の上記下面(1a)のうち上記一対の電極(4)の間の領域を覆う絶縁膜(31)とを備えているチップ抵抗器であって、
上記上面(1b)に、上記抵抗体(1)よりも厚みが大である支持体(2)が接合されている、チップ抵抗器。」

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明1とを対比する。
a.引用発明1の「領域」は、一対の電極(4)の間の規定された範囲(部分)であるから、「部分」ということができる。
b.引用発明1の「絶縁膜(31)」は、上記ロ.の【0024】における「絶縁膜31は、抵抗体1の下面1aのうち、一対の電極4間の領域を覆うように設けられている。」との記載によれば、「絶縁膜(31)」が、一対の電極(4)の間を絶縁しているから、「電極絶縁体」ということができる。
c.引用発明1の「支持体(2)」は、上記ロ.の【0023】における「支持体2は、チップ抵抗器A1の機械的強度を向上させるためのものであり」との記載によれば、後述する相違点を除いて、補正後の発明の「補強材」に相当する。

したがって、補正後の発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「上面および下面を有する板状の抵抗体と、この抵抗体の上記下面のみに直接接合され電気的に導通する一対の電極と、上記抵抗体の上記下面のうち上記一対の電極の間の部分を覆う電極絶縁体とを備えているチップ抵抗器であって、
上記上面に、上記抵抗体よりも厚みが大である補強材が接合されている、チップ抵抗器。」

(相違点1)
「抵抗体」の形態に関し、
補正後の発明は、「上記一対の電極間となる上記抵抗体の部分に切れ込み部が設けられている」のに対し、引用発明1は、当該「上記一対の電極間となる上記抵抗体の部分に切れ込み部が設けられている」との特定がない点。

(相違点2)
「抵抗体」の「上面」と「補強材」との接合に関し、
補正後の発明は、上記上面に、「絶縁性の接着層を介して」補強材が接合されているのに対し、引用発明1は、当該「絶縁性の接着層を介して」補強材が接合されているとの特定がない点。

(相違点3)
上記相違点2における「接着層」に関し、
補正後の発明は、「ガラス繊維を含んでいる」のに対し、引用発明1は、当該「ガラス繊維を含んでいる」との特定がない点。

(相違点4)
「電極絶縁体」と「接着層」との関係に関し、
補正後の発明は、「上記電極絶縁体と上記接着層とは上記切れ込み部を介して接している」のに対し、引用発明1は、当該「上記電極絶縁体と上記接着層とは上記切れ込み部を介して接している」との特定がない点。

そこで、上記相違点1ないし4について検討する。
チップ抵抗器において、抵抗値を調整するために一対の電極間となる抵抗体の部分に切れ込み部を設けることは、例えば、平成25年5月9日付け最後の拒絶理由に引用された特開平7-192902号公報(段落【0017】における「抵抗フィルム15’に、図示しないが写真平板法を用いて構造を形成し、エッチングして、個々の抵抗器の抵抗路15を形成する。」との記載、図1)、特開2001-351801号公報(段落【0018】における「レーザ照射により抵抗体4を、たとえばL字型に削り(レーザトリミングし)ながら、その抵抗値が所望の値になるように合わせ込む」との記載)に開示されているように周知である。
また、上記引用例1の上記ハ.の【0029】における「積層板材Pの接合手法としては、上記のような加熱加圧によるものに限定されず、たとえば接着剤を利用するなど他の接合手法を採用してもよい。」との記載によれば、引用発明1の「抵抗体(1)の上面(1b)」と「支持体(2)」(補強材)との接合は、接着剤を介して接合してもよいものである。そして、抵抗器において、接着層に、ガラス繊維を含ませることは、例えば、特開昭57-158946号公報(1頁右下欄4?10行における「抵抗材料層のある面側を、・・・プリプレグを介して接合する」との記載)、特開昭62-257702号公報(3頁左下欄14行?同頁右下欄2行における「エポキシ樹脂その他の熱硬化性樹脂、あるいはこれらの樹脂をガラスクロスその他の繊維材料に含浸してなるプリプレグ」との記載)に開示されるように周知である。
そうすると、上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明1に上記周知技術を採用して、「抵抗体(1)」の形態に関し、補正後の発明のように、「上記一対の電極間となる上記抵抗体の部分に切れ込み部を設ける」こと(相違点1)、また、「抵抗体(1)の上面(1b)」と「支持体(2)」(補強材)との接合に関し、補正後の発明のように、上記上面に、「絶縁性の接着層を介して」補強材を接合すること(相違点2)、また、当該「接着層」に関し、「ガラス繊維を含んでいる」ものとすること(相違点3)は容易になし得ることである。その際、前述の特開2001-351801号公報(段落【0018】における「その表面にたとえばエポキシ樹脂からなるペーストを印刷などにより塗布し、硬化させることにより第2保護膜52を形成する(S8)。なお、この第2保護膜52は、前述のトリミングによる溝内を埋める保護膜」との記載)によれば、保護膜(電極絶縁体)は、抵抗体のトリミングによる溝(切れ込み部)を介して下部層(すなわち、接着層)に接することが示唆されている。したがって、「電極絶縁体」と「接着層」との関係に関し、補正後の発明のように、「上記電極絶縁体と上記接着層とは上記切れ込み部を介して接している」(相違点4)ことは自然である。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明1及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後の発明は引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成26年1月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
原審の平成25年5月9日付け最後の拒絶理由に引用された特開平7-192902号公報(平成7年7月28日公開、以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ニ.「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、請求項1の前提部に記載のSMD(Surface Mounted Devices:表面実装デバイス)構造の抵抗器及びその製造方法に関するものである。」(3頁3欄)

ホ.「【0002】
【発明の背景】SMD技術は、平型構体を工業的に製造する際にますます利用されるようになっている。この表面実装技術では、構成素子はワイヤ状の接続ピンでプリント回路板に接続されるのではなく、平坦なコンタクト素子を用いて半田付けにより接続される。この半田付けは、リフロー法(再溶融ソルダリング)或いは、錫の浴を使用するフローソルダリング即ちウェーブソルダリング等の他の公知の方法により行うことが出来る。表面実装の主要な利点は、プリント回路板上の所要空間を減少させ、またこれをより良く利用できることである。構成素子が小さくなるほど、その効果は大きくなる。
【0003】代表的なSMD被膜抵抗器(チップ抵抗器ともいう)において、抵抗膜或いは抵抗層は、基板のエッジに配置された導電性の接続層によって、基板のエッジの周囲に係合しコンタクト素子としてプリント回路板に半田付けされた2つの半田付け可能な外部キャップに接続されている(ドイツ特許公開第3705279A1号参照)。このような抵抗器は、絶縁材料製、例えば酸化アルミニウム製の共通基板プレート上に、厚膜技術により、多くの抵抗層素子を互いに平行なスリット状の凹部の相互間に形成した後、薄膜技術によって、抵抗層素子のエッジからスリット状の凹部を通り基板の裏面にまで及ぶ電極層を形成して外部キャップを形成し、その後、基板をスリット状凹部を横断する方向に分割して、それによって形成された抵抗器を分離することにより製造出来る。このようにするかわりに、外部キャップを形成するようにエッジに電極フィルムが設けられているストリップ状の絶縁基板上に、抵抗層を薄膜技術によって形成してもよい。この抵抗層をエッチングして予め定められた抵抗素子パタンを形成し、最後に基板を分割してそれぞれの抵抗器に分離する。この方法では、何の困難もなく大量に抵抗器を製造することは出来ない。また、この抵抗器は、特に基板が絶縁材料であることと、所要強度を得るために必要とされる厚みのために基板を通した放熱が比較的悪いため、高電流及び大きな電力損失の装置に対しては適さない。」(3頁3欄)

ヘ.「【0005】
【発明の概要】本願発明の目的は、多量のSMD抵抗器、好ましくは測定等を目的とした低抵抗(≦1Ω)の精密抵抗器を、低コストで可及的に小さい寸法で、高い負荷容量(電力定格)を持つように形成できる製造方法を提供することである。この目的は、請求項に記載されている抵抗器及び方法のそれぞれによって達成される。
【0006】この発明に従って製造された抵抗器では、代表的には銅からなり、実効的に電流を供給する機能を果たすだけでなく、支持プレート即ち基板と同時に熱伝導性の冷却体としても作用する面積の大きいプレート状のコンタクト素子によって抵抗路からプリント回路板への熱伝導が最良になるようにされている。従って、例えば、約15K/W程度という極めて低い内部熱抵抗を有する抵抗器を生成することが出来る。(市販の同等構造のものでは、170K/Wにまでなる。)この抵抗は、このような良好な熱伝導により、その負荷容量を有している。代表的な実施例では、負荷容量は2Wにもなり、電流については30Aまで取り扱うことができる。また、高いパルス負荷容量も得られる。代表的な抵抗値は、1Ωから1mΩの間の値である。抵抗の厚さは1.5mmよりも小さい。
【0007】更に、この抵抗は、コンタクト素子によりリードの抵抗が極めて低いことを特徴としている。その結果、抵抗器は、所定の抵抗性材料についての可及的に低い温度係数(TC)を持ち、多くの場合、4端子構造(Vierleiterausfuehrung)(ケルビン技術)が不要となる。この発明を用いない場合には、総合抵抗値及びTCに対するコンタクト点による影響を防止するために、測定用抵抗器には4端子構造が必要であるが、この構造は非常に小さな素子を用いて作らねばならず実現が困難なものである。
【0008】更に、この発明の抵抗器は、実用上重要な他の様々な要求を満足する。特に、実証済の信頼性のあるプロセス技術を使用することにより、大量かつ低コストの製造で、しかも、高精度で抵抗器を製造することが出来る。例えば、少なくとも2000個の精密抵抗器を、一度に即ち事実上同時に銅プレート上に形成することが出来る。この点に関し、支持体として作用する金属プレートの機械的強度が従来のSMD抵抗器の絶縁材料基板に比べて高いことも利点である。高価でなく、また、特に環境汚染を起こさない材料を使うことが出来る。実証済の好ましくはCuNiをベースとした合金の抵抗フィルムを使用すると、TCが小さく公差も小さい抵抗器を生成することが出来る。特に、抵抗路を幾何学的に適切に配置することにより、抵抗値の通常の調整を、コンピュータ制御されたフライスによって特に簡単かつ正確に行うことが出来る。」(3頁4欄?4頁5欄)

ト.「【0010】
【詳細な説明】本願発明を好ましい実施例によって詳細に説明する。図1に示すように、矩形の支持プレート10によって、蛇行する抵抗路15が支持されている。抵抗路15は、保護ラッカ層(図2の20)の下に設けられているため、破線で示す。抵抗路15の端部は、支持プレート10の互いに対向する2つのエッジにおいて、それぞれのストリップ状の金属層16により支持プレートに電気的に接続されている。
【0011】抵抗器の内部構造を図2に示す。図示のように、支持プレート10は、ストリップ状の金属層16に平行に延びる間隙11によって互いに電気的に分離された2つのプレート素子10A及び10Bを含んでいる。間隙11は、特に図3に分かりやすく示されている。この間隙はエポキシ樹脂のような固体絶縁材料12で充填されている。この固体絶縁材料12は、2つのプレート素子10A及び10Bを機械的に安定するように結合して保持しており、2つのプレート素子と共に支持プレート10を形成している。
【0012】また、プレート素子10A及び10Bを機械的に結合するについては別の方法も考えられる。例えば、プレート素子と抵抗路15の間に適切な絶縁構造を設けてもよい。
【0013】抵抗路の端部と同様に、プレート素子10A及び10Bの側部エッジよりも幾らか内側で終端部を有する絶縁層18が抵抗路15と支持プレート10の間に設けられている。露出した状態のプレート素子のエッジ領域は、図2に示すように、抵抗路15の支持プレート10と反対側の表面の端部上にまで伸びる金属層16により覆われている。図示のように金属層相互間の抵抗器表面は、上述した保護ラッカ層20でカバーされている。絶縁層18は、例えば、適切な接着剤で被覆されたポリイミドプラスチック材料製フィルムのような、出来るだけ良好な熱伝導性を有する熱安定性の接着性フィルムからできている。
【0014】プレート素子10A及び10B、更に、好ましくは、金属層16とは、銅からなることが好ましい。一方、抵抗路15は、精密抵抗器用として適することが実証されているCuNi合金或いは他の合金から形成されている。銅製構成素子の外部露出面、及び、特にプレート素子10A及び10Bの回路板に抵抗器を半田付けするための大きな接続面は、腐食を防止し、かつ、半田付けを容易にするために錫で被覆することが出来る。代表的な実施例においては、SMD抵抗器は、約7mmの長さと全体で0.8mmの厚さとを有している。」(4頁5?6欄)

チ.「【0015】上述の抵抗器の製造は、この発明に従って、図4に概略的に示すステップにより行うことが出来る。先ず、図4(a)に示すような、複合フィルム或いは箔を、抵抗性の薄い金属シート15’及び絶縁層18(図2)を構成する薄い接着性フィルム18’から、所要の抵抗器の数に応じた大きさになるように生成する。既に述べたように、2000個以上の抵抗器を同時に製造しても何らの問題も生じない。互いに平行な列をなした細長い開孔22をこの大きな面を有する複合フィルムに形成する。開孔22の位置は、後に形成するストリップ状の金属層16(図1)に対応している。細長い開孔22は、自動穿孔機で形成するか、又は、打ち抜いて形成することが出来る。現在推奨される方法では、各列が長手方向に隔てられた複数の細長い開孔22を含み、開孔22の長さが形成されるべき構成素子の幅よりも幾らか大きくされる。
【0016】図4(b)に示すように、開孔が設けられた薄い複合フィルムを、それより厚く、例えば約0.7mm、適切な大きさを有し、支持プレート10(図2)となる銅シート又は銅プレート10’上に重ね合わせる。この積層体は、それ自体は周知の方法である多層真空プレスで機械的に接合することが出来る。
【0017】次いで、図4(c)に示すように、抵抗フィルム15’に、図示しないが写真平板法を用いて構造を形成し、エッチングして、個々の抵抗器の抵抗路15を形成する。その後、これらの抵抗路を、それ自体は周知の態様で、コンピュータ制御されたマイクロフライスを有する機械的なフライス加工によって、共通の支持体(パネル)上で調整する。この調整を行った後、スクリーン印刷プロセスにより、エッチングした構造体を例えばエポキシ樹脂からなる保護ラッカ層20でカバーする。但し、細長い開孔22に沿った抵抗路15の表面のエッジ領域24と銅プレート10’の細長い開孔22の内部に位置する領域とは露出させたままにしておく。
【0018】次のステップは、図4(d)に示すように、保護用ラッカでカバーされていない領域を電気的に銅メッキして金属層16(図1及び図2)を生成することである。この金属層16は銅プレート10’を抵抗路15に電気的に接続するものであり、その厚さは約30?50μmである。
【0019】図4(e)に示すように、抵抗器毎に、2つのプレート素子10A及び10B(これらのプレート素子10Aと10Bは金属層16により互いに接続されている)をそれぞれ電気的に分離するための間隙11(図2及び図3)を、対をなす金属層16の相互間で抵抗路の下に形成する。これは、積層体の裏面(図では底面)側の銅プレート10’をエッチングすることによって行うことが好ましい。次いで、この積層体を分割して個別の抵抗器を形成する前に、間隙11をエポキシ樹脂或いは同様の適切な絶縁材料12(図2)で充填する。これは、スクリーン印刷技術に相当する方法により行うことが出来る。
【0020】図示の例においては、上記の全ステップが終了して初めて、図4(f)に示すような抵抗器を個別に分離することが出来る。これを行うための1つの方法は、座標打ち抜き機(Koordinatenstanze)を使用することである。この座標打ち抜き機によって、金属層16を細長い開孔22の長手方向の中心に沿ってのびる切断線に沿って、また、それと垂直に抵抗路のエッジの長手方向に沿ってのびる切断線に沿って抵抗器を次々に分離し、図1及び図3に示すような形の構成素子を生成する。」(4頁6欄?5頁7欄)

上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ニ.の【0001】における「この発明は、・・・SMD(Surface Mounted Devices:表面実装デバイス)構造の抵抗器・・・に関するものである。」との記載、上記ト.の【0010】における「図1に示すように、矩形の支持プレート10によって、蛇行する抵抗路15が支持されている。抵抗路15は、保護ラッカ層(図2の20)の下に設けられているため、破線で示す。抵抗路15の端部は、支持プレート10の互いに対向する2つのエッジにおいて、それぞれのストリップ状の金属層16により支持プレートに電気的に接続されている。」との記載、図1及び図2によれば、抵抗器は、抵抗路(15)と、一対の金属層(16)と、保護ラッカ層(20)とを備えている。
また、上記ト.の【0010】における「抵抗路15の端部は、支持プレート10の互いに対向する2つのエッジにおいて、それぞれのストリップ状の金属層16により支持プレートに電気的に接続されている。」との記載、上記チ.の【0017】における「図4(c)に示すように、抵抗フィルム15’に、図示しないが写真平板法を用いて構造を形成し、エッチングして、個々の抵抗器の抵抗路15を形成する。・・・スクリーン印刷プロセスにより、エッチングした構造体を例えばエポキシ樹脂からなる保護ラッカ層20でカバーする。但し、細長い開孔22に沿った抵抗路15の表面のエッジ領域24と銅プレート10’の細長い開孔22の内部に位置する領域とは露出させたままにしておく。」との記載、同チ.の【0018】における「図4(d)に示すように、保護用ラッカでカバーされていない領域を電気的に銅メッキして金属層16(図1及び図2)を生成することである。」との記載、図1、2、4(c)及び4(d)によれば、前述の一対の金属層(16)は、抵抗路(15)のエッジ領域(24)に接合されていることが読み取れる。
また、上記ト.の【0010】における「図1に示すように、・・・蛇行する抵抗路15」との記載、上記チ.の【0017】における「図4(c)に示すように、抵抗フィルム15’に、図示しないが写真平板法を用いて構造を形成し、エッチングして、個々の抵抗器の抵抗路15を形成する。」との記載、及び図1における、破線で示された抵抗路(15)の平面図上の形状に着目すれば、前述の抵抗路(15)は、エッチングにより切れ込み部が設けられていることが見て取れる。
また、上記チ.の【0017】における「図4(c)に示すように、抵抗フィルム15’に、図示しないが写真平板法を用いて構造を形成し、エッチングして、個々の抵抗器の抵抗路15を形成する。・・・スクリーン印刷プロセスにより、エッチングした構造体を例えばエポキシ樹脂からなる保護ラッカ層20でカバーする。」との記載、及び図4(c)によれば、前述の保護ラッカ層(20)は、抵抗路(15)をカバーしている。
また、上記ト.の【0010】における「図1に示すように、矩形の支持プレート10によって、蛇行する抵抗路15が支持されている。」との記載、上記チ.の【0015】における「図4(a)に示すような、複合フィルム或いは箔を、抵抗性の薄い金属シート15’及び絶縁層18(図2)を構成する薄い接着性フィルム18’から、所要の抵抗器の数に応じた大きさになるように生成する。」との記載、上記チ.の【0016】における「図4(b)に示すように、開孔が設けられた薄い複合フィルムを、それより厚く、例えば約0.7mm、適切な大きさを有し、支持プレート10(図2)となる銅シート又は銅プレート10’上に重ね合わせる。この積層体は、それ自体は周知の方法である多層真空プレスで機械的に接合することが出来る。」との記載、図1、4(a)及び4(b)によれば、支持プレート(10)は、抵抗路(15)の片面に絶縁層(18)を介して接合されている。ここで、図2における、支持プレート(10)及び抵抗路(15)の配置関係に着目すれば、支持プレート(10)が接合されている抵抗路(15)の片面は、一対の金属層(16)が接合された抵抗路(15)のエッジ領域(24)とは反対側となる面である。

したがって、上記引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「抵抗路(15)と、この抵抗路(15)のエッジ領域(24)に接合された一対の金属層(16)と、上記抵抗路(15)をカバーする保護ラッカ層(20)とを備えている抵抗器であって、
上記一対の金属層(16)間となる上記抵抗路(15)の部分に切れ込み部が設けられており、かつ、上記一対の金属層(16)が接合されたエッジ領域(24)とは反対側となる上記抵抗路(15)の片面に、絶縁層(18)を介して支持プレート(10)が接合されている、抵抗器。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明2とを対比する。
d.引用発明2の「抵抗路(15)」は、上記ト.の【0014】における「抵抗路15は、精密抵抗器用として適することが実証されているCuNi合金或いは他の合金から形成されている。」との記載によれば、「抵抗体」である。
e.引用発明2の「エッジ領域(24)」は、上記チ.の【0017】における「図4(c)に示すように、抵抗フィルム15’に、図示しないが写真平板法を用いて構造を形成し、エッチングして、個々の抵抗器の抵抗路15を形成する。・・・スクリーン印刷プロセスにより、エッチングした構造体を例えばエポキシ樹脂からなる保護ラッカ層20でカバーする。但し、細長い開孔22に沿った抵抗路15の表面のエッジ領域24と銅プレート10’の細長い開孔22の内部に位置する領域とは露出させたままにしておく。」との記載、及び図4(c)によれば、抵抗路(15)(抵抗体)の表面のエッジ領域(24)であるから、「抵抗路(15)」(抵抗体)の「片面」ということができる。
f.引用発明2の「一対の金属層(16)」は、上記ト.の【0010】における「抵抗路15の端部は、支持プレート10の互いに対向する2つのエッジにおいて、それぞれのストリップ状の金属層16により支持プレートに電気的に接続されている。」との記載、図1及び図2によれば、抵抗路(15)(抵抗体)におけるそれぞれの電極であるから、「一対の電極」ということができる。
g.引用発明2の「カバー」は、英語では、coverであり、「物を覆うこと」が原意であるから、「覆う」ということができる。
h.引用発明2の「保護ラッカ層(20)」は、上記ト.の【0013】における「図示のように金属層相互間の抵抗器表面は、上述した保護ラッカ層20でカバーされている。」との記載、及び図2によれば、一対の金属層(16)(一対の電極)の間を絶縁しているから、「電極絶縁体」ということができる。
i.引用発明2の「絶縁層(18)」は、上記ト.の【0013】における「絶縁層18は、例えば、適切な接着剤で被覆されたポリイミドプラスチック材料製フィルムのような、出来るだけ良好な熱伝導性を有する熱安定性の接着性フィルムからできている。」との記載によれば、「絶縁性の接着層」ということができる。
j.引用発明2の「支持プレート(10)」は、上記ト.の【0010】における「図1に示すように、矩形の支持プレート10によって、蛇行する抵抗路15が支持されている。」との記載、上記ヘ.の【0008】における「支持体として作用する金属プレートの機械的強度が従来のSMD抵抗器の絶縁材料基板に比べて高いことも利点である。」との記載によれば、抵抗路(15)を支持し機械的強度が高いから、「補強材」ということができる。
k.引用発明2の「抵抗器」は、上記ホ.の【0003】における「代表的なSMD被膜抵抗器(チップ抵抗器ともいう)」との記載によれば、「チップ抵抗器」ということができる。

したがって、本願発明と引用発明2は、以下の点で一致する。

<一致点>
「抵抗体と、この抵抗体の片面に接合された一対の電極と、上記抵抗体を覆う電極絶縁体とを備えているチップ抵抗器であって、
上記一対の電極間となる上記抵抗体の部分に切れ込み部が設けられており、かつ、上記一対の電極が接合された面とは反対側となる上記抵抗体の片面に、絶縁性の接着層を介して補強材が接合されている、チップ抵抗器。」

そして、以下の点で、一応相違する。

<相違点>
「電極絶縁体」と「接着層」との関係に関し、
本願発明は、「上記電極絶縁体と上記接着層とは上記切れ込み部を介して接している」のに対し、引用発明2は、当該「上記電極絶縁体と上記接着層とは上記切れ込み部を介して接している」か不明な点。

そこで、上記相違点について検討する。
上記チ.の【0017】における「図4(c)に示すように、抵抗フィルム15’に、図示しないが写真平板法を用いて構造を形成し、エッチングして、個々の抵抗器の抵抗路15を形成する。・・・スクリーン印刷プロセスにより、エッチングした構造体を例えばエポキシ樹脂からなる保護ラッカ層20でカバーする。但し、細長い開孔22に沿った抵抗路15の表面のエッジ領域24と銅プレート10’の細長い開孔22の内部に位置する領域とは露出させたままにしておく。」との記載、上記ト.の【0010】における「抵抗路15は、保護ラッカ層(図2の20)の下に設けられているため、破線で示す。」との記載、及び図1における、破線で示された抵抗路(15)(抵抗体)の平面図上の形状に着目すれば、保護ラッカ層(20)(電極絶縁体)は、エッチングで形成された抵抗路(15)の表面だけでなく切れ込み部もカバーしているから、当該切れ込み部を介して絶縁層(18)(接着層)に接していることは明らかである。

したがって、上記相違点は、実質的なものでなく、本願発明と引用発明2は、異なるものということはできない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許出願前に日本国内において、頒布された引用例2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2014-09-09 
結審通知日 2014-09-16 
審決日 2014-09-29 
出願番号 特願2008-209615(P2008-209615)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01C)
P 1 8・ 113- Z (H01C)
P 1 8・ 575- Z (H01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 萩原 義則
井上 信一
発明の名称 チップ抵抗器およびその製造方法  
代理人 田中 達也  
代理人 鈴木 伸太郎  
代理人 仙波 司  
代理人 土居 史明  
代理人 吉田 稔  
代理人 臼井 尚  
代理人 小淵 景太  
代理人 鈴木 泰光  

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