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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1294059 |
審判番号 | 不服2012-17902 |
総通号数 | 181 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-09-13 |
確定日 | 2014-11-11 |
事件の表示 | 特願2007-166829「モックアップデータジェネレータを提供するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月17日出願公開、特開2008- 9984〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 (1)本件審判請求に係る出願(以下、「本願」と記す)は、 2006年6月27日付けのアメリカ合衆国における出願を基礎とした、パリ条約に基づく優先権の主張を伴って、 平成19年6月25日付けで出願されたものであって、 平成22年4月23日付けで審査請求がなされ、 平成23年10月31日付けで拒絶理由通知(平成23年11月8日発送)がなされ、 平成24年1月6日付けで意見書が提出されるとともに、 同日付けで手続補正書が提出され、 平成24年7月12日付けで拒絶査定(平成24年7月17日謄本発送)がなされたものである。 (2)本件審判請求は、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものである、との審決を求める。」との趣旨で、 平成24年9月13日付けで請求されたものであって、 同日付けで手続補正書が提出されたものである。 なお、 平成24年12月19日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、 平成25年2月14日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(平成25年2月19日発送)がなされ、これに対して 平成25年5月10日付けで回答書が提出されている。 第2.平成24年9月13日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年9月13日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 平成24年9月13日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、下記本件補正前の特許請求の範囲から、下記本件補正後の特許請求の範囲に補正しようとするものである。 <本件補正前の特許請求の範囲> 「【請求項1】 他のオブジェクトを含むフレームワーク内で実装されるモックアップオブジェクト用に、モックアップデータを作成するための方法であって、 前記モックアップデータを作成すべき前記モックアップオブジェクトの名前をユーザから受け取るステップであって、前記オブジェクトが1つまたは複数のノードを含む、ステップと、 前記オブジェクトの各ノードについて作成されるレコードの数をユーザから受け取るステップと、 既存のモックアップデータを修正するか、それとも各ノードについて新しいモックアップデータを作成するか判定するステップと、 前記モックアップデータについて開始範囲および終了範囲をユーザから受け取るステップと、 前記フレームワーク内で格納されているメタデータならびに前記開始範囲および終了範囲に基づいて、前記オブジェクトの各ノードについて前記モックアップデータを、前記フレームワーク内で生成するステップとを含む方法。 【請求項2】 前記ユーザが前記オブジェクトの各ノード内の既存のモックアップデータを保存することを可能にするステップをさらに含み、前記オブジェクトがビジネスオブジェクトを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記判定するステップが、前記既存のモックアップデータが保存された後で、前記ユーザが前記オブジェクトの各ノード内の前記既存のモックアップデータをパージすることを可能にするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記オブジェクトの各ノードについてモックアップデータのレコードを作成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記判定するステップが、新しいモックアップデータを作成したいか、それとも既存のモックアップデータを変更したいかユーザに決定するように促すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記ユーザに対して、前記オブジェクトについて子ノード対親ノードの比を表示するステップと、 前記ユーザに対して、各ノードについて作成されることになるレコードの前記数を表示するステップと、 前記ユーザがレコードの前記数を修正することを可能にするステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項7】 前記フレームワークがコンピュータフレームワークである、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 他のオブジェクトを含むフレームワーク内で実装されるモックアップオブジェクト用に、モックアップデータを作成するためのシステムであって、 プロセッサと、 メモリとを備え、前記プロセッサおよび前記メモリが、 前記モックアップデータを作成すべき前記モックアップオブジェクトの名前をユーザから受け取るステップであって、前記オブジェクトが1つまたは複数のノードを含む、ステップと、 前記オブジェクトの各ノードについて作成されるレコードの数をユーザから受け取るステップと、 既存のモックアップデータを修正するか、それとも各ノードについて新しいモックアップデータを作成するか判定するステップと、 前記モックアップデータについて開始範囲および終了範囲をユーザから受け取るステップと、 前記フレームワーク内で格納されているメタデータならびに前記開始範囲および終了範囲に基づいて、前記オブジェクトの各ノードについて前記モックアップデータを、前記フレームワーク内で生成するステップとを含む方法を実行するように構成される、システム。 【請求項9】 前記判定するステップが前記ユーザが前記オブジェクトの各ノード内の既存のモックアップデータを保存することを可能にすることをさらに含み、前記オブジェクトがビジネスオブジェクトを含む、請求項8に記載のシステム。 【請求項10】 前記判定するステップが前記既存のモックアップデータが保存された後で、前記ユーザが前記オブジェクトの各ノード内の前記既存のモックアップデータをパージすることを可能にすることをさらに含む、請求項8に記載のシステム。 【請求項11】 前記オブジェクトの各ノードについてモックアップデータのレコードを作成することをさらに含む、請求項8に記載のシステム。 【請求項12】 前記判定するステップが、新しいモックアップデータを作成したいか、それとも既存のモックアップデータを変更したいかユーザに決定するように促すことをさらに含む、請求項8に記載のシステム。 【請求項13】 前記ユーザに対して、前記オブジェクトについて子ノード対親ノードの比を表示すること、 前記ユーザに対して、各ノードについて作成されることになるレコードの前記数を表示すること、および、 前記ユーザがレコードの前記数を修正することを可能にすることをさらに含む、請求項8に記載のシステム。 【請求項14】 前記フレームワークがコンピュータフレームワークである、請求項8に記載のシステム。 【請求項15】 他のオブジェクトを含むフレームワーク内で実装されるモックアップオブジェクト用に、モックアップデータを作成するための方法であって、 前記モックアップデータを作成すべき前記モックアップオブジェクトの名前をユーザから受け取るステップであって、前記オブジェクトが1つまたは複数のノードを含む、ステップと、 前記オブジェクトの各ノードについて作成されるレコードの数をユーザから受け取るステップと、 既存のモックアップデータを修正するか、それとも各ノードについて新しいモックアップデータを作成するか判定するステップと、 前記モックアップデータについて開始範囲および終了範囲をユーザから受け取るステップと、 前記フレームワーク内で格納されているメタデータならびに前記開始範囲および終了範囲に基づいて、前記オブジェクトの各ノードについて前記モックアップデータを、前記フレームワーク内で生成するステップとを含む方法を実行するようにプロセッサを構成するための命令を含むコンピュータ可読媒体。 【請求項16】 前記ユーザが前記オブジェクトの各ノード内の既存のモックアップデータを保存することを可能にすることをさらに含み、前記オブジェクトがビジネスオブジェクトを含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。 【請求項17】 前記判定するステップが前記既存のモックアップデータが保存された後で、前記ユーザが前記オブジェクトの各ノード内の前記既存のモックアップデータをパージすることを可能にすることをさらに含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。 【請求項18】 前記オブジェクトの各ノードについてモックアップデータのレコードを作成することをさらに含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。 【請求項19】 前記判定するステップが、新しいモックアップデータを作成したいか、それとも既存のモックアップデータを変更したいかユーザに決定するように促すことをさらに含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。 【請求項20】 前記ユーザに対して、前記オブジェクトについて子ノード対親ノードの比を表示すること、 前記ユーザに対して、各ノードについて作成されることになるレコードの前記数を表示すること、および、 前記ユーザがレコードの前記数を修正することを可能にすることをさらに含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。」 <本件補正後の特許請求の範囲> 「 【請求項1】 他のオブジェクトを含むフレームワーク内で実装されるモックアップオブジェクト用に、モックアップデータを作成するための方法であって、 前記モックアップデータを作成すべき前記モックアップオブジェクトの名前をユーザから受け取るステップであって、前記オブジェクトが複数のノードを含み、ノード間の関係を識別するキーがノードをリンクするために使用される、ステップと、 前記オブジェクトの各ノードについて作成されるレコードの数をユーザから受け取るステップと、 既存のモックアップデータを修正するか、それとも各ノードについて新しいモックアップデータを作成するか判定するステップと、 前記モックアップデータについて開始範囲および終了範囲をユーザから受け取るステップと、 前記フレームワーク内で格納されているメタデータならびに前記開始範囲および終了範囲に基づいて、前記オブジェクトの各ノードについて前記モックアップデータを、前記フレームワーク内で生成するステップとを含む方法。 【請求項2】 前記ユーザが前記オブジェクトの各ノード内の既存のモックアップデータを保存することを可能にするステップをさらに含み、前記オブジェクトがビジネスオブジェクトを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記判定するステップが、前記既存のモックアップデータが保存された後で、前記ユーザが前記オブジェクトの各ノード内の前記既存のモックアップデータをパージすることを可能にするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記オブジェクトの各ノードについてモックアップデータのレコードを作成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記判定するステップが、新しいモックアップデータを作成したいか、それとも既存のモックアップデータを変更したいかユーザに決定するように促すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記ユーザに対して、前記オブジェクトについて子ノード対親ノードの比を表示するステップと、 前記ユーザに対して、各ノードについて作成されることになるレコードの前記数を表示するステップと、 前記ユーザがレコードの前記数を修正することを可能にするステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項7】 前記フレームワークがコンピュータフレームワークである、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 他のオブジェクトを含むフレームワーク内で実装されるモックアップオブジェクト用に、モックアップデータを作成するためのシステムであって、 プロセッサと、 メモリとを備え、前記プロセッサおよび前記メモリが、 前記モックアップデータを作成すべき前記モックアップオブジェクトの名前をユーザから受け取るステップであって、前記オブジェクトが複数のノードを含み、ノード間の関係を識別するキーがノードをリンクするために使用される、ステップと、 前記オブジェクトの各ノードについて作成されるレコードの数をユーザから受け取るステップと、 既存のモックアップデータを修正するか、それとも各ノードについて新しいモックアップデータを作成するか判定するステップと、 前記モックアップデータについて開始範囲および終了範囲をユーザから受け取るステップと、 前記フレームワーク内で格納されているメタデータならびに前記開始範囲および終了範囲に基づいて、前記オブジェクトの各ノードについて前記モックアップデータを、前記フレームワーク内で生成するステップとを含む方法を実行するように構成される、システム。 【請求項9】 前記判定するステップが前記ユーザが前記オブジェクトの各ノード内の既存のモックアップデータを保存することを可能にすることをさらに含み、前記オブジェクトがビジネスオブジェクトを含む、請求項8に記載のシステム。 【請求項10】 前記判定するステップが前記既存のモックアップデータが保存された後で、前記ユーザが前記オブジェクトの各ノード内の前記既存のモックアップデータをパージすることを可能にすることをさらに含む、請求項8に記載のシステム。 【請求項11】 前記オブジェクトの各ノードについてモックアップデータのレコードを作成することをさらに含む、請求項8に記載のシステム。 【請求項12】 前記判定するステップが、新しいモックアップデータを作成したいか、それとも既存のモックアップデータを変更したいかユーザに決定するように促すことをさらに含む、請求項8に記載のシステム。 【請求項13】 前記ユーザに対して、前記オブジェクトについて子ノード対親ノードの比を表示すること、 前記ユーザに対して、各ノードについて作成されることになるレコードの前記数を表示すること、および、 前記ユーザがレコードの前記数を修正することを可能にすることをさらに含む、請求項8に記載のシステム。 【請求項14】 前記フレームワークがコンピュータフレームワークである、請求項8に記載のシステム。 【請求項15】 他のオブジェクトを含むフレームワーク内で実装されるモックアップオブジェクト用に、モックアップデータを作成するための方法であって、 前記モックアップデータを作成すべき前記モックアップオブジェクトの名前をユーザから受け取るステップであって、前記オブジェクトが複数のノードを含み、ノード間の関係を識別するキーがノードをリンクするために使用される、ステップと、 前記オブジェクトの各ノードについて作成されるレコードの数をユーザから受け取るステップと、 既存のモックアップデータを修正するか、それとも各ノードについて新しいモックアップデータを作成するか判定するステップと、 前記モックアップデータについて開始範囲および終了範囲をユーザから受け取るステップと、 前記フレームワーク内で格納されているメタデータならびに前記開始範囲および終了範囲に基づいて、前記オブジェクトの各ノードについて前記モックアップデータを、前記フレームワーク内で生成するステップとを含む方法を実行するようにプロセッサを構成するための命令を含むコンピュータ可読媒体。 【請求項16】 前記ユーザが前記オブジェクトの各ノード内の既存のモックアップデータを保存することを可能にすることをさらに含み、前記オブジェクトがビジネスオブジェクトを含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。 【請求項17】 前記判定するステップが前記既存のモックアップデータが保存された後で、前記ユーザが前記オブジェクトの各ノード内の前記既存のモックアップデータをパージすることを可能にすることをさらに含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。 【請求項18】 前記オブジェクトの各ノードについてモックアップデータのレコードを作成することをさらに含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。 【請求項19】 前記判定するステップが、新しいモックアップデータを作成したいか、それとも既存のモックアップデータを変更したいかユーザに決定するように促すことをさらに含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。 【請求項20】 前記ユーザに対して、前記オブジェクトについて子ノード対親ノードの比を表示すること、 前記ユーザに対して、各ノードについて作成されることになるレコードの前記数を表示すること、および、 前記ユーザがレコードの前記数を修正することを可能にすることをさらに含む、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。」 2.本件補正の目的について 本件補正は、上記第1.のとおり本件審判の請求と同時にする補正であり、上記1.のとおり特許請求の範囲についてする補正を含むものであるから、本件補正における特許請求の範囲についてする補正の目的について検討する。 本件補正は、上記審判請求と同時になされたものであり、本件補正前の請求項1、8、15記載の発明を特定するための事項(以下「発明特定事項」と記す。)であるところの「オブジェクト」を限定する「1つまたは複数のノードを含む」との記載をより下位の「複数のノードを含み、ノード間の関係を識別するキーがノードをリンクするために使用される」との記載に限定する補正をするものであり、この限定によって、本件補正前後の請求項1、8、15に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。 したがって、本件補正の目的は、請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの(以下「限定的減縮」と記す。)に該当し、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられる事項を目的とするものである。 3.独立特許要件について 上記2.のとおり、本件補正は限定的減縮を目的とするものであるので、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 3-1.本件補正発明 本件補正発明は、上記1.の本件補正後の特許請求の範囲において【請求項1】として記載したとおりのものである。 3-2.先行技術 (1)引用文献 本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年10月31日付けの拒絶理由通知において引用された、下記引用文献には、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。) <引用文献> 特開2001-350649号公報(平成13年12月21日出願公開) <引用文献記載事項1> 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 テストデータとして作成すべきテストデータの件数をセットする件数セット工程と、テストデータを構成する項目名値に対応するキーコード初期値をセットするキーコード開始値セット工程と、キーコードを増減するキーコード増減値をセットする工程と、テストデータを構成する項目名値をセットする項目名値セット工程と、上記キーコードに対応するデータの初期値をセットするデータ初期値セット工程と、キーコードに対応するデータの初期値を増減する値をセットする工程と、テストデータを構成する項目名値に対応するキーコード初期値をキーコード増減値ずつ増減させ、データを初期値から増減値ずつ増減させて、データを登録させ、その登録されたデータ数がテストデータの件数となるまでデータ登録を行うデータ登録工程とを具備したことを特徴とするテストデータ自動作成方法。」 <引用文献記載事項2> 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、アプリケーションプログラムを評価するためのテストデータを自動的に作成することができるテストデータ自動作成方法に関する。」 <引用文献記載事項3> 「【0007】 【課題を解決するための手段】請求項1記載のテストデータ自動作成方法は、テストデータとして作成すべきテストデータの件数をセットする件数セット工程と、テストデータを構成する項目名値に対応するキーコード初期値をセットするキーコード開始値セット工程と、キーコードを増減するキーコード増減値をセットする工程と、テストデータを構成する項目名値をセットする項目名値セット工程と、上記キーコードに対応するデータの初期値をセットするデータ初期値セット工程と、キーコードに対応するデータの初期値を増減する値をセットする工程と、テストデータを構成する項目名値に対応するキーコード初期値をキーコード増減値ずつ増減させ、データを初期値から増減値ずつ増減させて、データを登録させ、その登録されたデータ数がテストデータの件数となるまでデータ登録を行うデータ登録工程とを具備したことを特徴とする。」 <引用文献記載事項4> 「【0008】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。図1は本発明に係わるテストデータ自動作成方法が適用された伝票発行機のシステム構成図である。 【0009】図1において、11は本伝票発行機を統括して制御するCPU(中央処理装置)である。このCPU11からのシステムバス11aには、各種制御プログラムが記憶されているフラッシュメモリで構成されるROM(リード・オンリ・メモリ)12、キー入力部13、RAM14(ランダム・アクセス・メモリ)14、印字部15、表示部16が接続されている。 【0010】ROM12には、伝票発行機用の制御プログラムの他、ユーザが開発した各種アプリケーションプログラム及び図2のフローチャートに示したテストデータ自動作成方法としてのテストデータ自動作成プログラムが記憶されている。このROM12に記憶されているプログラムはRAM14にロードされて実行される。ユーザが開発したアプリケーションプログラムとして、例えば伝票の各欄の印字位置を指定するプログラムや、各欄に設定された金額を合計するプログラム等がある。 【0011】さらに、RAM14には、伝票発行業務に必要な得意先マスタ14a、商品マスタ14b、トランマスタ14c、商品マスタ定義事項項目を記憶する領域14d、本テストデータ自動作成方法で作成されたテストデータが記憶される領域14eが設けられている。」 <引用文献記載事項5> 「【0025】なお、上記した実施の形態では、伝票発行機の商品マスタのテストデータを本テストデータ作成方法で作成する場合について説明したが、商品マスタに限らず、顧客マスタ、トランマスタのテストデータも同様に作成することができる。」 <引用文献記載事項6> 「【0026】さらに、本発明は伝票発行機に限らず、搭載されたアプリケーションを評価するためにテストデータが必要な電子機器についても同様に適用することができる。」 (2)参考文献 本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となされた下記参考文献には、それぞれ、下記参考文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。) <参考文献1> きたみあきこ・国本温子&できるシリーズ編集部,「できる大事典 Acccess 2003 &2002 Windows XP 対応」,株式会社インプレス,2005年12月21日,第1版第2刷,p.52,67-70,136-138,190-195 <参考文献記載事項1-1> 「 」 <参考文献記載事項1-2> 「 」 <参考文献記載事項1-3> 「 」 <参考文献記載事項1-4> 「 」 <参考文献2> 特開2000-20529号公報(平成12年1月21日出願公開) <参考文献記載事項2-1> 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 データウェアハウスのデータベースをテストするテストデータを作成するデータウェアハウステストデータ作成装置において、 データ生成ルール及び対象表の結合情報並びに前記データベースのスキーマ情報に基づいて、テストデータを生成することを特徴とするデータウェアハウステストデータ作成装置。 【請求項2】 前記データウェアハウステストデータ作成装置は、 前記データベースに入出力するデータベースアクセス手段と、 テストデータのデータ生成ルール及び前記対象表の結合情報を入力するデータ作成情報登録手段と、 前記データベースから前記データベースアクセス手段を通じて読み出した前記スキーマ情報と、前記データ生成ルール及び前記結合情報とで、なるデータ作成情報を保持するデータ作成情報記憶手段と、 前記スキーマ情報並びに前記データ生成ルール及び前記結合情報によりテストデータを生成するデータ作成手段と、 前記データ作成手段に指示及びパラメータを入力するデータ作成起動手段と、 前記テストデータ生成の作業領域であるデータメモリと、 を具備し、 前記データメモリのテストデータを前記データベースアクセス手段によって、前記データベースに出力することを特徴とするデータウェアハウステストデータ作成装置。 【請求項3】 前記スキーマ情報は、 表名と、列名と 属性と、桁数と、制約条件と、を有する定義情報を含むことを特徴とする請求項2記載のデータウェアハウステストデータ作成装置。 【請求項4】 前記データ生成ルールは、 データ生成方法の指定と、値の最大値と最小値の指定と、を含むことを特徴とする請求項2記載のデータウェアハウステストデータ作成装置。 【請求項5】 前記結合情報は、 結合する表の結合条件である、結合元表名と、結合元列名と、結合先表名と、結合先列名と、カーディナリティと、を含むことを特徴とする請求項2記載のデータウェアハウステストデータ作成装置。 【請求項6】 前記データウェアハウステストデータ作成装置を動作させる実行手段のプログラムを記憶する計算機読み取り可能な記憶媒体。」 <参考文献記載事項2-2> 「【0014】結合情報ファイル41の構造を示す図4を参照すると、結合情報ファイル41は、結合情報登録手段31を通じて入力される結合元表名411と、結合元列名412と、結合先表名413と、結合先列名414と、カーディナリティ415と、から構成される。結合元列名412及び結合先列名414は、表を結合させるときのキーとなる列名である。カーディナリティ415には、1:1、1:n、n:1、n:n等の結合の対応関係が格納される。」 <参考文献記載事項2-3> 「【0016】上記のデータ生成ルールを適用して、生成されるデータイメージを図6に例示する。「RANDOM」指定601には、「FROM」で指定された値から「TO」で指定された値までの範囲内でランダムな数値を生成する。この例では、「1」から「100」までの値がランダムに生成される。次に「INCREASE」指定611には、「FROM」で指定された値から、「TO」で指定された値まで「MARGIN」パラメータで指定された値を増分にした数値が生成される。「TO」が指定されていない場合は、作成時に指定した件数まで作成する。この例では、「1」から「100」まで「2」を増分にした値が生成され、「1,3,5,7」の数列が生成される。「WAVE」指定621には、「FROM」で指定された値から、「TO」で指定された値まで「MARGIN」パラメータで指定された値で増減を繰り返す。この例では、「1」から「100」まで「1」ずつ増加した値を生成した後、「100」に達した後は、「1」ずつ減少した値を生成する。「FIX」指定時631には、固定の値を生成するが、複数指定された場合はその値の中からランダムに選択される。この例では、「FIX」値として、「aaaaa」と、「bbbbb」と、の2つの値が指定されているため、この2つの値をランダムに選択して生成する。「PREFIX」指定641には「PREFIX」指定値にキー値を加えた値を選択する。複数指定された場合はその中からランダムに値が選択される。この例では、プリフィックス値「aaaaa」にキー値をつけた値が生成される。「MASTER」指定651には、結合対象となるマスタテーブルの結合キーを値とし、ランダムに生成する。この例では、結合キーテーブル660に結合先列のキー値「101」乃至キー値「109」が登録されているため、この中からランダムに選択された値を生成する。」 <参考文献記載事項2-4> 「【0018】この第1の実施の形態の動作を説明する。データ作成手段5の処理手順を表すフローの図7を参照すると、まず初期設定を行う(ステップ701)。データ作成の対象となる表名及び作成データ件数等の作成パラメータをデータ作成起動手段6を通じて取得し(ステップ702)、スキーマ情報ファイル40を読み込み、その表のスキーマ情報を取得する(ステップ703)。次に、作成対象となるテーブルのテーブル種別を判断する(ステップ704)。テーブル種別が結合元表のファクトテーブルの場合(ステップ704のYes)、該ファクトテーブルに結合される結合先表のマスタテーブルの結合先列名414及びカーディナリティ415を結合情報ファイル41より取得する(ステップ705)。取得したマスタテーブルと結合列の情報を読み込み対象マスタテーブル情報としてセットする(ステップ706)。セットされた対象マスタテーブルのデータを全て読み込み、結合キーテーブル660としてデータメモリ7に登録する(ステップ707)。結合キーテーブル601未作成のマスタテーブルが存在するか否かを判断し(ステップ708)、結合キーテーブル未作成のマスタテーブルが存在する場合(ステップ708のYes)、ステップ706に戻る。結合キーテーブル未作成のマスタテーブルが存在しない場合(ステップ708のNo)、データ生成ルールの解釈を行う(ステップ709)。解釈したデータ生成ルール及び結合キーテーブルの情報に基づいて、データ生成を行い(ステップ710)、データ出力を行う(ステップ711)。データ作成終了したか否かを判断し(ステップ712)、データ作成終了の場合(ステップ712のYes)、終了する。データ作成終了でない場合(ステップ712のNo)、ステップ710に戻る。ステップ704の判定で、テーブル種別がファクトテーブルでない場合(ステップ708のNo)、ステップ709に進む。」 <参考文献3> 特開2001-256076号公報(平成13年9月21日出願公開) <参考文献記載事項3-1> 「【0005】このデータベース用テストデータ生成ツールは、データ値の最小値、最大値及び分布(度数分布、一様分布、正規分布)等のデータの出現頻度、データ値の範囲を指定することのできるツールである。そして、このデータベース用テストデータ生成ツールは、生成されるデータの特性をユーザーが設定するようになっている。」 <参考文献記載事項3-2> 「【0062】データ格納情報取得部(データ格納情報取得手段)4は、データベース管理部3を介してデータベース2に格納されている格納情報、例えば、テーブル、カラム、データ型、キー属性及び外部参照制約等の定義情報等を読み出す。このデータ定義の形式は、SQL(Structured Query Language)文による定義等である。」 <参考文献記載事項3-3> 「【0070】テストデータ作成装置1は、パラメータの設定が行われると、データベース管理部3により既存のデータベース2に接続を行って(ステップS102)、データ格納情報取得部4がデータベース管理部3を介して既存のデータベース2内のデータ格納情報を取得するデータ格納情報取得処理を行う(ステップS103)。」 <参考文献記載事項3-4> 「【0085】すなわち、テストデータ生成部6は、図7に示すように、テストデータ生成に必要な開発対象のデータベース9内のテーブル名のリストをセットし(ステップS401)、テーブル毎に、図2のステップS101でユーザーにより設定されたパラメータであるテスト用のレコード数を設定する(ステップS402)。」 <参考文献記載事項3-5> 「【0086】次に、テストデータ生成部6は、図2のステップS101でユーザーにより設定されたパラメータ及びステップS103で取得したデータ格納情報から、カラム毎にデータ型や図3のステップS204で得られた特徴算出方法の指定等のパラメータを設定し(ステップS403)、この設定したパラメータに基づいて当該カラムに対するランダムデータを算出する(ステップS404)。」 <参考文献記載事項3-6> 「【0090】ステップS408で、全てのテーブルについて処理を完了していないときには、テストデータ生成部6は、ステップS402に戻って、次のテーブルについてレコード数を設定することから上記同様に処理し(ステップS402?S408)、ステップS408で、全てのテーブルについて処理を完了すると、テストデータ生成処理を終了する。」 <参考文献4> 特開平5-158739号公報(平成5年6月25日出願公開) <参考文献記載事項4-1> 「【0013】上記の仮想データ作成手段12から実行結果印字手段17までの処理を、桁あふれ判定手段13で実行結果値が桁あふれと判定されるか、あるいは限界値判定手段14で作成された仮想テストデータの値が最初にパラメータ入力機能で指定した上限値の範囲外になるまで繰り返す。」 <参考文献5> 特開平11-154106号公報(平成11年6月8日出願公開) <参考文献記載事項5-1> 「【特許請求の範囲】 【請求項1】データ抽出プログラムのテストにおいて、テストデータとして使用するデータの型、値の範囲、長さ等の基本データを基に、データを抽出する条件の組み合わせ、データ抽出条件に基づくテストデータ、テスト項目、テストプログラムを自動生成することを特徴としたテスト方法。」 <参考文献記載事項5-2> 「【0016】図2は入力された基本データ属性を格納したデータファイルの一例である。図1 20の基本属性データ入力によって得たデータを、図1 10の基本データ属性登録により作成した、データの型、上限値、下限値、最大長等のデータから構成されている。」 <参考文献6> 特開平7-36737号公報(平成7年2月7日出願公開) <参考文献記載事項6-1> 「【0008】さらに、テストデータを編集する場合は、テストデータファイルをアクセスして専用の画面に展開し、修正作業を行った後、もとのデータファイルに出力しているため、テストケースが複数にわたり、また複数種類のテストデータが必要な場合には、十分に対応することができないという問題もあった。」 <参考文献記載事項6-2> 「【0027】〈テストデータの修正・印刷〉生成したテストデータファイル105を修正する必要がある場合、生成されたテストデータが帳票形式に展開される修正専用画面を用いて修正を行う(ステップ207)。 【0028】すなわち、図9は、テストデータ編集画面を示し、項目名901に対して生成データ902が帳票形式に展開されるので、この画面上で対話形式でデータの修正を行う。従業員氏名901において同姓のデータが必要な場合、生成されたテストデータのままでは使えない。このため、修正画面(図9)の従業員氏名のテストデータ(902)で、2レコード目の「鈴木花子」、3レコード目の「中村潤一」を「目立太郎」に直接上書きすることにより修正を行う。 【0029】修正した後、データ定義書ライブラリ101に格納してあるファイル仕様書のファイル定義情報に従って、自動割当てしたファイル107に、修正後のデータを出力する。(ステップ208)。このとき、生成したテストデータファイルをマスタとして、種々のテストケースに対応した複数種類のテストデータファイルを作成することができる。また、テストデータファイルは、印刷装置108を用いて、帳票形式にデータを印刷する(ステップ210)。」 <参考文献7> 特開2000-222490号公報(平成12年8月11日出願公開) <参考文献記載事項7-1> 「【0016】次に、以上のような帳票プログラム作成装置11において、帳票の項目毎のテストデータを登録する処理について図3のフローチャートを参照して説明する。先ず、帳票で使用可能な項目が登録されている項目テーブル31の項目の中からテストデータを登録したい項目を選択する(図3,S301)。次に、その選択した項目のテストデータの有無を判断する(S302)。選択した項目に対してテストデータが既に作成されている場合には、ステップS303に進み既に作成されているテストデータを使用するか否かを判断する。 【0017】既存のテストデータを使用しない場合、あるいはその項目にテストデータが作成されていない場合には、ステップS304に進みテストデータのメンテナンス、つまりテストデータの作成を行う。作成したテストデータは図2のテストデータテーブル24に登録される。 【0018】テストデータを作成したなら、その内容を確認し(S305)、作成したテストデータでは不都合な場合には(S305,NG)、ステップS304に戻り、再度テストデータの作成を行う。作成したテストデータで良ければ(S305,OK)、ステップS306に進み、連続してテストデータを登録するか否かを判断する。連続してテストデータを登録する場合には、ステップS301に戻り、他の項目を選択してテストデータの登録を行う。」 3-3.引用発明の認定 (1)引用文献は引用文献記載事項2記載のごとく「アプリケーションプログラムを評価するためのテストデータを自動的に作成することができるテストデータ自動作成方法」に関する発明を説明する文献であるところ、該「テストデータ自動作成方法」は引用文献記載事項1のとおりの 「テストデータとして作成すべきテストデータの件数をセットする件数セット工程と、 テストデータを構成する項目名値に対応するキーコード初期値をセットするキーコード開始値セット工程と、 キーコードを増減するキーコード増減値をセットする工程と、 テストデータを構成する項目名値をセットする項目名値セット工程と、 上記キーコードに対応するデータの初期値をセットするデータ初期値セット工程と、 キーコードに対応するデータの初期値を増減する値をセットする工程と、 テストデータを構成する項目名値に対応するキーコード初期値をキーコード増減値ずつ増減させ、データを初期値から増減値ずつ増減させて、データを登録させ、その登録されたデータ数がテストデータの件数となるまでデータ登録を行うデータ登録工程とを具備したことを特徴とするテストデータ自動作成方法。」 と言えるものである。 (2)上記引用文献記載事項6から、 「前記テストデータは搭載されたアプリケーションを評価するために電子機器に適用されるもの」 であると言える。 (3)上記引用文献記載事項4の記載から、 「該電子機器のRAMには、得意先マスタ、商品マスタ、トランマスタ、などの複数のマスタが記憶される領域と、前記テストデータが記憶される領域が設けられて」 いると言える。 (4)上記引用文献記載事項5から、 「前記テストデータは前記マスタのテストデータである」 と言える。 (5)よって、引用文献には、下記引用発明が記載されていると認められる。 <引用発明> 「テストデータとして作成すべきテストデータの件数をセットする件数セット工程と、 テストデータを構成する項目名値に対応するキーコード初期値をセットするキーコード開始値セット工程と、 キーコードを増減するキーコード増減値をセットする工程と、 テストデータを構成する項目名値をセットする項目名値セット工程と、 上記キーコードに対応するデータの初期値をセットするデータ初期値セット工程と、 キーコードに対応するデータの初期値を増減する値をセットする工程と、 テストデータを構成する項目名値に対応するキーコード初期値をキーコード増減値ずつ増減させ、データを初期値から増減値ずつ増減させて、データを登録させ、その登録されたデータ数がテストデータの件数となるまでデータ登録を行うデータ登録工程とを具備したことを特徴とするテストデータ自動作成方法であって 前記テストデータは搭載されたアプリケーションを評価するために電子機器に適用されるものであり、 該電子機器のRAMには、得意先マスタ、商品マスタ、トランマスタ、などの複数のマスタが記憶される領域と、前記テストデータが記憶される領域が設けられており、 前記テストデータは前記マスタのテストデータである テストデータ自動作成方法」 3-4.対比 以下、本件補正発明と引用発明とを比較する。 (1) ア.引用発明は「テストデータ自動作成方法」であるところ、該「前記テストデータ」は「搭載されたアプリケーションを評価するために電子機器に適用」することができるものなのであるから「モックアップデータ」とも称し得るものである。 したがって、引用発明も本件補正発明と同様に 「モックアップデータを作成するための方法」 と言えるものである。 イ.引用発明における「得意先マスタ、商品マスタ、トランマスタ、などの複数のマスタ」は、本件補正発明における「オブジェクト」に相当するものであり、「電子機器」がこれらを記憶していることは「フレームワーク内で実装」しているとも言えるものである。 ウ.引用発明における「テストデータ」は「前記マスタのテストデータ」であるから、前記「複数のマスタ」のうちの1つの「オブジェクト用」のデータであるとも言える。 エ.したがって、引用発明も本件補正発明と同様に 「他のオブジェクトを含むフレームワーク内で実装されるモックアップオブジェクト用に、モックアップデータを作成するための方法」 と言えるものである。 (2)引用発明における「件数セット工程」は、本件補正発明における「レコードの数をユーザから受け取るステップ」に対応付けられるものであるところ、前者はユーザによって「件数」が「電子機器」へ入力されることでなされることは明らかであるから、該「電子機器」が「件数」を「ユーザから受け取るステップ」とも捉えることができる。 また、引用発明における「テストデータの件数」は、本件補正発明における「レコードの数」に対応付けられ、両者は「前記オブジェクトについて作成されるレコードの数」である点で共通する。 したがって、引用発明と本件補正発明とは、 「前記オブジェクトについて作成されるレコードの数をユーザから受け取るステップ」 を含む点で共通するといえる。 (3)引用発明における「キーコード開始値セット工程」「データ初期値セット工程」は、本件補正発明における「開始範囲および終了範囲をユーザから受け取るステップ」に対応付けられるものであるところ、前者においてセットされる「キーコード初期値」「データの初期値」も「開始範囲」と解し得るものであるから、引用発明と本件補正発明とは、 「前記モックアップデータについて開始範囲をユーザから受け取るステップ」 を含む点で共通するといえる。 なお、本件補正発明における「開始範囲」との用語の技術的意味は必ずしも明確なものではなく、単にデータの取り得る範囲の下限あるいは上限を意味しているとの解釈もできるが、テストデータ作成時にデータの下限や上限を定めることは、適宜に採用されている技術常識的な事項であるから(必要があれば参考文献記載事項2-3(特に「RANDOM」指定、「WAVE」指定の場合の記載。)、3-1、5-2等参照)、仮にこのような解釈をしても本決定の結論及び本審決の結論に影響するものではない。 (4)引用発明における「データ登録工程」は、本件補正発明における「モックアップデータを、前記フレームワーク内で生成するステップ」に対応付けられるものであるところ、前者は「テストデータを構成する項目名値に対応するキーコード初期値をキーコード増減値ずつ増減させ、データを初期値から増減値ずつ増減させて、データを登録させ」るのであるから、引用発明と本件補正発明とは、「前記フレームワーク内で格納されている前記開始範囲に基づいて、前記オブジェクトについて前記モックアップデータを、前記フレームワーク内で生成するステップとを含む」 点で共通するといえる。 (5)よって、本件補正発明は、下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点で引用発明と相違する。 <一致点> 「他のオブジェクトを含むフレームワーク内で実装されるモックアップオブジェクト用に、モックアップデータを作成するための方法であって、 前記オブジェクトについて作成されるレコードの数をユーザから受け取るステップと、 前記モックアップデータについて開始範囲をユーザから受け取るステップと、 前記フレームワーク内で格納されている前記開始範囲に基づいて、前記オブジェクトについて前記モックアップデータを、前記フレームワーク内で生成するステップとを含む方法。」 <相違点1> 本件補正発明においては「前記オブジェクトが複数のノードを含み、ノード間の関係を識別するキーがノードをリンクするために使用される」ものであり、ユーザからのレコードの数の受け取りとモックアップデータの生成が、前記オブジェクトの「各ノード」についてなされるものである。 (これに対し、引用文献には「マスタ」が「複数のノードを含み、ノード間の関係を識別するキーがノードをリンクするために使用される」ものである旨の記載は無く、そのため、テストデータの件数のセットやデータの登録が「各ノード」についてなされる旨の記載もない。) <相違点2> 本件補正発明は「終了範囲」もユーザから受け取り、該「終了範囲」にも基づいてモックアップデータを生成するものである。 (これに対して、引用文献には「終了範囲」をセットしたり「終了範囲」に基づいてデータを登録する旨の記載はない。) <相違点3> 本件補正発明は「メタデータ」にも基づいてモックアップデータを生成するものである。 (これに対して、引用文献には「メタデータ」に基づいてデータを登録する旨の記載はない。) <相違点4> 本件補正発明は「前記モックアップデータを作成すべき前記モックアップオブジェクトの名前をユーザから受け取るステップ」を含むものである。 (これに対し、引用文献にはマスタの名前を入力する工程の記載はない。) <相違点5> 本件補正発明は「既存のモックアップデータを修正するか、それとも各ノードについて新しいモックアップデータを作成するか判定するステップ」を含むものである。 (これに対し、引用文献にはテストデータの修正・作成を選択する工程の記載はない。) 3-5.判断 以下、上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 従来から、複数のテーブル間にリレーションシップを設定できる所謂リレーショナルデータベースが周知慣用であり(必要があれば、参考文献記載事項1-1(特に『HINT テーブル同士の関連付けを「リレーションシップ」と呼ぶ』の記載)、1-4、2-1、2-3等参照)、このようなリレーショナルデータベースへの引用発明の適用は、当業者であれば普通に試みることと言える。また、データベースが複数のテーブルで構成される場合には、レコード数の設定やデータ作成を各テーブルに対して行うことは必然的になされることにほかならない(必要があれば、参考文献記載事項3-4、3-6等参照)。 してみると、引用発明の「マスタ」を複数のテーブル間にリレーションシップが設定されたリレーショナルデータベースとして構成することを試みることは当業者の通常の創作力の発揮にほかならず、その際にテストデータの件数のセットやデータの登録を当該テーブルごとに行うように構成することは、必然的に採用される事項にほかならない。 そして、リレーショナルデータベースにおけるリレーションシップは各テーブルのフィールド同士を関連付けるものであるから、各テーブルは「ノード」とも言えるものであり、関連付けられたフィールドは「ノードをリンクするために使用される」ものであり「ノード間の関係を識別するキー」とも言えるものである。 したがって、引用発明を「複数のノードを含み、ノード間の関係を識別するキーがノードをリンクするために使用される」ものとするとともに、ユーザからのレコードの数の受け取りとモックアップデータの生成が、前記オブジェクトの「各ノード」についてなされるものとすること、すなわち、上記相違点1に係る構成要件を備えたものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 (2)相違点2について テストデータ作成に際して終了条件を数値範囲で設定することは適宜に採用されている構成であり(必要があれば参考文献記載事項2-3(特に「INCREASE」指定の場合の記載。)、4-1等参照)、引用発明においても終了条件となる数値範囲をセットし、これに基づいてデータを登録するようにすることは、当業者であれば適宜に採用し得る構成にすぎない。 したがって、引用発明を「終了範囲」もユーザから受け取り、該「終了範囲」にも基づいてモックアップデータを生成するものとすること、すなわち、上記相違点2に係る構成要件を備えたものとすることは、当業者が適宜に採用し得る設計的事項にすぎない。 なお、本件補正発明における「終了範囲」との用語の技術的意味は、上記3-4.(3)において検討した「開始範囲」との用語と同様に、必ずしも明確なものではなく、単にデータの取り得る範囲の上限あるいは下限を意味しているとの解釈もできるが、テストデータ作成時にデータの上限や下限を定めることは、適宜に採用されている技術常識的な事項であるから(必要があれば参考文献記載事項2-3(特に「RANDOM」指定、「WAVE」指定の場合の記載。)、3-1、5-2等参照)、仮にこのような解釈をしても本決定の結論及び本審決の結論に影響するものではない。 (3)相違点3について データベースの作成に際して各データの形式の定義などの属性やルールを定める情報が必要となることは、技術常識にほかならないものであり(必要があれば、参考文献記載事項1-3、2-1、3-2、3-3、3-5、5-1等参照)、引用発明におけるデータの登録をこれら属性やルールを定める情報を用いて行うようにすることは、当業者であれば当然のごとく採用する技術常識的な事項にほかならない。 そして、本件補正発明における「メタデータ」との用語の技術的意味は必ずしも明確なものではないものの、本願の明細書の段落【0020】の『メタデータは、データそれ自体についての情報、たとえば、コンテンツ、品質、状態(condition)、作成元(origin)、サイズ、フォーマット、データの特性などを指すことができる。』『メタデータは、スキーマを含むことができる。スキーマは、組織または構造、たとえばデータベースの組織、またはオブジェクト指向プログラムにおけるオブジェクトの構造である。』との記載などからみて、これら属性やルールを定める情報を包含する概念のものと解することができる。 したがって、引用発明を「メタデータ」にも基づいてモックアップデータを生成するものとすること、すなわち、上記相違点3に係る構成要件を備えたものとすることも、当業者が当然に採用する事項にすぎない。 (4)相違点4について 新たな情報を作成する際にその名前を入力するように構成することも、当業者が通常採用する周知慣用技術にほかならないものであり(必要があれば参考文献記載事項1-2(特にステップ○6(「○6」は「6」を「○」で囲った文字)の「ファイル名を入力」のステップ)、2-4等参照)、引用発明においてもマスタの名前を入力する工程を設けることは、当業者であれば適宜採用し得た設計的事項にほかならない。 したがって、引用発明を「前記モックアップデータを作成すべき前記モックアップオブジェクトの名前をユーザから受け取るステップ」を含むものとすること、すなわち、上記相違点4に係る構成要件を備えたものとすることは、当業者が適宜に採用し得た設計的事項にすぎないものである。 (5)相違点5について 既存のテストデータを編集して新たなテストデータを作成したり、作成済みのテストデータに修正を施すことも適宜になされることであり(必要があれば、参考文献記載事項6-1、6-2、7-1等参照)、引用発明においても、既存のテストデータの修正を可能とするための選択肢を設けることも、当業者であれば適宜に採用し得たことである。 したがって、引用発明を「既存のモックアップデータを修正するか、それとも各ノードについて新しいモックアップデータを作成するか判定するステップ」を含むものとすること、すなわち、上記相違点5に係る構成要件を備えたものとすることも、当業者が適宜に採用し得た設計的事項にすぎないものである。 (6)してみると、本件補正発明の構成は引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。 よって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3-6.小結 以上のとおり、本件補正発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。 したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下しなければならないものである。 よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本件審判請求の成否について 1.手続の経緯、本願発明の認定 本願の手続の経緯は上記第1.記載のとおりのものであり、さらに、平成24年9月13日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下された。 したがって、本願の特許請求の範囲は、上記第2.1.の本件補正前の特許請求の範囲に記載したとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」と記す。)は、そこに【請求項1】として記載したとおりのものである。 2.先行技術・引用発明の認定 上記第2.3-2.(1)(2)で示したとおり、本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年10月31日付けの拒絶理由通知において引用された上記引用文献には上記引用文献記載事項が記載されており、本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となされた上記参考文献にはそれぞれ上記参考文献記載事項が記載されている。 そして、上記引用文献には上記第2.3-3.で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。 3.対比・判断 上記第2.3.で検討した本件補正発明は、本願発明に対し上記第2.2.で述べた限定的減縮をしたものであるから、本願発明は、上記本件補正発明から当該限定的減縮により限定される要件を無くしたものに相当する。 そして、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する上記本件補正発明は、上記第2.3-5.に記載したとおり、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明も同様の理由により、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願を拒絶すべきものとした原審の拒絶査定は妥当なものである。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-06-10 |
結審通知日 | 2014-06-16 |
審決日 | 2014-06-30 |
出願番号 | 特願2007-166829(P2007-166829) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井出 和水 |
特許庁審判長 |
仲間 晃 |
特許庁審判官 |
山崎 達也 小林 大介 |
発明の名称 | モックアップデータジェネレータを提供するためのシステムおよび方法 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 志賀 正武 |