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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C07H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07H
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C07H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07H
管理番号 1294155
審判番号 不服2013-4954  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-14 
確定日 2014-11-19 
事件の表示 特願2008-533517「抗ウイルス剤としての修飾4’-ヌクレオシド」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月 5日国際公開、WO2007/038507、平成21年 3月12日国内公表、特表2009-510075〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

この出願は,2006年9月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年9月26日米国(US))を国際出願日とする出願であって,以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成24年 6月29日付け 拒絶理由通知書
平成24年11月 9日 意見書・手続補正書
平成24年11月19日付け 拒絶査定
平成25年 3月14日 審判請求書・手続補正書
平成25年 4月23日 手続補正書(方式)
平成25年 9月11日付け 審尋
平成26年 1月28日 回答書

第2 平成25年3月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年3月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正

平成25年3月14日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1,4ないし7である

「【請求項1】
式(I)及び(II):
【化1】


[式中,
Xは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,又はCF_(3)であり;
Yは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,CF_(3),ヒドロキシメチル,メチル,場合により置換又は非置換のエチル,場合により置換又は非置換のビニル,場合により置換又は非置換の2-ブロモビニル,場合により置換又は非置換のエチニルであり;
R^(1)は,F又はN_(3)であり;
R_(2)は,OH,OR^(4),OC(O)R^(4),OP_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R^(5)_(z),P_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R5_(z),OCH_(2)P_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R5_(z),0P(0)(0Q)_(a)(NHR^(4))_(b),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),SC(O)R^(4),NH_(2),NHC(O)R^(4),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4)であり;
R^(3)は,F,シアノ,アジド,クロロビニル,フルオロビニル,アルキル(C_(2-6)),2?3個のハロゲン置換アルキル(C_(1-6)),アルケニル(C_(1-6))又はアルキニル(C_(1-6))である;
Zは,O,S,CH_(2)又はC=CH_(2)であり;
Aは,N,CH又はCFであり;
R^(4)及びR^(5)は同一でも異なってもよく,低級アルキル,低級アルケニル,炭素数1?17個のアシル,アリール又はアラルキルであり;
Mは,H^(+),Na^(+)及びK^(+)からなる群より選ばれる少なくとも1つのメンバーであり;
vは,1,2又は3の値を有し;
x,y及びzは,互いに独立して,0,1,2,3又は4の値を有し;並びに
aは,0又は1の値を有し,bは,1又は2の値を有し,そしてQは,M又はR^(4)である。]
で表される構造を有するβ-D-及びβ-L-ヌクレオシドを含む化合物,又はその薬学的に許容される塩,但し,1-(2,3-ジデオキシ-3,4-ジフルオロ-β-D-リボフラノシル)グアニンを除く。」

「【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項記載の化合物の治療上有効量,及び担体又は希釈剤を含む医薬組成物。」

「【請求項5】
請求項1?3のいずれか1項記載の化合物の治療上有効量,及び他の抗ウイルス剤の少なくとも1つを含む医薬組成物。」

「【請求項6】
請求項1?3のいずれか1項記載の化合物の治療上有効量又はその薬学的に許容される塩を単独で又は他の薬剤と組み合わせて含む,ヒト免疫不全ウイルスに感染した宿主の治療又は予防のための医薬組成物であって,当該宿主に投与される,医薬組成物。」

「【請求項7】
請求項1?3のいずれか1項記載の化合物の治療上有効量又はその薬学的に許容される塩を単独で又は他の薬剤と組み合わせて含む,B型肝炎ウイルスに感染した宿主の治療又は予防のための医薬組成物であって,当該宿主に投与される,医薬組成物。」(以下,補正前の請求項1,4ないし7をまとめて「(あ)」という。)

を,それぞれ,補正後の特許請求の範囲の請求項1,4ないし7である,

「【請求項1】
式(I)及び(II):
【化1】


[式中,
Xは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,又はCF_(3)であり;
Yは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,CF_(3),ヒドロキシメチル,メチル,場合により置換又は非置換のエチル,場合により置換又は非置換のビニル,場合により置換又は非置換の2-ブロモビニル,場合により置換又は非置換のエチニルであり;
R^(1)は,Fであり;
R_(2)は,OH,OR^(4),OC(O)R^(4),OP_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R^(5)_(z),P_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R5_(z),OCH_(2)P_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R5_(z),0P(0)(0Q)_(a)(NHR^(4))_(b),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),SC(O)R^(4),NH_(2),NHC(O)R^(4),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4)であり;
R^(3)は,シアノ,アジド,クロロビニル,フルオロビニル,アルキル(C_(2-6)),2?3個のハロゲン置換アルキル(C_(1-6)),アルケニル(C_(3-6))又はアルキニル(C_(3-6))である;
Zは,O,S,CH_(2)又はC=CH_(2)であり;
Aは,N,CH又はCFであり;
R^(4)及びR^(5)は同一でも異なってもよく,低級アルキル,低級アルケニル,炭素数1?17個のアシル,アリール又はアラルキルであり;
Mは,H^(+),Na^(+)及びK^(+)からなる群より選ばれる少なくとも1つのメンバーであり;
vは,1,2又は3の値を有し;
x,y及びzは,互いに独立して,0,1,2,3又は4の値を有し;並びに
aは,0又は1の値を有し,bは,1又は2の値を有し,そしてQは,M又はR^(4)である。]
で表される構造を有するβ-D-及びβ-L-ヌクレオシドを含む化合物,又はその薬学的に許容される塩,但し,1-(2,3-ジデオキシ-3,4-ジフルオロ-β-D-リボフラノシル)グアニンを除く。」

「【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項記載の化合物の治療上有効量,及び担体又は希釈剤を含む医薬組成物。」

「【請求項5】
請求項1?3のいずれか1項記載の化合物の治療上有効量,及び他の抗ウイルス剤の少なくとも1つを含む医薬組成物。」

「【請求項6】
請求項1?3のいずれか1項記載の化合物の治療上有効量又はその薬学的に許容される塩を単独で又は他の薬剤と組み合わせて含む,ヒト免疫不全ウイルスに感染した宿主の治療又は予防のための医薬組成物であって,当該宿主に投与される,医薬組成物。」

「【請求項7】
請求項1?3のいずれか1項記載の化合物の治療上有効量又はその薬学的に許容される塩を単独で又は他の薬剤と組み合わせて含む,B型肝炎ウイルスに感染した宿主の治療又は予防のための医薬組成物であって,当該宿主に投与される,医薬組成物。」(以下,補正後の請求項1,4ないし7をまとめて「(い)」という。)

とする補正を含むものである。

なお,請求項1の「式(I)及び(II)」「で表される」との記載は,本願の国際出願日における国際出願の明細書及び請求の範囲の請求項1に「defined by formula(I) or by formula(II)」と記載されていることから,「式(I)又は(II)」「で表される」の誤記と認める。

2 本件補正の適否

(1)補正の目的の適否

請求項1についての補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要と認める事項である「式(I)及び(II)」「で表される構造を有するβ-D-及びβ-L-ヌクレオシドを含む化合物」において,R^(1)につき「F又はN_(3)」を「F」に限定し,かつ,R^(3)につき「F」を削除すると共に「アルケニル(C_(1-6))又はアルキニル(C_(1-6))」であったものを「アルケニル(C_(3-6))又はアルキニル(C_(3-6))」に限定するものであり,その補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また,請求項4ないし7についての補正は,これらの請求項で引用している請求項1が,上記のとおり特許請求の範囲の減縮を目的として補正するものであるから,同様に,同法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件について

そこで,本件補正後の前記請求項1,4ないし7に記載されている事項により特定される発明(以下,順に「本願補正発明1」,「本願補正発明4」,「本願補正発明5」,「本願補正発明6」,「本願補正発明7」といい,まとめて「本願補正発明」という。また,本件補正後の明細書を「本願補正明細書」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて,以下検討する。

(2-1)本願補正発明

本願補正発明1,4ないし7は,上記「1(い)」に記載したとおりである。

(2-2)特許法第36条第6項第1号の要件について

ア 明細書のサポート要件について

特許法第36条第6項は,「・・特許請求の範囲の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し,その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は,明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって,特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで,以下,この観点に立って,本願の特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かについて検討する。

イ 発明の詳細な説明の記載について

本願補正明細書の発明の詳細な説明には,以下の事項が記載されている。
a「【0011】
後天性免疫不全症候群,AIDS-関連複合体,及びB型肝炎ウイルスが世界的な流行レベルに達し,感染患者に対して痛ましい影響を有するという事実の点から,これらの疾患を治療し,宿主に対して低毒性を有する,新しい有効な医薬を提供する強い必要性が依然としてある。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は,β-D-及びβ-L-4'-C-置換-3'-フルオロ及び3'-アジド-3'-デオキシヌクレオシド,又はその薬学的に許容される塩あるいはそのプロドラッグの有効量を投与することを含む,HIV,HBV,又はHIV及びHBVに感染した宿主を治療するための,化合物,その合成,方法及び組成物を開示する。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は,β-D-及びβ-L-4'-C-置換3'-フルオロ-及び3'-アジド-3'-ジデオキシヌクレオシド,又はその薬学的に許容される塩並びにそのプロドラッグの有効量を投与することを含む,宿主におけるHIV,HBV,又はHIV及びHBV感染症を治療するための方法及び組成物に関する。
【0014】
より具体的には,本発明の第1の局面は,式I及びII:
【0015】
【化1】(省略)
【0016】
[式中,
Xは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,又はCF_(3)であり;
Yは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,CF_(3),ヒドロキシメチル,メチル,場合により置換又は非置換のエチル,場合により置換又は非置換のビニル,場合により置換又は非置換の2-ブロモビニル,場合により置換又は非置換のエチニルであり;
R^(1)は,F又はN_(3)であり;
R_(2)は,OH,OR^(4),OC(O)R^(4),OP_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R^(5)_(z),P_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R5_(z),OCH_(2)P_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R5_(z),0P(0)(0Q)_(a)(NHR^(4))_(b),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),SC(O)R^(4),NH_(2),NHC(O)R^(4),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4)であり;
R^(3)は,F,シアノ,アジド,エチニル,クロロビニル,フルオロビニル,アルキル(C_(1-6)),1?3個のハロゲン置換アルキル(C_(1-6)),アルケニル(C_(1-6))又はアルキニル(C_(1-6))である,但し,R^(1)がN_(3)のとき,R^(3)はヒドロキシメチルでない;
Zは,O,S,CH_(2)又はC=CH_(2)であり;
Aは,N,CH又はCFであり;
R^(4)及びR^(5)は同一でも異なってもよく,低級アルキル,低級アルケニル,炭素数1?17個のアシル,アリール又はアラルキルであり;
Mは,H^(+),Na^(+)及びK^(+)からなる群より選ばれる少なくとも1つのメンバーであり;
vは,1,2又は3の値を有し;
x,y及びzは,互いに独立して,0,1,2,3又は4の値を有し;並びに
aは,0又は1の値を有し,bは,1又は2の値を有し,そしてQは,M又はR^(4)である。]
で表されるβ-D-及びβ-L-ヌクレオシド,又はその薬学的に許容される塩あるいはそのプロドラッグの有効量を投与することを含む,HIV,HBV,又はHIV及びHBVに感染した宿主を治療するための化合物,方法及び組成物に関する。」

b「【0051】
1. 4'-c-エチニル-3'-フルオロ-及び3'-アジドチミジンの合成の非-限定的例 (図2参照)
イミダゾール存在下での塩化メチレン中で2.2?2.5モルの塩化t-ブチルジメチルシリルによるチミジンの処理,その後のトリフルオロ酢酸の存在下での80%酢酸中での5'-O-シリル基の選択的脱保護は,化合物2を与えた。ピリジニウムトリフルオロ酢酸の存在下でのDMSO中での,DCCによる2の酸化は,シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製の後でアルデヒド3を優れた収率で与えた。1,4-ジオキサンと水との混合物中,2N NaOHの存在下での,水溶性ホルムアルデヒドによる化合物3の処理,その後の,得られた中間体のNaBH_(4)による還元は,ジオール4を与えた。ピリジン中での塩化ジメトキシトリチルによるジオール4の選択的保護は,化合物5を与えた。イミダゾールの存在下,塩化メチレン中での塩化t-ブチルジフェニルシリルによる化合物5の処理,次いで80%酢酸中での脱トリチル化は,化合物6を与えた。ピリジニウムトリフルオロ酢酸の存在下,DMSO中でのDCCによるアルコール6の酸化は,化合物7を与えた。化合物7とクロロメチレンウィッティヒ試薬との反応,次いでブチルリチウムでの処理による脱離は,4'-C-エチニルヌクレオシド8を与えた。THF中でのテトラブチルアンモニウムフルオリドによる8の処理は,4'-C-エチニル-チミジン9を与えた。ピリジン中のDMTrClでの9の処理は,化合物10を与えた。化合物10は,MsClによる処理,次いでEtOH中でのNaOHによる処理によって,11に変換された。ピリジンの存在下,沸点温度で,塩化メチレン中でのDASTによる化合物11の処理は,3'-フルオロヌクレオシド(12,X = F)を与えた。3'-アジドヌクレオシド(12,X = N_(3))は,トリエチルアミンの存在下,塩化メチレン中でメシルクロリドによる11の処理,次いでDMF中のNaN_(3)の処理によって得られた。最終産物である,4'-エチニル-FLT(Ia, R^(1) =- F,R^(2) = OH, R^(3) = エチニル)及び4'-C-エチニル-AZT (Ia, R^(1) = N_(3), R^(2) = OH, R^(3) = エチニル) は,80%酢酸での12の処理によって得られる。
【0052】
あるいは,塩基,例えばトリエチルアミン等の存在下で,10とMsClとの反応,次いで得られたメシレートの塩基,例えばDBU又はDBN等の処理は,中間体11'を与えた。NaN_(3)又はテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)による11'の処理も,Maillard, M.他,Tetrahedron Lett. 1989, 30, 1955-1958に開示された,それぞれ,X = N_(3)又はX = Fを有する中間体12を与えた。例示であって,発明者らは,上記のチミジンに限定することを意図するものではない。また,本発明者らは,それぞれ,考慮されるプリン及びピリミジンの例を開示する,米国特許第6,949,522号明細書; 同第6,403,568号明細書; 及び第2005/0009737号明細書の開示を文献として本明細書に援用する。
【0053】
2. 4'-C-エチニル-3’-フルオロ-及び3'-アジド-2',3'-ジデオキシヌクレオシドの合成の非限定的例(図3参照)
イミダゾール存在下での塩化メチレン中でのt-ブチルジメチルシリルクロリドでの化合物13の処理,次いでメタノール性アンモニアによるクロロベンゾイル保護基の除去は,化合物15を与えた。ピリジニウムトリフルオロ酢酸の存在下でのDMSO中でのDCCによる化合物15の酸化は,シリカゲルカラムクトマトグラフィー精製後に,アルデヒド16を与えた。2N NaOH存在下での1,4-ジオキサンと水との混合物中での水溶性アルデヒドによる化合物16の処理,次いで得られた中間体のNaBH_(4)による還元は,ジオール17を与えた。DMTClによる選択的保護,次いでピリジニウムトリフルオロ酢酸の存在下でのDMSO中でのDCCによる酸化は,アルデヒド19を与えた。19とクロロメチレンウィッティヒ試薬との反応,次いでブチルリチウムの存在下での脱離は,4'-C-エチニル-キシロフラノシド20を与えた。濃硫酸の存在下での酢酸中の無水酢酸による20のアセトリシスは,テトラアセテート21を与えた。ルイス酸,例えばTMSOTf又はSnCl_(4)の存在下での21とシリル化塩基とのカップリング,次いでメタノール性アンモニアによる脱保護は,4'-C-エチニル-キシロフラノシル-ヌクレオシド23を与えた。触媒量のHClの存在下での化合物23のアセトンでの処理は,化合物24を与えた。化合物24は,バートン脱酸素に供し,2'-デオキシヌクレオシド25を与えた。80%酢酸による25の脱イソプロピレン化(deisopropylenation),次いでピリジン中でのBzClによる選択的保護は,ヌクレオシド27を与えた。沸点温度での塩化メチレン中でのDASTによる化合物27の処理,次いでメタノール性アンモニアによる脱保護は,最終的な4'-C-エチニル-ヌクレオシド(29,R^(1) = F)を与えた。トリエチルアミンの存在下での塩化メチレン中でのメタンスルホニルクロリドによる27の処理,次いでDMF中での得られたメシレートとNaN_(3)との反応は,4'-C-エチニル-ヌクレオシド(29,R^(1) = N_(3))を与えた。
【0054】
上に開示された合成スキームは,4'-C-置換-3'-フルオロ-2',3'-ジデオキシヌクレオシド,4'-C-置換-3'-アジド-2',3'-ジデオキシヌクレオシド,4'-C-エチニル-3'-フルオロ-2',3'-ジデオキシヌクレオシド,4'-C-エチニル-3'-アジド-2',3'-ジデオキシヌクレオシド,4'-C-エチニル-3'-フルオロ-3'-デオキシチミジン,及び4'-C-エチニル-3'-アジド-3'-デオキシチミジンを含むがこれに限定されない,以下の考慮される化合物を提供する。」

c「【0070】
医薬組成物
式(I)又は(II)のヌクレオシド化合物,又はその薬学的に許容される塩あるいはそのプロドラッグに基づく医薬組成物は,場合により,薬学的に許容される添加剤,担体又は賦形剤と組み合わせて,HBV又はHIVウイルス感染症,又は異常細胞増殖を治療するために治療上有効量で製造される。治療上有効量は,治療される感染症又は症状,その重度,採用される治療レジメ,使用される薬剤の薬物動力学,及び治療される患者によって変動し得る。
【0071】
本発明に従う1つの局面では,化合物は,好ましくは,薬学的に許容される担体と混合して調合される。・・・
【0072】
ある医薬投薬形態では,化合物のプロドラッグ形態は,特に本発明の化合物の,アシル化(アセチル化又はその他)誘導体及びエーテル誘導体,リン酸エステル,及び他の塩形態を含むプロドラッグ形態は好ましい。・・・
【0073】
本発明に従って治療上活性な製剤中に含まれる化合物の量は,感染症又は症状,好ましい実施態様ではHBV又はHIVウイルス感染症,の治療のための有効量である。・・・
【0074】
活性化合物の投与は,継続投与(点滴)から1日当たり数回の経口投与(例えば,Q.I.D.,B.I.D.等)の範囲でよく,他の投与経路の中で,経口的,局所的,非経口的,筋肉内,静脈内,皮下的,経皮的(浸透亢進剤を含むことがある),口内及び座薬投与を含むことがある。・・・
【0075】
本発明に従う医薬組成物を製造するために,本発明に従う1以上の化合物の治療上有効量は,好ましくは,投薬量を製造するために慣用的な医薬複合化技術に従って薬学的に許容される担体と混合される。・・・
【0076】
非経口的製剤のためには,担体は・・・
【0077】
リポソーム懸濁剤(・・・)もまた,薬学的に許容される担体を製造するための慣用的方法によって調製できる。・・・
【0078】
加えて,本発明に従う化合物は,本発明の他の化合物を含む,1以上の抗ウイルス性,抗-HBV,抗-HIV又はインターフェロン,抗菌剤と組み合わせて,あるいはこれらと交互に投与され得る。・・・
【0079】
併用療法又は交替療法
ウイルス感染症の治療,阻害,抑制及び/又は予防のための別の実施態様では,活性化合物もしくはその誘導体又はその塩は,別の抗ウイルス剤と組み合わせて又は交互に投与され得る。一般的に・・・。
【0080】
本明細書に開示された化合物と併用して使用され得る抗ウイルス剤の非限定的な例は・・・これらに限定されない。
【0081】
更に,本明細書に開示された化合物と組み合わせて使用され得る抗ウイルス剤の非限定的な例は・・・これらに限定されない。」

d「【実施例】
【0083】
実施例1 4'-C-エチニルチミジンの製造
4'-C-エチニルチミジンは,文献の方法に従って製造される(Nomura, M.他, J Med. Chem. 1999, 42, 2901-2908; 及びOhrui, H.他, J. Med. Chem. 2000, 43, 4516-4525)
【0084】
実施例2 4'-C-エチニル-5'-0-(ジメトキシトリチル)チミジンの製造(10,図2)
4'-C-エチニルチミジン(1 mmol)のピリジン(10 ml)溶液に,ジメトキシトリチルクロリド(1.2 mmmol)を0℃で加え,得られた溶液を室温で3時間攪拌した。EtOAc(100 mL)を加え,溶液を水で洗浄し,乾燥した (Na_(2)SO_(4))。溶媒を濃縮し,減圧下に乾燥した。残渣をトルエン(2×20 mL)で共濃縮し,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5% MeOHの塩化メチレン溶液)で精製して,4'-C-エチニル-5'-0-(ジメトキシトリチル)チミジン(10)を得た。
【0085】
実施例3 4'-C-チエニル-5'-O-(ジメトキシトリチル)-2,3'-アンヒドロチミジン(11',図2)
10(1 mmol)の塩化メチレン(20mL)溶液に,トリエチルアミン(1 mL)及びメタンスルホニルクロリド(1.2 mmol)を加え,溶液を室温で16時間攪拌した。EtOAc(50 mL)を加え,混合物を水で洗浄し,乾燥した(Na_(2)SO_(4))。溶媒を除き,残渣を無水テトラヒドロフラン(THF, 20 mL)に溶解した。この溶液に,DBU(3 mmol)を加え,得られた溶液を16時間リフラックスさせた。溶液をEtOAc(50 mL)で希釈し,飽和食塩水で洗浄した。有機溶液を乾燥し(Na_(2)SO_(4)),溶媒を除き,残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(2% MeOHの塩化メチレン溶液)で精製して,化合物11'を得た。
【0086】
実施例4 4'-C-エチニル-5'-0-(ジメトキシトリチル)-3'-アジド-3'-デオキシチミジン(12,X=N_(3),図2)の製造
11'(1 mmol)の乾燥DMF(10 mL)溶液にNaN_(3)(3 mmol)を加え,混合物を100℃で16時間攪拌した。溶媒を濃縮して減圧下で乾燥した。残渣をトルエン(2 x 20 mL)で共濃縮し,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(20?50% EtOAcのへキサン溶液)で精製して,4'-C-エチニル-5'-0-(ジメトキシトリチル)-3'-アジド-3'-デオキシチミジン(12,X=N)を得た。
【0087】
実施例5 4'-C-エチニル-3'-アジド-3'-デオキシチミジン(Ia,X=N_(3),図2)の製造
4'-C-エチニル-5'-O-(ジメトキシトリチル)-3'-アジド-3'-デオキシチミジン(12,X=N_(3)))(1 mmol)の1% トリフルオロ酢酸の塩化メチレン(20 mL)の溶液を室温で3時間攪拌し,水酸化アンモニウムで中性にした。溶媒を濃縮して減圧下に乾燥し,残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(2?5% MeOHの塩化メチレン溶液)で精製して,4'-C-エチニル-AZT(Ia,X=N_(3))を得た。
【0088】
実施例6 4'-C-エチニル-5'-O-(ジメトキシトリチル)-3'-フルオロ-3'-デオキシチミジン(12,X=F,図2)の製造
11'(1 mmol)の乾燥DMF(10 mL)にテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF, 3 mmol)を加え,混合物を100℃で16時間攪拌した。溶媒を濃縮し,減圧下で乾燥した。残渣をトルエン(2×20 mL)で共濃縮し,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(20?50% EtOAcのへキサン溶液)で精製して,4'-C-エチニル-5'-0-(ジメトキシトリチル)-3'-フルオロ-3'-デオキシチミジン(12,X=F)を得た。
【0089】
実施例7 4'-C-エチニル-3'-フルオロ-3'-デオキシチミジン(Ia,X=F,図2)の製造
4'-C-エチニル-5'-O-(ジメトキシトリチル)-3'-フルオロ-3'-デオキシチミジン(12, X=F)(1 mmol)の1% トリフルオロ酢酸の塩化メチレン(20 mL)の溶液を室温で3時間攪拌し,水酸化アンモニウムで中性にした。溶媒を濃縮して減圧下に乾燥し,残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(2?5% MeOHの塩化メチレン溶液)で精製して,4'-C-エチニル-FLT(Ia,X=F)を得た。」

e「【0090】
抗-HIV活性
実施例 8 MT-4細胞を用いるMTT法
試験薬剤(100 μL)を96-ウェルマイクロプレート上で希釈した。HIV-1(IIIb株; 100 TCID_(50))で感染したMT-4細胞及び非-感染MT-4細胞を,各ウェル中の細胞数が10,000となるようにマイクロプレートに加えた。細胞を37℃で5日間培養した。MTT(20 μL, 7.5 mg/ml)を各ウェルに加え,細胞を2?3時間更に培養した。培養培地(120 μL)をサンプリングし,MTT停止液(% Triton X-100及び0.04N HClを含むイソプロパノール)を試料に加えた。混合物を攪拌して,ホルマザンを形成させ,溶解した。溶液の540 nmでの吸収を測定した。吸収は生細胞数に比例するので,感染MT-4細胞を用いて試験において吸収の1/2の値が測定された試験薬剤の濃度は,EC_(50)を表す。一方,非-感染MT-4細胞を用いて試験において吸収の1/2の値が測定された試験薬剤の濃度は,CC_(50)を表す。
【0091】
実施例 9 HeLa CD4/LTR-β-Gal細胞を用いるMAGIアッセイ
HeLa CD4/LTR-β-Gal細胞は,各ウェルの細胞数が10,000であるように96ウェルに加えた。12?24時間後,培養培地を除き,希釈した試験薬剤(100 μL)を加えた。様々なHIV株(野生型:WT,薬物-耐性株:MDR,M184V,NL4-3,104pre及びC; 各々は,50 TCID_(50)に等しい)を加え,細胞を48時間更に培養した。細胞を1%ホルムアルデヒド及び0.2%グルタルアルデヒドを含むPBSを用いて5分間固定した。固定された細胞をPBSで3回洗浄した後,細胞を1時間,0.4 mg/ml X-Galで染色し,透過型立体電子顕微鏡下で,各ウェルの青色-染色細胞数をカウントした。青色-染色細胞の数が50%及び90%に減少する試験薬剤濃度をそれぞれ,EC_(50)及びEC_(90)と表した。MTT法で採用される方法と同様にして,HeLa CD4/LTR-β-Gal細胞を用いて細胞毒性を測定した。
【0092】
抗-HBV活性
実施例 10 抗-HBV AD38アッセイ
HepG2- AD38細胞株は,DMEM-F/12,10%ウシ胎児血清,100 IU/mL/100 μg/mLのペニシリン/ストレプトマイシン,50 μg/mL カナマイシン,0.3 μg/mL テトラサイクリン,及び200 μg/mL G418を含む培養培地で樹立した。HepG2-AD38細胞株用のアッセイ培地は,PMI-1640,10%ウシ胎児血清,100 IU/mL/100 μg/mLのペニシリン/ストレプトマイシン,50 μg/mL カナマイシン,及び200 μg/mL G418を含む。本アッセイで使用される他の材料は,以下のとおりである:リン酸緩衝生理食塩水(PBS),バイオコート・96ウェルプレート,DNeasy 96組織キット(Qiagen),QIAvac 96真空マニフォールド,マイクロアンプ・オプティカル96ウェル反応プレート(Applied Biosystems),マイクロアンプ・オプティカルキャップ(Applied Biosystems),Tagman・ユニバーサル PCRマスターミックス (Applied Biosystems),7700シークエンス検出器(Applied Biosystems),並びにHBV DNA用のプレイマー及びプローブ: 1125 nM フォワードプライマー(プライマー1),GGA CCC CTG CTC GTG TTA CA; 1125 nM リバースプライマー(プライマー2),GAG AGA AGT CCA CCA CGA GTC TAG A; 及び250 nMプローブ,FAM-TGT TGA CAA GAA TCC TCA CAA TAC CAC。
【0093】
方法
細胞アッセイ。
96-ウェルバイオコートプレートのウェルに好適な細胞量,例えば,5×10^(4)細胞/ウェルを蒔き,5% CO_(2)で37℃でインキュベートした。2日後,上清を注意深く除き,細胞層をPBSで洗浄し,次いで試験化合物を含む又は含まないアッセイ培地の好適な量(例えば,10 μM,又は10 μMから開始して1:3の比の用量反応で)新しくした。試料を2点で試験した。5日を超える日数の間,細胞を増殖させ,7日目で,上清の量,例えば180 μLを回収し,抽出ステップが直ちに実行されるか又はその後に実行されるか否かによって-80℃又は室温のいずれかで,好適な容器(例えば,DNeasy 96組織キットに含まれる青色ラック)内に保存した。
【0094】
細胞上清からのウイルスHBV DNAの抽出。7日目に回収された上清試料は,解凍するか又は現状のままで使用した。2 mLのプロテイナーゼK及び18 mLの緩衝剤ATLを含む,プロテイナーゼK/緩衝剤ATLワーキング溶液は,上清試料の上面に移した。次いで管を密封し,繰り返し反転させて混合した。次いで,キャップから任意の溶液を回収するために,当該管を最大3000 rpmまで遠心した。これはその後に使用し,キャップ溶液と称する。当該管を55℃で15分間でインキュベートし,次いで再度,最大3000 rpmまで遠心した。各試料に,410 μLの緩衝剤AL/Eを加えた。当該管を新たに密封し,ラックに置き,好適な時間(例えば,15秒間),激しく攪拌し,次いで当該管を最大3000 rpmまで遠心した。この時点で,DNeasy 96プレートをQIAvac 96真空マニフォールドの上部に置いた。次いで,キャップ溶液をDNeasy 96プレートに移し,好適な時間,真空を適用した。ある量の緩衝剤AW1(例えば,500 μL)を各ウェルに加えた後,好適な時間(例えば,1分間),真空を再度適用した。ある量の緩衝剤AW2(例えば,500 μL)を各ウェルに加えた後,ある時間(例えば,1分間),真空を再度適用した。次いで,ウェル中の溶液量を攪拌し,ある時間(例えば,10分間),真空を再度適用した。各ウェルに予め-加熱した緩衝剤AEを加えることによってDNAを希釈し,次いで真空を適用した。
【0095】
リアルタイムPCR
リアルタイムPCR
ヌクレアーゼ無しの水中に100 μMのプライマー1,100 μMのプライマー2,50 μMのプローブを含む以下の溶液を使用することによって,200ウェル(総合して1500 μl)用の十分なHBVプライマー及びプローブの溶液を調製することが必要である。Universal PCR Master Mix,HBVプライマー及びプローブの溶液,及びヌクアレーゼ無しの水を含む十分量の反応混合物を調製すること必要である。オプティカル96ウェル反応プレートの各ウェルに,好適量の反応混合物及び各試料由来のHBV DNAを加えた。ウェルはオプティカルキャップで覆い,次いで好適な時間,遠心した。プレートをシークエンス検出器(例えば,7700シークエンスデテクター)に置き,レポーターをFAMに選択し,ボリューム設定を25 μLに選択した。機器を始動し,ある時間後(約2時間),dCt及びウイルス負荷の減少を各試験化合物について計算した。
【0096】
実施例 11 8日目の細胞毒性アッセイ
HepG2(肝臓)。BxPC3(膵臓)及びCEM(リンパ球)細胞株は,好適な培養培地で樹立した。例えば,HepG2細胞株用の培養培地は,DMEM,10%ウシ胎児血清及び100 IU/mL/100μg/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを含む。BxPC3及びCEM用のアッセイ媒体は,RPMI-1640,10%ウシ胎児血清及び100 IU/mL/100 μlのペニシリン/ストレプトマイシンを含む。
【0097】
方法
2×薬物希釈量を96-ウェルプレートのウェルに加えた。50 μLの2×薬物希釈量を96-ウェルプレートに加えた。アッセイ毎に,最小吸収値を決定するために「薬物なし」(媒体のみ)対照を使用し,最大吸収値を決定するために「細胞及び培地のみ」対照を使用した。薬物をDMSOに溶解する場合には,吸収対照も使用した。細胞をカウントし,好適なアッセイ媒体に再懸濁した。細胞は2000細胞/ウェルで加えるべきであることに留意されたい。新しい細胞懸濁液を各ウェルに加え,プレートを37℃,5% CO_(2)下で8日間,インキュベートした。インキュベーションの8日後,MTS色素を各ウェルに加え,プレートを37℃,5% CO_(2)下で2時間,インキュベートした。次いで,490 nmの波長のELISAプレートリーダーを用いてプレートを読み取った。媒体のみの対照ウェルの吸収を計算した。薬物無しの細胞対照ウェルの吸収と,細胞及び試験薬物を含むウェルの吸収とを比較することによって,50%阻害値(CC_(50))を決定した。」

f「図2,図3」(省略)

ウ 本願補正発明の課題について

本願補正明細書には,「後天性免疫不全症候群,AIDS-関連複合体,及びB型肝炎ウイルスが世界的な流行レベルに達し,感染患者に対して痛ましい影響を有するという事実の点から,これらの疾患を治療し,宿主に対して低毒性を有する,新しい有効な医薬を提供する強い必要性が依然としてある。」(a【0011】)と記載され,さらに「本発明は,β-D-及びβ-L-4'-C-置換-3'-フルオロ及び3'-アジド-3'-デオキシヌクレオシド,又はその薬学的に許容される塩あるいはそのプロドラッグの有効量を投与することを含む,HIV,HBV,又はHIV及びHBVに感染した宿主を治療するための,化合物,その合成,方法及び組成物を開示する。」(a【0012】)と記載されていることから,本願補正発明1の解決しようとする課題は,「β-D-及びβ-L-4'-C-置換-3'-フルオロ及び3'-アジド-3'-デオキシヌクレオシド,又はその薬学的に許容される塩」の提供であり,本願補正発明4ないし7の解決しようとする課題は,「β-D-及びβ-L-4'-C-置換-3'-フルオロ及び3'-アジド-3'-デオキシヌクレオシド,又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む,HIV,HBV,又はHIV及びHBVに感染した宿主を治療するための組成物」を提供することであると認められる。

エ 本願補正発明1と発明の詳細な説明に記載された発明との対比

発明の詳細な説明には,本願補正発明1の「式(I)及び(II)」「で表される構造を有するβ-D-及びβ-L-ヌクレオシドを含む化合物」の構造式が一応記載され(a【0014】ないし【0016】),その薬理的な効果についても文言上一応記載されている(c)。

しかしながら,本願補正発明1は,新規化合物に関する発明であり,本願補正発明1の解決しようとする課題は,β-D-及びβ-L-4'-C-置換-3'-フルオロ及び3'-アジド-3'-デオキシヌクレオシド,又はその薬学的に許容される塩の提供であるが,この新規化合物がHIV及びHBV感染症を治療する,すなわち,抗HIV活性及び抗HBV活性が期待できるという有用性があることが前提となると解される。一般に,化合物の基本骨格,置換基等が異なれば,その薬理活性も異なり,それを予測することは通常困難であるから,薬理効果について,発明の詳細な説明に,新規化合物の薬理効果が単に記載されているだけではなく,実際に化合物を製造して抗HIV活性及び抗HBV活性を実験等で確認するか,技術常識から,実際に製造され抗HIV活性及び抗HBV活性を確認した化合物と化学構造が類似し,同様の抗HIV活性及び抗HBV活性を奏すると期待できる化合物であることが当業者に理解できる程度に記載されていることが必要と認められる。

そこで,本願補正明細書の発明の詳細な説明を検討すると,図2を用いて4'-c-エチニル-3'-フルオロ-及び3'-アジドチミジンの合成の非-限定的例の説明(b【0051】,【0052】,f図2),図3を用いて4'-C-エチニル-3'-フルオロ-及び3'-アジド-2',3'-ジデオキシヌクレオシドの合成の非限定的例の説明(b【0053】,f図3)がなされ,その具体例として実施例で実際に製造されている化合物は,4'-C-エチニルチミジン(実施例1:図2化合物9),4'-C-エチニル-5'-0-(ジメトキシトリチル)チミジン(実施例2:図2化合物10),4'-C-チエニル-5'-O-(ジメトキシトリチル)-2,3'-アンヒドロチミジン(実施例3:図2化合物11'),4'-C-エチニル-5'-0-(ジメトキシトリチル)-3'-アジド-3'-デオキシチミジン(実施例4:図2化合物12,X=N_(3)),4'-C-エチニル-3'-アジド-3'-デオキシチミジン(実施例5:図2化合物Ia,X=N_(3)),4'-C-エチニル-5'-O-(ジメトキシトリチル)-3'-フルオロ-3'-デオキシチミジン(実施例6:図2化合物12,X=F),4'-C-エチニル-3'-フルオロ-3'-デオキシチミジン(実施例7:図2化合物Ia,X=F)のみである(d【0084】ないし【0089】)。これらは全て4'位のCにエチニル基,すなわち,本願補正発明1の式(I)におけるR^(3)にエチニル基(アルキニル(C_(2)))が存在するものであるから,R^(3)につき「アルケニル(C_(3-6))又はアルキニル(C_(3-6))」に限定した本願補正発明1の範囲外の化合物であり,本願補正発明1の範囲内の化合物は記載されていない。

そして,本願補正発明1の化合物の薬理活性について,本願補正明細書の発明の詳細な説明には,医薬組成物についての一般的な実施の態様(c),及び,抗HIV,HBV活性のアッセイ方法の実施の態様(e)しか記載されていない。実施例に示される実際に製造した化合物についてさえ,抗HIV活性及び抗HBV活性を有することを実験等で確認していないのみならず,このような活性を有する化合物であるために,化学構造上,どのような基本骨格,置換基を有していればよいのかその理論的な根拠も何ら記載されていない。
さらに,本願出願当時の技術常識を検討すると,本願の優先日前に頒布された刊行物であるANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY,Vol.45, No.5,(2001), p.1539-1546(原査定における引用文献4。以下,「刊行物1」という。摘記は以下に示し,提示する翻訳は当審の仮訳である。)は,「4'-エチニルヌクレオシド類縁体」(1a)に関し記載するものであるが,この4'-エチニルヌクレオシド類縁体の構造式(1c,1d)は,本願補正発明1の構造式と基本骨格が同じで置換基が類似しているものといえる。この刊行物1には,多剤耐性HIV変異体の有力な阻害剤として種々の4'-エチニルヌクレオシド類縁体を設計,合成し,それら類縁体の抗HIV活性を測定した結果が表1に示されている(1d)。
この表1を検討すると,刊行物1の図1の塩基がチミン,X(2'-)-H,Y(3'-)-OHは同じでZ(4'-)のみが異なる4'-Ethynylthymidine(4'-E-T):Z(4'-)-CCH,4'-Ethylthymidine(4'-Et-T):Z(4'-)-CH_(2)CH_(3), 4'-Vinylthymidine (4'-V-T):Z(4'-)-CHCH_(2)及び4'-Hydroxyethylthymidine(4'-HE-T):Z(4'-)-CH_(2)CH_(2)OHの抗HIV-1活性(特にEC_(50))を比較すると,Z(4'-)のみが異なるだけで抗HIV-1活性は桁数が異なる程の相違が有り,4'-Ethylthymidine(4'-Et-T)に至っては抗HIV-1活性が殆ど無いに等しい程であることが分かる。この傾向は,塩基がシトシン,X(2'-)-H,Y(3'-)-OHは同じでZ(4'-)のみが異なる,4'-Ethynyl-2'-deoxycytidine(4'-E-dC):Z(4'-)-CCH,4'-Methyl-2'-deoxycytidine(4'-Me-dC):Z(4'-)-CH3,4'-Fluoromethyl-2'-deoxycytidine (4'-FMe-dC):Z(4'-)-CH_(2)Fの場合も同じであり,Z(4'-)のみが異なるだけで抗HIV-1活性は桁数が異なる程相違している。
このように,刊行物1の図1のZ(4'-)が異なる,すなわち,本願補正発明1の式(I)のR^(3)が異なるだけで,抗HIV活性はかなり相違するものであり,中には活性が殆ど無くなる場合もあることが分かる。

そうすると,本願補正発明1の式(I)及び(II)中R^(3)の選択肢がかなり広範な範囲で定義されている化合物においては,技術常識を参酌しても,本願補正発明1の構造式と基本骨格が同じで置換基が類似し抗HIV活性が確認された化合物と,置換基が大きく異なる上述の化合物についてまで,同様に抗HIV活性を有するとは認められない。

したがって,発明の詳細な説明には,本願補正発明1の「式(I)及び(II)」「で表される構造を有するβ-D-及びβ-L-ヌクレオシドを含む化合物」として,抗HIV活性及び抗HBV活性を期待できるとはいえないものまで含まれ,抗HIV活性及び抗HBV活性を期待できる新規化合物を提供するという本願補正発明1の課題を解決できると当業者が認識できるように記載されておらず,また,技術常識を参酌しても,同様に本願補正発明1の課題が解決できると当業者が認識できる範囲のものとも認められない。

したがって,本願補正発明1は,発明の詳細な説明に記載された発明を超えるものであって,発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

刊行物1:ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY,Vol.45, No.5,(2001), p.1539-1546(原査定における引用文献4)

1a「4'-Ethynyl Nucleoside Analogs: Potent Inhibitors of Multidrug-Resistant Human Immunodeficiency Virus Variants In Vitro」(1539頁 標題)
(翻訳)「4'-エチニルヌクレオシド類縁体:インビトロでの多剤耐性HIV変異体の有力な阻害剤」

1b「A series of 4'-ethynyl (4'-E) nucleoside analogs were designed, synthesized, and identified as being active against a wide spectrum of human immunodeficiency viruses (HIV), including a variety of laboratory strains of HIV-1, HIV-2, and primary clinical HIV-1 isolates. Among such analogs examined, 4'-E-2'-deoxycytidine(4'-E-dC), 4'-E-2'-deoxyadenosine(4'-E-dA), 4'-E-2'-deoxyribofuranosyl-2,6-diaminopurine, and 4'-E-2'-deoxyguanosine were the most potent and blocked HIV-1 replication with 50% effective concentrations ranging from 0.0003 to 0.01 mM in vitro with favorable cellular toxicity profiles (selectivity indices ranging 458 to 2,600).・・・Further development of 4*-E analogs as potential therapeutics for infection with multidrug-resistant HIV-1 is warranted.」(1539頁 要約)
(翻訳)「HIV-1,HIV-2実験株や初期臨床HIV-1分離株を含むヒト免疫不全ウイルス(HIV)広域スペクトラムに抗活性であるよう,一連の4'-エチニル(4'-E)ヌクレオシド類縁体が設計,合成,同定された。調べた類縁体中,4'-E-2'-デオキシシチジン(4'-E-dC),4'-E-2'-デオキシアデノシン(4'-E-dA), 4'-E-2'-デオキシリボフラノシル-2,6-ジアミノプリン及び4'-E-2'-デオキシグアノシンが最も強力で,好ましい細胞毒性プロファイル(選択性指数範囲458?2,600)にてインビトロ50%有効濃度範囲0.0003?0.01μMでHIV-1複製を阻害した。・・・多剤耐性HIV-1感染に対する見込みある治療薬として4'-Eアナログの更なる開発・発展が見込まれる。」

1c「


」(1540頁 図1)
(翻訳)「(構造式省略)
図1 4'-置換ヌクレオシドの構造 ここで議論された全ヌクレオシド類縁体は,アラビノフラノシル糖残基を持つ二つの化合物である4'-E-araT及び4'-E-araCを除き,ここで示した糖残基の4'位に置換基を有する。表1参照」

1d「


」(1540頁 表1)
(翻訳)「表1 MT-4細胞における4'-置換ヌクレオシドの抗HIV-1活性^(a)
(表1中の翻訳は省略)
^(a)抗HIV-1活性をMTT法により決定した。AZTと3TCはコントロールとして示す
^(b)示したデータは,独立した3回の実験結果から得られた平均値と標準偏差である。
^(c)NDとは,決定されていない(を意味する)。」

オ 本願補正発明4ないし7と発明の詳細な説明に記載された発明との対比

本願補正発明4ないし7は,本願補正発明1の化合物を含む医薬組成物に関するものであって,本願補正発明1の化合物の薬理作用を利用して,医薬の有効成分として用いる点に技術的特徴を有する医薬用途発明であると認められる。したがって,これら発明が上記ウで指摘した「β-D-及びβ-L-4'-C-置換-3'-フルオロ及び3'-アジド-3'-デオキシヌクレオシド,又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む,HIV,HBV,又はHIV及びHBVに感染した宿主を治療するための組成物を提供すること」という課題を解決することができるためには,有効成分として用いる本願補正発明1の化合物が入手できるものであり,さらに,この化合物が実際に抗HIV活性及び抗HBV活性を示し,治療効果を発揮するものでなければならない。

しかし,一般に,化合物の薬理作用は化合物の化学構造に大きく影響されることが技術常識であり,上記エで指摘したように,本願補正発明1の化合物は,従来技術文献である上記刊行物1において,実際に抗HIV活性を確認している化合物とは置換基が大きく異なる多様な化合物を包含するから,技術常識を考慮しても,そのようなものまでもが抗HIV活性を有し,医薬の有効成分とした時に治療効果を発揮するとは推認できない。
また,刊行物1に記載の化合物が,抗HIV活性のみならず抗HBV活性も有するかは不明であり,また抗HIV活性を有すれば抗HBV活性も有するという技術常識があったものとも認められない以上,本願補正発明1の化合物が抗HBV活性をも有し,医薬の有効成分とした時に治療効果を発揮するとも推認できない。

そうすると,本願補正発明4ないし7については,本願補正明細書の発明の詳細な説明に,「β-D-及びβ-L-4'-C-置換-3'-フルオロ及び3'-アジド-3'-デオキシヌクレオシド,又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む,HIV,HBV,又はHIV及びHBVに感染した宿主を治療するための組成物」の提供という,本願補正発明4ないし7の課題を解決できると当業者が理解できるように記載されているとは認められず,また,技術常識を考慮しても,このような課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるとも認められない。

したがって,本願補正発明4ないし7は,発明の詳細な説明に記載された発明を超えるものであって,発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

カ 独立特許要件のまとめ

したがって,本件補正後の請求項1,4ないし7の記載は,発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えるものであって,発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえず,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではなから,特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく,この出願は同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

よって,本願補正発明1,4ないし7は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,請求項1,4ないし7についての補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

3 補正の却下の決定のむすび

以上のとおり,請求項1,4ないし7についての補正は,平成18年改正前特許法第126条第5項の規定に適合しないから,本件補正は,その余の点を検討するまでもなく,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成25年3月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,平成24年11月9日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は,「第2 1(あ)」の請求項1に記載したとおりのものであり,請求項9に係る発明(以下,「本願発明9」といい,本願発明1とまとめて「本願発明」という。また,ここにおける明細書を「本願明細書」という。)は,次のとおりのものである。

「【請求項9】
式:
【化2】


[式中,
Xは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,又はCF_(3)であり;
Yは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,CF_(3),ヒドロキシメチル,メチル,場合により置換又は非置換のエチル,場合により置換又は非置換のビニル,場合により置換又は非置換の2-ブロモビニル,場合により置換又は非置換のエチニルであり;
R^(3)は,F,シアノ,アジド,クロロビニル,フルオロビニル,アルキル(C_(2-6)),2?3個のハロゲン置換アルキル(C_(1-6)),アルケニル(C_(1-6))又はアルキニル(C_(1-6))である;
Pgは,ヒドロキシ保護基であり;
Lは,脱離基であり;及び
R^(4)及びR^(5)は同一でも異なってもよく,低級アルキル,低級アルケニル,炭素数1?17個のアシル,アリール又はアラルキルである。]
で表される中間体。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定における拒絶の理由は,

[理由1]本願発明9は,本願の優先日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

[理由2]本願発明1は,本願の優先日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

という理由を含むものである。

3 [理由1]についての当審の判断

(1)刊行物2及び記載事項

刊行物2(原査定における引用文献2)は次のとおりであり,以下の事項が記載されている。なお,刊行物2につき提示した翻訳は,対応する日本語出願の公表公報である特表2006-528972号公報の記載に基づくものである。なお,対応する日本語出願の公表公報の段落番号も付記した。

刊行物2:国際公開第2005/011709号

2a「Field of the Invention
The present invention relates to novel 2',3'-dideoxy and didehydro nucleoside analogs and related prodrugs and their use in the treatment of a number of viral infections and disease states, especially including HIV and its related condition AIDS, among numerous others, and in particular, retro viruses.」(1頁6?10行)
(翻訳)「技術分野
【0002】
この発明は新規な2’,3’-ジデオキシおよびジデヒドロヌクレオシド類縁体関連のプロドラッグおよび多数のウイルス感染および疾病状態,特にHIVおよびその関連疾病AIDS特にレトロウイルスなどの処置におけるそれらの使用に関するものである。」

2b「Objects of the Invention
It is an object of the invention to provide compounds for the treatment of viral infections or cancer.」(2頁20?22行)
(翻訳)「【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この発明の目的。この発明の目的は,ウイルス感染または癌の処置のための化合物を提供することにある。」

2c「Specific Examples
Chemical Synthesis following Schemes A and B In Figure 5 and Figure 6 Synthesis of TKD-4-152 (Figure 4)・・・・・
l-(5-0-Acetyl-2-deoxy-3-0-methanesulfonyl-4-ethynyl-β-D-threo- pentofuranosyl)thymine (13)
To a pyridine (4 mL) solution of 12 (76 mg, 0.247 mmol) was added methanesulfonyl chloride (57 μL, 0.74 mmol) at 0℃, and the mixture was stirred at room temperature for 16 h. The reaction mixture was partitioned between CHCl_(3)/saturated aqueous NaHC0_(3)(60 mL x 3/20 mL). Silica gel column chromatography (CHCl_(3) /MeOH = 100/0-100/1) of the organic layer gave 13 (95.0 mg, 100%) as a foam: ^(1)H NMR (CDCl _(3))δl.96 (3H, d, J_(6 , M e)= 1.2 Hz, Me), 2.16 (3H, s, Ac), 2.38 (IH, ddd, J gem = 16.0 Hz, J _(1',2'a) = 3.5 Hz andJ_(,2'a,3)= 0.7 Hz, H-2'a), 2.70 (IH, s, ethynyl), 3.11 (IH, s, Ms), 3.19 (IH, ddd, J _(gem) = 16.0 Hz, J _(1',2'b) = 8.4 Hz and J_(2'b,3')= 5.5 Hz, H-2'b), 4.48 (IH, d, J _(gem) = 11.3 Hz, H-5'a), 4.53 (IH, d, J _(gem) = 11.3 Hz, H-5'b), 5.27-5.28 (IH, m, H-3'), 6.52 (IH, dd, J _(1',2'a)= 3.5 Hz and J_(1',2'b) = 8.4 Hz, H-l '), 7.33 (IH, d, J _(6 , M e)= 1.2 Hz, H-6), 8.86 (IH, brs, NH); FAB-MS m/z 387(M ^(+) +H).」(28頁1?3行,33頁9?20行)
(翻訳)「【0123】
実験例。図5,6のスキームA,BによるTKD-4-152の化学合成(図4)・・・・
【0138】
1-(5-O-アセチル-2-デオキシ-3-O-メタンスルフォニル-4-エチニル-β-D-トレオ-ペントフラノシル)チミン(13)。12(76mg,0.247mmol)のピリジン(4mL)溶液にメタンスルフォニルクロライド(57μL,0.74mmol)を0℃で添加し,混合物を室温で16時間攪拌した。反応混合物をCHCl_(3)/飽和水性NaHCO_(3)(60mLx3/20mL)間で区分し,有機層のシリカゲルカラム・クロマトグラフィー(CHCl_(3)/MeOH=100/0-100/1)により泡として13(95.0mg,100%)を得た。^(1)H NMR (CDCl_(3)) δ1.96(3H, d, J_(6,Me)= 1.2 Hz, Me), 2.16 (3H, s, Ac), 2.38 (1H, ddd, J_(gem)= 16.0 Hz, J_(1',2'a)= 3.5 Hz and J_(2'a,3')= 0.7 Hz, H-2’a), 2.70 (1H, s, ethynyl), 3.11 (1H, s, Ms), 3.19 (1H, ddd, J_(gem)= 16.0Hz, J_(1',2'b)= 8.4 Hz and J_(2'b,3')= 5.5 Hz, H-2’b), 4.48 (1H, d, J_(gem)= 11.3 Hz, H-5’a), 4.53 (1H, d, J_(gem)= 11.3 Hz, H-5’b), 5.27-5.28 (1H, m, H-3’), 6.52 (1H, dd, J_(1',2'a)= 3.5 Hz and J_(1',2'b)= 8.4 Hz, H-1’), 7.33 (1H, d, J_(6,Me)= 1.2 Hz, H-6),8.86 (1H, brs, NH); FAB-MS m/z 387 (M^(+)+H).」

2d「41. A method of producing a compound according to the chemical structure:


where R^(10) is H or a C_(1)-C_(4) allcyl group comprising reacting a compound according to the chemical stracture:


with methane sulfonyl chloride or toluenesulfonyl chloride to produce intermediate M:


where MeTo is a methyl group or a toluene group; and
subjecting intermediate M to DBN in acetonitrile followed by removal of the Ac group to produce the compound


42. The method according to claim 41 wherein R 10 - is methyl and MeTo is a methyl group」(67?68頁特許請求の範囲請求項41,42)
(翻訳)「41 構造式【化17】


の化合物を製造する方法であって,
ここでR^(10)はHまたはC_(1)-C_(4)アルキル基であって,
メタンスルフォニル・クロライドまたはトルエンスルフォニル・クロライドを使って以下の構造式の化合物を反応させ,
【化18】


以下の構造式の中間体Mを製造し,
【化19】


ここでMeToはメチル基またはトルエン基であり,
Ac基を除去することにより中間体Mをアセトニトリル中のDBNに掛け構造式【化20】


の化合物を製造することを特徴とする方法。

42 R^(10)はメチルであり,MeToはメチル基であることを特徴とする請求項41に記載の方法。」

2e「


」(図5)

(2)刊行物2に記載された発明

刊行物2は,「新規な2’,3’-ジデオキシおよびジデヒドロヌクレオシド類縁体関連のプロドラッグおよび多数のウイルス感染および疾病状態,特にHIVおよびその関連疾病AIDS特にレトロウイルスなどの処置におけるそれらの使用」(2a)に関し記載するもので,「ウイルス感染または癌の処置のための化合物を提供すること」(2b)を目的の一つとするものである。
このウイルス感染又は癌の処置のための化合物の製造方法として,特許請求の範囲の請求項41には,
「構造式【化17】


の化合物を製造する方法であって,
ここでR^(10)はHまたはC_(1)-C_(4)アルキル基であって,
メタンスルフォニル・クロライドまたはトルエンスルフォニル・クロライドを使って以下の構造式の化合物を反応させ,
【化18】


以下の構造式の中間体Mを製造し,
【化19】


ここでMeToはメチル基またはトルエン基であり,
Ac基を除去することにより中間体Mをアセトニトリル中のDBNに掛け構造式【化20】


の化合物を製造することを特徴とする方法。」(2d)と記載され,製造過程で「中間体M」が生成されることも記載されている。
そして,この製造方法の実施例として,R^(10)はメチル,MeToはメチル基である場合が記載されている(2d請求項42,2e)。この際の「中間体M」は,R^(10)はメチル,MeToはメチル基であるから,図5(2e)に記載の化合物13に他ならない。実施例では,この化合物13を実際に製造,取得しその物性値が示されていることから(2c),「中間体M」である化合物13自体が記載されているといえる。
この実施例における「中間体M」である化合物13を,図5で示される化合物13の化学構造式(2e)及び化合物名(2c)で表すと,刊行物2には,

「1-(5-O-アセチル-2-デオキシ-3-O-メタンスルフォニル-4-エチニル-β-D-トレオ-ペントフラノシル)チミン(13)


で表される中間体M。」

の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比

本願発明9と引用発明1とを対比する。

ア 本願発明9の式【化2】で表される構造式と引用発明1の構造式とを対比すると,引用発明1は,本願発明9の式【化2】で表される構造式中,X,Y,R^(3)について,XはOH(互変異性で同じ),Yはメチル,R^(3)はエチニル(すなわちアルキニル(C_(2)))に該当するものといえるから,引用発明1は,本願発明9の
「式:【化2】(省略)
[式中,
Xは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,又はCF_(3)であり;
Yは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,CF_(3),ヒドロキシメチル,メチル,場合により置換又は非置換のエチル,場合により置換又は非置換のビニル,場合により置換又は非置換の2-ブロモビニル,場合により置換又は非置換のエチニルであり;
R^(3)は,F,シアノ,アジド,クロロビニル,フルオロビニル,アルキル(C_(2-6)),2?3個のハロゲン置換アルキル(C_(1-6)),アルケニル(C_(1-6))又はアルキニル(C_(1-6))である;」「R^(4)及びR^(5)は同一でも異なってもよく,低級アルキル,低級アルケニル,炭素数1?17個のアシル,アリール又はアラルキルである。]で表される」に包含される。

イ 本願発明9の「中間体」について,本願明細書の記載を検討すると,段落【0051】及び【0052】には「4'-c-エチニル-3'-フルオロ-及び3'-アジドチミジンの合成の非-限定的例 (図2参照)」が具体的に記載され,その中で「・・・中間体11’を与えた。・・・中間体12を与えた。」と記載されていることから,最終目的化合物(4'-c-エチニル-3'-フルオロ-及び3'-アジドチミジン)の製造過程における中間体であることが分かる。
他方,引用発明1の「中間体M」は,刊行物2の請求項42(2d)に記載の最終目的化合物(図5におけるTKD-4-114(2e))の製造過程における中間体である。
そうすると,本願発明9の「中間体」と引用発明1の「中間体M」とは,中間体である点で共通する。

そうすると,両者は,

「 式:
【化2】


[式中,
Xは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,又はCF_(3)であり; Yは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,CF_(3),ヒドロキシメチル,メチル,場合により置換又は非置換のエチル,場合により置換又は非置換のビニル,場合により置換又は非置換の2-ブロモビニル,場合により置換又は非置換のエチニルであり;
R^(3)は,F,シアノ,アジド,クロロビニル,フルオロビニル,アルキル(C_(2-6)),2?3個のハロゲン置換アルキル(C_(1-6)),アルケニル(C_(1-6))又はアルキニル(C_(1-6))である;及び
R^(4)及びR^(5)は同一でも異なってもよく,低級アルキル,低級アルケニル,炭素数1?17個のアシル,アリール又はアラルキルである。]
で表される中間体。」

である点で一致し,次の点で一応相違する。

上記式:【化2】(省略)において,本願発明9では,Pgがヒドロキシ保護基,Lが脱離基であるのに対し,引用発明1では,Pgがアセチル,Lがメタンスルフォニルである点。(以下,「相違点」という。)

(4)判断

相違点について検討する。

ア 本願発明9における「Pgがヒドロキシ保護基」について,本願明細書には,「【0043】本明細書で使用される用語「保護」は,他に定義しない限り,その更なる反応又は他の目的を避けるために,酸素原子,窒素原子又はリン原子に付加される基を意味する。幅広い酸素原子及び窒素原子保護基は,有機合成の分野で当業者に知られている。」と記載されていることから,本願発明9の「Pgがヒドロキシ保護基」は,本願発明9の式:【化2】(省略)の5’位のヒドロキシ基の更なる反応又は他の目的を避けるために酸素原子に付加された基で,当業者によく知られている基といえる。
そして,一般に,中間体や発明化合物の合成の際,特定の化学変換の際に望ましくない副反応を回避するため,ヒドロキシ保護基としてアセチルが含まれていることは,以下に示す刊行物A,Bの記載からも明らかなように,本願優先日前,周知事項であった。
そうすると,本願発明9における「Pgがヒドロキシ保護基」としては,アセチル基が含まれているといえる。

他方,引用発明1における「5-O-アセチル」について,刊行物2の図5(2e)より,引用発明1である中間体M(13)は,最終生成物であるTKD-4-114の5’位がアセチル基除去されヒドロキシ基となっていることから,引用発明1における「5-O-アセチル」は,最終生成物の製造過程においてヒドロキシ基の望ましくない副反応等を回避する目的で付加されたヒドロキシ保護基と理解される。

そうすると,引用発明1における「5-O-アセチル」は,実質的に,本願発明9における「Pgがヒドロキシ保護基」に包含されるといえる。

イ 本願発明9における「Lが脱離基」について,本願明細書には「【0028】[式中,Lは,スルホニル,トリフルオロスルホニル,置換スルホネート及び非置換スルホネートを含むが,これらに限定されない。]」と記載されており,脱離基としてスルホニル基が含まれていることが分かる。
そして,本願発明9における「Lが脱離基」の役割は,本願の図2より,最終的に,3’位のヒドロキシ基を脱離させることであることが分かる。

他方,引用発明1における「3-O-メタンスルフォニル」につき,メタンスルフォニルはスルフォニル基の一種であり,また,最終化合物の3’位においてヒドロキシ基が脱離されていることからこのメタンスルホフォニル基は3’位のヒドロキシ基の脱離基として機能していると理解される。

そうすると,引用発明1における「3-O-メタンスルフォニル」は,実質的に,本願発明9における「Lが脱離基」に包含されるといえる。

以上ア,イより,相違点は実質的な相違点ではない。

刊行物A:特表2003-532733号公報
「【0030】
中間体及び発明化合物の合成の際に,露出した官能基については保護基を用いることが望ましい。特定の化学変換の際に望ましくない副反応を回避するため,ヒドロキシ,アミノ及びカルボン酸の官能基における保護基の使用は,有機合成方法論では一般的である。保護基の使用は,Greene 及びWutsによってProtecting Groups in Organic Synthesis, (John Wiley & Sons Press, 第2版)において十分に説明されており,それは参照により本明細書に組み込まれる。典型的なヒドロキシ保護基には,エステル形成基,例えばホルミル及びアセチルが含まれる。・・・全てのこのような保護基は,標準方法によって容易に除去される。」

刊行物B:特開2002-275181号公報
「【0060】化学反応の際に,望ましくない副反応を回避するため,特定の反応性官能基を誘導体化することは望ましいといえる。カルボン酸,アミン及びヒドロキシ基のような基は,一般に,所望により容易に除去できる多くの一般的な保護基のいずれかで保護される。有機合成における保護基の使用は,Greene and Wuts in Protecting Groups in Organic Synthesis,(John Wiley & Son Press, 第2版)によって十分に説明されており,それは,参照により本明細書に組み込まれている。典型的なアミノ酸のヒドロキシ保護基には,アシル基,例えばホルミル,アセチル及びベンゾイルが含まれる」

(5)まとめ

以上のとおり,本願発明9は,本願の優先日前に頒布された刊行物2に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当する。

4 [理由2]についての当審の判断

(1)刊行物1,3及び記載事項

刊行物1及びその記載事項は,上記「第2 2(2)(2-2)エ」に記載したとおりである。
刊行物3(原査定における引用文献5)は次のとおりで,以下の事項が記載されている。なお,刊行物3につき提示した翻訳は当審の仮訳である。

刊行物3:Journal of Medicinal Chemistry,Vol.30, No.8, (1987), p.1270-1278

3a「3’-Substituted 2’,3’-Dideoxynucleoside Analogues as Potential Anti-HIV(HTLV-III/LAV) Agents」(1270頁 標題)
(翻訳)「有用な抗HIV(HTLV-III/LAV)薬としての3'-置換2',3'-ジデオキシヌクレオシド類縁体」

3b「A series of 2',3'-unsaturated and 3'-substituted 2',3'-dideoxynucleoside analogues of purines and pyrimidines have been synthesized and evaluated for their inhibitory activity against human immunodeficiency virus (HIV). The 2',3'-unsaturated analogues of 2',3'-dideoxycytidine(ddeCyd) and 2',3'-dideoxythymidine(ddeThd), 3'-azido-2',3'-dideoxythymidine(AzddThd), 3'-fluoro-2',3'-dideoxythymidine, 2',3'-dideoxycytidine(ddCyd), and 2',3'-dideoxyadenosine(ddAdo) emerged as the most potent inhibitors of HIV-induced cytopathogenicity in the humanT lymphocyte cell lines ATH8 and MT4.」(1270頁 要約1?5行)
(翻訳)「一連の2',3'-不飽和及び3'-置換2',3'-ジデオキシヌクレオシド類縁体を合成し,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する阻害活性を評価した。2',3'-ジデオキシシチジン(ddeCyd)及び2',3'-ジデオキシチミジン(ddeThd)の2',3'-不飽和類縁体,3'-アジド-2',3'-ジデオキシチミジン(AzddThd),3'-フルオロ-2',3'-ジデオキシチミジン,2',3'-ジデオキシシチジン(ddCyd),及び2',3'-ジデオキシアデノシン(ddAdo)が,ヒトTリンパ球細胞株ATH8及びMT4におけるHIV誘発細胞病原性の最有力阻害剤として明らかとなった。」

3c「


」(1271頁 左欄上)

3d「


」(1273頁 右欄上)
(翻訳)「表II ATH8細胞におけるHIV複製阻害剤としての2',3'-ジデオキシリボヌクレオシド類縁体の比較効力と選択性
(表中の数値等省略)
a HIVの細胞変性効果に対するATH8細胞の50%保護を達成する化合物の有効量。
b 正常な非感染ATH8細胞の生存率を50%低下させるのに必要な化合物の阻害量。」

(2)刊行物1に記載された発明

刊行物1は,「4'-エチニルヌクレオシド類縁体」(1a)に関し記載するものであり,多剤耐性HIV変異体の有力な阻害剤として4'-エチニルヌクレオシド類縁体が設計,合成され(1b),その類縁体の一つとして,表1の上から2番目には,化合物「4'-エチニルチミジン」(1d)が記載されている。
この化合物の構造式を,図1(1c)で表される4'-置換ヌクレオシドの構造式を用いて示すと,刊行物1には,



塩基はチミン,糖のX(2'位)-H,Y(3'位)-OH,Z(4'位)-CCH
で示される,4'-エチニルチミジン」

の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比

本願発明1と引用発明2とを対比する。

ア 引用発明2における塩基「チミン」は,本願発明1の式(I)のピリミジン骨格におけるXがOH,Yがメチルに相当するから,本願発明1の「式(I)及び(II):【化1】(省略)[式中,Xは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,又はCF_(3)であり;Yは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,CF_(3),ヒドロキシメチル,メチル,場合により置換又は非置換のエチル,場合により置換又は非置換のビニル,場合により置換又は非置換の2-ブロモビニル,場合により置換又は非置換のエチニルであり」に包含される。

イ 引用発明2における糖残基のX(2'位)-H,Y(3'位)-OH,Z(4'位)-CCHは,本願発明1の式(I)の5員環におけるR^(1)がOH,R^(2)がOH,R^(3)がエチニル(C_(2)),ZがOのものである。
そうすると,本願発明1の「式(I)及び(II):【化1】(省略)[式中」の「R^(1)は,F又はN_(3)であり;R_(2)は,OH,OR^(4),OC(O)R^(4),OP_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R^(5)_(z),P_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R5_(z),OCH_(2)P_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R5_(z),0P(0)(0Q)_(a)(NHR^(4))_(b),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),SC(O)R^(4),NH_(2),NHC(O)R^(4),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4)であり;R^(3)は,F,シアノ,アジド,クロロビニル,フルオロビニル,アルキル(C_(2-6)),2?3個のハロゲン置換アルキル(C_(1-6)),アルケニル(C_(1-6))又はアルキニル(C_(1-6))である;Zは,O,S,CH_(2)又はC=CH_(2)であり;Aは,N,CH又はCFであり;R^(4)及びR^(4)は同一でも異なってもよく,低級アルキル,低級アルケニル,炭素数1?17個のアシル,アリール又はアラルキルであり;Mは,H^(+),Na^(+)及びK^(+)からなる群より選ばれる少なくとも1つのメンバーであり;vは,1,2又は3の値を有し;x,y及びzは,互いに独立して,0,1,2,3又は4の値を有し;並びにaは,0又は1の値を有し,bは,1又は2の値を有し,そしてQは,M又はR^(4)である。]」と,引用発明2における糖残基のX(2'位)-H,Y(3'位)-OH,Z(4'位)-CCHとは,「式(I)及び(II):【化1】(省略)[式中」の「R_(2)は,OH,OR^(4),OC(O)R^(4),OP_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R^(5)_(z),P_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R5_(z),OCH_(2)P_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R5_(z),0P(0)(0Q)_(a)(NHR^(4))_(b),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),SC(O)R^(4),NH_(2),NHC(O)R^(4),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4)であり;R^(3)は,F,シアノ,アジド,クロロビニル,フルオロビニル,アルキル(C_(2-6)),2?3個のハロゲン置換アルキル(C_(1-6)),アルケニル(C_(1-6))又はアルキニル(C_(1-6))である;Zは,O,S,CH_(2)又はC=CH_(2)であり;Aは,N,CH又はCFであり;R^(4)及びR^(4)は同一でも異なってもよく,低級アルキル,低級アルケニル,炭素数1?17個のアシル,アリール又はアラルキルであり;Mは,H^(+),Na^(+)及びK^(+)からなる群より選ばれる少なくとも1つのメンバーであり;vは,1,2又は3の値を有し;x,y及びzは,互いに独立して,0,1,2,3又は4の値を有し;並びにaは,0又は1の値を有し,bは,1又は2の値を有し,そしてQは,M又はR^(4)である。]」の点で共通する。

ウ 引用発明2は,デオキシリボースの1'位に塩基であるチミンがβ位で結合していることから,β-ヌクレオシドといえる。このβ-ヌクレオシドがD体かL体かは明記されていない。そして,引用発明2の塩基はチミンであるから,引用発明2が1-(2,3-ジデオキシ-3,4-ジフルオロ-β-D-リボフラノシル)グアニンでないことは明らかであり,この化合物が除かれているものであるといえる。
そうすると,本願発明1の「β-D-及びβ-L-ヌクレオシドを含む化合物,又はその薬学的に許容される塩,但し,1-(2,3-ジデオキシ-3,4-ジフルオロ-β-D-リボフラノシル)グアニンを除く」と,引用発明2とは,β-ヌクレオシド,又はその薬学的に許容される塩,但し,1-(2,3-ジデオキシ-3,4-ジフルオロ-β-D-リボフラノシル)グアニンを除く点で,共通する。

そうすると,両者は,

「式(I)及び(II):
【化1】


[式中,
Xは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,又はCF_(3)であり; Yは,水素,F,Cl,Br,I,NH_(2),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),OH,OR^(4),N_(3),CN,CF_(3),ヒドロキシメチル,メチル,場合により置換又は非置換のエチル,場合により置換又は非置換のビニル,場合により置換又は非置換の2-ブロモビニル,場合により置換又は非置換のエチニルであり;
R_(2)は,OH,OR^(4),OC(O)R^(4),OP_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R^(5)_(z),P_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R5_(z),OCH_(2)P_(v)O_(3v)M_(x)R^(4)_(y)R5_(z),0P(0)(0Q)_(a)(NHR^(4))_(b),SH,SR^(4),S(O)_(b)R^(4),SC(O)R^(4),NH_(2),NHC(O)R^(4),NHR^(4),NR^(4)R^(5),NHOH,NHOR^(4),NHNH_(2),NR^(4)NH_(2),NHNHR^(4)であり;
R^(3)は,F,シアノ,アジド,クロロビニル,フルオロビニル,アルキル(C_(2-6)),2?3個のハロゲン置換アルキル(C_(1-6)),アルケニル(C_(1-6))又はアルキニル(C_(1-6))である;
Zは,O,S,CH_(2)又はC=CH_(2)であり;
Aは,N,CH又はCFであり;
R^(4)及びR^(5)は同一でも異なってもよく,低級アルキル,低級アルケニル,炭素数1?17個のアシル,アリール又はアラルキルであり;
Mは,H^(+),Na^(+)及びK^(+)からなる群より選ばれる少なくとも1つのメンバーであり;
vは,1,2又は3の値を有し;
x,y及びzは,互いに独立して,0,1,2,3又は4の値を有し;並びに
aは,0又は1の値を有し,bは,1又は2の値を有し,そしてQは,M又はR^(4)である。]
で表される構造を有するβ-ヌクレオシド,又はその薬学的に許容される塩,但し,1-(2,3-ジデオキシ-3,4-ジフルオロ-β-D-リボフラノシル)グアニンを除く。」

である点で一致し,次の点で相違する。

(ア)式(I)のR^(1)において,本願発明1では,F又はN_(3)であるのに対し,引用発明2は,OHである点。(以下,「相違点(ア)」という。)

(イ)β-ヌクレオシドが,本願発明1は,β-D-及びβ-L-ヌクレオシドを含む化合物であるのに対し,引用発明2は,D体及びL体を含むものであるか明らかでない点(以下,「相違点(イ)」という。)

(4)判断

ア 相違点について

(ア)相違点(ア)について
引用発明2である「4'-エチニルチミジン」は,多剤耐性HIV変異体の有力な阻害剤として設計,合成,同定された4'-エチニルヌクレオシド類縁体の一つである(1b,1d)。4'-エチニルヌクレオシド類縁体中,4'-E-2'-デオキシシチジン(4'-E-dC),4'-E-2'-デオキシアデノシン(4'-E-dA)は抗HIV活性が強力であると刊行物1に記載され(1b),表1(1d)にて確認できる。これら4'-エチニルヌクレオシド類縁体は,糖鎖が同じ(2'-H, 3'-OH, 4'-CCH)で塩基のみが異なる化合物である。
ところで,引用発明2の抗HIV活性を表1(1d)で検討するに,塩基がチミンである種々の4'-エチニルヌクレオシド類縁体と比較すると,引用発明2の抗HIV活性は相対的に高いものの,塩基のみが異なり糖鎖は同じ(2'-H, 3'-OH, 4'-CCH)ものである上記4'-E-2'-デオキシシチジン(4'-E-dC)及び4'-E-2'-デオキシアデノシン(4'-E-dA)と比較すると,引用発明2の抗HIV活性は相対的に低い。
そうすると,刊行物1には,多剤耐性HIV-1感染に対する見込みある治療薬として4'-Eアナログの更なる開発・発展が見込まれる(1b)と記載されていることから,該HIV-1感染に対する見込みある治療薬として,引用発明2の抗HIV活性がより高くなるよう更なる開発をしようという動機付けが示唆されているといえる。

一方,刊行物3には,種々の3'-置換2',3'-ジデオキシヌクレオシド類縁体を合成しHIV阻害活性を評価したところ,3'-アジド-2',3'-ジデオキシチミジン(AzddThd),3'-フルオロ-2',3'-ジデオキシチミジンが最有力阻害剤として明らかとなったことが記載され(3b),その実験結果が示されている表II(3d)より,3'位が水酸基の化合物(-OH;化合物4a)よりも,アジド(-N_(3);化合物1a)及びフッ素(-F;化合物3a)の方が,ED_(50)(HIVの細胞変性効果に対するATH8細胞の50%保護を達成する化合物の有効量)及びID_(50)(正常な非感染ATH8細胞の生存率を50%低下させるのに必要な化合物の阻害量)が共に小さい値であり,抗HIV活性がより高いことが確認できる。
このことから,有用な抗HIV活性を有する化合物として,ヌクレオシドにつき,2',3'位を共にデオキシとし,さらに3'位をアジド(-N_(3))又はフッ素(-F)で置換すると良いことが記載されているといえる。

そうすると,引用発明2において,抗HIV活性がより高くなるよう4'-エチニルヌクレオシド類縁体を開発しようとして,刊行物3の上記記載を適用し,3'位の-OHに代えて,アジド(-N_(3))又はフッ素(-F)で置換することは,当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点(イ)について
本願発明1のD体,L体につき,本願明細書の記載を検討すると,直接的に説明されている箇所はないが,関連する記載として,次のものがある。「【0036】本明細書で使用される用語「鏡像異性的に純粋」とは,ヌクレオシドの単一エナンチオマーの少なくとも,95%,好ましくは約97%,98%,99%又は100%を含むヌクレオシド組成を意味する。【0037】本明細書で用いる用語「実質的に含まない」又は「実質的に存在しない」は,ヌクレオシドの指定のエナンチオマーの少なくとも,85又は90重量%,好ましくは95重量%?98重量%,更により好ましくは99重量%?100重量%を含むヌクレオシド組成を意味する。好ましい実施態様では,本発明の方法及び化合物では,化合物は,ヌクレオシドの非-指定のエナンチオマーを実質的に含まない。【0038】同様に,用語「単離された」は,ヌクレオシドの少なくとも,85又は90重量%,好ましくは95重量%?98重量%,更により好ましくは99重量%?100重量%を含み,残りは他の化学種又はエナンチオマーを含む,ヌクレオシド組成を意味する。」
これらの記載,及び,本願発明1が「β-D-及びβ-L-ヌクレオシドを含む化合物」と記載されていることを踏まえると,本願発明1は,β-ヌクレオシドとしてD体又はL体を意図するものの,鏡像異性的に純粋な一方の鏡像異性体(例えばD体)を得ようとしても,製造・精製過程において実際には数%程度他方の鏡像異性体(例えばL体)が含まれてしまうことから,「β-D-及びβ-L-ヌクレオシドを含む化合物」と特定していると解するしかない。

他方,引用発明2も,β-ヌクレオシドであることから,D体及びL体は存在する。引用発明2がD体又はL体のどちらを意図して合成したものか不明ではあるが,常識的には,鏡像異性体が存在する化合物を合成すれば,どちらか一方の鏡像異性体を製造・精製しようとしても,他方の鏡像異性体が若干でも含まれているといえる。そうすると,引用発明2の化合物がD体又はL体のどちらを意図して製造・精製したとしても,他方の鏡像異性体も含まれている可能性は高く,厳密にはD体及びL体を含むといえる。

そうすると,上記相違点(イ)は,実質的な相違点ではない。

仮に,実質的な相違があるとしても,上述のように,技術常識的には,D体及びL体の両方が含まれている可能性があることから,引用発明2のβ-ヌクレオシドを,D体及びL体を含む化合物とすることに格別の困難性はない。

イ 効果について

本願発明1の効果は,本願明細書の記載を参酌しても,刊行物1,3の記載事項及び本願優先日前の周知事項から予測される範囲内のものであり,格別顕著なものではない。

3 まとめ

したがって,本願発明1は,その出願前に頒布された刊行物1及び3に記載された発明及び本願優先日当時の周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび

以上のとおり,本願発明9は特許法第29条第1項第3号に該当し,また,本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余について言及するまでもなく,この出願は,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-19 
結審通知日 2014-06-24 
審決日 2014-07-07 
出願番号 特願2008-533517(P2008-533517)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C07H)
P 1 8・ 537- Z (C07H)
P 1 8・ 575- Z (C07H)
P 1 8・ 121- Z (C07H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉住 和之田村 聖子  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 齊藤 真由美
門前 浩一
発明の名称 抗ウイルス剤としての修飾4’-ヌクレオシド  
代理人 古賀 哲次  
代理人 石田 敬  
代理人 中村 和美  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 青木 篤  
代理人 福本 積  
代理人 武居 良太郎  
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