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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07C
管理番号 1294409
審判番号 不服2012-17636  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-10 
確定日 2014-11-26 
事件の表示 特願2007-506841「液体」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月20日国際公開、WO2005/097731、平成19年11月15日国内公表、特表2007-532525〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年 4月 7日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2004年 4月 7日 グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国 (GB))を国際出願日とする出願であって、以降の手続の経緯(提出された書面)は概略以下のとおりである。
平成18年11月28日 翻訳文提出書
平成23年 2月18日付け 拒絶理由通知書
平成23年 8月31日 意見書・誤訳訂正書
平成24年 5月 2日付け 拒絶査定
平成24年 9月10日 審判請求書・手続補正書
平成25年 1月23日付け 審尋
平成25年 6月 4日 回答書
平成25年 9月 5日付け 拒絶理由通知書
平成26年 2月26日 意見書・手続補正書

第2 本願発明及び本願明細書
この出願において、特許を受けようとする発明は、平成26年 2月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものである。(以下、その請求項1を「本願請求項」、ここに記載された事項により特定される発明を「本願発明」という。)。なお、この出願においては、明細書については、平成23年 8月31日付けの誤訳訂正書により訂正された他は、補正がされていない(平成23年 8月31日付けの誤訳訂正書により訂正された明細書を「本願明細書」という。)。
本願請求項の記載は以下のとおりである。
「 【請求項1】
アニオン及びカチオンを含むイオン性液体を用いて高分子材料を溶解する方法であって、該カチオンが下式(I)の3級窒素含有カチオンであり、該アニオンが、カルボン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、炭酸イオン、塩化物イオン、炭酸水素イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、ケイ酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、及びテトラフルオロホウ酸イオンから選択されることを特徴とする、イオン性液体を用いて高分子材料を溶解する方法。
N^(+)HRR'R'' (I)
(Rは1つ以上のヒドロキシ基で置換されたアルキルであるヒドロカルビル基であって、そのヒドロキシアルキル基は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有し、R'及びR''はそれぞれ、1つ以上のヒドロキシ基で置換されていてもよい1?12個の炭素原子を有するアルキルであるヒドロカルビル基である。)」

第3 当審で通知した拒絶の理由
当審において、平成25年 9月 5日付けで通知した拒絶の理由は、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものでないという理由を含むものである。

第4 当審の判断
当審は、本願は、平成25年 9月 5日付けで通知した拒絶の理由のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものでないという理由を含むものであると判断する。その理由は以下に述べる。
本願明細書には、本願発明におけるイオン性液体を用いた具体的応用例として、【0074】に、N,N-ジメチルエタノールアンモニウム グリコレート中でのアルコール脱水素酵素によるメタノールの脱水素反応を行ったことが記載されている。
しかし、本願明細書には、高分子材料を本願発明におけるイオン性液体に溶解したことは具体的に記載されていない。
本願明細書に「【0063】 ある生物学的及び/又は化学的反応にイオン性液体を使用することには、従来の水溶液と比べていくつかの利点がある。イオン性液体は、幅広い範囲の無機、有機、高分子及び生物材料を溶解する能力を有し、しばしば非常に高濃度まで溶解する。」と記載されているのに対し、本願明細書に本願発明におけるイオン性液体を用いた具体的に用いられた酵素は、生物材料に該当するものの、通常は酵素のことを高分子材料とはいわないので、明細書には、本願発明の高分子材料の溶解方法の発明について、具体例が全く記載されていないことになる。高分子材料をイオン性液体に溶解して用いることが本願の優先日時点の当業者に周知慣用の技術であったとも認められないところ、高分子材料といっても、その化学構造や物性の特徴はさまざまであり、本願明細書には、本願発明におけるイオン性液体に実際にどのような高分子材料が溶解できるのかを知る手掛かりとなる記載もない。そうすると、本願明細書に記載された具体的応用例である酵素反応についての記載から、高分子材料を溶解する方法にまで一般化することができるとはいえない。
請求人は、平成26年 2月26日付けで提出した意見書の3頁5.の終わりから2段落目において、「大まかに言って、イオン性液体などの液体の溶媒特性は、それらの分散力、双極子(永久及び誘起の両方)、水素結合(供与性及び受容性の両方)、及び静電相互作用の観点から表すことができます。本願発明のイオン性液体のカチオン部分に関しては、1つ以上のヒドロキシ基の存在が、イオン性液体の永久双極子「極性」及び水素結合能(特に供与効果)を増大させます。このことはイオン性液体の溶媒特性に影響し、特に様々なポリマーの溶解に有利に働きます。」と述べ、本願発明のイオン性液体による高分子材料の溶解方法の発明については、明細書に裏付けられ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである旨を主張している。
しかし、高分子材料といっても、その化学構造や物性の特徴はさまざまであり、本願発明のイオン性液体のカチオン部分に関しては、1つ以上のヒドロキシ基の存在が、イオン性液体の永久双極子「極性」及び水素結合能(特に供与効果)を増大させるか否かはさておき、高分子材料には、たとえば、極性の面でもさまざまなものが存在することを考えると、技術常識を考慮しても、高分子材料が一般に本願発明におけるイオン性液体に溶解できるものであることが明らかであるとはいえない。
したがって、本願発明は、明細書に記載された範囲をこえる発明であるから、明細書に記載されたものであるとはいえず、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものでない。

第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものでなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、その余の点について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、上記結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2014-06-19 
結審通知日 2014-06-24 
審決日 2014-07-11 
出願番号 特願2007-506841(P2007-506841)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 斉藤 貴子藤原 浩子  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 齋藤 恵
中田 とし子
発明の名称 液体  
代理人 胡田 尚則  
代理人 高橋 正俊  
代理人 出野 知  
代理人 青木 篤  
代理人 石田 敬  
代理人 古賀 哲次  
代理人 蛯谷 厚志  

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