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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1294421
審判番号 不服2013-15558  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-09 
確定日 2014-11-26 
事件の表示 特願2009-553751「ハイブリッドパイロット構成」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日国際公開、WO2008/112803、平成22年 6月24日国内公表、特表2010-521890〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2008年3月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年3月12日 米国,2008年3月10日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成25年4月2日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 補正却下の決定
[結論]
平成25年8月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成25年8月9日付けの手続補正の概要
平成25年8月9日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成24年6月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1,2を削除し,請求項3を独立請求項とし,請求項7,8を削除し,請求項9をその「精度を強調させる」を「精度を向上させる」とするとともに独立請求項とし,請求項13,14を削除し,請求項15を独立請求項とし,請求項19,20を削除し,請求項21を独立請求項とし,請求項25に請求項2,3の内容に対応する構成を追加したものである。そして,上記請求項の削除に伴い,各請求項の項番を繰り上げ,従属請求項における引用請求項の項番を当該繰り上げに対応して変更したものである。

2 補正の適否
(1)新規事項の有無,シフト補正の有無,補正の目的要件
請求項1,2,7,8,13,14,19,20についての上記補正は,請求項の削除を目的とするものに該当する。また,請求項9についての上記補正は誤記の訂正を目的とするものに該当する。
しかしながら,請求項25は,請求項2,3の内容に対応する構成が新たに追加されるとともに新請求項17に繰り上がったが,新たに追加された請求項2,3の内容に対応する構成は,請求項25の構成を限定するものではなく,また,チャネル推定の精度を向上させるという新たな課題に係るものであるから,特許法第17条の2第5項第2号の「(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」との規定に該当しない。そして,請求項25についての補正は,特許法第17条の2第5項各号に掲げられる他のいずれの事項を目的とするものでもない。
また,従属請求項について検討すると,例えば,請求項4は,請求項1を引用するものであったのに,項番が繰り上がって新請求項2となるとともに新請求項1を引用することとなり,このため,新請求項1が含む請求項2,3の構成が新たに追加されることになった。そして,新たに追加された請求項2,3の構成は,請求項4の構成を限定するものではなく,また,チャネル推定の精度を向上させるという新たな課題に係るものであるから,特許法第17条の2第5項第2号の「(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」との規定に該当しない。そして,請求項4についての補正は,特許法第17条の2第5項各号に掲げられる他のいずれの事項を目的とするものでもない。他の従属請求項についても同様である。

以上のとおり,請求項4?6,10?12,16?18,22?24,25についての補正は,特許法第17条の2第3項及び第4項の規定には適合するものの,同法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないから,同項に規定される要件を満たしてない。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)独立特許要件
上記(1)のとおりであるが,更に進んで,仮に,請求項1についての補正を,請求項2,3の構成に限定して特許請求の範囲を減縮することを目的としたものであったとしてみて,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができたものであったか否かについて,以下検討する。

ア 補正後の発明
補正後の発明は,平成25年8月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの
「【請求項1】
無線通信ネットワークにおいて,共通パイロットチャネル及び個別パイロットチャネルを用いるハイブリッドパイロットモードを利用するための方法であって,
多重化された共通パイロットシンボルと専用パイロットシンボルとを含む送信を送信時間間隔において受信することと,
前記共通パイロットシンボルを利用して少なくとも1つの制御チャネルにおける制御信号を復調することと,
前記専用パイロットシンボルを用いて少なくとも1つのデータチャネルにおけるデータ信号を復調することと,を備え,
前記専用パイロットシンボル及び前記共通パイロットシンボルの両方を利用してデータ信号を復調することをさらに備え,
前記専用パイロットシンボルを利用してチャネル推定を生成することと,前記共通パイロットシンボルを用いることによって前記チャネル推定の精度を向上させることを備える,方法。」
と認める。
([当審注]:下線部は,補正箇所を示すために平成25年8月9日付け手続補正書に記載されたものを援用している。)

イ 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2006/134949号(以下,「引用例」という。)には,「送信装置,送信方法,受信装置及び受信方法」として,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「技術分野
[0001] 本発明は,一般に移動通信の技術分野に関し,特に直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式の移動通信システムに使用される送信装置,送信方法,受信装置及び受信方法に関連する。
背景技術
[0002] 映像通信やデータ通信が主に行われる将来の移動通信システムでは,従来の移動通信システム(IMT-2000)をしのぐ能力が求められ,大容量化,高速化,ブロードバンド化等を十分に達成する必要がある。広帯域の移動通信システムでは,マルチパス伝搬環境による周波数選択性フェージングの影響が顕著になり,このため,OFDM方式が次世代の通信方式に有望視されている。OFDM方式では,伝送すべき情報を含む有効シンボル部にガードインターバル部を付加することでシンボルが形成され,所定の送信時間間隔(TTI:Transmission Time Interval)毎に複数個のシンボルが送信される。また,1つのフレームには所定数個のTTIが含まれる。ガードインターバル部は有効シンボル部に含まれている情報の一部で作成される。ガードインターバル部は,サイクリックプレフィックス(CP)とも呼ばれる。図1はフレーム,TTI及びシンボルの相互関係を示す。受信側では,様々な伝搬遅延を有するパスが受信される。しかしながら,OFDM方式では,伝搬遅延がガードインターバル部の期間内に収まっていれば,シンボル間干渉を効果的に抑制することができる。
[0003] 1つのTTIの間には様々なチャネルが伝送され,そのチャネルには共通パイロット(common pilot)チャネル,共有制御(shared control)チャネル及び共有データチャネル(shared data)が含まれてもよい。共通パイロットチャネルは共有制御チャネルを復調するために使用され,複数のユーザに共通に使用される。具体的には,共通パイロットチャネルはチャネル推定,同期検波,受信信号品質の測定等に使用される。共有制御チャネルは,ペイロード(又はトラフィック情報チャネル)を含む共有データチャネルを復調するのに使用される。」(1頁)

(イ)「課題を解決するための手段
[0006] 本発明では,共通パイロットチャネル,共有制御チャネル及び共有データチャネルを多重化する多重化手段と,多重化された信号を逆フーリエ変換し,シンボルを生成する手段と,生成されたシンボルを送信する手段とを有する送信装置が使用される。多重化手段は,ペイロードを含む共有データチャネルの復調に使用される共有制御チャネルと共有制御チャネルの復調に使用され複数のユーザに共通に使用される共通パイロットチャネルとを周波数方向に多重化し,共通パイロットチャネル及び共有制御チャネルと共有データチャネルとを時間方向に多重化する。」(2?3頁)

(ウ)「「0014」 特定の通信相手に送信ビームの指向性を合わせる手段が送信装置に設けられてもよい。個別パイロットチャネルは特定の通信相手毎に挿入されてもよい。指向性ビームが使用される場合には,ビーム毎にチャネルの状況が異なる。共通パイロットチャネルに加えて,その方向に特化した個別パイロットチャネルを利用することで,チャネル推定精度を向上させることができる。」(6頁)

(エ)「[0032] 図3は,本発明の一実施例による受信機の一部を示す。このような受信機は典型的には本実施例のように移動通信システムの移動局(例えばユーザ#1の通信装置)に設けられてもよいが,他の装置に設けられてもよい。受信機は,ガードインターバル除去部302と,FFT部304と,共通パイロット分離部306と,チャネル推定部308と,個別パイロット分離部310と,時間及び周波数データ抽出部312と,データ復調部314と,デインタリーブ処理部316と,逆拡散及びチャネル復号化部318とを有する。
(中略)
[0035] 共通パイロット分離部306は,OFDM方式で復調されたサブキャリア毎の信号から,共通パイロットチャネル及び共有制御チャネルと他のチャネルを分離する。
[0036] チャネル推定部308は,分離された共通パイロットチャネルを用いてチャネル推定を行い,チャネル補償のための制御信号をデータ復調部314等に与える。このような制御信号は,図示の簡明化のため詳細には描かれてはいないが,共有制御チャネルのチャネル補償にも使用される。
[0037] 個別パイロット分離部310は,本実施例では使用されないが,後述の実施例では,個別パイロットチャネルとそれ以外のチャネルを分離する。個別パイロットチャネルはチャネル推定部に与えられ,チャネル推定精度を高めるために使用される。
(中略)
[0039] データ復調部314は,データチャネルに対してチャネル補償を行い,復調を行う。復調方式は,送信側で行われた変調方式に合わせて行われる。
(中略)
[0042] アンテナで受信された信号は,不図示の無線部を経てベースバンドに変換され,ガードインターバルが除去され,高速逆フーリエ変換される。変換後の信号から共通パイロットチャネルが分離され,チャネル推定が行われる。また,変換後の信号から共有制御チャネル及びデータチャネルが分離され,それぞれ復調される。復調後のデータチャネルはデインタリーブされ,チャネル復号化され,そして送信されたデータが復元される。」(9?10頁)

(オ)「[0043] 図4は,本実施例で行われる各種チャネルの多重化の様子を示す。一例として,本実施例では,10msのフレーム中に20個のTTIが含まれる(この場合,1TTIは0.5msである。)。1つのTTIは時間方向に並ぶ7つのシンボルで構成される(ND=7)。
[0044] 図示の例では,共通パイロットチャネル,共有制御チャネル,個別パイロットチャネル及びデータチャネルが多重化されている。個別パイロットチャネルについては第2実施例以降で説明される。共通パイロットチャネル及び共有制御チャネルは1つのシンボルの中で周波数多重されている。より具体的には,共通パイロットチャネルは,TTI中の先頭シンボルの中で一定の周波数間隔で挿入されている。そのTTI中の2番目以降のシンボルで共有データチャネルが伝送される。即ち,共通パイロットチャネル及び共有データチャネルは時間多重され,共有制御チャネル及びデータチャネルも時間多重される。」(10?11頁)

(カ)「[0050] 図6は個別パイロットチャネルを含む様々なチャネル構成例を示す。チャネル構成は,図示されるものに限定されず,様々な構成を使用することができる。チャネル構成例1では,個別パイロットチャネルが2番目のシンボル中で一定の周波数間隔で挿入されている。チャネル構成例2では,個別パイロットチャネルは,時間及び周波数の双方向にホッピングするパターンで挿入される。チャネル構成例3では,個別パイロットチャネルは,一部の共通パイロットチャネルの後に時間多重され,別の共通パイロットチャネルの後には挿入されていない。チャネル構成例4では,個別パイロットチャネルと共有データチャネルとが符号多重されている。」(12?13頁)

(キ)「[0053] (中略)移動局では,共通パイロットチャネルに加えて個別パイロットチャネルをチャネル推定に利用することで,チャネル推定精度を向上させることができる。
[0054] (中略)高速に移動する移動局ではチャネル推定値の時間変化は大きいかもしれないので,共通及び個別パイロットチャネルの双方を利用することでチャネル推定値を高精度に求めることができる。」(14頁)

(ク)「[0064] (パイロットチャネル)
共通パイロットチャネルは,同一セルに属する複数のセクタから,ユーザの該当するセクタを同定するために用いることができる。同一セルに属する全てのセクタは,同一のスクランブルコード(Cell-specific scrambling code)を用いる。共通パイロットチャネルは,セルサーチやハンドオーバに使用されてもよいし,周辺セル/セクタの参照レベルの測定に使用されてもよい。共通パイロットチャネルは,瞬時のチャネル状況に応じたスケジューリング,およびチャネル品質情報(CQI: channel quality information)を得るための品質測定に使用されてもよい。CQIは例えば適応リンク制御に使用されてもよい。共通パイロットチャネルは,セクタビーム又はマルチビームで送信する物理チャネルのチャネル推定に使用されてもよい。
[0065] 個別パイロットチャネルは,セクタビームで送信されてもよいし,マルチビームで送信されてもよいし,ユーザ毎に適応的に生成されたアダプティブビーム(適応指向ビーム)で送信されてもよい。マルチビームに含まれる指向性ビームも適応指向ビームも特定の方向に強いアンテナ利得を有する点で共通するが,前者の指向性ビームは固定されたウエイトで形成されるのに対して,後者の適応指向性ビームのウエイトは移動局の位置に応じて変化する点で異なる。即ち,前者は指向方向が不変な指向性ビームであるのに対して,後者は指向方向が可変な指向性ビームである。個別パイロットチャネルは,ユーザまたは環境に依存する伝搬チャネル条件に応じて適応的に使用される(使用されなくてもよい。)。個別パイロットチャネルは,ユーザ毎に適応的に生成されたアダプティブビームで送信されてもよい。個別パイロットチャネルは,セクタビームまたはマルチビームで送信される物理のチャネル推定を補助するために使用される(基本的には共通パイロットチャネルがチャネル推定に使用される。)。個別パイロットチャネルは,アダプティブビームで送信される物理チャネルのチャネル推定に使用されてもよい。個別パイロットチャネルは,アダプティブビームで送信される物理チャネルのCQI測定に使用されてもよい。
(中略)
[0067] (ビーム)
共通パイロットチャネルは,セクタビームで送信されてもよく,物理チャネルの復調処理,すなわちチャネル推定および受信タイミング同期に使用されてもよい。また,MIMO(multiple input and multiple output)方式の送信機から送信されてもよい。さらに,ユーザおよび環境に応じて個別パイロットチャネルを追加することにより,チャネル推定精度を改善することができる。共有データチャネルに使用される特定のチャンクが1又は数少ないユーザにしか用いられていない場合,そのユーザの伝搬環境(移動速度,遅延広がり,受信SINR等)に応じて,個別パイロットチャネルを追加的に使用することで,チャネル推定精度を更に改善することができる。マルチキャスト/ブロードキャストチャネルにおいて,当該セルにおける最悪の伝搬環境のユーザを想定して個別パイロットチャネルを追加的に使用することで,チャネル推定精度を改善することもできる。一方,セルサーチやハンドオーバのための参照レベル測定,スケジューリング及び適応リンク制御等のためのCQI測定は,原則として共通パイロットチャネルを用いて行われ,個別パイロットチャネルは補足的に使用されてもよい。
[0068] 共通パイロットチャネルは,マルチビームで送信される物理チャネルの復調処理,すなわちチャネル推定および受信タイミングの同期に使用されてもよい。さらに,セクタビームの場合と同様に,ユーザおよび環境に応じて個別パイロットチャネルを追加的に使用することで,チャネル推定精度を改善することができる。一方,セルサーチやハンドオーバのための参照レベル測定,スケジューリング及び適応リンク制御等のためのCQI測定は,原則として共通パイロットチャネルを用いて行われ,個別パイロットチャネルは補足的に使用されてもよい。同一セルにおけるマルチビーム数が多い場合,ユーザが属するビームを特定するのに使用されるパイロット系列を同一セル内で再利用することにより,使用されるパイロット系列数を削減することができる。
(中略)
[0072] (パイロットチャネル構成例)
共通パイロットチャネル及び個別パイロットチャネルは,TTI毎に周期的に多重化されてもよい。ユーザ及び環境に依存して個別パイロットチャネルはチャネル推定精度を改良するように使用される。共有データチャネルに関して1つのチャンクが1又は数人のユーザによって排他的に使用される場合であって,高い移動性,大きい遅延スプレッド,または非常に低いSINRなどの特別な状態下では,共通パイロットチャネルに加えて個別パイロットチャネルを割り当てることによって,正確なチャネル推定が可能になる。マルチキャスト/ブロードキャストチャネルでは,共通パイロットチャネルに加えて個別パイロットチャネルを使用することによって,最も悪い状態のユーザの品質を改良することができる。共有データチャネル内の,付加的なユーザ依存型の個別パイロットチャネル情報は制御シグナリングチャネルによって提供される。従って,低遅延でより多くのパイロットシンボルを使用することで,共有データチャネルの高品質の復調が可能になる。マルチキャスト/ブロードチャネルにおいて,環境に依存する付加的な個別パイロットチャネル情報は最悪の場合の環境におけるユーザの品質に基づく制御シグナリングチャネルによって提供される。低遅延でより多くのパイロットシンボルを使用することで高品質のマルチキャスト/ブロードキャストチャネルが提供される。
(中略)
[0077] 共通パイロットチャネルと個別パイロットチャネルのマッピング方法において,パイロットシンボルは周波数及び時間領域の中で不連続に割り当てられてもよい。例えばOFDMシンボルの周波数領域に沿った不連続なマッピングがなされてもよい。周波数及び時間領域で不連続に分散してパイロットシンボルを割り当てると,次のような点で有利である。周波数領域にパイロットシンボルを割り当てるサブキャリアを間引くことによって,パイロットシンボルを挿入することによるデータ伝送効率の低下を改善でき,間引きをしない場合とほとんど同程度のチャネル推定精度が維持できる。時間領域における割当量は減少する。実際のセルラ方式における目標セル半径に対しては,共通パイロットチャネルの送信電力を変えなければならない。従って,周波数領域でパイロットシンボルを間引くことによって(即ち他のチャネルとパイロットシンボルを同じOFDMシンボルの中で多重送信すると),全体の送信電力を維持しつつ,柔軟に共通パイロットチャネルの送信電力を変えることができる。」(17?18,18?19,20,21?22頁)

(ケ)「請求の範囲
[1] 共通パイロットチャネル,共有制御チャネル及び共有データチャネルを多重化する多重化手段と,
多重化された信号を逆フーリエ変換し,シンボルを生成する手段と,
生成されたシンボルを送信する手段と,
を有する送信装置であって,前記多重化手段は,ペイロードを含む共有データチャネルの復調に必要な制御情報を含む共有制御チャネルと複数のユーザに共通に使用される共通パイロットチャネルとを周波数方向,時間方向またはそれらの組合せにより多重化し,共通パイロットチャネル及び共有制御チャネルと共有データチャネルとを周波数方向,時間方向またはそれらの組合せにより多重化する
ことを特徴とする送信装置。
[2] 前記多重化手段が,共有データチャネルの復調に使用され特定の1以上のユーザに使用される個別パイロットチャネルと,共通パイロットチャネル及び共有制御チャネルとを周波数方向,時間方向またはそれらの組合せにより多重化する
ことを特徴とする請求項1記載の送信装置。
(中略)
[15] 送信装置から送信されたシンボルを受信し,
受信したシンボルをフーリエ変換し,
ペイロードを含む共有データチャネルの復調に必要な制御情報を含む共有制御チャネルと複数のユーザに共通に使用される共通パイロットチャネルとを周波数,時間またはそれらの組合せにより分離し,共通パイロットチャネル及び共有制御チャネルと共有データチャネルとを周波数,時間またはそれらの組合せにより分離する
ことを特徴とする受信方法。」(30,32頁)

引用例の上記記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると,
a 上記(ア)の記載によれば,引用例には移動通信システムにおける送信方法,受信方法に関する事項が記載されており,上記(エ),(キ)の記載及び図3によれば,共通パイロットチャネル及び個別パイロットチャネルを利用するものといえる。したがって,引用例には「移動通信システムにおいて,共通パイロットチャネル及び個別パイロットチャネルを用いる方法」が記載されていると認められる。

b 上記(エ),(ク)の[0072]の記載及び図4,6によれば,共通パイロットチャネル及び個別パイロットチャネルはTTI毎に周期的に多重化されており,上記(イ)?(カ),(ク)の記載及び図3によれば,多重化された共通パイロットチャネルのシンボルと個別パイロットチャネルのシンボルとを含む送信をTTIにおいて受信していることは明らかである。したがって,引用例には「多重化された共通パイロットシンボルと個別パイロットシンボルとを含む送信をTTIにおいて受信すること」が記載されていると認められる。

c 上記(イ)の記載によれば,共通パイロットチャネルは共有制御チャネルの復調に使用されるものといえる。また,上記(ケ)の[2]の記載によれば,個別パイロットチャネルは共有データチャネルの復調に使用されるものといえる。したがって,引用例には「前記共通パイロットチャネルを使用して共有制御チャネルを復調することと,前記個別パイロットチャネルを使用して共有データチャネルを復調すること」が記載されていると認められる。

d 上記(ク)の[0065]には,個別パイロットチャネルを使用してチャネル推定することが記載されている。また,上記(ウ),(エ)の[0036」,[0037],(キ),(ク)の[0065],[0067],[0068]には,共通パイロットチャネル及び個別パイロットチャネルの双方を利用することでチャネル推定の精度を向上させることが記載されている。したがって,引用例には「前記個別パイロットチャネルを使用してチャネル推定することと,前記共通パイロットチャネル及び前記個別パイロットチャネルの双方を利用することでチャネル推定の精度を向上させること」が記載されていると認められる。

以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「移動通信システムにおいて,共通パイロットチャネル及び個別パイロットチャネルを用いる方法であって,
多重化された共通パイロットシンボルと個別パイロットシンボルとを含む送信をTTIにおいて受信することと,
前記共通パイロットチャネルを使用して共有制御チャネルを復調することと,
前記個別パイロットチャネルを使用して共有データチャネルを復調すること,を備え,
前記個別パイロットチャネルを使用してチャネル推定することと,前記共通パイロットチャネル及び前記個別パイロットチャネルの双方を利用することでチャネル推定の精度を向上させることを備える,方法。」

ウ 対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比すると,
(ア)引用発明の「移動通信システム」は「無線通信ネットワーク」といえる。そして,本願明細書の【0041】によれば,補正後の発明の「ハイブリッドモード」は,「共通パイロットシンボル及び専用パイロットシンボルの両方を含むハイブリッドパイロット構成を備える」ものといえるから,引用発明の「移動通信システムにおいて,共通パイロットチャネル及び個別パイロットチャネルを用いる方法」は,「無線通信ネットワークにおいて,共通パイロットチャネル及び個別パイロットチャネルを用いるハイブリッドパイロットモードを利用するための方法」といえる。

(イ)引用発明の「共通パイロットシンボル」は,複数のユーザに共通に使用されるものである(上記イ(イ)[0003]参照。)から,補正後の発明の「共通パイロットシンボル」に相当するものである。
ここで,引用発明の「共通パイロットシンボル」は,TTI中の先頭シンボル(期間)の中で一定の周波数間隔で挿入されている「共通パイロットチャネル」のシンボルであり(上記イ(オ)[0043],(ク)の「0077」,図4,6参照。),チャネル推定,セクタビーム又はマルチビームで送信する物理チャネルのチャネル推定,同期検波,受信タイミング同期,受信信号品質の測定,瞬時のチャネル状況に応じたスケジューリング,およびチャネル品質情報(CQI: channel quality information)を得るための品質測定,セルサーチやハンドオーバ,周辺セル/セクタの参照レベルの測定等に使用されるものである(上記イ(ア)[0003],(ク)[0064],[0068]参照。)から,補正後の発明には特定されていないが,その配置及び用途についても,補正後の発明の「共通パイロットシンボル」と特段の差異は見出せない。

また,引用発明の「個別パイロットシンボル」は,特定の1以上のユーザに使用されるものである(上記イ(ケ)[2]参照。)から,補正後の発明の「専用パイロットシンボル」に相当するものである。
ここで,引用発明の「個別パイロットシンボル」は,TTI中の2番目以降のシンボル(期間)に特定の通信相手毎に挿入される「個別パイロットチャネル」のシンボルであり(上記イ(カ),(ク)の「0077」,図4,6参照。),ユーザ毎に適応的に生成されたアダプティブビーム(適応指向ビーム)で送信され得るものであり,ユーザまたは環境に依存する伝搬チャネル条件に応じて適応的に使用されるものであり,セクタビームまたはマルチビームで送信される物理のチャネル推定のために使用されるものである(上記イ(ク)[0065]参照。)から,補正後の発明には特定されていないが,その配置及び用途についても,補正後の発明の「専用パイロットシンボル」と特段の差異は見出せない。

したがって,引用発明の「多重化された共通パイロットシンボルと個別パイロットシンボルとを含む送信をTTIにおいて受信すること」は,補正後の発明の「多重化された共通パイロットシンボルと専用パイロットシンボルとを含む送信を送信時間間隔において受信すること」に相当する。

(ウ)引用発明の共通パイロットチャネルは,共有制御チャネルを復調するために使用されるところ,実際には共通パイロットチャネルのシンボル,すなわち,共通パイロットシンボルが共有制御チャネルの信号を復調するために使用されることは明らかである。そして,共有制御チャネルは「ペイロードを含む共有データチャネルの復調に必要な制御情報」を含む(上記イ(ケ)[1]参照。)ものである。したがって,引用発明の「前記共通パイロットチャネルを使用して共有制御チャネルを復調すること」は,補正後の発明の「前記共通パイロットシンボルを利用して少なくとも1つの制御チャネルにおける制御信号を復調すること」に相当する。

(エ)引用発明の個別パイロットチャネルは,共有データチャネルを復調するために使用されるところ,実際には個別パイロットチャネルのシンボル,すなわち,個別パイロットシンボルが共有データチャネルの信号を復調するために使用されることは明らかである。そして,共有データチャネルはデータ信号を含むものであることは技術常識である。したがって,引用発明の「前記個別パイロットチャネルを使用して共有データチャネルを復調すること」は,補正後の発明の「前記専用パイロットシンボルを用いて少なくとも1つのデータチャネルにおけるデータ信号を復調すること」に相当する。

(オ)引用発明の「前記個別パイロットチャネルを使用してチャネル推定することと,前記共通パイロットチャネル及び前記個別パイロットチャネルの双方を利用することでチャネル推定の精度を向上させる」と補正後の発明の「前記専用パイロットシンボルを利用してチャネル推定を生成することと,前記共通パイロットシンボルを用いることによって前記チャネル推定の精度を向上させる」とは,下記の相違点2は別として,「前記専用パイロットシンボルを利用してチャネル推定を生成することと,前記専用パイロットシンボル及び共通パイロットシンボルの双方を用いることによってチャネル推定の精度を向上させる」点で一致している。

以上を総合すると,補正後の発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「無線通信ネットワークにおいて,共通パイロットチャネル及び個別パイロットチャネルを用いるハイブリッドパイロットモードを利用するための方法であって,
多重化された共通パイロットシンボルと専用パイロットシンボルとを含む送信を送信時間間隔において受信することと,
前記共通パイロットシンボルを利用して少なくとも1つの制御チャネルにおける制御信号を復調することと,
前記専用パイロットシンボルを用いて少なくとも1つのデータチャネルにおけるデータ信号を復調することと,を備え,
前記専用パイロットシンボルを利用してチャネル推定を生成することと,前記専用パイロットシンボル及び共通パイロットシンボルの双方を用いることによってチャネル推定の精度を向上させることを備える,方法。」

(相違点1)
補正後の発明は「前記専用パイロットシンボル及び前記共通パイロットシンボルの両方を利用してデータ信号を復調することをさらに備え,」なる構成を有するのに対し,引用発明は当該構成の有無が明らかでない点。

(相違点2)
「前記専用パイロットシンボルを利用してチャネル推定を生成することと,前記専用パイロットシンボル及び共通パイロットシンボルの双方を用いることによってチャネル推定の精度を向上させること」に関し,補正後の発明では専用パイロットシンボルを利用して生成したチャネル推定を共通パイロットシンボルを用いることによって向上させるのに対し,引用発明では共通パイロットチャネルに加えて個別パイロットチャネルをチャネル推定に利用することでチャネル推定精度を向上させるものである点。

以下,上記各相違点について検討する。
(相違点1)について
引用例の図3及びその説明(上記イ(エ)参照。)によれば,個別パイロットチャネル及び共通パイロットチャネルの両方を利用して求めたチャネル推定値を用いて,チャネル補償を行って,送信データを復調していることは明らかである。すなわち,引用発明も「前記専用パイロットシンボル及び前記共通パイロットシンボルの両方を利用してデータ信号を復調することをさらに備え」ているといえる。したがって,相違点1は実質的な相違ではない。

(相違点2)について
引用発明の実施例では,基本的には共通パイロットチャネルがチャネル推定に使用され,共通パイロットチャネルに加えて個別パイロットチャネルも追加的に使用してチャネル推定を行うことでチャネル推定精度が向上されるものである。しかしながら,双方を利用することでチャネル推定の精度が向上するのであるから,どちらを追加的に使用してもチャネル推定の精度を向上し得ることは明らかである。そして,引用発明においても,個別パイロットチャネルを使用してチャネル推定するのであるから,個別パイロットシンボルを利用して生成したチャネル推定を共通パイロットシンボルを用いることによって向上させるとすることは適宜なし得ることに過ぎない。

そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおり,補正後の発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 結語
したがって,本件補正は,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成25年8月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,平成24年6月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの
「【請求項1】
無線通信ネットワークにおいて,共通パイロットチャネル及び個別パイロットチャネルを用いるハイブリッドパイロットモードを利用するための方法であって,
多重化された共通パイロットシンボルと専用パイロットシンボルとを含む送信を送信時間間隔において受信することと,
前記共通パイロットシンボルを利用して少なくとも1つの制御チャネルにおける制御信号を復調することと,
前記専用パイロットシンボルを用いて少なくとも1つのデータチャネルにおけるデータ信号を復調することと,を備え,
前記専用パイロットシンボル及び前記共通パイロットシンボルの両方を利用してデータ信号を復調することをさらに備える,方法。」
と認める。

2 引用発明
引用発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ 引用発明」の項で認定したとおりである。

3 対比・判断
そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は,補正後の発明から本件補正前の請求項2及び請求項3に記載された構成を省いたものである。
そうすると,本願発明の従属請求項である本件補正前の請求項3に係る発明に相当する補正後の発明が,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ 対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-24 
結審通知日 2014-07-01 
審決日 2014-07-15 
出願番号 特願2009-553751(P2009-553751)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H04J)
P 1 8・ 121- Z (H04J)
P 1 8・ 575- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 洋太田 龍一  
特許庁審判長 田中 庸介
特許庁審判官 山澤 宏
菅原 道晴
発明の名称 ハイブリッドパイロット構成  
代理人 井上 正  
代理人 佐藤 立志  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 直樹  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  
代理人 岡田 貴志  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 堀内 美保子  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  
代理人 砂川 克  
代理人 井関 守三  
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