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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L |
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管理番号 | 1294422 |
審判番号 | 不服2013-16757 |
総通号数 | 181 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-08-30 |
確定日 | 2014-11-26 |
事件の表示 | 特願2009-553771号「天然飲料製品」拒絶査定不服審判事件〔2008年9月18日国際公開、WO2008/112866、平成22年6月24日国内公表、特表2010-521167号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2008年3月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年3月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年9月2日に手続補正がされ、平成25年4月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月30日に拒絶査定不服審判が請求され、平成26年3月6日付けで拒絶の理由が通知されたものである。 2.平成26年3月6日付けで通知した拒絶の理由の概要 (1)理由1:本件出願は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 特許請求の範囲の請求項1は、「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD、および、少なくとも乳酸と、酒石酸およびクエン酸の内の一方または両方を含み、リン酸を含まない酸味料を含む天然成分のみからなる天然飲料製品。」であり、請求項2?21は請求項1を引用して記載されている。 また、請求項22は「天然飲料製品の調製方法であって、前記飲料製品中に、少なくとも甘味量のレバウディオサイドD、および、少なくとも乳酸と、酒石酸およびクエン酸の内の一方または両方とを有する酸味料を含ませる工程を有してなる方法。」であり、請求項23は請求項22を引用して記載されている。 上記「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」について、発明の詳細な説明の段落【0023】の記載によると、「レバウディオサイドD」に関して「微量」とするものであり、具体的にどれくらいの量で存在するのか明らかでない。 そうすると、「レバウディオサイドD」が「少なくとも甘味量」であるとはいえない。 ほかに、「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」であることを裏付ける記載は、発明の詳細な説明中のどこにもない。 してみれば、発明の詳細な説明中に、請求項1?23に記載された事項と対応する事項が、記載も示唆もされていないことになる。 理由2:平成23年9月2日の手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 請求項1及び請求項21に係る補正は、「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」を追加する補正事項を含むものである。 上記「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」という事項について、発明の詳細な説明の段落【0023】に記載がある。 しかるに、「レバウディオサイドD」は「微量」であって、「少なくとも甘味量」であるとは、到底解することはできず、また、「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」という事項が、当初明細書等に記載された事項、或いは当初明細書等の記載から自明な事項であるとはいうことができない。 理由3:本件出願の請求項1?23に係る発明(以下「本願発明1?23」という。)は、その出願前に国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明に属する技術分野における通常の知識を有する者が、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとし、以下の刊行物1?5が引用された。 刊行物1:特開2000-197462号公報 刊行物2:特開2005-87184号公報 刊行物3:特開2000-273051号公報 刊行物4:特開平5-3773号公報 刊行物5:特開昭62-3775号公報 3.理由1について まず、請求項1は「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD、および、少なくとも乳酸と、酒石酸およびクエン酸の内の一方または両方を含み、リン酸を含まない酸味料を含む天然成分のみからなる天然飲料製品。」であるところ、その「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」なる記載は、発明の詳細な説明中になく、さらに「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」を含んだ「天然飲料製品」についても記載されていない。 また、「レバウディオサイドD」なる用語は段落【0023】に記載されるのみである。 上記段落【0023】には、「レバウディオサイドD」に関し、 「飲料の」「甘味のために、」「ステビオール配糖体」である「例えば、ステビオサイド、レバウディオサイドおよび関連化合物」を用いること、 「これらの甘味料は、」「ステビア植物からの抽出などによって得ることができ」、「それらの葉は、天然の甘いジテルペン配糖体の複雑な混合物を含有する」こと、 「ステビオール配糖体、例えば、ステビオサイドおよびレバウディオサイド」は、「甘味の原因となるステビアの成分であ」ること、 そして、「一般に、これらの化合物は」、「ステビオサイド(乾燥質量で4?13%)」、「ステビオール配糖体(微量)」、「レバウディオサイドA(2?4%)、レバウディオサイドB(微量)、レバウディオサイドC(1?2%)、レバウディオサイドD(微量)およびレバウディオサイドE(微量)を含むレバウディオサイド」、並びに「ズルコサイドA(0.4?0.7%)」「を含むことが分かった」とのこと、及び 「以下の非甘味成分も、ステビア植物の葉中に特定された」とのことが記載されている。 上記記載によると、飲料の甘味のために、甘味料として、ステビア植物の葉から抽出される天然の甘いジテルペン配糖体の複雑な混合物である、「ステビオール配糖体である例えば、ステビオサイド、レバウディオサイドおよび関連化合物」を用いるとはいえるものの、 「レバウディオサイドD」は、 ステビア植物の葉の天然の甘いジテルペン配糖体の複雑な混合物に、ステビオサイド、ステビオール配糖体、ズルコサイドAとともに並んで含まれる「レバウディオサイド」に、さらにレバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、およびレバウディオサイドEとともに微量に含まれる化合物として記載されているにすぎない。 そうすると、レバウディオサイドDは、飲料の甘味のために甘味料として用いられる、ステビオール配糖体又はレバウディオサイドに「微量」含まれる化合物であるから、このレバウディオサイドDが「甘味量」含まれた「天然飲料製品」は記載されていないというべきである。(上記段落【0023】は、それぞれの化合物について、%で含まれる比が示されることからも、ステビア植物の葉の天然の甘いジテルペン配糖体の複雑な混合物に含まれる化合物としてレバウディオサイドDが示されているといえ、実施例3にレバウディオサイドA(純度98%)を3.0g含有した飲料が記載されるとしても、段落【0023】の記載がレバウディオサイドDを取り出して甘味料とすることを意図するものではないことは明らかである。) 言い換えると、レバウディオサイドDに着目して、その量を増やして甘味量とした飲料が記載されているとはいえない。 また、レバウディオサイドDが微量であるとき、これを感知できないことは当業者にとって常識であるから、レバウディオサイドを飲料に甘味量として用いても、「微量」含まれるレバウディオサイドDが「甘味量」であるとはいえない(平成25年6月10日の意見書の「3)理由3について」の11?13行も参照。)。 したがって、請求項1に記載された発明は、「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」を含む「天然飲料製品」の点で、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。また、発明の詳細な説明の記載から自明な事項であるということもできない。 なお、本願発明の甘味量としてのステビオール配糖体に関し、上記した段落【0023】以外には、段落【0017】、【0020】、【0023】及び段落【0042】の【表3】等にレバウディオサイドA、ステビオサイド、他のステビオール配糖体、ステビアレバウディオサイド抽出物が例示されるものの、レバウディオサイドDに着目することを示唆する記載はなく、かつその実施例もない。 さらに検討すると、請求項1に記載の発明は、「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」とともに「少なくとも乳酸と、酒石酸およびクエン酸の内の一方または両方を含」むものであるから、段落【0025】に記載の「天然の強い甘味料で甘くされた飲料に関連する苦く酸っぱい後味が大幅に減少する」ことをその効果とするものといえる(平成25年6月10日の意見書の「3)理由3について」の3?8行も参照。)ところ、段落【0043】で実施例3においてレバウディオサイドAについて「非常に良好なコーラの味覚を有する」とするものの、レバウディオサイドDと「少なくとも乳酸と、酒石酸およびクエン酸の内の一方または両方を含み、リン酸を含まない酸味料を含む」ことで上記効果を奏することについての実施例もなく、その効果を奏することについての充分な説明がない。 この点からも、請求項1は、発明の詳細な説明に記載した発明を記載しているとはいえない。 また、請求項22は「天然飲料製品の調製方法であって、前記飲料製品中に、少なくとも甘味量のレバウディオサイドD、および、少なくとも乳酸と、酒石酸およびクエン酸の内の一方または両方とを有する酸味料を含ませる工程を有してなる方法。」であるところ、「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」「を含ませる工程を有してなる」「天然飲料製品の調製方法」であるから、上記請求項1について述べたと同様に、発明の詳細な説明に記載した発明が記載されているとはいえない。 そして、請求項1を引用する請求項2?21及び請求項22を引用する請求項23も同様に、発明の詳細な説明に記載した発明を記載しているとはいえない。 したがって、請求項1?23は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 4.理由2について 平成23年9月2日の手続補正により、請求項1は「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD、および、少なくとも乳酸と、酒石酸およびクエン酸の内の一方または両方を含み、リン酸を含まない酸味料を含む天然成分のみからなる天然飲料製品。」と、 請求項22は「天然飲料製品の調製方法であって、前記飲料製品中に、少なくとも甘味量のレバウディオサイドD、および、少なくとも乳酸と、酒石酸およびクエン酸の内の一方または両方とを有する酸味料を含ませる工程を有してなる方法。」と補正された。 上記補正により、請求項1に「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」を含む「天然飲料製品」が、請求項22に「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」「を含ませる工程を有してなる」「天然飲料製品の調製方法」が記載されることとなった。 そして、上記「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」なる用語は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)に記載されておらず、「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」を含む「天然飲料製品」、及び「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」「を含ませる工程を有してなる」「天然飲料製品の調製方法」も、当初明細書等に記載されていない。 また、発明の詳細な説明は補正されておらず、願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の発明の詳細な説明と同じであるから、上記3.で述べたと同様に、当初明細書の記載を検討しても、請求項1の「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」を含んだ「天然飲料製品」、又は請求項22の「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」「を含ませる工程を有してなる」「天然飲料製品の調製方法」が、当初明細書に記載された事項であるとも、当初明細書の記載から自明な事項であるともいうことはできない。 さらに願書に最初に添付した明細書と特許請求の範囲の記載とを合わせみても、請求項1の「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」を含んだ「天然飲料製品」、又は請求項22の「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」「を含ませる工程を有してなる」「天然飲料製品の調製方法」が、当初明細書等に記載された事項であるとも、当初明細書等の記載から自明な事項であるともいうことができない。 そして特許請求の範囲の請求項1に「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」を含む「天然飲料製品」、及び請求項22に「少なくとも甘味量のレバウディオサイドD」「を含ませる工程を有してなる」「天然飲料製品の調製方法」を記載することは、当初明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、上記の補正は、当初明細書等に記載した範囲内においてするものとはいえない。 したがって、本願の願書に添付した特許請求の範囲を補正する、平成23年9月2日にした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 5.理由3について (1)本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年9月2日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(上記4.を参照。) (2)引用刊行物 ア.引用刊行物1 上記拒絶の理由に引用され、本願優先権主張日前に頒布された刊行物1には、以下の事項が記載されている。 (ア)「実施例6 清涼飲料水(ノンシュガータイプ) 食物繊維3部、酵素処理ステビア0.07部、ソーマチン0.0015部、5倍濃縮透明グレープフルーツ果汁0.44部、クエン酸0.053部、クエン酸三ナトリウム0.015部、L-アスコルビン酸0.03部、乳酸カルシウム0.06部、塩化カリウム0.01部、ビタミンB1 0.00018部、ビタミンB6 0.00015部、ナイアシン0.0014部、ビートオリゴ糖0.085部を水にて全量100部とする。93℃まで加熱後、香料0.14部を添加し、水にて全量100部とする。ステビオサイド及びソーマチンに特有な甘味の嫌な後味のない、コクのある飲料が調製出来た。」(段落【0036】) 上記(ア)の記載事項によると、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「食物繊維、酵素処理ステビア、ソーマチン、濃縮透明グレープフルーツ果汁、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、L-アスコルビン酸、乳酸カルシウム、塩化カリウム、ビタミンB1、ビタミンB6、ナイアシン、ビートオリゴ糖、香料及び水からなる清涼飲料。」 イ.引用刊行物2 同じく刊行物2には、以下の事項が記載されている。 (ア)「ステビア由来の成分とは、ステビオサイド、レバウディオサイドA、ズルコサイドA、ズルコサイドB、レバウディオサイドE、レバウディオサイドD、ステビオルビオサイド、レバウディオサイドB、ステビオル、カリウム無機塩類及びα-トコフェロール等が挙げられ、これらのうちの一成分もしくは二成分以上を含むことを指すが、公知のステビア抽出物を酵素処理または化学処理を行ったものも含むこと勿論である。」(段落【0019】) ウ.引用刊行物3 同じく刊行物3には、以下の事項が記載されている。 (ア)「かかる問題を改善するために、従来からショ糖に代えてステビア等の高甘味度甘味料の使用が検討されている・・・(中略)・・・。 しかしながら、ステビアは、甘みの発現が比較的緩やかであるため、液状形態であるがゆえに特に口腔内で速やかに苦みを発現する薬物のマスキングには必ずしも有効でなく、また甘味の消失も早い(後記実験例参照)。また、同様に高甘味度甘味料であるサッカリンナトリウムは、甘みの発現は比較的早いものの、甘味質が重くまた甘味の不快な後引き感が残るという問題を含む。さらにアスパルテームは、非常に早く甘みを発現するもののその消失も速やかである(後記実験例参照)。」(段落【0004】及び【0005】) (イ)「固有の甘味質特徴を備える各種の甘味料を種々組み合わせた甘味料組成物によれば甘みが速やかに発現し且つ持続し、かかる甘味質特性が上記液状製剤特有の苦みのマスキングに有効であることを見いだした。」(段落【0006】) (ウ)「(1)苦みを有する薬物、(i)アスパルテームまたはサッカリンナトリウムのいずれか少なくとも1種、(ii)ステビア、黒砂糖及びカラメルよりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(iii)カンゾウエキスを含有することを特徴とする経口用液状製剤。 (2)・・・(中略)・・・ (3)苦みを有する薬物、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、ステビア、カンゾウエキス、糖アルコール、グリセリン及び黒砂糖若しくはカラメルを含有する経口用液状製剤。」(段落【0008】) (エ)「ステビアは、キク科ステビア(Stevia Rebaudiana BERT0NI)の葉の中に含まれるステビオール配糖体を主甘味成分とする、ショ糖の約100?300倍の甘みを有する高甘味度甘味料である。なお、ステビオール配糖体には、ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、ズルコサイドA、ズルコサイドB、ステビオルピオサイド、ステビオルなどのステビオールをアグリコンとする配糖体が含まれる。本発明でいうステビアは、かかるいずれかのステビオール配糖体単品でも、またそれらの配糖体を二種以上含有するものであってもよい。」(段落【0014】) (3)対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「酵素処理ステビア」は甘味を有するものであるから、前者の「レバウディオサイドD」と甘味料である限りで共通する。 また、後者の「清涼飲料」は前者の「飲料製品」に相当する。 そして、後者の「食物繊維、ソーマチン、濃縮透明グレープフルーツ果汁、L-アスコルビン酸、塩化カリウム、ビタミンB1、ビタミンB6、ナイアシン、ビートオリゴ糖」が、天然成分であることは明らかであり、しかもリン酸は含まれていない。 したがって、両者は、 「少なくとも甘味量の甘味料、および、乳酸と、クエン酸を含み、リン酸を含まない酸味料を含む飲料製品。」である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。 相違点A:甘味料に関して、本願発明が「レバウディオサイドD」であるのに対し、引用発明は「酵素処理ステビア」である点。 相違点B:本願発明が「天然成分のみからなる天然飲料製品」であるのに対し、引用発明は「飲料製品」ではあるものの、「香料」が天然成分であるか否か不明なため、天然成分のみからなる否か不明である点。 そこで、上記相違点について検討する。 ア.相違点Aについて 「レバウディオサイドD」は、刊行物2及び刊行物3に記載されているように、ステビア由来のステビオール配糖体の一成分である。そして上記刊行物2及び刊行物3には、単品で使用することも記載されている。 さらに刊行物3には、苦みを発現する薬物のマスキングのためではあるものの、ステビアがその甘みを発現させることによるものであって、そのステビアとして、レバウディオサイドDを単品で用いることが記載される。 なお、レバウディオサイドDが甘味成分であることは、例えば特開2000-32859号公報、特開平10-262597号公報や特開昭61-28363号公報に示されるように従来より周知であり、これを甘味成分として用いることは、上記刊行物3だけでなく、特開昭62-79752号公報(第3頁右上欄)にも示されている。 したがって、引用発明の甘味料である「酵素処理ステビア」に代えて「レバウディオサイドD」を用いることは、「レバウディオサイドD」がステビア由来のステビオール配糖体の一成分にすぎず、甘味料として用いることが刊行物3に記載されていることから、当業者が容易に想到し得たことである。そして、そのことによる格別の効果もない。 なお、刊行物2には、ステビア由来の成分としてステビア抽出物を酵素処理したものが含まれることも記載されている。 イ.相違点Bについて 本願発明の「リン酸を含まない酸味料を含む天然成分のみからなる天然飲料製品」について、本願明細書の段落【0025】に「人工化合物であるリン酸が、コーラおよび他の飲料配合物中に通常含まれる。リン酸を天然酸で置き換えることが課題である。」とその技術的意義が記載されている。 引用発明は、リン酸を含んでおらず、香料を除く全ての成分が天然成分からなる点で、本願発明と基本的に、同様の構成を有するものである。 一方、近年の自然・安全志向から天然の食品が好まれること、そのような食品とすることは、、当業者が通常と考慮することといえる。そして、天然の香料も例示するまでもなく従来より周知のものである。 そうすると、引用発明の香料を、天然成分とすることは、近年の自然・安全志向を考慮して、当業者が容易になし得たものであり、そのことによる格別の効果もない。 また、上記相違点A及びBを合わせ考えても、本願発明の効果が格別であるとはいえない。 (4)まとめ したがって、本願発明は、引用発明、引用刊行物2及び3に記載の事項、並びに周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 6.むすび 以上、3.?5.で述べたとおり、本願の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第49条第1項第4号に該当し、本願の明細書又は特許請求の範囲についてした補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、同法第49条第1項第1号に該当し、また、本願発明が同法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであって、同法第49条第1項第2号に該当するので、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-06-27 |
結審通知日 | 2014-07-01 |
審決日 | 2014-07-14 |
出願番号 | 特願2009-553771(P2009-553771) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(A23L)
P 1 8・ 121- WZ (A23L) P 1 8・ 55- WZ (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 太田 雄三 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
山崎 勝司 平上 悦司 |
発明の名称 | 天然飲料製品 |
代理人 | 柳田 征史 |
代理人 | 佐久間 剛 |