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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1294429
審判番号 不服2013-8099  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-02 
確定日 2014-11-27 
事件の表示 特願2009-554791「モジュラクラスタツール」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月25日国際公開、WO2008/116222、平成22年 7月15日国内公表、特表2010-524201〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年3月24日(優先権主張2007年3月22日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年8月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月13日付けで、意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月28日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。これに対し、平成25年5月2日付けで本件審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され特許請求の範囲が補正された。同年10月11日付けの当審よりの審尋に対し、平成26年1月8日付け回答書が提出されている。

第2 平成25年5月2日付け手続補正書による補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成25年5月2日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1. 補正の内容
本件補正は、上記平成24年12月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲について補正をするものであって、補正前後の請求項1の記載は、補正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。また、本件補正後の請求項2は、補正前の請求項8に対して同様な補正をするものである。

(1) 補正前

「【請求項1】
テーブルプレートを有する筐体を備えているリニアドライブアセンブリであって、該筐体は、
該テーブルプレートより上にある第1の面において半導体ウエハを保持する第1のエンドエフェクタと、
該第1の面より上にある第2の面において半導体ウエハを保持する第2のエンドエフェクタと
を有しており、該第1および第2のエンドエフェクタは、共通の直線状の軸に沿って独立に動くように構成され、該第1および第2のエンドエフェクタのうちのそれぞれ1つのエンドエフェクタが、
(a)該共通の直線状の軸に沿って駆動されるように構成された中間ステージと、
(b)該中間ステージより上に位置するエンドエフェクタステージと、
(c)該中間ステージに接続された第1のプーリおよび第2のプーリであって、該第1のプーリおよび該第2のプーリは、該中間ステージが駆動されるときに該中間ステージと共に動くようにされている、第1のプーリおよび第2のプーリと、
(d)該第1のプーリおよび該第2のプーリの周りに接続されたベルトであって、該ベルトに対する第1の接続が該エンドエフェクタステージに結合され、該ベルトに対する第2の接続は、該テーブルプレートに対して固定された取り付け台に結合され、該ベルトの第1の接続および第2の接続が、該第1のプーリと該第2のプーリとの間で行われる、ベルトと
によって規定され、
該共通の直線状の軸に沿った該中間ステージの動きは、該エンドエフェクタステージを該共通の直線状の軸に沿って動かし、該第1のプーリおよび該第2のプーリならびに該ベルトは、該エンドエフェクタステージに、該テーブルプレート上の該中間ステージの動きに対する該エンドエフェクタステージの動きを増幅させる、リニアドライブアセンブリ。」

(2) 補正後

「【請求項1】
テーブルプレートを有する筐体を備えているリニアドライブアセンブリであって、該筐体は、
該テーブルプレートより上にある第1の面において半導体ウエハを保持する第1のエンドエフェクタと、
該第1の面より上にある第2の面において半導体ウエハを保持する第2のエンドエフェクタと
を有しており、該第1および第2のエンドエフェクタは、共通の直線状の軸に沿って独立に動くように構成され、該第1および第2のエンドエフェクタのうちのそれぞれ1つのエンドエフェクタが、
(a)該共通の直線状の軸に沿って駆動されるように構成された中間ステージと、
(b)該中間ステージより上に位置するエンドエフェクタステージと、
(c)該中間ステージに接続された第1のプーリおよび第2のプーリであって、該第1のプーリおよび該第2のプーリは、該中間ステージが駆動されるときに該中間ステージと共に動くようにされている、第1のプーリおよび第2のプーリと、
(d)該第1のプーリおよび該第2のプーリの周りに接続されたベルトであって、該ベルトに対する第1の接続が該エンドエフェクタステージに結合され、該ベルトに対する第2の接続は、該テーブルプレートに対して固定された取り付け台に結合され、該ベルトの第1の接続および第2の接続が、該第1のプーリと該第2のプーリとの間で行われる、ベルトと、
(e)前記中間ステージと前記テーブルプレートとの間の第1のベアリングレールアセンブリと、
(f)該中間ステージと前記エンドエフェクタステージとの間の第2のベアリングレールアセンブリと
によって規定され、
該第1のベアリングレールアセンブリおよび該第2のベアリングレールアセンブリは、前記共通の直線状の軸に沿った該中間ステージおよび該エンドエフェクタステージのそれぞれの動きを促進し、
該共通の直線状の軸に沿った該中間ステージの動きは、該エンドエフェクタステージを該共通の直線状の軸に沿って動かし、該第1のプーリおよび該第2のプーリならびに該ベルトは、該エンドエフェクタステージに、該テーブルプレート上の該中間ステージの動きに対する該エンドエフェクタステージの動きを増幅させ、
該第1のプーリおよび該第2のプーリならびに該ベルトは、該中間ステージの動きに対する該エンドエフェクタステージの動きの増幅の度合いを規定するように寸法設定される、リニアドライブアセンブリ。」

2. 補正の適否
本件補正の、特許請求の範囲の請求項1についての補正は、それぞれ以下の事項について補正するものである。

・補正事項1
補正前の特定事項である「中間ステージ」、「テーブルプレート」及び「エンドエフェクタステージ」によって規定される「該第1および第2のエンドエフェクタのうちのそれぞれ1つのエンドエフェクタ」を、「(e)中間ステージとテーブルプレートとの間の第1のベアリングレールアセンブリと、(f)中間ステージとエンドエフェクタステージとの間の第2のベアリングレールアセンブリとによって規定され」るものであるとし、かつ、「第1のベアリングレールアセンブリおよび第2のベアリングレールアセンブリは、共通の直線状の軸に沿った中間ステージおよびエンドエフェクタステージのそれぞれの動きを促進」するものと限定した点。

・補正事項2
補正前の特定事項である「第1のプーリ」及び「第2のプーリ」ならびに「ベルト」を、「第1のプーリおよび第2のプーリならびにベルトは、中間ステージの動きに対するエンドエフェクタステージの動きの増幅の度合いを規定するように寸法設定される」ものと限定した点。

2-1. 新規事項について

最初に、本件補正が、特許法第17条の2第3項の規定に適合するか(本件補正が出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものか。)について検討する。
まず、補正事項2について以下に検討する。

(1) 当初明細書等の記載
出願当初の明細書の段落【0033】及び【図4】には、2つの「プーリ」、「ベルト」及び「エンドエフェクタステージ」の動作について、以下のとおり記載されていて、当初明細書等の他の箇所に関連する記載は見あたらない。
「【0033】
図4は、一実施形態による、例示的な単一のリニアドライブの概略図である。リニアドライブ111の上部延長310および下部延長311は、単一のリニアドライブ400を利用し得るが、これに限定されない。単一のリニアドライブ400は連接型メカニズムであり、それによって、エンドエフェクタステージ411のモーションは、中間ステージ410のモーションの2倍に増幅される。増幅は、2つのプーリ424と425との間に張られたベルト420を介して、中間ステージ410を動かすことによって達成される。この連接運動設計は、それぞれXおよびR座標で表される中間ステージ410およびエンドエフェクタステージ411のモーション間で、1:2の比率を保証する。一実施形態に従って、中間ステージ410は、マグネットトラック421およびモータコイル422で表されるリニアモータによって駆動される。リニアモータは、中間ステージ410の上に載せられ、したがってそれと共に動く。中間ステージ410は、メインリニアベアリング401により、テーブルプレート423の上を滑るように動く。二次リニアベアリング402は、エンドエフェクタステージ411に連接モーションを与え、エンドエフェクタステージ411は、二次ベアリングレールに乗る2つのベアリングブロックのセットに取り付けられる。リニアエンコーダ(図示されず)が、モーション制御に対する位置フィードバックを提供するために、中間ステージ410に取り付けられる。補助エンコーダが、より高い分解能の適用のために、エンドエフェクタステージ411に取り付けられ得る。」
また、【図4】から「プーリ424」と「プーリ425」が「中間ステージ410」に設けられていて、「ベルト420」が両者の間に張られていて、かつ、「ベルト420」は、「テーブルプレート423」及び「エンドエフェクタステージ411」へ接続されている点が看取できる。

(2) 判断
上記補正事項2について、平成26年1月8日付け回答書で請求人は、
「本願発明では、『第1のプーリおよび該第2のプーリならびに該ベルトは、該中間ステージの動きに対する該エンドエフェクタステージの動きの増幅の度合いを規定するように寸法設定される』という構成を備える。すなわち、例えば、第1及び第2のプーリの寸法を変更することにより、段落0033に記載されているようにエンドエフェクタステージの中間ステージに対する移動を、中間ステージのテーブルプレートに対する移動に対して増幅することができる。」(6ページ7ないし13行)と主張している。
しかし、当初明細書等の上記(1)の記載から、「中間ステージ410」が「リニアモータ」によって動かされた際には、「エンドエフェクタステージ411」の移動距離は、「中間ステージ410」の「テーブルプレート423」上での移動距離に加えて、「ベルト420」の牽引による「中間ステージ410」上での「エンドエフェクタステージ411」の移動距離が加わるから、その結果、「エンドエフェクタステージ411のモーションは、中間ステージ410のモーションの2倍に増幅される」ものであることが理解できる。そして、「プーリ424」及び「プーリ425」の間に張られた「ベルト420」の上側部分と下側部分が平行であれば、上記「増幅」が「2倍」となり、「プーリ424」及び「プーリ425」並びに「ベルト420」の寸法によって変化しないことは、当業者にとって技術常識である。そうすると、当初明細書等には、補正事項2のような二つの「プーリ」と両者の間に張られた「ベルト」の寸法を設定することで、「中間ステージ」の動きに対する「エンドエフェクタステージ」の動きの度合いを規定する点が記載されていたということはできず、新たな技術的事項を導入するものといわざるを得ない。

(2) 小結
以上のとおりであるから、上記補正事項2に係る補正は、当初明細書等において記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえないから、補正事項1について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2-2. 独立特許要件について

上記2-1で検討したとおり、本件補正は却下すべきものであるが、仮に補正事項1及び2に係る補正が、当初明細書等において記載した事項の範囲内のものであるとして、次に、本件補正の目的について検討する。
上記補正事項1及び2は、いずれも本件補正前の特定事項を限定するものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そうすると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて以下に検討する。

(1) 補正発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、上記1.(2)の「補正後」に記載された事項により特定されたとおりのものであると認める。

(2) 引用文献

ア. 引用文献の記載
原査定の拒絶の理由である平成24年8月22日付け拒絶の理由で引用文献1として引用され、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2004-214689号公報には、【図1】ないし【図7】とともに以下の事項が記載されている。

(ア)
「【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板や液晶ガラス基板などの薄板状基板(以下、単に「基板」と称する)に対して加熱処理、冷却処理および処理液処理を含む一連の処理を行う基板処理装置並びに及びこれに用いる基板搬送装置及び基板移載装置に関する。」

(イ)
「【0021】
図1は、実施形態の装置を説明する図である。図1(a)は、装置の平面図であり、図1(b)は、装置の正面図である。図示のように、本実施の形態においては、基板処理装置は、基板の搬出入を行うインデクサIDと、基板に処理を行う複数の処理ユニットと各処理ユニットに基板を搬送する基板搬送手段が配置されるユニット配置部10と、露光装置に接続されているインターフェイスIFとから構成されている。
・・・
【0023】
塗布処理ユニットSC1、SC2や現像処理ユニットSD1、SD2に挟まれた装置中央部には、周囲の全処理ユニットにアクセスしてこれらとの間で基板の受け渡しを行うための基板搬送手段として、搬送ロボットTR1が配置されている。この搬送ロボットTR1は、鉛直方向に移動可能であるとともに中心の鉛直軸回りに回転可能となっている。」

(ウ)
「【0042】
図4は、ユニット配置部10内における基板の搬送、インデクサID内における基板の搬送、ユニット配置部10及びインデクサID間における基板の受渡を説明する図である。
・・・
【0046】
ユニット配置部10の中央に設けた搬送ロボットTR1は、受渡ポジションP1で移載ロボットTR2から受け取った基板WFを周囲の処理ユニット(例えば、洗浄処理ユニットSS)に渡す。
【0047】
搬送ロボットTR1は、±Z方向すなわち鉛直方向に昇降可能であるステージ41と、このステージ41上に取り付けられて鉛直軸回りに回転可能なヘッド42とを備える。このヘッド42は、基板WFを支持しつつ周囲の全処理ユニットにアクセス可能なハンド40を備える。このハンド40は、XY面内で水平方向に独立に伸縮する上下一対のホルダ部材を有しており、処理ユニットにアクセスした際に、処理ユニット内の処理後の基板WFとホルダ部材上の処理前の基板WFとを交換する。
【0048】
このように、搬送ロボットTR1によって、処理前の基板WFと処理後の基板WFとを交換しつつ、図3と同様のフローで基板WFを搬送する循環搬送を一巡させることにより、ユニット配置部10中の各処理ユニット(並列処理の処理ユニットを除く)中の基板WFの処理が1段階進行する。
【0049】
なお、この際、インデクサIDとインターフェースIFとに関しては、受渡ポジションP1、P2が一種の処理ユニットのように機能し、ここで基板の交換が行われる。すなわち、搬送ロボットTR1は、順方向に関する最後の処理ユニット(例えば、熱処理ユニットTU4)で処理を終了した基板WFを受渡ポジションP2まで移動させてここでインターフェスIFとの基板交換を行う。また、搬送ロボットTR1は、逆方向に関する最後の処理ユニット(例えば、熱処理ユニットTU6)で処理を終了した基板WFを受渡ポジションP1まで移動させてここでインデクサIDとの基板交換を行う。
【0050】
搬送ロボットTR1が以上に説明したような循環搬送を繰返すことにより、図3と同一のフローで基板WFの処理が漸次進行することになる。
【0051】
図5?7は、搬送ロボットTR1の構造及び動作を説明する図であり、図5は、搬送ロボットTR1の斜視図であり、図6は、搬送ロボットTR1の裏面及び側面の構造を示す図であり、図7は、搬送ロボットTR1のハンドの動作を説明する図である。
【0052】
図5に示すように、搬送ロボットTR1のヘッド42を支持するステージ41は、基台44との間に設けたZ軸駆動機構45によって、±Z方向に昇降可能になっている。このZ軸駆動機構45は、パンタグラフ構造を有し、基台44上に固定されたモータ45aの正逆回転によってネジ軸45bが回転し、このネジ軸45bに螺合された連結部材45cが±Y方向に移動する。そして、連結部材45cの移動にともなって、その連結部材45cの両端に連結された一対のパンタグラフリンク45dが屈伸駆動することとなる。一対のパンタグラフリンク45dの上端にはステージ41が連結支持されており、結果として、モータ45aの正逆回転がパンタグラフリンク45dの屈伸駆動を介してステージ41の昇降運動に変換されることになる。
【0053】
なお、ステージ41は、図示を省略しているが、ヘッド42の中央下部から延びる鉛直回転軸42bを回転駆動する回転駆動機構を内蔵しており、この回転駆動機構により、ヘッド42は、旋回してZ軸回りの任意の位置に回転移動可能となる。また、ヘッド42上に設けたハンド40は、それぞれが基板WFを支持可能な一対のホルダ部材40a、40bからなっている。各ホルダ部材40a、40bは、図示の状態で、ヘッド42内に設けた機構によって-X方向に進退可能になっている。
【0054】
図6(a)の裏面図及び図6(b)の側面図に示すように、一方のホルダ部材40bは、ヘッド42に内蔵された伸縮駆動機構70によって、AB方向に往復移動可能になっている。なお、他方のホルダ部材40aも、図示を省略しているが、上記伸縮駆動機構70と同様の機構によって、AB方向に往復移動可能になっている。
【0055】
伸縮駆動機構70は、ヘッド42とホルダ部材40bとの間にストロークを稼ぐためのブーム71を介在させた2段構造となっている。このブーム71には、ヘッド42側に設けたガイド72に案内されてAB方向に往復移動する摺動部材73が固設されている。また、ホルダ部材40bには、ブーム71側に設けたガイド74に案内されてAB方向に往復移動する摺動部材75が固設されている。ブーム71の側面に設けた一対のプーリPU1には、ベルトBEがかけられており、このベルトBEの一部には、摺動部材75が固定されている。ヘッド42内部に設けた複数のプーリPU2、PU3、PU4にも、ベルトBEがかけられており、このベルトBEの一部には、ブーム71が固定されている。なお、プーリPU4は、モータMOに連結されており、このモータMOに駆動されて適宜回転する。
【0056】
図7は、図5に示すホルダ部材40bの移動を説明する図である。ヘッド42に内蔵されたモータに駆動されてプーリPU4が一方向に回転すると、ベルトBEに接続されたブーム71がAB方向に前進し、ヘッド42からせり出す。ブーム71がヘッド42からせり出すと、ブーム71のプーリPU1にかけられたベルトBEも、係止部材77を介してヘッド42に固定されていることに原因して回転し、このベルトBEに接続されたホルダ部材40bがAB方向に前進し、ブーム71からせり出し、結果的にホルダ部材40bはハンド40が最も伸張した実線の位置まで移動する。なお、点線は、ハンド40が最も縮小した状態を示している。」

(エ)
上記摘記事項(ウ)の段落【0056】に「ヘッド42」がその内部に「モータ」等を内蔵するものである旨の記載から、「ヘッド42」は、「モータ」等を内蔵する筺体であるということができる。また、「ヘッド42」は、「ホルダ部材(40b)」に対向する「上面」を有する点、【図7】から看取できる。

(オ)
【図5】及び【図6】から、「ホルダ部材(40b)」は、上記「上面」よりも上にある第1の面にあり、「ホルダ部材(40a)」は「ホルダ部材(40b)」よりも上側にある第2の面にある点、看取できる。また、「ホルダ部材(40b)」が、「ブーム(71)」より上に位置する点も看取できる。

(カ)
上記摘記事項(ウ)の段落【0054】の記載から、「ホルダ部材(40a)」及び「ホルダ部材(40b)」は、両方とも【図6】において示される「AB方向に往復移動可能」であるから、両者は共通の直線の軸(AB)に沿って動くものであるといえる。

(キ)
【図7】には、「ベルト(BE)」が上下二本記載されていて、上側の「ベルト(BE)」が「係止部材(77)」を介して「ヘッド(42)」の「上面」に接続されている点、【図7】から看取できる。

(ク)
上記摘記事項(ウ)の段落【0055】及び【0056】の記載から、【図7】に記載されたものにおいて、「モータMO」による「プーリ(PU4)」回転によって、「ブーム(71)」がB方向へ移動すると、「ホルダ部材(40b)」の同方向への移動距離は、「ホルダ部材(40b)」が位置する「ブーム(71)」の「ヘッド(42)」の「上面」に対する移動距離に加えて、「ブーム(71)」に設けられた二つの「プーリ(PU1)」の間に張られた「ベルト(BE)」の回転による「ブーム71」上での「ホルダ部材(40b)」の移動距離が加わるから、二つのプーリ(PU1)及び「ベルト(BE)」は、「ホルダ部材(40b)」に、「上面」上の「ブーム(71)」の動きに対する「ホルダ部材(40b)」の動きを増幅させるものであるということができる。

イ. 引用文献記載の発明
上記摘記事項(ア)ないし(ウ)、上記認定事項(エ)及び(ク)から、引用文献1に記載の事項を技術常識を考慮しながら、補正発明に照らして整理すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用文献記載発明」という。)が記載されている。

「上面を有するヘッド(42)を備えている搬送ロボット(TR1)であって、該ヘッド(42)は、
該上面より上にある第1の面において半導体基板(WF)を保持するホルダ部材(40b)と、
該第1の面よりも上にある第2の面において半導体基板(WF)を保持するホルダ部材(40a)と
を有しており、該ホルダ部材(40b)およびホルダ部材(40a)は、共通の直線上の軸(AB)に沿って独立に動くように構成され、該ホルダ部材(40b)およびホルダ部材(40a)のうちそれぞれ1つのホルダ部材が、
(a)該共通の直線上の軸(AB)に沿って駆動されるように構成されたブーム(71)と、
(b)該ブーム(71)より上に位置するホルダ部材と、
(c)該ブーム(71)に接続された二つのプーリ(PU1)であって、一方のプーリ(PU1)及び他方のプーリ(PU1)は、該ブーム(71)が駆動されるときに該ブーム(71)共に動くようにされている、一方のプーリ(PU1)及び他方のプーリ(PU1)と、
(d)該一方のプーリ(PU1)及び該他方のプーリ(PU1)の周りに接続されたベルト(BE)であって、該ベルト(BE)に対する第1の固定がされる摺動部材(75)がホルダ部材(40b)に固設され、該ベルト(BE)に対する第2の固定は、該上面に対して係止部材(77)を介して接続され、該ベルト(BE)の第1の固定及び第2の固定が、該一方のプーリ(PU1)と該他方のプーリ(PU1)との間で行われる、ベルト(BE)と、
(e)前記ヘッド(42)に設けたガイド(72)と、該ガイド(72)に案内されて往復移動する前記ブーム(71)に固設された摺動部材(73)とを組み合わせたものと、
(f)前記ブーム(71)に設けたガイド(74)と、該ガイド(74)に案内されて往復移動する前記ホルダ部材に固設された摺動部材(75)とを組み合わせたものとによって規定され、
該ガイド(72)と該摺動部材(73)の組み合わせたもの及び該ガイド(74)と該摺動部材(75)との組み合わせたものは、前記共通の直線上の軸(AB)に沿った該ブーム(71)及び該ホルダ部材のそれぞれの動きを促進し、
該共通の直線上の軸(AB)に沿った該ブーム(71)の動きは、該ホルダ部材該共通の直線上の軸(AB)に沿って動かし、該一方のプーリ(PU1)及び他方のプーリ(PU1)ならびに該ベルト(BE)は、該ホルダ部材に、該上面上の該ブーム(71)の動きに対する該ホルダ部材の動きを増幅させる
搬送ロボット(TR1)」

(3) 対比
補正発明と引用文献記載発明とを対比する。
上記認定事項(カ)から、引用文献記載発明の「ヘッド(42)」は筺体であるから、引用文献記載発明の「ヘッド(42)」は、補正発明の「筺体」に相当する。そして、引用文献記載発明の「上面」は、補正発明の「テーブルプレート」に相当する。
引用文献記載発明の「半導体基板(WF)」、「ホルダ部材(40b)」、「ホルダ部材(40a)」、「ブーム(71)」、「係止部材(77)」「搬送ロボット(TR1)」は、補正発明の「半導体ウエハ」、「第1のエンドエフェクタ」、「第2のエンドエフェクタ」、「中間ステージ」、「取り付け台」、「リニアドライブアセンブリ」にそれぞれ相当する。
引用文献記載発明の二つの「プーリ(PU1)」及び「プーリ(PU1)」は、補正発明の二つのプーリである「第1のプーリ」及び「第2のプーリ」に相当する。
引用文献記載発明の「ヘッド(42)に設けたガイド(72)と、ガイド(72)に案内されて往復移動するブーム(71)に固設された摺動部材(73)とを組み合わせたものは」は、補正発明の「中間ステージとテーブルプレートとの間の第1ベアリングレールアセンブリ」と、摺動する二つの部材を結びつける構成である点で共通する。
引用文献記載発明の「ブーム(71)に設けたガイド(74)と、該ガイド(74)に案内されて往復移動するホルダ部材(40b)に固設された摺動部材(75)とを組み合わせたもの」は、補正発明の「中間ステージとテーブルプレートとの間の第1のベアリングレールアセンブリ」と摺動する二つの部材を結びつける構成である点で共通する。

補正発明と引用文献記載発明とは、以下の点で一致し、かつ相違する

ア. 一致点
「テーブルプレートを有する筐体を備えているリニアドライブアセンブリであって、該筐体は、
該テーブルプレートより上にある第1の面において半導体ウエハを保持する第1のエンドエフェクタと、
該第1の面より上にある第2の面において半導体ウエハを保持する第2のエンドエフェクタと
を有しており、該第1および第2のエンドエフェクタは、共通の直線状の軸に沿って独立に動くように構成され、該第1および第2のエンドエフェクタのうちのそれぞれ1つのエンドエフェクタが、
(a)該共通の直線状の軸に沿って駆動されるように構成された中間ステージと、
(b)該中間ステージより上に位置するエンドエフェクタステージと、
(c)該中間ステージに接続された第1のプーリおよび第2のプーリであって、該第1のプーリおよび該第2のプーリは、該中間ステージが駆動されるときに該中間ステージと共に動くようにされている、第1のプーリおよび第2のプーリと、
(d)該第1のプーリおよび該第2のプーリの周りに接続されたベルトであって、該ベルトに対する第1の接続が該エンドエフェクタステージに結合され、該ベルトに対する第2の接続は、該テーブルプレートに対して固定された取り付け台に結合され、該ベルトの第1の接続および第2の接続が、該第1のプーリと該第2のプーリとの間で行われる、ベルトと、
(e)該中間ステージと前記テーブルプレートとを結びつける第1の結びつける構成と、
(f)該中間ステージと前記エンドエフェクタステージとを結びつける第2の結びつける構成と
によって規定され、
該第1の結びつける構成及び第2の結びつける構成は、前記共通の直線上の軸に沿った該中間ステージおよび該エンドエフェクタステージのそれぞれの動きを促進し、
該共通の直線状の軸に沿った該中間ステージの動きは、該エンドエフェクタステージを該共通の直線状の軸に沿って動かし、該第1のプーリおよび該第2のプーリならびに該ベルトは、該エンドエフェクタステージに、該テーブルプレート上の該中間ステージの動きに対する該エンドエフェクタステージの動きを増幅させる、
リニアドライブアセンブリ。」

イ. 相違点

(ア) 相違点1
補正発明の「第1の結びつける構成」及び「第2の結びつける構成」は、それぞれ、「中間ステージとテーブルプレートとの間の第1のベアリングレールアセンブリ」及び「前記中間ステージと前記エンドエフェクタステージとの間の第2のベアリングレールアセンブリ」であるのに対し、引用文献記載発明は、「ベアリング」や「レール」を用いるものであるかが不明である点。

(イ) 相違点2
補正発明の「第1のプーリ」および「第2のプーリ」ならびに「ベルト」は、「中間ステージの動きに対するエンドエフェクタステージの動きの増幅の度合いを規定するように寸法設定される」ものであるのに対し、引用文献記載発明の「一方のプーリ(PU1)」及び「他方のプーリ(PU1)」ならびに「ベルト(BE)」の寸法がどのように設定されるものであるのか不明である点。

(4) 判断

(ア) 相違点1について
板状体を搬送する装置において、相互に摺動する二部材を上下に配置しかつ両者の間にレールとベアリングを組み合わせたものを両者の間に設ける点は、従来周知(例えば、特開平10-309689号公報の段落【0028】に記載された「レール22」と「ベアリング26」に着目されたい。)である。
引用文献記載発明において、「第1の結びつける構成」及び「第2の結びつける構成」として、「ブーム(71)」と「ヘッド(42)」との間及び「ブーム(71)」と「ホルダ部材(40b)」との間にベアリングレールアセンブリを設けたものとすることは、上記従来周知の事項を適用することで、当業者が容易になし得た事項であるにすぎない。

(イ) 相違点2について
引用文献記載発明において、「ホルダ部材(40b)」のAB方向の移動距離は、「ホルダ部材(40b)が位置する「ブーム(71)」の「ヘッド(42)」に対する移動距離に加えて、二つの「プーリ(PU1)」の間に架けわたされた「ベルト(BE)」の「ブーム(71)」内での回転による移動距離加えたものとなること、かつ、二つの「プーリ(PU1)」それぞれの寸法の設定により、「ベルト(BE)」に起因する移動距離が変化し、ひいては、「ブーム(71)」の動きに対する「ホルダ部材」の動きの増幅度合いが変化することは、当業者とって技術常識である。
ここで、上記摘記事項(イ)の段落【0023】の記載及び【図2】の記載から、引用文献記載発明の「搬送ロボット(TR1)」は、周囲を「塗布処理ユニットSC1、SC2や現像処理ユニットSD1、SD2に挟まれた装置中央部」に置かれたものであるから、「塗布処理ユニット」等の配置に応じて、「ホルダ部材(40b)」が届くべき範囲、すなわち、「ブーム(71)」の動きに対する「ホルダ部材」の動きの増幅度合いを変化させたい、との課題が引用文献記載発明には内在しているといえる。
そうすると、引用文献記載発明において、「ホルダ部材(40b)」の動きの「ブーム(71)」の動きに対する増幅度合いを規定するように、「一方のプーリ(PU1)」等の寸法を設定することは、上記課題を解決しようとして、当業者が上記技術常識に基づいて容易になし得たものである。

(ウ) 小結
以上のとおりであるから、補正発明は引用文献記載発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易になし得たものであり、作用及び効果の点で格別なものを奏するとは認められない。
したがって、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3. 補正却下の決定におけるむすび
上記2-1で検討したとおり、本件補正の補正事項2は、当初明細書等に記載した範囲内においてしたものであるとはいえず、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に適合するとしても、上記2-2で検討したとおり、補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について

1. 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1ないし16は、平成24年12月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2、1.(1)に記載されたとおりのものである。

2. 原査定の理由

本願発明に対する、原査定の理由は、平成24年12月28日付け拒絶査定において、「平成24年8月22日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。」と記載されていて、当該拒絶理由通知書には、「理由1」として、「<理由1> この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。」と記載されている。
しかし、上記拒絶理由通知書において、特許請求の範囲の請求項1は、「理由1」に加えて、特許法第29条第1項第3号に係る拒絶の理由である「理由2」の対象とされている。そして、上記拒絶査定の備考欄において、請求項1をさらに限定した請求項2ないし7に係る発明に対して、「請求項2-7,9-16についても、上記拒絶理由通知書に記載した理由1又は2は、依然として解消しておらず、拒絶をすべきものである。」と記載されていて、かつ、「引用文献1に記載された発明と、本願請求項1,8に係る発明との間に、相違点は見出せない。」とも記載されている。そうすると、本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、上記「理由1」に加えて「理由2」も含まれると解するのが自然である。
この点については、本件請求人においても、原査定を不服とする本件審判を請求すると共に、同日付で本件補正により特許請求の範囲を補正するとともに、当該補正によって、「少なくとも以上の理由から、請求項1、2は、引用文献1、2に対して新規性進歩性を有しているというべきであり、また、実質的に同一で引用文献1、2に教示も示唆もない特徴を有しているといえ、少なくともそのことから、平成24年8月22日付け拒絶理由通知書に記載の理由1?3は解消されるべきです。」(審判請求書12ページ10ないし13行)と主張しているから、特許請求の範囲の請求項1に係る発明に対する原査定が理由1及び2である点について、本件請求人において十分認識しており、対応がなされているとみることができる。

2. 対比及び判断
第2、2-2.(2)、イ.で検討したように、引用文献1には、第2、2-2.(3).ア.記載の点で補正発明と一致する引用文献記載発明が記載されている。ここで、本願発明と当該一致点とを対比すると、当該一致点に係る特定事項は、本願発明に更に構成を付加し、限定したものである。そうすると本願発明に構成を付加し限定したものである上記一致点に係る特定事項が、引用文献1に記載されているから、本願発明も引用文献1に記載されているということができる。
したがって、本願発明は特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものである。

3. むすび
以上のとおりであるので、本願発明は本願優先日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。

したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

<付言:平成26年1月8日付け回答書記載の補正案について>
本件請求人は、当審よりの平成25年10月11日付け審尋への応答である平成26年1月8日付け回答書において、補正発明の「中間ステージ」及び「エンドエフェクタステージ」にそれぞれ「リニアエンコーダ」を取り付
ける点、限定する旨の補正案を記載している。さらに、当該補正案に係る補
正に加えて、「さらに、中間ステージを移動させる機構としてリニアモータを用いている。リニアモータには上述したベルト駆動の場合におけるベルトのたるみによる位置の不正確性という問題が生じない。本願出願人はこの点についても補正で特定する用意がある。」(5ページ下から4ないし1行)と別途の補正案も記載している。
しかし、板状体を直線方向に搬送する機構において、「リニアエンコーダ」や「リニアモータ」を設ける点は、以下の刊行物にも記載されているとおり、従来周知であり、かつ、当該周知のものを採用したことで、作用・効果の点で格別のものを存するとは認められないから、仮に補正案記載のとおり特許請求の範囲の請求項1に係る発明が補正されたとしても、当該発明は特許
第29条第2項の規定により拒絶されるべきものである。
・特開2006-238540号(特に、段落【0014】参照。)
・特開2004-342638号(特に、段落【0094】ないし【0098】参照。)
 
審理終結日 2014-07-03 
結審通知日 2014-07-07 
審決日 2014-07-18 
出願番号 特願2009-554791(P2009-554791)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 561- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浅野 麻木金丸 治之  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 長屋 陽二郎
久保 克彦
発明の名称 モジュラクラスタツール  
代理人 松下 満  
代理人 渡邊 徹  
代理人 井野 砂里  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 辻居 幸一  
代理人 弟子丸 健  

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