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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1294443
審判番号 不服2014-977  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-20 
確定日 2014-11-27 
事件の表示 特願2008-280147「再生装置及び再生方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月13日出願公開、特開2010-108553〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年10月30日の出願であって、原審において平成25年8月20日付けで拒絶理由が通知され、同年10月18日付けで手続補正されたが、同年10月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年1月20日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正されたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年1月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成25年10月18日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された

「【請求項1】
一つのファイルでなる動画コンテンツや、当該動画コンテンツ以外のその他のコンテンツが格納された着脱自在な記録媒体を再生する再生手段と、
上記記録媒体のうち上記動画コンテンツの再生が停止されて当該記録媒体が取り外されたとき、上記記録媒体のファイルサイズ、上記動画コンテンツと上記他のコンテンツとに対応した全ファイル名及び再生停止地点に相当する絶対アドレスを記憶手段に記憶する記憶制御手段と、
上記記録媒体が再度装填されて上記動画コンテンツを上記再生手段によって再生する際、上記記憶手段に記憶された上記ファイルサイズ及び上記全ファイル名を照合することにより当該記録媒体が取り外されたものと同一であることを検証する検証手段と、
上記検証手段により上記同一であることを検証したとき、上記記憶手段に記憶された上記再生停止地点に相当する絶対アドレスに基づいて上記動画コンテンツの再生処理を再開する制御手段と
を具える再生装置。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「【請求項1】
一つのファイルでなる動画コンテンツや、当該動画コンテンツ以外のその他のコンテンツが格納された着脱自在な記録媒体を再生する再生手段と、
上記記録媒体のうち上記動画コンテンツの再生が停止されて当該記録媒体が取り外されたとき、上記記録媒体のファイルサイズ、上記動画コンテンツと上記他のコンテンツとに対応した全ファイル名及び再生停止地点に相当する絶対アドレスを記憶手段に記憶する記憶制御手段と、
上記記録媒体が再度装填されて上記動画コンテンツを上記再生手段によって再生する際、上記記憶手段に記憶された上記ファイルサイズ及び上記全ファイル名を照合することにより当該記録媒体が取り外されたものと同一であることを検証する検証手段と、
上記検証手段により上記同一であることを検証したとき、上記記憶手段に記憶された上記再生停止地点に相当する絶対アドレスよりも所定時間だけ遡った時点から上記動画コンテンツの再生処理を再開する制御手段と
を具える再生装置。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、シフト補正、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、「絶対アドレスに基づいて上記動画コンテンツの再生処理を再開する」に関し、「絶対アドレスよりも所定時間だけ遡った時点から上記動画コンテンツの再生処理を再開する」と限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するとともに、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。

(2)引用発明
原審の拒絶理由に引用された特開2002-25235号公報(平成14年1月25日公開、以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報再生装置におけるレジューム再生方法に関し、特に光ディスクなどのランダムアクセスができる記録媒体に記録されたものを途中まで再生し、その後に再び再生を継続する際に好適な方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、動画及び音声等の情報を記録する記録媒体として、Video CD、CD-ROM、CD-R、MD、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-Rなどが知られている。これらは、記録された動画像に対しランダムアクセスができるという特徴を有するものの、テープ記録媒体と違って途中まで動画像を再生した後に装置を停止し、再び再生を開始すると途中まで再生していた位置情報が失われる。これを防ぐために、Video CDを再生するプレーヤでは、前回停止した位置から再生を開始する機能として続き再生又はしおり機能を設けているものがある。これらの機能は、停止した時の時間情報及びトラック情報等をメモリに記憶しておき、再び再生するときにメモリに記憶された情報を参照して前回の再生の続きの位置からの再生を可能としている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】Video CD(以下VCDと略称する)規格の論理フォーマットはもともとコンパクトディスクデェジタルオーディオ(以降CDと略称する)がベースになっているため、データ位置を表現するのにはMSF(M=分、S=秒、F=フレーム)という時間を単位としている。このVCDにおいて次回続き再生(レジューム再生)を実現するためには、停止位置情報として、このMSFを記憶装置に格納し、次回そのMSF位置から再生することが考えられる。しかしながら、DVD-Video再生装置のように、圧縮記録方式を使う場合は、再生停止時点の再生位置情報から前後のGOP(Group of Pictures)位置を検索することが困難であるため、単に停止時点の情報を取得すればすむわけではない。
【0004】一方、このようなレジューム再生においては、前回停止した時点から正確に再生すると、視聴者にとって前回まで見た話のストーリーと再生開始された内容の照合がとりにくいことがある。
【0005】本願発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、本発明の第1の目的は、ランダムアクセスが可能な記録媒体に格納されたデータのレジューム再生を可能にする再生装置を提供することにある。
【0006】本願発明の第2の目的は、前回再生した内容を視聴者に容易に認識させることができる情報再生装置におけるレジューム再生方法を提供することにある。」(2頁1?2欄)

ロ.「【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について説明する。図1は本実施の形態を示す光ディスク再生装置のブロック図を示したものである。
【0010】光ディスク1は、音声付き又は音声無しの画像データ圧縮又は非圧縮形式にて格納したもので、例えば、Video CD、DVD Video、DVD-ROM、DVD-RAMなどの光ディスクである。モータ2は光ディスク1を所定の回転数で回転させる。読み取り回路3は光ピックアップを含む、光ディスク1に記録された信号をピックアップして増幅し信号処理を行う。デコーダ回路4は読み取り回路3で信号処理された符号化データを復号化する。メモリ5はデコード処理されたデータを一時的に蓄えておくためのメモリである。
【0011】システムコントローラ6は読み取り回路3、デコーダ回路4の動作を制御するもので、メモリ7を含む。不揮発性メモリ8は、主電源がOFFしてもデータを記憶しておくことが可能なメモリである。システムコントローラ6には、続き再生のON/OFFを切り替える続き再生ON/OFFキー10、続き再生の位置を変更する続き再生位置変更キー11、ダイジェスト再生のON/OFFを切り替えるダイジェスト再生ON/OFFキー12、ダイジェスト再生の時間を変更するダイジェスト再生時間変更キー13である。
【0012】システムコントローラ6は、再生が停止する時の直前のデータが格納されているメモリ5のデータを検索し、必要なデータを取得したならば、不揮発性メモリ8にデータを格納し、次回再生時、続き再生ON/OFFキー10がONであれば、不揮発性メモリ8から続き再生に必要データを読み込み、再生位置及び再生開始を読み取り回路3に命令する。例えば、続き再生位置を前回停止位置の1分前にセットすると、システムコントローラ6は前回停止位置から1分前を次回再生開始位置とする。また、システムコントローラ6がメモリ5に格納するデータを定期的に不揮発性メモリ8に格納するようにすれば、後述するダイジェスト再生機能も実現できる。」(2頁2欄?3頁3欄)

ハ.「【0014】次に、図3のフローチャートを用いて再生停止時の手順を詳細に説明する。まず装置を再生する前に、2つのアドレスAを取得する。1つは開始アドレスA_(start)でもう一つは終了アドレスA_(end)である。次に、読み取り回路3により光ディスク1からデータが読み取られる(ステップ31)。読み取られたデータはデコーダ回路4にてデコードされ(ステップ32)、デコードされたデータの一部がメモリ5に格納すると共に、再生アドレスA_(end)にセットされる(ステップ33)。格納されたデータは、システムコントローラ6により出力タイミングが決定され、ビデオ信号と音声信号に分けて出力される(ステップ34)。次に、再生停止の指示があったかどうかを判断し、停止で無ければステップ31?34までのステップを繰り返す。
【0015】再生停止指示があった場合は、次回再生時に前回停止位置前後の位置より再生可能とするために、停止処理の前処理としてステップ36以下のことを行う。まず画像出力処理を停止し(ステップ36)メモリ5中に存在するいくつかの再生位置サーチ情報(A_(start)、A_(end)を含む)から、次回再生すべき再生開始絶対アドレスを算出する(ステップ37)。さらに、ダイジェスト再生位置情報を算出し(ステップ38)、算出した再生開始絶対アドレス、ダイジェスト再生位置情報などの算出値を不揮発性メモリ8に格納し、最後に通常の停止処理を行う(ステップ39)。
【0016】次に、停止後に再び再生を開始するレジューム再生処理の動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0017】光ディスク記録再生装置にて、光ディスク1がセットされ、再生ボタンが押されたら、続き再生ON/OFFキー10のセットの有無により、続き再生かどうかを判断する(ステップ41)。続き再生で無いとき、あるいは、続き再生であっても不揮発性メモリ8にセットされた光ディスク1の次回再生開始位置情報が格納されていない場合は通常の再生をする。即ち、操作者から再生開始位置の指示が無い場合は、再生開始位置を光ディスク1の先頭絶対アドレスを作業メモリ7に格納し、再生を開始するにセットし(ステップ46)、再生動作を行う(ステップ47)。
【0018】ステップ41で、続き再生の場合は、次にダイジェスト再生かどうかを判断し、ダイジェスト再生の場合はステップ43に、そうでない場合はステップ45に進む。ダイジェスト再生をするかどうかは、ダイジェストON/OFFキー12のセットの有無により判断する。
【0019】ダイジェスト再生の場合は、不揮発性メモリ8に格納されたダイジェスト再生位置情報を読み取り、ダイジェスト画像を再生する(ステップ43、44)。ダイジェスト再生中に任意のキー命令があったならばダイジェストサーチ及びダイジェスト再生終了し続き再生を行うことができる。
【0020】次に、ステップ37で取得した次回再生絶対アドレスを不揮発性メモリ8から読み出し、この絶対アドレスが含まれるGOPデータを光ディスク1から読み出し、デコード処理を行い、デコード処理後のデータが一時的に格納されるメモリ5を監視し、再生位置サーチ情報から今回再生する相対位置を取得して、レジューム再生開始位置をセットする(ステップ45)。その後、その地点から通常の再生を行う(ステップ47)。」(3頁4欄?4頁5欄)

ニ.「【0022】図5は、光ディスク1に記録された連続したデータファイルを再生、停止した場合に取得されるアドレス(再生位置情報)の関係を説明する図である。再生開始位置51から再生が開始され、再生停止位置52まで再生されると、メモリ5には、A_(start)とA_(end)が格納されている。この間を、再生時間に応じて、任意に分割する。例えば、A_(start)とA_(end)までが15分としたら、5分ごと地点のアドレスA1からA4を取得しても良いし、単純に数分割でも良い。」(4頁5欄)

ホ.「【0028】図8において、再生日時81は停止処理が行われた再生動作を行った日時であり、再生開始時点或いは再生停止時点の時間を格納する。媒体識別子は、たとえばDVD等に記録されたコンテンツを識別する固有のコードである。本実施例の再生装置では、この媒体識別子82をモニターすることによって、同じ光ディスクの2度目以降の再生が行われたかどうかを判断する。操作者83は、再生されたコンテンツを見た視聴者を示すデータであり、このデータを格納することにより、視聴者ごとのレジューム動作を行うことができる。尚、この情報を取得するためには、再生時、または停止時に視聴者が、視聴者を識別するための情報を入力しなければならない。たとえば、お父さんならボタンA、お母さんならばボタンBを押すという如きである。」(4頁6欄)

ヘ.「【0030】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の結果、光ディスク記録再生装置において、例えば映画の再生を途中で停止した場合、上記した一連の処理により、次回再生時には、あらかじめ初期設定した位置、例えば前回停止位置の1分前から正確に再生することができ、さらにダイジェスト再生を行うことによって前回再生した内容を自動的に確認することができ、使い勝手が向上すると思われる。また、DVDプレーヤなどでは、多種の記憶媒体が再生可能であるので、次回再生位置情報の他にディスク識別情報を不揮発性メモリに格納することで、複数のディスクを交互に再生した時でも、次回再生時には前回停止位置の前後から正確に再生することができる。」(4頁6欄)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0009】における「図1は本実施の形態を示す光ディスク再生装置のブロック図を示したものである。」との記載、同ロ.の【0010】における「光ディスク1は、音声付き又は音声無しの画像データ圧縮又は非圧縮形式にて格納したもので、例えば、Video CD、DVD Video、DVD-ROM、DVD-RAMなどの光ディスクである。モータ2は光ディスク1を所定の回転数で回転させる。読み取り回路3は光ピックアップを含む、光ディスク1に記録された信号をピックアップして増幅し信号処理を行う。デコーダ回路4は読み取り回路3で信号処理された符号化データを復号化する。メモリ5はデコード処理されたデータを一時的に蓄えておくためのメモリである。」との記載、同ロ.の【0011】における「システムコントローラ6は読み取り回路3、デコーダ回路4の動作を制御するもので、メモリ7を含む。」との記載、及び図1によれば、光ディスク再生装置は、モータ(2)と、読み取り回路(3)と、デコーダ回路(4)と、メモリ(5)と、システムコントローラ(6)とを備えている。そして、モータ(2)、読み取り回路(3)、デコーダ回路(4)、メモリ(5)、及びシステムコントローラ(6)は、これらが一体となって画像データが格納された光ディスク(1)を再生しており、これらの再生機能を光ディスク(1)を再生する再生手段ということができる。ここで、上記ヘ.の【0030】における「DVDプレーヤなどでは、多種の記憶媒体が再生可能であるので、次回再生位置情報の他にディスク識別情報を不揮発性メモリに格納することで、複数のディスクを交互に再生した時でも、次回再生時には前回停止位置の前後から正確に再生することができる。」との記載によれば、光ディスク再生装置は、複数の光ディスク(1)を交互に再生することができる。すなわち、光ディスク再生装置は、複数の光ディスク(1)を着脱自在に交換可能なものである。
また、上記ロ.の【0012】における「システムコントローラ6は、再生が停止する時の直前のデータが格納されているメモリ5のデータを検索し、必要なデータを取得したならば、不揮発性メモリ8にデータを格納し」との記載、同ロ.の【0015】における「再生停止指示があった場合は、次回再生時に前回停止位置前後の位置より再生可能とするために、停止処理の前処理としてステップ36以下のことを行う。まず画像出力処理を停止し(ステップ36)メモリ5中に存在するいくつかの再生位置サーチ情報(A_(start)、A_(end)を含む)から、次回再生すべき再生開始絶対アドレスを算出する(ステップ37)。・・・算出した再生開始絶対アドレス・・・の算出値を不揮発性メモリ8に格納し、最後に通常の停止処理を行う(ステップ39)。」との記載、図1及び図3によれば、システムコントローラ(6)、メモリ(5)及び不揮発性メモリ(8)は、再生停止指示があった場合、次回再生すべき再生開始絶対アドレスを算出し(ステップ37)、算出した再生開始絶対アドレスの算出値を不揮発性メモリ(8)に格納している。すなわち、システムコントローラ(6)、メモリ(5)及び不揮発性メモリ(8)は、前述の光ディスク(1)の画像データの再生が停止されたとき、再生停止地点に相当する絶対アドレスを不揮発性メモリ(8)に格納しており、この機能を再生停止地点に相当する絶対アドレスを不揮発性メモリ(8)に格納する記憶制御手段ということができる。
また、上記ホ.の【0028】における「媒体識別子は、たとえばDVD等に記録されたコンテンツを識別する固有のコードである。本実施例の再生装置では、この媒体識別子82をモニターすることによって、同じ光ディスクの2度目以降の再生が行われたかどうかを判断する。」との記載、及び図8における、光ディスク(1)の交換時の態様に着目すれば、光ディスク再生装置は、光ディスク(1)に記録された媒体識別子(82)をモニターすることにより、同じ光ディスク(1)が再度装填されて再生が行われたどうかを判断している。すなわち、光ディスク再生装置は、光ディスク(1)が再度装填されて画像データを前述の再生手段によって再生する際、媒体識別子(82)をモニターすることにより光ディスク(1)が取り外されたものと同一であることを検証しており、この機能を光ディスク(1)が取り外されたものと同一であることを検証する検証手段ということができる。
また、上記ハ.の【0020】における「ステップ37で取得した次回再生絶対アドレスを不揮発性メモリ8から読み出し、・・・レジューム再生開始位置をセットする(ステップ45)。その後、その地点から通常の再生を行う(ステップ47)。」との記載、上記ヘ.の【0030】における「光ディスク記録再生装置において、例えば映画の再生を途中で停止した場合、上記した一連の処理により、次回再生時には、あらかじめ初期設定した位置、例えば前回停止位置の1分前から正確に再生することができ、・・・DVDプレーヤなどでは、多種の記憶媒体が再生可能であるので、次回再生位置情報の他にディスク識別情報を不揮発性メモリに格納することで、複数のディスクを交互に再生した時でも、次回再生時には前回停止位置の前後から正確に再生することができる。」との記載、及び図4によれば、光ディスク再生装置は、光ディスク(1)を交換して再生した時でも、前述の再生停止地点に相当する絶対アドレスよりも1分前から画像データを再生することができる。ここで、光ディスク(1)を交換して再生した時、前述の検証手段により光ディスク(1)の同一性を検証していることは明らかである。すなわち、光ディスク再生装置は、前述の検証手段により同一であることを検証したとき、前述の不揮発性メモリ(8)に格納された前述の再生停止地点に相当する絶対アドレスよりも1分前から画像データの再生処理を再開しており、この機能を画像データの再生処理を再開する制御手段ということができる。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「画像データが格納された着脱自在な光ディスク(1)を再生する再生手段と、
上記光ディスク(1)の上記画像データの再生が停止されたとき、再生停止地点に相当する絶対アドレスを不揮発性メモリ(8)に格納する記憶制御手段と、
上記光ディスク(1)が再度装填されて上記画像データを上記再生手段によって再生する際、媒体識別子(82)をモニターすることにより当該光ディスク(1)が取り外されたものと同一であることを検証する検証手段と、
上記検証手段により上記同一であることを検証したとき、上記不揮発性メモリ(8)に格納された上記再生停止地点に相当する絶対アドレスよりも1分前から上記画像データの再生処理を再開する制御手段と
を備える光ディスク再生装置。」

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「画像データ」は、上記ヘ.の【0030】における「光ディスク記録再生装置において、例えば映画」との記載によれば、「動画コンテンツ」ということができる。
b.引用発明の「光ディスク(1)」は、「記録媒体」に含まれる。
c.引用発明の「不揮発性メモリ(8)に格納する」は、「不揮発性メモリ(8)」が「記憶手段」に相当するから、「記憶手段に記憶する」ということができる。
d.引用発明の「媒体識別子(82)」と、補正後の発明の「上記記録媒体のファイルサイズ、上記動画コンテンツと上記他のコンテンツとに対応した全ファイル名」とは、いずれも、「特定の情報」という点で一致する。
e.引用発明の「モニター」は、モニターすることで同一であることを検証する以上、照合する手段を用いることは技術常識であるから、「照合」ということができる。
f.引用発明の「絶対アドレスよりも1分前から」は、「絶対アドレスよりも所定時間だけ遡った時点から」ということができる。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「動画コンテンツが格納された着脱自在な記録媒体を再生する再生手段と、
上記記録媒体のうち上記動画コンテンツの再生が停止されたとき、再生停止地点に相当する絶対アドレスを記憶手段に記憶する記憶制御手段と、
上記記録媒体が再度装填されて上記動画コンテンツを上記再生手段によって再生する際、特定の情報を照合することにより当該記録媒体が取り外されたものと同一であることを検証する検証手段と、
上記検証手段により上記同一であることを検証したとき、上記記憶手段に記憶された上記再生停止地点に相当する絶対アドレスよりも所定時間だけ遡った時点から上記動画コンテンツの再生処理を再開する制御手段と
を具える再生装置。」

(相違点1)
「動画コンテンツ」に関し、
補正後の発明は、「一つのファイルでなる」ものであるのに対し、引用発明は、当該「一つのファイルでなる」との特定がない点。

(相違点2)
「記録媒体」に格納されたコンテンツに関し、
補正後の発明は、「当該動画コンテンツ以外のその他のコンテンツ」が格納されているのに対し、引用発明は、当該「当該動画コンテンツ以外のその他のコンテンツ」が格納されているとの特定がない点。

(相違点3)
上記記録媒体のファイルサイズ、上記動画コンテンツと上記他のコンテンツとに対応した全ファイル名及び「再生停止地点に相当する絶対アドレスを記憶手段に記憶する」タイミングに関し、
補正後の発明は、上記記録媒体のうち上記動画コンテンツの再生が停止されて「当該記録媒体が取り外されたとき」であるのに対し、引用発明は、当該「当該記録媒体が取り外されたとき」との特定がない点。

(相違点4)
「記憶手段に記憶する」同一性検証のための要素に関し、
補正後の発明は、「上記記録媒体のファイルサイズ、上記動画コンテンツと上記他のコンテンツとに対応した全ファイル名」であるのに対し、引用発明は、当該「上記記録媒体のファイルサイズ、上記動画コンテンツと上記他のコンテンツとに対応した全ファイル名」との特定がない点。

(相違点5)
同一性検証のために照合される「特定の情報」に関し、
補正後の発明は、「上記記憶手段に記憶された上記ファイルサイズ及び上記全ファイル名」であるのに対し、引用発明は、「媒体識別子(82)」である点。

そこで、まず、上記相違点1について検討する。
引用例の上記ニ.の【0022】における「図5は、光ディスク1に記録された連続したデータファイルを再生、停止した場合に取得されるアドレス(再生位置情報)の関係を説明する図である。」との記載、及び図5によれば、光ディスク(1)(記録媒体)に格納するコンテンツとして、一つのファイルからなるファイルが記載されている。
そうすると、引用発明の「画像データ」を、補正後の発明のように「一つのファイルでなる」ものとすることは格別のことではない。

次に、上記相違点2について検討する。
記録媒体に格納するコンテンツとして、動画コンテンツ及び当該動画コンテンツ以外のその他のコンテンツを格納することは、例えば、特開2007-115180号公報(段落【0033】、図2)、特開2004-265470号公報(段落【0046】、図3)に開示されているように周知である。
そうすると、上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明の「画像データ」(動画コンテンツ)に加えて、補正後の発明のように「当該動画コンテンツ以外のその他のコンテンツ」を格納することに格別な困難性はない。

次に、上記相違点3ないし5について検討する。
再生装置において、記録媒体のファイルサイズ及び全ファイル名を、再生装置の記憶手段に記憶された記録媒体のファイルサイズ及び全ファイル名と照合することにより記録媒体の同一性を検証することは、例えば、原審の拒絶理由に引用された特開2003-228966号公報(段落【0001】?【0007】、【0012】、【0016】?【0034】)、特開平10-124362号公報(段落【0032】?【0041】、図7、8)に開示されるように周知である。
そうすると、上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明の「媒体識別子(82)」に換え、同一性検証のために照合される「特定の情報」に関し、補正後の発明のように「上記記憶手段に記憶された上記ファイルサイズ及び上記全ファイル名」とすること(相違点5)、また、「記憶手段に記憶する」同一性検証のための要素に関し、補正後の発明のように「上記記録媒体のファイルサイズ、上記動画コンテンツと上記他のコンテンツとに対応した全ファイル名」とすること(相違点4)は容易になし得ることである。その際、光ディスク(1)(記録媒体)が取り外される場合に光ディスク(1)(記録媒体)の同一性の検証が必要であることは明らかであるから、上記記録媒体のファイルサイズ、上記動画コンテンツと上記他のコンテンツとに対応した全ファイル名及び「再生停止地点に相当する絶対アドレスを記憶手段に記憶する」タイミングに関し、補正後の発明のように、上記記録媒体のうち上記動画コンテンツの再生が停止されて「当該記録媒体が取り外されたとき」とすること(相違点3)は自然である。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成26年1月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願は、その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-26 
結審通知日 2014-09-30 
審決日 2014-10-16 
出願番号 特願2008-280147(P2008-280147)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五貫 昭一  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 井上 信一
萩原 義則
発明の名称 再生装置及び再生方法  
代理人 田辺 恵基  

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